JPH0820091A - セラミック焼結体およびその製造方法 - Google Patents

セラミック焼結体およびその製造方法

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JPH0820091A
JPH0820091A JP6153763A JP15376394A JPH0820091A JP H0820091 A JPH0820091 A JP H0820091A JP 6153763 A JP6153763 A JP 6153763A JP 15376394 A JP15376394 A JP 15376394A JP H0820091 A JPH0820091 A JP H0820091A
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alumina
silicon nitride
sintered body
substrate
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JP6153763A
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Masanori Katou
雅礼 加藤
Takayuki Fukazawa
孝幸 深澤
Yasuhiro Itsudo
康広 五戸
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Original Assignee
Toshiba Corp
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    • C04B41/009After-treatment of mortars, concrete, artificial stone or ceramics; Treatment of natural stone characterised by the material treated
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高温において高強度で、かつ耐酸化性に優れ
たセラミック焼結体を提供する。 【構成】 窒化ケイ素からなる基体と、この基体上に形
成され、平均粒径が20μm以上のアルミナ粒子からな
る表面層とを具備したことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、窒化ケイ素を基体とし
て有するガスタービン部品等に有用なセラミック焼結体
【0002】
【従来の技術】窒化ケイ素焼結体は、高強度、高靭性と
いう優れた機械的特性を有する。また、前記窒化ケイ素
焼結体は1000℃の温度まで耐えるという優れた耐熱
性を有するため、機械部品として広く用いられている。
【0003】しかしながら、前記窒化ケイ素焼結体から
形成されたガスタービン部品のように1200℃以上の
高温条件下で使用される構造部品は、耐酸化性および耐
食性の点で十分満足するものではない。これは、窒化ケ
イ素焼結体はアルミナ等を焼結助剤として用いて製造さ
れるため、前記助剤が第2成分として窒化ケイ素粒子の
粒界に存在するため、前記粒界相が酸化または腐食され
ることに起因している。
【0004】このようなことから特開昭61−5530
1号公報には、窒化ケイ素からなる基体の表面をサイア
ロンで被覆した構造のセラミック焼結体が開示されてい
る。前記サイアロンは、窒化ケイ素粉末とアルミナ粉末
との混合粉末を原料とし、焼結することにより作製され
る。このようなサイアロンは、アルミナが窒化ケイ素粒
子に固溶するため、窒化ケイ素焼結体において問題にな
る第2成分は粒界に殆ど存在しない。したがって、表面
をサイアロンで被覆した窒化ケイ素焼結体は1500℃
程度まで良好な耐酸化性を示す。
【0005】また、より過酷な環境下で使用される構造
部品において、より酸化性の優れた酸化物セラミックを
表面に被覆することが考えられる。特に、アルミナはア
ルカリなどに対して優れた耐食性を有する。
【0006】しかしながら、セラミックスの耐酸化性は
窒化ケイ素<サイアロン<アルミナ順で向上されるのに
対し、強度は逆に窒化ケイ素>サイアロン>アルミナ順
で大きくなる。
【0007】アルミナは、強度が300MPa程度、破
壊靭性が3〜4MPam1/2 程度であり、機械的性質は
窒化ケイ素より劣る。また、アルミナは窒化ケイ素との
熱膨張係数の差が大きいために窒化ケイ素の基体表面に
アルミナを形成すると、焼成後の冷却過程において表面
