JPH08222163A - ショットキー電子源およびその安定化方法 - Google Patents

ショットキー電子源およびその安定化方法

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JPH08222163A
JPH08222163A JP19830195A JP19830195A JPH08222163A JP H08222163 A JPH08222163 A JP H08222163A JP 19830195 A JP19830195 A JP 19830195A JP 19830195 A JP19830195 A JP 19830195A JP H08222163 A JPH08222163 A JP H08222163A
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J2237/00Discharge tubes exposing object to beam, e.g. for analysis treatment, etching, imaging
    • H01J2237/06Sources
    • H01J2237/063Electron sources
    • H01J2237/06308Thermionic sources
    • H01J2237/06316Schottky emission

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  • Cold Cathode And The Manufacture (AREA)
  • Electron Sources, Ion Sources (AREA)

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】所定の範囲内のエネルギー幅を持ち、長時間安
定な電子放出が得られる電子源を提供する。 【構成】フィラメント2と、これに取付けられ、且つ、
先端に平坦な結晶面を有する針状の高融点金属単結晶線
と、この平坦な結晶面上に単結晶線以外の金属を少なく
とも一種類含む吸着層を有し、上記フィラメント2に通
電することで単結晶線を加熱し、単結晶線先端に加えら
れた電界で電子が取り出されるショットキー型電子源に
おいて、単結晶線の先端を、その先端の平坦な結晶面を
崩さない程度の電界がその先端に印加された際に、その
先端から取り出された電子のエネルギー幅が所定の値を
越えない様な曲率半径を有するように形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子線描画装置や電子顕
微鏡等の電子線応用装置において用いられる電子源、電
子線装置、及び電子源の安定化方法に関し、特に長期間
安定で、かつ、エネルギーの揃った電子放出を得るため
の電子源先端の形状、製造法及び使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】WやMo等の耐高温金属材料の単結晶ティ
ップ表面に、この単結晶ティップより仕事関数が低い金
属原子、例えばZr, Ti, Hf等とO原子をそれぞれ単原子
層程度吸着させる表面拡散型電子源が実用化されてい
る。この電子源は、Wヘアピンフィラメントの頂点に電
解研磨により先端を尖らせた単結晶線を接合し、接合部
付近に水素化Zr等の水素化物粉末を付着させ、酸素ガス
分圧のある真空雰囲気中で熱処理することにより作成さ
れることが米国特許番号3814975号公報に開示さ
れている。
【0003】このような電子源を1500K以上の高温で使
用した場合を特にショットキー放出状態と呼んでいる。
この電子源の基本的な構造を図1に示す。1は、W〈10
0〉の単結晶ティップ、2は、Wの多結晶線からなるヘア
ピン型のフィラメント、4は、フィラメント2がスポッ
ト熔接されているステンレス等の端子、5はセラミック
碍子である。Wの単結晶ティップ1よりも仕事関数が低
いZr等の酸化物補給源3が、単結晶ティップ1の中央
部、付け根またはフィラメント2に付着した構造となっ
ている。これを1500〜1900K程度に加熱することでこの
酸化物が単結晶ティップ1に沿って熱拡散する。単結晶
ティップ1の先端に拡散していった金属酸化物は単結晶
ティップ1の先端に、酸素と金属それぞれほぼ単原子層
ずつ吸着する。この時、表面拡散及び脱離の活性化エネ
ルギーの高い特定の結晶面(100)に選択的に吸着す
る。(100)結晶面が単結晶ティップ1の先端となるよ
うな単結晶線を用いることで、単結晶ティップ1の先端
のみを仕事関数の低い状態に保つことができる。したが
って、その部分から高い放出電子電流密度が得られる。
このようなショットキー電子源としてはZr/O/Wが Journ
al of Vacuum Science Technology, B3(1),1985, p220
に開示されている。
【0004】この電子源の特徴は、通常の熱電子源と異
なり、放出される電子のエネルギー幅が狭く、数千時間
連続に稼働できる点である。
【0005】この種の電子源で安定な電子放出を得るた
めの電子源処理法が米国特許4324999号公報に、
また一度不安定な状態になった電子源を安定化させる方
法については特開平2-27643号公報に記されてい
る。これら文献は、安定な電子放出が得られる条件とし
て電子源先端に平坦な結晶面(以下ファセットと呼ぶ)
が存在することを挙げている。その形成方法として米国
特許4324999号公報では酸素中で加熱する方法、
また特開平2-27643号公報では一時的に強電界を
印加する方法が述べられている。
【0006】さらに,この種の電子源の使用条件に関し
ては特開昭60-501581号公報に記されている。
これには、表面拡散による電子源先端の鈍化を防ぎ放出
電流値を安定に維持するために、電子源先端に一定の値
以上の電界を印加し、先端方向へ静電気力を作用させる
必要があることが記載されている。
【0007】なお、表面拡散と、電界により電子源先端
にかかる先端方向への引力のバランスの定式化が Physi
cal Review, Volume 117, Number 6, P1452 に開示され
ている。ただし本文献ではW単体の場合の実験結果が記
載されているが上記ショットキ−電子源での実験はなさ
れていない。
【0008】米国特許4324999号公報および特開
平2-27643号公報に記載されている方法ではファ
セット形成に数時間以上、通常10時間程度を必要として
いた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】電子源の安定性、放出
電子のエネルギ−のばらつき(エネルギ−幅)、電流密
度等はいずれも電子顕微鏡や電子線描画装置等の電子線
応用装置の性能を決める重要な特性である。一般にショ
ットキ−電子源は、電子を引き出すための電界強度を強
くすると安定性が増す一方、放出電子のエネルギ−幅が
拡がり、かつ、電流密度が不必要に増大する傾向にあ
る。エネルギ−幅が拡がると電子ビ−ムを細く収束でき
なくなる。また、電流密度が大きくなり過ぎると試料ダ
メ−ジや汚染の問題が生じる。以上のように、従来は、
安定性と、エネルギ−幅や電流密度の最適条件を同時に
満足する条件について検討されていなかった。
【0010】本発明の一つの目的は、所定の範囲内のエ
ネルギー幅を持ち、長時間安定な電子放出が得られる電
子源を提供することである。本発明の他の目的は、電子
源装置から、安定な電子放出が維持出来、かつ所定のエ
ネルギ-幅の電子放出を得るための電子引出電圧を設定
することを可能とする電子線装置を提供することであ
る。本発明のさらに他の目的は、電子源からの電子ビー
ムの安定放出に必要な条件であるファセットの形成を短
