JPH08225794A - ステンレス薄鋼板用水溶性圧延油と圧延方法 - Google Patents

ステンレス薄鋼板用水溶性圧延油と圧延方法

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Publication number
JPH08225794A
JPH08225794A JP3091495A JP3091495A JPH08225794A JP H08225794 A JPH08225794 A JP H08225794A JP 3091495 A JP3091495 A JP 3091495A JP 3091495 A JP3091495 A JP 3091495A JP H08225794 A JPH08225794 A JP H08225794A
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JP
Japan
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rolling
oil
emulsion
acid
stainless steel
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Withdrawn
Application number
JP3091495A
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English (en)
Inventor
Hideo Yamamoto
秀男 山本
Keiji Matsumoto
圭司 松本
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Filing date
Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ワークロールへの圧延材酸化皮膜であるコー
ティング皮膜を早期に発生させ、かつむらをなくし、優
れた光沢のステンレス鋼板の圧延を可能にする圧延油お
よびそれを用いて700m/min以上という高速で行うステン
レス薄鋼板の圧延を行う。 【構成】 合成エステルを基油として下記成分(i) ない
し(iii) を配合し、エマルションの平均粒径を5μm未
満とする。エマルションの濃度を3〜15%とし、かつpH
を8.5 以上としてもよい。 (i) 炭素数12〜36の脂肪酸あるいは二塩基酸のアミン
塩、およびアルキル基の炭素数6〜18の正燐酸または/
および亜燐酸のモノまたはジエステルと炭素数1〜18の
脂肪族アルキルアミンとの塩から成る群から選ばれた少
なくとも1種2〜10wt%、(ii)アルキル基の炭素数2〜
18のアルカノールアミン2.5 〜10wt%、(iii) 炭素数4
〜18のアルコール2〜10wt%。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ステンレス薄鋼板用水
溶性圧延油とそれを使用したステンレス薄鋼板の冷間圧
延方法に関し、詳述すれば、圧延ロールに安定したコー
ティング皮膜を形成させ、焼付き疵およびオイルピット
の発生を生じさせることなく高速で冷間圧延を可能とす
る圧延油とそれを使用した高光沢のステンレス薄鋼板の
冷間圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ステンレス薄鋼板(以下、単に
鋼板とも言う)の圧延は、圧延された製品の表面光沢が
優れていることが要求され、かつ圧延材の変形抵抗が高
く、加工硬化し易いことから、圧延油の導入量が少な
く、高い圧延圧力が得られる小径ワークロールのセンジ
ミアミルが使用されていた。圧延油としては低粘度の鉱
油を基油とした不水溶性圧延油、あるいはこれを水溶性
化した圧延油が使用されていた。しかし、センジミアミ
ルは圧延ロールが20段と圧延機の構造が複雑でかつロー
ル径が60〜80mmと小径であるため圧延速度が制約され、
生産性が低いという問題があった。
【0003】そこで近年、生産性を向上させるため、圧
延機としては、構造が簡便でかつ形状制御機能の良い、
圧延ロールが12段のクラスターミル (ロール径:80〜12
0 mm) の開発が行われ、また、圧延油としては特開平3
−19217 号公報および特開平4−118101号公報に示され
るような高潤滑性の合成エステルを基油とした水溶性の
圧延油の開発が行われ高速化の試みが進められてきた。
【0004】なお、700 m/min 以上という高速圧延を実
施すると、不水溶性の鉱油系圧延油を使用した場合に
は、冷却性不足および潤滑性不足から焼付き疵の発生、
さらには破断事故時に圧延油に着火する等の問題があっ
た。また高潤滑性とした場合においては圧延ロールと圧
延材との間、つまりロールバイトに導入される油量が増
