JPH08184511A - 磁歪式トルクセンサ用シャフト材 - Google Patents

磁歪式トルクセンサ用シャフト材

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JPH08184511A
JPH08184511A JP33905194A JP33905194A JPH08184511A JP H08184511 A JPH08184511 A JP H08184511A JP 33905194 A JP33905194 A JP 33905194A JP 33905194 A JP33905194 A JP 33905194A JP H08184511 A JPH08184511 A JP H08184511A
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JP
Japan
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shaft
magnetostrictive
layer
diffusion layer
thickness
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JP33905194A
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English (en)
Inventor
Yukihiro Ouchi
幸弘 大内
Hirokazu Tanaka
宏和 田中
Kazufumi Yoshida
和史 吉田
Tadashi Sugihara
忠 杉原
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Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 繰返し疲労感度特性が劣化しない磁歪式トル
クセンサ用シャフト材を提供する。 【構成】 軸の表面に磁気歪効果を有する磁歪層を拡散
接合することで、軸に加えられたねじりトルクを検出す
る磁歪式トルクセンサに用いられるシャフト材におい
て、磁歪層とシャフト材との接合界面に形成された拡散
層が、主としてCrとBとからなる硬質相を含むものと
する。前記拡散層の厚さは、磁歪層の厚みの7.5〜3
5%であり、前記拡散層に含まれる硬質相がCrを8原
子%以上でかつBを15原子%以上含有するものである
ことが望ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁性合金の逆磁歪効果
を利用して、動力伝達軸としてのシャフトに伝わるトル
クを非接触で測定する磁歪式トルクセンサに用いられる
シャフト材に関する。
【0002】
【従来の技術】強磁性体は、磁化されるとその寸法が微
小変形し、逆に外力を加え弾性変形を与えるとその透磁
率が変化する性質を有する。前者を磁歪効果、後者を逆
磁歪効果という。これらの効果の大きさの目安として
は、飽和磁歪係数λs が用いられる。上記逆磁歪効果を
利用して、回転軸に加えられたトルクを磁気的に検出す
るセンサを磁歪式トルクセンサという。
【0003】一般に、原動機、工作機械等に用いられる
動力伝達軸(シャフト)においては、出力制御または動
力変動制御のため、シャフトに加わるトルクが計測され
ている。このトルクの計測には磁歪式トルクセンサが用
いられている。従来、磁歪式トルクセンサに用いられて
いる磁歪式トルク検出部付きシャフトとして、特開昭6
3−81993号公報に示すように、シャフト自体
を、磁歪効果を有する鋼製シャフトで構成したシャフト
が知られている。
【0004】また、特開昭59−166827号公報に
示すように、シャフトの表面に、磁性金属薄帯を合成
樹脂系接着剤等によって固定して、磁歪式トルク検出部
としての磁歪層を形成したシャフトも知られている。こ
のシャフトからトルクを検出するには、シャフトに作用
するトルクによる応力を磁歪層まで伝達させ、このとき
の磁歪層の逆磁歪効果による透磁率の変化を外部から非
接触で検出する。
【0005】また、シャフトの表面にニッケル膜をメ
ッキ法や、蒸着法あるいはスパッタ法で形成する方法も
知られている。さらに特開平4−346043号に
は、Ni−Fe系磁歪層をプラズマ溶射法などの溶射法
によりシャフト表面に形成し、無酸化雰囲気中にて90
0〜1100℃で加熱拡散処理を行なうことが、また上
記特開平5−52678号公報には、同様にFe−Co
