JPH08218148A - ピストンリング用鋼線およびその製造方法 - Google Patents

ピストンリング用鋼線およびその製造方法

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JPH08218148A
JPH08218148A JP4356295A JP4356295A JPH08218148A JP H08218148 A JPH08218148 A JP H08218148A JP 4356295 A JP4356295 A JP 4356295A JP 4356295 A JP4356295 A JP 4356295A JP H08218148 A JPH08218148 A JP H08218148A
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pickling
piston ring
less
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Ken Nakamura
憲 中村
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Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 主として17Cr系マルテンサイトステンレス
鋼の改良に関し、特に鋼線をピストンリングにカーリン
グして加工する時の耐折損性に優れたピストンリング材
およびその製造方法を提供する。 【構成】 望ましい態様としては、重量%で、C 0.8%
を越え0.9%未満、Si 1.0%以下、Mn 1.0%以下、Cr 16
〜18%、MoとWの1種または2種がMo+1/2Wで0.8〜
1.2%、VとNbの1種または2種を合計で0.05〜0.2%、
残部Feと不純物からなる化学組成を有し、鋼線の表面
は酸化スケールまたは酸洗い跡の残存面積率が2%以下で
あることを特徴とする耐折損性のすぐれたピストンリン
グ用鋼線、および製造方法として、熱間圧延した線材を
シェービングして酸化スケールを除去した後に引抜き加
工を行なうか、酸洗いにバフ研磨またはショットピーニ
ングを行なって、酸化スケールまたは酸洗い跡の残存面
積率が2%以下とすることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関に使用される
ピストンリング用鋼線およびその製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】ピストンリングの材質には従来鋳鉄が用
いられてきたが、近年のエンジンの効率化、高負荷さら
に軽量化の要求に伴いスチール製ピストンリングの適用
が拡大しつつある。このスチールピストンリングは、ピ
ストンリングの薄肉化が可能であるので軽量化の要求に
応えるとともに、さらに平線をリング加工することによ
って製造されるため、製造工程が鋳鉄リングに比較して
著しく簡略化できる利点がある。
【0003】現在、自動車エンジン用のスチール製ピス
トンリングのうち、特に過酷な使用条件が要求されるも
のに対してはSi-Cr鋼(JIS SWOSC-V)、SKD61相当の
鋼、13Cr系および17Cr系マルテンサイトステンレス鋼
などが用いられている。これらの材質は、リング加工性
の要求から、かたさHRC 38〜45程度で使用されており、
シリンダーと摺動するリング外周部は、耐摩耗性や耐焼
付性を向上させるため、硬質Crメッキや硬質粒子を含
む複合メッキまたは高Cr系の材質では主に窒化処理が
行われている。このような背景からスチールリング材と
して、本願出願人は、多くの材質を提案し実用化してき
た。
【0004】本発明が対象とする17Cr系マルテンサイ
トステンレス鋼からなる材質の提案例としては、特開昭
59-162346号、特開昭62-294152号などがある。このう
ち、特開昭59-162346号に開示される圧力リングは炭素
含有量を比較的高めにしてCr炭化物を面積比で8〜20%
含有させたもので耐ヘタリ性と耐摩耗性が優れるもので
ある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】17Cr系のピストンリ
ング材は現用の量産材で最もCr含有量の高い鋼であ
り、クロム炭化物からなる大きな一次炭化物が多数分散
した組織を有する。この組織は、耐摩耗性の点からは望
ましいので、圧力リングを中心に耐摩耗性の必要なリン
