JPH08159834A - 感熱式流量計 - Google Patents

感熱式流量計

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JPH08159834A
JPH08159834A JP6307269A JP30726994A JPH08159834A JP H08159834 A JPH08159834 A JP H08159834A JP 6307269 A JP6307269 A JP 6307269A JP 30726994 A JP30726994 A JP 30726994A JP H08159834 A JPH08159834 A JP H08159834A
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JP
Japan
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temperature
heating element
flow rate
signal
heat
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Application number
JP6307269A
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English (en)
Inventor
Makoto Tanabe
誠 田辺
Shigeyuki Ito
茂行 伊藤
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Ricoh Seiki Co Ltd
Ricoh Elemex Corp
Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Seiki Co Ltd
Ricoh Elemex Corp
Ricoh Co Ltd
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Filing date
Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 S/Nの改善を図り、正確な流量測定が可能
な感熱式流量計を提供する。 【構成】 マイクロブリッジ素子1における梁5の全幅
Wbに対する発熱体Rhにより発熱される発熱領域幅W
hの発熱領域占有率(=Wh/Wb)を約35%〜50
%の範囲内、好ましくは、発熱領域幅Wh=120〜1
70μmに設定することにより、発熱体Rhの出力−流
量曲線を高い線形性に保つようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、気体の流速を測定する
感熱式流量計に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の一般的な感熱式流量計におけるマ
イクロブリッジ素子の構造としては、基板を異方性エッ
チングして堀を形成し、その堀の上空に梁を渡し、この
梁上に感熱部を作成することにより構成される。すなわ
ち、梁の中央に発熱体を配線し、この発熱体に近接して
発熱測温体を配線し、また、その発熱体の上流と下流に
それぞれ上流測温体、下流測温体を配線することによっ
て感熱部を作成し、さらに、その梁から離れた位置の基
板上に室温測温体を配線することによってマイクロブリ
ッジ素子を構成する。このようなマイクロブリッジ素子
を備えた感熱式流量計において、信号検出を行う場合に
は、発熱体と室温測温体と(発熱測温体を含む場合もあ
る)の間でブリッジ回路を組み込んで出力された発熱体
信号、又は、上流測温体と下流測温体との間でブリッジ
回路を組み込んで出力された温度差信号を用いて演算処
理を行い流量に換算している。
【0003】また、信号検出精度を高めるために、梁を
スリットにより2分割し、その分割された梁に跨って発
熱体を配線すると共に、上流側の梁に上流測温体のみを
配線し、下流側の梁に下流測温体のみを配線することに
よって、流体の流れがない場合には同一電力では上・下
の梁間に温度差は生じないことを利用して、流量0の時
点では上流・下流の測温体の出力値を常に0にして測定
する流量の校正を行ったものがある(特開昭60−14
2268号公報等参照)。
【0004】また、信号処理に際して、温度差信号(又
は発熱体信号)をA/D変換し、近似曲線(又は変換
表)を用いて校正し流量に換算することにより、温度等
の環境変化や経時変化の影響をなくして流量を測定する