系磁歪層をプラズマ溶射法により形成したのち、無酸化
雰囲気中にて800〜850℃で加熱拡散処理を行なう
ことが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の磁歪式トルクセンサにおいては、次に示す問
題点を有している。
【0007】まず、シャフト自体の磁歪効果を利用し
た磁歪式トルク検出部付きシャフトでは、磁歪層を別途
設けたのシャフトに比較して磁歪効果が低く、結果とし
てトルク検出の感度が低いという問題点を有している。
そのため、このシャフトを用いたトルクセンサでは、処
理回路が複雑かつ高価になる。
【0008】一方、また、磁歪層を別途設けたシャフ
トでは、磁歪層を接着剤で接着していることから、磁歪
層そのものに耐食性をもたせることができるものの、十
分な磁歪層とシャフトとの接合強度が得られず、信頼性
にかけるという問題点を有している。すなわち、このシ
ャフトでは、シャフトへ加えられるトルクの大きさ、ま
たは、高温多湿の使用環境条件によっては、磁歪層とシ
ャフトとの接合が劣化するおそれがあり、加えられるト
ルクと検出される透磁率の変化との相関関係が崩れてし
まい、トルクの検出精度が低下してしまうおそれがあ
る。このような不都合が生じる原因は、シャフトに加え
られるトルクと合成樹脂系接着剤の接合強度との比が、
トルクが大きくなるにしたがって小さくなり、シャフト
に生じる応力を磁歪層へ十分に伝達できなくなるからと
想定される。また、合成樹脂系接着剤自体の経時変化や
使用環境温度の熱による劣化等に起因しているものと想
定される。
【0009】また、シャフトの表面にニッケル膜をメ
ッキ法、蒸着法、スパッタ法などで形成する場合、ヒス
テリシスが小さいと感度が悪く、逆に感度を良くしよう
とするとヒステリシスが大きくなるという問題点があっ
た。
【0010】また、におけるように例えば高周波加熱
によってシャフトと磁歪材を接合する方法は、シャフト
内部まで高温に加熱されず、それゆえ、機械的強度の大
きく、接合強度の大きいシャフト材を提供可能である。
しかしながら、このシャフト材においては繰返し疲労時
の感度特性が十分なものではなかった。すなわち、繰返
しトルク印加試験機にてシャフトにトルクを107 回か
ける試験において、試験前後で、出力に10%以上の差
が生じていた。本発明者らがこの原因を検討した結果、
繰返しトルク印加試験において、機械的強度の弱い拡散
層が、ミクロな塑性変形を起すため、磁歪材を劣化させ
ていることを推察した。これは、高周波誘導加熱により
シャフト材と磁歪材を接合する方法は、通常3〜400
μmある磁歪材のみが加熱され、その熱がシャフト部に
移動しても、シャフト部の元素拡散が行なわれる程まで
には加熱されない。従って、における場合、シャフト
と磁歪層の接合界面には拡散層が形成されているもの
の、その拡散層は十分に発達したものではなく、例えば
20μm程度と比較的その厚さが薄いものであったた
め、さらに機械的強度が小さいため、ミクロ的に塑性変
形を起こし、繰返し疲労感度特性が満足のいくレベルに
まで達し得ないものであった。
【0011】本発明は、感度の向上とヒステリシスの低
減を同時に達成し得、かつ繰返し感度特性が劣化しない
磁歪式トルクセンサ用シャフト材を提供することを目的
とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、軸の表面に磁気歪効果を有する磁歪層を
拡散接合することで、軸に加えられたねじりトルクを検
出する磁歪式トルクセンサに用いられるシャフト材であ
って、磁歪層とシャフト材との接合界面に形成された拡
散層が、主としてCrとBとからなる硬質相を含むこと
を特徴とするものである。
【0013】さらに本発明において、前記拡散層の厚さ
が、磁歪層の厚みの7.5〜35%であることが望まし
く、また、前記拡散層に含まれる硬質相がCrを8原子
%以上でかつBを15原子%以上含有するものであるこ
とが望ましい。
【0014】
【作用】このように本発明においては、軸の表面に磁気
歪効果を有する磁歪層を拡散接合するにおいて、十分な
磁歪層とシャフト材との接合界面に十分な厚さの拡散層
を形成し、かつこの拡散層内に硬質相を析出させること
で、拡散層の機械的強度を高め、疲労試験後の感度変化
を十分に小さなものとすることを可能とした。
【0015】すなわち、本発明者らは、磁歪層を軸材に
拡散接合する際の、温度、時間等の条件を適当に制御す
ると、磁歪層とこの磁歪層近傍のみのシャフト材の元素