時間に行える方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的は、本発明の一
実施例によれば、フィラメントの先端に高融点金属の単
結晶線を取付け、この単結晶線先端に仕事関数又は電気
陰性度が該単結晶より小さい金属の吸着層を設け、吸着
層が安定に維持できる温度まで単結晶線を電流加熱した
状態で、単結晶線先端に電界を加えて電子が取り出され
る電子源において、電子源先端の曲率半径を、表面拡散
による電子源先端の鈍化と静電気力とがバランスする電
界強度と、所望のエネルギー幅の電子放出が得られる電
界強度とを考慮して最適化することにより達成出来る。
【0012】さらに、上記目的は、本発明の他の一実施
例によれば、このような安定でエネルギー幅の狭い電子
源を用い、電子源を加熱する加熱電源、電子源から電子
を引き出すための電界を与える引き出し電源、電子源か
らの放出電子を加速するための加速電源および引き出し
電源を制御する制御計算機を備え、この制御計算機が、
安定な電子放出が維持できる強度で、かつ、所定の値よ
り狭いエネルギー幅の電子放出が得られる強度の電界
を、電子源の針状単結晶線先端に生じさせる引き出し電
圧を設定する構成の電子線装置で達成される。
【0013】さらに、上記目的は、本発明のさらに他の
一実施例によれば、最初に電子源の単結晶先端の金属吸
着層を加熱蒸発により取り除き、次に単結晶線先端原子
のマイグレーションによる先端鈍化を防ぐための電界を
印加した状態で保持し、放出電子電流が増加して均一な
円形の電子放出パターンが得られるまで、または、放出
電子電流が飽和するまで放置することにより、電子源先
端に電子ビームの安定放出に必須なファセットを形成す
ることで達成出来る。
【0014】さらに、上記目的は、本発明のさらに他の
一実施例によれば、電子源、電子源を加熱する加熱電
源、電子源から電子を引き出すための電界を与える引き
出し電源、電子源からの放出電子を加速するための加速
電源、及び三つの電源を制御する制御計算機を備え、電
子源から引き出された電子を、絞りを備えたレンズによ
り収束し、試料に照射する電子線装置において、絞りに
吸収される電子電流を検出し、この値を制御計算機にイ
ンプットし、電子電流値により加熱電源と引き出し電源
を制御することによって達成される。
【0015】
【作用】電子源先端の結晶面(100)の平坦部が形成さ
れ、安定な状態になった場合でも数百時間以上連続で使
用していると、わずかずつ(100)面の平坦部が崩れて
いき、ある一定時間安定に動作した後再び急激な電流の
減少が発生することが多い。この様子を示したのが図2
である。これは、プローブ電流を長時間モニターしたも
ので、50時間から100時間おきに電流密度が30%以上減
少している。このような電流の減少が突然発生すると、
例えば電子顕微鏡に搭載していた場合には顕微鏡像の像
質の劣化がおきる。特に、半導体プロセス評価用として
無人で自動計測等を行っている場合、評価結果の信頼性
が著しく損なわれる可能性がある。
【0016】この現象は、高温(約1800K)における電
子源先端の原子のマイグレーションと、電界による静電
気力がバランスせず先端に形成したファセットが崩れる
ことにより発生する。これを防ぐには特開昭60-501581
号公報に記載されているように電界を強くすれば良い。
ところが、この方法では電流値の変動を抑えることはで
きるが、それと連動して放出電子のエネルギー幅が1eV
程度に広がってしまう。ここで、エネルギー幅とは放出
電子のエネルギー分布の半値幅のことである。放出電子
のエネルギー幅が広がると電子ビームを細く収束するこ
とが困難となる。
【0017】特に、低エネルギーの電子ビームを用いた
電子顕微鏡ではエネルギー幅が重要な性能決定要因とな
る。LSIプロセス評価用の寸法測定用走査型電子顕微鏡
(以下CDSEMと呼ぶ)ではLSIプロセスに要求され
る寸法精度から考慮すると像分解能や測定再現性が8nm
程度であることが要求されている。しかも、試料となる
LSIのダメージ、チャージアップの防止から電子ビーム
のエネルギーは約1keVとする必要が有る。
【0018】図3には1keVの電子ビームにおけるエネル
ギー幅と最小ビーム直径の関係を示した。最小ビーム直
径は色収差と回折収差の二乗和が最小となる条件から求
めた。この計算では色収差係数として、測長SEM用の電
子レンズとしてはこれ以上小さくするのは困難と考えら
れる6mmの値で計算した。像分解能はビーム直径の約1/2
程度であるから8nmの像分解能を得るにはビーム直径が1
6nm程度となるエネルギー幅0.5eV以下であることが必要
である。
【0019】以上のように、安定な電子放出を得るため
に単に電界強度を大きくするだけではエネルギー幅が0.
5eV以上となってしまい問題があることがわかった。さ
らに、単に電界強度を強くするだけでは放出電流密度が
必要以上に大きくなってしまうという問題もある。この
場合、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡等の観察装
置の場合、試料のダメ−ジや汚染が増大してしまう。
【0020】まず、電界強度が小さい場合に発生する電
子源の不安定動作とそのメカニズムを図4(a)〜4
(d)を用いて簡単に説明する。図4(c)及び4
(d)は〈100〉方位のW単結晶22を用いたZr/O/W 電
子源先端の斜視図で、走査型電子顕微鏡で観察した結果
を元に概略を示したものである。先端の平坦な部分23と
二段目の平坦な部分24は(100)の結晶面であり、この
ような部分をファセットと呼ぶ。また図4(a)及び4(b)
に示した電子放出パターンは、蛍光体を塗布した金属板
を電子源に対向させて置き、電子源とその金属板との間
に電界を印加することで電子源から電子線を引き出し、
その電子が金属板上の蛍光体に衝突し発光することによ
り得られたものである。したがって、明るく発光するほ
どその部分の電流密度が大きい。図4(a)及び4(b)におい
て斜線及び黒線の部分は発光の少ない部分を示す。なお
電子放出パターンの中心の黒い点20は、蛍光体を塗布し
た金属板に開けられた電流を計測するための小孔であ
る。
【0021】電界による先端方向への引力が表面拡散に
比較して小さくなりバランスがくずれると、先端の(10
0)面ファセットの周辺部をなす原子がチップの根本部
分に表面拡散していき、(100)面ファセットが崩壊し
次第に小さくなっていく。(100)面23が小さくなる
と、その下に新たな(100)面が現われる。この両者の
(100)面の段差部分は、電子放出が非常に小さい部分
すなわち図4(a)及び4(b)に示した放出パターンに現わ
れたリング状の黒い部分21である。そしてこの段差部分
が移動し、小孔20を横切るときにプローブ電流の急激な
減少が発生する。
【0022】従来技術に関連して述べたようにショット
キー表面拡散型電子源から電子放出させる場合に、引き
出し電圧を上げれば静電気力が増加し、表面拡散による
先端の鈍化が抑えられるため電子源先端のファセットの
崩壊が止り、上記に述べた電流の変動がなくなる。一
方、引き出し電圧を上げるとショットキー放出電子以外
に電界放出電子が含まれるため、エネルギー幅は大きく
なる。この関係を定量的に調べるために、ファセットの
崩壊が止る引き出し電圧を実験的に求め、その時の放出
電子のエネルギー幅を測定した。ファセットの崩壊が止
まる引き出し電圧は以下の実験から求めた。先ず、各種
の引出電圧においてそれぞれ長時間に亘ってプローブ電
流をモニタし、プローブ電流の急激な減少が発生する周
期を求めた。
【0023】次に、下式1を用いて、引き出し電圧から
電界強度Fを計算してこれを横軸に、プローブ電流減少
の周期の逆数を縦軸に示したものを図5に示す。
【0024】
【数1】 ・・・
・・・・・(1)
【0025】ここで、dは電子源先端から引き出し電極