し、光沢性の低下が問題となる。また低粘度油は流動性
が高く冷却効率は増すが引火点が下がるため着火の問題
は深刻である。
【0005】ここに、水溶性圧延油の場合は、着火事故
の恐れは解決するが、冷却性が増すため、不水溶性圧延
油よりロールバイトでの圧延油粘度が高くなり、油膜が
厚くなって十分な光沢性が得られないという問題があっ
た。特に、水溶性圧延油の場合、不水溶性圧延油の使用
時に見られた圧延ロール表面の黒褐色のコーティング皮
膜の発生が少なく、またそれが発生しても幅方向にむら
を生じ、十分な光沢性が得られないことが大きな問題で
あった。このコーティング皮膜の発生メカニズムは十分
解明されていないが、コーティング物質は圧延材成分の
酸化物であることが判っている。また、コーティング皮
膜によりロール表面は滑らかになることも判明してい
る。
【0006】ところで、従来のセンジミアミルでの低速
圧延では圧延ロールへのコーティング皮膜の発生は極め
て容易で数十mの圧延で均一に発生するため、圧延の最
終パスでのワークロールを新ロールに交換しても、なん
ら光沢性に問題はなかった。特に光沢性を重視した圧延
では圧延ロールに疵が発生すると次のパスでロールを交
換するが、低速圧延である限りは問題はなかった。
【0007】しかしながら、今日のように圧延効率の更
なる向上が求められている状況下では、高速圧延を行う
際には、早急にコーティング皮膜が発生しないと圧延長
手方向に光沢差がつく等の問題が生じ、その解決が求め
られており、特に水溶性圧延油を使用した際には問題と
なっていた。
【0008】以上より、ステンレス薄鋼板の圧延、特に
高速圧延において、高光沢性能を維持しつつ高潤滑性能
を満足させる圧延油および圧延方法は見い出されていな
いのが現状である。
【0009】前述の特開平4−118101号公報に開示する
水溶性圧延油もステンレス薄鋼板の冷間圧延に際しての
焼付けを防止し、オイルピットの生成を防止するために
極圧剤として有機性リン酸エステル芳香族アミン塩を用
いているが、ワークロールへのコーティング皮膜の形成
については何らの開示もなく、むしろ、後述するような
リン酸エステル脂肪族アミン塩の使用を排除している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高速
圧延を可能にする水溶性圧延油とそれを用いたステンレ
ス薄鋼板の効率的な高速圧延方法を提供することであ
る。
【0011】より具体的には、本発明の目的は、ワーク
ロールへの圧延材酸化皮膜のコーティングを早期に発生
させ、かつむらをなくし、優れた光沢のステンレス鋼板
の圧延を可能にする圧延油およびそれを用いて700m/min
以上という高速圧延を可能とするステンレス薄鋼板の圧
延方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ステンレ
ス鋼板の圧延において、高速におけるロールバイト内へ
の圧延油導入量を減少させるための圧延油組成、および
ワークロールに発生する圧延材の酸化皮膜からなるコー
ティング皮膜の生成条件を種々検討した結果、次のよう
な知見を得て、本発明を完成した。
【0013】(a) 圧力粘度係数の小さい合成エステルを
基油とし、これに特定の脂肪酸あるいは二塩基酸のアミ
ン塩、アルカノールアミン、アルコールを添加すること
で薄膜化できること。
【0014】(b) 水溶性圧延油のpHによっては、圧延時
にロールバイト内に生成された酸化皮膜が水中に溶解
し、コーティング皮膜の安定生成を阻害していること。
【0015】(c) 各圧延パス時の油膜厚、および圧延油
のpH、エマルション粒径および濃度を適正範囲に制御す
れば、コーティング皮膜は不水溶性圧延油を用いた圧延
と同等に安定して発生・維持できること。
【0016】ここに、本発明の要旨とするところは、次
の通りである。 (1) 40℃での粘度が7〜150 cSt の合成エステルを基油
として下記成分(i) ないし(iii) を配合するとともに、
エマルションの平均粒径を5μm未満としたことを特徴
としたステンレス薄鋼板用水溶性圧延油。
【0017】(i) 炭素数12〜36の脂肪酸もしくは二塩基
酸のアミン塩、およびアルキル基の炭素数6〜18の正燐
酸または/および亜燐酸のモノまたはジエステルと炭素
数1〜18の脂肪族アルキルアミンとの塩から成る群から
選ばれた少なくとも1種2〜10wt%、(ii)アルキル基の
炭素数2〜18のアルカノールアミン2.5 〜10wt%、(ii
i) 炭素数4〜18のアルコール2〜10wt%。
【0018】(2) 前記成分(i) として前記脂肪酸あるい
は二塩基酸のアミン塩を配合し、エマルションの濃度を
3〜15vol%とし、かつpHを8.5 以上のアルカリ性とした
上記(1) 記載のステンレス薄鋼板用水溶性圧延油。
【0019】(3) 上記(1) または(2) に記載された圧延
