JPH0814078A - 内燃機関用燃料噴射制御装置 - Google Patents

内燃機関用燃料噴射制御装置

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JPH0814078A
JPH0814078A JP6143639A JP14363994A JPH0814078A JP H0814078 A JPH0814078 A JP H0814078A JP 6143639 A JP6143639 A JP 6143639A JP 14363994 A JP14363994 A JP 14363994A JP H0814078 A JPH0814078 A JP H0814078A
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祥伸 荒川
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】電子燃料噴射装置を用いて人力による始動を確
実に行わせることができるようにした内燃機関用燃料噴
射制御装置を提供する。 【構成】 内燃機関の出力軸に取り付けた磁石発電機を
電源とする電源回路9によりCPU1とインジェクタ7
とに電源電圧を与える。インジェクタ7を制御するトラ
ンジスタTr1に与える噴射指令信号Sj と同じパルス幅
の信号Sj ´によりコンデンサC1 を充電し、前回まで
の始動操作時に行われた燃料の噴射時間の総和に相当す
る情報をコンデンサC1 に蓄積する。コンデンサC1 の
両端の電圧と機関の温度とから演算した補正係数を始動
時の基本噴射時間に乗じることにより各始動操作時の噴
射時間を修正し、修正された噴射時間の間だけ燃料の噴
射を行わせることにより、混合気の濃度が過大になるの
を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関用電子燃料噴
射装置からの燃料の噴射量を制御する内燃機関用燃料噴
射制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子燃料噴射装置(EFI)は、機関の
吸気管等に取り付けられたインジェクタと、噴射指令パ
ルスが与えられたときにインジェクタに駆動電流を与え
るインジェクタ駆動回路と、インジェクタに一定の圧力
で燃料を供給する燃料ポンプと、CPUを用いて機関の
回転数[rpm]、スロットルバルブの開度(スロット
ル開度)、吸入空気温度、機関の温度(冷却水温度やク
ランクケースの温度)、大気圧、加速度等の各種の制御
条件に対して燃料の噴射時間を演算して、演算された噴
射時間に相当するパルス幅を有するパルス波形の噴射指
令パルスを発生する噴射量制御手段とにより構成され
る。
【0003】インジェクタは例えば燃料の噴射口を開閉
するバルブと該バルブを駆動する電磁石とからなってい
て、該電磁石の駆動コイルがインジェクタ駆動回路を介
してインジェクタ駆動用の電源に接続される。インジェ
クタ駆動回路は、トランジスタ等のオンオフ制御が可能
なスイッチからなっていて、噴射指令パルスが与えられ
ている間だけ該スイッチが導通してインジェクタの駆動
コイルを励磁する。インジェクタは駆動コイルが励磁さ
れている間だけその弁を開いて燃料を噴射する。インジ
ェクタに与えられる燃料の圧力は一定に制御されている
ため、燃料の噴射量は噴射指令パルスのパルス幅により
決まる。
【0004】従来のEFIは、もっぱらバッテリを搭載
している乗り物を駆動する機関に適用されていたたた
め、バッテリを電源として動作するように構成されてい
たが、最近では、船外機やスノーモービル等のバッテリ
を搭載していない乗り物を駆動する内燃機関にもEFI
を採用することが要望されるようになっている。バッテ
リを搭載しない乗り物等を駆動する内燃機関にEFIを
用いる場合には、機関により駆動される磁石発電機を電
源としてCPUやインジェクタを駆動する必要がある。
バッテリが搭載されていない場合、機関の始動はリコイ
ルスタータやキックスタータ等の人力を利用した始動装
置により行わせる必要がある。
【0005】またバッテリが搭載されている場合でも、
磁石発電機の出力でEFIを駆動し得るようにするとと
もに、人力により駆動される始動装置により機関を始動