グに用いられている。しかし、17Cr系の材料は、相対
的にCr含有量の少ない8Cr〜13Cr系の鋼と比較して炭
化物が大きくなり、多量に分散する分だけピストンリン
グへの加工上の不具合が生じている。鋼製のピストンリ
ングは、通常の工程では、焼入焼もどしされた硬質(HR
C38〜45程度)の平鋼の素線をカーリングして、一個一個
のピストンリングに製造されるが、この時点で17Cr系
の材料は特に折損し易いのである。ピストンリングのカ
ーリング中の折損は、特に厚さ2.0mm以上の太寸法の材
料に発生し易く、大型ディーゼルエンジン用のピストン
リング製造時の最も重要な技術課題となっている。
【0006】現在の17Cr系ピストンリング材は、通常
は熱間加工線材を原料に、何度かの冷間加工を繰り返し
て製造されている。冷間加工の手段としては、ロール成
形や引抜き加工が採用されるが、特に加工の困難な場合
は、温間伸線を行なうこともある。冷間加工と焼なまし
の後、伸線された鋼線は、熱処理(焼入、焼もどし)さ
れて、いったんコアに巻取られたのち、ピストンリング
のカーリング成形に移される。したがってカーリング時
には、38〜45HRC程度の硬質の材料になっているので、
折損にも敏感になっている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記の鋼製ピ
ストンリング材質のうち、主として17Cr系マルテンサ
イトステンレス鋼の改良に関し、特に鋼線をピストンリ
ングにカーリングして加工する時の耐折損性に優れたピ
ストンリング材を提供するものである。本発明者等は、
17Cr系のピストンリング折損事故をピストンリング材
の内質、成分、表面状態などの外質のあらゆる角度から
検討を加えた結果、折損の主原因は、ピストンリング材
の表面の性状に大きく左右されること、さらに成分を極
めて狭い範囲に厳格に制御することで、ピストンリング
としての性能を維持しつつ、折損事故を大幅に減らすこ
とができることを解明した。
【0008】表面性状については、工程中で残った疵、
寸法バラツキ、表面粗さなどをチェックし、折損との因
果関係を調べた。その結果、ピストンリング鋼線に残る
疵の頻度が高い程、折損事故が多いことがわかった。疵
の原因は、巻き出しや巻取り時の共ずれ、リールフラン
ジとの接触疵、初期の疵が圧延でかぶり疵となるもの、
酸化スケールが除去されきれずに残ったもの、引抜き用
の潤滑剤が酸洗いで除去されきれずに残ったものなどに
分類できる。これらの疵のうち、外傷的なものについて
は、装置や圧延工程の改善などで対策がとれるし、突発
的な発生なので危険率も分散され得る。ところが、酸化
スケールの残存や酸洗い跡の残存は、ほとんどが線の全
体に対して連続的な場合が多く、折損の危険性を全長に
渡ってはらんでいることになる。しかも、酸化スケール
や酸洗い跡の残存は、ピストンリング鋼線のコーナ部に
発生することが多く、折損はコーナ部からの原因が圧倒
的に多いのである。
【0009】従来のピストンリング鋼線は、一つはカー
リングの折損が大きくクローズアップされなかったこ
と、他の一つは工程上、コスト高になるコーナ部の丁寧
な仕上げと検査は困難視されていたことなどから、上記
の酸化スケールや酸洗い跡の残存は、当然存在するもの
として許容され、折損の原因とは気付いていなかったも
のである。しかし、今回折損部の観察を徹底的に行な
い、残存疵と折損との因果関係を統計的に調べた結果、
酸化スケールや酸洗い跡の残存が主原因の一つになって
いることが初めて明らかにされた。素材を熱間加工で製
造する場合、酸化スケールの生成は回避できず、何等か
の方法で極少または皆無にしなければならないというの
が本発明の構成要件の一つである。
【0010】酸化スケールを酸洗いなどで完全に除去し
ても、酸洗い跡が残っていては、本発明の目的は達成で
きない。酸洗いは、酸化スケールの除去の他、引抜きダ
イスの潤滑材除去のためにも行なうことがあるが、表面
を清浄にするための酸洗いでも、その残存面積率を2%以
下にするのが、本発明の手段の一つである。そのための
手段としては、熱間圧延した線材の酸化スケールを除去
する方法として、前記線材をシェービング(いわゆる皮
むきである)する方法が採用できる。しかし、冷間引抜
きや温間伸線の過程で潤滑剤を用いるし、酸洗いするこ
とがあるので、この場合は酸洗いした線材にバフ研磨ま
たはショットピーニングを行なって、酸化スケールまた
は酸洗い跡の残存面積率を2%以下にする製造方法を採用
