JPH08203702A - チタン酸バリウム系半導体磁器およびその製造方法 - Google Patents

チタン酸バリウム系半導体磁器およびその製造方法

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JPH08203702A
JPH08203702A JP6036510A JP3651094A JPH08203702A JP H08203702 A JPH08203702 A JP H08203702A JP 6036510 A JP6036510 A JP 6036510A JP 3651094 A JP3651094 A JP 3651094A JP H08203702 A JPH08203702 A JP H08203702A
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atomic ratio
niobium
porcelain
barium titanate
grain diameter
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JP6036510A
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Kozo Kusaka
孝三 草加
Takeshi Deguchi
剛 出口
Masahiro Egami
賢洋 江上
Naoto Tsubomoto
直人 坪本
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Tayca Corp
Original Assignee
Tayca Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 湿式反応法により作成した特定金属成分比の
ニオブ含有チタン酸バリウムに、特定量の銅成分を加え
た原料を用いることにより、平均グレイン径や最大グレ
イン径が制御され、耐電圧強度や室温における比抵抗値
が優れ、しかも温度係数が大きく、電圧依存性が小さい
半導体磁器を提供する。 【構成】 Nb/Ti原子比とBa/Ti原子比とが、
図1のABCD好ましくはabcdで囲まれた範囲内で
あり、Nb/Ti原子比とCu/Ti原子比とが、図2
のEFGH好ましくはefghで囲まれた範囲内であ
り、かつ平均グレイン径が1〜2μmであり、かつ最大
グレイン径が5μm以下であることを特徴とするチタン
酸バリウム系半導体磁器。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、正の温度特性を有し
た、電圧依存性が小さく、しかも、グレインサイズの小
さいチタン酸バリウム系半導体磁器、および該磁器の製
造方法に関する。上記正の温度特性を有したチタン酸バ
リウム系半導体磁器は、常温では比抵抗が小さく、ある
温度(以降”Tc”と記す)を越えると急激に抵抗が上
昇するという、正の抵抗温度特性(以降”PTC特性”
と記す)を有しており、温度制御、電流制限、定温度発
熱などの用途に素子として広く使用されている。
【0002】
【従来の技術】上記用途においては、耐電圧強度が高く
室温比抵抗が小さいすなわち耐電圧強度/室温比抵抗の
値が大きく、しかもTc近傍におけるPTC特性による
抵抗上昇の立ち上がりが急峻であるすなわち温度係数α
が大きい、という特性を有する半導体磁器が要望されて
いる。
【0003】一方、上記用途において、電圧依存性の小
さいPTC特性を有する半導体磁器も要望されている。
PTC特性の電圧依存性は、J.Am.Ceram.S
oc.,Vol.54,No.6,p.320(197
1)や、J.Materials Sci.6,p.1
214(1971)で記載されているように、PTC特
性を有する半導体磁器のグレインサイズと関係があり、
グレインサイズが小さいほどPTC特性の電圧依存性が
小さいとされている。
【0004】特公昭60−25004号公報では、出発
原料としてバリウムとチタンの複合シユウ酸塩と、半導
化剤となるアンチモンの酸化物とを粉砕混合して仮焼し
た粉体を用い、その仮焼条件や成形圧などを制御し、1
350℃で焼成することによって、相対密度が60〜9
5%で平均グレイン径が1〜5μmのPTC特性を有す
る半導体磁器を得ている。
【0005】しかしながら、上記公報の第6図にあるよ