相互拡散が活発に行なわれ、拡散層厚は大きく、また、
層内にCrとBを主とする硬質相が多数形成され、この
硬質相が拡散層の弾性域を広くするため、拡散層のミク
ロな塑性変形が防止され、前記したような繰返しトルク
印加試験前後で、出力の差を±2%以内とすることがで
きることを見い出した。
【0016】具体的には、磁歪層をシャフト材に拡散接
合する際、シャフト材を予備加熱処理することによっ
て、磁歪層とシャフト材の温度差を小さくして拡散接合
すると、磁歪層だけでなく、この磁歪層付近のシャフト
材からも元素拡散が行なわれ、上記したように良好な特
性を有する拡散層が形成される。
【0017】以下、本発明の磁歪式トルクセンサ用シャ
フト材およびその製造方法について詳細に説明する。本
発明のシャフト材を作製するにあって使用されるシャフ
トとしては、特に限定されるものではないが。例えばS
NCM439、YHD50などが用いられる。
【0018】このシャフトは、まず常法に基づき洗浄さ
れ、洗浄後、シャフトの所定の軸方向所定位置外周に、
トルクセンサ用検出体を形成するための磁歪層を形成仮
留めする。形成仮留めする方法としては、予め原料を溶
解して所定の合金組成を有する磁歪材料のインゴットを
形成しこれを粉砕して得られた磁歪材料粉末を用いてプ
ラズマ溶射等の溶射を行なうか、あるいは予め原料を溶
解し急冷延伸して所定の合金組成を有する磁歪材料の薄
帯(リボン)を形成しておき、これをシャフトに巻き付
けて、スポット溶接などで仮止めすること等により行な
われるが、前者の方法が最終的に磁歪層をシャフトによ
り強固かつ均一に接合できるために望ましい。
【0019】なお、このように予め所定の合金組成を有
する磁歪材料のインゴットあるいはリボンを作成してお
くことで、磁歪層の組成の均一化が図られ、特に溶射法
によった場合においても、各成分の溶融温度の相違によ
る合金組織のバラツキ、欠陥の発生といった問題を回避
できる。
【0020】プラズマ溶射法は、一般にはAr、He、
2 、H2 等のガスでプラズマを発生させ、そのプラズ
マ中に被膜形成用の粉末を投入し溶融させて基材の表面
に吹き付けて被膜を形成するものであり、所望の層厚、
例えば、200〜300μmとなるまで、必要に応じて
溶射操作を繰り返す。なお、この層厚は、検出磁束の侵
入深さと後述するような熱処理後の被膜の欠陥が少ない
厚さ範囲から決まる。被膜が薄すぎると基材の影響が表
われることになり出力特性の変動をきたすこととなり、
一方、被膜が厚すぎると溶射の厚さとともに残留応力が
発生し仕上げ後に最表面に欠陥がでやすくなり歩留りの
低下につながることから、上記の範囲の層厚とすること
が望まれる。リボンを巻き付ける態様においても、前記
したような層厚となるように巻き付けられるが、操作性
の上からリボンの膜厚は、たとえば50〜100μm程
度が好ましい。
【0021】磁歪層を形成する磁歪材料としては、Fe
−Ni系、Co−Ni系、Fe−Al系、希土類金属−
Fe系、希土類金属−Co系、またはこれらの複合合金
系、さらにはこれらの合金系にMo、W、Zr、Ta、
Nbなどの金属元素を1ないし複数を含有してなる合金
系に、ホウ化物、ホウ珪化物などの硬化相ができるよう
にB、Siなどの元素を添加してなるものが用いられ
る。
【0022】このような磁歪材料として、具体的には、 Fex y Siz (ただし式中、x +y +z =100、65<x <80、
20<y +z <35、2<y <33である。)、次の一
般式 Fex Niy Mom n (ただし式中、x +y +m +n =100、70<x +y
<80、30<x <50、20<m +n <30、2<m
<10である。)、または次の一般式 Fex Coy m Sin (ただし式中、x +y +m +n =100、75<x +y
<90、50<x <80、10<m +n <25、9<m
<24である。)なる組成のものが好ましいものとして
例示できる。
【0023】次に、磁歪層を仮留めした状態のシャフト
を、高周波溶融接合装置を用いて、減圧条件下に熱処理
する。本発明に係るシャフト材を得るには、本来的に行
なわれる溶着加熱処理に先立ち、シャフトに、例えば、
温度550〜850℃、時間1〜3分程度の予備加熱処
理を行なう。この予備加熱処理によって磁歪材だけでな
くシャフト材も500℃程度の温度にすることができ、
この状態のシャフトに溶着加熱を施すことによって、磁
歪層付近のシャフト部を元素拡散が行なわれる1000
℃程度の温度まで高め、拡散層を作製することができ