までの距離、rは電子源先端の曲率半径、Vは引き出し電
圧、Aはサプレッサ電極の効果を表す係数で電界計算及
び実験の結果に基きほぼ1である。
【0026】電子源先端の曲率半径は通常用いられてい
る0.5μmのものの他に、1〜2μmという通常使用され
ることのなかった大きなものについても実験した。図5
にはそのうち曲率半径が0.5,1.1,2μmについての結
果を示す。その結果、実験結果のプロットはそれぞれの
曲率半径においてほぼ直線となった。プローブ電流の急
激な減少が発生しない電界強度は発生周期の逆数がゼロ
となる場合である。したがって、実験結果から得られる
直線を外挿し横軸切片を求めることによりプローブ電流
の急激な減少が発生しない電界強度すなわちファセット
が維持できる電界強度を求めることができる。
【0027】次に、上で求められた電界強度を印加した
場合の放出電子のエネルギー分布を計測した。その結
果、0.5μmの先端曲率半径の電子源では、ファセットが
維持できるだけの電界を印加するとエネルギー幅は0.7e
V以上となることがわかった。一方これまで試みられる
ことのなかった大きな先端曲率半径を持った電子源では
ファセットが維持できる電界強度を印加してもエネルギ
ー幅が0.5eV以下となることを見出した。これまでショ
ットキ−電子源においてこのような大きな先端曲率半径
のものが使用されることはなかった。なぜなら、ショッ
トキ−電子源は高輝度電界放出型電子源の改良から出発
したものであり、輝度を下げる方向となる曲率半径の極
端な増大は試みられなかったからである。ところが以上
のように実際に実験したところ、電子源の先端曲率半径
をおよそ2.5μm以下に抑えれば,極端な輝度の低下は
認められず、充分に実用となる範囲であった。
【0028】そして、曲率半径1.1μm以上では、上述の
ファセットが維持できる引き出し電圧を印加してもエネ
ルギー幅が0.5eV以下となる条件が存在することがわか
った。なお電子源先端の曲率半径とは、図6に示した電
子源先端の断面図において電子源の先端の曲面を半球面
で最小二乗近似したとき半球の半径31で定義した。また
W単結晶の根元部分から先端の半球状の部分にいたるま
でに円錐台形状をした部分32が存在する。この円錐台の
外周部のなす角度33を開き角と呼ぶことにする。
【0029】以上の結果の詳細は、後述する実施例で述
べるが、曲率半径を大きくすることにより、ファセット
が維持できる強さの引き出し電圧を印加しても、エネル
ギー幅が狭く抑えられることが実験的に確認できた。こ
の理由は次のように説明することができる。
【0030】電子源先端における表面拡散と静電気力の
バランスに関する関係は式2のようになる。
【0031】
【数2】 ・・・
・・・(2)
【0032】ここで、γは表面張力、Fは電界強度、C0
は先端の形状に依存する係数でほぼ0.5、rは先端の曲率
半径である(前掲フィジカル レヴュー,ボリューム11
7,ナンバー6,ページ1452)。
【0033】dz/dt は電子源先端が短くなる速度を表し
ており、添え字が0のものは電界がゼロのとき表面拡散
のみで先端が短くなる速度、添え字Fがあるのは静電気
力も考慮した場合を表している。
【0034】したがって、この式の値がゼロの時、表面
拡散と静電気力のバランスが取れたことになる。そこで
このような条件が成り立つ電界強度F0(以後平衡電界強
度と呼ぶことにする)を求めると式3のようになる。
【0035】
【数3】 ・・・・
・・・・(3)
【0036】この式は先端曲率半径rが大きくなるほど
平衡電界強度F0が小さくなることを表している。ただ
し、結晶方位による表面張力の違い、先端にZrが吸着し
た場合の表面張力の変化を考慮していないのであくまで
定性的な式である。
【0037】以上のように電子源先端の曲率半径を大き
くすると、弱い電界強度で安定な電子放出が得られる。
そして、弱い電界強度で使用できるということは、放出
電子に電界放出成分がほとんど含まれないショットキー
放出電子のみの状態、すなわちエネルギー幅の狭い状態
で使用できることになる。さらに、曲率半径を大きくす
ると電子放出部の面積が大きくなり、放出電子のエネル
ギー幅を拡大する作用がある空間電荷効果(ベルシェ効
果と呼ばれる)が小さくなるという利点もある。
【0038】以上をまとめると、曲率半径を大きくすれ
ば平衡電界強度が小さくなるため、平衡電界強度以上の
電界を印加してファセット崩壊のない安定な電子放出状
態としてもエネルギー幅は充分狭い状態で使えるという
ことである。ただし、曲率半径が大きくなるほど放出電
流は引き出しにくくなるので、実用的な電流密度を得る
には曲率半径を2.5μm以下とする必要がある。
【0039】
【実施例】次に具体的な実施例について述べる。
【0040】ジルコニウムと酸素をW<100>の針状単結
晶先端に吸着させた電子源について、先端曲率半径を変
化させ、エネルギー幅0.5eV以下で、かつ、安定動作す
る条件を実験で求めた。図7には実験に用いたこの電子
源先端部と電子引き出しのための陽極の構造を示す。W
<100>単結晶1よりなる電子源先端部分は、サプレッサ
電極41の中心にあけられた直径0.4mmの穴から250μmだ
け突出している。サプレッサ電極41は電子源の根元部分
から不要な熱電子が放出されるのを防ぐ電極で、単結晶
1に対して300〜800Vの負の電位が与えられる。電子を引
き出すためのアノード9はサプレッサ電極41から0.5mm離
れたところに位置しており、単結晶1に対して正の高電
圧を印加する。本明細書ではこの電圧を引き出し電圧と
称する。このような電極構成で、各種の先端曲率半径を
持った電子源をテストした。ただしW<100>の針状単結
晶先端の開き角がすべて30度以下のもので評価した。こ
こで開き角とは図6の33で定義される角度である。
【0041】実験は、引き出し電圧と放出電子のエネル
ギー幅の関係を測定すると共に、長時間に亘って放出電
子の電流密度をモニタし、プローブ電流に大きな減少が
発生せずプローブ電流変動率が5%/時間以下の安定な
電子放出が得られる最も低い引き出し電圧を求めた。こ
の電圧は、前述の図5を用いファセットを維持できる最
小の電界強度から求めた。これを平衡引き出し電圧と呼
ぶことにする。これが、電子源先端のファセット維持に
必要な最小の電界(平衡電界すなわち式3のF0)を形成
する引き出し電圧である。
【0042】この実験結果を、先端曲率半径と平衡引き
出し電圧、および先端曲率半径とエネルギー幅が0.5eV
となるときの引き出し電圧との関係を示したのが図8で
ある。これをみると、曲率半径が大きくなると平衡引き
出し電圧はやや減少することがわかる。一方、エネルギ
ー幅0.5eVとなる時の引き出し電圧は、曲率半径が大き
いほど大きくなる。そのため、平衡引き出し電圧の線と
エネルギー幅一定の線はある曲率半径において交わる。
エネルギー幅0.5eVの時の引き出し電圧の線は、曲率半
径が1.1μmのとき平衡引き出し電圧の線と交わる。曲率
半径が1.1μm以上であれば、平衡引き出し電圧以上の
電圧を印加しても放出電子のエネルギー幅が0.5eV以下
となる領域が存在することがわかる。図8にはこの領域
を斜線で示した。例えば先端曲率半径が1.5μmの場合に
は、引き出し電圧は3.0kV以上5kV以下、曲率半径が2μm
であれば引き出し電圧2.6kV以上6kV以下とすればよい。
【0043】上記実施例では特定の電極構造における引
き出し電圧の値をあげたが、より一般性を持たせるため
には、電子源先端にかかる電界強度に換算して述べる必
要がある。前述の式1から電界強度を計算し、図8の縦
軸を電界強度に換算したものが図9である。図8の場合
と同様に、エネルギー幅0.5eV以下の電子放出を得たい
場合には先端曲率半径を1.1μm以上の電子源を用いれ
ばよいことが示されている。たとえば先端曲率半径が1.