層(アルミナ層)に引張り応力が発生する。その結果、
強度の点では基体である窒化ケイ素の特徴が生かされな
い。
【0008】ところで、従来、前述した窒化ケイ素から
なる基体の表面にアルミナからなる表面層を形成するに
は遠心式光透過法の測定で平均粒径が0.5μm以下の
アルミナ粉末が用いられている。しかしながら、前記ア
ルミナ粉末は緻密化が1100〜1200℃の温度で始
まるため、1600℃程度で緻密化が始まる窒化ケイ素
との整合性が劣る。また、焼結体のSEMによる直接観
察から求めた平均粒径は10μm以下であるため、前記
引張り応力に耐えるだけの強度を有するアルミナ層を形
成することが困難である。さらに、アルミナは窒化ケイ
素の焼結温度付近で一部異常粒成長を起こすため、これ
によってもアルミナ層の強度が低下する。したがって、
窒化ケイ素からなる基材の強度を生かすにはアルミナ層
の厚さを薄く、例えば3μm以下にする必要があるた
め、耐酸化性を十分に向上することができない。
【0009】また、平均粒径が0.5μm以上のアルミ
ナ粉末を原料とし、大気中または真空中で焼結を行うこ
とが知られているが、この場合でも得られた焼結体は平
均粒径が10μm以下のアルミナ粒子を有する。
【0010】一方、黄啓祥、中川善兵衛、濱野健也;日
本セラミック協会学術論文誌,101[9](199
2)pp.1051において、チタニアが0.2重量%
含むアルミナ粉末を原料として用いた場合には、平均粒
径が20μmのアルミナ粒子を有するアルミナ焼結体が
得られることが報告されている。しかしながら、添加し
たチタニアはアルミナ焼結体に3TiO2 −5Al2
3 の形態で存在するため、耐酸化性が低下される。この
ため、前記チタニア添加アルミナ粉末を用いて窒化ケイ
素の基体表面にアルミナ層を形成しても、高温の環境下
において窒化ケイ素の持つ強度を維持しつつ耐酸化性を
向上させたセラミック焼結体を得ることができない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高温
において高強度で、かつ耐酸化性に優れたセラミック焼
結体を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明に係わるセラミッ
ク焼結体は、窒化ケイ素からなる基体と、この基体上に
形成され、平均粒径が20μm以上のアルミナ粒子から
なる表面層とを具備したことを特徴とするものである。
【0013】前記表面層を構成するアルミナ粒子の平均
粒径を規定したのは、その平均粒径を20μm未満にす
ると引張り残留応力に耐える強度を有する表面層を形成
することができなくなる。より好ましい前記表面層を構
成するアルミナ粒子の平均粒径は、20〜30μmであ
る。
【0014】前記表面層は、前記基体とこの表面層との
合計厚さに対して15%以下の厚さを有することが好ま
しい。前記表面層は、その構成材であるアルミナ本来の
高い耐酸化性の効果を十分に発揮させるために、ある程
度の厚さを有することが必要であるが、前記表面層の厚
さが前記基体と前記表面層との合計厚さに対して10%
を越えると、前記表面層を構成するアルミナの性質が現
在化し、逆に基体である窒化ケイ素の性質が損なわれる
ためにセラミック焼結体の強度および靭性が低下する恐
れがある。より好ましい前記基体と前記表面層との合計
厚さに対する前記表面層の厚さは、5〜10%である。
【0015】次に、本発明に係わるセラミック焼結体の
製造方法を説明する。まず、窒化ケイ素粉末に焼結助
剤、例えばイットリア(Y23 )粉末とアルミナ粉末
をボールミルにより混合して基体用原料を調製する。ま
た、表面層用原料としては平均粒径0.5〜1.0μm
のアルミナ粉末を用意する。
【0016】次いで、所望形状の型内に前記基体用原料
を充填した後、この原料充填層上に前記表面層用原料を
所望の厚さになるように充填して積層する。つづいて、
コールドプレスにより前記型内に予備成形体を作製した
後、窒素雰囲気中、1700℃以上の温度でホットプレ
スを施すことにより前述した窒化ケイ素からなる基体
と、この基体上に形成され、平均粒径が20μm以上の
アルミナ粒子からなる表面層とを備えたセラミック焼結
体を製造する。
【0017】前記表面層用原料であるアルミナ粉末の平
均粒径を前記範囲に規定したのは、次のような理由によ
るものである。前記アルミナ粉末の平均粒径を0.5μ
m未満にすると、アルミナの焼結が窒化ケイ素よりもか
なり早い段階で始まり、両者の整合性が低下する。一
方、前記アルミナ粉末の平均粒径が1.0μmを越える