る。この拡散層を予備加熱なしに、シャフトに長持間の
1000℃以上の高温加熱を施すことでも作製できる
が、シャフトへの長持間高温加熱は、内部まで高温に加
熱されるため、シャフトの機械的強度の低下が起ってし
まうため好ましくない。しかし、この予備加熱処理を施
すと、溶着加熱は、短時間で行えるので、磁歪層付近の
シャフト部のみ1000℃以上の元素拡散温度まで加熱
され、シャフトの内部まで高温に加熱されない。
【0024】なお、前記高周波溶融接合装置は公知のご
とく、例えば、シャフトを収容する真空チャンバーを有
し、シャフト回転装置によりシャフトが回転するように
なっている。シャフト回転装置は、回転制御装置により
制御される。また、真空チャンバー内には、シャフトの
外周を高周波加熱するためのコイルが設置してある。さ
らに、真空チャンバーには、その内部を高真空度に維持
するためのターボ分子ポンプ、ロータリポンプ、その他
のポンプ、および各種制御バルブが接続してある。コイ
ルに印加される高周波は、50〜400kHz、たとえ
ば110kHzであり、このコイルにより加熱されるシ
ャフトの溶着加熱時の表面温度は、パイロメータなどに
より制御されるが、1050〜1090℃程度が適当で
ある。このような加熱温度とするために、前記周波数に
おいて、高周波パワーは0.5〜3kW程度とされる。
【0025】また溶着加熱時間としては、2〜5分程度
が適当である。すなわち、加熱時間が2分未満であると
磁歪層とシャフト材との相互拡散による十分な厚さの拡
散層が発現せず、一方加熱時間が6分を越えるものであ
るとシャフト材内部まで加熱されるため、シャフトの機
械的強度の低下が起ってしまう虞れが大きいためであ
る。
【0026】また減圧度としては、予備加熱および溶着
加熱の双方において、10-2〜10-5Torr、例えば
10-3Torr程度の真空状態である。なお、Ar等の
不活性ガスを用いて雰囲気ガスを置換することも可能で
ある。さらに、シャフト全周にわたりほぼ均一に処理を
施すために、シャフトを10〜100rpm程度で回転
させる。
【0027】このような熱処理により、磁歪層とシャフ
トとの接合界面に、CrとBを主とする硬質層が析出し
てなる拡散層が形成され、磁歪層とシャフトが強固かつ
均一に接合する。
【0028】ここで、この拡散層の厚みは、磁歪層の厚
みの7.5〜35%、より好ましくは10〜25%程度
であることが望ましい。拡散層の厚みが磁歪層の厚みの
7.5%未満であると、Cr、Bを含有する硬質相が少
なく強度的に弱いものとなる虞れが大きく、一方、35
%を越えるものであると、その厚みを生じさせる条件で
はシャフト材の強度が劣化し、磁歪材の特性も劣化して
しまう虞れが大きい。
【0029】また前記拡散層に含まれる硬質相は、Cr
を8原子%以上、より好ましくは9〜11原子%で、か
つBを15原子%以上、より好ましくは20〜40原子
%含有するものであることが望ましい。すなわち、Cr
が8原子%未満、Bが15原子%未満では、硬質相とし
ての機能が発現されず、拡散層のミクロな塑性変形が生
じ、繰返しトルク印加試験前後で、大きな出力の差が生
じることとなってしまう。このようにしてシャフト材表
層部に、所定の特性を有する拡散層を介して磁歪層が形
成されたら、最後に、常法に基づき、非晶質磁歪層の表
面をシャフトの外周に沿って、相互に逆方向に軸心に対
して約45度の傾きで傾斜した二列のスリット状パター
ンに加工し、トルクセンサ用シャフトを形成する。この
ようなパターンは、いわゆるシェブロンパターンと称さ
れ、このパターンを形成するための手段としては、特に
限定されないが、転造などの機械加工法を用いる。
【0030】このようにして形成されたトルクセンサ用
シャフトは、繰返し使用後においても、高感度でかつ低
ヒステリシスという優れた性能を有するために、特に自
動車のエンジンのような高トルク・高温などの過酷な使
用環境においても応力−磁気特性変換の感度および直線
性は優れている。
【0031】なお、本発明は、上述した実施態様に限定
されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変する
ことができる。
【0032】
【実施例】次に、本発明のさらに具体的な実施例を、従
来例および比較例との対比において説明するが、本発明
は、これら実施例に限定されない。
【0033】実施例1 組成Fe0.4 Ni0.38Mo0.038 0.182 (原子比)で
平均粒径30μmの合金粉を原料粉末として、直径7.