5μmの場合には,電界強度を0.051V/Å以上0.1V/Å以
下、曲率半径が2μmであれば電界強度0.041V/Å以上0.1
V/Å以下とすればよい。
【0044】以上ではW<100>単結晶にZr,Oを吸着させ
た電子源について述べたが、異なる材料でも曲率半径を
大きくするほど平衡電界以上の引き出し電圧を印加した
時のエネルギー幅が小さくなる傾向が確認できた。例え
ば、W<100>単結晶にYとOを吸着させた電子源では、先
端曲率半径が0.9μm以上の時、平衡電界強度を示す線
と放出電子のエネルギー幅が0.5eVとなるときの電界を
示す線とが交差した。例えば、曲率半径1.2μmの時は
電界強度0.068V/Å以上、0.081V/Å以下であれば放出電
子のエネルギー幅が0.5eV以下で安定に動作した。
【0045】以上述べたことをまとめると、所望のエネ
ルギー幅以下の電子放出を安定に得るためには、ある特
定の曲率半径以上の電子源を、特定の電界強度の範囲で
使用すれば良いことになる。
【0046】次に、以上で述べたような、先端曲率半径
の大きな針状単結晶を作成する方法について述べる。ま
ず、通常の電界放出型電子源を作成するときと同様に電
解エッチングによりW単結晶線を針状にする。このとき
針状の先端は曲率半径が0.1μm以下の非常に鋭い先端
を持ち、また開き角は約15度である。この電子源先端を
鈍化させるためには先端を加熱すれば良い。ただし加熱
処理の前に、先端の開き角を広げておくことで低い加熱
温度で短時間に目的の曲率半径とすることができる。開
き角を広げるためには、針状に加工した単結晶線をさら
に交流電圧により電解エッチングすればよい。
【0047】図10は曲率半径を1.1μm以上とするた
めに必要な温度と加熱時間の関係を示す。交流電解エッ
チングにより開き角を30度にしたものと開き角の拡大処
理を行なわないものの両者を示した。開き角30度の場
合、先端曲率半径を1.1μmとするときの加熱温度と加
熱時間は、2200Kで加熱の場合5時間以上、2600Kで加熱
の場合0.5時間以上、2800Kで加熱の場合は0.2時間以上
の加熱時間が必要であった。また開き角15度の場合は22
00Kで50時間以上、2600Kで5時間以上、2800Kでは2時間
以上の加熱時間が必要であった。
【0048】上記方法で製作した電子源先端形状を図1
1(a)及び11(b)に示す。先端部分は半球状をし
ており、曲率半径は約1.1μm、開き角は約30度であっ
た。また、開き角を40度としたものも製作し、電子を放
出させたところ電子放出パターンが楕円形状で、しかも
先端にファセットが形成されなかったため安定に動作し
なかった。 次に、電子源先端にファセットを形成する
方法について説明する。電子源先端に印加される電界が
強ければいわゆるビルドアップ現象が起こり電子源先端
〈100〉以外の方位、例えば〈111〉、〈310〉等
が成長し、先端の(100)面はさらに大きくなる。した
がって、一般にファセットを先端に形成するためには強
い電界を印加すればよい。また、ファセットを形成する
のに必要とする時間はW原子の表面拡散の速さで決ま
る。
【0049】ところで、ショットキ−電子源はZr,Ti,Hf
等の金属の化合物を(100)面に吸着させている。これ
らの吸着層は、このW原子の表面拡散を妨げる方向に働
くのでこれらの吸着層が存在する状態では(100)面の
ファセットを生じさせるには長時間が必要となる。本実
施例ではファセットを形成し安定な電子源を製造する処
理として、まず先端に吸着しているZr,Ti,Hf等の金属の
吸着層を取り除き、W(100)をむき出しにして強電界を
印加する方法を採用した。これにより、Zr,Ti,Hf等が吸
着している場合に比べ処理時間が飛躍的に短縮される。
【0050】以上の方法で電子源の先端にファセットを
形成する処理を行った一例として、電子源の先端温度、
引き出し電圧、放出電子電流および放射角電流密度のタ
イムチャートを図12(a)〜12(d)に示す。放射角
電流密度は単位立体角当たりの電流密度でプローブ電流
とほぼ比例関係にある。電子源は、W(100)単結晶にZr
(ジルコニウム)とO(酸素)を吸着させたものであ
る。
【0051】引き出し電圧が1.4kV,先端温度が18
00Kの状態では、放出パターンは図4(a)及び4
(b)に示したようなリング状の暗い部分の存在するパ
ターンとなっていた。そこでまず、先端温度を2150
Kに上昇させた。上昇させた直後は放出電子電流、放射
角電流密度共に一桁以上上昇したがすぐに激減し、1〜
2分後には放射角電流密度はほとんどゼロ、放出電子電
流は4μA以下となり、放出パターンは消えた。この状
態はW(100)先端に吸着していたZrが高温加熱により取り
除かれ、仕事関数が上昇した状態である。その後温度を
1800Kに戻し、引き出し電圧を5kVに上昇させた。
この状態で放置したところ約25分後に放出電子電流、放
射角電流密度が上昇し始め、さらに、その10分後には放
射角電流密度が一桁以上急激に上昇した。その後放射角
電流密度と放出電子電流がほぼ飽和したので引き出し電
圧を1.4kVに戻した。このときの放出パターンは暗いリ
ング状の部分がない均一な円形であり、電子源先端に
(100)面の平坦部分を形成でき、電子源のファセッ
ト形成処理が達成できたことが確認できた。以上のフロ
ーをフローチャートにまとめたものが図13である。
【0052】上記実施例では、電子源先端の温度を上昇
させた直後や、引き出し電圧を上げて放出電子電流の飽
和を待っている状態において、通常の使用状態に比べて
一桁以上の大きな放出電子電流が出る。したがって、電
子源引き出し用の電源にこの処理のためだけに一桁以上
大きな電流容量のものを用意しなければならないという
問題点がある。次に述べる実施例ではこの問題を解決
し、通常の状態の放出電子電流以上の大きな容量の電源
を必要としない、電子源のファセット形成処理方法につ
いて、図14(a)〜14(d)を用いて説明する。
【0053】図14(a)〜14(d)は、それぞれ、
引き出し電圧、電子源先端温度、放射角電流密度、及び
放出電子電流のタイムチャートである。まず、電子源先
端温度1800K、引き出し電圧1.4kVでの通常使用
条件から、電子源先端の温度を2150Kに上昇させ
た。このとき引き出し電圧が一定では放出電子電流が急
激に増大するので、放出電子電流が10μAの一定値を
越えないようにあらかじめ引き出し電圧を温度の上昇と
同時にゼロとした。その後放出電子電流は急激に減少し
たので再び引き出し電圧を上げていき、1.4kVまで上
昇させた。この時点での引き出し電圧は、熱電子が引き
出される程度の電圧であればよく、電子源先端の(10
0)面に何も吸着していない状態で、電界放出電子が放
出される程の高い引き出し電圧を印加しないことが重要
である。この電圧は0.5〜1.5kVの範囲の適当な電
圧で良い。この状態で放出電子電流が5μA以下になる
まで放置した。その次に温度を1800Kに設定し、引
き出し電圧を5kVとした。放出電子電流が増加し、あら
かじめ設定された放出電子電流の値10μAに達した
ら、その値以上にならないように引き出し電圧を制御し
引き出し電圧が一定になったところで通常の使用状態
