JPH08239486A - 芳香族ポリサルホン樹脂成形体およびその製造方法 - Google Patents
芳香族ポリサルホン樹脂成形体およびその製造方法Info
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Abstract
ポリサルホン樹脂が本来持つ機械的強度、耐熱性を有す
る電気、電子部品として好適な芳香族ポリサルホン樹脂
成形体およびその製造方法を提供すること。 【構成】(1)硫黄を含有する化合物と反応しそれを捕
捉する機能を有する添加剤を含まない芳香族ポリサルホ
ン樹脂の成形体であって、該成形体から抽出されるSO
4 2-の量がその成形体重量に対して2ppm以下である
芳香族ポリサルホン樹脂成形体。 (2)芳香族ポリサルホン樹脂の成形体を70℃以上2
20℃以下において、5分以上熱処理することを特徴と
する腐食性ガス含量の少ない芳香族ポリサルホン樹脂成
形体の製造方法。
Description
食性ガスが極めて少ない、電気、電子部品として好適な
芳香族ポリサルホン樹脂成形体およびその製造方法に関
するものである。
ため、等方性で成形収縮率が小さく、またポリフェニレ
ンスルフィドやポリエーテルケトンのような高耐熱性樹
脂よりもガラス転移点が高いため、これらの樹脂に比べ
てより高温まで強度、弾性率、耐クリープ特性等の物性
の低下が小さく、高寸法精度、高耐熱性が要求される電
子部品としては好適な材料である。特に芳香族ポリサル
ホン樹脂にガラス繊維のような繊維状物を配合すること
により、成形収縮率はより小さくなり、強度、弾性率が
向上するため該電子部品としてはより好適な材料とな
り、たとえば、リレー、スイッチ、コネクター、ソケッ
ト、コイルボビンなどに応用されている。
溶融時の粘度が比較的高いため、小物で複雑な形状を持
つ電子部品や、薄肉部を持つ電子部品などを射出成形に
より成形する場合、標準より高い成形温度、射出圧力、
成形速度を必要とする。このため成形時に熱による分解
ガスが発生し、このガスの一部が成形品中に包埋される
ことがある。該包埋ガスは実際の使用に当たって成形品
中から発生し、種々の問題を引き起こすことがある。特
に、電子部品がリレー(ケース、ベース、アーマチュ
ア、コイルボビンなど)であり、包埋ガスが腐食性ガス
であった場合、該包埋ガスが成形品中から極微量でも発
生すると金属接点が腐食し絶縁不良を起こすといった問
題がある。
るガス中には腐食性であるSO2 が含まれていることが
ガスクロマトグラフィー質量分析等により確認されてい
る。SO2 は芳香族ポリサルホン樹脂に由来するガスで
あり、成形時等に熱分解を起こし、成形品中に包埋され
るものと考えられるが発生機構の詳細については明らか
ではない。
段として、特開昭 60-186561号公報には、ポリフェニレ
ンスルフィド(PPS)樹脂に対しハイドロタルサイト
を添加して、PPSが分解して生ずるSO2 ガスやH2
Sガスのような腐食性ガスを低減できることが開示され
ている。また、特開昭 62-167356号公報、特開昭 62-29
5956号公報には、PPS樹脂に対しゼオライト類を添加
することにより腐食性ガスを低減できることが開示され
ている。また、特開平 2-194056 号公報には、芳香族ポ
リサルホン樹脂を主成分とする樹脂にハイドロタルサイ
ト、ゼオライト類を添加した場合、腐食性ガスや脂肪族
炭化水素等の低沸点ガスを低減できることが開示されて
いる。
O2 ガス量を低減する目的でハイドロタルサイトやゼオ
ライト類を芳香族ポリサルホン樹脂に混合させた場合、
特定の混合量においてSO2 の低減効果はみられるもの
の、組成物を得るときに、樹脂混合物の押出機のスクリ
ューへのかみ込み性が悪化したり、ストランドの引き取
り性が悪化するために、造粒が困難となり、実際の使用
においては不都合を生じることがあった。
腐食性ガスが極めて少なく、芳香族ポリサルホン樹脂が
本来持つ機械的強度、耐熱性を有する電気、電子部品と
して好適な芳香族ポリサルホン樹脂成形体およびその製
造方法を提供することを目的とするものである。
を解決するために鋭意検討した結果、芳香族ポリサルホ
ン樹脂の成形体を特定条件下で熱処理することにより、
上記目的が達成されることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下に示すものである。 (1)硫黄を含有する化合物と反応しそれを捕捉する機
能を有する添加剤を含まない芳香族ポリサルホン樹脂の
成形体であって、該成形体から抽出されるSO4 2 - の量
がその成形体重量に対して2ppm以下であることを特
徴とする芳香族ポリサルホン樹脂成形体。 (2)芳香族ポリサルホン樹脂の成形体を70℃以上2
