JPH08150427A - 四角筒絞り成形方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 四角筒絞り成形の成形限界を向上させる。 【構成】 四角形ブランク１は、その各部にそれぞれ個
別にしわ抑え力を加えることのできる分割ブランクホル
ダ４によって周辺部を押さえ付けた状態で、四角形断面
のパンチ５とダイ３とによって深絞り成形される。その
成形行程において、初期にはブランク１のコーナー部に
高いしわ抑え力を加え、直辺部に加えるしわ抑え力は低
くする。また、成形行程の後半には、ブランク１のコー
ナー部に加えるしわ抑え力を低く、直辺部に加えるしわ
抑え力を高くする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、四角形薄板のブランク
を深絞り成形することによって四角形断面の筒状体に成
形する四角筒絞り成形方法に関するもので、特に、しわ
抑え力制御法を利用した四角筒絞り成形方法に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】プレス成形においては、いかにして成形
限界を向上させるかということが重要な課題となってい
る。成形限界を向上させることができれば、プレス型の
トライ期間の短縮や、ブランク材料の低級化、成形不良
率の低減など、生産性及び実用性の面で大きなメリット
を得ることができる。薄板ブランクの絞り成形加工の場
合には、破断やしわの発生によってその成形限界が決定
される。

【０００３】四角形薄板のブランクを深絞り加工するこ
とによって四角形断面の筒状体を成形する場合には、通
常、ブランクの周辺部を、ブランクホルダによってしわ
抑え力を加えた状態で保持しておき、その中央部を、四
角形断面のパンチとダイとによってプレス成形する。そ
れによって、図５に示されているようなフランジを有す
る四角筒状の成形品が得られる。その場合、パンチのコ
ーナー肩部が接触する部位、すなわち図５のａ部には大
きな引張力が働くので、その部位ａで破断が生じやす
い。また、フランジ直辺部には周方向の圧縮力が加わる
ので、その中央の端縁部ｂでしわが発生しやすい。した
がって、四角筒絞り成形方法においては、そのような部
位の破断やしわの発生をどれだけ抑制することができる
かによって成形限界が支配されることとなっている。

【０００４】そのような絞り成形の場合、その成形の可
否は、しわ抑え力によって大きな影響を受けるというこ
とが知られている。そこで、そのしわ抑え力に着目し
て、成形行程中にしわ抑え力を可変制御することによ
り、成形限界を向上させようとする試みが種々なされて
いる。そのようにしわ抑え力を制御しながら成形する四
角筒絞り成形方法のうちで、これまでに最も有効な方法
とされているのは、ブランクの各部にそれぞれ個別にし
わ抑え力を加えることのできる分割ブランクホルダを用
いて、ブランクのコーナー部に加えるしわ抑え力は小さ
く、直辺部に加えるしわ抑え力を大きくする、という方
法である。そのようにすれば、ブランクコーナー部の摩
擦力が軽減されるので、破断危険部、すなわちパンチコ
ーナー部の荷重負担能力が相対的に高まり、破断が防止
される。したがって、成形限界が大幅に向上する。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、そのよ
うな方法でも、パンチストロークを大きくすると、成形
行程の進行に伴ってパンチコーナー肩部の板厚が減少す
るので、その部分に破断が生じてしまう。

【０００６】本発明は、このような実情に鑑みてなされ
たものであって、その目的は、より成形限界を向上させ
ることのできる四角筒絞り成形方法を得ることである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明では、上述のような分割ブランクホルダを用
い、ブランクに加えるしわ抑え力を、成形行程の初期に
はコーナー部で高く、直辺部で低くするとともに、成形
行程の進行に伴って、コーナー部に加えるしわ抑え力を
低くし、直辺部に加えるしわ抑え力は高くするようにし
ている。その分割ブランクホルダとしては、細分化され
た多数のセルと、そのセルの各々にそれぞれ独立して圧
力を加え得るアクチュエータとからなるものを用いるこ
とが望ましい。そのような分割ブランクホルダを用いれ
ば、成形行程中、各アクチュエータに生ずる圧力の初期
設定圧力からの変動を計測することにより、ブランクホ
ルダの各部に加わる面圧を監視し、その面圧変動に応じ
て、ブランク各部のしわ抑え力を制御する、ということ
ができる。

【０００８】

【作用】このように、成形の初期にブランクの直辺部に
加えるしわ抑え力を低くすることにより、パンチコーナ
ー部に不均一引っ張りが生じ、その部分にブランクの直
辺部から材料が引き寄せられるようになるので、板厚減
少が軽減される。また、その引っ張りにより、ブランク
の直辺部にしわが発生することも防止される。そして、
成形行程の後半に、コーナー部に加えるしわ抑え力を低
く、直辺部に加えるしわ抑え力を高くすることにより、
コーナー部のダイ肩部にしわが発生したり、直辺部のパ
ンチ肩部で破断が生じたりすることも防止される。

