JPH08212847A - 複合多芯超電導線 - Google Patents

複合多芯超電導線

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JPH08212847A
JPH08212847A JP7016645A JP1664595A JPH08212847A JP H08212847 A JPH08212847 A JP H08212847A JP 7016645 A JP7016645 A JP 7016645A JP 1664595 A JP1664595 A JP 1664595A JP H08212847 A JPH08212847 A JP H08212847A
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JP
Japan
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barrier layer
filament
wire
superconducting
vol
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Withdrawn
Application number
JP7016645A
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English (en)
Inventor
Kazuya Daimatsu
一也 大松
謙一 ▲高▼橋
Kenichi Takahashi
Hiroyasu Yumura
洋康 湯村
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Publication date
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E40/00Technologies for an efficient electrical power generation, transmission or distribution
    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ヒステリシス損失の低減、交流クエンチ電流
の周波数依存性の低減または零磁界での50Hzにおけ
る臨界電流値の向上のいずれかを達成し、特性の向上し
た複合多芯超電導線を提供する。 【構成】 超電導金属フィラメント1が常電導マトリク
ス2内に複数本埋込まれてなる複合多芯超電導線4,6
であって、フィラメント1の外周には、フィラメント1
と常電導マトリクス2との反応を防止するための超電導
金属からなるバリア層7が形成され、バリア層7の体積
が、フィラメント1とバリア層7と常電導マトリクス2
とを含む複合多芯超電導線全体の体積の3vol%より
大きく45vol%以下であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複合多芯超電導線に関
するものであり、特に、超電導トランス、超電導発電
機、超電導限流器等の電力応用分野で使用される超電導
線材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】超電導分路リアクトルや超電導変圧器に
用いられる超電導線として、交流損失低減のために超電
導フィラメント径を1μm以下にしたNbTi超電導線
やNb 3 Sn超電導線が実用化されつつある。具体的な
線材構成としては、電気学会静止器回転機合同会資料P
103(1992年12月3日発行)等に報告されてい
るように、0.14μmから0.2μm程度のNbTi
フィラメント径を有する素線が開発され、50/60H
zでの商用周波数における交流通電特性や交流損失特性
が測定されている。さらには、素線を7×7本撚りした
二重撚線等が開発されており、交流の臨界電流値として
は1kA級の導体が開発されている。
【0003】ところが、0.1μm級のフィラメント径
にすると、交流損失は数十kW/m 3 (0.5T,50
Hz)のレベルまで低減できるが、臨界磁界や臨界温度
が低下するために、交流の通電電流値は直流の臨界電流
値と比べて低下するという問題点があり、実用交流用線
材開発のネックとなっている。特に、この交流通電電流
の低下は、素線を撚り合せた撚線導体において顕著であ
る。これらの理由としは、以下の2点が考えられる。
【0004】すなわち、まず第1には、臨界磁界が、通
常の数十μmのフィラメント径の線材の場合の約9Tと
比較して1〜2T低くなり、外部磁界による臨界電流密
度Jcの低下率が大きくなるため、通電によるわずかな
自己磁界によっても臨界電流が低下するためであると考
えられる。また、第2には、臨界温度が、通常の数十μ
mのフィラメント径の線材と比較して1℃から2℃低い
ために、通電中の線材のわずかな動きによる微小な発
熱、あるいは冷却の不均一等によって、常電導転位が発
生するためであると考えられる。
【0005】一方、通常工業的に1μm以下の交流用N
bTi線材を製造するためには、たとえば特公平6−3
693に開示されているように、複合多芯ビレットの押
出時や加工時の発熱によりCuあるいはCu合金とNb
Tiとの界面に生成する脆いCu−Ti化合物を防止す
るために、Nb等のバリア層を配置する手法が用いられ
ている。
【0006】このバリア層は、フィラメントの均一加工
を阻害する上記化合物の形成を防止するために考案され
たものであり、バリア層の厚みとしては、製造プロセス
中の押出や加工発熱でCu−Ti化合物が形成されない
厚みを選択すればよく、たとえば特公平6−3693に
述べられているように、NbTi合金フィラメントの直
径の1/5以下とすることが記述されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、交流の
通電電流や交流損失等の超電導特性は超電導フィラメン
ト径に依存するが、フィラメント径が変わると必要なバ
リア層の厚さも変わるため、バリア層の体積率が線材の
超電導特性に大きく寄与することになる。すなわち、素
線全体に対するバリア層の体積率が大きくなると、マト
リクスの体積率が同一の場合、超電導フィラメントによ
る臨界電流が減少する。さらに、交流損失や安定性にと
っても、バリア層の効果が付加される。
【0008】このように、フィラメント径を低減した交
流用線材にとっては、臨界電流の向上と交流損失の低減
を両立させる必要があるため、バリア層の超電導特性に
対する効果を明らかにして、バリア層の構成も含めた詳
細な線材の断面構成を決める必要があるが、従来はほと
んど明らかになっていなかった。
【0009】一般に、従来の複合多芯超電導線において
