JPH08232038A - 圧縮機用摺動部材 - Google Patents
圧縮機用摺動部材Info
- Publication number
- JPH08232038A JPH08232038A JP28158495A JP28158495A JPH08232038A JP H08232038 A JPH08232038 A JP H08232038A JP 28158495 A JP28158495 A JP 28158495A JP 28158495 A JP28158495 A JP 28158495A JP H08232038 A JPH08232038 A JP H08232038A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- compressor
- sliding
- cast iron
- vane
- roller
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Applications Or Details Of Rotary Compressors (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 冷媒の種類が変更された場合においても優れ
た耐摩耗性を発揮する圧縮機用摺動部材を提供する。 【解決手段】 圧縮機内で相対的に摺動運動を行う一対
の摺動部品3、6から成り、一方の摺動部品3を、重量
比で、C:2.50〜3.80%、Si:1.50〜3.00%、Mn:
0.50〜1.00%、P:0.30%以下、S:0.10%以下、Ni
および/またはCu:合計0.40〜1.00%、Cr:1.20〜
2.00%、Mo:0.40〜1.00%、B:0.05〜0.15%の割合
で含有し残部Feから成る合金鋳鉄で形成し、他方の摺
動部品6を黒鉛形状がASTM規格のAタイプ、Bタイ
プ、DタイプおよびEタイプのいずれかのタイプであ
り、特殊ステダイトが分散した焼戻しマルテンサイト組
織を有し、硬度がHRC40〜60である合金鋳鉄で形成す
る。
た耐摩耗性を発揮する圧縮機用摺動部材を提供する。 【解決手段】 圧縮機内で相対的に摺動運動を行う一対
の摺動部品3、6から成り、一方の摺動部品3を、重量
比で、C:2.50〜3.80%、Si:1.50〜3.00%、Mn:
0.50〜1.00%、P:0.30%以下、S:0.10%以下、Ni
および/またはCu:合計0.40〜1.00%、Cr:1.20〜
2.00%、Mo:0.40〜1.00%、B:0.05〜0.15%の割合
で含有し残部Feから成る合金鋳鉄で形成し、他方の摺
動部品6を黒鉛形状がASTM規格のAタイプ、Bタイ
プ、DタイプおよびEタイプのいずれかのタイプであ
り、特殊ステダイトが分散した焼戻しマルテンサイト組
織を有し、硬度がHRC40〜60である合金鋳鉄で形成す
る。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は圧縮機用摺動部材に
関し、特に冷媒の種類が変更された場合においても優れ
た耐摩耗性を発揮する圧縮機用摺動部材に関する。
関し、特に冷媒の種類が変更された場合においても優れ
た耐摩耗性を発揮する圧縮機用摺動部材に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば冷蔵庫、冷凍機、空調機等には冷
媒を圧縮する圧縮機が装備されている。これらの用途に
使用されている圧縮機としては、たとえば図4に示すよ
うなロータリ式圧縮機が知られている。この圧縮機は、
円筒形状のシリンダ1と、このシリンダ1の内壁に形成
されたベーン溝2に進退自在に支持されたベーン3と、
電動機に直結された回転軸4に偏心するように形成され
たボス部5に嵌合する円筒形状のローラ6とがケーシン
グ内に配設されて形成されている。また、ベーン3のノ
ーズ部(先端部)はシリンダ1内で偏心回転運動するロ
ーラ6の外周面に摺接するように構成されている。ベー
ン3はローラ6の回転に応じてローラ外周面に摺接しな
がら往復動し、シリンダ1内部を吸入側と圧縮側とに仕
切る役割を果す。圧縮機はモータの駆動によってローラ
6をシリンダ1内において偏心回転させることにより吸
入側に導入した冷媒等を移動させながら圧縮して吐出す
るものである。
媒を圧縮する圧縮機が装備されている。これらの用途に
使用されている圧縮機としては、たとえば図4に示すよ
うなロータリ式圧縮機が知られている。この圧縮機は、
円筒形状のシリンダ1と、このシリンダ1の内壁に形成
されたベーン溝2に進退自在に支持されたベーン3と、
電動機に直結された回転軸4に偏心するように形成され
たボス部5に嵌合する円筒形状のローラ6とがケーシン
グ内に配設されて形成されている。また、ベーン3のノ
ーズ部(先端部)はシリンダ1内で偏心回転運動するロ
ーラ6の外周面に摺接するように構成されている。ベー
ン3はローラ6の回転に応じてローラ外周面に摺接しな
がら往復動し、シリンダ1内部を吸入側と圧縮側とに仕
切る役割を果す。圧縮機はモータの駆動によってローラ
6をシリンダ1内において偏心回転させることにより吸
入側に導入した冷媒等を移動させながら圧縮して吐出す
るものである。
【0003】このような圧縮機においては、シリンダ1
とベーン3、ローラ6とベーン3等の相互に摺接する摺
動部における摩耗が特に顕著となるため、摺動部材は耐
摩耗性材料で形成されている。すなわち、ベーンの構成