【０００９】

【実施例】以下、図面を用いて本発明の実施例を説明す
る。図中、図１は本発明による四角筒絞り成形方法の実
施状態を示す説明図であり、図２はそれに用いられる分
割ブランクホルダを示す平面図である。図１から明らか
なように、四角形薄板からなるブランク１は、中央部に
四角形断面のダイ孔２を有するダイ３上に載置し、周辺
部をブランクホルダ４によって押さえ付けた状態で、そ
の中央部に四角形断面のパンチ５を押し付け、ダイ孔２
内に押し込むことによって、前述の図５に示されている
ような四角形断面の筒状体に深絞り成形される。

【００１０】図２に示されているように、ブランクホル
ダ４は、細分化された多数のセル６，６，…によって構
成されている。言い換えれば、ブランクホルダ４は多数
のセル６，６，…に細分割されている。この実施例の場
合には、コーナー部は４つのセル（それらを６ｃで示
す）に分割され、直辺部の中央は２つのセル（６ｓ，６
ｓ）に分割されている。そして、その間の境界部に２つ
のセル（６ｂ，６ｂ）が配置されている。したがって、
ブランクホルダ４は、全部で３２個のセル６，６，…に
分割されている。

【００１１】図１及び２に示されているように、各セル
６，６，…にはそれぞれ細形の油圧アクチュエータ７，
７，…が取り付けられている。その各油圧アクチュエー
タ７は、図示されていない電磁切換弁を介して油圧ポン
プに接続されており、その切換弁をオンとすることによ
り作動油がシリンダ内に流入あるいは流出して圧力が調
整され、切換弁をオフとすることによりシリンダ内の油
量が保持されてそのときの設定圧力に保持するものとさ
れている。したがって、シリンダ内の油圧の初期設定圧
力からの変動を計測すれば、各セル６，６，…の面圧、
すなわちブランクホルダ４の各部に生じる面圧を求める
ことができる。各油圧アクチュエータ７，７，…には、
そのような油圧変動を検出するセンサが取り付けられて
いる。

【００１２】このようにして、各セル６，６，…には、
それぞれ独立して圧力が加えられ、それによって、ブラ
ンク１の各部に加えるしわ抑え力を、それぞれ個別に制
御するとともに、ブランク１の変形に伴う面厚変動を監
視することができるようにされている。

【００１３】ブランク１を四角筒絞り成形するときに
は、コーナー部のセル６ｃ，６ｃ，…からブランク１の
コーナー部に加えるしわ抑え力を、図３に実線で示され
ているように制御する。すなわち、成形行程の初期には
しわ抑え力を高く保持し、成形行程の後半には低くして
いく。一方、直辺部のセル６ｓ，６ｓからブランク１の
直辺中央部に加えるしわ抑え力は、同図に一点鎖線で示
されているように、成形行程の初期には低い値で保持し
ておき、成形行程の後半に入ってから徐々に高くしてい
く。そして、境界部のセル６ｂ，６ｂから加えられるし
わ抑え力は、同図に破線で示されているように、成形行
程の間中、低い一定の値に保持しておく。

【００１４】このように、成形行程の初期にブランク１
のコーナー部に加えられるしわ抑え力を高くするととも
に、直辺部に加えられるしわ抑え力を低くすると、パン
チコーナー部に不均一引っ張りが生じ、図４に示されて
いるように、ブランク１の直辺部から材料が引き寄せら
れる。したがって、パンチコーナー部における板厚の減
少が抑制され、その部位の破断が防止される。一方、ブ
ランク１の直辺部では、コーナー部が拘束されているた
めにそのコーナー部から直辺部への材料の流動が抑制さ
れるので、圧縮応力が軽減される。その結果、直辺部で
のしわの発生も防止される。

【００１５】ところで、この状態のまま成形を続ける
と、ダイ３のコーナー肩部が接触する部位（図５のｃ
部）でしわが発生し、パンチ５の直辺部肩部が接触する
部位（図５のｄ部）で破断が生じるおそれがある。しか
しながら、この成形方法の場合には、成形行程の後半に
入ると、上述のようにブランク１のコーナー部に加えら
れるしわ抑え力が低く、直辺部に加えられるしわ抑え力
が高くされる。したがって、パンチコーナー部に加わる
圧縮応力が小さくなり、しわの発生が防止される。ま
た、ブランク１のコーナー部からパンチ直辺部に材料が
流動するようになるので、パンチ直辺部肩部での破断も
防止される。