うに、グレインサイズが小さくなると、室温付近から抵
抗が徐々に上昇する傾向にあり、Tc前後の抵抗変化が
極端に鈍くなってしまい、その結果、温度係数αが小さ
くなってしまうという欠点があった。
【0006】また、上記公報に記載されている磁器は、
室温比抵抗が100Ω・cm以上と高く、さらに、用い
る原料の半導化が不均一なためか、1350℃という高
温での焼成が必要とされており、グレイン分布が1〜1
0μmと広い。その結果、耐電圧強度/室温比抵抗の比
の値は10未満しかなく、あまり良特性のものは得られ
ていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、グレイ
ンサイズが小さいにもかかわらず、温度係数αが大き
く、しかも耐電圧強度/室温比抵抗の比が大きいPTC
特性を有する半導体磁器は得られていなかった。
【0008】したがって、本発明の目的は、グレインサ
イズが小さく、しかもTc前後の抵抗変化を示す温度係
数αが大きく、耐電圧強度/室温比抵抗の比が大きいP
TC特性を有するチタン酸バリウム系半導体磁器とその
製造方法を提供することにある。
【0009】より具体的には、グレインサイズが1〜3
μmであり、耐電圧強度/室温比抵抗の比が10以上で
あり、下記の式で表される温度係数α50またはα10が1
0%/℃以上である、PTC特性を有するチタン酸バリ
ウム系半導体磁器と該磁器の製造法を提供することにあ
る。
【0010】
【0011】
【0012】ただし、上記式において、磁器の25℃に
おける抵抗の測定値をRとした場合、R1 =2R(Rの
2倍)であり、T1 はR1 の値を示す温度である。R2
は(T1 +50)℃〔上記式のT2 に相当する〕におけ
る磁器の抵抗測定値であり、R3 は(T1 +10)℃
〔上記式のT3 に相当する〕における磁器の抵抗測定値
である。したがって、上記式において、T2 −T1 =5
0、T3 −T1 =10である。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために鋭意研究を重ねたところ、半導化剤元
素としてニオブを選定し、Nbが均一に存在するように
主成分であるチタン酸バリウムを湿式反応により合成す
る過程中でニオブ化合物を添加して生成させた、平均粒
子径が0.3μm以下のBa/Ti原子比とNb/Ti
原子比とを厳密に限定したチタン酸バリウム粉体を原料
として用い、さらに特定量の銅を含有したときに、本発
明の目的とする特性を有する、グレイン径が小さく、し
かもグレイン分布がそろったチタン酸バリウム系半導体
磁器が、1200℃以下という従来より低い焼成温度で
得られることを見いだし、本発明に到達した。
【0014】すなわち本発明は、ペロブスカイト型結晶
構造を有するチタン酸バリウム系半導体磁器において、
少なくともニオブと銅を含有し、そのNb/Ti原子比
とBa/Ti原子比とが図1のABCDで囲まれた範囲
内にあり、Nb/Ti原子比とCu/Ti原子比とが図
2のEFGHで囲まれた範囲内にあり、磁器の平均グレ
イン径が1〜3μmであり、かつ最大グレイン径が5μ
m以下であることを特徴とするチタン酸バリウム系半導
体磁器である。
【0015】本発明はまた、ペロブスカイト型結晶構造
を有するチタン酸バリウム系半導体磁器において、少な
くともニオブと銅を含有し、そのNb/Ti原子比とB
a/Ti原子比とが図1のabcdで囲まれた範囲内に
あり、Nb/Ti原子比とCu/Ti原子比とが、図2
のefghで囲まれた範囲内にあり、磁器の平均グレイ
ン径が1〜3μmであり、かつ最大グレイン径が5μm
以下であることを特徴とするチタン酸バリウム系半導体
磁器である。
【0016】さらに本発明は、ニオブをNb/Ti原子
比としてNb/Ti=0.15〜0.50%含有するチ
タン化合物の溶液またはスラリーと、バリウム化合物と
を湿式反応させ、必要に応じて仮焼することにより、平
均粒子径が0.3μm以下で、かつNb/Ti原子比お
よびBa/Ti原子比が図1のABCDで囲まれた範囲
にある、ニオブを均一に含有したペロブスカイト結晶構
造を有したチタン酸バリウム粉体を得、上記粉体にCu
/Ti原子比としてCu/Ti=0.01〜0.14%
となるように酸化銅または酸化銅前駆体を混合したのち
成形し、該成形体を1100〜1200℃で焼成するこ
とを特徴とする半導体磁器の製造方法である。