させ得るようにしておくことが必要になる場合がある。
例えば、スノーモービル等の寒冷地で使用される乗り物
の場合には、寒冷時にバッテリを使用できないことがあ
るため、人力による始動が必要になり、EFIを用いる
場合には、該EFIを磁石発電機により駆動し得るよう
にする必要がある。更にスノーモービルや船外機のよう
に、機関の運転が不能になると運転者が遭難する危険が
ある場合には、バッテリが搭載されている場合であって
も人力による始動装置を併用するのが好ましい。またバ
ッテリにより駆動されるEFIであっても、バッテリの
使用が不可能な状態になった場合には磁石発電機により
駆動し得るようにしておくのが望ましい。
【0006】ところで、EFIを用いた内燃機関におい
て、始動時に燃料の供給経路(インジェクタが取り付け
られた箇所から機関のシリンダに至るガス流路)の内面
に液膜が形成されていない状態で燃料の噴射を行わせた
場合、最初は多量の燃料が燃料供給経路の内面に液膜を
形成するために費やされ、シリンダ内には噴射した燃料
の一部しか供給されない。そのため、始動操作が開始さ
れた際にはシリンダに供給される混合気がリーンの状態
(燃料の濃度が薄い状態)にあり、着火し難い状態にあ
る。シリンダ内で混合気に着火するためには、混合気の
燃料濃度を一定の範囲に保つ必要がある。そこで、一般
には、機関の始動を容易にするために始動時に噴射指令
パルスのパルス幅を長くして燃料の噴射量を増大させる
始動時増量制御を行わせている。始動時増量制御におけ
る燃料の噴射量は、機関の温度、大気圧、吸気温度等の
制御条件に応じて決定される。
【0007】ところが燃料供給経路の内面に付着して液
膜を形成した燃料はその後気化してシリンダへと供給さ
れるため、シリンダに供給される混合気は次第にリッチ
な状態(燃料の濃度が濃い状態)になっていく。したが
って、機関の始動に手間取った場合に、燃料の噴射量を
始動時増量制御により増大させたままの状態に維持する
と、やがてシリンダに供給される混合気がオーバリッチ
の状態になり、混合気に着火することができなくなる。
【0008】特に、2サイクル機関では、シリンダに供
給された未燃焼ガスが残留しやすいため、始動操作が行
われる毎に同じ量の燃料を噴射させると混合気がオーバ
リッチの状態になりやすい。
【0009】そこで特開平2−221660号に示され
ているように、始動操作の回数(ロープを引く回数また
キック回数)に着目して、始動操作の回数の増加にした
がって噴射量を減少させる制御を行うようにした電子燃
料噴射装置が提案された。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】バッテリを電源として
EFIを駆動できる場合には、ロープの引き具合やキッ
ク操作の強弱の如何に係わりなく、機関の始動時の噴射
量を、機関の温度、大気圧、吸気温度等の制御条件に応
じて設定した通りに制御することができるため、上記の
ように始動操作の回数の増加に応じて噴射量を減少させ
る制御を行うことにより、機関の始動を支障なく行わせ
ることができる。
【0011】しかしながら、人力による始動装置により
機関を始動し、機関により駆動される磁石発電機の出力
によりEFIを駆動する場合には、以下に示すように、
1回の始動操作が行われたときに磁石発電機がEFIを
駆動し得る電圧を発生する時間が始動操作の強弱により
変わるため、始動操作が行われる毎に設定された噴射量
を得ることができるとは限らず、ロープの引き方やキッ
ク操作の操作力が弱い場合には、始動操作が行われた際
に設定された噴射時間の間燃料を噴射させることができ
ないことがある。そのため、始動操作の回数の増加に応
じて噴射量を減少させる制御を行うと燃料が不足して機
関の始動を行わせることができなくなることがある。
【0012】図16は、リコイルスタータにより始動さ
れる内燃機関にEFIを適用した場合の動作を説明する
ためのタイムチャートで、同図(A)は始動操作が行わ
れた際の機関の回転数Nの時間tに対する変化を示して
いる。図16(A)において、曲線aはリコイルスター
タのロープを軽く引いた場合の回転数の変化を示し、曲
線bはロープを普通に引いた場合の回転数の変化を示し
ている。また曲線cはロープを強く引いた場合の回転数
の変化を示している。