とアルミナの焼結性が低下して粒度の大きいアルミナ粒
子と粒度の小さいアルミナ粒子とが混在して生成され、
粒度分布が広がるために結果的には平均粒径が20μm
以上のアルミナ粒子を有する強度の高い表面層を形成す
ることが困難になる。
【0018】本発明に係わる別のセラミック焼結体は、
窒化ケイ素からなる基体と、この基体上に形成されたア
ルミナ−ジルコニア複合体からなる中間層と、この中間
層上に形成されたアルミナからなる表面層とを具備した
ことを特徴とするものである。
【0019】前記中間層を構成するアルミナ−ジルコニ
ア複合体は、アルミナが40重量%以下、より好ましく
は10〜30重量%の割合で配合されていることが望ま
しい。このようなアルミナ−ジルコニア複合体からなる
中間層は、前記基体との界面に十分な厚さの窒化ケイ素
とアルミナとの固溶体からなる残留応力緩和層を形成で
きるため、前記窒化ケイ素からなる基体と前記アルミナ
−ジルコニア複合体からなる中間層との間の熱膨張係数
の差に起因する残留応力を緩和することが可能になる。
【0020】前記中間層と前記表面層との合計厚さは、
前記セラミック焼結体の全体の厚さに対して20%以下
であることが好ましい。前記中間層および表面層は、そ
れらの構成材であるアルミナ−ジルコニア複合体および
アルミナ本来の高い耐酸化性等の効果を十分に発揮させ
るために、ある程度の厚さを有することが必要である
が、前記中間層および表面層の合計厚さが前記焼結体全
体の厚さに対して20%を越えると、それら中間層およ
び表面層の構成材の性質が現在化し、逆に基体である窒
化ケイ素の性質が損なわれるためにセラミック焼結体の
強度および靭性が低下する恐れがある。より好ましい前
記焼結体全体の厚さに対する前記合計厚さは、10〜2
0%である。
【0021】前記表面層は、前記中間層とこの表面層と
の合計厚さに対して20%以下の厚さを有することが好
ましい。この理由は、前記合計厚さに対する前記表面層
の厚さが20%を越えると、強度および靭性の最も小さ
いアルミナからなる表面層の割合が大きくなり、焼結体
全体の強度および靭性が小さくなる恐れがある。より好
ましい前記中間層と前記表面層との合計厚さに対する前
記表面の厚さは、10〜20%である。
【0022】本発明に係わる別のセラミック焼結体は、
例えば次のような方法により製造される。まず、窒化ケ
イ素粉末に焼結助剤、例えばイットリア(Y23 )粉
末とアルミナ粉末をボールミルにより混合して基体用原
料を調製する。また、中間層用原料および表面層用原料
としては、アルミナ−ジルコニア複合体粉末、アルミナ
粉末をそれぞれ用意する。
【0023】次いで、所望形状の型内に前記基体用原料
を充填した後、この原料充填層上に前記中間層用原料を
所望の厚さになるように充填し、さらにこの中間層用原
料充填層上に表面層用原料を所望の厚さになるように充
填して積層する。つづいて、コールドプレスにより前記
型内に予備成形体を作製した後、窒素雰囲気中、170
0℃以上の温度でホットプレスを施すことにより前述し
た窒化ケイ素からなる基体と、この基体上に形成された
アルミナ−ジルコニア複合体からなる中間層と、この中
間層上に形成されたアルミナからなる表面層とを備えた
セラミック焼結体を製造する。
【0024】
【作用】本発明に係わるセラミック焼結体は、強度およ
び靭性の優れた窒化ケイ素からなる基体上に前記窒化ケ
イ素に比べて耐酸化性および耐食性に優れたアルミナ粒
子からなる表面層が形成された構造をなす。このため、
前記窒化ケイ素からなる基体表面は前記表面層により保
護され、酸化または腐食雰囲気に直接曝されるのを回避
できる。また、前記表面層は平均粒径20μm以上のア
ルミナ粒子からなるため、前記窒化ケイ素からなる基体
との間の熱膨張係数の差に起因して前記表面層に引張り
残留応力が加わっても、その残留応力に耐える強度を有
する。したがって、窒化ケイ素からなる基体により優れ
た強度と靭性を有し、かつ残留応力に耐える強度を持つ
表面層により表面での耐酸化性および耐食性が付与され
たセラミック焼結体を得ることができる。
【0025】また、前記表面層の厚さを前記基体とこの
表面層との合計厚さに対して15%以下にすることによ
って、表面層がアルミナ粒子からなることに起因するセ
ラミック焼結体全体としての強度低下を抑制することが
可能になる。
【0026】さらに、本発明に係わる製造方法によれば
所望の型内に窒化ケイ素粉末を所望の厚さになるように
充填し、前記型内の前記窒化ケイ素充填層上にアルミナ
粉末を所望の厚さになるように充填した後、ホットプレ
