JPH08199243A - 多機能高磁束密度方向性電磁鋼板の製造法 - Google Patents

多機能高磁束密度方向性電磁鋼板の製造法

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JPH08199243A
JPH08199243A JP7011064A JP1106495A JPH08199243A JP H08199243 A JPH08199243 A JP H08199243A JP 7011064 A JP7011064 A JP 7011064A JP 1106495 A JP1106495 A JP 1106495A JP H08199243 A JPH08199243 A JP H08199243A
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annealing
primary
steel
steel sheet
recrystallization annealing
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Application number
JP7011064A
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English (en)
Inventor
Hiroaki Masui
浩昭 増井
Yoshio Nakamura
吉男 中村
Hodaka Honma
穂高 本間
Yasunari Yoshitomi
康成 吉冨
Osamu Tanaka
收 田中
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 多機能方向性電磁鋼板と称し、高磁束密度で
低鉄損、低磁歪等の特性以外に、鋼板切断時の刃の寿命
を長持ちさせるフォルステライト被膜の殆どない鋼板を
窒化法のインヒビターで作る。 【構成】 V量をNやAl量とのバランスで規制し、一
次焼鈍温度もV,Nb,Al,N等で規制する一方、表
面酸化層のFeO/SiO2 や鋼の酸素目付け量も規制
し、かつパウダーの中に硫化物や塩化物等の特殊化合物
を適量添加することで、熱延板の耳割れもなく、上記の
高磁束密度で、フォルステライト被膜の殆どない、いわ
ゆるグラスレス鋼板の製造が可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁気特性および表面特性
に優れた多機能高磁束密度方向性珪素鋼板の製造法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】トランス用等の磁気特性に優れた珪素鋼
板を製造するに際して、高磁束密度特性の鋼に絶縁特性
と鋼板表面に張力を与えトランスの性能向上に必要な磁
気特性を向上させ、かつ鋼板との密着性が良好な被膜を
形成させることは大変重要である。通常の技術では脱炭
を伴う一次焼鈍後に鋼板にマグネシアと呼ばれる酸化マ
グネシウム(MgO)の微粉末を水溶させたスラリー状
のものを塗布し、必要に応じて乾燥させた後、二次再結
晶焼鈍工程で焼成させ、鋼板中のSiとの反応でフォル
ステライト(Mg2 SiO4 )と呼ばれるセラミックス
質状の絶縁被膜(一次被膜)を形成させる。これが鋼板
に張力を与え、磁気特性とりわけ鉄損や磁歪と呼ばれる
トランスの効率や騒音特性を支配する特性値を向上させ
るのに有効である。
【0003】しかも、このフォルステライト形成が、二
次再結晶で鋼板の結晶方位を通称Goss方位と呼ば
れ、透磁率や磁束密度の向上に不可欠な鋼板長手方向
(圧延方向)に対して、{110}〈001〉の結晶方
位を有するやや粗大な二次再結晶粒を成長させるのにも
重要な役割を果たしていることもよく知られている。す
なわち、二次再結晶焼鈍昇温過程中に十分緻密な被膜が
形成されないまま二次再結晶させようとしても鋼板内の
インヒビターと呼ばれる微細な窒化物や硫化物等がその
ままの状態で、あるいは分解して早く鋼板外に抜け出て
しまう。
【0004】このため、昇温中にGoss方位粒を優先
的に成長させ、他の方位粒の成長を抑制させる役目のイ
ンヒビター効果が発揮できず、通称、細粒と呼ばれ、G
oss方位粒の二次再結晶粒の成長が部分的あるいは全
面的に行われない、極めて磁気特性の劣る鋼板を生み出
すことになる。なお、このMgOの中に酸化チタン(T
iO2 等)やその他の化合物を添加させ、さらに緻密な
一次被膜を形成させることも行われる。
【0005】一方、方向性電磁鋼板の重要な特性に磁束
密度と呼ばれる鋼の単位面積当たりにどの程度の磁束を
蓄え得るか、の目安を表す磁気特性値があり、これが高
いほど高透磁率で磁化特性や磁歪特性に優れ、かつとり
わけ磁区制御後の鉄損が小さくできることを示す。通常
800A/m 程度の磁界を与えたときの磁束密度(B
8(単位:Tまたはテスラ)と慣用的に表す)が高いほ
ど、磁性が良いというような表現をする。この磁束密度
が高いだけでは低鉄損や低磁歪は得られず、磁束密度が
高く、かつ被膜張力が大きいことが低鉄損および低磁歪
に好ましいとされている。以上がいわゆる高磁束密度を
有する方向性電磁鋼板の製造法である。
【0006】一方、昨今の需要家の方向性電磁鋼板への
要求はさらに拡大し、鋼板を製品に使用するときに、部
材の板取りの際の切断機の刃の寿命を少しでも長くさせ
るために、上記の硬質のフォルステライトの一次被膜を
極力薄くするか、なくしてしまうことが期待されるよう
になった。つまり、高磁束密度とともに硬質のフォルス
テライト一次被膜を殆ど形成させずに、その代わりにフ