【0017】本発明において、各条件を限定した理由に
ついては、以下の通りである。Nb/Ti原子比とBa
/Ti原子比とを図1のABCDで囲まれた範囲内に限
定し、銅の含有量を図2のEFGHで囲まれた範囲内に
限定すると、α50が10%/℃以上で、しかも耐電圧強
度/室温比抵抗の比が10以上の特性を有する、平均グ
レイン径が1〜3μmで、最大グレイン径が5μm以下
である磁器が得られる。
【0018】たとえ銅の含有量を本発明の範囲内にし、
ニオブを均一に添加しても、Ba/Ti原子比とNb/
Ti原子比が図1のABCDで囲まれた範囲外である
と、1200℃以下の焼成ではグレイン径が3μm以下
の磁器は得られるものの、α50が10%/℃以上で、し
かも耐電圧強度/室温比抵抗の比が10以上の特性を有
する磁器が得られない。
【0019】ニオブを均一に添加してNb/Ti原子比
とBa/Ti原子比とを本発明の範囲内にしても、銅の
含有量が図2のEFGHで囲まれた範囲より少ないと、
1200℃以下の焼成によりグレイン径が3μm以下
で、耐電圧強度/室温比抵抗の比が10以上の磁器が得
られる場合もあるが、α50は10%/℃未満と小さくな
ってしまう。
【0020】逆に、銅の含有量が図2のEFGHで囲ま
れた範囲より多いと、1200℃以下の焼成によりグレ
イン径が3μm以下で、α50が10%/℃以上の磁器が
得られる場合もあるが、室温比抵抗値が高くなってしま
い、耐電圧強度/室温比抵抗の比が10未満と小さくな
ってしまう。
【0021】また、ニオブや銅の含有比率を本発明の範
囲内に設定しても、1200℃を越える温度で焼成する
と、α50が10%/℃以上になる場合もあるが、グレイ
ン径が大きくなってしまい、さらに耐電圧強度/室温比
抵抗の比も悪くなる。
【0022】Nb/Ti原子比とBa/Ti原子比とを
図1のabcdで囲まれた範囲内とし、銅の含有量を図
2のefghで囲まれた範囲内にさらに限定すると、温
度係数αのより優れた特性を有する磁器が得られる。す
なわち、α50が10%/℃以上で、かつα10も10%/
℃以上であり、しかも耐電圧強度/室温比抵抗の比が1
0以上である特性を満足する磁器が得られる。
【0023】次に、本発明の半導体磁器が有する優れた
特性を得るために必要である、ニオブ含有チタン酸バリ
ウム粉体の製造方法について詳細に説明する。
【0024】本発明の製造方法において、ニオブを含有
するチタン化合物の溶液とは、イオンまたは分子単位で
混合された溶液を意味し、たとえば、チタンの塩化物と
ニオブの水溶性化合物との水溶液や、チタンのアルコキ
シドとニオブのアルコキシドとの有機溶媒混合溶液など
が適用できる。具体的には、四塩化チタンもしくは一部
水酸基で置換された塩化チタン溶液と五塩化ニオブとの
塩酸水溶液、チタニウムイソプロポキシドとニオビウム
イソプロポキシドとのイソプロピルアルコール溶液など
である。
【0025】また、ニオブを含有するチタン化合物のス
ラリーとは、たとえば、上記ニオブを含有するチタン化
合物の溶液を加水分解して得られる水酸化物または酸化
物のスラリーを意味する。具体的には、四塩化チタンも
しくは一部水酸基で置換された塩化チタン溶液と五塩化
ニオブとの塩酸水溶液を、アンモニアなどで中和加水分
解して得られるニオブ含有含水水酸化チタンスラリー、
チタニウムイソプロポキシドとニオビウムイソプロポキ
シドとのイソプロピルアルコール溶液に水を加えて加水
分解して得られるスラリーなどである。
【0026】本発明におけるバリウム化合物とは、バリ
ウムの水酸化物、酸化物、無機塩、アルコキシドなどの
有機バリウム化合物、などを意味する。
【0027】上記ニオブを含有するチタン化合物の溶液
またはスラリーと、上記バリウム化合物とを湿式反応さ
せる場合、たとえば、水熱反応法、アルコキシド法、共
沈仮焼法などが適用可能である。
【0028】水熱反応法とは、上述したチタンとニオブ
とバリウムの各化合物の混合物を熱加水分解反応して、
ニオブ含有チタン酸バリウムを得る方法である。この
際、チタン塩化物とニオブの水溶性化合物との水溶液
に、あらかじめ塩化バリウムなどの水溶性バリウム化合
物を溶解させた溶液を、水酸化ナトリウムなどの強アル
カリ中で熱加水分解反応しても構わない。
【0029】アルコキシド法とは、チタン、ニオブ、バ
リウムの各アルコキシドを混合溶解した有機溶媒溶液に