は、バリア層の体積は、複合多芯超電導線全体の体積の
3vol%以下であった。
【0010】そのため、従来の複合多芯超電導線は、ヒ
ステリシス損失が大きく、交流で通電できる最大の電流
値(以下、「交流クエンチ電流Iq」という)の周波数
依存性が大きく、さらに、Iq、特に零磁界での50H
zにおける臨界電流値Iqが低いという問題点があっ
た。
【0011】この発明の目的は、上述の問題点の少なく
とも1つを解決し、特性の向上した複合多芯超電導線を
提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明による複
合多芯超電導線は、超電導金属フィラメントが常電導マ
トリクス内に複数本埋込まれてなる複合多芯超電導線で
あって、フィラメントの外周には、フィラメントと常電
導マトリクスとの反応を防止するための、1層または組
成の異なる2層以上の多層で構成された超電導金属から
なるバリア層が形成され、バリア層の体積が、フィラメ
ントとバリア層とを合計した体積の3vol%より大き
く45vol%以下であることを特徴としている。
【0013】なお、ここで定義する「バリア層の体積」
とは、以下に示す図1において、厚さdの円筒状の部分
の体積をいう。また、「フィラメントの体積」とは、図
1において、直径Dの円柱状の部分の体積をいう。さら
に、「フィラメントとバリア層とを合計した体積」と
は、図1において、直径(D+2d)の円柱状の部分の
体積をいう。
【0014】請求項2の発明による複合多芯超電導線
は、請求項1の発明において、バリア層の体積が、フィ
ラメントとバリア層とを合計した体積の3vol%より
大きく10vol%未満であることを特徴としている。
【0015】請求項3の発明による複合多芯超電導線
は、請求項2の発明において、バリア層の厚さが、フィ
ラメントの直径の1/130より大きく1/40未満で
あることを特徴としている。なお、ここで定義する「バ
リア層の厚さ」とは、図1において、dで示す厚さをい
う。また、「フィラメントの直径」とは、図1におい
て、Dで示す長さをいう。
【0016】請求項4の発明による複合多芯超電導線
は、請求項1の発明において、バリア層の体積が、フィ
ラメントとバリア層とを合計した体積の10vol%以
上25vol%未満であることを特徴としている。
【0017】請求項5の発明による複合多芯超電導線
は、請求項4の発明において、バリア層の厚さが、フィ
ラメントの直径の1/40以上1/13未満であること
を特徴としている。
【0018】請求項6の発明による複合多芯超電導線
は、請求項1の発明において、バリア層の体積が、フィ
ラメントとバリア層とを合計した体積の25vol%以
上45vol%以下であることを特徴としている。
【0019】請求項7の発明による複合多芯超電導線
は、請求項6の発明において、バリア層の厚さが、フィ
ラメントの直径の1/13以上1/6以下であることを
特徴としている。
【0020】請求項8の発明による複合多芯超電導線
は、請求項1〜請求項7のいずれかの発明において、超
電導金属フィラメントはNbTi合金からなり、バリア
層は、Nb、Ta、V、Nb合金、Ta合金およびV合
金からなる群から選ばれる少なくとも1種の超電導金属
からなり、常電導マトリクスは、CuまたはCuM合金
(ただし、MはNi、Mn、SiおよびSnからなる群
から選ばれる少なくとも1種の金属)からなることを特
徴としている。
【0021】請求項9の発明による複合多芯超電導線
は、請求項8の発明において、バリア層は純度99%以
上のNbからなり、常電導マトリクスは、Ni濃度が1
5wt%以上40wt%以下のCuNi合金からなるこ
とを特徴としている。
【0022】請求項10の発明による複合多芯超電導線
は、請求項1〜請求項9のいずれかの発明において、そ
の周囲に形成されたバリア層を含めた超電導金属フィラ
メント全体の直径が、0.05μm以上0.2μm以下
であることを特徴としている。
【0023】請求項11の発明による超電導撚線導体
は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の複合多芯
超電導線を、複数本撚り合せてなる。
【0024】
【発明の作用効果】本発明では、超電導フィラメントに
対するバリア層が超電導金属である場合に、その体積率
や厚みが線材の超電導特性そのものに深く関与している
ことを見出したものである。ここで定義するバリア層の
体積率とは、バリア層の体積を(超電導フィラメント+
バリア層)の体積で割った値を%で示したものである。
また、ここで定義するバリア層の厚みは、バリア層の厚
みをバリア層を除く超電導フィラメントの厚みで割った
ものである。
【0025】また、本発明では、従来Cu−Ti等のフ
ィラメントの均一加工を阻害することを防止するために
設けられていたバリア層が超電導性金属である場合に
は、種々の外部磁界における交流通電電流を高める効果
や、交流損失の面からバリア層の体積率と厚みに適切な
範囲があることを見出したものである。これは、バリア
層としてたとえばNb、Ta、V等を使用した場合に
は、バリア層そのものが超電導性金属であるために、異
なる材質からなる2層の超電導性フィラメントとしての
効果を発揮することができることを本発明では明らかに
した。
【0026】本発明では、この結果から、以下に示すよ
うに、コンパクトな構成で高い電流密度を有し、かつ交
流損失が低い交流用超電導線を提供することができる。
【0027】さらに、本発明によれば、このような超電
導素線を用いて撚線を作製することにより、従来よりも
優れた特性を有する導体を得ることができる。
【0028】具体的には、本発明によれば、超電導性金
属フィラメントとそれを囲む周囲の金属バリア層がとも
に超電導体であるために、次のような作用と効果が働
く。
【0029】まず、第1の作用効果としては、超電導金
属バリア層の体積率が少なく、具体的にはバリア層の体
積率が3vol%より大きく10vol%未満である場
合には、素線の交流損失、特にヒステリシス損失が小さ
くなる。これは、線材全体に対して超電導フィラメント
の損失が主体となるためで、バリア層で発生するヒステ
リシス損失が小さくなる作用による。たとえば、バリア
層の厚みが1/130より大きく1/40未満である
と、効果として超電導フィラメントの径が0.2μm以
下で1kA級導体の6×6本撚線では、10mW/m
(0.5T,50Hz)以下のヒステリシス損失が達成
され、実用材として優れた特性となる。
【0030】次に、第2の作用効果としては、超電導金
属バリア層の体積率が10%以上25%未満の場合に
は、交流で通電できる最大の電流値(交流クエンチ電流
Iq)の周波数依存性が小さくできる。これは、一般