方法が提案されている(特開平3−53127号公報等
参照)。
【0005】また、広域に渡って流量を測定する目的
で、フルイディック流量計の流路中に感熱式流量計のマ
イクロブリッジ素子を配置させ、フルイディック素子の
測定不感域である低流量域の測定を行ったものがある
(特開昭59−68624号公報等参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】図8(a)は、温度差
特性、すなわち、温度差信号の出力に対する流量の特性
(出力−流量曲線)を示す。流量0からAまでは直線性
があるが、Aを超えた流量域では直線性をそこなってし
まう。図8(b)は、発熱体特性、すなわち、発熱体信
号の出力に対する流量の特性を示す。流量B以上では直
線性があるが、B以下の流量域では直線性をそこなって
しまう。このように温度差特性では高い流量域において
減少傾向をもち、また、発熱体特性では0付近の流量域
で増加傾向をもつ。これにより、検出された信号から流
量への換算段階において、演算処理(多項式、表参照
等)が複雑化し作業効率に問題がある。しかも、高次の
項が含まれた特性曲線に線形処理を施すような場合に
は、ばらつきが増幅され、実質的なS/Nが低下すると
いう問題が生じる。
【0007】また、図8に示したような出力−流量曲線
は、周囲温度等の環境変化や経時変化の影響がある。発
熱体特性では、特に流量0における発熱体の温度変化率
に闘争するだけの変動がある(Ptを発熱体とした場合
は約2500ppm/°C)。一方、温度差特性では、
上流・下流の測温体の抵抗値が完全に同じであれば流量
0においては出力は常に0となるため流量の依存はない
が、実際には製造工程の段階や経時的劣化により抵抗値
にばらつきが生じる。このようなことから、流量0でも
温度依存性が生じ、しかも、周囲温度が変化すると放熱
特性も影響を受けるため、特性曲線の傾きの度合いが変
化してしまい正確な校正処理を行うことができない。
【0008】また、感熱式流量計のマイクロブリッジ素
子をフルイディック流量計に組込んだガスメータ等の応
用を考えた場合、流路形状による制約や、マイクロブリ
ッジ素子を流体の流れの中に配置することにより流れ自
体が変化してしまい、これにより流れ分布に乱れを生じ
必ずしも正確な流量検出を行うことができないという問
題がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明で
は、基板をエッチングして形成された堀と、この堀の上
部をまたぐように形成された梁と、この梁の中央部に配
線された発熱体Rhと、この発熱体Rhに隣接して配線
された発熱測温体Rsと、梁上の発熱体Rhの上流側に
配線された上流測温体Ruと、梁上の発熱体Rhの下流
側に配線された下流測温体Rdと、梁から離れた位置の
基板上に配線された室温測温体Rfとを有するマイクロ
ブリッジ素子を備え、このマイクロブリッジ素子の発熱
体Rhと室温測温体Rfとから発熱量に比例して出力さ
れた発熱体信号と、上流測温体Ruと下流測温体Rdと
から抵抗による温度差に比例して出力された温度差信号
とを用いて流量換算処理を行う感熱式流量計において、
梁の全幅Wbに対する発熱体Rhにより発熱される発熱
領域幅Whの発熱領域占有率(=Wh/Wb)を約35
%〜50%の範囲に設定した。
【0010】請求項2記載の発明では、請求項1記載の
発明において、梁上の発熱体Rhにより発熱される発熱
領域幅Whを、120μm〜170μmの範囲に設定し
た。
【0011】請求項3記載の発明では、基板をエッチン
グして形成された堀と、この堀の上部をまたぐように形
成された梁と、この梁の中央部に配線された発熱体Rh
と、この発熱体Rhに隣接して配線された発熱測温体R
sと、梁上の発熱体Rhの上流側に配線された上流測温
体Ruと、梁上の発熱体Rhの下流側に配線された下流
測温体Rdと、梁から離れた位置の基板上に配線された
室温測温体Rfとを有するマイクロブリッジ素子を備
え、このマイクロブリッジ素子の発熱体Rhと室温測温
体Rfとから発熱量に比例して出力された発熱体信号
と、上流測温体Ruと下流測温体Rdとから抵抗による
温度差に比例して出力された温度差信号とを用いて流量
換算処理を行う感熱式流量計において、流量0付近の微
小流量域では温度差信号の出力を直線近似式で流量に換
算し、かつ、微小流量域以外の他の流量域では発熱体信
号の出力を直線近似式で流量に換算する流量換算手段を
備えるようにした。
【0012】請求項4記載の発明では、請求項1,2又
は3記載の発明において、室温測温体Rfの両端の電圧
