JPH08176749A - 蒸気タービン翼素材とその製造方法 - Google Patents

蒸気タービン翼素材とその製造方法

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JPH08176749A
JPH08176749A JP32683394A JP32683394A JPH08176749A JP H08176749 A JPH08176749 A JP H08176749A JP 32683394 A JP32683394 A JP 32683394A JP 32683394 A JP32683394 A JP 32683394A JP H08176749 A JPH08176749 A JP H08176749A
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turbine blade
steel
steam turbine
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JP32683394A
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Ryuichi Ishii
龍一 石井
Yoichi Tsuda
陽一 津田
Masayuki Yamada
政之 山田
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高温の蒸気環境中で安定に運用できる信頼性
の高い蒸気タービン翼素材とその製造方法を提供するこ
とを目的とする。 【構成】 Alを脱酸剤として溶解・鋳造され、エレクト
ロスラブ再溶解法により再度溶解され、最終的な化学組
成が重量%で、C :0.05 〜0.15%,Cr:8.5 〜11.5%,
Mn:0.8 %以下、Al:0.02%以下、Ni:0.8 %以下、V
:0.15〜0.35%,NbもしくはTaの1種類以上の含有量
の合計:0.05〜0.25%,W :1.8 〜3.0 %,N :0.005
〜0.08%,Mo:0.3 %以下、B :0.0005〜0.02%の範囲
に調整され、残部はFe及び不可避的不純物からなり、マ
ルテンサイト単相組織を形成する蒸気タービン翼素材
と、その製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は蒸気タービン翼素材とそ
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】火力発電設備の高温部品材料として、 9
〜12%のCrを含有する高Crフェライト系耐熱鋼がある。
高Crフェライト系耐熱鋼は高温強度を高めるとともに、
延靭性や耐酸化性など数種の特性のバランスも兼ね備え
ることを目標として開発されてきたもので、この種の鋼
は比較的低価格であり、製造性に優れるとともに物理的
特性値が良好であるため広範な用途があり、各種高温機
器の性能、信頼性および運用性の向上に貢献している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近で
は地球環境保護の観点から火力発電プラントの熱効率の
一層の向上が要求され、600 ℃以上の蒸気を用いた高温
高圧の火力発電プラントが必要とされており、そのため
従来より高温強度や耐衝撃性のさらに優れた材料の開発
が要請されている。
【0004】本発明はこのような課題に対処するために
なされたもので、高温の蒸気環境中で安定に運用できる
信頼性の高い蒸気タービン翼素材とその製造方法を提供
することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、高Crフェ
ライト系耐熱鋼において、特に高温強度と高温長時間に
おける材料特性の安定化を兼ね備えた蒸気タービン翼材
と、その製造方法を開発すべく研究を行なった結果、本
発明に至ったものである。
【0006】即ち、本発明の第1の発明は、Alを脱酸剤
として溶解・鋳造され、エレクトロスラブ再溶解法によ
り再度溶解され、最終的な化学組成が重量%で、C :0.0
5 〜0.15%,Cr:8.5 〜11.5%,Mn:0.8 %以下、Al:
0.02%以下、Ni:0.8 %以下V :0.15〜0.35%,Nbもし
くはTaの1種類以上の含有量の合計:0.05〜0.25%,W
:1.8 〜3.0 %,N :0.005 〜0.08%,Mo:0.3 %以
下、B :0.0005〜0.02%の範囲に調整され、残部はFe及
び不可避的不純物からなり、マルテンサイト単相組織を
形成する蒸気タービン翼素材を主な特徴とするものであ
る。また、本発明の第2の発明は、Alを脱酸剤として用
いて溶解・鋳造した鋼塊をエレクトロスラブ再溶解法に
より再度溶解し、分塊鍛造または分塊圧延により棒材と
して形成した後、最終的な化学組成が重量%で、C :0.0
5 〜0.15%,Cr:8.5 〜11.5%,Mn:0.8%以下、Al:0.