ォルステライトに比べ切断機の刃の寿命にとって好まし
い二次被膜と称する高張力で電気的絶縁性の大きい有
機、無機あるいは半有機質の被膜あるいはゾルゲル法に
よる被膜のいわゆる湿式法による二次被膜か、あるいは
それに代わる化学的・物理的蒸着法による二次被膜等で
代替することで方向性電磁鋼板の使用性能を高く維持し
ようとするものである。
【0007】一方、高磁束密度を得るにも以下の問題が
ある。磁束密度を高めるにはMnSやAlN等の微細析
出物をインヒビターとして、使用することが公知であ
る。とりわけAlNの有効な存在を可能にするために一
次焼鈍中や後に窒素添加する方法も公知である。しかる
に、実際は上記の技術知見があっても、なおかつ十分な
高磁束密度およびそのために必要な良好な二次再結晶組
織や被膜を安定して作ることは容易ではなく、さらなる
適正なインヒビターとなる元素の選択や二次再結晶焼鈍
中にそれを効率良く機能させるフォルステライト被膜形
成のための技術の開発が必要であった。MnS等をAl
Nと併用する鋼ではMnS以外にもMnSをさらに有効
にインヒビターとして活動せしめる他の元素の添加も行
われ、それなりに高い磁束密度の鋼を得ている。しか
し、MnSを利用する場合の最大の課題の一つは熱延板
の耳割れである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明はMnSを使わ
ず、熱延のスラブ加熱温度を比較的低くし、AlNをイ
ンヒビターとして有効に使い、B8 ≧1.94Tの高磁
束密度を有し耳割れも殆どない方向性電磁鋼板の製造法
を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような課題
に対して以下の技術的知見を得たものである。高磁束密
度鋼を得るには二次再結晶で通称Goss方位と呼ばれ
る{110}〈001〉の結晶方位を有する粗大な粒を
いかに先鋭に作るかが技術の要である。これは一つには
一次焼鈍組織の一次再結晶粒の大きさとインヒビターの
強さのバランスで決まることが知られているが、先鋭な
Goss方位の二次再結晶粒を得るには、さらにそのメ
カニズムを詳細に追求することが重要でその一つに次の
考え方がある。
【0010】二次再結晶焼鈍において一次焼鈍組織の中
のGoss核の方位{110}〈001〉を有する一次
再結晶粒のみが優先的に成長し、他の方位の粒成長がイ
ンヒビターでうまく抑制されるためには二次再結晶初期
の比較的低い温度(1000℃前後)での有効なインヒ
ビターの存在が必要であり、これを従来のMnSやMn
Sの役割を助長する添加元素をAlNと併用する技術が
種々発明されてきた。
【0011】しかしながら前述のようにMnSを主とし
て使用する鋼は熱延耳割れが避けられず、かつ、MnS
を固溶させる目的等でスラブ加熱温度を1300℃以上
にする等の工業的困難さを伴うことがあり、従って熱延
耳割れがないかあっても極めて小さい鋼で、かつスラブ
加熱温度も低くできるようにするためには、それに代替
する新たな技術が必要であった。
【0012】本発明の知見の一つはVおよび/あるいは
Nbの利用である。VはNと化合し、VNを形成する。
これの分解温度はSi3 4 (900〜950℃前後)
とAlN(1070〜1100℃前後)の中間で約10
00℃前後である。これはMnSのそれにも近い。ま
た、Nbの窒化物のそれはVより少し高く、1030℃
前後であるが、Vに次ぐ効果が期待される。この分解温
度がAlNより低いということはやがてAlNがインヒ
ビターとしての役割を高温域で受け継いで、Goss方
位の二次再結晶粒が、さらなる成長をするためのいわば
Goss核の萌芽期の重要なコントロールの役割に相当
している、とも言えるので初期インヒビターとも考えら
れる。これに対しAlNは後期インヒビターとも言え
る。
【0013】従って、AlNとの分解温度との差が高磁
束密度に重要である。さらに分解温度が低いことはイン
ヒビターとしての役割が終了した後で自らの純化もしや
すく鉄損を低くするためにも重要である。ところが、本
発明で明らかになったのは、単にVやNbの発見だけで
はB8 ≧1.94TのB8 や良好な一次被膜ができない
という事実である。
【0014】これを克服したのが本発明の最大の知見の
一つである。まず、重要なのは、ξ=N%−(14/5
1)V%の概念である。なお、本発明で%は重量%(wt
%)を意味する。これはVNが生成された残りのNの量
を示すが、本発明によりVNが生成され初期インヒビタ
ーとしての役割があっても、残りのNが後期インヒビタ
ーのAlNの形成にある程度十分確保されていないと、
先鋭なGoss二次再結晶粒の成長を引き継げないこと
が分かったものである。そのためにはξは最低0.00
2%必要である。一方、0.04%超ではフリーのNが
多すぎてまず微細に安定した初期インヒビターのVNの
生成を抑制してしまう。
【0015】さらにξの規制だけでは高B8 は得られな
いことが明らかになった。つまり、VNの初期インヒビ
ターからAlNの後期インヒビターへの引き継ぎがスム
ーズにいくためにはVやAlやNが十分あればそれで本
発明の目的とする高B8 の磁束密度が得られるというわ
けにはいかないことが分かった。すなわちη=Al%−
(27/14)ξという量がVとの関係で極めて重要な
ことが分かった。
【0016】ηはVNが形成され、やがてAlNも形成
された後の残りのAl量に対応するもので、いわば鋼マ
トリックス中のAlの余裕存在量ないしはAlN形成に
本来必要なAlの不足分の量(負符号)を表すもので、
いわば初期インヒビターのVN等から後期インヒビター
AlNへの移行の促進活性化の度合いを示している。従