材料としては、耐摩耗性および強度の点から熱処理を施
して硬化させた鋼材が主として用いられている。一方、
ローラを構成する耐摩耗性材料としては、その形状、使
用条件を勘案してMo−Ni−Cr合金(モニクロ鋳
鉄)材が広く使用されている。またシリンダ構成材とし
ては被削性等の観点から黒鉛を分散させた鋳鉄材や焼結
材などが使用されている。
とベーン3、ローラ6とベーン3等の相互に摺接する摺
動部における摩耗が特に顕著となるため、摺動部材は耐
摩耗性材料で形成されている。すなわち、ベーンの構成
材料としては、耐摩耗性および強度の点から熱処理を施
して硬化させた鋼材が主として用いられている。一方、
ローラを構成する耐摩耗性材料としては、その形状、使
用条件を勘案してMo−Ni−Cr合金(モニクロ鋳
鉄)材が広く使用されている。またシリンダ構成材とし
ては被削性等の観点から黒鉛を分散させた鋳鉄材や焼結
材などが使用されている。
【0004】ところで、上記のような従来の摺動部材を
使用した圧縮機で従来のR22冷媒等を圧縮する場合に
は冷媒中に含まれる塩素による潤滑性が発揮されるため
にある程度の耐摩耗性が得られていた。
使用した圧縮機で従来のR22冷媒等を圧縮する場合に
は冷媒中に含まれる塩素による潤滑性が発揮されるため
にある程度の耐摩耗性が得られていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年、
冷凍機、冷蔵庫、空調機等の冷媒に含有される特定フロ
ンが、オゾン層破壊などの地球環境に影響を与えること
が判明し、特定フロンを含有しないR134aなどの代
替新冷媒の開発が進められている。
冷凍機、冷蔵庫、空調機等の冷媒に含有される特定フロ
ンが、オゾン層破壊などの地球環境に影響を与えること
が判明し、特定フロンを含有しないR134aなどの代
替新冷媒の開発が進められている。
【0006】ところが、上記新冷媒R134aを使用し
た場合には、潤滑性を発揮する塩素が含有されていない
ため、充分な耐摩耗性が得られず、圧縮機の摺動部の寿
命が低下するという問題があった。
た場合には、潤滑性を発揮する塩素が含有されていない
ため、充分な耐摩耗性が得られず、圧縮機の摺動部の寿
命が低下するという問題があった。
【0007】本発明はかかる問題を解決するためになさ
れたものであり、本発明の目的は特に冷媒の種類が変更
された場合においても優れた耐摩耗性を発揮し得る圧縮
機用摺動部材を提供することにある。
れたものであり、本発明の目的は特に冷媒の種類が変更
された場合においても優れた耐摩耗性を発揮し得る圧縮
機用摺動部材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明の構成は、圧縮機内で相対的に摺動運動を行
う一対の摺動部品からなる圧縮機用摺動部材であって、
一方の摺動部品が、重量比でC:2.50〜3.80
%、Si:1.50〜3.00%、Mn:0.50〜
1.00%、P:0.30%以下、S:0.10%以
下、Niおよび/またはCu:0.40〜1.00%、
Cr:1.20〜2.00%、Mo:0.40〜1.0
0%、B:0.05〜0.15%、残部Feからなる合
金鋳鉄により形成され、他方の摺動部品が、黒鉛形状が
ASTM規格のAタイプ、Bタイプ、DタイプおよびE
タイプのいずれかであるとともに特殊ステダイトが分散
した焼戻しマルテンサイト組織を有し、硬度がHRC4
0〜60である合金鋳鉄で形成されていることを特徴と
する圧縮機用摺動部材であり、特に前記一方の摺動部品
がシリンダ内を偏心回転運動するローラに摺接する圧縮
機用ベーンであり、前記他方の摺動部品がローラである
圧縮機用摺動部材である。
めの本発明の構成は、圧縮機内で相対的に摺動運動を行
う一対の摺動部品からなる圧縮機用摺動部材であって、
一方の摺動部品が、重量比でC:2.50〜3.80
%、Si:1.50〜3.00%、Mn:0.50〜
1.00%、P:0.30%以下、S:0.10%以
下、Niおよび/またはCu:0.40〜1.00%、
Cr:1.20〜2.00%、Mo:0.40〜1.0
0%、B:0.05〜0.15%、残部Feからなる合
金鋳鉄により形成され、他方の摺動部品が、黒鉛形状が
ASTM規格のAタイプ、Bタイプ、DタイプおよびE
タイプのいずれかであるとともに特殊ステダイトが分散
した焼戻しマルテンサイト組織を有し、硬度がHRC4
0〜60である合金鋳鉄で形成されていることを特徴と
する圧縮機用摺動部材であり、特に前記一方の摺動部品
がシリンダ内を偏心回転運動するローラに摺接する圧縮
機用ベーンであり、前記他方の摺動部品がローラである
圧縮機用摺動部材である。
【0009】本発明の圧縮機用摺動部材は、相対的に摺
動運動を行なう一対の摺動部品からなり、他方の摺動部
品は、重量比でC:2.50〜3.80%、Si:1.
50〜3.00%、Mn:0.50〜1.00%、P:
0.30%以下、S:0.10%以下、Niおよび/ま
たはCu:0.40〜1.00%、Cr:1.20〜
2.00%、Mo:0.40〜1.00%、B:0.0
5〜0.15%、残部Feからなる合金鋳鉄により形成
され、他方の摺動部品は、黒鉛形状がASTM規格のA
タイプ、Bタイプ、DタイプおよびEタイプのいずれか
であるとともに特殊ステダイトが分散した焼戻しマルテ
ンサイト組織を有し、硬度がHRC40〜60である合
金鋳鉄で形成されてなるものである。
動運動を行なう一対の摺動部品からなり、他方の摺動部
品は、重量比でC:2.50〜3.80%、Si:1.