02%以下、Ni:0.8 %以下、V :0.15〜0.35%,Nbもし
くはTaの1種類以上の含有量の合計:0.05〜0.25%,W
:1.8 〜3.0 %,N :0.005〜0.08%,Mo:0.3 %以
下、B :0.0005〜0.02%の範囲に調整され、残部はFe及
び不可避的不純物からなり、マルテンサイト単相組織を
形成する蒸気タービン翼素材の製造方法を主な特徴とす
るものである。なお、これらの発明においては、蒸気タ
ービン翼素材の最終的な化学組成中に重量%で3.0 %以
下のRe、およびまたは3.0 %以下のCoを含有する場合も
ある。
【0007】
【作用】本発明によれば、優れた高温クリープ破断強度
と優れた高温長時間安定性を備えた蒸気タービン翼素材
が得られる。
【0008】先ず、本発明において、脱酸剤としてAlを
用いる理由を説明する。従来、 9〜12Cr系耐熱鋼の溶解
・鋳造に際しては、Si脱酸が多く用いられてきた。この
Si脱酸においては、溶湯中に添加したSiが化学反応によ
り SiO2 を生成し、脱酸を行なうのであるが、SiはFeの
原料中に混入している不可避的不純物であり、残存量が
高い場合は靭性の低下や加熱後の脆化を促進する。この
ような機械的特性に及ぼす影響を考慮すると、その添加
量あるいは残存量は可能な限り低減することが望まし
い。そこで本発明においては脱酸の役割を他の元素に持
たせることにより最終的な鋼中に残存するSi量を積極的
に低減させることとした。
【0009】Si以外の脱酸材としては、Al,Ti,Zrが挙
げられる。しかしTi,ZrはTiC,TiN,ZrC などの粗大な炭
化物や窒化物を生成し、靭性に悪影響を及ぼすととも
に、本来強度向上に寄与すべきC を消費してしまう。Al
もTiやZrと同様に化合物を生成して靭性に悪影響を及ぼ
すが、主としてN と窒化物を生成するため、鋼中への残
存量の制御が容易であり、C も消費しない。このため、
AlはTiやZrに比べ脱酸材として適している。
【0010】なお、鋼中に添加したC によって化学反応
によりCO2 を生成させ、脱酸を行なう真空炭素脱酸法の
適用も可能であるが、この方法は大型の真空鋳造設備を
必要とするために、本発明のような比較的少量の素材の
製造には適さない。
【0011】次に、本発明において、溶解・鋳造後の鋼
塊をエレクトロスラグ再溶解法を用いて再度溶解する理
由を説明する。エレクトロスラグ再溶解法の最大の利点
は、合金元素を多種多量に含有する鋼において成分の偏
析がない均質な鋼塊を得られる点にある。この点は真空
アーク再溶解法を用いた場合においても同様であるが本
発明の耐熱鋼のように、Alを脱酸剤として用いたことに
より鋼中にAlが残存する場合は、エレクトロスラグ再溶
解法がさらに効果を発揮する。即ち前述したようにAlは
鋼中の含有量が高い場合、靭性に悪影響を及ぼすため、
可能な限り含有量を低減することが望ましいが、真空ア
ーク再溶解法ではスラグ反応がないため鋼中のガス成分
の除去しかできず、脱酸剤として用いたAlはそのまま鋼
中に残存する。一方、エレクトロスラグ再溶解を用いた
場合、鋼中のAlは溶融スラグ中のAl2 O 3 との反応によ
り、その含有量の制御が可能である。この結果、最終的
な鋼塊におけるAl含有量を1次溶解におけるAl添加時に
比べ大幅に低下させることが可能になる。
【0012】以下に、本発明における組成範囲の限定理
由を説明する。なお、以下の説明において組成を表す%
は、重量%を意味するものとする。
【0013】(1) 炭素(C ) C は、Cr,Nb,V などと結合して炭化物を形成し、析出
強化に寄与するとともに焼入れ性の向上や、δフェライ
ト生成の抑制に必要不可欠な元素である。所望のクリー
プ破断強度を確保するためには、0.05%以上の添加が必
要であるが、本発明に係わる鋼に0.15%以上を添加する
と炭化物の粗大化を促進し、長時間でのクリープ破断強
度を低下させるため、本発明においては、その含有量を
0.05〜0.15%としている。
【0014】(2) クロム(Cr) Crは耐酸化性、耐食性を向上させるとともに固溶強化な
らびに析出強化に寄与するM 23C 6 型析出物の構成元素
として必要不可欠な元素であるが、8.5 %未満の添加量
では上述の効果が小さい。一方、11.5%を超えると本発
明に係わる鋼ではδフェライトが生成しやすくなるとと
もに、その他の成分のバランスによってはオーステナイ
ト領域からの焼入れあるいは焼ならしが不可能になるた
め、本発明においては、その含有量を8.5 〜11.5%とし
ている。