3mmのFe基シャフト(組成は原子比でFe残;Mn
13%;Cr10%;Ni2.2 %;V2.0 %;Si1.0 %;
C0.6 %)上に溶射法により厚さ300μmで幅35m
mの溶射膜を作成した。溶射条件はプラズマ式溶射機
で、Arガス流量40リットル/min、プラズマ入力
パワー500A×70V、合金粉供給速度18g/mi
n、試料(シャフト)回転速度650rpm、プラズマ
トーチ走査速度1.5cm/秒での走査の繰返しであっ
た。さらに高周波誘導加熱により、Fe基シャフト材と
溶射材の溶融接合を施した。溶融接合の条件は、以下の
とおりである。
【0034】 真空度 :10-2Torr 昇温時間 :10秒 予備加熱パワー :0.8kW 予備加熱時間 :1分30秒 溶着加熱パワー :0.8kW 溶着加熱時間 :3分10秒 溶着加熱時シャフト表面温度:1070℃ 周波数 :130kHz シャフト回転速度 :10rpm
【0035】図1に本実施例による負荷トルク−出力特
性を示す。アンプのゲインを20倍とした時の±1N・
mの出力は122.4mVであった。この実施例1のト
ルクセンサ用シャフト材を繰返しトルク印加試験機で、
±1N・mのトルクを速度10Hzで107 回かけた
後、再び負荷トルク−出力特性を調べたところ図2のよ
うに、±1N・mの出力は123.3mVであった。従
って107 回の繰返しトルク印加試験前後の±1N・m
の出力差は+0.7%と非常に小さい値であった。
【0036】図3に本実施例により作製したシャフト断
面の磁歪層部の金属顕微鏡による組織を示す。磁歪層の
厚さは290μm、拡散層の厚さは55μmであり、
(拡散層の厚さ/磁歪層の厚さ)×100は、19.0
%であった。また図4に示す本実施例の拡散層の組織お
よび組織中に示した点の電子線マイクロアナライザーに
よる定量分析を行ない、その結果を表1に示した。分析
点1〜3から、Cr 8〜9原子%、B 27〜32原
子%、その他にFe、Ni、Moを含む析出相の存在が
わかる。この析出相は、シャフト材から拡散したCrと
磁歪材から拡散したBからなる析出相である。拡散層の
割合が大きく、層内にシャフト材からのCrの拡散が多
いのは、予備加熱処理を行なうことで、シャフトを原子
拡散が行われる温度まで高めた結果である。一般的にC
rBは、非常に硬い化合物として知られ、マイクロビッ
カーズ硬度で1000程度である。従って、Cr、Bを
含むこの析出相は硬質な相と推定され、ゆえにこの硬質
析出相を数多く含む拡散層は硬いと考えられる。
【0037】このことから、通常拡散層なるものは不均
等拡散によってボイドが生じ、また軟らかいため、ミク
ロな塑性変形を起しやすいものであるのに対し、本実施
例の拡散層は、硬質析出相の存在から弾性域が広がり、
ミクロな塑性変形が抑えられるため繰返しトルク印加試
験前後で一定トルクに対する磁歪材の寸法変化がほぼ一
定で、出力差が+0.7%と非常に小さいものであった
と考えられる。
【0038】実施例2〜7 Fe基シャフト材と溶射材の溶融接合条件(軸表面温
度、予備加熱時間、溶着加熱時間)を変えた時の(拡散
層厚/磁歪層厚)×100、電子線マイクロアナライザ
ーによる拡散層内析出層のCr、Bの分析値、繰返しト
ルク印加試験前後の出力および出力差の割合(%)をま
とめて表2に示した。表2より、(拡散層厚/磁歪層
厚)×100が7.5〜30%でかつ、拡散層内析出相
のCr分析値が8原子%、Bの分析値が15原子%であ
ると、繰返しトルク印加試験前後の出力差の割合が、±
2%以内であることがわかる。これは、溶融接合時に予
熱処理を加えることにより、シャフトからのCrの拡散
を促し、拡散層を厚くするとともに、層内にCr、Bを
主とする硬質相を作ったため弾性域が広がり、ミクロな
塑性変形を抑えたため、出力差を小さくできたと考えら
れる。
【0039】比較例1 前記実施例1で使用した組成Fe0.4 Ni0.38Mo
0.038 0.182 (原子比)で平均粒径30μmの合金粉
を原料粉末として、直径7.3mmのFe基シャフト
(組成は原子比でFe残;Mn13%;Cr10%;Ni2.