20℃以下において、5分以上熱処理することを特徴と
する腐食性ガス含量の少ない芳香族ポリサルホン樹脂成
形体の製造方法。 (3)芳香族ポリサルホン樹脂の成形体の熱処理を、成
形完了後、6時間以内に実施することを特徴とする上記
(2)記載の製造方法。
脂は、アリーレン単位、エーテル結合およびスルホン結
合の三者が必須の構成単位であって、アリーレン単位が
エーテルおよびスルホン結合と共に無秩序にまたは秩序
正しく位置するポリアリーレン化合物として定義され
る。代表的な例としては次のような繰り返し単位を有す
るものが挙げられるが、これらに限定されるものではな
い。
R1 は炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数
3ないし10のアルケニル基、フェニル基またはハロゲ
ン原子を表し、pは0ないし4の整数である。m、nは
平均のくり返し単位数を示し、m、nは0.1〜100の
正数である。同一または異なる核上の各R 1 は相互に異
なっていてもよい。各pは相互に異なっていてもよ
い。〕
炭素原子数1ないし6のアルキル基、炭素原子数3ない
し10のアルケニル基、フェニル基またはハロゲン原子
を表し、pは0ないし4の整数である。q、m、nは平
均のくり返し単位数を示し、qは1〜3の正数、m、n
は0.1〜100の正数である。同一または異なる核上の
各R1 は相互に異なっていてもよい。各pは相互に異な
っていてもよい。)
脂としては、(II)の構造単位中のm/(m+n)は
0.8以上であることが好ましい。また、(III)の構
造単位中のm/(m+n)は0.8以上、かつqは1であ
ることが好ましい。これらの中でも(I)、(II)の
繰り返し構造単位を持つものが好ましい。市販品の例と
しては、(I)のものは住友化学工業株式会社の商品名
スミカエクセルPES 3600P、4100Pおよび4800P
が、(II)のものは AMOCO社の商品名 UDEL P−17
00が挙げられる。この中で(I)の繰り返し構造単位を
持つ芳香族ポリサルホンが特に好ましい。本発明で用い
られる芳香族ポリサルホン樹脂の末端構造は、各々の樹
脂の製法に従って決まるものであり、例えば、Cl、O
H、OR(Rはアルキル基)などが挙げられるが、これ
らに限定されるものではない。
成形体の熱処理の雰囲気は、特に限定されないが、空気
中、窒素中または減圧下で行われるのが一般的である。
本発明において、芳香族ポリサルホン樹脂成形体の熱処
理は、70℃以上、220℃以下で行われる。熱処理
は、100℃以上、210℃以下で実施することが好ま
しく、130℃以上、200℃以下であることが更に好
ましい。芳香族ポリサルホン樹脂成形体の熱処理を70
℃未満で行うと成形加工時に分解し、成形体中に包埋さ
れたSO2 ガスの除去が不十分となり好ましくなく、ま
た、220℃以上で熱処理を行うと芳香族ポリサルホン
樹脂成形体自身が軟化し、変形を伴うため好ましくな
い。本発明において、芳香族ポリサルホン樹脂成形体の
熱処理時間は、5分以上である。熱処理時間は、10分
以上であることが好ましく、30分以上であることが更
に好ましい。芳香族ポリサルホン樹脂成形体の熱処理時
間が5分未満であると成形体中に包埋されたSO2 ガス
の除去が不十分となり好ましくない。
成形体の熱処理は、成形加工完了後、6時間以内に実施
すると、成形体中に包埋されたSO2 ガスをより多く除
去することが可能である。芳香族ポリサルホン樹脂成形
体の熱処理が、成形加工完了後6時間を越えると、芳香
族ポリサルホン樹脂成形体が吸湿を起こし、成形体中に
包埋されたSO2 ガスが硫酸イオンに一部変化するた
め、熱処理によるSO2ガス除去効果が低減される。
成形体の原料樹脂に、必要に応じてガラス繊維、シリカ
アルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、ホウ酸アルミ
ニウムウイスカーなどの繊維状あるいは針状の補強材、
タルク、マイカ、クレー、ガラスビーズなどの無機充填
材、フッ素樹脂などや金属石鹸類などの離型改良剤、染
料、顔料などの着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線
吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤などの通常の添加剤を
1種以上添加することができる。また、少量の熱可塑性
樹脂、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニ
レンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネー
ト、ポリフェニレンエーテルおよびその変性物、ポリエ
ーテルイミド等や、少量の熱硬化性樹脂、例えば、フェ
ノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の一種ま
たは、二種以上を添加することもできる。
配合手段は特に限定されない。芳香族ポリサルホン、必
要に応じてガラス繊維などの補強剤や無機充填剤、離型
改良剤、熱安定剤などをヘンシェルミキサー、タンブラ
ー等を用いて混合した後、押出機を用いて溶融混練する
ことが一般的である。そのときの溶融混練法としては、
全ての原材料を一括して混合した後で押出機へフィード
してもかまわないし、必要に応じてガラス繊維などの補
強材や無機充填材などの原材料を、樹脂を主体とする原
材料とは別にフィードしてもかまわない。
れらに限定されるものではない。なお、実施例中の成形
品から発する腐食性ガス量の分析は、次の方法で行っ
た。 成形品から発する腐食性ガス(SO2 )量の分析方法 芳香族ポリサルホン樹脂組成物を射出成形機(日精樹脂
工業製、PS40E5ASE)を用いて、長さ64mm、
幅64mm、厚み1mmの平板をシリンダー温度360℃〜
370℃、金型温度150℃で成形し、得られた成形品
を長さ5mm、幅5mm、厚み1mmのチップに切削した。蒸
留水で洗浄した後熱風乾燥した20mlのバイアル瓶に、
このチップを入れ、イオン交換水5mlを加えた後、ポリ
テトラフルオロエチレンからなるパッキンでシールし、
80℃で20時間撹拌し、SO4 2 - を抽出した。この抽
出水を冷却後、一定量を、イオンクロマトグラム(DI
ONEX社製4510i型、カラム:AG4A+AS4
A+AMMS、溶離液:1.8mM−Na2 CO3 、0.
9mM−NaHCO3 、流量:1.5ml/min)にかけてS
O4 2- を検出し、チップ重量に対するSO4 2- 量を算出
した。成形品中に包埋されていると考えられる腐食性ガ
スであるSO2 は、上記抽出条件下では全てSO4 2-へ
酸化されることが知られているので、成形品中から抽出
されたSO4 2-量が大きいほど該腐食性ガスの発生が大
きいことを表す。
社製、商品名スミカエクセル PES 3600P)
を、二軸押出機(池貝鉄工(株)製、PCM−30)を
用いて、シリンダー温度340℃で造粒し、芳香族ポリ
サルホン樹脂ペレットを得た。得られたペレットを上記
の方法により射出成形した後、表1に示す条件で熱処理
を行った後、成形品中から抽出されたSO4 2- の量を測
定した。結果を表1に示す。同様に、熱処理を施さず、
成形品中から抽出されたSO4 2- の量を測定した結果
(比較例1)を表1に示す。成形後、所定条件で熱処理
を施した成形体(実施例1、2)は、熱処理を施してい
ない成形体(比較例1)に比べ成形品中から抽出された
SO4 2- の量が著しく低減していた。また、熱処理を成
形完了後、6時間未満に施した成形体(実施例1)は、
成形品中から抽出されたSO4 2- 量がより低減してい
た。
社製、商品名スミカエクセル PES 3600P)1
00重量部に対し、ガラスファイバー(旭ファイバイガ
ラス製、商品名CS03)を25重量部混合し、ヘンシ
ェルミキサーで混合後、造粒、成形以外は実施例1と同
様にして測定した結果(比較例1)を表1に示す。成形
後、所定条件で熱処理を施した成形体(実施例3、4)
は、熱処理を施していない成形体(比較例2)に比べ成
形品中から抽出されたSO4 2- の量が著しく低減してい
た。また、熱処理を成形完了後、6時間未満に施した成
形体(実施例3)は、成形品中から抽出されたSO4 2-
量がより低減していた。
は、発生する腐食性ガスの相対量が少なく、芳香族ポリ
サルホン樹脂組成物のもつ本来の機械的強度、耐熱性を
有し、電気、電子部品として極めて有用なものである。
Claims (3)
- 【請求項1】硫黄を含有する化合物と反応しそれを捕捉
する機能を有する添加剤を含まない芳香族ポリサルホン
樹脂の成形体であって、該成形体から抽出されるSO4
2- の量がその成形体重量に対して2ppm以下である
ことを特徴とする芳香族ポリサルホン樹脂成形体。 - 【請求項2】芳香族ポリサルホン樹脂の成形体を70℃
以上220℃以下において、5分以上熱処理することを
特徴とする腐食性ガス含量の少ない芳香族ポリサルホン
樹脂成形体の製造方法。 - 【請求項3】芳香族ポリサルホン樹脂の成形体の熱処理
を、成形完了後、6時間以内に実施することを特徴とす
る請求項2記載の製造方法。
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