ってこの値とV量との相対的な関係、V%−η、はその
値が大きいほど初期インヒビターのVNがAlNに対し
て安定して初期インヒビターの役割をいかに十分果たす
かを示しており、高磁束密度を狙う本発明鋼ではV%−
ηは最低0.005%は必要である。
【0017】この値の大きいほどVNは安定しているが
大きすぎると後期インヒビターAlNへのスムーズな移
行がしにくくなりB8 ≧1.94Tは困難となるため、
V%−ηの上限が必要であり、本発明鋼においてはその
最大値は0.07%となる。また、V%−ηが大きいと
一次再結晶粒の成長も抑制して、高温の一次焼鈍温度ま
で一次再結晶粒を小さく保つので、二次再結晶時の細粒
化も抑える効果もあるが、一方、大きすぎると、殆ど一
次再結晶粒は成長しなくなる。一方、V%−ηは小さす
ぎても(負も含め)良くない。このときはVNがAlN
に比べて不安定であり、初期インヒビターの作用が弱
く、二次再結晶はしても前述のようにGossの先鋭な
方位が得られにくくB8 ≧1.94Tは困難である。こ
れらを含めると0.01%≦V%−η≦0.05%が最
も好ましい。これらの関係を図示したのが図1である。
【0018】さらに本発明では高磁束密度を得るには一
次再結晶焼鈍温度をV%−ηと連動させて設けることが
必要であることが分かった。これは、Gossの先鋭な
二次再結晶方位を得るには、一次再結晶粒の大きさとイ
ンヒビター強度のバランスが重要なためである。すなわ
ち一次再結晶粒が大きすぎると粒界駆動力が弱すぎてい
わゆる二次再結晶せずに、いわゆる細粒の現象が起き、
また、粒が小さすぎるとGoss以外の方位も成長し、
高磁束密度は得られない。
【0019】VNは初期段階で一次再結晶粒の成長を抑
制するので、先鋭なGoss粒を得るための最適の一次
再結晶粒を得るには、V%−ηに対応して焼鈍温度を高
くすることが好ましい。逆に言えば、最適の高磁束密度
を得るには一次再結晶焼鈍温度は初期インヒビター強度
に対応するV%−ηに連動させる必要があることが分か
った。
【0020】本発明によれば、一次再結晶焼鈍温度をT
0 (℃)としたとき、780℃+100(V%−η)≦
0 ≦780℃+5000(V%−η)で行う必要があ
る。T0 の下限は、これより低い温度では良好なGos
s方位の二次再結晶粒を得るのに十分な正常な一次再結
晶粒の大きさが得られず、一方、この上限より高いと一
次再結晶粒が粗大化し、二次再結晶で細粒が出始める。
Goss粒の均一な成長でさらなる高磁束密度を得るに
は好ましくは780℃+500(V%−η)≦T0 ≦7
80℃+3000(V%−η)が良い。図2はこの関係
を図示したものである。
【0021】ここで780℃の意味はVやNbを含まな
いときの基礎的な二次再結晶でGoss方位が得られる
本発明対象鋼の下限の一次再結晶焼鈍温度に相当するも
のである。NbはVほどではないが、それに準ずる効果
作用がある。NbでVを一部または全部を代替する場合
は、Nとの関係で原子量比から(51/93)Nb%が
Vの代替としての役割をする。
【0022】一方、方向性電磁鋼板は高磁束密度だけで
は実際の使用に耐えられない。前述のように磁気特性や
絶縁性も高く維持し、鋼板切断時の刃の寿命増大という
本発明の目的から、鋼板の表面にフォルステライトと称
する一次被膜を殆ど形成させられない本発明鋼では、前
記の二次被膜で絶縁性と被膜張力を得ないと、とりわけ
磁区制御等をして、鉄損を低くしようとしても磁区は細
分化せずに低鉄損は得られないばかりか、磁歪特性も劣
ってしまい、従って本発明ではこのような二次被膜を前
提にしている。
【0023】しかしながら、このようにフォルステライ
トの一次被膜を殆ど作らずに高磁束密度鋼を得ることは
インヒビターコントロールの点から容易でない。本発明
においては、上記の知見に加え、一次再結晶焼鈍後の酸
素目付け量や酸化層の組成と焼鈍分離剤のマグネシアへ
の最適の添加物等からなる組み合わせの発見により、こ
の課題を解決し、熱延板の耳割れの殆どなく、フォルス
テライトの一次被膜の殆どない方向性電磁鋼板で磁束密
度B8 ≧1.94Tの良好な製品の製造方法を提供する
ものである。
【0024】本発明の要旨とするところは下記の通りで
ある。 (1)Si:1〜4%、Al:0.01〜0.05%、
V:0.01〜0.10%、S:0.01%以下を含む
鋼を溶製し、1000〜1270℃のスラブ均熱温度、
850℃以上の熱延仕上温度の熱間圧延、冷間圧延、一
次再結晶焼鈍および二次再結晶焼鈍を基本工程とする方
向性電磁鋼板の製造において、さらに溶鋼中および熱間
圧延後から二次再結晶焼鈍工程の二次再結晶焼鈍温度9
50℃に到達する前のいずれかの工程で鋼に合計N:
0.01〜0.04%の窒素添加を行い、かつその合計
のN量に対してξ=N%−(14/51)V%と定義し
たとき0.002%≦ξ≦0.04%を満たし、かつ、
η=Al%−(27/14)ξと定義したときV%−η
が0.005%≦V%−η≦0.07%を満たすように
せしめ、さらに、一次再結晶焼鈍温度T0 を780℃+
100(V%−η)≦T0 ≦780℃+5000(V%
−η)で行い、かつ、一次再結晶焼鈍後における酸素目
付け量が1500ppm 以下、かつその際に形成される酸
化膜中のFeO/SiO2 が0.40以下であり、さら
に上記の二次再結晶焼鈍前に焼鈍分離剤としてマグネシ
アの中にLi,K,Bi,Na,Ba,Ca,Mg,Z
n,Fe,Zr,Sn,Sr,Alの硫化物の1種また
は2種以上をMgO100重量部に対して0.5〜20
重量部および/または、これらの元素の炭酸塩、硝酸
塩、塩化物の中から選ばれる1種または2種以上を2〜