【0013】図16(B)は磁石発電機を電源として直
流電圧を発生する電源部からEFIに供給される電源電
圧Vo を示したもので、同図のa〜cはそれぞれ同図
(A)の曲線a〜cに対応している。電源部はその出力
電圧Vo を設定値Vosに保つように制御する制御回路を
備えていて、該電源部の出力電圧Vo は、インジェクタ
駆動回路を介してインジェクタの駆動コイルに印加され
るとともに、レギュレータにより降圧されてCPUの電
源端子に印加される。インジェクタ駆動回路は、インジ
ェクタの駆動コイルに対して直列に接続されたスイッチ
手段を備えていて、該スイッチ手段が導通している間イ
ンジェクタの駆動コイルに電源電圧を印加してインジェ
クタを駆動する。電源部の出力電圧Vo の設定値Vosは
例えば20[V]であり、CPUの電源端子に印加され
る電源電圧は、例えば5[V]である。
【0014】始動操作が開始されると、電源部の出力電
圧Vo は直線的に立ち上がって設定値Vosに達し、機関
の回転数が所定の値を超えている間設定値を維持した
後、機関の回転数の低下に伴って低下して零になる。
【0015】図16(C)のSj は所定の制御条件に応
じて設定された始動時の噴射時間To を与える噴射指令
パルスを示したもので、この噴射指令パルスはインジェ
クタ駆動回路を構成するスイッチ手段の制御端子に与え
られる。EFIの電源が確保されている場合、インジェ
クタ駆動回路のスイッチ手段は、噴射指令パルスSjが
与えられている間導通して電源電圧Vo をインジェクタ
の駆動コイルに印加する。
【0016】図16(D)ないし(F)はそれぞれ始動
操作時の回転数の変化が図16(A)の曲線aないしc
の場合のインジェクタの動作を示している。これらの図
においてONはインジェクタが燃料を噴射している状態を
示し、OFF はインジェクタが燃料の噴射を停止している
状態を示している。
【0017】始動操作時のロープの引き方が弱く、図1
6(A)の曲線aのように回転数Nが変化したとする
と、電源電圧Vo が設定値Vosに達している時間が設定
された始動時の噴射時間To よりも短いため、燃料の噴
射量は設定された噴射量よりもΔT1 時間に相当する分
だけ不足することになる。またこの例では、図16
(A)の曲線bのようにロープが普通に引かれた場合で
も、電源電圧Vo が設定値Vosに達している時間が設定
された始動時の噴射時間To よりも短いため、図16
(E)に示したように燃料の噴射量は設定された始動時
の噴射量よりもΔT2 (<ΔT1 )時間に相当する分だ
け不足する。図16(A)の曲線cのようにロープが強
く引かれた場合には、十分に長い時間の間電源電圧Vo
が設定値に達する状態になるため、図16(F)のよう
に、設定された時間To の間噴射を行わせて所定の噴射
量を得ることができる。
【0018】図16(G)はバッテリ電圧VB を示し、
図16(H)はバッテリを電源としてEFIを駆動する
場合の始動時の噴射動作を示している。この場合にはE
FIに常に一定の電源電圧が与えられるため、インジェ
クタは、始動操作の強弱の如何に係わりなく、設定され
た時間To の間燃料を噴射することができる。
【0019】図17は、始動装置としてリコイルスター
タを用いた内燃機関において、バッテリを用いてEFI
を駆動した場合、及び磁石発電の出力によりEFIを駆
動した場合について、混合気の濃度(空気量に対する燃
料の量の比[重量%])とリコイル引き回数(リコイル
スタータのロープを引く回数)との関係を示したもので
ある。同図の横軸においては、各リコイル引きの回数を
示す数値をそれぞれのリコイル引きの終了時点を示す位
置に表示してある。すなわち、横軸の「0」は1回目の
リコイル引きの開始点を示し、「1」は1回目のリコイ
ル引きの終了時点及び2回目のリコイル引きの開始時点
を示している。また破線L1 は燃焼可能範囲のリッチ側
限界を示し、破線L2 は燃焼可能範囲のリーン側の限界
を示している。リッチ側限界L1 とリーン側限界L2 と
の間の範囲が燃焼可能範囲となる。
【0020】図17の直線イはバッテリによりEFIを
駆動した場合で、この場合には、1回目のリコイル引き
の開始時に混合気がかなりリーンの状態にあるが、1回
目のリコイル引きの終了時には混合気の濃度が燃焼可能