スする際、前記アルミナ粉末として平均粒径が0.5〜
1.0μmのものを用いることによって、前記窒化ケイ
素粉末と前記アルミナ粉末との焼結開始時期を一致させ
てそれら粉末を整合性よく焼結することができる。ま
た、前記平均粒径のアルミナ粉末を用い、前記ホットプ
レスを窒素雰囲気中、1700℃以上の温度で行うこと
によって、平均粒径が20μm以上のアルミナ粒子から
なる表面層を窒化ケイ素からなる基体表面に形成できる
ため、前記表面層は前記基体との間の熱膨張係数の差に
起因して前記表面層に引張り残留応力が加わっても、そ
の残留応力に耐える強度を有する。したがって、既述し
た窒化ケイ素からなる基体により優れた強度と靭性を有
し、かつ残留応力に耐える強度を持つ表面層により表面
での耐酸化性および耐食性が付与されたセラミック焼結
体を製造することができる。
【0027】さらに、本発明に係わる別のセラミック焼
結体は強度および靭性の優れた窒化ケイ素からなる基体
に中間層を介して前記窒化ケイ素に比べて耐酸化性およ
び耐食性に優れたアルミナからなる表面層が形成された
構造をなす。このため、前記窒化ケイ素からなる基体は
前記最表面の表面層により保護され、酸化または腐食雰
囲気に直接曝されるのを回避できる。
【0028】また、熱膨張係数は窒化ケイ素<アルミナ
<ジルコニアの順に大きくなるため、アルミナ−ジルコ
ニア複合体からなる中間層上に形成されたアルミナから
なる表面層は前記中間層との間で残留圧縮応力を受け
る。その結果、前記アルミナからなる表面層の強度が向
上する。このような残留圧縮応力を前記表面層に加える
中間層をジルコニア単体で形成すると、前記ジルコニア
が窒化ケイ素に対して熱膨張係数が大きくことなるこ
と、それらの界面において固溶体等の残留応力緩和層が
形成し難く、親和性に乏しいこと、という問題がある。
本発明のように中間層をアルミナ−ジルコニア複合体に
より形成することによって、前記基体との界面に十分な
厚さの窒化ケイ素とアルミナとの固溶体からなる残留応
力緩和層を形成できるため、前記窒化ケイ素からなる基
体と前記アルミナ−ジルコニア複合体からなる中間層と
の間の熱膨張係数の差に起因する残留応力を緩和するこ
とができる。
【0029】したがって、窒化ケイ素からなる基体によ
り優れた強度と靭性を有し、かつアルミナからなる表面
層により表面での耐酸化性および耐食性が付与され、さ
らにアルミナ−ジルコニア複合体からなる中間層からの
残留圧縮応力により前記表面層の強度が向上されたセラ
ミック焼結体を得ることができる。
【0030】また、前記中間層と前記表面層との合計厚
さを前記セラミック焼結体の全体の厚さに対して20%
以下にすることによって、中間層および表面層がそれぞ
れアルミナ−ジルコニア複合体、アルミナからなること
に起因するセラミック焼結体全体としての強度低下を抑
制することが可能になる。
【0031】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細
に説明する。 (実施例1)まず、窒化ケイ素粉末に焼結助剤としてイ
ットリア5重量%および平均粒径0.05μmのアルミ
ナ粉末2重量%を添加し、ボールミルを用いて混合して
基体用原料を調製した。また、表面層用原料として平均
粒径0.5μmのアルミナ粉末を用意した。
【0032】次いで、カーボンモールドに前記基体用原
料を充填し、この原料充填層上に前記表面層用原料を充
填して積層した。前記表面層用原料の充填厚さは、後述
する加工後に焼結体全体の厚さに対して10%になるよ
うに調整した。つづいて、前記カーボンモールド中で1
MPaの窒素雰囲気中、1800℃、30MPaの圧
力、保持時間1時間の条件にてホットプレスした。得ら
れた焼結体を層厚さ方向に加工することにより4mm×
3mm×40mmの試験片を作製した。
【0033】得られた試験片の断面状態を顕微鏡写真で
撮影した像を図1に模式的に示す。図1の1は、窒化ケ
イ素からなる基体、2はアルミナからなり、全体の厚さ
に対して10%の厚さを有する表面層である。また、前
記表面層2は平均粒径20μmのアルミナ粒子からなる
ものであった。
【0034】(実施例2)表面層用原料として平均粒径
0.8μmのアルミナ粉末を用いた以外、実施例1と同
様な試験片を作製した。このような方法により作製され
た試験片の表面層は、平均粒径30μmのアルミナ粒子
からなるものであった。
【0035】(実施例3)アルミナからなる表面層の厚
さが焼結体全体の厚さの5%である以外、実施例1と同
様な試験片を作製した。