50〜3.00%、Mn:0.50〜1.00%、P:
0.30%以下、S:0.10%以下、Niおよび/ま
たはCu:0.40〜1.00%、Cr:1.20〜
2.00%、Mo:0.40〜1.00%、B:0.0
5〜0.15%、残部Feからなる合金鋳鉄により形成
され、他方の摺動部品は、黒鉛形状がASTM規格のA
タイプ、Bタイプ、DタイプおよびEタイプのいずれか
であるとともに特殊ステダイトが分散した焼戻しマルテ
ンサイト組織を有し、硬度がHRC40〜60である合
金鋳鉄で形成されてなるものである。
【0010】かかる構成の圧縮機用摺動部材において
は、潤滑性に優れた黒鉛組織や耐摩耗性に優れた炭化物
および特殊ステダイトを形成した合金鋳鉄で摺動部品を
構成しているため、相手材とのなじみが良好であり、優
れた耐摩耗性が発揮される。
は、潤滑性に優れた黒鉛組織や耐摩耗性に優れた炭化物
および特殊ステダイトを形成した合金鋳鉄で摺動部品を
構成しているため、相手材とのなじみが良好であり、優
れた耐摩耗性が発揮される。
【0011】従って、潤滑材として作用する成分を含有
しない新規な冷媒を圧縮する圧縮機の構成材料として本
発明の摺動部材を使用することにより優れた耐摩耗性が
発揮され、耐久性の優れた圧縮機が提供される。
しない新規な冷媒を圧縮する圧縮機の構成材料として本
発明の摺動部材を使用することにより優れた耐摩耗性が
発揮され、耐久性の優れた圧縮機が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】次に本発明の圧縮機用摺動部材に
ついて具体的に説明する。この圧縮機用摺動部材は、圧
縮機内で相対的に摺動運動を行う一対の摺動部品のうち
一方の摺動部品が、重量比でC:2.50〜3.80
%、Si:1.50〜3.00%、Mn:0.50〜
1.00%、P:0.30%以下、S:0.10%以
下、Niおよび/またはCu:0.40〜1.00%、
Cr:1.20〜2.00%、Mo:0.40〜1.0
0%、B:0.05〜0.15%、残部Feからなる合
金鋳鉄により形成されている。
ついて具体的に説明する。この圧縮機用摺動部材は、圧
縮機内で相対的に摺動運動を行う一対の摺動部品のうち
一方の摺動部品が、重量比でC:2.50〜3.80
%、Si:1.50〜3.00%、Mn:0.50〜
1.00%、P:0.30%以下、S:0.10%以
下、Niおよび/またはCu:0.40〜1.00%、
Cr:1.20〜2.00%、Mo:0.40〜1.0
0%、B:0.05〜0.15%、残部Feからなる合
金鋳鉄により形成されている。
【0013】この圧縮機用摺動部材は、前記一方の摺動
部品を図4に示すような圧縮機のベーンに適用するとと
もに相手材となる他方の摺動部品を同じくローラに適用
することにより特に好適に用いられる。
部品を図4に示すような圧縮機のベーンに適用するとと
もに相手材となる他方の摺動部品を同じくローラに適用
することにより特に好適に用いられる。
【0014】ここで、前記一方の摺動部品を形成する合
金鋳鉄における各成分の限定理由等について説明する。炭素(C) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄は、重量比で、炭素(C)を
2.50%〜3.80%の割合で含有する。この割合が
2.50%未満であると、最終合金組成において充分な
耐摩耗性を維持するために必要な炭化物の析出量が少な
くなる。一方、3.80%を超えると、原材料の制約か
ら製造が困難になる。けい素(Si) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄は、重量比で、けい素(S
i)を1.50%〜3.00%%の割合で含有する。こ
の割合が1.50%未満であると、最終合金組成におい
て優れた潤滑性を維持するために必要な粒状黒鉛の析出
量が充分ではなくなるとともに鋳造性の悪化を招く。一
方、3.00%を超えると、合金材料の脆化を招く。マンガン(Mn) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄において、マンガン(Mn)
は白銑化傾向を強めるために有効な成分元素であり、そ
の含有割合は硫黄(S)量との関係で下限値を0.50
%とする。一方、1.00%を超える過剰のMnは不要
であるため上限値を1.00%とする。 りん(P)及び硫黄(S) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄において、りん(P)及び硫
黄(S)は原材料中に含有される不可避不純物であり、
それぞれ0.30%以下、0.10%以下とする。ニッケル(Ni)および/または銅(Cu) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄において、ニッケル(Ni)
および/または銅(Cu)は、基地を強化するとともに
焼入性を向上させるのに有効な成分であり、両者を含有
する場合には両者の合計またはいずれか一方の成分のみ
を含有する場合にはその単一成分の含有割合が0.40
%未満では上記の作用乃至効果が充分に奏されない。一
方、両者を含有する場合には両者の合計またはいずれか
一方の成分のみを含有する場合にはその単一成分の含有
割合を1.00%より多くしても、もはやそれに相当す
る作用乃至効果は奏されず、却って材料コストの上昇を
招く。クロム(Cr) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄において、クロム(Cr)は
安定した炭化物を一定量形成するために必要な元素であ
る。その含有割合が1.00%未満では充分な炭化物量
が期待できない。一方、2.00%を超えると、材料の
脆化を招く。モリブデン(Mo) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄において、モリブデン(M
o)は前記ニッケル(Ni)および/または銅(Cu)
とともに基地を強化し、また焼入性を向上させるのに有
効な成分であり、その含有割合が0.40%未満では上
記の作用乃至効果が充分に奏されない。一方、含有割合
を1.00%より多くしても、もはやそれに相当する作
用乃至効果は奏されず、却って材料コストの上昇を招