油を用い、圧延する鋼板の板厚 (t:mm) に対して、使
用する圧延油の濃度 (C:vol%) 、エマルションの平均
粒径 (d:μm)を次式(1) の関係が満足されるよう調整
して圧延することを特徴とするステンレス薄鋼板の冷間
圧延方法。
【0020】
【数1】
【0021】
【作用】次に、本発明の作用について、各成分の組成範
囲ならびに圧延条件を上述のように規定した理由ととも
に、説明する。まず、鉱油を基油とした不水溶性圧延油
に比べ、本発明におけるように水溶性圧延油を使用する
とワークロールに安定してコーティング皮膜が発生しな
いことについて説明する。
【0022】ロールへのコーティング皮膜は不水溶性油
に乳化剤を添加して水溶性とした場合にも発生し難いこ
とから、第1に冷却性能が増しロールバイトでの圧延油
粘度が高くなり、かつ圧延圧力による圧延油粘度の増加
が加わり、油膜が厚くなったことが考えられる。そこで
本発明にあっては油膜厚を下げるように組成を規定する
のである。
【0023】すなわち、圧延時のロールバイト入口部に
導入される圧延油の油膜厚の大小は、ニート油 (圧延油
の原液) で導入すると仮定して、一般的に(2) 式の油膜
厚さ当量 (td ) で示される。これによると、導入量は
圧延油の粘度に比例することが明らかである。
【0024】また、粘度は圧力および温度により変化し
(3) 式のように示され、ロールバイトでの圧力変化が温
度変化に対して著しく大きいため、圧力粘度係数の影響
を強く受ける。したがって圧力粘度係数は小さい方が導
入量は少なくなる。
【0025】
【数2】
【0026】ただし、η:ロールバイト入口での粘度、
η0 :常温常圧での粘度 A:圧力粘度係数、 P:圧力 (材料の降伏応力に相
当) B:温度粘度係数、 T:絶対温度、 U1 :材料速度 U2 :ロール速度、 α:噛込み角、 P:材料の降伏
応力 したがって、本発明にあっては基本的には次のような基
油を選定した。
【0027】すなわち、粘度が40℃で7〜150 cSt で、
かつ好ましくは圧力粘度係数が12 GPa-1以下の合成エス
テルを基油とした。これは40℃での粘度が、7cSt 未満
では油膜厚さが薄くなり過ぎ、また、後述する極圧添加
剤の十分な量を摩擦面に導入させることができないこと
から、十分な潤滑性が得られない。また、150 cSt を超
えると、あるいはさらには圧力粘度係数12 GPa-1超える
と、後述のプレートアルト量 (材料、ロールに付着する
油量) の調整を行っても、導入量が多くなり過ぎ圧延材
の十分な光沢性が維持できない。好ましくは7〜100 cS
t である。
【0028】なお、エマルション粒径などのプレートア
ウトの調整を行わなくてよい粘度範囲は50 cStまでであ
り、したがって本発明においてより望ましい粘度範囲は
7〜50 cStである。
【0029】本発明では上述の粘度条件を満足する合成
エステルを基油として用いるが、合成エステルを用いる
のは鉱油に比べエステルは圧力粘度係数が小さいこと、
潤滑性に優れること、また合成エステルは天然エステル
に比べ高純度品が得られ易く、不純分による熱劣化や酸
化劣化が少ないなどの理由からである。
【0030】本発明に用いられる合成エステルとして次
のようなものが例示される。 I.ラウリル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステア
リン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、椰子油脂肪
酸、牛脂脂肪酸、パーム油脂肪酸等の何れかの脂肪酸
と、メチルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルア
ルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルア
ルコール、オレイルアルコールの何れかのアルコールと
のモノエステル。
【0031】II. 前述の脂肪酸とトリメチロールプロパ
ンとのモノエステル、ジエステル、トリエステルおよび
これらの混合物。 III.下記(4) 式で示されるような構造のトリメチロール
プロパンと脂肪酸および二塩基酸の複合エステル。
【0032】
【数3】
【0033】TMP:トリメチロールプロパンの骨格 DA:二塩基酸 A :脂肪酸 R :アルキル基 (C25) ここで示した二塩基酸は、アジピン酸、アゼライン酸、
セバシン酸、およびオレイン酸、リノール酸の二量体化
したダイマー酸であり、脂肪酸は前述のモノエステルの
脂肪酸と同様のものである。
【0034】次に、本発明では圧延油はエマルションで
使用するため、次にプレートアウト量について説明す
る。前述の(2) 式で示される油膜厚さ当量 (td ) はプ
レートアウト量が十分多い場合である。(2) 式によると
