JPH08170135A - チクソキャスティング用合金材料 - Google Patents

チクソキャスティング用合金材料

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JPH08170135A
JPH08170135A JP6334149A JP33414994A JPH08170135A JP H08170135 A JPH08170135 A JP H08170135A JP 6334149 A JP6334149 A JP 6334149A JP 33414994 A JP33414994 A JP 33414994A JP H08170135 A JPH08170135 A JP H08170135A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 チクソキャスティング法の適用下で高強度な
鋳物を得ることが可能な合金材料を提供する。 【構成】 合金材料は、その示差熱分析曲線cにおい
て、共晶組成を有する第1成分の溶解による第1山形吸
熱部d1 と、共晶点よりも高融点の第2成分の溶解によ
る第2山形吸熱部d2 とが存在し、第1および第2山形
吸熱部d1 ,d2 との間に、融点が第1成分の融点より
も高いが、第2成分の融点よりも低い第3成分の溶解に
よる第3山形吸熱部d3 が存在する、といった熱的特性
を有する。これにより、鋳物においては、第1,第2成
分よりなる第1,第2凝固相間が第3成分よりなる第3
凝固相を介して強固に接合される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、チクソキャスティング
法の実施に用いられる合金材料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、チクソキャスティング用合金材
料、例えばAl合金材料としては、鋳物の耐熱性向上を
狙った場合に用いられるAA規格2000系合金や、鋳
物の高強度、高靱性化を狙った場合に用いられるAA規
格6000系合金が知られている。
【0003】チクソキャスティング法の実施に当って
は、Al合金材料に加熱処理を施して固相(略固体とな
っている相、以下同じ)と液相とが共存する半溶融Al
合金材料を調製し、次いでその半溶融Al合金材料を加
圧下で鋳型のキャビティに充填し、その後前記加圧下で
半溶融Al合金材料を凝固させる、といった方法が採用
される。この場合、液相は共晶組成を有する第1成分よ
りなり、また固相は共晶点よりも高融点の成分を有する
第2成分よりなる。
【0004】そして、従来のAl合金材料は、示差熱分
析曲線において、第1成分の溶解による第1山形吸熱部
と、第2成分の溶解による第2山形吸熱部とが存在す
る、といった熱的特性を有する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
Al合金材料においては、その示差熱分析曲線に存する
第1山形吸熱部の下降終了点が、第2山形吸熱部の上昇
開始点であることに起因して、チクソキャスティング法
の凝固過程では固相が略凝固を完了した後、液相が凝固
を開始することになるから、液相による第1凝固相と固
相による第2凝固相との接合性が低く、その結果、Al
合金鋳物の高強度化の要請に十分に応ずることができな
い、といった問題がある。
【0006】本発明は前記に鑑み、第1凝固相と第2凝
固相との間に、融点が第1,第2凝固相の中間値である
第3凝固相が介在するように構成し、これにより高強度
な鋳物を得ることが可能な前記チクソキャスティング用
合金材料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係るチクソキャ
スティング用合金材料は、示差熱分析曲線において、共
晶組成を有する第1成分の溶解による第1山形吸熱部
と、共晶点よりも高融点の第2成分の溶解による第2山
形吸熱部とが存在し、前記第1および第2山形吸熱部と
の間に、融点が前記第1成分の融点よりも高いが、前記
第2成分の融点よりも低い第3成分の溶解による第3山
形吸熱部が存在することを特徴とする。
【0008】
【作用】前記熱的特性を有する合金材料においては、チ
クソキャスティング法の凝固過程で、第2成分がゲル状
態にあるとき第3成分よりなる液相が凝固を開始し、次
いで第3成分がゲル状態にあるとき第1成分よりなる液
相が凝固を開始する。
【0009】その結果、鋳物においては、第2成分より