加水して、熱を加え反応させる方法である。
【0030】共沈仮焼法とは、たとえば、チタンの塩化
物やニオブの水溶性化合物との水溶液に、あらかじめ塩
化バリウムなど水溶性バリウム化合物を溶解した溶液
を、シュウ酸によって共沈させ、得られる複合シュウ酸
塩を仮焼してニオブ含有チタン酸バリウムを得る方法で
ある。
【0031】本発明の製造方法において、上記湿式反応
で得た粉体をさらに均一にする目的で、粒子成長のため
に平均粒子径が0.3μmを越えてしまわない程度の温
度範囲で、仮焼してもよい。具体的には、仮焼温度範囲
としては500〜950℃が好ましい。
【0032】本発明の半導体磁器に必須である銅の適切
な添加時期については、磁器を焼成する際に銅成分の組
成制御や均一分散がなされていればよく、酸化銅や酸化
銅前駆体となる化合物を、磁器の各製造工程中のどの時
点で添加しても構わない。
【0033】したがって、たとえばチタン酸バリウム形
成時に酸化銅をあらかじめ添加しておいてもよいし、チ
タン酸バリウム微粉体を成形する際に酸化銅前駆体を均
一混合してもよい。
【0034】ここでいう酸化銅前駆体とは、焼成したと
きに酸化物となるものであればよく、たとえば酢酸銅や
硝酸銅などが適用できる。そしてこれら前駆体は、溶液
の状態で添加混合したほうが均一添加という意味におい
て好ましい。
【0035】また、通常Tcシフトの目的で添加される
Pb,Sr,Ca,Zr,Snなどの元素(シフター剤
と呼ばれる)や、Mn,B,Si,Li,Na,K,Z
n,Ni,Al,Mgなどの特性改質助剤となる元素を
添加することも、本発明の特性を損なわない範囲で可能
である。
【0036】
【作用】以上説明したように、湿式反応工程を用い、さ
らにNb/Ti原子比とBa/Ti原子比とを図1のA
BCD好ましくはabcdで示した範囲内に制御して得
られた、ニオブを均一に含有するペロブスカイト結晶構
造を有した平均粒子径0.3μm以下のチタン酸バリウ
ム粉体を用い、さらに銅を図2のEFGH好ましくはe
fghで囲まれた範囲の量を添加混合した場合に、12
00℃以下という従来にない低温焼成で半導化し、しか
も平均グレイン径が1〜3μmでかつ最大グレイン径が
5μm以下という、グレインが小さくしかも良くそろっ
た、本発明の特性を有する磁器が得られる。
【0037】本発明にかかる半導体磁器がなぜ、グレイ
ンサイズが1〜3μmと小さく、温度係数が大きく、し
かも耐電圧強度/室温比抵抗の比が大きい、という従来
にない非常に優れた特性を有しているか明確でないが、
半導化剤であるニオブをも湿式合成用試剤として用いて
湿式反応中に添加し、しかも、Nb/Ti原子比とBa
/Ti原子比とを厳密に制御することにより、粉体中に
均一にニオブ成分を分布させた平均粒子径が0.3μm
以下のペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸バリ
ウムを得ることができたので、上記粉体を原料として用
いることで、1100〜1200℃という従来にない低
温焼成でも、NbがABO3 ペロブスカイト型結晶構造
BaTiO3 (A;Ba、B;Ti)中のBサイトに均
一に置換固溶して半導化し、しかも、平均径が1〜3μ
mと小さくかつ非常に分布の狭いグレインを形成させる
ことができたためであることと、温度係数の改質剤とし
て銅を選定し、かつ、その添加量を限定することによ
り、1100〜1200℃という低温において、銅が粒
界相に均一に析出したためでないかと推測される。
【0038】本発明の詳細を実施例で以下に説明する。 実施例1−16 住友シチックス社製の塩化チタン水溶液(Tiとして1
6.5重量%含有)に、あらかじめ塩酸により溶解させ
た五塩化ニオブ溶液を、Nb/Ti原子比が表1の含有
量になるようにそれぞれ添加し、攪拌溶解した。攪拌
中、さらに純水を加え、10倍に希釈した後、5%アン
モニア水をpH8となるまで3時間かけて添加混合し、
中和加水分解反応を行った。
【0039】得られたニオブ含有含水水酸化チタンスラ
リーを、ブフナーロートを用いて吸引濾過、水洗を行
い、ニオブ含有含水水酸化チタンケーキを得た後、該ケ
ーキをTiO2 換算で0.7mol/lの濃度になるよ
うに、純水を加えてスラリー化した。上記スラリーを攪
拌しながら、反応系を窒素雰囲気にして、Ba(OH)
2 ・8H2 O(林純薬工業社製、試薬特級)をBa/T