粘度を適正範囲としても、圧延速度の変化による導入油
量の変化は避けられない。つまり、高速圧延を行うと油
膜厚さが厚くなり過ぎること、あるいは高圧下率の低速
圧延時に油膜が薄くなり過ぎることを示している。した
がって、プレートアウト量の調整が必要となる。
【0035】ここに、圧延油の原液が材料表面およびロ
ールへ付着することがプレートアウトであり、この量が
少ないとロールバイト内へ十分な圧延油が供給されな
い。プレートアウト量はエマルション粒径、濃度に影響
されることが知られている。また、圧延油組成により、
圧延材への濡れ性、付着性が異なることも知られてお
り、それによってもプレートアウト量が変動する。
【0036】したがって、第一に本発明では、この濡れ
性、付着性に注目して、圧延油基油に添加する油性剤、
極圧剤などの添加剤の組成を前述のように規定したので
ある。
【0037】すなわち、本発明によれば、特定のアミン
塩とアルカノールアミン、ならびにアルコールを複合添
加することで潤滑性を低下させることなくプレートアウ
ト量を制限でき、薄膜化できるのである。
【0038】具体的には、基油に対し、次の成分(i) な
いし(iii) を配合する。 (i) 炭素数が12〜36の脂肪酸あるいは二塩基酸のアミ
ン塩、アルキル基の炭素数が6〜18の正燐酸または/
および亜燐酸モノまたはジエステルと炭素数が1〜18の
脂肪族アルキルアミンとの塩の少なくとも1種を2〜10
wt%。 (ii)アルキル基の炭素数が2〜18のアルカノールアミン
を2.5 〜10wt%。 (iii) 炭素数が4〜18のアルコールを2〜10wt%。
【0039】ここで、上述の個々の化合物の特定理由を
説明する。(i) 脂肪酸のアミン塩、二塩基酸のアミン塩、燐酸エス
テルアミン塩 これらは主として油膜が薄くなった際の潤滑性を高める
目的で添加する油性・極圧剤であり、各化合物の炭素数
の下限および添加量の下限は必要な潤滑性が得られる下
限値として規定する。また上限は、炭素数が大きくなる
と分子量が増し、粘度が高くなり、ロールへのコーティ
ング皮膜が安定して発生しないから、それを考慮して定
める。また、基油に対する溶解度が低下するため、むら
を生じ光沢性を低下させるため上限を規定するのであ
る。また、添加量が10wt%を超えて増すと圧延材への反
応生成物量が増し、汚れや光沢不良の原因になるためで
ある。好適配合量は4〜10%である。
【0040】なお、いずれもアミン塩としているのは次
に説明するアルカノールアミン、アルコールとの相互効
果を発揮させ易くするためである。好適アミン塩として
は、上記脂肪酸あるいは二塩基酸のアミン塩である。
【0041】本発明に用いる炭素数12〜36の脂肪酸ある
いは二塩基酸のアミン塩としては次のものが挙げられ
る。ラウリル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステア
リン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、椰子油脂肪
酸、牛脂脂肪酸、パーム油脂脂肪酸等の脂肪酸と、メチ
ルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルア
ミン、2−エチルヘキシルアミン、オレイルアミンとの
塩。オレイン酸、リノール酸の二量体化したダイマー酸
とメチルアミン、ブチルアミンとの塩等である。
【0042】また、アルキル基の炭素数6〜18の燐酸エ
ステルと炭素数1〜18の脂肪族アルキルアミンとの塩と
しては、正燐酸、亜燐酸と炭素数6〜18ヘキシルアルコ
ール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコ
ール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデ
シルアルコール、オレイルアルコールとのモノ、または
ジエステルに、炭素数1〜18のメチルアミン、ブチルア
ミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘ
キシルアミン、オレイルアミンの何れかを反応させ塩と
したもの。
【0043】(ii)アルカノールアミン これらは圧延油エマルションの親水性を高める目的で添
加するものであり、エマルションの粒径を小さくする作
用がある。また、圧延により発生した摩耗粉に吸着し、
これを分散させ圧延油エマルションとの合一を防止し、
摩耗粉の除去を容易にさせる。さらに一方、材料、ロー
ルへの濡れ拡がり性を向上させ、前述(i) 項の油性・極
圧剤が塑性変形により生じた新生面に供給され易くする
作用もある。
【0044】化合物のアルキル基の炭素数の下限は基油
および油性・極圧剤への溶解度および耐熱性から決定し
たもので、下限である炭素数2を下回るときは十分な性
能が得られない。また添加量についても同様の理由で2.