に、Iqが超電導フィラメントに発生する交流損失によ
って決まると推定できるが、交流損失による発熱がバリ
ア層に吸収されるためか、またはバリア層の良好な熱伝
達特性のためにバリア層からマトリクスを介して冷媒で
ある液体ヘリウムへ伝達される作用のためであると考え
られる。具体的な効果としては、たとえばバリア層の厚
みが超電導性金属フィラメントの1/40以上1/13
未満であると、30Hzから150Hzの間でのIqの
ばらつきを10%以内に抑えることが可能となる。この
ように、バリア層に適切な範囲がある理由は、定性的に
は以下のように説明し得る。
【0031】すなわち、バリア層の体積率が10vol
%未満の場合やバリア層の厚みが超電導性金属フィラメ
ントの1/40未満の場合には、バリア層への交流損失
の熱の吸収や熱伝達が不十分となり、一方、バリア層の
体積率が25vol%以上の場合やバリア層の厚みが常
電導性金属フィラメントの1/13以上の場合には、バ
リア層そのものに発生する交流損失が大きくなり、超電
導フィラメントに対する交流損失による熱の吸収や熱伝
達が困難になるためであると考えられる。
【0032】さらに、第3の作用効果としては、超電導
金属バリア層の体積率が25vol%以上45vol%
以下の場合には、Iq、特に零磁界での50Hzにおけ
るIqを高めることができる。これは、超電導電子が超
電導フィラメントとその周囲のバリア層の両方に存在で
きる作用のためと考えられる。具体的な効果としてたと
えばNbTi超電導線材を例にとると、バリア層として
Nbを選択した場合、たとえばNbの厚みがNbTiフ
ィラメントの1/13以上1/6以下であれば、超電導
フィラメント(NbTi+Nb)当りで10000A/
mm2 (0T,50Hz)以上の交流クエンチ電流密度
Jqが可能となり、最適値の30%前後では18000
A/mm2 に達する。このように、バリア層の体積率や
厚みが一定値以上必要な理由は、バリア層の領域が超電
導電子のコヒーレント長以上にならないと超電導電子が
存在できないためと推定される。一方、バリア層の体積
率が大きくなるとJqが減少するのは、超電導フィラメ
ント中のJqがバリア層中のJqより小さいためである
と考えられる。
【0033】請求項1の発明によれば、上述の第1〜第
3のいずれかの作用効果が得られる。
【0034】また、請求項2および請求項3の発明によ
れば、特に上述の第1の作用効果が得られる。
【0035】さらに、請求項4および請求項5の発明に
よれば、特に上述の第2の作用効果が得られる。
【0036】また、請求項6および請求項7の発明によ
れば、特に上述の第3の作用効果が得られる。
【0037】次に、たとえばNbTi超電導線材では、
Cu−Ti化合物の生成を防止するためのバリア層とし
てのNbは、一般には体積率として3%以上の値が必要
である。これは、NbTi超電導線材を工業レベルで作
製する場合、一般に熱間押出法や熱間静水圧押出法によ
り大径ビレットを数百℃に加熱した後押出を行ない、さ
らに引抜き加工等によって複合多芯線を作製するが、N
bTiフィラメントの界面にビレットの加熱や押出の発
熱によってCu−Ti化合物が形成されるからである。
すなわち、バリア層の体積率が3vol%以下では、バ
リア層が薄いために、この化合物の生成を防止すること
ができないからである。
【0038】また、NbTiにおけるIcを確保するた
めには、Nbの割合は45vol%以下でなくてはなら
ない。なぜなら、Nbの体積率が45vol%より大き
くなると、NbTiフィラメントの体積率が著しく減少
し、素線全体のIcが低下するためである。
【0039】さらに、バリア層がNbTiフィラメント
とともに均一に加工されるためには、Nbの純度として
99%以上が好ましい。99%以下では、フィラメント
の均一加工を妨げるばかりでなく、バリア層が超電導フ
ィラメントの周囲に均一に加工できず、これまでに述べ
てきたようなバリア層による特性向上の効果のばらつき
が大きいばかりでなく、破れることでCu−Ti化合物
等が形成される可能性があるからである。
【0040】また、本発明は、安定化Cuが配置されて
いない多芯線において特に有効である。安定化Cuが存
在する場合には、バリア層による交流損失の熱伝達や吸
収の作用を、安定化Cuが果たすからである。
【0041】さらに、限流器等の超電導から常電導への
クエンチを応用した交流機器では、クエンチ抵抗が高い
ことが要求されており、マトリクスとしては、CuNi
等の高い抵抗値を有する常電導金属を使用することが可
能であり、望ましくはNi濃度が15wt%以上45w
t%以下のCuNi合金であれば、クエンチ後の超電導
体の温度変化に関係なくほぼ一定した抵抗値を取ること
ができる。このような構成においても、本発明によれ
ば、安定したIqや低い交流損失が実現できる。
【0042】また、一般に電力機器では、1kA以上の
Iqを持つ撚線導体が必須となっているが、本発明の超
電導素線を用いて7本撚りを重ねた多重撚線や、太径常
電導線の周囲に多層撚りした撚線導体を作製すれば、従
来問題となっていた交流の通電電流値が直流の臨界電流
値と比べて低下するということや、素線の撚り本数倍の
Iqが達成できないことが大幅に改善できる。これは、
バリア層の存在によって外部からの擾乱(通電中の線材
のわずかな動きによる微小な発熱、あるいは冷却の不均
一等によって常電導転位が発生すること)に対して、素
線の安定性が飛躍的に向上する一方、Jqも高められた
効果である。
【0043】
【実施例】
(実施例1)試作した素線の諸元を表1に示す。まず、
素線No.3の作製方法を以下に示す。
【0044】まず、フィラメントを作製するため、14
mmφのNb−46.5wt%Tiを、15mmφ×1
6mmφのNbパイプに挿入し外径14.65mmφに
縮径した後、15mmφ×30mmφのCu−30wt
%Niパイプに挿入して外径28mmφに縮径した。こ
のとき、Nbの(Nb−Ti+Nb)に対する体積率は
8.7vol%であり、Nbの厚みはNbTiフィラメ
ント径の1/43であった。
【0045】次に、このCu−30wt%Ni/Nb/
NbTi単芯複合線について、ダイスにより引抜き加工
を行ない2.8mmφとした後、対辺2.4mmの六角
セグメントにした。この段階で、NbTi+Nbフィラ
メントとCu30wt%Nbの間隔は1:0.65であ
った。
【0046】続いて、この六角セグメントを87mmφ
×98mmφのCu−30wt%Nbビレットに104
0本挿入し、一昼夜真空排気後電子ビーム溶接を行なっ
た。
【0047】次に、このようにして得られた一次ビレッ
トを、35mmφへ熱間静水圧押出した後、ダイスによ
り引抜き加工を行ない4.5mmφとした後、対辺3.