く。ボロン(B) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄において、ボロン(B)は焼
入性を向上させるのみならず粒状黒鉛を均一に分布させ
る作用乃至効果を奏し、0.05%未満ではかかる作用
乃至効果が充分に奏されない。一方、含有割合が0.1
5%を超えると、粒状黒鉛量を減少させてしまう。基地組織等 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄は、上記の各成分を所定の割
合で含有するとともに、残部にFeを含有する。 この
合金鋳鉄は鋳放し状態では白銑であり、黒鉛化焼鈍を実
施した後に焼入れ処理及び焼戻し処理を施し、最終硬度
をHRC55〜65に設定し、かつ焼戻しマルテンサイ
ト中に粒状黒鉛及び炭化物が均一に分布した組織を有す
るように調整したものである。
金鋳鉄における各成分の限定理由等について説明する。炭素(C) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄は、重量比で、炭素(C)を
2.50%〜3.80%の割合で含有する。この割合が
2.50%未満であると、最終合金組成において充分な
耐摩耗性を維持するために必要な炭化物の析出量が少な
くなる。一方、3.80%を超えると、原材料の制約か
ら製造が困難になる。けい素(Si) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄は、重量比で、けい素(S
i)を1.50%〜3.00%%の割合で含有する。こ
の割合が1.50%未満であると、最終合金組成におい
て優れた潤滑性を維持するために必要な粒状黒鉛の析出
量が充分ではなくなるとともに鋳造性の悪化を招く。一
方、3.00%を超えると、合金材料の脆化を招く。マンガン(Mn) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄において、マンガン(Mn)
は白銑化傾向を強めるために有効な成分元素であり、そ
の含有割合は硫黄(S)量との関係で下限値を0.50
%とする。一方、1.00%を超える過剰のMnは不要
であるため上限値を1.00%とする。 りん(P)及び硫黄(S) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄において、りん(P)及び硫
黄(S)は原材料中に含有される不可避不純物であり、
それぞれ0.30%以下、0.10%以下とする。ニッケル(Ni)および/または銅(Cu) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄において、ニッケル(Ni)
および/または銅(Cu)は、基地を強化するとともに
焼入性を向上させるのに有効な成分であり、両者を含有
する場合には両者の合計またはいずれか一方の成分のみ
を含有する場合にはその単一成分の含有割合が0.40
%未満では上記の作用乃至効果が充分に奏されない。一
方、両者を含有する場合には両者の合計またはいずれか
一方の成分のみを含有する場合にはその単一成分の含有
割合を1.00%より多くしても、もはやそれに相当す
る作用乃至効果は奏されず、却って材料コストの上昇を
招く。クロム(Cr) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄において、クロム(Cr)は
安定した炭化物を一定量形成するために必要な元素であ
る。その含有割合が1.00%未満では充分な炭化物量
が期待できない。一方、2.00%を超えると、材料の
脆化を招く。モリブデン(Mo) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄において、モリブデン(M
o)は前記ニッケル(Ni)および/または銅(Cu)
とともに基地を強化し、また焼入性を向上させるのに有
効な成分であり、その含有割合が0.40%未満では上
記の作用乃至効果が充分に奏されない。一方、含有割合
を1.00%より多くしても、もはやそれに相当する作
用乃至効果は奏されず、却って材料コストの上昇を招
く。ボロン(B) 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄において、ボロン(B)は焼
入性を向上させるのみならず粒状黒鉛を均一に分布させ
る作用乃至効果を奏し、0.05%未満ではかかる作用
乃至効果が充分に奏されない。一方、含有割合が0.1
5%を超えると、粒状黒鉛量を減少させてしまう。基地組織等 圧縮機用ベーンに好適に適用される前記一方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄は、上記の各成分を所定の割
合で含有するとともに、残部にFeを含有する。 この
合金鋳鉄は鋳放し状態では白銑であり、黒鉛化焼鈍を実
施した後に焼入れ処理及び焼戻し処理を施し、最終硬度
をHRC55〜65に設定し、かつ焼戻しマルテンサイ
ト中に粒状黒鉛及び炭化物が均一に分布した組織を有す
るように調整したものである。
【0015】次に摺動部材のうち、圧縮機のローラに好
適に適用される他方の摺動部品を形成する合金鋳鉄につ
いて述べる。圧縮機のローラに好適に適用される他方の
摺動部品を形成する合金鋳鉄は、黒鉛形状がASTM規
格のAタイプ、Bタイプ、DタイプおよびEタイプのい
ずれかであり、特殊ステダイトが分散した焼戻しマルテ
ンサイト組織を有し、硬度がHRC40〜60の範囲に
ある鋳鉄である。
適に適用される他方の摺動部品を形成する合金鋳鉄につ
いて述べる。圧縮機のローラに好適に適用される他方の
摺動部品を形成する合金鋳鉄は、黒鉛形状がASTM規
格のAタイプ、Bタイプ、DタイプおよびEタイプのい
ずれかであり、特殊ステダイトが分散した焼戻しマルテ
ンサイト組織を有し、硬度がHRC40〜60の範囲に
ある鋳鉄である。
【0016】上記ASTM規格のAタイプ、Bタイプ、
DタイプおよびEタイプの黒鉛形状においては、いずれ
も黒鉛自体の潤滑性が良好であるとともに圧縮機用潤滑
油との湿潤性にも優れているため、摺動部の焼付きや異
常摩耗を引き起こすおそれが少ない。
DタイプおよびEタイプの黒鉛形状においては、いずれ
も黒鉛自体の潤滑性が良好であるとともに圧縮機用潤滑
油との湿潤性にも優れているため、摺動部の焼付きや異