5 %以上に制限した。一方、炭素数18との上限は粘性が
増し、ロールコーティング性、光沢性を低下させるため
である。添加量は増加とともにプレートアウト量が低下
するため過度になると潤滑性が低下するため10%を上限
とした。好ましくは4〜10%である。
【0045】本発明に用いるアルキル基の炭素数2〜18
のアルカノールアミンを具体的に次に例示する。エタノ
ールアミン、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、
オクタノールアミン、デカノールアミン、ドデカノール
アミン、ヘキサデカノールアミン、オクタデカノールア
ミン等のアルカノールアミンでアミンの形態としては第
1、第2、第3アミンの何れでもよい。
【0046】(iii) アルコール 炭素数4〜18のアルコールも上述のアルカノールアミン
と同様に圧延油エマルションの親水性を高める目的で添
加するものであり、エマルションの粒径を小さくする作
用がある。その限定理由もアルカノールアミンの場合に
同じであって、好適配合量は4〜10%である。
【0047】本発明に用いる炭素数4〜18のアルコール
を具体的に次に例示する。アルコールはブチルアルコー
ル、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2−エ
チルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリル
アルコール、トリデシルアルコール、オレイルアルコー
ルなどの脂肪族アルコールである。
【0048】次にエマルションの性状についての限定理
由を説明する。 (1) エマルション粒径 エマルション粒径はアルカノールアミンおよびアルコー
ルを添加することにより微細化が実現できるが、高粘度
油を基油とした場合には粒径がやや大きくなる。十分な
光沢を得るには粒径の平均値は5μm未満とする必要が
あり、さらに望ましくは3μm以下である。
【0049】(2) エマルション濃度 プレートアウト量はエマルションの粒径だけでなく濃度
にも影響される。したがって、本発明の好適態様ではそ
の濃度を3〜15vol%とする。低濃度ほど油膜が薄くなる
が、3vol%未満になると油膜が過度に薄くなり、潤滑性
が低下する。また、圧延時に発生するスカム (摩耗粉と
油分が混合した粘凋物) の相対量が増し、光沢性を低下
させるため3vol%を下限とした。また、15vol%を超える
と油膜が厚くなり過ぎ、ロールへのコーティングが生成
し難いので15vol%を上限とした。より好ましくは、油性
・極圧剤として脂肪酸あるいは二塩基酸のアミン塩を用
い、エマルション濃度を3〜15vol%とする。
【0050】(3) エマルションのpH 基油に添加する油性・極圧剤をアミン塩とし、かつアル
カノールアミンを添加することで、通常のエマルション
がpH 5.5〜6.5 であるのに対しpH 7.5以上のアルカ
リ性を示す。エマルションのpHとロールへのコーティ
ング皮膜生成とは密接な関係があり、酸性サイドよりア
ルカリ性サイドの方がコーティング皮膜が安定して早期
に生成する。pHを8.5 以上とした場合にコーティング
の生成が著しく速くなるのでpH 8.5以上に限定した。
この理由については明確ではないが、本発明の好適態様
では酸性サイドでは鉄およびクロムはイオンとなり、溶
出するが、アルカリ性サイドでは酸化物が安定形態であ
るためと考えられる。
【0051】最後に圧延材の板厚に応じてエマルション
の粒径、濃度を変更する本発明にかかる圧延方法につい
て説明する。 (1) エマルションの平均粒径と濃度との関係 プレートアウト量は前述のようにエマルションの平均粒
径 (d:μm) と濃度(C:vol%) と密接な関係があ
り、エマルションの粒径だけでなく濃度を組み合わせた
限定も必要である。すなわち、両者とも下限値あるいは
上限値に近い条件での使用はなるべく避けた方がよい。
これは圧延材の形状、圧延温度、ロール材質、ロール表
面粗さなどのばらつきの影響で目標性能から逸脱する恐
れがあるからであり、両者の積 (C×d) を一定板厚、
一定圧下量の条件では一定の範囲に限定する。
【0052】(2) 圧延材板厚、圧下量との関係 特に、圧延はパスが増す毎に圧延材の板厚 (t:mm) 、
降伏応力が変わり、要求される油膜厚も変化する。ま