(引き出し電圧1.4kV、電子源先端温度1800K)に戻
した。この時、円形状の電子放出パターンが得られた。
これにより先端が平坦化され、電子源のファセット形成
処理が達成されることがわかった。以上のプロセスフロ
ーをまとめると図15のフローチャートとなる。また上記
実施例では、放出電子電流の上限値を10μAとしたが
この値も5μA以上であれば良く、電源の容量に合わせ
て自由に設定できる。また,1900K以上に加熱した
後再び温度を下げるときの値は1500Kから1850K
の範囲であればよい。
【0054】図12(a)〜12(d)及び13では電子
源先端を2150Kに上昇させた場合のタイムチャー
ト、フローチャートを示したが、この温度は1900K
以上であれば良い。すなわち単結晶1の根元のZr供給
源からの拡散供給量よりも先端からのZrの蒸発量の方
が多くなる温度であれば良い。具体的には放出電子電流
が5μA以下になるまでの時間は1900Kの加熱では
5分、1950Kの加熱では4分、2000Kの加熱で
は3分、2150Kの加熱では2分であった。したがっ
て、それぞれの温度に対し、ここに示した時間よりやや
長く放置することで電子源先端のW(100)面からZrを除
去できる。その後、図12(a)〜12(d)では18
00Kに温度を下げた場合を示したが1500K〜185
0Kの範囲、すなわち単結晶1の根元のZr供給源からの
拡散供給量が、先端からのZrの蒸発量より多くなる温
度であれば良い。ただし、1700K以下では放出電子
電流と放射角電流密度が立ち上がり始めるまでの時間が
長くかかるため1800K程度が最適である。
【0055】また、この実施例では引き出し電圧が5k
Vの場合を示したが、このときの電界は、電子源の先端
曲率半径、及び電子源先端と引き出し電極との間の距離
に依存する。この場合の電界強度Fを引き出し電圧V、
電子源の先端曲率半径rと電子源先端と引き出し電極の
間隔dから式1により計算すると0.2V/Åであった。
引き出し電圧や電極間の距離を変化させて行った実験結
果では、0.15V/Å以上であれば先端が平坦化され、
電子源のファセット形成処理が達成されることがわかっ
た。
【0056】次に、上記電子源を搭載した装置構成の例
を図16に示す。サプレッサ電極41を備えた先端曲率
1.2μmのZr拡散型電子源40の直下にはアノード9が
あり、電子源40の先端とアノード9の間には高圧の引き
出し電源8により電界があたえられている。また,電子
源40の先端は加速電源7によりグランドに対して高い負
の電位が与えられている。サプレッサ電極41には、電
子源40の先端の電位より300Vから800V負の電
位が、電源43により与えられている。電子源40の先端
は、加熱電源6によるフィラメント2(図1参照)ヘの
通電で加熱できるようになっている。引き出し電源8は
制御計算機11により制御されている。電子源40より引き
出された電子42はアノード9の中心に開けられた穴を通
過し、走査偏向器19により偏向された後、電子レンズ15
により収束される。対物絞り14を通過した電子は試料13
上に焦点を結ぶ。このような構成において、搭載した電
子源40の先端曲率半径と放出電子の所望のエネルギー幅
ΔE0を入力することで、制御計算機11が図8または図9
の関係から、印加する必要のある引き出し電圧を決定
し、引き出し電源8を制御する。ここで、所望のエネル
ギー幅ΔE0は電子ビームの加速電圧によって決まる。具
体的な値は、使用する電子レンズおよび偏向器の収差、
必要とする電子ビームの電流量、必要とする電子ビーム
径により決定される。
【0057】一例として、30kV以上の高加速電圧で電子
ビ−ムを放射させる場合は、エネルギー幅の値を特に設
定せずに、引き出し電圧は所望の電流量のみで決定す
る。一方、5kV以下の低加速電圧で電子ビ−ムを放射さ
せる場合はエネルギー幅が広いと色収差によりビーム径
を細く絞れなくなるので、所望のエネルギー幅ΔE0を0.
5eV以下とし、かつ電流の変動がない平衡電圧以上とな
るような引き出し電圧を設定する。これにより、安定性
が高く、電子ビームを細く絞ることのできる電子線装置
が実現できる。
【0058】電子源の先端曲率半径が1.1μm以上でか
つファセットの崩壊が生じない十分な電界強度が印加さ
れていれば、一度上記のようなファセット形成を行えば
補給源が消費されてしまうまで電子は安定に放出され、
プローブ電流の減少は生じない。しかしながら、実際は
装置のメンテナンスや他の設備の点検等で全く同一の状
態が保たれるとは限らない。その場合、装置の再立ち上
げ後、電子源の先端形状が変化している可能性がある。
このような場合、長時間経過後に電流の減少が発生する
可能性がある。これを防止するためには上記処理を定期
的に行なうようにすれば良い。この実施例として、本発
明の電子源を搭載した測長SEMの長期間の稼働状況の一
例を図17に示す。この図ではほぼ2カ月に一回ファセ
ット形成処理を行った場合について示した。電子源の寿
命はほぼ1年であり,その間に6回のファセット形成処
理を行った。その結果,プローブ電流の減少は発生せず
常に非常に安定な電子ビームの放出が得られた。
【0059】上記の実施例では,あらかじめファセット
形成処理を行う周期を決めていた。しかし、ティップ先
端温度の微妙な変化や電子源周囲の真空度の変化などに
よりファセットが急激に崩れ、電流減少が短期間の内に
発生する場合がある。そこで、急激な電流減少が発生す
る数時間前からプローブ電流密度が必ず少しづつ減少す
るということを利用し、プローブ電流が初期電流値より
10%以上低下した時点でファセット形成処理を行うよう
にした。これによってもプローブ電流の急激な減少の発
生を抑えることができた。さらに、前記の実施例に比
べ、無用のファセット形成処理を行わずにすみ、稼働率
が上昇した。このような条件で約1年(8500時間)のプ
ローブ電流をモニタした結果が図18である。図にはプ
ローブ電流が安定であった期間は省略し、ファセット形
成処理を行った前後のみを示した。8500時間の間でファ
セット形成処理は二回行った。処理方法は前記の実施例
と同じ条件である。ビーム立ち上げ後約二ヶ月間経過し
ても電流が全く減少しなかったためファセット形成処理
は行なわなかった。二ヶ月経過後(1450時間)プローブ
電流が10%減少したためその時点でファセット形成処理
を行った。さらに6.5カ月経過後(4680時間)に再びプ
ローブ電流が10%減少したためその時点でファセット形
成処理を行った。そして一年後(8500時間)に電子源を
交換した。このような操作の結果、急激な電流減少を完
全に防ぐことができた。この場合、プローブ電流量が厳
密に規定されている特別の場合を除いて、プローブ電流
が10%以下となった時点で速やかにファセット形成処理
を行う必要はなく、一般にはプローブ電流の低下が15〜
20%になるまでにファセット形成処理を行えば問題な
い。要は、電流の急激な減少を未然に防ぐために、プロ
ーブ電流をモニターし、あらかじめ設定した値より電流
が減少した場合にファセット形成処理を行うようにする
ことである。
【0060】次に、上記実施例を実現するための電子線