2 %;V2.0 %;Si1.0 %;C0.6 %)上に実施例1
と同じ条件で溶射を行なった。さらに、高周波誘導加熱
により、Fe基シャフト材と溶射材の溶融接合を施し
た。溶融接合の条件は、以下のとおりである。
【0040】 真空度 :5×10-2Torr 昇温時間 :10秒 予備加熱パワー :0.76kW 予備加熱時間 :1分30秒 溶着加熱パワー :0.76kW 溶着加熱時間 :2分00秒 溶着加熱時シャフト表面温度:1060℃ 周波数 :130kHz シャフト回転速度 :10rpm 図5に比較例1のシャフトによる負荷トルク−出力特性
を示す。アンプのゲインを20倍とした時の±1N・m
の出力は134.1mVであった。
【0041】この比較例1のシャフト材を、繰返しトル
ク印加試験機で、±1N・mのトルクを速度10Hzで
107 回かけた後、再び負荷トルク−出力特性を調べた
ところ図6のように、±1N・mの出力は112.0m
Vであった。従って107 回の繰返しトルク印加試験前
後の±1N・mの出力差は−16.4%と大きな値であ
った。
【0042】図7に比較例1により作製したシャフト断
面の磁歪層部の金属顕微鏡による組織を示す。磁歪層の
厚さは460μm、拡散層の厚さは30μmであり、
(拡散層の厚さ/磁歪層の厚さ)×100は、6.5%
と小さな値であった。また図8に示す拡散層付近の組織
および組織中に示した点の電子線マイクロアナライザー
による定量分析を行ない、その結果を表3に示した。拡
散層内にCr 8.6原子%、B 21.3原子%とい
う点があるが、この硬質相を含む拡散層厚が20μmと
小さいことから磁歪層とシャフト材の結合は、実施例の
それよりも弱いため、繰返しトルク印加試験前後での出
力差が−16.4%と大きな値になったと考えられる。
【0043】比較例2 実施例1と同条件で作製した溶射膜付きFe基シャフト
材に、比較例1とは異なる条件、すなわち予備加熱時
間、溶着加熱時間を長くした条件で溶融接合を施した。
(拡散層厚/磁歪層厚)×100、電子線マイクロアナ
ライザーによる拡散層内析出層のCr、Bの分析値、繰
返しトルク印加試験前後の出力および出力差の割合
(%)をまとめて表2に示した。表2より、(拡散層厚
/磁歪層厚)×100が35%を越えると出力が59.