7mmの六角セグメントにした。続いて、この六角セグ
メントを再度87mmφ×98mmφのCu−30wt
%Niビレットに433本挿入し、一昼夜真空排気後電
子ビーム溶接を行なった。
【0048】さらに、このようにして得られた二次ビレ
ットを、35mmφへ熱間静水圧押出した後、ダイスに
より引抜き加工を行ない、0.2mmφまで伸線加工し
てピッチ1mmのツイスト加工を施した試料とした。素
線径が0.2mmのとき、Nb+NbTiのフィラメン
ト径は0.14μmであり、フィラメント間隔は0.0
9μmであった。このとき、Nb+Nb−Tiに対する
Cu−30wt%Niの体積比は、4.2vol%であ
った。
【0049】また、撚線作製用として、同様に線径が
0.28mmφの素線も作製した。なお、これらの素線
はマトリクスとしてはすべてCu−30wt%Niを用
いており、安定化Cuは用いていない。また、素線N
o.1、2、4、5は素線No.3と同様な方法で作製
したものであるが、NbTiに対するNbの体積率のみ
を変え、他の構成は素線No.3と同様としている。し
たがって、素線断面内のNb−Tiの体積率は、素線N
o.1が最も大きく、素線No.2、3、4、5の順に
減少している。
【0050】図1は、このようにして得られた本発明に
よる複合多芯超電導線の一例の構造を示す断面図であ
る。
【0051】図1を参照して、この複合多芯超電導線
は、Nb−46.5wt%Tiからなる超電導金属フィ
ラメント1が、Cu−30wt%Niからなる常電導マ
トリクス内に複数本埋込まれ、かつ、Cu−30wt%
Niからなる外皮3に覆われてなる一次スタック4が、
さらに複数本Cu−30wt%Niからなる外皮5中に
集合されてなる二次スタック6であり、超電導金属フィ
ラメント1と常電導マトリクス2との間には、Nbから
なるバリア層7が形成されている。
【0052】このようにして得られた5種の素線につい
て、最終サイズ0.2mmφでの伸線性の評価を行な
い、平均単長を求めたところ、素線No.2とNo.3
が優れていることが判明した。また、フィラメント断線
率を調査したところ、素線No.1はCu−Ti化合物
により約30%が断線していた。また、素線No.2、
3、4、5は10%以下の断線率であったが、素線N
o.4とNo.5にはNbバリア層の不均一加工による
断線が多く認められた。これらの結果を、まとめて表1
に示す。
【0053】
【表1】 (実施例2)外部直流横磁界中における素線の直流臨界
電流(0.5TにおけるIc)を測定し、Nb+NbT
i当りの臨界電流密度Jcに換算した結果を表2に示
す。
【0054】
【表2】 表2を参照して、例外的に素線No.1が最も低い値で
あるが、素線No.3から素線No.5にかけてNbバ
リア層の体積が増加するに従ってJcは低下した。素線
No.1のJcが低い理由は、Nbバリア層が薄すぎる
ために作製途中の熱履歴によりフィラメントの均一加工
を妨げるCu−Ti化合物が形成されたためであると考
えられる。一方、Nb体積率が大きい素線No.2とN
o.3では、これに比べてJcは大幅に高くNbバリア
層の効果が認められるが、Nb体積率が17vol%、
30vol%と大きくなった素線No.4とNo.5で
は、Jcは素線No.3に比べ8割以下となっている。
これらのことから、Nb体積率としては、製造上からは
3vol%より大きいことが好ましく、特性上からは1
7vol%より小さいことが必要であることが認められ
る。
【0055】変圧器等の0.5T近傍の磁界で使用され
る超電導線材では、0.5T、4.2Kにおいて150
00A/mm2 以上のJcが必要であるから、表2より
Nbバリア層の体積率としては10vol%より小さい
ことが必要であり、本発明の効果が認められた。
【0056】(実施例3)素線No.3〜No.5の素
線径を変えて6×6本撚線を作製し、交流損失(0.5
T、0.5Hz)特性を測定した結果を表3に示す。な
お、測定周波数は0.5Hzであり、この条件はヒステ
リシス損失を測定している。
【0057】
【表3】 表3を参照して、Nbバリア層の体積率が少なくNbバ
リア層の厚みが薄い素線ほど交流損失が小さい傾向とな
るが、フィラメント径が0.21μm以上ではNbバリ
ア層が厚いため、素線No.3においても交流損失は大
きくなった。一方、0.05μm以下になると近接効果
の発生により交流損失が増加するため、フィラメント径
としては0.05μm以上0.2μm以下が特に好まし
いことが判明した。
【0058】(実施例4)素線No.3〜No.5の素
線径0.28mmφを用いて二次撚線導体を作製し、外
部磁界0.5T、交流通電電流の周波数50Hzにおけ
る交流クエンチ電流Iqを測定した。二次撚線導体の構
成は、同一径のCu−30wt%Niの周囲に6本超電
導素線を撚り合せた一次撚線を、さらに太径のCu−3
0wt%Ni線の周囲に6本撚りした構造である。さら
に、Nbバリア層を用いない構成のNbTi素線No.