する。また、化学組成的にはピストンリングとしての特
性を満足させ、かつ耐折損性の観点から、特に多量の炭
化物を形成するCとCrの上限が定められ、それぞれC
0.9%未満、Cr 18%以下である。すなわち、本発明は重
量%でC 0.9%未満、Cr 18%以下を含有しFeを主とす
る化学成分を有した鋼であり、鋼線の表面は酸化スケー
ルまたは酸洗い跡の残存面積率が2%以下であることを特
徴とする耐折損性のすぐれたピストンリング用鋼線であ
る。
【0011】
【作用】本発明の目的である折損防止の点からは、鋼線
の表面が酸化スケールや酸洗い跡の残存面積率が2%以下
にすれば、化学組成的にはC,Crの上限を前記のよう
に制限することで十分である。すなわち、C,Cr以外
の元素の多寡はそれほど問わない。CやCrの上限値を
定めるのは、この値より多くなると鋼線を構成する組織
が大きく変化して、酸化スケールまたは酸洗い跡の残存
という表面性状の影響が前記の組織変化(特に炭化物量
の増大)に打ち消されるからである。その限界値はCが
0.9%未満、Crが18%以下であるが、ピストンリングとし
ての要求特性を十分満足するには、さらに他の元素が添
加されていることが望ましい。また、本発明は主に17C
r系のピストンリングを対象にしており、C,Crの範囲
はそれぞれC 0.8%を越え0.9%未満、Cr 16%〜18%と狭
い範囲に管理することがピストンリングとしての特性を
維持し、耐折損性も保証される点から望ましい。
【0012】したがって、本発明での最も望ましい化学
組成上の態様はC 0.8%を越え0.9%未満、Si 1.0%以
下、Mn 1.0%以下、Cr 16%〜18%、Mo+1/2W 0.8%〜
1.2%、VとNbの1種または2種を合計で0.05%〜0.2%、
残部Feと不純物からなる化学成分を有し、鋼線の表面
は酸化スケールまたは酸洗い跡の残存面積率が2%以下で
あることを特徴とする耐折損性のすぐれたピストンリン
グ用鋼線である。本発明に類似する鋼としては、X90Cr
MoV18と称されるC 0.9〜1.05%、Cr17〜19%、Mo 1.
0〜1.3%、V 0.07〜0.12%や、9Cr18MoVと称されるC
0.75〜0.95%、Cr 16〜18%、Mo 0.75%未満、V 0.1%
が知られている。しかし、X90CrMoV18はC%が高
く、かつCrも高い値を選んだ場合には、本発明と比較
して炭化物の量は大幅に増大し、たとえ表面の酸化スケ
ールまたは酸洗い跡の残存を実質的になくしたとしても
折損の危険性は本発明より大幅に高くなる。
【0013】一方、9Cr18MoV鋼は、Moの添加が任意
の鋼であり、たとえ添加しても0.7%未満ではピストンリ
ングに有効な微細な炭化物の析出量が不十分であり、十
分耐摩耗性があるピストンリングは得られない。したが
って、これらの公知合金はピストンリングとしては実用
化されていない。本発明の特徴の一つは、上述のよう
に、耐折損性の観点から、従来注目されていなかった表
面の酸化スケールまたは酸洗い跡の残存に着目し、これ
を実質的に除去した鋼線とし、17Cr系のピストンリン
グ鋼線であっても折損がなく安定したピストンリングの
カーリングを可能にしたものである。本発明の特徴は、
ピストンリングとしての特性と耐折損性を兼備した新し
い化学成分と表面性状の組合せを提案するもので、この
ようなピストンリング鋼線は従来知られていなかったも
のである。以下に本発明の望ましい化学組成上の態様に
ついて各元素の限定理由を述べる。
【0014】CとCrの上限値を定める理由については
既に述べたが、Cが0.8%以下になると、耐摩耗性に寄与
する炭化物が減少する他、固溶強化の割合も小さくなる
ので、耐折損性には有利であっても、ピストンリングの
特性が劣化しないためには、C量は0.8%を越える値とす
るのが望ましいのである。Crは炭化物を形成し耐摩耗
性向上に寄与するとともに、基地に固溶して耐食性と軟
化抵抗を高め、エンジン稼働中の昇温による熱ヘタリに
対して効果がある。また、焼入性を確保し十分な熱処理
硬さを得るためにも16%以上含有させるのがよい。Cr量
が18%を越えると炭化物(M73型やM236型)が急に
増大し、折損の原因になる炭化物の寄与率が著しく大き
くなる。その結果、酸化スケールや酸洗い跡の残存が少
ないという本発明の他の特徴が打ち消されるようになる
のでCrは18%以下とする。したがって、本発明のCrの
範囲は18%以下とし、望ましくは16%〜18%の範囲とす
る。