【0015】(3) バナジウム(V ) V は固溶強化及び微細なV 炭窒化物の形成に寄与する。
本発明に係わる鋼では約0.15%以上の添加量でこれらの
微細析出物はクリープ中に主としてマルテンサイトラス
境界上に析出し、回復を抑制するが、本発明に係わる鋼
では0.35%を超えるとδフェライトの生成が著しくな
る。また0.15%未満の添加量では固溶量、析出量ともに
少なく、上述の効果が得られない。そこで本発明におい
ては、その含有量を0.15〜0.35%としている。
【0016】(4) タングステン(W ) W は固溶強化とともに、主としてFe,Cr,W からなる金
属間化合物の形成に寄与する。本発明に係わる鋼では金
属間化合物を結晶粒界上およびマルテンサイトラス境界
上に連続的に析出させ、さらに固溶量をも確保するため
には、1.8 %以上の添加が必要であるが、3.0 %を超え
るとδフェライトが生成しやすくなるとともに靭性およ
び加熱脆化特性を著しく低下させるため、本発明におい
ては、その含有量を1.8 〜3.0 %としている。
【0017】(5) ホウ素(B ) B は微量の添加で結晶粒界への析出物の析出を促進する
とともに、炭窒化物の高温長時間安定化を可能にする。
本発明に係わる鋼ではその結果は0.0005%以上の添加で
認められ、結晶粒界及びその近傍に析出するM 23C 6
析出物の粗大化抑制効果を発揮する。しかし、0.02%を
超えると熱間加工性を損なうため、本発明においては、
その含有量を0.0005〜0.02%としている。
【0018】(6) 窒素(N ) N は窒化物あるいは炭窒化物を形成することにより、析
出強化に寄与する。さらに、母相中に残存しているN は
固溶強化にも寄与するが、本発明に係わる鋼では0.005
%未満ではこれらの効果がほとんど認められない。一
方、0.08%以上では窒化物あるいは炭窒化物の粗大化を
促進しクリープ抵抗が低下するとともに製造性が低下す
るため、本発明においては、その含有量を0.005 〜0.08
%としている。
【0019】(7) ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta) NbおよびTaは、C およびN と結合してNb(C,N)あるいは
Ta(C,N)の微細炭窒化物を形成することにより析出分散
強化に寄与するため、いずれか一方または両方を添加す
る。Nb(C,N)あるいはTa(C,N)は高応力短時間のクリー
プ破断強度の向上にはきわめて有効であるが、0.05%未
満では析出密度が低いため上述の効果が得られない。一
方、0.25%を超えると未固溶の粗大なNb(C,N)やTa(C,
N)の体積率が急激に増加するとともに微細なNb(C,N)
やTa(C,N)の凝集粗大化が加速するため、本発明におい
ては、その含有量を0.05〜0.25%としている。
【0020】(8) マンガン(Mn) Mnは脱硫剤として有用な元素であるが、過剰な添加はク
リープ抵抗を低下させるため、本発明においては、その
含有量を0.8 %以下としている。
【0021】(9) ニッケル(Ni) Niは、焼入れ性および靭性を向上させるとともにδフェ
ライトの析出を抑制する。しかし本発明に係わる鋼にお
いては0.8 %を超えるとクリープ抵抗を著しく低下させ
るため、その含有量を0.8 %以下としている。
【0022】(10)モリブデン(Mo) Moは固溶強化元素及び炭化物の構成元素として有用であ
るが、本発明の耐熱鋼においては、0.3 %以上を添加す
るとδフェライトを生成するとともに靭性を著しく低下
させる。また、主としてFe,Cr,Moからなる高温長時間
における安定性が低い金属間化合物の析出を招くため、
本発明においては、その含有量を0.3 %以下としてい
る。
【0023】(11)アルミニウム(Al) Alは脱酸剤として有用であり、本発明に係わる鋼では特
徴的な元素のひとつである。溶解時の脱酸には添加量の
制限は設けないが、最終的な含有量が0.02%を超えた場
合、靭性に悪影響を及ぼすため、本発明においては、そ
の含有量を0.02%以下としている。
【0024】(12)コバルト(Co) Coは耐酸化性を向上させるとともにクリープ抵抗を低下
させずにδフェライトの生成を抑制可能であるため、必
要に応じて添加する。しかし3.0 %以上の添加は本発明
鋼のクリープ抵抗の上昇には寄与せず、かつ加工性を損
なうため、本発明においては、その含有量を3.0 %以下
としている。
【0025】(13)レニウム(Re) Reは極微量の添加で固溶強化に著しく寄与するととも
に、旧オーステナイト結晶粒径を微細に維持することに