から室温信号を出力する室温信号出力手段と、室温信号
をもとに発熱体信号と温度差信号とに対してオフセット
除去処理及び温度補正処理を行う演算処理校正手段とを
感熱式流量計に備えるようにした。
【0013】請求項5記載の発明では、請求項1,2,
3又は4記載の発明において、発熱体信号と温度差信号
と室温信号とのデジタル標本の平均化を行う標本平均化
処理手段と、オフセット除去処理及び温度補正処理の前
・後で平均化処理された信号のうちの全部又は一部の信
号に対してローパスフィルタ処理するローパス化手段と
を感熱式流量計に備えるようにした。
【0014】請求項6記載の発明では、請求項5記載の
発明において、流体の流れの中にフルイディック振動を
発生させるフルイディック素子を設け、このマイクロブ
リッジ素子の検出面に直交する流路面から前記マイクロ
ブリッジ素子の先端までの距離Hを、前記検出面に平行
な流路面間の距離W以上の長さ(=H≧W)に設定し
た。
【0015】
【作用】請求項1記載の発明においては、マイクロブリ
ッジ素子における梁の全幅Wbに対する発熱体により発
熱される発熱領域幅Whの発熱領域占有率(=Wh/W
b)を約35%〜50%の範囲内に設定することによ
り、発熱体による発熱領域を梁のほぼ中央部付近のみに
集約させることができる。このように素子構造の機械的
な変形によって、発熱体の出力に対する流量の特性(出
力−流量曲線)をほぼ正比例な線形の関係に保つ校正処
理を行うことができる。
【0016】請求項2記載の発明においては、発熱体に
より発熱される発熱領域幅Whを120μm〜170μ
mの範囲に設定したことにより、発熱領域の梁の中央部
付近への集約度をさらに高めることができる。これによ
って、一段と厳密な発熱体の出力−流量曲線を得ること
ができる。
【0017】請求項3記載の発明においては、流量換算
手段により流量0付近の微小流量域で温度差信号の出力
が直線近似式で流量に換算されると共に、微小流量域以
外の他の低流量域で発熱体信号の出力が直線近似式で流
量に換算される。このように、信号出力から流量への換
算処理は1次式のみを使用するだけでよく、演算による
ソフト的な処理を行うことによって、発熱体の出力に対
する流量の特性(出力−流量曲線)をほぼ正比例な線形
の関係に保つ校正処理を行うことができる。
【0018】請求項4記載の発明においては、室温信号
出力手段により出力された室温信号を用い、演算処理校
正手段により発熱体信号と温度差信号とに対してオフセ
ット除去処理及び温度補正処理を行うことによって、流
量計測の際に、周囲温度等の環境変化や梁の熱的変形に
よる経時変化の影響を受けにくくすることができる。
【0019】請求項5記載の発明においては、標本平均
化処理手段により各信号のデジタル標本の平均化を行
い、ローパス化手段によりそれら平均化処理された信号
に対してローパスフィルタ処理することによって、特
に、間欠駆動時における信号処理の安定化を図ることが
できる。
【0020】請求項6記載の発明においては、マイクロ
ブリッジ素子の検出面に直交する流路面からマイクロブ
リッジ素子の先端までの距離をHとし、検出面に平行な
流路面間の距離をWとしたとき、H≧Wの長さ関係に設
定したことによって、発熱体の出力−流量曲線を、フル
イディック素子の測定不感域である低流量域側で正比例
な1次式の関係にすることができる。
【0021】
【実施例】本発明の第一の実施例を図1及び図2に基づ
いて説明する(請求項1,2記載の発明に対応する)。
まず、感熱式流量計のマイクロブリッジ素子1の構造を
図1(a)(b)に基づいて述べる。基板2はSiから
なっており、この基板2の表面には酸化膜処理法、スパ
ッター蒸着法等を用いて熱絶縁層(SiO2 層)を形成
する。なお、熱絶縁層としては、SiO2 の他に、Si
34や金属酸化物であるTa25 、Al23、さらに
は、SiO2 とSi34とを組合わせた多層膜等でもよ
い。いずれの場合にも膜厚は、0.5μm〜2μmとす
る。
【0022】そして、KOHによる異方性エッチングに
より、堀3を形成し、さらに、その堀3の上部に複数の
スリット4により3分割された梁5を形成する。梁5の
面上に密着強度補強層としてのTa25層を形成した
後、その補強層上の梁中央部に比抵抗の高い金属である
Ptからなる発熱体Rhを配線する。この発熱体Rhに
隣接した状態で、抵抗温度係数の高いPtからなる発熱
体温度測定用の発熱測温体Rsを配線し、また、梁5の
上流側にPtからなる上流測温体Ruを、下流側にPt
からなる下流測温体Rdを同一形状で配線する。さら
に、発熱体Rhから熱的に隔離された基板2の面上に、