i原子比が1.4になるよう添加混合したのち、沸騰温
度まで約1時間かけて昇温し、105℃の温度で約4時
間水熱反応を行った。
【0040】その後、室温まで自然冷却したのち、デカ
ンテーションを繰り返し、ブフナーロートを用いて吸引
濾過、水洗を行った。反応後得られたケーキは、TiO
2 換算で0.7mol/lの濃度になるように純水に再
分散し、スラリー化した。このスラリーを攪拌しながら
60℃に加温してその温度に保持しておき、Ba/Ti
原子比調整の目的で、10%酢酸溶液を加えて各スラリ
ーをpH8〜10に調整し、その状態を1時間保持し
た。各々のスラリーは、ブフナーロートを用いて吸引濾
過、水洗を行い、乾燥した。
【0041】得られた粉体は、その粒子径を走査型電子
顕微鏡(日立製作所社製 S−900)で、結晶形をX
線回折装置(リガク電子工業社製 RV−300)で、
それぞれ測定したところ、いずれの場合においても、平
均粒子径が0.08μmの立方晶ペロブスカイト型結晶
構造を有するチタン酸バリウム粉体であった。また、上
記粉体は、蛍光X線分析装置(日本フィリップス社製
PW1480)を用いて組成分析し、Ba/Ti原子比
とNb/Ti原子比とをそれぞれ定量した。得られた結
果を表1に示す。
【0042】上記粉体はさらに、各々800℃で2時間
仮焼し、平均粒子径が0.1μmのニオブ含有チタン酸
バリウムペロブスカイト結晶微粉体とした。この際、上
記微粉体を蛍光X線分析装置を用いて再度組成分析した
が、Ba/Ti原子比およびNb/Ti原子比は、いず
れも表1に示した値から変化しなかった。
【0043】上記微粉体にさらに、表1に示したCu/
Ti原子比となるCu成分量に相当する酢酸銅(林純薬
工業社製 試薬特級)の水溶液を加えた。酢酸銅水溶液
の添加後、上記微粉体を、樹脂製のボールとポットとか
らなるボールミルを用いてそれぞれ湿式粉砕混合し、バ
インダーとしてPVA(ポリビニルアルコール)を粉体
に対して1.0%添加し、スプレードライヤーを用いて
造粒し、造粒粉を得た。
【0044】造粒粉は、1トン/cm2 の圧力で、直径
15mm、厚み1mmのペレットに成形した。この際、
成形体を蛍光X線分析装置を用いて再度組成分析した
が、Ba/Ti原子比およびNb/Ti原子比は、いず
れも表1に示した値から変化せず、Cu/Ti原子比
も、表1に示した値を示した。
【0045】上記で得られた成形体は、大気中で110
0〜1250℃の間でそれぞれ25℃刻みの温度幅で焼
成温度を設定して焼成を行った。各焼成における保持時
間は2時間、昇温は+300℃/hr.、降温は−20
0℃/hr.という条件で、焼成磁器を各々得た。表1
に示した焼成温度は、総合的に評価して、最も優れた特
性を示した磁器が形成された温度を記載している。
【0046】
【表1】
【0047】表1および図1と図2から、各実施例は本
発明において定義した範囲内にあることは明白である
が、参考のため詳述すると、 ABCDの範囲内ではあるがabcdの範囲外であり、
しかもEFGHの範囲内ではあるがefghの範囲外で
あるもの・・・実施例1、16 abcdの範囲内であり、しかもEFGHの範囲内では
あるがefghの範囲外であるもの・・・実施例2、1
1、13 ABCDの範囲内ではあるがabcdの範囲外であり、
しかもefghの範囲内であるもの・・・実施例4、
5、6、8、12 abcdの範囲内であり、しかもefghの範囲内であ
るもの・・・実施例3、7、9、10、14、15 となる。
【0048】上記の方法で得た各種組成(Ba/Ti原
子比、Nb/Ti原子比、Cu/Ti原子比)の焼成磁
器の特性をそれぞれ測定し、表2に示した。
【0049】表2における、平均グレイン径や最大グレ
イン径は、走査型電子顕微鏡(以下SEMと略す)によ
る観察から測定した。平均グレイン径は、SEM写真に
一定間隔で直線を引き、該直線にヒットしたグレインの
大きさを0.1μm単位で計測し、その個数を計数し
(ただし、グレインが大きく、2度以上ヒットしたもの
はその都度計数する)、全合計個数を約3000個とし
て、以下の式で計算した。 (グレインの大きさの測定値の合計)/(全合計個数)
【0050】室温比抵抗ρ、耐電圧強度Eは、磁器の両
面にオーミック性銀ペーストを焼き付けて電極とし、こ
れを測定用試料として、25℃で測定した。耐電圧強度
については、試料に破壊が起こる寸前の最高印加電圧値