6を作製し、同一構成の撚線を作製して同様に交流クエ
ンチ電流Iqを測定した。この場合、素線No.6は作
製プロセス中で熱履歴を受けないように押出加工を用い
ずに、すべて引抜き加工により作製しているが、断面構
成は超電導フィラメントがすべてNbTiである以外
は、素線No.3、4、5と同様であった。
【0059】Iqの測定結果を図2に示す。図2におい
て、横軸はNb体積率(vol%)を示し、縦軸は二次
撚線の交流クエンチ電流Iq(A)を示している。な
お、電流は50Hzの周波数で通電しており、交流クエ
ンチ電流はピーク値である。
【0060】図2に示すように、導体のIqは、導体N
o.6、3、4、5の順に高くなった。素線Iqの撚り
本数倍のIqと比較すると、導体No.3、No.6は
いずれも80%以上の値を示した。素線No.4、N
o.5を用いた導体のIqは上記の2種類の導体のIq
より低く、素線Iqの撚り本数倍のIqと比較すると7
0%以下の値であった。
【0061】また、これらの導体の交流損失(外部磁界
0.5T、0.4T、0.3T、外部磁界周波数50H
z)特性を測定した結果を、図3に示す。図3におい
て、横軸はNb体積率(vol%)を示し、縦軸は6×
6本撚線の単位長さ当りの交流損失Qtotal(mW
/m:50Hz)を示している。
【0062】図3より明らかなように、Nbバリア層の
体積率が少なくNbバリア層の厚みが薄い素線ほど、交
流損失が小さいことが判明した。これは、Nbは外部磁
界が0.2T以下では超電導体であるために、Nbのヒ
ステリシス損失がNbTiの損失に重畳するためである
と考えられる。一方、Nb体積率が大きいほどNbバリ
ア層の厚みも大きくなり、このNbのヒステリシス損失
の重畳分も大きくなる。また、結合損失は、素線間のC
u−30wt%Niの厚みが等しいために、素線間の差
は観測されない。
【0063】交流損失の要件特性としては、たとえば変
圧器用や限流器に用いる超電導線材では、0.5T、5
0Hzで20mW/m以下であれば実用化が可能とな
る。したがって、図3より、Nb体積率として10vo
l%未満、Nb厚みでは1/40未満の導体No.3、
No.6であれば、バリア層の損失の寄与は小さく20
mW/m以下の低交流損失特性を示すことから、低交流
損失が要求される交流器用線材として適することがわか
り、本発明のNbバリア層の効果が認められた。
【0064】(実施例5)14mmφのNb−46.5
wt%Tiに、厚さ0.125mm、純度99.9%の
Nbシートを1層巻付けた後、さらに表4に示すような
添加元素を有した厚さ0.20mmのNb合金シートを
1層巻付けた後、15mmφ×30mmφのCu−30
wt%Niパイプに挿入して外径28mmφに縮径し
た。このとき、(Nb+Nb合金)の(Nb−Ti+N
b)に対する体積率は8.7vol%であり、(Nb+
Nb合金)の厚みはNbTiフィラメント径の1/43
であった。これらのCu−30wt%Ni/Nb/Nb
Ti単芯複合線は、バリア層が2層になっているほか
は、実施例1の素線No.3と全く同様であった。これ
らの単芯複合線(No.7〜No.11)を、実施例1
に示した工程と同一工程を経て0.2mmφまで伸線加
工して、ピッチ1mmのツイスト加工を施した試料とし
た。
【0065】このようにして得られた5種の素線につい
て、最終サイズ0.2mmφでの伸線性の評価をして、
平均単長を求めたところ、いずれの素線も8000m以
上の長さが可能であった。臨界電流密度を測定したとこ
ろ、外部直流磁界1Tで、7000A/mm2 以上の高
い値を示していた。さらに、フィラメント断線率を調査
したところ、素線No.8〜No.11については4%
以下の断線率であり、素線No.7と比べて良好な加工
性と特性を有し、この結果から多層構造のバリア層の効
果が認められた。これらの結果を表4に併せて示す。
【0066】
【表4】 (実施例6)試作した素線の諸元を表5に示す。まず、
素線No.14の作製方法を以下に示す。
【0067】まず、フィラメントを作製するため、14
mmφのNb−46.5wt%Tiを、18.2mmφ
×19.6mmφのNbパイプに挿入し、外径15.4
mmφに縮径した後、17mmφ×30mmφのCu−
30wt%Niパイプに挿入して外径28mmφに縮径
した。このとき、Nbの(Nb−Ti+Nb)に対する
体積率は17vol%であり、Nbの厚みはNbTiフ
ィラメント径の1/20であった。
【0068】次に、このCu−30wt%Ni/Nb/
NbTi単芯複合線について、ダイスにより引抜き加工
を行ない2.8mmφとした後、対辺2.4mmの六角
セグメントにした。この段階で、NbTi+Nbフィラ
メントとCu−30wt%Niの間隔は1:0.65で
あった。
【0069】続いて、この六角セグメントを87mmφ
×98mmφのCu−30wt%Niビレットに104
0本挿入し、一昼夜真空排気後電子ビーム溶接を行なっ
た。
【0070】次に、このようにして得られた一次ビレッ
トを、35mmφへ熱間静水圧押出した後、ダイスによ
り引抜き加工を行ない、4.5mmφとした後、対辺
3.7mmの六角セグメントにした。続いて、この六角
セグメントを再度87mmφ×98mmφのCu−30
wt%Niビレットに433本挿入し、一昼夜真空排気
後電子ビーム溶接を行なった。
【0071】さらに、このようにして得られた二次ビレ
ットを、35mmφへ熱間静水圧押出した後、ダイスに
より引抜き加工を行ない、ツイスト加工を経て最終線径
が0.286mmφと0.214mmφまで伸線加工し
て試料とした。素線径が0.286mmのときは、フィ
ラメント径は0.19μmであり、フィラメント間隔は
0.12μmであった。また、素線径が0.214mm
のときは、フィラメント径は0.14μmであり、フィ
ラメント間隔は0.09μmであった。さらに、Nb+
Nb−Tiに対するCu−30wt%Niの体積比は、
4.2であった。
【0072】なお、これらの素線は、マトリクスとして
はすべてCu−30wt%Niを用いており、安定化C
uは用いていない。また、素線No.12、13、1
5、16は、素線No.14と同様な方法で作製したも
のであるが、NbTiに対するNbの体積率のみを変
え、他の構成は素線No.14と同様としている。した
がって、素線断面内のNb−Tiの体積率は、素線N
o.12が最も大きく、素線No.13、14、15、
16の順に減少している。
【0073】このようにして得られた5種の素線につい
て、0.286mmφにおける線材平均単長を評価した
ところ、線材No.13とNo.14が5000m以上