Ptからなる流体温度測定用の室温測温体Rfを配線す
る。この室温測温体Rfは、流体の流れ6に対して最も
上流でかつ発熱・感熱領域から離れた箇所に設置するこ
とが望ましい。Ptの抵抗層は、臨界密度を十分に下回
るようにする条件と、抵抗値設定の条件から500Å〜
5000Å程度がよく、好ましくは、1000Å〜20
00Åに設定する。発熱体Rh、各測温体Rs,Ru,
Rd,Rfは、蒸着法、EB蒸着法、スパッター法等の
方法により成膜し、また、リフトオフ法、Arのスパッ
ターエッチング法等を用いて所望とする形状に切り出す
ことができる。なお、発熱体Rhと、各測温体Rs,R
u,Rd,Rfは、Ptの他に、Ni、W、Ta等を用
いてもよい。密着強度補強層としては、Ta25の他
に、Ti、Cr、Ta、NiCr、TiN等を用いても
よい。
【0023】発熱体Rhと各測温体Rs,Ru,Rd,
Rfとの上部に、密着強度補強層としてのTa25層を
形成した後、保護層を積層する。保護層は、Ta25
より兼ねてよく、Si34により形成してもよい。ま
た、その保護層は、測温体感度向上のために、熱容量を
減少させ量産性を向上させる目的から薄い方がよいが、
保護のためにはある程度の厚さが必要なことから、80
0Å〜5000Å程度の膜厚とするのがよい。上下2層
からなる密着強度補強層は、Ptとの整合性を確保する
ために、100Å〜700Å程度の膜厚に形成する。な
お、以上述べたような各材料に限定されるものではな
く、比抵抗特性に温度依存性をもつ材料であればよい。
【0024】上述したような構造とされたマイクロブリ
ッジ素子1において、梁5の寸法及び発熱領域を以下の
ように設定する。3分割された梁5の全幅Wbに対する
発熱体Rhにより発熱される発熱領域幅Whの発熱領域
占有率Q(=Wh/Wb)を、Q=35%〜50%の範
囲内に設定する。このとき、発熱領域幅Wh=120μ
m〜170μmの範囲とする。なお、梁5の全長は、L
=700μm〜1200μmとする。
【0025】以下、発熱領域占有率Q及び発熱領域幅W
hを上記条件に設定した理由について述べる。図2は、
発熱体Whの発熱領域占有率Qに対するマイクロブリッ
ジ素子1の出力特性の実験結果を示す。縦軸において、
Pは0.75m/sにおける発熱体Whの消費電力、S
/Nは0.75m/sにおける信号強度と変動成分のd
B比(=20×logVsigal/Vnoise)、nは0.2
〜1m/sの流量域の発熱体出力の直線性をそれぞれ示
す。横軸は、発熱領域占有率Qを示す。このグラフから
わかるように、発熱領域占有率Q=35〜50%の範囲
でn=0.85以上の値を示し、1の値に近くなる。こ
のように1に近いということは、発熱体Rhの出力−流
量曲線(図8参照)における1次項が強いすなわち線形
性が高いということを意味する。また、S/Nは、発熱
領域占有率Qが40%以下では小さくなる傾向にあり、
それ以上の値では大きくなる。Pは、発熱領域占有率Q
が30%以上の値ではほとんど変わらない値を示す。従
って、このような実験結果を考慮して、発熱領域占有率
をQ=35〜50%の範囲に設定し、好ましくは、40
%程度に設定する。本実施例の図1のマイクロブリッジ
素子1においては、梁5の発熱領域幅Whを全幅Wbの
面積に対して40%となるように、Wh=140μmに
設定した。これにより、Wb=350μmとなる。ま
た、梁5の全長はL=1000μmに設定した。
【0026】このように梁5の全幅Wbに対する発熱領
域幅Whの発熱領域占有率をQ=35%〜50%の範囲
内に設定することによって、発熱体Whによる発熱領域
を梁5のほぼ中央部付近のみに集約させることができる
ため、発熱体Rhの出力−流量曲線をほぼ正比例な線形
関係に保つことができる。また、これにより、S/Nを
向上させることができるため流量の測定精度を高めるこ
とができ、さらに、梁5の発熱領域における発熱効率を
向上させることができるため、消費電力の低減化を図る
ことができる。この場合、特に、発熱領域幅をWh=1
20μm〜170μmの範囲に設定することにより、梁
5の設計・製作上及び機械的強度上、さらには発熱領域
の梁5の中央部付近への集約度の面からさらに有効なも
のとすることができる。
【0027】次に、本発明の第二の実施例を図1及び図
3に基づいて説明する(請求項3記載の発明に対応す
る)。なお、前述した第一の実施例と同一部分について
の説明は省略し、その同一部分については同一符号を用
いる。
【0028】図1のマイクロブリッジ素子1において、
発熱体Rhと、発熱測温体Rsと、室温測温体Rfと、