【0036】(実施例4)アルミナからなる表面層の厚
さが焼結体全体の厚さの15%である以外、実施例1と
同様な試験片を作製した。
【0037】(比較例1)表面層用原料として平均粒径
0.3μmのアルミナ粉末を用いた以外、実施例1と同
様な試験片を作製した。このような方法により作製され
た試験片の表面層は、平均粒径10μmのアルミナ粒子
からなるものであった。
【0038】(比較例2)表面層用原料として平均粒径
1.1μmのアルミナ粉末を用いた以外、実施例1と同
様な試験片を作製した。このような方法により作製され
た試験片の表面層は、平均粒径15μmのアルミナ粒子
からなるものであった。なお、比較例2により得られた
表面層は肥大化したアルミナ粒子と十分に焼結されない
微細なアルミナ粒子が混在して、粒度分布が広い範囲に
亘るため、結果的には表面層は平均粒径15μmのアル
ミナ粒子からなるものになる。
【0039】得られた実施例1〜4および比較例1、2
の試験片についてJIS−1601Rに基づく3点曲げ
試験を行い、室温における強度測定した。強度測定の際
は、アルミナからなる表面層に引張り応力が加わるよう
に試験片をセットして行った。得られた測定結果を各試
験片の表面層用原料(アルミナ粉末)の平均粒径、表面
層の厚さおよび表面層のアルミナ粒子の平均粒径と共に
下記表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】前記表1から明らかなように表面層のアル
ミナ粒子が20μm以上である実施例1〜4のセラミッ
ク焼結体(試験片)は、表面層のアルミナ粒子が10μ
m、15μmである比較例1、2のセラミック焼結体
(試験片)に比べて3点曲げ強度が極めて高いことがわ
かる。また、表面層の厚さが焼結体全体の厚さに対して
10%以下である実施例1〜3の試験片は前記表面厚さ
が10%を越える実施例4の試験片に比べてより3点曲
げ強度が高いことがわかる。
【0042】次に、実施例1のセラミック焼結体および
実施例1の表面層用原料(アルミナ粉末)のみから作製
されたアルミナ焼結体を1500℃の大気中で1000
時間放置して耐酸化性の試験を行った。その結果、実施
例1のセラミック焼結体およびアルミナ焼結体の酸化増
量は、それぞれ0.45mg/cm2 、0.41mg/
cm2 であった。これにより、本発明のセラミック焼結
体はアルミナ焼結体と同等の優れた耐酸化性を有するこ
とが明らかである。なお、窒化珪素からなる基体の表面
全てをアルミナからなる表面層で被覆した焼結体を試料
として用いることが最も好ましいが、耐酸化性を検証す
るには一表面のみが表面層で被覆された実施例1のもの
で十分である。
【0043】(実施例5)まず、窒化ケイ素粉末に焼結
助剤としてイットリア5重量%および平均粒径0.05
μmのアルミナ粉末2重量%を添加し、ボールミルを用
いて混合して基体用原料を調製した。また、80体積%
のジルコニアおよび20体積%のアルミナをボールミル
で均一に混合することにより中間層用原料を調製した。
さらに、表面層用原料として平均粒径0.5μmのアル
ミナ粉末を用意した。
【0044】次いで、カーボンモールドに前記基体用原
料を充填し、この原料充填層上に前記中間層用原料を充
填した後、前記中間層用原料充填層上に表面層用原料を
充填して積層した。前記中間層用原料および表面層用原
料の充填厚さは、それぞれ後述する加工後に焼結体全体
の厚さに対して16%および4%になるように調整し
た。つづいて、前記カーボンモールド中で1MPaの窒
素雰囲気中、1800℃、30MPaの圧力、保持時間
1時間の条件にてホットプレスした。得られた焼結体を
層厚さ方向に加工することにより4mm×3mm×40
mmの試験片を作製した。
【0045】得られた試験片の断面状態を顕微鏡写真で
撮影した像を図2に模式的に示す。図2の11は、窒化
ケイ素からなる基体、12はアルミナ−ジルコニア複合
体からなる中間層、13はアルミナからなる表面層であ
る。
【0046】(実施例6〜11)アルミナ−ジルコニア
複合体からなる中間層およびアルミナからなる表面層の
厚さを焼結体全体の厚さに対して下記表2に示す比率と
し、かつ中間層用原料として下記表2に示すアルミナ量
を有するアルミナ−ジルコニア混合粉末を用いた以外、
実施例5と同様な試験片を作製した。
【0047】得られた実施例5〜11の試験片について
JIS−1601Rに基づく3点曲げ試験を行い、室温
における強度測定した。強度測定の際は、アルミナから
なる表面層に引張り応力が加わるように試験片をセット