20重量部添加して鋼板表面に塗布することを特徴とす
る多機能高磁束密度方向性電磁鋼板の製造法。
【0025】(2)さらにNb:0.008〜0.08
%を溶鋼中に含み、また、(1)記載の式中のV%に代
えてV%+(51/93)Nb%と置くことを特徴とす
る(1)記載の鋼の製造法。 (3)Vの代わりにNb:0.008〜0.08%を溶
鋼中に含み、また、(1)記載の式中のV%に代えて
(51/93)Nb%と置くことを特徴とする(1)記
載の鋼の製造法。
【0026】以下に本発明を詳細に説明する。前述のよ
うに方向性珪素鋼板の二次再結晶はGoss方位と呼ば
れる{110}〈001〉方位の粒を二次再結晶焼鈍
(仕上焼鈍とも呼ばれる)時に十分成長させることが肝
要である。これは一次再結晶焼鈍(一次焼鈍とも呼ぶ)
の中のある特定粒(Goss粒)のみを粗大再結晶させ
るもので、このときにインヒビター(Inhibito
r)と呼ばれるたとえばMnSやAlNのような微細析
出物を仕上焼鈍前に十分作っておくことが技術上必要で
あることがよく知られている。
【0027】そして、このために必要なSやNを鋼溶製
時またはとりわけNを一次焼鈍後または他の工程中に添
加することが行われる。ここでNを添加する際の一次焼
鈍後と呼ぶ内容を補足するが、これは通常脱炭反応も機
能する一次焼鈍の設備の一部にアンモニア、窒素化合物
等により、あるいは物理的、化学的蒸着法等により、窒
化反応を行う設備を内部または近接して設置し、一次焼
鈍後またはそれと平行させて窒化反応させる方法であ
る。一次焼鈍は鋼の冷間圧延(冷延)後の組織を焼鈍組
織にし、最適な一次再結晶粒径を得る目的以外に鋼の脱
炭やそれに伴う、二次再結晶焼鈍初期の一次被膜(フォ
ルステライト等)を形成するための酸化層を作る目的も
ある。鋼溶製時に十分低炭素化した鋼では脱炭機能より
も一次焼鈍後の表面層の酸化物層を変えて、被膜形成に
有利な形にすることがむしろ重要な役割となる。
【0028】さて一次焼鈍し、必要に応じて窒化した鋼
板にMgOを主体とし、これを水に溶かして通称MgO
パウダー水溶液というものをスラリー状に鋼板表面に塗
布し、次の仕上焼鈍工程で被膜生成および二次再結晶を
行わせしめる。図3は板厚0.23mm材の一次焼鈍およ
び必要に応じて窒化処理後の3%Si鋼板にMgOパウ
ダーをスラリー状に塗布して、鋼板のマグネシアパウダ
ーに種々の添加物を加えてから、二次再結晶焼鈍させた
結果である。ここでパウダーにCa系、Bi系、K系と
あるのはここではそれぞれMgOパウダーにそれぞれC
aCl2 ,BiCl3 ,K2 SをMgOを100重量%
としたときに( )内の重量%を添加し、フォルステラ
イト形成を抑制させたものである。
【0029】ここでフォルステライト被膜の形成状態を
目視観察で二重丸(殆どなし)、○(かなり薄い)、△
(一部とれている)、×(ほぼ通常通りの被膜ができて
いる)で分類したものである。ここで横軸は一次再結晶
焼鈍後における酸素目付け量(ppm)、縦軸は同じく酸化
膜中のFeO/SiO2 の値を示し、また個々のデータ
に〔 〕で付記した値は製品の磁束密度B8 (T、テス
ラ)である。
【0030】なお、フォルステライトの生成はMgOと
鋼板中の表面濃化したSiが反応し、2MgO+SiO
2 →Mg2 SiO4 の反応を起こしたものと一般的に考
えられている。図3の実験結果にみられるように、マグ
ネシアへの上記添加物が硫化物で0.5〜20重量%、
塩化物で2〜20重量%で、かつ、一次再結晶焼鈍にお
ける酸素目付け量が1500ppm 以下、また、FeO/
SiO2 が0.40以下の場合は製品のフォルステライ
ト(一次)被膜が殆どできずに、かつB8 もほぼ1.9
4T以上の方向性電磁鋼板ができることが分かった。
【0031】なぜ、マグネシアへのこれらの添加物でフ
ォルステライト被膜が殆どできずに、Goss方位の先
鋭な二次再結晶が行われるか、については以下のように
考えられる。二次再結晶焼鈍の初期にはまずマグネシア
と鋼表面との反応によるフォルステライト被膜形成が行
われ、これでインヒビターが逃げずに有効に働き、やが
てその役目が終りかけたときにマグネシアへの添加物の
硫化物、塩化物等により、フォルステライトが気相エッ
チング反応等により、消失してしまう、と考えられる。
【0032】なお、本発明鋼において初期インヒビター
VNから後期インヒビターAlNへの移行をよりスムー
ズに行い、さらなる高磁束密度を得るには二次再結晶焼
鈍の800℃〜最高到達温度までの平均昇温速度が50
℃/hr以下が好ましい。一方、0.1℃/hr未満では工
業的に成り立たないばかりか、本発明では後期インヒビ
ターAlNへの移行が遅れる。このように本発明の一次
被膜のフォルステライトを殆ど形成させずにかつB8
1.94T以上であることを目的とする方向性電磁鋼板
は、その化学成分とマグネシアへの添加物組成とその他
の製造方法との組み合わせにより、工業的に可能なレベ
ルにコントロールすることが可能となった。
【0033】さて、ここで方向性電磁鋼板の製造方法に
触れる必要がある。本発明で極めて重要な点はVとNb
の挙動であるがこれについては上述した。本発明の骨子
はSi:1〜4%、Al:0.01〜0.05%、V:
0.01〜0.10%、S:0.01%以下を含む鋼を
溶製し、1000〜1270℃のスラブ均熱温度、85
0℃以上の熱延仕上温度の熱間圧延、冷間圧延、一次再
結晶焼鈍および二次再結晶焼鈍を基本工程とする方向性
電磁鋼板の製造において、さらに溶鋼中および熱間圧延
後から二次再結晶焼鈍工程の二次再結晶焼鈍温度950
℃に到達する前のいずれかでの工程で鋼に合計N:0.