装置構成の例を図19に示す。電子線を引き出すための
電源構成、アノード等の電極構成は図16と同様であ
る。電子源40より引き出された電子はアノード9の中
心に開けられた穴を通過し,電子レンズ15により収束
される。対物絞り14を通過した電子は試料13上に焦
点を結ぶ。対物絞り14はアンプ12の入力に接続され
ている。なお、25は試料ステ−ジを示す。対物絞り1
4を通過できなかった電子は、対物絞り14に吸収さ
れ、電流としてアンプ12により増幅および電圧信号に
変換され、制御計算機11に送られる。この信号がこれ
まで述べてきたプローブ電流に相当する。
【0061】前述の如く上記ファセット形成処理を定期
的に行う場合は、制御計算機11にあらかじめファセッ
ト形成処理の周期と時間を設定しておけばよい。また、
前述の如くプロ−ブ電流の低下量を基準に行う場合は、
アンプ12の信号を用いて制御計算機11により上記の
実施例で述べた手順によって引き出し電源8および、加
熱電源6を制御すればよい。
【0062】プローブ電流の計測手段としては、対物絞
り14以外にもさまざまなものが存在する。例えば、ブ
ランキング機構のある電子線応用装置では、ブランキン
グ時に、電子ビームプローブをファラデーカップ等の電
流計測機構に入射させるようにし、この計測結果から引
き出し電源8、及び加熱電源6を制御すればよい。要
は、プローブ電流をなんらかの方法で定期的かつ継続的
に計測し、その結果から電子源の条件を制御できるよう
にすることである。
【0063】上記の例ではプローブ電流の時間的変化か
ら電子源のファセット形成処理が必要かどうかを判断し
ていた。次に述べる実施例では一回の計測結果のみから
電子源のファセット形成処理が必要かどうかを判断でき
る方法について述べる。この方法は,放出電流密度の放
射角分布を計測することで電流密度の減少を事前に予測
するものである。この電子線装置の構成を図20を用いて
説明する。
【0064】電子源40から電子線を引き出すための電
源構成、アノード等の電極構成は図16と同様である。
電子源40より引き出された電子線42は、アノード9
の中心に開けられた孔を通過し、放射角分布測定用偏向
器17を通り、絞り18、偏向器19を通過後、対物絞
り14、対物レンズ15により収束される。そして対物
絞り14を通過した電子は試料13上に焦点を結ぶ。対
物絞り14はアンプ12の入力に接続されている。対物
絞り14を通過できなかった電子は対物絞り14に吸収
され、電流としてアンプ12により増幅および、電圧信
号に変換され,放射角分布測定制御回路16に送られ
る。放射角分布測定回路16は放射角分布測定用偏向器
17の偏向信号を発生すると同時に、偏向信号と同期さ
せてアンプ12からの信号を取り込む。放射角分布測定
用偏向器17は電子線42を軸中心である0mradを中心
として一次元で走査する。走査範囲は±300mradであ
る。これにより放出電子電流の放射角分布が測定でき
る。
【0065】この装置において、電子源40の単結晶ティ
ップを1800Kに加熱し、引き出し電圧を2kVとして
連続で電子放出させて使用した。その間24時間ごとに
放射角分布の測定を行なった。2000時間経過後、そ
れまで一定であった放射角分布が変化した。その結果を
図21に示す。点線で示した分布aは変化前の放射角分
布であり、中心部が最も電流密度が大きく周辺ほど電流
密度は小さくなっていた。一方実線で示した分布bは,
±170mrad付近に電流密度の極小値が存在している。
これは、図4(a)及び4(b)に示した如く、暗いリ
ング状のパターンが存在するときのものに対応する。こ
のまま放置したところ、この極小値の位置が中心に近づ
いていき、48時間後に試料照射電流の急激な減少が発
生した。
【0066】そこで,図21のカ−ブbの様な放射角分
布が測定された時点で図13または図15に示した実施
例の処理を行った。この処理により(100)面の平坦
部(以下ファセットと呼ぶ)を再形成したところ、再び
図21のカ−ブaの様な放射角分布となった。
【0067】また、放射角分布を計測するための電流測
定を対物絞り14でなく試料ステージの周辺部に取付け
られたファラデーカップとした装置構成例を図22に示
す。試料ステージ25の周辺部にはファラデーカップ2
6が設けられている。ファラデーカップ26で検出され
た電子電流はアンプ12を経由して放射角分布測定制御
回路16に送られる。放射角分布を計測するときは電子
線42がファラデーカップ24に入射するようステージ
25が移動するようになっている。その他の使用方法は
上記実施例と全く同様である。なお、電流密度の放射角
分布を測定するには放射角分布測定用偏向器17を動作
させて電子線42を偏向する。それに応じてファラデー
カップ26に到達する電子線42の位置も移動してしま
う。そこでファラデーカップ26の開口の大きさは、偏
向器17で電子線42を±300mrad偏向しても電子線
42が開口からはずれない程度に大きくした。ファラデ
ーカップ26で計測するこの実施例は、対物絞り14で
計測する実施例に比べ放射角分布の角度分解能が高いと
いう長所がある。
【0068】以上、具体的な実施例について述べたが、
放射角分布測定を行なうための具体的な構成はこのほか
にも多数考えられる。要は、拡散型電子源から放出され
る電子線を放射角方向に偏向する偏向器と特定の放射角
の電子線のみを検出する電子検出手段が存在すれば良
い。
【0069】これまで、電子源先端曲率半径を最適化
し、特定の範囲の電界強度を印加して使用することで、
安定で、かつ、エネルギー幅の狭い電子放出が得られる
電子源およびその製造法、電子源のファセット形成手法
およびこの電子源を使用した装置構成については、W(1
00)にZrおよびOを吸着させた電子源について例をあげ
て説明したが、特にこれに限らず高融点金属の単結晶の
先端を加熱し、上記単結晶線先端に仕事関数又は電気陰
性度が該単結晶より小さい金属の吸着層を設けて電界を
印加して電子を取り出す電子源であれば同様な手法が適
用できる。例えば高融点金属の単結晶としてWの〈10
0〉方位または〈110〉方位又は〈111〉方位を用
い、上記吸着原子としてはTi,Hf,Y,Sc等とO,N,C等を用
いてもよい。
【0070】
【発明の効果】本発明によれば電子源の先端曲率半径を
大きくすることにより、ファセットを維持できる電界を
印加してもエネルギー幅の狭い電子放出が得られる。こ
れにより長時間安定でしかも質の良い電子放出が得られ
る効果がある。
【0071】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する電子源の側面図である。
【図2】従来の電子源を従来の使用方法で稼働した場合
の放出電流密度の経時変化を示す図である。
【図3】放出電子のエネルギー幅と放出電子の最小ビー
ム径の関係を示す図である。
【図4】(a)及び(b)は電子放出パターンと、(c)
及び(d)はこれらに対応する電子源先端の斜視図であ
る。
【図5】電流減少が発生する迄の時間と電界強度の関係
を示す図である。
【図6】電子源先端の曲率半径と開き角の定義を説明す
るための電子源先端の断面図である。
【図7】本発明の一実施例による電子源装置の電極部の