なる第2凝固相と第3成分よりなる第3凝固相との接合
性が良好となり、また第3成分よりなる第3凝固相と第
1成分よりなる第1凝固相との接合性も良好となる。こ
れにより第1,第2凝固相が第3凝固相を介して強固に
接合されるのでその鋳物の高強度化が達成される。
【0010】
【実施例】図1に示す加圧鋳造機1はAl合金材料(合
金材料)を用いてチクソキャスティング法の適用下でA
l合金鋳物を鋳造するために用いられる。その加圧鋳造
機1は、鉛直な合せ面2a,3aを有する固定金型2お
よび可動金型3を備え、両合せ面2a,3a間に鋳物成
形用キャビティ4が形成される。固定金型2に半溶融A
l合金材料5を設置するチャンバ6が形成され、そのチ
ャンバ6はゲート7を介してキャビティ4に連通する。
また固定金型2に、チャンバ6に連通するスリーブ8が
水平に付設され、そのスリーブ8にチャンバ6に挿脱さ
れる加圧プランジャ9が摺動自在に嵌合される。スリー
ブ8は、その周壁上部に材料用挿入口10を有する。 〔実施例1〕表1はAl合金材料の実施例Aおよび比較
例aの組成を示す。このような組成を有するAl合金材
料は、常温下で使用されるAl合金鋳物の鋳造材料とし
て有効である。これら実施例A等は、連続鋳造法の適用
下で鋳造された高品質な長尺連続鋳造材より切出された
ものであって、その鋳造に当っては初晶α−Alの球状
化処理が行われている。実施例A等の寸法は直径50m
m、長さ65mmである。
【0011】
【表1】 実施例Aについて示差走査熱量測定(DSC)を行った
ところ、図2の結果を得た。図2の示差熱分析曲線cに
おいて、共晶組成を有する第1成分の溶解による第1山
形吸熱部d1 と、共晶点よりも高融点の第2成分の溶解
による第2山形吸熱部d2 とが存在し、また第1および
第2山形吸熱部d1 ,d2 との間に、融点が第1成分の
融点よりも高いが、第2成分の融点よりも低い第3成分
の溶解による第3山形吸熱部d3 が存在する。この場
合、第1山形吸熱部d1 のピーク値e1 と、第2,第3
山形吸熱部d2 ,d3 のピーク値e2 ,e3 との間には
1>e2 ,e3 の関係が成立し、また第2,第3山形
吸熱部d2 ,d3 の両ピーク値e2 ,e3 との間にはe
2 ≒e3 の関係が成立している。
【0012】実施例Aにおいて、第1成分は融点が57
5℃の共晶AlSiであり、また第2成分は融点が61
9℃のα−Alであり、さらに第3成分は融点が594
℃の金属間化合物[Al15(Mn、Fe)Si2 および
Al5 FeSiの混合物]である。
【0013】また比較例aについてDSCを行ったとこ
ろ、図3の結果を得た。図3の示差熱分析曲線cにおい
て、共晶組成を有する第1成分の溶解による第1山形吸
熱部d1 と、共晶点よりも高融点の第2成分の溶解によ
る第2山形吸熱部d2 とが存在する。
【0014】比較例aにおいて、第1成分は融点が57
5℃の共晶AlSiであり、また第2成分は融点が62
9℃のα−Alである。
【0015】このように実施例Aおよび比較例aにおけ
るα−Alの融点が異なるのは、各α−Alにおける固
溶元素およびその固溶量が異なることに起因し、これは
以下の例においても同じである。
【0016】次に、実施例Aを誘導加熱装置の加熱コイ
ル内に設置し、次いで周波数 1kHz、最大出力 3
0kWの条件で加熱して、固相と液相とが共存する半溶
融状態の実施例Aを調製した。この場合、固相率は40
%以上、60%以下に設定される。
【0017】その後、図1に示すように、半溶融状態の
実施例A(符号5)をチャンバ6に設置し、実施例Aの
温度t1 600℃、加圧プランジャ9の移動速度
0.20m/sec 、金型温度 250℃の条件で実施例
Aを加圧しつつゲート7を通過させてキャビティ4内に
充填した。そして、加圧プランジャ9をストローク終端
に保持することによってキャビティ4内に充填された実
施例Aに加圧力を付与し、その加圧下で実施例Aを凝固
させてAl合金鋳物Aを得た。
【0018】また比較例aを用い、その温度を590℃
に設定したこと以外は前記と同一条件にて鋳造作業を行
ってAl合金鋳物aを得た。
【0019】次に、両Al合金鋳物A,aより試験片を
作製し、それら試験片について常温下で引張り試験を行
ったところ、表2の結果を得た。
【0020】
【表2】 表2から明らかなように、実施例Aを用いて得られたA
l合金鋳物Aは比較例aを用いて得られたAl合金鋳物
aに比べて高強度である。
【0021】これは次のような理由による。即ち、図2
に示すような熱的特性を有する実施例Aにおいては、チ