01〜0.04%の窒素添加を行い、かつその合計のN
量に対してξ=N%−(14/51)V%と定義したと
き0.002%≦ξ≦0.04%を満たし、かつ、η=
Al%−(27/14)ξと定義したときV%−ηが
0.005%≦V%−η≦0.07%を満たすようにイ
ンヒビターを付与せしめ、かつ、一次再結晶焼鈍温度T
0 を780℃+100(V%−η)≦T0 ≦780℃+
5000(V%−η)で行い、かつ、一次再結晶焼鈍後
における酸素目付け量が1500ppm 以下、かつその際
に形成される酸化膜中のFeO/SiO2 が0.40以
下であり、さらに上記の二次再結晶焼鈍前に焼鈍分離剤
としてマグネシアの中にLi,K,Bi,Na,Ba,
Ca,Mg,Zn,Fe,Zr,Sn,Sr,Alの硫
化物の1種または2種以上をMgO100重量部に対し
て0.5〜20重量部および/または、これらの元素の
炭酸塩、硝酸塩、塩化物の中から選ばれる1種または2
種以上を2〜20重量部添加して鋼板表面に塗布するこ
とを特徴とする方向性電磁鋼板の製造法であり、必要に
応じてさらにNb:0.008〜0.08%を溶鋼中に
含み(このときは、式の中のV%に代えてV%+(51
/93)Nb%と置く)あるいはVの代わりにNb:
0.008〜0.08%を溶鋼中に含む(このときは、
式の中のV%に代えて(51/93)Nb%と置く)こ
とを特徴としている。
【0034】もちろん上記元素以外に、Mn,Se,S
b,Cu,B,Bi,Ti,Ni,Cr,Co,Hf,
Ca,Mg,O等の他の添加元素を付加的に添加させ、
磁気特性の向上をはかることは本発明の基本を変えるも
のではない。ただしこれらの元素は本発明の本質を損な
わないためにはその合計で最大1%である必要がある。
また、特に本発明鋼の高磁束密度を補佐する元素とし
て、Pは有効であり、0.005%以上からその効果が
認められた。0.1%以下ならば鋼の脆性も引き起こさ
ずむしろ添加する方が好ましい。
【0035】また、二次再結晶粒の粗大化を防止し、鉄
損の低減にSnを添加することは有効である。Snの上
限は0.3%であり、これ以上では被膜形成が十分行わ
れず、一方、鉄損低減効果は0.02%以上から認めら
れる。Cは通常0.1%以下程度存在し、磁性向上にも
間接的に寄与し、本発明では0.03〜0.07%程度
が適当だが、必ずしも本発明の高磁束密度で必須という
わけではない。
【0036】Nは珪素鋼板製造工程における冷延後の一
次焼鈍中または直後に鋼板に直接窒化反応を介して鋼に
Nを強制的に添加せしめる等の方法により、溶鋼中のN
と併せ二次再結晶焼鈍の950℃に到達する前にNを
0.01〜0.04%が鋼に含まれることを特徴とす
る。0.01%未満ではVN,AlN,NbNあるいは
付帯的にSi3 4 等のインヒビターが十分できず、高
磁束密度が得られず、一方、0.04%超では二次再結
晶初期のフォルステライト被膜が良好にできない。な
お、二次再結晶焼鈍の950℃はVN等のインヒビター
がほぼ十分に生成されている温度であり、これより高い
温度ではじめてNが十分供給されても本発明の高磁束密
度は得にくい。なお、溶鋼中には0.003〜0.01
2%程度含まれることが本発明では最適である。
【0037】Siは本発明においては上記のようにフォ
ルステライト形成のためと鉄損低減のために最低1%は
必要である。一方、4%を超えると飽和磁束密度が低下
し高磁束密度鋼には適さない。AlはAlNインヒビタ
ー形成に有効であり、最低0.01%は必要である。し
かし0.05%を超えるとV等との関係で前述の理由で
高磁束密度は得られないばかりか、AlN等の析出物の
生成促進をかえって阻害し、いわゆるインヒビター不足
となって細粒となりやすい。
【0038】この他の元素は本発明では以下に制約する
ことが好ましい。SはMnと反応してMnSインヒビタ
ーを形成するが本発明では必須ではなくむしろ熱延板の
耳割れ防止のために0.01%以下にする必要がある。
Mnは必須ではないが、Sと化合し、耳割れ防止にも
0.05%以上入れることは有効であるが、0.20%
超では磁性劣化をもたらす。Oは鋼溶製後に0.03%
以下であればAl2 3 を多量に作りすぎず清浄度的に
好ましい。
【0039】次に化学成分以外の本発明の製造方法につ
いて述べる。鋼を転炉または電気炉等で出鋼し、必要に
応じて精錬工程を加えて成分調整を行った溶鋼を連続鋳
造法、造塊分塊圧延法あるいは熱延工程省略のための薄
スラブ連続鋳造法等により、厚さ30〜400mm(薄ス
ラブ連続鋳造法では50mm以下)のスラブとする。ここ
で30mmは生産性の下限であり、400mmは中心偏析で
Al2 3 等の分布が異常になることを防ぐための上限
である。また薄スラブ連続鋳造法での50mmは冷速が小
さくなって粗大粒が出てくることを抑制するための上限
である。
【0040】該スラブをガス加熱、電気利用加熱等によ
り1000〜1270℃に再加熱を行い、引き続き熱間
圧延を行って厚さ10mm以下のホットコイルとする。こ
こで1000℃はAlNがスラブでも十分溶解する下限
であり、1270℃はスラブおよび熱延後の肌荒れと組
織粗大化による線条細粒等の磁性劣化を防止するための
上限である。また10mmは適正な析出物を生成する冷速
を得る上限である。なお、薄スラブ連続鋳造法では直接
コイル状にすることも可能であり、そのためには10mm
以下が好ましい。
【0041】さて通常のスラブからの熱延において、仕
上温度は850℃以上にする必要がある。これ未満の温
度ではAlN等が熱延板中に粗大析出しやすく後の一次
焼鈍組織がコントロールしにくくなり、結果的に高磁束
密度が得られない。さらに巻取り温度は本発明では必ず
しも本質的ではないものの、680℃以下にすることで
AlNの粗大析出を防ぎ、高磁束密度に良い。