断面図である。
【図8】電子源先端の曲率半径と平衡引き出し電圧との
関係、及び電子源先端の曲率半径と放出電子のエネルギ
−幅が一定となる引き出し電圧との関係を示す図であ
る。
【図9】電子源先端の曲率半径と平衡引き出し電界との
関係、及び電子源先端の曲率半径と放出電子のエネルギ
−幅が一定となる引き出し電界との関係を示す図であ
る。
【図10】曲率半径が1.1μm以上の電子源先端を形
成するための、加熱温度と加熱時間との関係を示す図で
ある。
【図11】(a)は本発明の実施例による電子源の先端
部の側面図、(b)はそのA部拡大図である。
【図12】(a)、(b)、(c)、及び(d)はそれ
ぞれ、本発明の実施例による電子源のファセット形成方
法における、引き出し電圧、電子源先端温度、放射角電
流密度、放出電子電流、と時間との関係の示す図であ
る。
【図13】図12(a)、図12(b)、図12
(c)、及び図12(d)に示した実施例のフローチャ
ートである。
【図14】(a)、(b)、(c)、および(d)はそ
れぞれ、本発明の実施例による電子源のファセット形成
方法における、引き出し電圧、電子源先端温度、放射角
電流密度、放出電子電流、と時間との関係を示す図であ
る。
【図15】図14(a)、図14(b)、図14
(c)、および図14(d)に示した実施例のフローチ
ャートである。
【図16】本発明の一実施例による電子源を搭載した電
子線装置の構成図である。
【図17】本発明の一実施例による電子源を搭載した測
長SEMの稼働スケジュー ルの一実施例を示す。
【図18】本発明の一実施例による
【電子源のファセット形成方法】を施した場合の放射角
電流密度の経時変化である。
【図19】本発明の一実施例による電子源のファセット
を形成するための装置構成図である。
【図20】本発明の他の実施例による電子源のファセッ
トを形成するための装置構成図である。
【図21】図20の実施例において、計測した放出電子電
流密度の放射角分布を示す図である。
【図22】本発明のさらに他の実施例による電子源のフ
ァセットを形成するための装置構成図である。
【符号の説明】
1…単結晶ティップ 2…フィラメント 3…補給源 4…端子 5…セラミック碍子又はガラスベース 6…加熱電源 7…加速電源 8…引き出し電源 9…アノード 11…制御計算機 12…アンプ 13…試料 14…対物絞り 15…対物レンズ 16…放射角分布測定制御回路 17…放射角分布測定用偏向器 18…絞り 19…走査偏向器 20…小孔 21…電流密度の低い部分 22…単結晶 23…先端の(100)面 24…二段目の(100)面 25…試料ステージ 26…ファラデーカップ 31…曲率半径 32…円錐台状部分 33…開き角 40…電子源 41…サプレッサ電極 42…電子線 43…サプレッサ電源
フロントページの続き (72)発明者 福原 悟 茨城県勝田市市毛882番地 株式会社日立 製作所計測器事業部内 (72)発明者 木村 伸吾 山口県下松市大字東豊井794番地 株式会 社日立製作所笠戸工場内

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フィラメントと、該フィラメントに取付け
    られ、かつ、先端に平坦な結晶面を有する針状の高融点
    金属単結晶線と、上記平坦な結晶面上に該単結晶線以外
    の金属を少なくとも一種類含む吸着層からなり、上記フ
    ィラメントに通電することで上記単結晶線を加熱し、該
    単結晶線先端に電界を加え電子が取り出されるショット
    キー型電子源において、上記単結晶線の先端は該先端の
    平坦な結晶面を崩さない程度の電界がその先端に印加さ
    れた際に該先端から取り出された電子のエネルギー幅が
    所定の値を越えない様な曲率半径を有することを特徴と
    するショットキー電子源。
  2. 【請求項2】上記曲率半径は、前記単結晶線の先端にお
    ける表面拡散と静電力とがバランスする平衡電界強度と
    前記単結晶線の先端の曲率半径との関係を示す曲線と、
    前記単結晶先端から取り出される電子のエネルギ−幅が
    0.5evになる電界強度と前記単結晶線の先端の曲率半
    径との関係を示す曲線との交点における曲率半径以上で
    あって、2.5μm以下であることを特徴とする請求項1に
    記載のショットキー電子源。
  3. 【請求項3】上記曲率半径が、1.1μm以上、2.5μm以下
    の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のショッ
    トキー電子源。
  4. 【請求項4】上記単結晶線はWの<100>方位,<110>方位お
    よび<111>方位のうちのいずれかであり、上記吸着層はZ
    r,Ti,Hf,Y,Sc,V,Nbのうちのいずれか一種類または複数
    種類の金属原子と、O,N,Cのうちのいずれか一種類の原
    子よりなることを特徴とする請求項1に記載のショット
    キー電子源。
  5. 【請求項5】上記単結晶線はWの<100>方位を有し、上記
    吸着層はZrとOとからなり、上記単結晶線の先端は1.1μ
    m以上2.5μm以下の曲率半径を有することを特徴とする
    請求項1に記載のショットキー電子源。
  6. 【請求項6】上記単結晶線は、エッチング液に浸漬され
    エッチングにより針状に加工後、真空中で2000K以上の
    高温に加熱され、その先端が所望の曲率半径に形成され
    たことを特徴とする請求項1に記載のショットキー電子
    源。
  7. 【請求項7】上記単結晶線は、エッチング液に浸漬され
    エッチングにより針状に加工後、真空中で2000K以上の
    高温に加熱され、その先端が所望の曲率半径に形成され
    たことを特徴とする請求項2に記載のショットキー電子
    源。
  8. 【請求項8】上記単結晶線は、エッチング液に浸漬され
    エッチングにより針状に加工後、真空中で2000K以上の
    高温に加熱され、その先端が所望の曲率半径に形成され
    たことを特徴とする請求項3に記載のショットキー電子
    源。
  9. 【請求項9】フィラメントと、該フィラメントの先端に
    取付けられ、かつ、先端に平坦な結晶面を有する針状の
    高融点金属単結晶線と、上記平坦な結晶面上に該単結晶
    線以外の金属を少なくとも一種類含む吸着層と、前記フ
    ィラメントをサポ−トするとともにこれに給電するリ−
    ド端子と該リ−ド端子を埋め込み固定する絶縁板とから
    なり、上記フィラメントに通電することで上記単結晶線
    を加熱し、該単結晶線先端に電界を加え電子が取り出さ
    れる電子源において、上記単結晶線の先端は、該先端の
    平坦な結晶面を崩さない程度の電界がその先端に印加さ
    れた際、その先端から取り出された電子のエネルギー幅
    が所定の値を越えない様な曲率半径を有することを特徴
    とするショットキー電子源。
  10. 【請求項10】前記曲率半径が、前記単結晶線の先端に