を測定し、試料の電極間(厚み:mm)で割って表した
ものである。また、温度係数αは、上記試料の抵抗−温
度特性の測定値から算出した。
【0051】
【表2】
【0052】表2から明らかなように、各実施例の平均
グレイン径は、いずれにおいても1〜3μmであり、5
μmを越えるグレインは全く見られないことから、グレ
イン分布が非常に揃っていることがわかる。
【0053】また、表2から同様に、本発明の磁器はい
ずれにおいても、耐電圧強度/室温比抵抗の比が10以
上を示し、さらに温度係数(α50)が10%/℃以上の
特性を有していることがわかる。
【0054】さらに、図1で示したabcdの範囲内に
あり、しかも図2で示したefghの範囲内にある、実
施例3、7、9、10、14、15の磁器は、上記特性
に加えて、温度係数(α10)も10%/℃以上の特性を
有しており、非常に優れた特性を有していることがわか
る。
【0055】比較例1−10 実施例と同じ方法を用いて、図1のABCDで囲まれた
範囲外または図2のEFGHで囲まれた範囲外であり、
Ba/Ti原子比、Nb/Ti原子比、Cu/Ti原子
比が表3に示した値である焼成磁器を作成し、各磁器の
特性を測定して表4に示した。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】表3および表4から明らかなように、各比
較例は、いずれにおいても本願発明の配合比率の範囲外
のものであるが、得られる磁器は、温度係数や耐電圧強
度/室温比抵抗の比が小さく、優れた特性を有している
とはいえない。
【0059】たとえば、比較例1では、Nb/Ti原子
比とBa/Ti原子比とを本発明の範囲内にしている
が、銅の含有量が図2のEFGHで囲まれた範囲より少
ないため、耐電圧強度/室温比抵抗の比が10以上の磁
器を得てはいるものの、温度係数は10%/℃未満であ
り、充分な特性を有していない。
【0060】また、比較例8のように、銅含有量が図2
のEFGHで囲まれた範囲より多いと、温度係数α50
10%/℃近くにはなるものの、室温比抵抗値が高くな
ってしまい、耐電圧強度/室温比抵抗の比が10未満を
示し、良特性を有する磁器は得られない。
【0061】さらに、たとえ銅の含有量を本発明の範囲
内にし、Nb/Ti原子比を適正な範囲に設定しても、
比較例2〜7のように、Ba/Ti原子比が図1のAB
CDで囲まれた範囲外であると、α50が10%/℃以上
の特性を有する磁器が得られないのである。
【0062】電圧依存性の評価 グレインサイズの小さい本発明のPTC半導体磁器は、
抵抗−温度特性における電圧依存性が非常に小さいこと
を確認するため、実施例3で得られた平均グレイン径が
1.9μmである半導体磁器について、その電圧依存性
を測定した。測定は、直流のパルス電圧を1V/mm、
20V/mm、150V/mmそれぞれ印加して行っ
た。 得られた結果を図3に示す。
【0063】また、実施例3と同じ配合組成比率で、従
来の1300℃以上の高温焼成により得られた、平均グ
レイン径が10μmの半導体磁器についても、その抵抗
−温度特性における電圧依存性を同様に測定した。得ら
れた結果を図4に示す。
【0064】図3と図4から、本発明の半導体磁器はグ
レインサイズが小さいので、抵抗−温度特性において非
常に小さな電圧依存性を示すことがわかる。
【0065】
【発明の効果】以上のように、湿式反応によって半導化
剤であるニオブを均一に含有した微粒の原料粉を用い、
しかも、Nb/Ti原子比、Ba/Ti原子比、Cu/
Ti原子比の配合添加量を厳密に制御することによっ
て、耐電圧強度/室温比抵抗が10以上であり、かつ温
度係数α50およびα10が10%/℃以上の優れた電気的
特性を有し、平均グレインサイズが1〜3μmで非常に
小さく、最大グレインが5μm以下と非常に分布の狭
い、電圧依存性の小さなPTC半導体磁器が得られる。
【0066】従って、本発明によれば、従来にまして実
用性に優れたPTC半導体磁器を提供することが可能で
あり、利用可能範囲の拡大を図ることができる。また、
従来のPTC半導体磁器を得るためには、通常1300
℃以上の高温焼成が必要なため、使用できる炉体構造と
して1400℃耐用である必要があるので設備コストが
高くなり、しかも、用いるコウバチ、セッタなどの治具
の消耗が激しくて維持コストも高くなっていたが、本発