常摩耗を引き起こすおそれが少ない。
【0017】上記鋳鉄は、例えば、重量比でC:3.0
0%〜3.60%、Si:1.50%〜2.50%、M
n:0.50%〜1.00%、P:0.30%以下、C
r:0.50%〜1.00%、Ni:0.15〜0.2
5%、Mo:0.25%以下、B:0.02〜0.06
%、残部Feからなる鋳造合金を熱処理することにより
製造される。
0%〜3.60%、Si:1.50%〜2.50%、M
n:0.50%〜1.00%、P:0.30%以下、C
r:0.50%〜1.00%、Ni:0.15〜0.2
5%、Mo:0.25%以下、B:0.02〜0.06
%、残部Feからなる鋳造合金を熱処理することにより
製造される。
【0018】ここで、他方の摺動部品を構成する上記合
金鋳鉄の組成範囲の限定理由等について以下に説明す
る。炭素(C) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有される炭素(C)は黒
鉛および炭化物の形成元素であり、その含有割合は、重
量比で、3.00%〜3.60%である。この割合が
3.00%未満であると、ASTM規格のAタイプ、B
タイプ、DタイプおよびEタイプのうちのいずれかのタ
イプの黒鉛形状が得られにくく、また耐摩耗性を発揮す
る高硬度の炭化物も形成されにくくなる。一方、炭素
(C)の含有割合が3.60%を超えると、黒鉛が粗大
化して正常な金属組織が得られない。けい素(Si) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるけい素(Si)
は上記の炭素(C)とともに黒鉛の形成を促進する作用
乃至効果を奏し、その含有割合は、重量比で、1.50
%〜2.50%である。この含有割合が1.50%未満
では、充分な黒鉛量が得られず、材料の脆化を招く。一
方、けい素(Si)の含有割合が2.50%を超える
と、黒鉛が粗大化し、目的とする黒鉛組織が得られな
い。マンガン(Mn) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるマンガン(M
n)は基地に固溶して基地の安定化に寄与する元素であ
り、その含有割合は、重量比で、0.50%〜1.00
%である。この含有割合が0.50%未満では、上記の
安定化が不充分なものとなる。一方、マンガン(Mn)
の含有割合を1.00%より多くしても、それに相当す
る安定化効果の大きな伸びは期待できない。りん(P) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるりん(P)は、
FeおよびCとともに高硬度の特殊ステダイトを形成し
合金の耐摩耗性を向上させる元素であり、その含有割合
は0.30%以下である。この含有割合が0.30%を
超えると、ステダイトの析出量が過剰となり合金の脆化
を招く。クロム(Cr) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるクロム(Cr)
は、強力な炭化物形成元素であり、その含有割合は、
0.50%〜1.00%である。この含有割合が0.5
0%未満では、炭化物の生成量が少なく充分な耐摩耗性
が得られない。一方、1.00%を超えると、炭化物量
が過剰になり合金の被削性が悪化する。ニッケル(Ni) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるニッケル(N
i)は、基地の強化と熱処理性の改善に有効な元素であ
り、その含有割合は、0.15%〜0.25%である、
この含有割合が0.15%未満であると、上記の改善効
果が充分に期待できない。一方、0.25%より多く含
有させてもそれに相当する効果は奏されず、却って原料
コストの上昇を招く。モリブデン(Mo) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるモリブデン(M
o)は合金鋳鉄の機械的性質を改善する効果が大きい元
素であり、その含有率は0.25%以下である。この含
有率を0.25%より多くしてもそれに相当する効果は
奏されず、却って原料コストの上昇を招く。ボロン(B) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるボロン(B)は
高硬度の炭化物を形成して合金の耐摩耗性を向上させる
元素であり、その含有率は0.02%〜0.06%であ
る。この含有率が0.02%未満では高硬度の炭化物の
析出量が不足して耐摩耗性の向上が充分ではない。一
方、0.06%を超えると、炭化物の析出量が過剰にな
り合金の強度および被削性の低下を招く。基地組織等 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄においては、Niを添加する
ことにより焼入れ焼戻し性を改善しており、かつ焼戻し
によるマルテンサイト基地にボロン炭化物を含む高硬度
の特殊ステダイトが分散しているため耐摩耗性に優れて
いる。また、硬度がHRC40〜60に調整されている
ため相手材としての圧縮機用ベーンに好適に適用される
前記一方の摺動部品との相性が優れている。
金鋳鉄の組成範囲の限定理由等について以下に説明す
る。炭素(C) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有される炭素(C)は黒
鉛および炭化物の形成元素であり、その含有割合は、重
量比で、3.00%〜3.60%である。この割合が
3.00%未満であると、ASTM規格のAタイプ、B
タイプ、DタイプおよびEタイプのうちのいずれかのタ
イプの黒鉛形状が得られにくく、また耐摩耗性を発揮す
る高硬度の炭化物も形成されにくくなる。一方、炭素
(C)の含有割合が3.60%を超えると、黒鉛が粗大
化して正常な金属組織が得られない。けい素(Si) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるけい素(Si)
は上記の炭素(C)とともに黒鉛の形成を促進する作用
乃至効果を奏し、その含有割合は、重量比で、1.50
%〜2.50%である。この含有割合が1.50%未満
では、充分な黒鉛量が得られず、材料の脆化を招く。一
方、けい素(Si)の含有割合が2.50%を超える
と、黒鉛が粗大化し、目的とする黒鉛組織が得られな