【0042】なお、連続(または連連続)熱延法と称
し、粗圧延後、中間製品の厚手の熱延板を一時的にコイ
ル状に巻いたりして、保熱して、次々と該コイルを接合
し、さらに連続的に熱延する方法は、とりわけ長手方向
の組織、成分均一化とその保熱中の析出物コントロール
による後工程の熱延板焼鈍の一部または全部の代替の効
果が期待され、本発明鋼にも有効である。
【0043】このように作ったホットコイルを再び80
0〜1250℃で焼鈍(熱延板焼鈍)し、長手方向の磁
性の均一化とさらなる向上をはかることもしばしば行わ
れる。ここで800℃はコイル長手方向の組織均一化の
下限であり、1250℃はAlN粗大化防止による高磁
束密度化のための上限である。
【0044】かかる処理工程の後、ホットコイルを直接
またはバッチ的に酸洗後冷間圧延を行う。冷間圧延は圧
下率60〜95%で行うが、60%は本発明で再結晶可
能な限界であり、好ましくは70%以上が一次焼鈍で
{111}〈112〉方位粒を多くして、二次再結晶焼
鈍時のGoss方位粒の生成を促進させる下限である。
さらに、よりGoss方位を二次再結晶で先鋭化させる
には1回冷延法では85%以上が好ましい。一方95%
超では二次再結晶焼鈍で首振りGoss粒と称するGo
ss方位粒が板面内回転した磁気特性に好ましくない粒
が生成される。
【0045】以上はいわゆる1回冷延法で製造する場合
だが、2回冷延法と称して冷延−焼鈍−冷延を行う場合
は、1回目の圧下率は10〜80%、2回目の圧下率は
50〜95%となる。ここで10%は再結晶に必要な最
低圧下率、80%と95%はそれぞれ二次再結晶時に適
正なGoss方位粒を生成させるための上限圧下率、ま
た50%は2回冷延法においては一次焼鈍時の{11
1}〈112〉方位粒を適正に残す下限圧下率である。
なお、通称パス間エージングと称し、冷間圧延の途中で
鋼板を適当な方法で100〜400℃の範囲で加熱また
は冷間圧延の加工熱を利用し保熱することも磁気特性の
向上に有効である。100℃未満ではエージングの効果
がなく、一方、400℃超では転位が回復してしまう。
【0046】しかる後、1回冷延法でも2回冷延法でも
一次焼鈍を行うわけであるが、この焼鈍で脱炭を行うこ
とは有効である。これは、前述のようにCは二次再結晶
粒のGoss粒の核生成に有効であるが、不純物として
残ると鉄損の劣化を招くためである。なお、予め鋼の溶
製時にCを下げておくと脱炭工程が短縮化されるばかり
か{111}〈112〉方位粒も増やすのでその鋼の要
求特性によっては本発明でも好ましい場合がある。な
お、この脱炭焼鈍工程で適正な露点を設定することで後
の一次被膜生成に必要な酸化層の確保が行われる。
【0047】一次焼鈍温度は本発明鋼では重要である。
その制約の条件と理由は前述した。さらに、AlNやV
N,NbNあるいは付随的なSi3 4 インヒビターの
Nの一部をこの一次焼鈍時または直後に窒化法等で強制
添加することを窒化法の一つとしてその特徴とする本発
明においては上記の一次焼鈍中または直後に引き続きア
ンモニア(NH3 )等で窒化法により窒化することがし
ばしば行われる。この場合の窒化法の温度は600〜9
50℃が好ましい。ここで600℃は窒化反応を起こす
下限であり、一方950℃は粗大粒発生を抑える上限で
ある。
【0048】本発明においては窒化は一次再結晶焼鈍直
後に行うのが好ましいがこれは前述のように工業的には
同じ炉内の後面に仕切りを設けて雰囲気を必要に応じて
多少変えて、NH3 ガスを流すか、近接した設備で行う
ため一次再結晶と平行して窒化されることがしばしば行
われる。なお、窒化の一部を二次再結晶焼鈍中に行うこ
とも950℃以下であれば本発明の主旨を損なわない。
【0049】一次焼鈍あるいは上記窒化法を併用したコ
イルをその後、酸化マグネシウム(MgOを主成分とす
る、以下MgOと呼ぶ)パウダーを水または水を主成分
とする水溶液に溶かしスラリー状にして鋼板に塗布す
る。この際、一次再結晶焼鈍後における酸素目付け量が
1500ppm 以下、かつその際に形成される酸化膜中の
FeO/SiO2 が0.40以下であることを本発明の
特徴とする。
【0050】ここで酸素目付け量とは一次焼鈍時の脱炭
酸化反応により鋼板に酸素(O)が付加される量を示
し、これは板厚によって異なるので本発明では標準の
0.23mm(9mil)換算値とする。また、酸化層(膜)
中のFeO/SiO2 は、非水溶媒(アルコール等)を
使った定電位分析法により、鉄分を溶解した後の残渣を
集め、Fe分、Si分等を定量することでFeO,Si
2 量を求め、そのFeOとSiO2 の分析値(%)の
比をとっている。
【0051】ここで酸素目付け量の1500ppm は本発
明ではこれより多いと必然的に酸化膜中のFeO量、S
iO2 量が多くなり、酸化膜の厚みも増すために、高温
仕上焼鈍(二次再結晶焼鈍)中でのグラス(フォルステ
ライト)被膜分解反応を行うに際し、不利となる。一
方、FeO/SiO2 は0.40以下が本発明では好ま
しいが、これは0.40超では高温仕上焼鈍前半のグラ
ス被膜形成反応性が極端に増し、前半でのフォルステラ
イト形成量が増大するために、後の硫化物、塩化物等に
よるフォルステライトの分解反応工程で十分に分解反応
が進行せず、フォルステライトが残りやすいため本発明
の目的にそわない。
【0052】さて、本発明では二次再結晶焼鈍前に焼鈍
分離剤としてマグネシアの中にLi,K,Bi,Na,
Ba,Ca,Mg,Zn,Fe,Zr,Sn,Sr,A
lの硫化物の1種または2種以上をMgO100重量部
に対して0.5〜20重量部および/または、これらの
元素の炭酸塩、硝酸塩、塩化物の中から選ばれる1種ま
たは2種以上を2〜20重量部添加して鋼板表面に塗布
することを特徴とする。なお、ここで添加する化合物の
%はMgOの重量を100%としたときの重量比を%で