より靭性の向上にも有効であるため、必要に応じて添加
する。しかし、過剰な添加は加工性を低下させるととも
に経済性を著しく損なうため、本発明においては、その
含有量を3.0 %以下としている。
【0026】上記成分ならびに主成分であるFeを添加す
る際に付随的に混入する不純物は極力低減することが望
ましい。
【0027】最終的な化学組成が上記の範囲となるよう
調整された鋼塊は、後の翼加工が容易なように、鍛造あ
るいは圧延によって棒状に形成される。
【0028】
【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。
【0029】[実施例1]この実施例ではAlを脱酸剤と
して用いた場合の効果について説明する。供試材として
用いた8鋼種の化学組成を表1に示す。
【0030】
【表1】 このうちNo.PS1およびNo.PS2は本発明の特徴である脱酸
剤としてAlを用いた鋼であり、No.CS1からNo.CS6は他の
脱酸剤を用いた鋼である。すなわち、No.CS1とNo.CS4は
Siを用いて脱酸した比較例、No.CS2とNo.CS5はTiを用い
て脱酸した比較例、No.CS3とNo.CS6はZrを用いて脱酸し
た比較例である。これらの鋼は大気溶解炉にて各1tonず
つ溶解・鋳造され、さらにエレクトロスラグ再溶解によ
り鋼塊とされた後、分塊鍛造により断面積が140 ×80mm
の棒材とされ、1120℃で3hのオーステナイト化後に油冷
され、680 ℃で5hの焼戻し後、空冷を施された。
【0031】上記8鋼種について、それぞれ5条件でク
リープ破断試験を実施し、これらの結果を基にラルソン
−パラメータを用いて580 ℃−10万時間のクリープ破断
強度を内挿で求めた結果を表2に示す。
【0032】
【表2】 この表から明らかなように、本発明に係わるNO.PS1およ
びNo.CS2の580 ℃−10万時間のクリープ破断強度は25.0
kgf/mm2 以上であり、比較例に比べ最大 7kgf/mm2 も優
れたクリープ破断強度を示した。
【0033】次に、上記8鋼種の焼戻し後の鋼につい
て、JIS4号2mmVノッチシャルピー試験片を用いて20℃に
おいてシャルピー衝撃試験を行なった。その結果を表2
中の「焼戻し材」の欄に示した。本発明に係わるNo.PS1
とNo.PS2の焼戻し後の衝撃値は 4.0kgf-m/cm2 以上であ
ったが、Al以外の脱酸剤を用いた比較例の場合は、衝撃
値はいずれも 2kgf-m/cm2 以下と大幅に小さかった。
【0034】更に、上記8鋼種に 580℃で10,000h の時
効を施し、JIS4号2mmVノッチシャルピー試験片を用いて
20℃においてシャルピー衝撃試験を行なった。その結果
も表2中の「時効材」の欄に示した。本発明に係わるN
o.PS1とNo.PS2は、時効後も3.0kgf-m/cm 2 程度の衝撃
値を維持しているが、比較例では、時効後の衝撃はいず
れも 1kgf-m/cm2 程度にまで低下しており、同一条件で
加熱した場合、脆化が著しく早く進行することがわか
る。
【0035】即ち本発明により製造した耐熱鋼は、優れ
たクリープ破断強度を有し、さらに高温長時間における
耐衝撃性に優れている。
【0036】[実施例2]この実施例においては、本発
明に係わる耐熱鋼を溶解・鋳造後、エレクトロスラグ再
溶解法を用いて再度溶解した場合の効果について説明す
る。
【0037】この実施例における供試鋼の化学組成を表
3に示す。
【0038】
【表3】 これらの例では、いずれも脱酸剤として0.05%のAlを添
加した。No.PS3は大気溶解炉にて1ton溶解・鋳造後、エ
レクトロスラグ再溶解・鋳造により製造した鋼であり、
No.CS7は 100kg大気溶解・鋳造後に真空アーク再溶解に
より製造した比較例であり、またNo.CS8は50kg大気溶解
・鋳造後に再溶解を施さない場合の比較例である。な
お、No.PS3の場合は、再溶解後、分塊鍛造により断面積
が140 ×80mm棒材とし、No.CS7およびNo.CS8の場合は、
断面積が60×60mmの棒材とした後、1,120 ℃で3hのオー
ステナイト化後、油冷され、680 ℃で5hの焼戻し後、空
冷を施された。
【0039】上記3鋼種の焼戻し後の鋼について、JIS4
号2mmVノッチシャルピー試験片を用いて20℃においてシ
ャルピー衝撃試験を行なった。その結果を熱処理後のAl
残存量と併せて表4中に示す。
【0040】
【表4】 本発明に係わる耐熱鋼は最終的なAl含有量が0.008 %で
あり、焼戻し後の衝撃値は 4.6kgf-m/cm2 であった。こ