明の半導体磁器の製造方法を適用すれば、1200℃以
下の低温で焼成が可能であるので、上記コストが低減で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のチタン酸バリウム系半導体磁器におけ
る、Nb/Ti原子比およびBa/Ti原子比の範囲を
示した図である。
【図2】本発明のチタン酸バリウム系半導体磁器におけ
る、Nb/Ti原子比およびCu/Ti原子比の範囲を
示した図である。
【図3】本発明の実施例3で得られた、平均グレイン径
が1.9μmであるチタン酸バリウム系半導体磁器の抵
抗−温度特性を示した図である。
【図4】本発明の実施例3と同じ配合組成比率で、13
00℃の温度で焼成して得られた、平均グレイン径が1
0μmであるチタン酸バリウム系半導体磁器の抵抗−温
度特性を示した図である。
フロントページの続き (72)発明者 坪本 直人 大阪府大阪市大正区船町1丁目3番47号 テイカ株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ペロブスカイト型結晶構造を有するチタ
    ン酸バリウム系半導体磁器において、少なくともニオブ
    と銅を含有し、そのNb/Ti原子比とBa/Ti原子
    比とが図1のABCDで囲まれた範囲内にあり、Nb/
    Ti原子比とCu/Ti原子比とが図2のEFGHで囲
    まれた範囲内にあり、磁器の平均グレイン径が1〜3μ
    mであり、かつ最大グレイン径が5μm以下であること
    を特徴とするチタン酸バリウム系半導体磁器。
  2. 【請求項2】 ペロブスカイト型結晶構造を有するチタ
    ン酸バリウム系半導体磁器において、少なくともニオブ
    と銅を含有し、そのNb/Ti原子比とBa/Ti原子
    比とが図1のabcdで囲まれた範囲内にあり、Nb/
    Ti原子比とCu/Ti原子比とが図2のefghで囲
    まれた範囲内にあり、磁器の平均グレイン径が1〜3μ
    mであり、かつ最大グレイン径が5μm以下であること
    を特徴とするチタン酸バリウム系半導体磁器。
  3. 【請求項3】 ニオブをNb/Ti原子比としてNb/
    Ti=0.15〜0.50%含有するチタン化合物の溶
    液またはスラリーと、バリウム化合物とを湿式反応さ
    せ、必要に応じて仮焼することにより、平均粒子径が
    0.3μm以下で、かつNb/Ti原子比およびBa/
    Ti原子比が図1のABCDで囲まれた範囲にある、ニ
    オブを均一に含有したペロブスカイト結晶構造を有した
    チタン酸バリウム粉体を得、上記粉体にCu/Ti原子
    比としてCu/Ti=0.01〜0.14%となるよう
    に酸化銅または酸化銅前駆体を混合したのち成形し、該
    成形体を1100〜1200℃の温度で焼成することを
    特徴とする請求項1記載の半導体磁器の製造方法。
  4. 【請求項4】 ニオブを含有するチタン化合物が、チタ
    ンの塩化物とニオブの水溶性化合物との水溶液を加水分
    解して得られた、ニオブを均一に含有したチタンの含水
    水酸化物または酸化物であり、バリウム化合物がバリウ
    ムの水酸化物であり、湿式反応が水熱反応であることを
    特徴とする請求項3記載の半導体磁器の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013086314A (ja) * 2011-10-14 2013-05-13 Seiko Epson Corp 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びに圧電素子
CN114621004A (zh) * 2022-01-26 2022-06-14 杭州电子科技大学 一种高储能密度的高熵陶瓷材料及其制备方法

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JP2013086314A (ja) * 2011-10-14 2013-05-13 Seiko Epson Corp 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置並びに圧電素子
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