であり、特に優れていることが判明した。また、フィラ
メント断線率を調査したところ、素線No.12は、C
u−Ti化合物により約20%が断線していた。また、
素線No.15とNo.16には、Nbバリア層の不均
一加工による断線が認められた。これに対して、素線N
o.13およびNo.14は、ほとんど断線が認められ
なかった。以上の結果、本発明の範囲であれば、優れた
加工性を有する線材が得られることが立証された。これ
らの結果をまとめて表5に示す。
【0074】
【表5】 (実施例7)外部直流横磁界中における0.214mm
φの素線の直流臨界電流(0.5TにおけるIc)を測
定し、Nb+NbTi当りの臨界電流密度Jcに換算し
た結果を表6に示す。
【0075】
【表6】 表6を参照して、例外的に素線No.12が最も低い値
であるが、素線No.13から素線No.16にかけて
Nbバリア層の体積が減少するに従って、Jcは徐々に
低下した。素線No.12のJcが低い理由は、Nbバ
リア層が薄すぎるために作製途中の熱履歴によりフィラ
メントの均一加工を妨げるCu−Ti化合物が形成され
たためである。一方、Nb体積率が10vol%以上の
素線では、これに比べJcは高くNbバリア層の効果が
認められるが、Nb体積率が30vol%、41vol
%と大きくなった素線No.15、No.16では、J
cは素線No.13に比べ7割以下となっている。これ
らのことから、Nb体積率としては、10vol%以上
が好ましく、30vol%より小さいことが必要である
ことが認められる。また、Nbの厚みで検討すると、N
bTiフィラメントに対するNbの厚みについては、1
/40以上1/10より小さい場合には、Jcが十分高
くなることが判明した。
【0076】(実施例8)0.214mmφの素線N
o.13〜No.16についての交流通電電流(外部磁
界なし)の周波数依存性を測定した結果を、図4に示
す。図4において、横軸は周波数f(Hz)を示し、縦
軸は50Hzで通電した場合の交流通電電流Iq(A)
(ピーク値)を示している。
【0077】これらの素線は、限流器に使用されること
を目的として作製されたものであるが、系統からの自己
電流はさまざまな周波数や電流変化速度のものが印加さ
れるため、限流器用素線のIqは周波数依存性がないこ
とが最も好ましい。このような要求特性に対しては、図
4より、Nb体積率が17vol%前後、Nbの厚みで
は1/20程度で最適となることがわかる。
【0078】より定量的には、周波数が30Hzから1
50Hzの間でIqの変動が10%以内であることが望
ましい。このような要求特性に対して、表7に示すよう
に、80Hzの値で規格化した実験データを検討する
と、Nb体積率が10vol%、Nb厚さが1/40の
素線No.13がNb体積率の下限となる。Nb体積率
30vol%、Nb厚が1/10の素線No.15で
は、大幅に周波数特性が悪かった。そこで、Nb体積率
以外は素線No.12〜No.16と同一の断面構成を
有する、Nb体積率が25vol%、Nb厚みが1/1
3の素線No.17を作製して同様な特性を測定したと
ころ、表7に示すように、この素線の場合がNb体積率
の上限に対応することが判明した。
【0079】以上の結果、Nb体積率が10%以上25
%未満、Nb厚みでは1/40以上1/13未満であれ
ば、限流器用素線に対応できる交流クエンチ電流の周波
数依存性を有することができる。
【0080】
【表7】 (実施例9)素線No.13〜No.15の素線径を変
えて6×6本撚線を作製し、交流損失(0.5T、0.
5Hz)特性を測定した結果を、表8に示す。測定周波
数は0.5Hzであり、この条件はヒステリシス損失を
測定している。
【0081】
【表8】 表8を参照して、Nbバリア層の体積率が少なくNbバ
リア層の厚みが薄い素線ほど交流損失が小さくなるが、
Nb+NbTiのフィラメント径が0.21μm以上で
は、Nbバリア層が厚いため、素線No.13において
も交流損失が大きくなった。一方、0.05μm以下に
なると、近接効果の発生により交流損失が増加するた
め、フィラメント径としては0.05μm以上0.2μ
m以下が好ましいことが判明した。
【0082】交流機器への適用のためには、たとえば
0.5Tでのヒステリシス損失は20mW/m以下であ
ることが望ましいが、素線No.13ではフィラメント
径が0.19μmで、素線No.14ではフィラメント
径0.14μmの素線が適用できる。しかし、Nbバリ
ア層の体積率が大きく、厚みも厚くなっている素線N
o.15では、フィラメント径が0.10μmにならな
いとこの損失値は達成できない。
【0083】このことからも、本発明の範囲である、超
電導金属フィラメントを囲む超電導性金属の体積がバリ
ア層を含む超電導金属フィラメントの全体積の10vo
l%以上25vol%未満であること、または常電導金
属フィラメントを囲むバリア層の常電導金属の厚みが、
バリア層を除く超電導金属フィラメントの1/40以上
1/13未満の構成であることが、有効であることが確
認された。
【0084】(実施例10)素線No.12〜No.1
6の素線径0.214mmφを用いて二次撚線導体を作
製し、外部磁界0.5T、交流通電電流の周波数50H
zにおけるピーク交流クエンチ電流Iqを測定した。二
次撚線導体の構成は、同一径のCu−30wt%Niの
周囲に6本超電導素線を撚り合せた一次撚線を、さらに
太径のCu−30wt%Ni線の周囲に6本撚りした構
造である。
【0085】図5は、撚線導体のIq特性を示す図であ
る。図5において、横軸はNb体積率(vol%)を示
し、縦軸は二次撚線のピーク交流クエンチ電流Iq
(A)を示している。
【0086】図5に示すように、導体のIqは、導体N
o.13、14、15、16、12の順で高くなった。
素線Iqの撚り本数倍のIqと比較すると導体No.1
3、No.14はいずれも85%以上の値を示した。一
方、素線No.15およびNo.15を用いた導体のI
qは、上記の2種類の導体のIqより低く、素線Iqの
撚り本数倍のIqと比較すると70%程度の値であっ
た。また、導体No.12は、Cu−Ti化合物の生成
とフィラメント断線により素線レベルのIqが低く、導
体においても最もIqが低かった。
【0087】図5より、2000A以上のIqが可能な
Nbバリア層体積率の範囲は、10vol%から25v
ol%の範囲であり、Nb厚みに換算すると、1/40
から1/13の範囲であることが実証され、本発明のN
bバリア層の効果が認められた。
【0088】(実施例11)14mmφのNb−46.