【0015】Siは通常脱酸剤として添加されるが、1.0
%を越えると冷間加工性を害するだけでなく、熱伝導率
を低下させることにより、シリンダー内壁との摺動によ
る接触面の昇温を助長し、耐焼付性を害するため1.0%を
上限とするのがよい。特に耐折損性を向上させるために
は、Siは0.5%以下にするのが望ましい。MnはSiと同
様に脱酸剤として添加されるが、1.0%を越えると熱間に
おける加工性を害する。特に本発明のピストンリング材
用の平線では高い加工率を必要とするため1.0%を上限と
するのがよい。
【0016】Mo,Wはいずれも炭化物形成元素として同
じ作用があり、これらの元素を1種または2種添加する
ことにより耐摩耗性が一層向上する。MoやWは炭化物
中にも固溶してこれを強化し、さらに焼もどしにおける
軟化抵抗を高める。ピストンリングに窒化を行なう場合
には、窒化層形成にも寄与し、耐摩耗性、耐焼付性を向
上させる。これらの作用を十分得るためにはMo+1/2W
は0.75%程度では不十分であり、0.8%以上を必要とす
る。しかし、Moの量は靭性に大きく影響し、過度の添
加は加工性、靭性を劣化させて折損の原因になる。Wの
原子量はMoの2倍であるので、(Mo+1/2W)の量の範
囲を0.8〜1.2%とする。さらに望ましい範囲は(Mo+1/2
W)が1.0〜1.1%程度である。
【0017】V,Nbは、MC型の硬質炭化物形成元素
であり、耐摩耗性の向上に有効である点で等価である。
しかしながら、過度の添加は加工性、靭性を劣化させる
と共に、硬質の炭化物が相手(シリンダ)を摩耗させ易
い。したがって、VとNbの1種または2種を0.05%〜0.
2%添加するのが望ましい。NiとCoは本発明の鋼線で
は特に添加する必要はないが、添加する場合には単独ま
たは複合で添加することができ、それぞれ以下の作用効
果がある。Niは基地中に固溶し、靭性を付与する作用
を有する。しかしながら、過度の添加は焼なまし硬さの
低下を妨げるので、添加する場合には上限を2.0%とす
る。Coは耐硫酸性など耐食性を向上させる目的で添加
するとよく、添加する場合には2.0%以下で添加できる。
【0018】S,Oは、通常不純物元素として不可避的
に微量含有される。SとOは主に非金属介在物として鋼
中に存在し、耐折損性を目的とする本発明では特に悪影
響を及ぼす。耐折損性を高め、ピストンリング材に要求
される疲労強度向上の効果を得るためには、S,Oをか
なり低い水準に抑える必要があり、S 0.003%以下、O
25ppm以下に規制すると本発明の目的がより確実に達成
できる。Pは、不純物元素で、結晶粒界に偏析し、粒界
強度を低下させて折損の原因になり得る。また、凝固時
のマクロ偏析も助長するので、Pについては0.05%以下
に規制し、さらに0.03%以下にするのが望ましい。
【0019】次に本発明のピストンリング鋼線が有する
他の重要な構成要件である、表面性状について述べる。
ピストンリング鋼線のピストンリングへの曲げ加工(カ
ーリング)での折損事故のうち、素材に起因する原因を
解析すると、外傷を起点とするものが多い。この外傷は
鋼線の製造時の取扱い不備によるものが大部分を占め、
発生頻度も突発的である。しかし、折損調査の結果、慢
性的な折損は平線のコーナー部を起点にしているものが
多く、その周辺に酸化スケールまたは酸洗い跡の残存が
見られるものが多かった。そこで、折損率との関係を調
べてみると図1に示すような相関が認められたのであ
る。ここで折損率とは、月当たりで折損するコイル数を
百分率で表わしたものである。コイル数を基準にしたの
は、ピストンリングは1コイル毎に連続して生産される
ため、コイル毎に折損が生じるか否かが工程の障害度を
決定するのに重要であるからである。たとえば月600コ
イルの製造を行ない、その内6コイルに折損が生じれ
ば、その折損率は6/600×100=1%ということになる。
【0020】ピストンリングの生産を阻害しない折損率
は高くても1%未満と言われており、そのためには、酸化
スケールまたは酸洗い跡の残存面積率が2%以下になると
折損事故は大幅に改善されるのである。もちろん、酸化
スケールまたは酸洗い跡の残存をなくしても大きな外傷
があったり、組織的な異常があれば、折損の危険性は高
まることは言うまでもない。したがって、本発明の表面
性状の条件は、外傷を極力減らし、組織条件を満足する
ことを前提とした必要条件である。本発明は、従来のピ
ストンリングの折損が、ピストンリング線の外傷に起因
すると言われていたために盲点となっていた、表面の酸