平衡用抵抗体(図示せず)とは、ブリッジ回路(図示せ
ず)を構成している。発熱体Rhには駆動回路10が接
続され、その駆動回路10にはこれを間欠的に駆動制御
する駆動論理回路11が接続されている。また、上流測
温体Ruと、下流測温体Rdとは、定電圧源回路(図示
せず)を構成している。そして、このようなブリッジ回
路と定電圧源回路とは、A/D変換回路12に接続され
ている。そのA/D変換回路12は、CPU、ROM、
RAM等からなる演算処理回路13に接続されている。
この演算処理回路13のROMには、流量換算手段14
が記憶されている。この流量換算手段14は、流量0付
近の微小流量域では温度差信号8の出力を直線近似式で
流量に換算し、微小流量域以外の他の流量域では発熱体
信号7の出力を直線近似式で流量に換算する(なお、詳
細な構成は後述する図3を参照)。
【0029】以下、流量換算手段14の動作を中心に説
明する。ブリッジ回路では、室温測温体Rfで監視する
流体温度に対して発熱体Rhの温度が一定の温度差を保
つように、発熱体Rhへの投入電力を調整しており、発
熱体Rhの発熱量に比例した発熱体信号7(電圧出力)
が出力される。また、定電圧源回路では、上流測温体R
uと下流測温体Rdとから各抵抗体の温度に比例した抵
抗値を温度差信号8(電圧出力)として出力する。これ
ら発熱体信号7と温度差信号8とは、A/D変換回路1
2にて差分信号とされデジタル信号に変換され、演算処
理回路13に送られる。この演算処理回路13において
は、流量換算手段14によって、0〜0.25m/sの
流量域においては温度差信号8を直線近似式を用いて流
量に換算処理し、また、0.25〜1.5m/sの流量
域においては発熱体信号7を直線近似式を用いて流量に
換算処理する。ここでいう直線近似式とは、前述した図
8(a)では0〜A領域までの直線状の近似曲線に相当
し、図8(b)ではB領域以上の直線状の近似曲線に相
当する。ただし、ここでの直線近似式を示す直線状の近
似曲線は、0〜1.5m/sまでの広範囲に渡って一定
の線形性をもつものとする。従って、このように線形性
が向上した出力−流量曲線を用いて流量への換算処理を
行うことによって、演算処理は1次式のみでよく、換算
処理量を大幅に低減することができる。また、これによ
りS/Nの悪化を避けることができ、ここでは50dB
程度にS/Nを向上させることができる。これにより、
正確な流量測定を行うことができる。
【0030】次に、本発明の第三の実施例を図3に基づ
いて説明する(請求項4記載の発明に対応する)。な
お、前記各実施例と同一部分についての説明は省略し、
その同一部分については同一符号を用いる。ここでは、
前述した第二の実施例で用いた発熱体Rhの発熱量調整
用のブリッジ回路において、室温測温体Rfの両端の電
圧を室温信号9として出力する室温信号出力手段として
の信号送出回路(図示せず)が接続されている。また、
演算処理回路13のROMには、演算処理校正手段15
(後述する図3参照)が記憶されている。この演算処理
校正手段15は、室温信号9をもとに、発熱体信号7と
温度差信号8とに対してオフセット除去処理及び温度補
正処理を行う。
【0031】以下、演算処理校正手段15の動作を中心
に説明する。今、信号送出回路により室温の周囲環境温
度を検出した室温信号9は、A/D変換回路12を介し
てデジタル信号に変換された後、発熱体信号7と温度差
信号8と共に演算処理回路13に送られる。この演算処
理回路13では、次の処理に従って演算を行う。
【0032】 Vh’={Vh−(Vho+Ch1ΔTf)}(1+Ch1ΔTf) …(1) Vdu’={Vdu−(Vduo+Cdu1ΔTf)}(1+Cdu1ΔTf) …(2) ここで、Vh は発熱体Rhの電位差、Vduは上下流の測
温体Ru,Rd間の電位差、Cxxは温度変化率を加味し
た定数、ΔTf は室温測温体Rfによる周囲温度の変化
分である。そして、Vh ’はオフセット除去と温度補正
とを施した発熱体信号7であり、Vdu’はオフセット除
去と温度補正とを施した温度差信号8である。このよう
な演算式で示される発熱体信号7と温度差信号8と用い
て、流量換算の処理を行うことにより、周囲温度等の環
境変化や経時変化の影響をなくして、正確な流量を測定
することができる。
【0033】次に、本発明の第四の実施例を図3及び図
4に基づいて説明する(請求項5記載の発明に対応す
る)。なお、前記各実施例と同一部分についての説明は
省略し、その同一部分については同一符号を用いる。
【0034】図3は、マイクロブリッジ素子1に接続さ
れた演算処理回路13における処理の流れを示す。発熱