5wt%Tiに、厚さ0.2mm、純度99.9%のN
bシート(内周部のバリア層に相当)を1層巻付けた
後、さらに表9に示すような組成を有した16mmφ×
17mmφのパイプ(外周部のバリア層に相当)に挿入
し、外径15.4mmφに縮径した後、17mmφ×3
0mmφのCu−30wt%Niパイプに挿入して外径
28mmφに縮径した。このとき、バリア層の(Nb−
Ti+バリア層)に対する体積率は17vol%であ
り、バリア層の厚みはNbTiフィラメント径の1/2
0であった。これらのCu−30wt%Ni/バリア/
NbTi単芯複合線は、バリア層が2層になっている他
は、実施例6の素線No.14と全く同様であった。こ
れらの単芯複合線(No.18〜No.21)を、実施
例6に示した工程と同様の工程を経て0.214mmφ
まで伸線加工して、ピッチ1.1mmのツイスト加工を
施した試料とした。
【0089】このようにして得られた4種の素線につい
て、最終サイズ0.214mmφでの伸線性の評価をし
て、平均単長を求めたところ、いずれの素線も6000
m以上の長さが可能であった。フィラメント断線率を調
査したところ、10%以下の断線率であり、臨界電流密
度も外部直流磁界1Tで6000A/mm2 以上の高い
値を有し、この結果から、多層構造のバリア層の効果が
認められた。これらの結果を表9にまとめて示す。
【0090】
【表9】 (実施例12)試作した素線の諸元を表10に示す。ま
ず、素線No.24の作製方法を以下に示す。
【0091】まず、フィラメントを作製するため、14
mmφのNb−46.5wt%Tiを、18.2mmφ
×19.6mmφのNbパイプに挿入して外径15.4
mmφに縮径した後、17mmφ×30mmφのCu−
35wt%Niパイプに挿入して外径28mmφに縮径
した。このとき、Nbの(Nb−Ti+Nb)に対する
体積率は17vol%であり、Nbの厚みはNbTiフ
ィラメント径の1/20であった。
【0092】次に、このCu−35wt%Ni/Nb/
NbTi単芯複合線について、ダイスにより引抜き加工
を行ない2.8mmφとした後、対辺2.4mmの六角
セグメントにした。この段階で、NbTi+Nbフィラ
メントとCu−30wt%Niの間隔は1:0.65で
あった。
【0093】続いて、この六角セグメントを87mmφ
×98mmφのCu−35wt%Niビレットに104
0本挿入し、一昼夜真空排気後電子ビーム溶接を行なっ
た。
【0094】次に、このようにして得られた一次ビレッ
トを、35mmφへ熱間静水圧押出した後、ダイスによ
り引抜き加工を行ない4.5mmφとした後、対辺3.
7mmの六角セグメントにした。続いて、この六角セグ
メントを再度87mmφ×98mmφのCu−35wt
%Niビレットに433本挿入し、一昼夜真空排気後電
子ビーム溶接を行なった。
【0095】さらに、このようにして得られた二次ビレ
ットを、35mmφへ熱間静水圧押出した後、ダイスに
より引抜き加工を行ない0.2mmφまで伸線加工して
試料とした。素線径が0.2mmのとき、フィラメント
径は0.14μmであり、フィラメント間隔は0.09
μmであった。このとき、Nb+Nb−Tiに対するC
u−35wt%Niの体積率は、4.2であった。
【0096】なお、これらの素線は、マトリクスとして
はすべてCu−35wt%Niを用いており、安定化C
uは用いていない。また。素線No.22、23、2
5、26、27は、素線No.24と同様な方法で作製
したものであるが、NbTiに対するNbの体積率のみ
を変え、他の構成は素線No.24と同様としている。
したがって、素線断面内のNb−Tiの体積率は、素線
No.22が最も大きく、素線No.23、24、2
5、26、27の順に減少している。
【0097】
【表10】 次に、外部直流横磁界中における素線の直流臨界電流
(0.5TにおけるIc)を測定し、Nb+NbTi当
りの臨界電流密度Jcに換算した結果を表11に示す。
【0098】
【表11】 表11を参照して、例外的に素線No.22が最も低い
値であるが、素線No.23から素線No.27にかけ
てNbバリア層の体積が増加するに従って、Jcは徐々
に低下した。素線No.22のJcが低い理由は、Nb
バリア層が薄すぎるために作製途中の熱履歴によりフィ
ラメントの均一加工を妨げるCu−Ti化合物が形成さ
れたためである。一方、Nb体積率が10vol%以上
の素線では、これに比べJcは高くNbバリア層の効果
が認められるが、Nb体積率が50vol%と大きくな
った素線No.27では、Jcは素線No.23に比べ
7割程度となっている。これらのことから、Nb体積率
としては、製造上からは3vol%より大きいことが好
ましく、特性上からは50vol%より小さいことが必
要であることが認められる。また、NbTiフィラメン
トに対するNbの厚みについては、1/40以上1/5
以下であれば、Jcが高くなることが判明した。
【0099】(実施例13)素線No.23〜No.2
7の交流通電電流(外部磁界なし、通電電流の周波数は
50Hz)を測定した結果を、図6および図7に示す。
図6において、横軸はNb体積率(vol%)を示し、
縦軸は交流クエンチ電流Iq(A)(ピーク値)を示し
ている。また、図7においては、横軸はNb体積率(v
ol%)を示し、縦軸は交流クエンチ電流密度Jq(A
/mm2 )を示している。
【0100】図6および図7より、交流通電流が高くな
るNbの体積率と厚みに、最適値が存在することがわか
る。超電導変圧器や限流器への実用上の特性は、超電導
フィラメント(Nb+NbTi)当りで15000A/
mm2 以上の交流クエンチ電流密度Jqが望まれること
から、図7より、Nb体積率が25vol%以上45v
ol%以下、Nbの厚みに換算すると超電導性金属フィ
ラメントの1/13以上1/6以下であれば、この要求
特性を満足する。
【0101】(実施例14)素線No.23〜No.2
7の素線径を変えて交流損失(±2T、50Hz)特性
を測定した結果を、表12に示す。
【0102】
【表12】 表12を参照して、Nb体積率が25vol%以上45
vol%以下、Nb厚みに換算すると超電導金属フィラ
メントの1/13以上1/6以下であれば、交流損失が
50kW/m3 以下で実用的に小さくなり、本発明の効
果が実証できた。
【0103】しかし、フィラメント径が0.21μm以
上では、素線No.25、No.26においても交流損
失は大きくなった。一方、0.05μm以下になると近
接効果の発生により交流損失が増加するため、フィラメ
ント径としては0.05μm以上0.2μm以下が好ま
しいことも判明した。
【0104】(実施例15)素線No.23〜No.2
7の素線径0.2mmφを用いて一次撚線導体を作製
し、外部磁界0T、交流通電電流の周波数50Hzにお
ける交流クエンチ電流Iqを測定した。導体の構成は、
同一径のCu−35wt%Niの周囲に6本超電導素線
を撚り合せた一次撚線構造である。
【0105】図8は、撚線導体の交流クエンチ電流Iq
特性を示す図である。図8において、横軸はNb体積率
(vol%)を示し、縦軸は一次撚線Iq(A)(ピー
ク値)を示している。
【0106】図8に示すように、導体のIqは、導体N
o.25、26、24、27、23、22の順で高くな
った。素線Iqの撚り本数倍のIqと比較すると、導体
No.25、No.26はいずれも90%以上の値を示
した。これに対して、導体No.24、No.27のI
qは、上記の2種類の導体のIqより低く、素線Iqの
撚り本数倍のIqと比較すると80%程度の値であり、
さらに導体No.23、No.22は70%以下であ
り、本発明のNbバリア層の効果が認められた。
【0107】(実施例16)14mmφのNb−46.