示してある。
【0053】ここで前記硫化物が0.5重量部(MgO
重量を100としたときの重量部割合)未満あるいは、
前記の炭酸塩、硝酸塩、塩化物が2重量部未満である
と、効果的にフォルステライトの一次被膜の低減が行わ
れず、一方、20重量部超では仕上焼鈍前半の一次被膜
形成が不安定となり、Goss方位の先鋭な二次再結晶
が行われない。この他、MgOの水和水分も重要であ
り、本発明では0.5〜5%にすることが好ましい。
0.5%未満ではマグネシアの反応性が劣化し、一方、
5%超では鋼板の露点が高くなって、昇温時前段で追加
酸化を生じ、表面に酸化膜のムラができて均一な極めて
薄いグラス(フォルステライト被膜)またはグラスのな
いグラスレス状態を得ることができない。
【0054】なお、本発明では必須ではないが、二次再
結晶焼鈍初期のフォルステライト形成を促進する目的
で、TiO2 やアンチモン系の化合物、たとえば、Sb
2 (SO4 3 やボロン系の化合物、たとえばNa2
4 7 等の化合物や各種炭・窒化物を添加することも行
われる。この場合それぞれ、その1種または2種以上の
合計が0.05〜15%であることが望ましい。0.0
5%はフォルステライト反応を促進する下限であり、一
方、15%超ではMgOが相対的に少なくなって、かえ
って、フォルステライトの生成を抑制してしまう。
【0055】二次再結晶焼鈍は最高到達温度を1100
〜1300℃で行うのが好ましい。1100℃はAlN
を使う二次再結晶がほぼ十分に行われ、かつ、諸元素の
純化が行われる下限の温度であり、一方1300℃超で
は結晶粒が粗大化しすぎて鉄損の劣化を招く。なお、前
述のように、この二次再結晶焼鈍中の950℃までの比
較的前段階で雰囲気や固体、液体の鋼板との反応等によ
りNを追加添加する窒化法が行われることもあるし、焼
鈍雰囲気から不可避的に窒素が侵入することもある。こ
の場合も本発明では950℃以下での鋼中の合計のN量
が高磁束密度に作用することは言うまでもない。
【0056】以上が本発明の珪素鋼板の製造方法での重
要な部分であるが、工業的にはさらに絶縁特性や張力付
与による鉄損等の磁気特性を向上させる目的で鋼板に有
機質や無機質や半有機質による二次被膜の生成や、さら
にその前後いずれかに歯車法やプレス法等による溝付け
等の機械的方法あるいは化学的方法により溝付けする方
法、またはレーザー照射等のエネルギー付与による非接
触型の不均質部付与の方法等による磁区制御法を行うこ
とは本発明の高磁束密度鋼の優れた特長を活かすのに最
適である。
【0057】
【実施例】表1に示すような化学成分の鋼を転炉で溶製
し、表1に示すような条件で製造した。熱延板焼鈍の条
件(1)とは900℃×2分均熱後空冷し、750℃か
ら80℃に湯冷、条件(2)とは1120℃×30秒均
熱後炉冷し、900℃から空冷、750℃から80℃に
湯冷したことを示す。また冷間圧延時のパス間エージン
グをB1〜B5、F1〜F4以外は全て行ったがその条
件は250℃である。一次再結晶焼鈍後の酸素目付け量
(0.23mm換算値)および酸化膜のFeO/SiO2
を表1に示す。
【0058】なお、ここで本発明にとりわけ重要な一次
再結晶焼鈍に引き続く窒化は同一炉内に仕切りを設けた
炉中内部分で同一ガス組成で雰囲気をドライにし、NH
3 ガスを一定量流して行ったものである。表1で溶鋼以
外の窒化法有としたものはB1〜B5以外は全てこの方
法で行ったが、B1〜B5は二次再結晶焼鈍の750〜
900℃の温度域で窒化した。この表での二次再結晶焼
鈍の950℃までのN%とは熱間圧延前のスラブ(通
常、溶鋼の値と等しい)の窒素量とこれらの窒化法によ
って加わった窒素量の合計を示している。なお、表1の
Nbを添加したC1〜C5、D1〜D5、J1について
はξやV%−ηの中に表されるV%の代わりにV%+
(51/93)Nb%(Vを添加しない鋼では(51/
93)Nb%)を使用した。
【0059】さらにこの鋼板にパウダーを塗布したが、
パウダーは水に溶解させスラリー状にして塗布後、35
0℃で乾燥させた。パウダーはMgOへの添加物の種類
と量を表1に示してある。ここで、%はMgOの重量を
100%としたときの重量比率である。しかる後に、表
1に示す昇温速度、炉内雰囲気の条件で二次再結晶焼鈍
(仕上焼鈍)を行った。さらに水洗後、リン酸系の絶縁
被膜(二次被膜)、ゾルゲル法の絶縁被膜、リン酸系の
絶縁被膜+ゾルゲル法の絶縁被膜を加熱塗布したり、あ
るいはCVD法、PVD法、メッキ法等による絶縁被膜
(二次被膜)を施した後、板取りし、歪取り焼鈍850
℃×4時間(N2 90−H2 10,Dry)を行い、一
次被膜およびマクロ外観検査、磁気測定試験等を行っ
た。表1にその結果を示す。なお、一部については歪取
り焼鈍前後にさらに磁区制御を行ったが、ここで(1)
は機械法(歯車)、(2)はレーザー法、(3)は化学
的エッチング法を使用したことを示す。
【0060】なお、製品のフォルステライト一次被膜形
成状態は目視外観検査は、二重丸:全くフォルステライ
ト被膜なし、○:透き通って二次再結晶粒が見える程度
に薄いフォルステライト被膜あり、△:部分的にフォル
ステライト被膜あり、×:通常の全面フォルステライト
被膜、という評価であることを示す。また、製品のマク
ロ外観検査は、○:十分な二次再結晶ができている、
△:部分的に細粒が認められる、×:全面に細粒が認め
られる、ことを示す。
【0061】磁気測定は60×300(圧延方向)mmの
単板のSST試験法で測定し、B8(800A/m の磁束
密度、単位はテスラ)およびW17/50 (50Hzで1.7
テスラのときの鉄損、単位はワット/kg)、および磁歪
を測定した。磁歪は60×300(長手方向)mmの試験
片をドップラー式の磁歪測定器で50Hz、磁束密度1.