い。マンガン(Mn) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるマンガン(M
n)は基地に固溶して基地の安定化に寄与する元素であ
り、その含有割合は、重量比で、0.50%〜1.00
%である。この含有割合が0.50%未満では、上記の
安定化が不充分なものとなる。一方、マンガン(Mn)
の含有割合を1.00%より多くしても、それに相当す
る安定化効果の大きな伸びは期待できない。りん(P) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるりん(P)は、
FeおよびCとともに高硬度の特殊ステダイトを形成し
合金の耐摩耗性を向上させる元素であり、その含有割合
は0.30%以下である。この含有割合が0.30%を
超えると、ステダイトの析出量が過剰となり合金の脆化
を招く。クロム(Cr) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるクロム(Cr)
は、強力な炭化物形成元素であり、その含有割合は、
0.50%〜1.00%である。この含有割合が0.5
0%未満では、炭化物の生成量が少なく充分な耐摩耗性
が得られない。一方、1.00%を超えると、炭化物量
が過剰になり合金の被削性が悪化する。ニッケル(Ni) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるニッケル(N
i)は、基地の強化と熱処理性の改善に有効な元素であ
り、その含有割合は、0.15%〜0.25%である、
この含有割合が0.15%未満であると、上記の改善効
果が充分に期待できない。一方、0.25%より多く含
有させてもそれに相当する効果は奏されず、却って原料
コストの上昇を招く。モリブデン(Mo) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるモリブデン(M
o)は合金鋳鉄の機械的性質を改善する効果が大きい元
素であり、その含有率は0.25%以下である。この含
有率を0.25%より多くしてもそれに相当する効果は
奏されず、却って原料コストの上昇を招く。ボロン(B) 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄に含有されるボロン(B)は
高硬度の炭化物を形成して合金の耐摩耗性を向上させる
元素であり、その含有率は0.02%〜0.06%であ
る。この含有率が0.02%未満では高硬度の炭化物の
析出量が不足して耐摩耗性の向上が充分ではない。一
方、0.06%を超えると、炭化物の析出量が過剰にな
り合金の強度および被削性の低下を招く。基地組織等 圧縮機用ローラに好適に適用される前記他方の摺動部品
の形成材料である合金鋳鉄においては、Niを添加する
ことにより焼入れ焼戻し性を改善しており、かつ焼戻し
によるマルテンサイト基地にボロン炭化物を含む高硬度
の特殊ステダイトが分散しているため耐摩耗性に優れて
いる。また、硬度がHRC40〜60に調整されている
ため相手材としての圧縮機用ベーンに好適に適用される
前記一方の摺動部品との相性が優れている。
【0019】なお、上記特殊ステダイトの合金組織全体
に対する生成量は面積比で3.0〜10.0%の範囲に
設定するとよい。特殊ステダイトの面積比が3.0%未
満の場合は、相手材に対する硬度が不足して摩耗量が増
大する傾向がある。一方、この面積比が10.0%を超
える場合は、潤滑性が低下して焼付きを発生するおそれ
がある。
に対する生成量は面積比で3.0〜10.0%の範囲に
設定するとよい。特殊ステダイトの面積比が3.0%未
満の場合は、相手材に対する硬度が不足して摩耗量が増
大する傾向がある。一方、この面積比が10.0%を超
える場合は、潤滑性が低下して焼付きを発生するおそれ
がある。
【0020】
【実施例】次に本発明の実施例を示す。実施例 この実施例では、一方の摺動部品として図4に示すよう
な圧縮機のベーンを作成するとともに、相手材となる他
方の摺動部品として圧縮機のローラを作成した例を示
す。
な圧縮機のベーンを作成するとともに、相手材となる他
方の摺動部品として圧縮機のローラを作成した例を示
す。
【0021】まず、表1に示す組成を有する実施例1〜
2および比較例の鋳造合金を調製した。
2および比較例の鋳造合金を調製した。
【0022】
【表1】 次いで、得られたベーン用の鋳造合金を機械加工するこ
とにより図1および図4に示すような板状のベーンを形
成し、得られたベーンを加熱炉中で温度950℃にて2
時間保持して黒鉛化焼鈍を実施し、しかる後に温度88
0℃にて30分間焼入れ処理して油冷し、引き続き温度
320℃にて2時間保持して焼戻し処理を行い、実施例
1〜2および比較例のベーンを製造した。ここで、実施
例1のベーンの硬度はHRC61.8であり、実施例2
のベーンの硬度はHRC61.0であった。また、比較
例のベーンの硬度はHRC57.0であった。
とにより図1および図4に示すような板状のベーンを形
成し、得られたベーンを加熱炉中で温度950℃にて2
時間保持して黒鉛化焼鈍を実施し、しかる後に温度88
0℃にて30分間焼入れ処理して油冷し、引き続き温度
320℃にて2時間保持して焼戻し処理を行い、実施例
1〜2および比較例のベーンを製造した。ここで、実施
例1のベーンの硬度はHRC61.8であり、実施例2
のベーンの硬度はHRC61.0であった。また、比較
例のベーンの硬度はHRC57.0であった。
【0023】一方、得られたローラ用の鋳造合金を温度
880℃にて30分間焼入れ処理して油冷し、引き続き
温度250℃にて2時間保持して焼戻し処理を行い、機
械加工することにより実験例の円板状ローラを製造し
た。得られたローラは黒鉛形状がASTM規格のAタイ
プであり、ボロン(B)を0.04%の割合で含有して
いるため特殊ステダイトが分散した焼戻しマルテンサイ
ト組織を有し、硬度はHRC50.5であった。
880℃にて30分間焼入れ処理して油冷し、引き続き
温度250℃にて2時間保持して焼戻し処理を行い、機
械加工することにより実験例の円板状ローラを製造し
た。得られたローラは黒鉛形状がASTM規格のAタイ
プであり、ボロン(B)を0.04%の割合で含有して
いるため特殊ステダイトが分散した焼戻しマルテンサイ