た、使用するロール径 (2R:mm) 、圧下率(r:%) によ
り噛込み角 (α:度) が変わる。そこで、最適条件とし
て、下記(1) 式のように限定した。これらの値が下限値
である15より小さい場合は潤滑性が劣り、上限の60を超
える場合はロールへのコーティング皮膜の生成が安定し
なくて光沢性が劣る。
【0053】
【数1】
【0054】
【実施例】実施例により、本発明の作用効果をさらに詳
しく説明する。 (実施例1)直径が100 mm、表面粗さがRa 0.05 μmの材
質 SKD11のワークロールとバックアップロールの直径が
330 mmの4Hi圧延機により、表1に示すステンレス鋼板
の圧延材を、表2に示す圧延条件で1パスの圧延を実施
した。なお、圧延油は表3〜表5に示す組成、性状のも
のを用いた。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】結果を表6、表7に示す。ロールへのコー
ティング皮膜の発生し易さは、安定したコーティング皮
膜が形成されるまでの圧延長さで評価し、比較例1 (比
−1) のニート油系の従来の圧延油の100 mより短い圧
延油を合格とした。また、300 m圧延後の鋼板表面を観
察し、焼付き、光沢むらがないこと、および光沢度を測
定した。なお、光沢度は Gs 45°で450 以上を合格の基
準とした。
【0061】本発明の圧延油 (実1〜実15) は全て圧延
長さ100 m以内でロールにコーティング皮膜が発生し、
圧延材の表面光沢も高いことが判る。また、アミン塩、
アルカノールアミン、アルコールを併用し、かつ、エマ
ルション濃度を3〜15%とし、pHを8.5 以上とすると
さらにロールへのコーティング皮膜が早期に形成され、
光沢度も向上することが判る。
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】(実施例2)実施例1と同様の圧延機によ
り、表8に示す圧延材を、表9に示す圧延スケジュー
ル、および圧延条件で5パスの圧延を実施した。なお、
圧延油は実験圧延例1の実施例14 (実−14) および比較
例2 (比−2) に使用した圧延油のエマルション濃度、
粒径を表10に示すように調整して使用した。
【0065】
【表8】
【0066】
【表9】
【0067】ロールへのコーティング皮膜の発生し易さ
は、安定したコーティング皮膜が形成されるまでの圧延
長さで評価し、圧延実験例1と同様に50mより短い圧延
油を合格とした。また、各圧延パス毎に圧延後の鋼板を
観察し、焼付き、光沢むらがないこと、および光沢度を
測定した。なお、光沢度は5パス圧延後の光沢(Gs 45
°) で500 以上を合格の基準とした。結果を表10に示し
た。
【0068】
【表10】
【0069】本発明の圧延油 (実16〜実19) は全て圧延
長さ50m以内でロールにコーティング皮膜が発生し、圧
延材の表面光沢も高いことが判る。また、エマルション
濃度、平均粒径を圧延材の板厚、噛込み角に応じ一定範
囲 (板厚、濃度、粒径の積を噛込み角の10倍の数値で除
した値を15から60の範囲) とすることにより、焼付きお
よびスリップ疵を発生させることなく光沢度も向上する
ことが判る。
【0070】本発明の好適態様では圧延油エマルション
にロールコーティング皮膜を早期に生成させるために、
pHをアルカリ性に制御すること、さらには圧延油濃
度、エマルション平均粒径を一定範囲に制御することが
好ましく、その方法を図1に示す。
【0071】図1において圧延機1によって圧延材11が
連続的に冷間圧延されるが、その際に圧延ロールには圧
延機1に設けられたヘッダ10から粒径、濃度そしてpH
が調節され圧延油が圧延ロールへ供給される。圧延油の
特性の調整は、エマルション濃度調整システム、エマ
ルションpH濃度調整システム、そして粒径調整シス
テムを経て行なわれる。
【0072】まず濃度調整システムにおいては、圧延油
原液タンク3から補給用ポンプ12を経て流量調整タンク
5に入る。ここで水供給配管9からの水によって、所望
濃度に希釈調整する。符号8は濃度計を示す。濃度調整
後は圧延油エマルションタンク2に送られ、ここでpH
調整材タンク4から補給用ポンプ12を経て供給されるp
H調整材が加えられpH調整が行われる。符号7はpH
計を示す。
【0073】このようにして、濃度およびpHが調整さ