7Tで行い、磁歪カーブの最大値から最小値を引いた値
で示した。なお、B1〜B5のみは試験片長手方向に
0.3kg/mm2 の圧縮力を加えて磁歪測定した。なお、
磁区制御材の磁気特性については全て磁区制御後の値を
示した。また、切断機の刃の寿命は通常のせん断機で繰
り返しせん断した際の刃の欠けが目視観測されたときの
限界繰り返し回数を示した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
【表9】
【0071】
【表10】
【0072】
【表11】
【0073】
【表12】
【0074】
【表13】
【0075】
【表14】
【0076】
【表15】
【0077】
【表16】
【0078】
【表17】
【0079】
【表18】
【0080】
【表19】
【0081】
【表20】
【0082】
【表21】
【0083】
【発明の効果】本発明鋼は化学組成、熱延条件やV,N
b,Al,Nの複雑なバランスとそれをベースにした一
次再結晶焼鈍温度の最適な温度範囲、一次焼鈍後の酸素
目付け量やFeO/SiO2 比およびマグネシアパウダ
ーへの添加物等により、熱延耳割れがないか非常に小さ
く、かつ製品が極めて高い磁束密度を有しつつフォルス
テライト一次被膜が殆どなく切断機の刃の寿命も優れ、
かつ低鉄損、低磁歪を有し、高磁束密度によりとりわけ
低磁歪や磁区制御材での鉄損低減効果も顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】V%−ηと製品B8 との関係を示す図表。
【図2】V%−ηと一次再結晶焼鈍温度と製品B8 との
関係を示す図表。
【図3】一次再結晶焼鈍後の鋼板の酸素目付け量、酸化
膜のFeO/SiO2 と製品のフォルステライト形成状
態およびB8 との関係を示す図表。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01F 1/16 (72)発明者 吉冨 康成 東京都千代田区大手町2−6−3 新日本 製鐵株式会社内 (72)発明者 田中 收 北九州市戸畑区大字中原46−59 日鐵プラ ント設計株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比で、 Si:1〜4%、 Al:0.01〜0.05%、 V :0.01〜0.10%、 S :0.01%以下を含む鋼を溶製し、1000〜1
    270℃のスラブ均熱温度、850℃以上の熱延仕上温
    度の熱間圧延、冷間圧延、一次再結晶焼鈍および二次再
    結晶焼鈍を基本工程とする方向性電磁鋼板の製造におい
    て、さらに溶鋼中および熱間圧延後から二次再結晶焼鈍
    工程の二次再結晶焼鈍温度950℃に到達する前のいず
    れかの工程で、鋼に合計N:0.01〜0.04%の窒
    素添加を行い、かつその合計のN量に対してξ=N%−
    (14/51)V%と定義したとき0.002%≦ξ≦
    0.04%を満たし、かつ、η=Al%−(27/1
    4)ξと定義したときV%−ηが0.005%≦V%−
    η≦0.07%を満たすようにせしめ、さらに、一次再
    結晶焼鈍温度T0 を780℃+100(V%−η)≦T
    0 ≦780℃+5000(V%−η)で行い、かつ、一
    次再結晶焼鈍後における酸素目付け量が1500ppm 以
    下、かつその際に形成される酸化膜中のFeO/SiO
    2 が0.40以下であり、さらに上記の二次再結晶焼鈍
    前に焼鈍分離剤としてマグネシアの中にLi,K,B
    i,Na,Ba,Ca,Mg,Zn,Fe,Zr,S
    n,Sr,Alの硫化物の1種または2種以上をMgO
    100重量部に対して0.5〜20重量部および/また
    は、これらの元素の炭酸塩、硝酸塩、塩化物の中から選
    ばれる1種または2種以上を2〜20重量部添加して鋼
    板表面に塗布することを特徴とする多機能高磁束密度方
    向性電磁鋼板の製造法。
  2. 【請求項2】 さらにNb:0.008〜0.08%を
    溶鋼中に含み、また、請求項1記載の式中のV%に代え
    てV%+(51/93)Nb%と置くことを特徴とする
    請求項1記載の製造法。
  3. 【請求項3】 Vの代わりにNb:0.008〜0.0
    8%を溶鋼中に含み、また、請求項1記載の式中のV%
    に代えて(51/93)Nb%と置くことを特徴とする
    請求項1記載の製造法。
JP7011064A 1995-01-26 1995-01-26 多機能高磁束密度方向性電磁鋼板の製造法 Withdrawn JPH08199243A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006152364A (ja) * 2004-11-29 2006-06-15 Jfe Steel Kk 方向性電磁鋼板の製造方法

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