クソキャスティング法の凝固過程で、第2成分(α−A
l)がゲル状態にあるとき第3成分(金属間化合物)よ
りなる液相が凝固を開始し、次いで第3成分がゲル状態
にあるとき第1成分(共晶AlSi)よりなる液相が凝
固を開始する。
【0022】その結果、図4に示すAl合金鋳物Aの金
属組織において、第2成分よりなる第2凝固相とその第
2凝固相の粒界に分散する第3成分よりなる第3凝固相
との接合性が良好となり、また第3成分よりなる第3凝
固相と第1成分よりなる第1凝固相との接合性も良好と
なる。これにより、第1,第2凝固相が第3凝固相を介
して部分的に強固に接合されるので、そのAl合金鋳物
Aの高強度化が達成される。実施例Aのように、第1〜
第3山形吸熱部d1 〜d3 を現出させるためには、その
組成においてFe含有量をFe≧0.2重量%に、また
Mn含有量をMn≧0.1重量%にそれぞれ設定するの
が望ましい。
【0023】Al合金鋳物aの場合、図5に示すように
第3凝固相が存在せず、その結果、第1,第2凝固相間
の接合強度がAl合金鋳物Aのそれに比べて低くなる。
【0024】実施例Aのように、示差熱分析曲線cにお
いて第1〜第3山形吸熱部d1 〜d3 が存在し、また第
3山形吸熱部d3 が金属間化合物に因るものである場
合、鋳造時における半溶融合金材料の温度t1 (600
℃)は、前記のように第1山形吸熱部d1 の下降終了点
fの温度t2 (591℃)を超える温度、即ち、t1
2 であることが望ましい。その理由は、温度t1 >t
2 においては硬質の金属間化合物が溶解または溶解を開
始してその強度が低下しているので、ゲート7通過時に
金属間化合物が破砕され、鋳物において、その金属間化
合物を微細に分散させることができるからである。
【0025】ただし、鋳造時における半溶融合金材料の
温度t1 は、第2山形吸熱部d2 のピーク温度t3 (6
18℃)以下、即ち、t1 ≦t3 であることが望まし
い。その理由は、t1 >t3 では、半溶融合金材料の保
形性が悪化するため、その搬送作業性が悪くなり、また
半溶融合金材料が低粘度のため、それをキャビティ4に
層流逐次充填することができず、鋳物に気孔が発生し易
くなり、さらに温度管理も難しくなるからである。
【0026】このような鋳造時における半溶融合金材料
の温度t1 と、下降終了点fの温度t2 およびピーク温
度t3 との関係、即ち、t2 <t1 ≦t3 は後述の実施
例Bについても同じである。 〔実施例2〕表3はAl合金材料の実施例Bおよび比較
例bの組成を示す。このような組成を有するAl合金材
料は、高温下で使用されるAl合金鋳物の鋳造材料とし
て有効である。これら実施例B等は、連続鋳造法の適用
下で鋳造された高品質な長尺連続鋳造材より切出された
ものであって、その鋳造に当っては初晶α−Alの球状
化処理が行われている。実施例B等の寸法は直径50m
m、長さ65mmである。
【0027】
【表3】 実施例Bについて示差走査熱量測定(DSC)を行った
ところ、図6の結果を得た。図6の示差熱分析曲線cに
おいて、共晶組成を有する第1成分の溶解による第1山
形吸熱部d1 と、共晶点よりも高融点の第2成分の溶解
による第2山形吸熱部d2 とが存在し、また第1および
第2山形吸熱部d1 ,d2 との間に、融点が第1成分の
融点よりも高いが、第2成分の融点よりも低い第3成分
の溶解による第3山形吸熱部d3 が存在する。
【0028】この場合、第1〜第3山形吸熱部d1 〜d
3 のピーク値e1 〜e3 の間には、e1 ,e2 >e
3 (ただし、e1 >e2 )の関係が成立している。これ
により金属間化合物の量を抑制することができる。e3
>e1 ,e2 では金属間化合物量が増加して、それが鋳
物において欠陥と同様の挙動を示す。したがってe1
2 ≧e3 であることが望ましい。
【0029】実施例Bにおいて、第1成分は融点が54
5℃の共晶Al−Al2 Cuであり、また第2成分は融
点が636℃のα−Alであり、さらに第3成分は融点
が590℃の金属間化合物(Al7 FeCu2 )であ
る。
【0030】また比較例bについてDSCを行ったとこ
ろ、図7の結果を得た。図7の示差熱分析曲線cにおい
て、共晶組成を有する第1成分の溶解による第1山形吸
熱部d1 と、共晶点よりも高融点の第2成分の溶解によ
る第2山形吸熱部d2 とが存在する。
【0031】比較例bにおいて、第1成分は融点が54
5℃の共晶Al−Al2 Cuであり、また第2成分は融
点が637℃のα−Alである。