れに対して比較例の場合は、Al以外はほぼ同等の化学組
成を有するが、Alの最終的な含有量が高くなっており、
これに対応して衝撃値が低くなり、 4.0と3.6 kgf-m/cm
2 であった。
【0041】次に、これら3鋼種に 600℃で3,000hの時
効を施し、JIS4号2mmVノッチシャルピー試験片を用いて
20℃においてシャルピー衝撃試験を行なった。その結果
も表4中の「時効材」の欄に示した。本発明の方法で製
造した鋼の時効後の衝撃値は時効後には 2.7kgf-m/cm2
に低下した。一方比較例においても、時効後には衝撃値
は低下したが、その値は 1kgf-m/cm2 程度になり、脱酸
後のAlの最終的な含有量を低減できない場合、同一条件
での加熱後の脆化が著しく早く進行することがわかる。
【0042】即ち本発明により製造した耐熱鋼は、初期
靭性と加熱後の耐衝撃性に優れている。
【0043】[実施例3]この実施例においては、本発
明の化学組成範囲にある耐熱鋼の効果について説明す
る。供試鋼として用いた14鋼種の化学組成を表5に示
す。
【0044】
【表5】 No.PS4〜No.PS11 は本発明の化学組成範囲にある耐熱鋼
である。また比較例として作製した6鋼種はAlの最終的
な含有量を本発明の含有量より高く設定した鋼であり、
No.CS10 はさらにMoおよびReの添加量が、No.CS12 はさ
らにB およびCoの添加量が、No.CS13 はさらにMoおよび
W の添加量が、No.CS14 はさらにMoの添加量がそれぞれ
本発明の化学組成範囲から外れている鋼である。これら
の鋼はいずれもAlを脱酸剤として用いて大気溶解炉にて
各1tonずつ溶解・鋳造し、さらにエレクトロスラグ再溶
解・鋳造により製造した。続いて分塊鍛造により断面積
が140 ×80mmの棒材とされ、1,120 ℃で3hのオーステナ
イト化後、油冷され、680℃で5hの焼戻し後、空冷を施
された。
【0045】上記14鋼種について、それぞれ5条件でク
リープ破断試験を実施し、これらの結果を基にラルソン
−ミラ−パラメータを用いて580 ℃−10万時間のクリー
プ破断強度を内挿で求めた結果を表6に示す。なお、表
6中には、説明の便宜上、前述のNo.PS1〜No.PS3のデー
タも併記した。
【0046】
【表6】 この表から明らかなように、本発明の製造方法にて製造
した耐熱鋼の 580℃−10万時間のクリープ破断強度はい
ずれも24.0kgf/mm2 以上であり、比較例に比べ1〜 8kgf
/mm2 高いクリープ破断強度を示した。
【0047】次に、上記17鋼種の焼戻し後の鋼につい
て、JIS4号2mmVノッチシャルピー試験片を用いて20℃に
おいてシャルピー衝撃試験を行なった。その結果を表6
中の「焼戻し材」の欄に示す。本発明の方法にて製造し
た耐熱鋼の焼戻し後の衝撃値は 2.8〜 4.6kgf-m/cm2
あったが、比較例の衝撃値は 2.5〜 4.2kgf-m/cm2 であ
り、わずかに低かった。
【0048】更に、これら17鋼種に 580℃で10,000h
の時効を施し、JIS4号2mmVノッチシャルピー試験片を用
いて20℃においてシャルピー衝撃試験を行なった。その
結果も表6中の「時効材」の欄に示す。本発明に係わる
鋼の時効後の衝撃値は、時効後には 1.4〜3.1kgf-m/cm
2 に低下した。一方比較例においても、時効後の衝撃は
低下したが、その値は 0.9〜 1.2kgf-m/cm2 程度にな
り、同一条件での加熱後の脆化が著しく早く進行するこ
とがわかる。
【0049】即ち本発明の方法により製造した蒸気ター
ビン翼材は、優れたクリープ破断強度を有し、さらに高
温長時間における耐衝撃性に優れている。
【0050】
【発明の効果】以上のように、本発明の方法により製造
した耐熱鋼からなる蒸気タービン用翼材は高温高圧化さ
れた過酷な蒸気条件下においても長時間にわたり信頼性
を発揮し、蒸気タービンの性能、運用性の向上に貢献で
きる等、産業上有益な効果をもたらすものである。
【0051】
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年10月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正内容】
【0024】(12)コバルト(Co) Coは耐酸化性を向上させるとともにクリープ抵抗を低
下させずにざフェライトの生成を抑制可能であるため、
必要に応じて添加する。しかし3.0%を越える添加は
本発明鋼のクリープ抵抗の上昇には寄与せず、かつ加工
性を損なうため、本発明においては、その含有量を3.