    おける表面拡散と静電力とがバランスする平衡電界強度
    と前記単結晶線の先端の曲率半径との関係を示す曲線
    と、前記単結晶先端(吸着層)から取り出される電子のエ
    ネルギ−幅が0.5evになる電界強度と前記単結晶線の
    先端の曲率半径との関係を示す曲線との交点における曲
    率半径以上であって、2.5μm以下であることを特徴とす
    る請求項9に記載のショットキー電子源。
  11. 【請求項11】前記曲率半径が、1.1μm以上、2.5μm以
    下の範囲にあることを特徴とする請求項9に記載のショ
    ットキー電子源。
  12. 【請求項12】上記単結晶線はWの<100>方位,<110>方位
    および<111>方位のうちのいずれかであり、上記吸着層
    はTi,Hf,Y,Sc,V,Nbのうちのいずれか一種類または複数
    種類の金属原子と、O,N,Cのうちのいずれか一種類の原
    子よりなることを特徴とする請求項9に記載のショット
    キー電子源。
  13. 【請求項13】上記単結晶線はWの<100>方位を有し、上
    記吸着層はZrとOとからなり、上記単結晶線の先端は1.1
    μm以上2.5μm以下の曲率半径を有することを特徴とす
    る請求項9に記載のショットキー電子源。
  14. 【請求項14】上記単結晶線は、エッチング液に浸漬さ
    れエッチングにより針状に加工後、真空中で2000K以上
    の高温に加熱され、その先端が所望の曲率半径に形成さ
    れたことを特徴とする請求項9に記載のショットキー電
    子源。
  15. 【請求項15】上記単結晶線は、エッチング液に浸漬さ
    れエッチングにより針状に加工後、真空中で2000K以上
    の高温に加熱され、その先端が所望の曲率半径に形成さ
    れたことを特徴とする請求項10に記載のショットキー
    電子源。
  16. 【請求項16】上記単結晶線は、エッチング液に浸漬さ
    れエッチングにより針状に加工後、真空中で2000K以上
    の高温に加熱され、その先端が所望の曲率半径に形成さ
    れたことを特徴とする請求項11に記載のショットキー
    電子源。
  17. 【請求項17】フィラメントと、該フィラメントの先端
    に取付けられ、かつ、先端に平坦な結晶面を有する針状
    の高融点金属単結晶線とにより構成され、上記単結晶線
    の先端が、その先端の平坦な結晶面を崩さない強さの電
    界がその先端に印加された際、その先端から取り出され
    た電子のエネルギー幅が所定の値を越えない様な曲率半
    径を有し、上記平坦な結晶面上に該単結晶線以外の金属
    を少なくとも一種類含む吸着層が存在し、上記フィラメ
    ントに通電することで上記単結晶線が加熱され、該単結
    晶線先端に電界を加え電子が取り出されるショットキー
    電子源と、該ショットキー電子源を加熱する加熱電源
    と、該ショットキー電子源から電子を引き出すための電
    界を与える引出し電源と、該ショットキー電子源からの
    前記引き出された電子を加速するための加速電源と、安
    定な電子放出が維持できる強度で、かつ、所定の値より
    狭いエネルギー幅の電子放出が得られる強度の電界が、
    上記電子源の針状単結晶線先端に生じるよう前記引き出
    し電源を制御する制御計算機と、該ショットキー電子源
    から引き出された電子を収束し、試料に照射する絞りを
    備えた電子レンズとにより構成されたことを特徴とする
    電子線装置。
  18. 【請求項18】高融点金属の細線をヘアピン状に形成し
    たフィラメントと、該フィラメントの先端に取り付けら
    れた高融点金属の単結晶線とで構成され、仕事関数又は
    電気陰性度が該単結晶線より小さい金属からなる吸着層
    が上記単結晶線の先端に設けられたショットキー電子源
    を備え、該吸着層を安定に維持できる温度まで該単結晶
    線を電流加熱する加熱電源、該単結晶線先端に電界を加
    え電子を引き出す引出し電源、該電子源からの放出電子
    を加速するための加速電源、該電子源から引き出された
    電子を収束し試料に照射する絞りを備えた電子レンズ、
    及び該電子源からの放出電子電流の放射角方向の電流密
    度分布を計測する手段とを備えた電子線装置において、
    前記放射角方向の電流密度分布に二つ以上の極小値が検
    出された場合には、該極小値が消滅するまで上記加熱電
    源と上記引出し電源とを制御することを特徴とする電子
    線装置。
  19. 【請求項19】上記放出電子電流の放射角方向の電流密
    度分布計測手段が、上記電子源直下に配置されたアノー
    ド電極、該アノード電極の下方にある電子線偏向器、該
    電子線偏向器より下方にある角度分布検出用絞りと、該
    絞りより下方にある電流検出手段とにより構成され、上
    記電子線偏向器による上記電子線の偏向と同期して該電
    流検出手段により上記電子線の電流密度分布を計測する
    ことを特徴とする請求項18に記載の電子線装置。
  20. 【請求項20】上記電流検出手段は、上記角度分布検出
    用絞りよりも下方にある絞りに照射された電流を増幅器
    により検出するものであることを特徴とする請求項19
    に記載の電子線装置。
  21. 【請求項21】上記電流検出手段が上記電子レンズの下
    方にある試料ステージ上に設けられた電流検出用のファ
    ラデーカップからなり、上記電子線の電流密度角度分布
    計測時に該電流検出用のファラデーカップに上記電子線
    が照射されるよう上記試料ステージを移動しうることを
    特徴とする請求項19に記載の電子線装置。
  22. 【請求項22】高融点金属の細線をヘアピン状にフィラ
    メントとし、上記フィラメントの先端に高融点金属の単
    結晶線を取付け、上記単結晶線先端に仕事関数又は電気
    陰性度が該単結晶より小さい金属の吸着層を設け、該吸
    着層が安定に維持できる温度まで該単結晶線を電流加熱
    した状態とし、該単結晶線先端に電界を加え電子を取り
    出す電子源において、最初に上記金属の吸着層を取り除
    き、次に上記高融点金属の単結晶線先端原子のマイグレ
    ーションによる先端鈍化を防ぐために必要な電界強度以
    上の電界を放出電子電流が飽和するまで印加することを
    特徴とする電子源ファセット形成処理方法。
  23. 【請求項23】上記金属の吸着層が蒸発するまで温度を
    上昇させ、電子放出パターンが消えた後に、該吸着層が
    安定に維持できる温度に戻し、次に上記高融点金属の単
    結晶線先端原子のマイグレーションによる先端鈍化を防
    ぐために必要な電界強度以上の電界を印加し、均一な円
    形の電子放出パターンが得られるまでその状態を維持す
    ることを特徴とする電子源ファセット形成処理方法。
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