化スケールと酸洗い後の残存に初めて着目したものであ
る。従来、酸化スケールは「ほとんど、除去すればよ
い」とか、「酸洗いをすればよい」とあいまいにされて
いた点に定量的な評価を入れ、鋼線の材質と同時にその
限界を明らかにした点に大きな特徴がある。特に酸洗い
については、酸洗いをしても折損の原因が依然として残
り、酸洗い跡も表面積全体の2%以下に管理することが重
要であることを新たに見出したものである。
【0021】以上の点から、本発明の構成では、酸化ス
ケールまたは酸洗い跡の残存を実質的になくすことと、
化学組成の要件の少なくとも2つが必要である。酸化ス
ケールまたは酸洗い跡の残存を実質的に無くすことは、
図1のデータからも裏付けられるように、残存面積率が
ピストンリング鋼線全体の表面積の2%以下であることを
意味する。酸化スケールは引抜きや圧延前の酸洗いを十
分行なうことで除去できる。しかし、酸洗い肌も残って
いると折損の原因になるのである。その典型的な形態を
図3に示す。図3は従来の圧力リング用の鋼線(4.6厚
さ×5.6幅)について、コーナ部を調査したものである。
コーナ部には、酸洗いの跡が残って肌が荒れている。酸
洗いは酸化スケールの除去以外に引抜き時の潤滑剤を除
去するためにも行なわれることがある。この場合も酸洗
いが不十分であると潤滑剤が残るが、過剰な酸洗いをす
ると図3のようなコーナ部の肌荒れとなる。本発明のピ
ストンリング用鋼線は、このような肌荒れ部が表面積全
体の2%以下であることを特徴としている。酸化スケール
法または酸洗い跡の残存は皆無にすることが望ましい
が、残存部の除去の手間や検査の手間を考えると工業的
ではない。本発明では、折損事故を統計的に調査し、残
存面積率を2%以下にすれば、ピストンリングのカーリン
グは工業的に十分行なえることを確認したものである。
【0022】酸化スケールまたは酸洗い跡の残存を除去
する方法としては、本発明のように熱間圧延後にシェー
ビング(皮剥ぎ加工)を行なった後、引抜きを行なう方
法がある。しかし、シェービングを行なっても酸洗いを
行なう場合は、コーナ部を注意深くバフ研磨などで除去
する必要がある。ショットブラストなどの手段も有効で
あるが、酸洗い肌は除去されにくいので、寸法の許容さ
れる段階で回転バフなどで削り取って、除去するのが望
ましい。図2は、そのような処理を行なった本発明の圧
力リング用鋼線のコーナ部を観察したものである。図3
と比較してコーナ部の肌荒れが皆無になっていることが
わかる。このような鋼線はピストンリングへの曲げ加工
も容易であり、折損事故が防止できる。
【0023】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明す
る。表1に本発明による鋼線と比較鋼線の化学組成(wt
%)を示す。本発明の組成は最も望ましい組成の範囲を
選んだ。比較鋼線No.11は、先に述べたX90CrMoV18
に相当する鋼、比較鋼線No.12は9Cr18MoVに相当す
る鋼、No.13は13Cr系の鋼線の組成の一例を示すもの
である。いずれの材料も溶製材を熱間圧延して素材とし
た後、冷間引抜きを繰り返して4.0mm厚さ×5.5mm幅の寸
法の圧力リング用鋼線に仕上げた。表2に製造条件ごと
に耐摩耗性と耐焼付性および酸化スケールまたは酸洗い
跡の残存率と折損率を示す。鋼線の番号1〜10のうち、1
A〜10Aは本発明によるものである。1A,2A,4A,5Aはシェ
ービングにより熱間圧延素材を削り落し、引抜きを行な
った。3A,6A,7A,8A,9A,10Aは最終工程に近いところで、
途中バフ研磨を行ない、酸洗いの跡を除去したものであ
る。1B〜10Bは1A〜10Aとそれぞれ同一の化学成分を有す
る材料について、酸洗いを実施したが、従来のままの工
程でバフ研磨を行なっていないものである。すなわち、
酸化スケールや酸洗いの残存跡がたくさん残っているも
のである。いずれの材料も焼入と焼もどしは鋼線の製造
の途中で行なっており、HRC41.0を狙って熱処理を行な
った。
【0024】
【表1】
【0025】摩耗試験は、往復動摩擦試験機を用いて、
FC25鋳鉄をシリンダを想定した相手材として試験を
行ない、摩耗量を測定して、13Cr系の比較鋼線No.13
の値を100として指数で示した。耐焼付性は、ファビリ
ー摩耗試験機により評価した。この試験は300rpmで回転
する試験材を相手材である一対のVブロックではさみ、
荷重を徐々に加えながら、テストピンのトルク変動で焼