して行った。得られた測定結果を下記表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】前記表2から明らかなように実施例5〜1
1のセラミック焼結体(試験片)は、3点曲げ強度が極
めて高いことがわかる。また、中間層および表面層の厚
さが焼結体全体の厚さに対して20%以下である実施例
5〜9、11の試験片は中間層および表面層の厚さが焼
結体全体の厚さに対して20%を越える実施例10の試
験片に比べてより3点曲げ強度が高いことがわかる。さ
らに、中間層および表面層の厚さが焼結体全体の厚さに
対して20%以下で、かつ表面層が中間層と表面層の合
計厚さに対して20%以下である実施例5〜8、11の
試験片は表面層が中間層と表面層の合計厚さに対して2
0%を越える実施例9に比べて一層3点曲げ強度が向上
されることがわかる。特に、中間層および表面層の厚さ
が焼結体全体の厚さに対して20%以下で、かつ表面層
が中間層と表面層の合計厚さに対して20%以下で、さ
らに中間層を構成するアルミナ−ジルコニア複合体中の
アルミナ量が40体積%以下である実施例5〜8の試験
片は、最も3点曲げ強度が高いことがわかる。
【0050】次に、実施例5のセラミック焼結体および
実施例5の表面層用原料(アルミナ粉末)のみから作製
されたアルミナ焼結体を1500℃の大気中で1000
時間放置して耐酸化性の試験を行った。その結果、実施
例5のセラミック焼結体およびアルミナ焼結体の酸化増
量は、それぞれ0.45mg/cm2 、0.41mg/
cm2 であった。これにより、本発明のセラミック焼結
体はアルミナ焼結体と同等の優れた耐酸化性を有するこ
とが明らかである。なお、窒化ケイ素からなる基体の表
面全てを前記中間層と表面層で被覆した焼結体を試料と
して用いることが最も好ましいが、耐酸化性を検証する
には一表面のみが中間層および表面層で被覆された実施
例5のもので十分である。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば窒
化ケイ素からなる基体により優れた強度と靭性を有し、
かつ残留応力に耐える強度を持つ表面層により表面での
耐酸化性および耐食性が付与され、高温用構造材料に好
適なセラミック焼結体を提供できる。
【0052】また、本発明によれば前述した優れた特性
を有するセラミック焼結体の製造方法を提供できる。さ
らに、本発明によれば窒化ケイ素からなる基体により優
れた強度と靭性を有し、かつアルミナからなる表面層に
より表面での耐酸化性および耐食性が付与され、さらに
アルミナ−ジルコニア複合体からなる中間層からの残留
圧縮応力により前記表面層の強度が向上され、高温用構
造材料に好適なセラミック焼結体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1により作製されたセラミック
焼結体を示す断面図。
【図2】本発明の実施例5により作製されたセラミック
焼結体を示す断面図。
【符号の説明】
1、11…基体、2、13…表面層、12…中間層

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒化ケイ素からなる基体と、この基体上
    に形成され、平均粒径が20μm以上のアルミナ粒子か
    らなる表面層とを具備したことを特徴とするセラミック
    焼結体。
  2. 【請求項2】 前記表面層は、前記基体とこの表面層と
    の合計厚さに対して10%以下の厚さを有することを特
    徴とする請求項1記載のセラミック焼結体。
  3. 【請求項3】 所望の型内に窒化ケイ素粉末を所望の厚
    さになるように充填する工程と、 前記型内の前記窒化ケイ素充填層上に平均粒径が0.5
    〜1.0μmのアルミナ粉末を所望の厚さになるように
    充填した後、窒素雰囲気中、1700℃以上の温度でホ
    ットプレスする工程とを具備したことを特徴とするセラ
    ミック焼結体の製造方法。
  4. 【請求項4】 窒化ケイ素からなる基体と、この基体上
    に形成されたアルミナ−ジルコニア複合体からなる中間
    層と、この中間層上に形成されたアルミナからなる表面
    層とを具備したことを特徴とするセラミック焼結体。
  5. 【請求項5】 前記中間層と前記表面層との合計厚さ
    は、前記セラミック焼結体の全体の厚さに対して20%
    以下であることを特徴とする請求項4記載のセラミック
    焼結体。
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