【0032】次に、実施例Bを誘導加熱装置の加熱コイ
ル内に設置し、次いで周波数 1kHz、最大出力 3
0kWの条件で加熱して、固相と液相とが共存する半溶
融状態の実施例Bを調製した。この場合、固相率は40
%以上、60%以下に設定される。
【0033】その後、図1に示すように、半溶融状態の
実施例B(符号5)をチャンバ6に設置し、実施例Bの
温度t1 610℃、加圧プランジャ9の移動速度
0.20m/sec 、金型温度 250℃の条件で実施例
Bを加圧しつつゲート7を通過させてキャビティ4内に
充填した。そして、加圧プランジャ9をストローク終端
に保持することによってキャビティ4内に充填された実
施例Bに加圧力を付与し、その加圧下で実施例Bを凝固
させてAl合金鋳物Bを得た。
【0034】また比較例bを用い、前記と同一条件にて
鋳造作業を行ってAl合金鋳物bを得た。
【0035】次に、両Al合金鋳物B,bより試験片を
作製し、それら試験片について300℃の高温下で引張
り試験を行ったところ、表4の結果を得た。
【0036】
【表4】 表4から明らかなように、実施例Bを用いて得られたA
l合金鋳物Bは比較例Bを用いて得られたAl合金鋳物
bに比べて優れた高温強度を有する。
【0037】これは次のような理由による。即ち、図6
に示すような熱的特性を有する実施例Bにおいては、チ
クソキャスティング法の凝固過程で、第2成分(α−A
l)がゲル状態にあるとき第3成分(金属間化合物)よ
りなる液相が凝固を開始し、次いで第3成分がゲル状態
にあるとき第1成分(共晶Al−Al2 Cu)よりなる
液相が凝固を開始する。
【0038】その結果、図8に示すAl合金鋳物Bの金
属組織において、第2成分よりなる第2凝固相と、その
第2凝固相の粒界に存在する第3成分よりなる第3凝固
相との接合性が良好となり、また第3成分よりなる第3
凝固相と第1成分よりなる第1凝固相との接合性も良好
となる。これにより、第1,第2凝固相が第3凝固相を
介して部分的に強固に接合されるので、そのAl合金鋳
物Bの高強度化が達成される。
【0039】Al合金鋳物bの場合、図9に示すように
第3凝固相が存在せず、その結果、第1,第2凝固相間
の接合強度が、Al合金鋳物Bのそれに比べて低くな
る。
【0040】なお、本発明はAl合金材料には限定され
ない。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、前記のように特定され
た熱的特性を具備させることにより、チクソキャスティ
ング法の適用下で、常温下および高温下にて優れた強度
を発揮する鋳物を得ることが可能な合金材料を提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加圧鋳造機の縦断面図である。
【図2】実施例Aの示差熱分析曲線である。
【図3】比較例aの示差熱分析曲線である。
【図4】(a)はAl合金鋳物Aの金属組織を示す顕微
鏡写真、(b)は(a)の要部写図である。
【図5】Al合金鋳物aの金属組織を示す顕微鏡写真で
ある。
【図6】実施例Bの示差熱分析曲線である。
【図7】比較例bの示差熱分析曲線である。
【図8】(a)はAl合金鋳物Bの金属組織を示す顕微
鏡写真、(b)は(a)の要部写図である。
【図9】Al合金鋳物bの金属組織を示す顕微鏡写真で
ある。
【符号の説明】
c 示差熱分析曲線 d1 〜d3 第1〜第3山形吸熱部

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 示差熱分析曲線(c)において、共晶組
    成を有する第1成分の溶解による第1山形吸熱部
    (d1 )と、共晶点よりも高融点の第2成分の溶解によ
    る第2山形吸熱部(d2 )とが存在し、前記第1および
    第2山形吸熱部(d1 ,d2 )との間に、融点が前記第
    1成分の融点よりも高いが、前記第2成分の融点よりも
    低い第3成分の溶解による第3山形吸熱部(d3 )が存
    在することを特徴とするチクソキャスティング用合金材
    料。
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US08/543,196 US5787961A (en) 1994-10-14 1995-10-13 Thixocasting process, for a thixocasting alloy material
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