体信号7は駆動回路10により駆動され、駆動回路10
は駆動論理回路11により間欠的に駆動制御される。発
熱体信号7と温度差信号8と室温信号9とは、A/D変
換回路12に送られる。このA/D変換回路12の後段
に、信号処理回路13が接続されている。この信号処理
回路13のROMには、前述した流量換算手段14(第
二の実施例)や演算処理校正手段15(第三の実施例)
の他に、標本平均化処理手段16と、ローパス化手段1
7とを備えている。標本平均化処理手段16は、発熱体
信号7と温度差信号8と室温信号9とのデジタル標本の
平均化を行う。ローパス化手段17は、オフセット除去
処理及び温度補正処理の前・後で前記平均化処理された
信号のうちの全部又は一部の信号に対してローパスフィ
ルタ処理を行う。このように信号処理回路13のROM
には、デジタル化された信号の標本の平均化処理、オフ
セット除去処理、温度補正処理、2つのローパスフィル
タ処理を施すプログラムが組み込まれている。
【0035】以下、標本平均化処理手段16及びローパ
ス化手段17の動作を中心に説明する。今、駆動回路1
0の間欠駆動1回の動作につき発熱体Rhの出力に過渡
特性がなくなった後の少なくとも10msecの区間に
おいて、A/D変換回路12にて遅くとも1msecの
デジタル標本化を行う。このデジタル標本化された信号
は、データ転送や割込み処理等を行う制御回路18を介
して、標本平均化処理手段16によって、間欠駆動毎に
発熱体信号7と温度差信号8と室温信号9とのデジタル
標本の平均値を算出する。これら算出されたデジタル標
本の平均値のうち、室温信号9についてローパスフィル
タ処理を行い、発熱体信号7と温度差信号8とについて
オフセット除去処理、温度補正処理を行った後、ローパ
スフィルタ処理(LPF)を行う。オフセット除去処
理、温度補正処理は、前述した(1)(2)式を用いて
行うことができる。ローパスフィルタ処理は、下記の
(3)式を用いて行うことができ、これにより変動が低
減された安定化した信号値Vaj が求められる。なお、
この処理は、発熱体信号7、温度差信号8、室温信号9
の各信号に置き換えられて行われる。
【0036】 Vaj =Vaj-1 +(Vj −Vj-N )/N …(3) N:安定化処理に要する取込み回数 Vj :新たに取込まれた信号値(デジタル標本の平均
値) Vj-N :N回取込み前の信号値(デジタル標本の平均
値) このローパスフィルタ処理の後、(4)式により流量Q
に換算処理(流量換算手段14)され、(5)式により
積算流量Θが求められ、その積算流量値が表示器19に
て表示される。
【0037】 Q=Ko +K1・Vaj …(4) Θ=ΣQ・Δt …(5) Ko,K1:定数 図4(a)(b)は、マイクロブリッジ素子1に白熱灯
加熱を行った場合の温度補正と信号安定化処理(LP
F)との効果の度合いを示す。図4(a)は流量0の場
合、図4(b)は流量1.5m/sの場合を示す。Tr
は外部温度、DTf は室温測温体Rfの室温温度変動
分、DVh は発熱体出力(発熱体信号7)、DVduは温
度差出力(温度差信号8)を示す。これら(a)(b)
の波形から、補正無しのときよりも、補正・安定化処理
を行ったときの方がS/Nが向上することがわかる。こ
れにより、一段と正確な流量計測を行うことができる。
【0038】次に、本発明の第五の実施例を図5〜図7
に基づいて説明する(請求項6記載の発明に対応す
る)。なお、前記各実施例と同一部分についての説明は
省略し、その同一部分については同一符号を用いる。
【0039】図5は、フルイディック流量計のフルイデ
ィック素子20における流路21中にマイクロブリッジ
素子1(図1参照)を配置する場合の例を示す。すなわ
ち、流体の流れ6に直交する流路断面の中央に、セラミ
ック支持体22を用いてマイクロブリッジ素子1を配置
する。この場合、マイクロブリッジ素子1の検出面T
(図1の梁5が形成されている側の面)に直交する流路
面21aからマイクロブリッジ素子1の先端(ここで
は、セラミック支持体22の先端とする)までの距離H
は、検出面Tに平行な流路面21bと流路面21cとの
面間の距離W以上の長さ(H≧W)に設定されている。
【0040】具体的には、0.5μm厚のセラミック支
持体22の先端部にマイクロブリッジ素子1を設置し、
そのマイクロブリッジ素子1を流路断面の中央に配置さ
せる。このとき、セラミック支持体22の先端から流路
底面側の流路面21aまでの距離はH=8mmとされ、
検出面Tに平行な流路面21bと流路面21cとの面間
の流路横幅の距離はW=5mmとされている。これによ