れた圧延油はさらに供給用ポンプ6を経て今度はエマル
ション粒径を調整するライン内ミキサー14に送られる。
符号13は粒径測定機である。
【0074】このように、本発明によれば、エマルショ
ン粒径は圧延材の板厚に応じて変化させる必要からタン
ク内で調整させるのでなく、図中に示すごとく供給配
管内でライン内ミキサー等により調整する。一方、p
H、エマルション濃度は図中で示すように圧延油タ
ンク内で行う。
【0075】
【発明の効果】本発明のステンレス鋼板用の水溶性圧延
油を使用することにより、高速圧延を可能にし、かつ、
ワークロールへの圧延材酸化皮膜であるコーティング皮
膜を早期に発生させ、さらにはむらをなくし、優れた光
沢のステンレス鋼板の圧延を高能率に圧延することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において圧延油エマルションの濃度、粒
径、pHを調整・維持するための圧延油循環供給システ
ムを説明する系統図である。
【符号の説明】
1:圧延機、 2:圧延油エマルションタンク 3:圧延油原液タンク、4:pH調整剤タンク 5:流量調整器、 6:供給用ポンプ 7:pH計 8:濃度計 9:水供給配管 10:ヘッダー 11:圧延材料 12:補給用ポンプ 13τ粒径測定機 14:ライン内ミキサー 15:回収トレイ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10M 105:32 137:04 105:74 133:08 129:06) C10N 20:02 30:06 40:24

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 40℃での粘度が7〜150 cSt の合成エス
    テルを基油として下記成分(i) ないし(iii) を配合する
    とともに、エマルションの平均粒径を5μm未満とした
    ことを特徴としたステンレス薄鋼板用水溶性圧延油。 (i) 炭素数12〜36の脂肪酸あるいは二塩基酸のアミン
    塩、およびアルキル基の炭素数6〜18の正燐酸または/
    および亜燐酸のモノまたはジエステルと炭素数1〜18の
    脂肪族アルキルアミンとの塩から成る群から選ばれた少
    なくとも1種2〜10wt%、(ii)アルキル基の炭素数2〜
    18のアルカノールアミン2.5 〜10wt%、(iii) 炭素数4
    〜18のアルコール2〜10wt%。
  2. 【請求項2】 前記成分(i) として前記脂肪酸あるいは
    二塩基酸のアミン塩を配合し、エマルションの濃度を3
    〜15vol%とし、かつpHを8.5 以上のアルカリ性とした請
    求項1記載のステンレス薄鋼板用水溶性圧延油。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載された圧延油を
    用い、圧延する鋼板の板厚 (t:mm) に対して、使用す
    る圧延油の濃度 (C:vol%) 、エマルションの平均粒径
    (d:μm)を次式(1) 、(2) の関係が満足されるよう調
    整して圧延することを特徴とするステンレス薄鋼板の冷
    間圧延方法。 【数1】
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003105369A (ja) * 2001-09-28 2003-04-09 Cimeo Precision Co Ltd 動圧軸受用潤滑油
JP2010540718A (ja) * 2007-09-27 2010-12-24 シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド ギヤ油組成物、その製造方法及び使用方法
JP2011025255A (ja) * 2009-07-22 2011-02-10 Nippon Steel Corp 疲労強度に優れたダル表面金属ストリップの調質圧延方法およびダル表面金属ストリップ
JP2018168259A (ja) * 2017-03-29 2018-11-01 Jxtgエネルギー株式会社 金属加工油組成物

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