0%以下としている。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Alを脱酸剤として溶解・鋳造され、エレ
    クトロスラブ再溶解法により再度溶解され、最終的な化
    学組成が重量%で、C :0.05 〜0.15%,Cr:8.5 〜11.5
    %,Mn:0.8 %以下、Al:0.02%以下、Ni:0.8 %以
    下、V :0.15〜0.35%,NbもしくはTaの1種類以上の含
    有量の合計:0.05〜0.25%,W :1.8 〜3.0 %,N :0.
    005 〜0.08%,Mo:0.3 %以下、B :0.0005〜0.02%の
    範囲に調整され、残部はFe及び不可避的不純物からな
    り、マルテンサイト単相組織を形成する蒸気タービン翼
    素材。
  2. 【請求項2】 Alを脱酸剤として用いて溶解・鋳造した
    鋼塊をエレクトロスラブ再溶解法により再度溶解し、分
    塊鍛造または分塊圧延により棒材として形成した後、最
    終的な化学組成が重量%で、C :0.05 〜0.15%,Cr:8.
    5 〜11.5%,Mn:0.8 %以下、Al:0.02%以下、Ni:0.
    8 %以下、V :0.15〜0.35%,NbもしくはTaの1種類以
    上の含有量の合計:0.05〜0.25%,W :1.8 〜3.0 %,
    N :0.005 〜0.08%,Mo:0.3 %以下、B :0.0005〜0.
    02%の範囲に調整され、残部はFe及び不可避的不純物か
    らなり、マルテンサイト単相組織を形成する蒸気タービ
    ン翼素材の製造方法。
  3. 【請求項3】 最終的な化学組成が重量%で、C :0.05
    〜0.15%,Cr:8.5〜11.5%,Mn:0.8 %以下、Al:0.0
    2%以下、Ni:0.8 %以下、V :0.15〜0.35%,Nbもし
    くはTaの1種類以上の含有量の合計:0.05〜0.25%,W
    :1.8 〜3.0%,N :0.005 〜0.08%,Mo:0.3 %以
    下、Co:0.3 %以下、B :0.0005〜0.02%の範囲に調整
    され、残部はFe及び不可避的不純物からなることを特徴
    とする請求項2に記載の蒸気タービン翼素材の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 最終的な化学組成が重量%で、C :0.05
    〜0.15%,Cr:8.5〜11.5%,Mn:0.8 %以下、Al:0.0
    2%以下、Ni:0.8 %以下、V :0.15〜0.35%,Nbもし
    くはTaの1種類以上の含有量の合計:0.05〜0.25%,W
    :1.8 〜3.0%,N :0.005 〜0.08%,Mo:0.3 %以
    下、Re:0.3 %以下、B :0.0005〜0.02%の範囲に調整
    され、残部はFe及び不可避的不純物からなることを特徴
    とする請求項2に記載の蒸気タービン翼素材の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 最終的な化学組成が重量%で、C :0.05
    〜0.15%,Cr:8.5〜11.5%,Mn:0.8 %以下、Al:0.0
    2%以下、Ni:0.8 %以下、V :0.15〜0.35%,Nbもし
    くはTaの1種類以上の含有量の合計:0.05〜0.25%,W
    :1.8 〜3.0%,N :0.005 〜0.08%,Mo:0.3 %以
    下、Co:0.3 %以下、Re:0.3 %以下、B :0.0005〜0.
    02%の範囲に調整され、残部はFe及び不可避的不純物か
    らなることを特徴とする請求項2に記載の蒸気タービン
    翼素材の製造方法。
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