り、H/W=1.6となり、図6ではn=0.8以上の
値を示す。図6は、H/Wに対する発熱体出力特性を示
すものであり、このnの値が1に近づくほど発熱体出力
特性の直線性が強くなることを意味する(図2と同
様)。図7は、発熱体出力と温度差出力とを併用した場
合の出力−流量曲線を示す。通常250〜3000L/
Hの領域で測定可能なフルイディック素子20の流路2
1中にマイクロブリッジ素子1を上記条件(H≧W)で
配置させることにより、フルイディック素子20の測定
不感域である流量0〜200L/Hの全域に渡って1次
曲線近似が可能となり、良好な出力特性を得ることがで
き、これにより、演算処理上S/Nを損なうことなく、
正確な流量測定を行うことができる。
【0041】
【発明の効果】請求項1記載の発明は、マイクロブリッ
ジ素子における梁の全幅Wbに対する発熱体により発熱
される発熱領域幅Whの発熱領域占有率(=Wh/W
b)を約35%〜50%の範囲内に設定したので、発熱
体の出力−流量曲線を高い線形性に維持することがで
き、これにより、S/Nを向上させ流量の測定精度を高
めることができると共に、発熱効率を高めることができ
るため消費電力の低減化を図ることができる。
【0042】請求項2記載の発明は、発熱体により発熱
される発熱領域幅Whを120μm〜170μmの範囲
に設定したので、発熱体の出力−流量曲線を一段と高い
線形性に維持することができ、流量の測定精度をさらに
高めることができる。
【0043】請求項3記載の発明は、発熱量に比例した
発熱体信号と、温度差に比例した温度差信号とを用い、
流量換算手段を用いて流量0付近の微小流量域で温度差
信号の出力を直線近似式で流量に換算すると共に、前記
微小流量域以外の他の低流量域で発熱体信号の出力を直
線近似式で流量に換算するようにしたので、信号出力か
ら流量への換算処理を1次式のみで行え演算処理の負担
を低減させ処理能力を高めることができ、また、発熱体
の出力−流量曲線を高い線形性に維持することができる
ため、S/Nを向上させ流量の測定精度を一段と高める
ことができる。
【0044】請求項4記載の発明は、室温信号出力手段
から検出された室温信号を用いて、発熱体信号と温度差
信号とに対してオフセット除去処理及び温度補正処理を
行う演算処理校正手段を設けたので、周囲温度等の環境
変化や経時変化の影響をなくして正確な流量を測定する
ことができる。
【0045】請求項5記載の発明は、標本平均化処理手
段を用いて発熱体信号と温度差信号と室温信号とのデジ
タル標本の平均化を行い、ローパス化手段を用いてオフ
セット除去処理及び温度補正処理の前・後で、それら平
均化処理された信号に対してローパスフィルタ処理を行
うようにしたので、間欠駆動時における信号処理の安定
化を図ってS/Nを向上させることができ、これにより
一段と正確な流量測定を行うことができる。
【0046】請求項6記載の発明は、流体の流れに直交
するフルイディック素子の流路断面の中央にマイクロブ
リッジ素子を配置し、マイクロブリッジ素子の検出面に
直交する流路面からマイクロブリッジ素子の先端までの
距離Hを、検出面に平行な流路面間の距離W以上の長さ
に設定すなわちH≧Wの関係に設定したので、フルイデ
ィック素子の測定不感域である低流量域側で発熱体の出
力−流量曲線を線形性に維持することができ、これによ
り、低流量域から高流量域の広範囲に渡って高S/Nを
損なうことなく正確な流量測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例であるマイクロブリッジ
素子の構造を示すものであり、(a)はその全体構造を
示す平面図、(b)はその梁部の拡大図である。
【図2】発熱領域占有率と各出力特性との関係を示す特
性図である。
【図3】本発明の第二の実施例〜第四の実施例である演
算処理の流れを示すブロック図である。
【図4】温度補正及び信号の安定化処理の効果を示すも
のであり、(a)は流量0の場合の特性図、(b)は流
量1.5m/sの場合の特性図である。
【図5】本発明の第五の実施例を示すものであり、
(a)は流体の流れに平行な方向に切断した場合の形状
を示す断面図、(b)は流体の流れに直交する方向に切
断した場合の形状を示す断面図である。
【図6】マイクロブリッジ素子の配設位置と発熱体出力
の線形性との関係を示す特性図である。
【図7】温度差出力と発熱体出力とを併用した場合の出
力−流量曲線を示す特性図である。
【図8】(a)の従来の温度差信号の出力−流量曲線を
示す特性図、(b)は従来の発熱体信号の出力−流量曲
線を示す特性図である。
【符号の説明】