ト組織を有し、硬度はHRC50.5であった。
【0024】以上のようにして作成したベーンおよびロ
ーラの耐摩耗性を評価するために、これらのベーンとロ
ーラとを組み合せる一方、比較例のベーンと実施例のロ
ーラとを組み合せ、図2に示す摩耗試験装置を使用して
摩耗試験を行なった。
ーラの耐摩耗性を評価するために、これらのベーンとロ
ーラとを組み合せる一方、比較例のベーンと実施例のロ
ーラとを組み合せ、図2に示す摩耗試験装置を使用して
摩耗試験を行なった。
【0025】ここで、図2に示す摩耗試験装置は、冷媒
10および潤滑油11を充填した密閉容器12内にベー
ン取付治具13およびローラ試験片14を対向配置し、
回転自在のベーン取付治具13の下面に3枚のベーン3
の一端をそれぞれ固定する一方、各ベーンの先端(ノー
ズ部)がローラ試験片14の上面に摺接するように構成
されたものである。
10および潤滑油11を充填した密閉容器12内にベー
ン取付治具13およびローラ試験片14を対向配置し、
回転自在のベーン取付治具13の下面に3枚のベーン3
の一端をそれぞれ固定する一方、各ベーンの先端(ノー
ズ部)がローラ試験片14の上面に摺接するように構成
されたものである。
【0026】 なお、摩耗試験は下記の条件で行なった。 試験条件 荷重:150kg 回転数:500rpm 冷媒:R134a 油:R134a対策油 温度:110℃ 時間:3時間 圧力:13kg/cm2 この摩耗試験後における各ベーン先端部の摩耗幅および
ローラの摩耗量を測定したところ図3に示す結果を得
た。なお、ベーンの摩耗幅は、図1に示すように各ベー
ン3の先端部に生じた磨耗部の幅Wで示した。結果の検討 図3に示す結果から明らかなように、従来材で形成した
比較例のベーンの摩耗幅は平均値で0.85mmと極め
て大きいのに対し、実施例1および実施例2のベーンの
摩耗幅はそれぞれ0.25mm、0.20mmと1/3
〜1/4程度に減少しており、本実施例のベーンは耐摩
耗性が大幅に向上していることが確認できた。
ローラの摩耗量を測定したところ図3に示す結果を得
た。なお、ベーンの摩耗幅は、図1に示すように各ベー
ン3の先端部に生じた磨耗部の幅Wで示した。結果の検討 図3に示す結果から明らかなように、従来材で形成した
比較例のベーンの摩耗幅は平均値で0.85mmと極め
て大きいのに対し、実施例1および実施例2のベーンの
摩耗幅はそれぞれ0.25mm、0.20mmと1/3
〜1/4程度に減少しており、本実施例のベーンは耐摩
耗性が大幅に向上していることが確認できた。
【0027】一方、ベーン材と摺動するローラの摩耗量
は、比較例のベーンとの組合せにおいて0.5μmであ
るのに対し、実施例1、実施例2のベーンとの組合せに
おいてはいずれも0.3μmであり、実施例1〜2のベ
ーンとローラとの組み合わせでは両者のなじみ性が良好
であり、相手攻撃性も少ないことが判明した。
は、比較例のベーンとの組合せにおいて0.5μmであ
るのに対し、実施例1、実施例2のベーンとの組合せに
おいてはいずれも0.3μmであり、実施例1〜2のベ
ーンとローラとの組み合わせでは両者のなじみ性が良好
であり、相手攻撃性も少ないことが判明した。
【0028】また、試験後における各ローラの表面粗さ
を測定したところ、比較例のベーンと組合せた場合は
0.60μmであるのに対し、実施例1、実施例2のベ
ーンと組み合わせた場合にはいずれも0.50μmであ
り、実施例のベーンとローラとの組み合わせによれば良
好な摺動特性が得られることが判明した。
を測定したところ、比較例のベーンと組合せた場合は
0.60μmであるのに対し、実施例1、実施例2のベ
ーンと組み合わせた場合にはいずれも0.50μmであ
り、実施例のベーンとローラとの組み合わせによれば良
好な摺動特性が得られることが判明した。
【0029】このように本実施例の摺動部材によれば、
潤滑成分を含有しないR134a冷媒雰囲気においても
優れた耐摩耗性を発揮することが実証された。従って、
これらの摺動部材を圧縮機に適用することにより、冷媒
の種類が変更された場合においても、耐久性に優れた圧
縮機を提供することが可能となる。
潤滑成分を含有しないR134a冷媒雰囲気においても
優れた耐摩耗性を発揮することが実証された。従って、
これらの摺動部材を圧縮機に適用することにより、冷媒
の種類が変更された場合においても、耐久性に優れた圧
縮機を提供することが可能となる。
【0030】
【発明の効果】以上の通り、本発明の圧縮機用摺動部材
によれば、潤滑性に優れた黒鉛組織や耐摩耗性に優れた
炭化物および特殊ステダイトを形成した合金鋳鉄で摺動
部品を構成しているため、相手材とのなじみが良好であ
り、優れた耐摩耗性が発揮される。
によれば、潤滑性に優れた黒鉛組織や耐摩耗性に優れた
炭化物および特殊ステダイトを形成した合金鋳鉄で摺動
部品を構成しているため、相手材とのなじみが良好であ
り、優れた耐摩耗性が発揮される。
【0031】従って、潤滑剤として作用する成分を含有
しない新規な冷媒を圧縮する圧縮機の構成材料として本
発明の摺動部材を使用した場合においても優れた耐摩耗
性が発揮され、耐久性に優れた圧縮機を提供することが
できる。
しない新規な冷媒を圧縮する圧縮機の構成材料として本
発明の摺動部材を使用した場合においても優れた耐摩耗
性が発揮され、耐久性に優れた圧縮機を提供することが
できる。
【図1】摺動部材としてのベーンの一例を示す斜視図で
ある。
ある。
【図2】耐摩耗性を評価するために使用した摩耗試験機
の構成を示す概略図である。
の構成を示す概略図である。
【図3】実験例における摺動部品の摩耗試験結果を示す
グラフである。
グラフである。
【図4】ロータリ式圧縮機の要部の構造の一例を示す断
面図である。
面図である。
1…シリンダ 2…ベーン溝 3…ベーン 4…回転軸 5…ボス部 6…ローラ 10…冷媒 11…潤滑油 12…密閉容器 13…ベーン取付治具 14…ローラ試験片
Claims (2)
- 【請求項1】 圧縮機内で相対的に摺動運動を行う一対
の摺動部品からなる圧縮機用摺動部材であって、一方の
摺動部品が、重量比でC:2.50〜3.80%、S
i:1.50〜3.00%、Mn:0.50〜1.00
%、P:0.30%以下、S:0.10%以下、Niお
よび/またはCu:0.40〜1.00%、Cr:1.