【００１６】このような成形行程中、各油圧アクチュエ
ータ７，７，…に設けられているセンサによりそのシリ
ンダ内の油圧が検出され、その油圧の初期設定圧力から
の変動が計測される。そして、それによって、ブランク
ホルダ４の各部に加わる面圧がリアルタイムで求められ
る。その面圧は、ブランク材料の流動やしわの発生によ
って変化する。そこで、その面圧変動を監視して、しわ
や破断が発生しそうなときには、その部分のセル６に圧
力を加える油圧アクチュエータ７の油圧を変化させ、そ
のセル６からブランク１に加えられるしわ抑え力を制御
する。そのようにすることにより、ブランク１の各部に
加えられるしわ抑え力をより成形限界線に近付けること
が可能となる。こうして、この四角筒絞り成形方法によ
り、成形限界を著しく向上させることができる。

【００１７】このような四角筒絞り成形方法の効果を確
かめるために、シミュレータを用いて実験を行った。そ
の実験には、ブランクとして、縦横１３０×１３０mm、
板厚０．７mmの超深絞り用鋼板を用いた。パンチは縦横
５０×５０mm、ダイ孔は縦横５３×５３mmである。ま
た、分割ブランクホルダの各セルは、縦横２２×２２mm
とした。実験条件としては、パンチ速度を約５０mm/mi
n、実験温度は室温とした。そして、上述のような分割
ブランクホルダにより、ブランクの各部に図３のように
変化するしわ抑え力を加えた。また、比較のために、従
来のように成形行程の初期にはブランクの直辺部に高い
しわ抑え力を加え、成形行程の後半にブランクのコーナ
ー部に高いしわ抑え力を加えて、同様な実験を行った。
パンチストロークを３５mmとしたときには、いずれの成
形品にもしわや破断は見られず、成形限界が高いことが
認められた。しかしながら、パンチストロークを４５mm
としたときには、従来の方法で成形したものにはパンチ
コーナー肩部に破断が生じた。一方、本発明の方法によ
って成形したものには、破断やしわの発生は認められな
かった。この実験結果から、本発明の成形方法を採用す
ることにより、成形限界が著しく向上することがわか
る。

【００１８】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、ブランクに加えるしわ抑え力を、成形初期に
はコーナー部で低く、直辺部で高くするようにしている
ので、パンチコーナー部の板厚減少が軽減されるように
なり、その破断を防止するとともに、直辺部でのしわの
発生も抑制することができる。また、成形行程の後半に
は、ブランクのコーナー部に加えられるしわ抑え力を低
く、直辺部に加えられるしわ抑え力を高くするようにし
ているので、ダイコーナー部でのしわの発生及び直辺部
での破断も防止される。したがって、成形限界を大幅に
向上させることができる。そして、ブランクの各部にし
わ抑え力を加えるブランクホルダとして、細分化された
多数のセルと、そのセルの各々に独立して圧力を加える
ことのできるアクチュエータとからなる分割ブランクホ
ルダを用い、成形行程中、各アクチュエータに生ずる圧
力の初期設定圧力からの変動を計測することにより、ブ
ランクホルダの各部に加わる面圧を監視するようにして
いるので、その面圧変動に応じてブランク各部のしわ抑
え力を制御することができ、しわや破断の発生を未然に
防ぐことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による四角筒絞り成形方法の実施状態を
示す説明図である。

【図２】その成形方法において用いられる分割ブランク
ホルダを示す平面図である。

【図３】その成形方法においてブランクの各部に加えら
れるしわ抑え力の変化を示すグラフである。

【図４】その成形方法の原理を説明するための説明図で
ある。

【図５】四角筒絞り成形方法により成形される成形品に
おいてしわや破断の発生しやすい部位を示す説明図であ
る。

【符号の説明】

１ ブランク ３ ダイ ４ 分割ブランクホルダ ５ パンチ ６（６ｂ，６ｃ，６ｓ） セル ７ 油圧アクチュエータ

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 四角形薄板からなるブランクの周辺部を
   ブランクホルダによって保持した状態で、その中央部を
   四角形断面の筒状体に深絞り成形する四角筒絞り成形方
   法において；前記ブランクホルダとして、前記ブランク
   の各部にそれぞれ個別にしわ抑え力を加え得る分割ブラ
   ンクホルダを用い、 成形行程の初期には、前記ブランクのコーナー部に高い
   しわ抑え力を加えるとともに、直辺部に低いしわ抑え力
   を加え、 成形行程の後半には、前記ブランクのコーナー部に加え
   るしわ抑え力を低くするとともに、直辺部に加えるしわ
   抑え力を高くすることを特徴とする、 四角筒絞り成形方法。
2. 【請求項２】 前記分割ブランクホルダが、細分化され
   た多数のセルと、そのセルの各々にそれぞれ独立して圧
   力を加え得るアクチュエータとから構成されており、 成形行程中、前記各アクチュエータに生ずる圧力の初期
   設定圧力からの変動を計測することにより、前記ブラン
   クホルダの各部に加わる面圧を監視し、 その面圧変動に応じて、前記ブランク各部のしわ抑え力
   を制御することを特徴とする、 請求項１記載の四角筒絞り成形方法。