5wt%Tiを、厚さ0.2mm、純度99.9%のN
bパイプ16mmφ×17.5mmφのパイプ(内周部
のバリア層に相当)に挿入し、さらに表13に示すよう
な組成を有した18mm×20mmのパイプ(外周部の
バリア層に相当)に挿入して外径16.8mmφに縮径
した後、18mmφ×30mmφのCu−35wt%N
iパイプに挿入して外径28mmφに縮径した。このと
き、バリア層の(Nb−Ti+バリア層)に対する体積
率は30vol%であり、バリア層の厚みはNbTiフ
ィラメント径の1/10であった。これらのCu−35
wt%Ni/バリア/NbTi単芯複合線は、バリア層
が2層になっている他は実施例12の素線No.25と
全く同様であった。これらの単芯複合線(No.28〜
No.31)を、実施例12に示した工程と同様の工程
を経て0.2mmφまで伸線加工して、ピッチ1.0m
mのツイスト加工を施した試料とした。
【0108】このようにして得られた4種の素線につい
て、最終サイズ0.2mmφでの伸線性の評価をして、
平均単長も求めたところ、いずれの素線も5000m以
上の長さが可能であった。フィラメント断線率を調査し
たところ、5%以下の断線率であり、臨界電流密度も外
部直流磁界を1Tで6000A/mm2 以上の高い値を
有し、この結果から、多層構造のバリア層の効果が認め
られた。これらの結果を表13にまとめて示す。
【0109】
【表13】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による複合多芯超電導線の一例の構造を
示す断面図である。
【図2】撚線導体の交流クエンチ電流Iq特性を示す図
である。
【図3】撚線導体の交流損失特性を示す図である。
【図4】交流クエンチ電流の周波数特性を示す図であ
る。
【図5】撚線導体の交流クエンチ電流Iq特性を示す図
である。
【図6】交流クエンチ電流とNb体積率との関係を示す
図である。
【図7】交流クエンチ電流密度とNb体積率との関係を
示す図である。
【図8】撚線導体の交流クエンチ電流Iq特性を示す図
である。
【符号の説明】
1 超電導金属フィラメント 2 常電導マトリクス 3 外皮 4 一次スタック 5 外皮 6 二次スタック 7 バリア層

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 超電導金属フィラメントが常電導マトリ
    クス内に複数本埋込まれてなる複合多芯超電導線であっ
    て、 前記フィラメントの外周には、前記フィラメントと前記
    常電導マトリクスとの反応を防止するための、1層また
    は組成の異なる2層以上の多層で構成された超電導金属
    からなるバリア層が形成され、 前記バリア層の体積が、前記フィラメントと前記バリア
    層とを合計した体積の3vol%より大きく45vol
    %以下であることを特徴とする、複合多芯超電導線。
  2. 【請求項2】 前記バリア層の体積が、前記フィラメン
    トと前記バリア層とを合計した体積の3vol%より大
    きく10vol%未満であることを特徴とする、請求項
    1記載の複合多芯超電導線。
  3. 【請求項3】 前記バリア層の厚さが、前記フィラメン
    トの直径の1/130より大きく1/40未満であるこ
    とを特徴とする、請求項2記載の複合多芯超電導線。
  4. 【請求項4】 前記バリア層の体積が、前記フィラメン
    トと前記バリア層とを合計した体積の10vol%以上
    25vol%未満であることを特徴とする、請求項1記
    載の複合多芯超電導線。
  5. 【請求項5】 前記バリア層の厚さが、前記フィラメン
    トの直径の1/40以上1/13未満であることを特徴
    とする、請求項4記載の複合多芯超電導線。
  6. 【請求項6】 前記バリア層の体積が、前記フィラメン
    トと前記バリア層とを合計した体積の25vol%以上
    45vol%以下であることを特徴とする、請求項1記
    載の複合多芯超電導線。
  7. 【請求項7】 前記バリア層の厚さが、前記フィラメン
    トの直径の1/13以上1/6以下であることを特徴と
    する、請求項6記載の複合多芯超電導線。
  8. 【請求項8】 前記超電導金属フィラメントはNbTi
    合金からなり、 前記バリア層は、Nb、Ta、V、Nb合金、Ta合金
    およびV合金からなる群から選ばれる少なくとも1種の
    超電導金属からなり、 前記常電導マトリクスは、CuまたはCuM合金(ただ
    し、MはNi、Mn、SiおよびSnからなる群から選
    ばれる少なくとも1種の金属)からなることを特徴とす
    る、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の複合多芯超
    電導線。
  9. 【請求項9】 前記バリア層は純度99%以上のNbか
    らなり、 前記常電導マトリクスは、Ni濃度が15wt%以上4
    0wt%以下のCuNi合金からなることを特徴とす
    る、請求項8記載の複合多芯超電導線。
  10. 【請求項10】 その周囲に形成された前記バリア層を
    含めた前記超電導金属フィラメント全体の直径が、0.
    05μm以上0.2μm以下であることを特徴とする、
    請求項1〜請求項9のいずれかに記載の複合多芯超電導
    線。
  11. 【請求項11】 請求項1〜請求項10のいずれかに記
    載の複合多芯超電導線を、複数本撚り合せてなる、超電
    導撚線導体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010147370A (ja) * 2008-12-22 2010-07-01 Hitachi Ltd 電磁石装置
JP2010238840A (ja) * 2009-03-31 2010-10-21 Hitachi Ltd 超電導線材,永久電流スイッチ及び超電導マグネット

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