20〜2.00%、Mo:0.40〜1.00%、B:
0.05〜0.15%、残部Feからなる合金鋳鉄によ
り形成され、 他方の摺動部品が、黒鉛形状がASTM規格のAタイ
プ、Bタイプ、DタイプおよびEタイプのいずれかであ
るとともに特殊ステダイトが分散した焼戻しマルテンサ
イト組織を有し、硬度がHRC40〜60である合金鋳
鉄で形成されていることを特徴とする圧縮機用摺動部
材。 - 【請求項2】 前記一方の摺動部品がシリンダ内を偏心
回転運動するローラに摺接する圧縮機用ベーンであり、
前記他方の摺動部品がローラである請求項1記載の圧縮
機用摺動部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28158495A JPH08232038A (ja) | 1994-11-02 | 1995-10-30 | 圧縮機用摺動部材 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26988794 | 1994-11-02 | ||
JP6-269887 | 1994-11-02 | ||
JP28158495A JPH08232038A (ja) | 1994-11-02 | 1995-10-30 | 圧縮機用摺動部材 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08232038A true JPH08232038A (ja) | 1996-09-10 |
Family
ID=26548962
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP28158495A Pending JPH08232038A (ja) | 1994-11-02 | 1995-10-30 | 圧縮機用摺動部材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH08232038A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103074540A (zh) * | 2013-01-10 | 2013-05-01 | 山东正诺机械科技有限公司 | 一种用于刹车盘的铸铁及其制造的刹车盘的热处理方法 |
WO2013073821A1 (en) * | 2011-11-14 | 2013-05-23 | Lg Electronics Inc. | Alloy cast iron and manufacturing method of rolling piston using the same |
CN103898399A (zh) * | 2014-04-15 | 2014-07-02 | 松下·万宝(广州)压缩机有限公司 | 一种高耐磨材料及其制造方法和应用 |
JP2015504481A (ja) * | 2011-11-14 | 2015-02-12 | エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド | 合金鋳鉄及びそれを用いたベーンの製造方法 |
CN116891973A (zh) * | 2023-08-14 | 2023-10-17 | 华铸装备科技(广东)有限公司 | 一种耐高温耐腐蚀铸铁及其制备方法 |
-
1995
- 1995-10-30 JP JP28158495A patent/JPH08232038A/ja active Pending
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013073821A1 (en) * | 2011-11-14 | 2013-05-23 | Lg Electronics Inc. | Alloy cast iron and manufacturing method of rolling piston using the same |
CN103946407A (zh) * | 2011-11-14 | 2014-07-23 | Lg电子株式会社 | 合金铸铁和采用该合金铸铁的旋转活塞的制造方法 |
JP2015504481A (ja) * | 2011-11-14 | 2015-02-12 | エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド | 合金鋳鉄及びそれを用いたベーンの製造方法 |
EP2780486A4 (en) * | 2011-11-14 | 2015-11-18 | Lg Electronics Inc | CAST ALLOY AND METHOD FOR MANUFACTURING BLADE USING THE SAME |
CN103946407B (zh) * | 2011-11-14 | 2016-08-24 | Lg电子株式会社 | 合金铸铁和采用该合金铸铁的旋转活塞的制造方法 |
CN103074540A (zh) * | 2013-01-10 | 2013-05-01 | 山东正诺机械科技有限公司 | 一种用于刹车盘的铸铁及其制造的刹车盘的热处理方法 |
CN103898399A (zh) * | 2014-04-15 | 2014-07-02 | 松下·万宝(广州)压缩机有限公司 | 一种高耐磨材料及其制造方法和应用 |
CN116891973A (zh) * | 2023-08-14 | 2023-10-17 | 华铸装备科技(广东)有限公司 | 一种耐高温耐腐蚀铸铁及其制备方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR101294671B1 (ko) | 구상흑연주철 및 그를 이용한 로터리 압축기용 베인의 제조방법 | |
KR101404754B1 (ko) | 합금주철 및 그를 이용한 로터리 압축기의 롤링피스톤의 제조방법 | |
KR101409877B1 (ko) | 합금주철 및 그를 이용한 로터리 압축기용 베인의 제조방법 | |
US5423664A (en) | Iron-base alloy for rotary type compressors | |
JPH01134092A (ja) | コンプレッサ用ローラ | |
JPH08232038A (ja) | 圧縮機用摺動部材 | |
JP2001107173A (ja) | 回転式圧縮機用ローラ | |
JPH0790512A (ja) | 耐摩耗性のすぐれたコンプレッサ用銅溶浸Fe基焼結合金製摺動部材 | |
JPH0551708A (ja) | 圧縮機用耐摩耗材料およびその材料を使用した圧縮機 | |
JP3722599B2 (ja) | 回転式圧縮機 | |
CN112576507A (zh) | 一种压缩机活塞的制造方法、压缩机活塞 | |
JPH0790510A (ja) | 耐摩耗性のすぐれたコンプレッサ用銅溶浸Fe基焼結合金製摺動部材 | |
JPH07188829A (ja) | 耐摩耗性のすぐれたコンプレッサ用鉛含浸Fe基焼結合金製摺動部材 | |
JPH0790323A (ja) | 耐摩耗性のすぐれたコンプレッサ用鉛含浸Fe基焼結合金製摺動部材 | |
JP3381626B2 (ja) | 高面圧下ですぐれた耐摩耗性を発揮する遊離黒鉛析出鉄系焼結材料製軸受 | |
JPH06248304A (ja) | 耐摩耗性のすぐれたコンプレッサ用Fe基焼結合金製摺動部材 | |
JPH0790324A (ja) | 耐摩耗性のすぐれたコンプレッサ用銅溶浸Fe基焼結合金製摺動部材 | |
JPH0790511A (ja) | 耐摩耗性のすぐれたコンプレッサ用鉛含浸Fe基焼結合金製摺動部材 | |
JPH07301187A (ja) | 圧縮機 | |
JPH06248305A (ja) | 耐摩耗性のすぐれたコンプレッサ用銅溶浸Fe基焼結合金製摺動部材 | |
JPH06330225A (ja) | 耐摩耗性のすぐれたコンプレッサ用Fe基焼結合金製摺動部材 | |
JPH07173570A (ja) | 回転式圧縮機用ローラー | |
JP2600245B2 (ja) | ベーン材 | |
JPS60159154A (ja) | 耐摩耗焼結摺動材 | |
JPH06184692A (ja) | 回転式圧縮機ローラ |