付を感知し、この時の焼付荷重を検出するものである。
試験には相手材にFC25を用い、潤滑油を滴下しなが
ら試験を行なった。耐焼付性は比較鋼線No.13のピスト
ンリング材の値を100として指数で示した。摩耗試験と
耐焼付性の評価はトライポロジイ的な評価試験であり、
試験条件によって微妙に結果が変わり得るので絶対評価
は難しい。しかし、同一試験グループの中の相対評価は
正しく評価できるので、表1にはNo.13の化学成分を有
する鋼線を基準として相対評価を行なった。
【0026】表2の耐折損性は、No.1〜13の鋼線をピ
ストンリングの形状に曲げ加工して折損率を評価した。
本発明の鋼線は従来の13Cr系のステンレス鋼線(No.1
3)より耐摩耗性や耐焼付性が優れていることは当然であ
るが、同じ17Cr系の公知の合金(No.12)と比較しても
耐摩耗性、耐焼付性が優れている。比較合金のNo.11は
シェービングを行ない、酸化スケールも酸洗いの跡も残
らないようにしたが、折損率は3.1%と良くならなかっ
た。これは炭素含有量が高く、本発明の実施例と比較し
て炭化物量がかなり多く析出するため、表面の影響より
組織上の耐折損性が劣化するためと考えられる。No.11
を除いては、いずれも酸化スケールまたは酸洗い跡の残
存が2%以下である1A〜10Aシリーズは、折損率がゼロま
たはそれに近く、本発明の効果が出ている。また、1A,2
A,4A,5Aのシェービング工程を経たものと3A,6A,7A,8A,9
A,10Aのバフ研磨で酸洗い跡を除去したものの間には、
効果として差異はなく、本発明の製造方法がいずれも有
効であることがわかる。
【0027】
【表2】
【0028】
【発明の効果】本発明の鋼線は、酸化スケールまたは酸
洗い跡の残存面積率を2%にするように、シェービングや
バフ研磨でピストンリングコーナ部の表面性状を改善す
ることで折損事故が大幅に減少するものである。かつ、
ピストンリング鋼線の化学組成を特定の範囲にすること
と組合せの効果によりピストンリングの特性も維持しな
がら、曲げ加工時の折損を防止または大幅に減らすこと
ができるので、ピストンリング製造の歩留と効率および
ピストンリングの性能を共に向上させることができるも
のである。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸化スケールまたは酸洗い跡の残存面積率とピ
ストンリング成形時の折損率の関係を示す図である。
【図2】本発明のピストンリング用鋼線のコーナ部を示
す顕微鏡写真である。
【図3】従来のピストンリング用鋼線のコーナ部に残存
する酸洗い跡の一例を示す顕微鏡写真である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C 0.9%未満、Cr 18%以下を
    含有しFeを主とする化学組成を有し、鋼線の表面は酸
    化スケールまたは酸洗い跡の残存面積率が2%以下である
    ことを特徴とする耐折損性のすぐれたピストンリング用
    鋼線。
  2. 【請求項2】 重量%で、C 0.8%を越え0.9%未満、Si
    1.0%以下、Mn 1.0%以下、Cr 16〜18%、MoとWの1
    種または2種がMo+1/2Wで0.8〜1.2%、VとNbの1種
    または2種を合計で0.05〜0.2%、残部Feと不純物から
    なる化学組成を有し、鋼線の表面は酸化スケールまたは
    酸洗い跡の残存面積率が2%以下であることを特徴とする
    耐折損性のすぐれたピストンリング用鋼線。
  3. 【請求項3】 熱間圧延した線材をシェービングして酸
    化スケールを除去した後に引抜き加工を行なうか、酸洗
    いにバフ研磨またはショットピーニングを行なって、酸
    化スケールまたは酸洗い跡の残存面積率が2%以下とする
    ことを特徴とする耐折損性のすぐれたピストンリング用
    鋼線の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2001029274A1 (en) * 1999-10-18 2001-04-26 Haldex Garphyttan Aktiebolag Wire-shaped product, method for its manufacturing, and wear part made of the product

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