1 マイクロブリッジ素子 2 基板 3 堀 5 梁 7 発熱体信号 8 温度差信号 9 室温信号 14 流量換算手段 15 演算処理校正手段 16 標本平均化処理手段 17 ローパス化手段 20 フルイディック素子 21 流路 21a,b,c 流路面 Rh 発熱体 Rs 発熱測温体 Ru 上流測温体 Rd 下流測温体 Rf 室温測温体 Wb 全幅 Wh 発熱領域幅 Q 発熱領域占有率 T 検出面 H,W 距離
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 茂行 愛知県名古屋市東区泉二丁目28番24号 リ コーエレメックス株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板をエッチングして形成された堀と、
    この堀の上部をまたぐように形成された梁と、この梁の
    中央部に配線された発熱体と、この発熱体に隣接して配
    線された発熱測温体と、前記梁上の前記発熱体の上流側
    に配線された上流測温体と、前記梁上の前記発熱体の下
    流側に配線された下流測温体と、前記梁から離れた位置
    の前記基板上に配線された室温測温体とを有するマイク
    ロブリッジ素子を備え、このマイクロブリッジ素子の前
    記発熱体と前記室温測温体とから発熱量に比例して出力
    された発熱体信号と、前記上流測温体と前記下流測温体
    とから抵抗による温度差に比例して出力された温度差信
    号とを用いて流量換算処理を行う感熱式流量計におい
    て、前記梁の全幅に対する前記発熱体により発熱される
    発熱領域幅の発熱領域占有率を約35%〜50%の範囲
    に設定したことを特徴とする感熱式流量計。
  2. 【請求項2】 梁上の発熱体により発熱される発熱領域
    幅を、120μm〜170μmの範囲に設定したことを
    特徴とする請求項1記載の感熱式流量計。
  3. 【請求項3】 基板をエッチングして形成された堀と、
    この堀の上部をまたぐように形成された梁と、この梁の
    中央部に配線された発熱体と、この発熱体に隣接して配
    線された発熱測温体と、前記梁上の前記発熱体の上流側
    に配線された上流測温体と、前記梁上の前記発熱体の下
    流側に配線された下流測温体と、前記梁から離れた位置
    の前記基板上に配線された室温測温体とを有するマイク
    ロブリッジ素子を備え、このマイクロブリッジ素子の前
    記発熱体と前記室温測温体とから発熱量に比例して出力
    された発熱体信号と、前記上流測温体と前記下流測温体
    とから抵抗による温度差に比例して出力された温度差信
    号とを用いて流量換算処理を行う感熱式流量計におい
    て、流量0付近の微小流量域では前記温度差信号の出力
    を直線近似式で流量に換算し、前記微小流量域以外の他
    の流量域では前記発熱体信号の出力を直線近似式で流量
    に換算する流量換算手段を備えたことを特徴とする感熱
    式流量計。
  4. 【請求項4】 室温測温体の両端の電圧から室温信号を
    出力する室温信号出力手段と、前記室温信号をもとに発
    熱体信号と温度差信号とに対してオフセット除去処理及
    び温度補正処理を行う演算処理校正手段とを備えたこと
    を特徴とする請求項1,2又は3記載の感熱式流量計。
  5. 【請求項5】 発熱体信号と温度差信号と室温信号との
    デジタル標本の平均化を行う標本平均化処理手段と、オ
    フセット除去処理及び温度補正処理の前・後で前記平均
    化処理された信号のうちの全部又は一部の信号に対して
    ローパスフィルタ処理するローパス化手段とを備えたこ
    とを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の感熱式流
    量計。
  6. 【請求項6】 流体の流れの中にフルイディック振動を
    発生させるフルイディック素子を設け、前記流体の流れ
    に直交する前記フルイディック素子の流路断面の中央に
    マイクロブリッジ素子を配置し、このマイクロブリッジ
    素子の検出面に直交する流路面から前記マイクロブリッ
    ジ素子の先端までの距離を、前記マイクロブリッジ素子
    の検出面に平行な流路面間の距離以上の長さに設定した
    ことを特徴とする請求項5記載の感熱式流量計。
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