9mVと急激に小さくなることがわかる。これは、接合
時に加熱過多によりシャフト材から磁歪材にMn、Cr
が過度に拡散し、磁歪材の特性を劣化させていると考え
られる。また、負荷トルク−出力特性において、ヒステ
リシスが4.3%と大きくなってしまい、実用上好まし
くないものであった。
【0044】比較例3〜4 さらに溶融接合条件を変えた時の比較例について表2に
示した。拡散層厚の割合が7.5〜35%、さらに拡散
層内の析出相の組成がCr 8原子%以上、B15原子
%以上という範囲を満たさない時には、繰返しトルク印
加試験前後の出力差が10%程度となってしまことが明
らかである。
【0045】従来例1 実施例1と同条件で作製した溶射膜付きFe基シャフト
材に、従来行なわれている条件、すなわち予備加熱を行
なわない条件で溶融接合を施した。条件は以下の通りで
ある。
【0046】 真空度 :5×10-2Torr 昇温時間 :10秒 溶着加熱パワー :0.78kW 溶着加熱時間 :3分10秒 溶着加熱時シャフト表面温度:1060℃ 周波数 :130kHz シャフト回転速度 :10rpm
【0047】図9に従来例1のシャフトによる負荷トル
ク−出力特性を示す。アンプのゲインを20倍とした時
の±1N・mの出力は127.5mVであった。このシ
ャフトに実施例1と同様に107 回の繰返しトルク印加
試験を行なった後再び負荷トルク−出力特性を調べたと
ころ図10のように、±1N・mの出力は116.8m
Vであった。従って107 回の繰返しトルク印加試験前
後の±1N・mの出力差は−8.4%と大きな値であっ
た。
【0048】図11に従来例1により作製したシャフト
断面の磁歪層部の金属顕微鏡による組織を示す。磁歪層
の厚さは370μm、拡散層の厚さは5μmであり、
(拡散層の厚さ/磁歪層の厚さ)×100は、1.4%
と小さな値であった。また拡散層の分析値よりCr
1.2原子%、B 14.5原子%という低い値が示さ
れた。この拡散層の小ささおよびCrの含有率の低さ
は、原子の相互拡散の程度が小さいことを示している。
すなわち、溶融加熱の時、磁歪材部が溶融しているにも
かかわらず、シャフト材は原子拡散が激しく行なわれる
ほど加熱されていないためと考えられる。したがって、
磁歪層とシャフト材の結合は、実施例のそれよりも弱
く、繰返しトルク印加試験前後で出力差が−8.4%と
大きな値となったと考えられる。
【0049】従来例2 さらに溶融接合条件(溶融加熱時のシャフト表面温度、
溶着加熱時間)を変えた従来例について表2に示した。
この場合においては、(拡散層の厚さ/磁歪層の厚さ)
×100が、14.9%と大きな値となるものの、従来
例1と同様に、拡散層におけるCrの含有率が低く、繰
返しトルク印加試験前後の出力差が大きいものとなり、
かつ接合時の加熱過多により磁歪材の特性が劣化してい
るものと考えられる。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、感度の向上とヒステリシスの低減を同時に達成し得
かつ、繰返し疲労感度特性が劣化しないトルクセンサ用
シャフト材を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の負荷トルク−出力特性を示
すグラフである。
【図2】同実施例の繰返しトルク印加試験後の負荷トル
ク−出力特性を示すグラフである。
【図3】同実施例のシャフト断面の磁歪層部の金属顕微
鏡写真(金属組織)である。
【図4】同実施例の電子線マイクロアナライザによる拡
散層付近の組織写真(金属組織)である。
【図5】比較例における負荷トルク−出力特性を示すグ
ラフである。
【図6】同比較例の繰返しトルク印加試験後の負荷トル
ク−出力特性を示すグラフである。
【図7】同比較例のシャフト断面の磁歪層部の金属顕微
鏡写真(金属組織)である。
【図8】同実施例の電子線マイクロアナライザによる拡
散層付近の組織写真(金属組織)である。
【図9】従来例における負荷トルク−出力特性を示すグ
ラフである。
【図10】同従来例の繰返しトルク印加試験後の負荷ト
ルク−出力特性を示すグラフである。
【図11】同従来例のシャフト断面の磁歪層部の金属顕
微鏡写真(金属組織)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉田 和史 埼玉県大宮市北袋町1−297 三菱マテリ アル株式会社中央研究所内 (72)発明者 杉原 忠 埼玉県大宮市北袋町1−297 三菱マテリ アル株式会社中央研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸の表面に磁気歪効果を有する磁歪層を
    拡散接合することで、軸に加えられたねじりトルクを検
    出する磁歪式トルクセンサに用いられるシャフト材であ
    って、磁歪層とシャフト材との接合界面に形成された拡
    散層が、主としてCrとBとからなる硬質相を含むこと
    を特徴とする磁歪式トルクセンサ用シャフト材。
  2. 【請求項2】 前記拡散層の厚さが、磁歪層の厚みの
    7.5〜35%である請求項1に記載の磁歪式トルクセ
    ンサ用シャフト材。
  3. 【請求項3】 前記拡散層に含まれる硬質相がCrを8
    原子%以上でかつBを15原子%以上含有するものであ
    る請求項1または2に記載の磁歪式トルクセンサ用シャ
    フト材。
JP33905194A 1994-12-28 1994-12-28 磁歪式トルクセンサ用シャフト材 Withdrawn JPH08184511A (ja)

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