範囲のリーン側限界付近まで上昇している。2回目のリ
コイル引きが開始されるとまもなく混合気濃度は燃焼可
能範囲に入り、2回目のリコイル引きの終了時には未だ
混合気濃度が燃焼可能範囲にある。3回目のリコイル引
きが開始された直後は未だ混合気濃度が燃焼可能範囲に
あるが、その途中から燃焼可能範囲を超える。これらの
ことから、バッテリによりEFIを駆動した場合には、
3回目のリコイル引きの途中まで機関の始動が可能であ
ることが分かる。
【0021】図17の曲線ロは、バッテリによりEFI
を駆動して、始動回数の増加に伴って噴射量を減少させ
る制御を行った場合を示したもので、この場合には、2
回目のリコイル引きの終了間際から9回目のリコイル引
きの終了時まで始動の機会が広がることが分かる。
【0022】曲線ハは、磁石発電機の出力によりEFI
を駆動し、始動操作回数の増加に応じて噴射量を減少さ
せる制御を行うようにした内燃機関において、リコイル
スタータのロープを軽く引いた場合の混合気濃度の変化
を示したものである。この場合、混合気がリーンの状態
で1回目のリコイル引きを行ったとすると、5回のリコ
イル引きが終了するまで混合気濃度を燃焼可能範囲に入
れることができず、始動に手間取ることになる。この場
合、ロープの引き方が弱かったり、噴射量の減少割合が
大きかったりすると、曲線ニのように延々と始動のチャ
ンスが訪れないこともあり得る。
【0023】このように、人力による始動装置により機
関を始動する際に、磁石発電機の出力でEFIを駆動し
た場合には、始動操作の回数の増加に応じて噴射量を減
少させる制御を行うと、始動操作の操作力によっては燃
焼可能範囲の混合気を得ることができなくなって機関を
始動させることが困難になり、また始動操作が繰り返さ
れる場合に、所定の制御条件に応じて設定した始動時用
の噴射量で繰り返し燃料の噴射を行わせると混合気がオ
ーバリッチの状態になって機関を始動させることができ
なくなるという不都合があった。
【0024】本発明の目的は、磁石発電機の出力により
燃料噴射装置を駆動する場合に、内燃機関の始動性を向
上させることができるようにした内燃機関用燃料噴射制
御装置を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明は、リコイルスタ
ータやキックスタータ等の人力により駆動される内燃機
関始動装置と、内燃機関の出力軸に取り付けられた磁石
発電機と、該磁石発電機を電源として直流電圧を発生す
る電源部により電源電圧が与えられて動作するCPU
と、一定の圧力で燃料が与えられるインジェクタと、噴
射指令パルスが与えられているときにインジェクタに駆
動電流を流して該インジェクタに燃料の噴射を行わせる
インジェクタ駆動回路と、CPUによりインジェクタ駆
動回路への噴射指令パルスの供給を制御してインジェク
タからの燃料の噴射量を制御する噴射量制御手段とを備
えた内燃機関用燃料噴射制御装置に係わるものである。
【0026】本発明においては、上記噴射量制御手段
に、インジェクタが燃料を噴射した時間の総和に相当す
る情報を噴射履歴情報として記憶する噴射履歴情報記憶
手段と、該噴射履歴情報記憶手段に記憶された情報に応
じて内燃機関の始動時の燃料噴射量を調節する始動時噴
射量調節手段とを設けたことを特徴とする。
【0027】上記噴射量制御手段は、内燃機関の始動時
に適合した噴射時間に相当するパルス幅を有する始動時
噴射指令パルスをインジェクタ駆動回路に与える始動時
噴射指令パルス供給手段と、内燃機関の運転時に適合し
た噴射時間に相当するパルス幅の定常時噴射指令パルス
をインジェクタ駆動回路に与える定常時噴射指令パルス
供給手段とにより構成できる。
【0028】この場合、始動時噴射指令パルス供給手段
には、インジェクタが燃料を噴射した時間の総和に相当
する情報を噴射履歴情報として記憶する噴射履歴情報記
憶手段と、噴射履歴情報記憶手段に記憶された情報を用
いて始動時噴射指令パルスのパルス幅を決定する始動時
噴射時間演算手段と、始動時噴射時間演算手段により演
算されたパルス幅を有するパルス信号を始動時噴射指令
パルスとして発生する始動時噴射指令パルス発生手段と
を設けておく。
【0029】上記始動時噴射時間演算手段はまた、内燃
機関の温度を含む所定の制御条件に対して演算された始
動時基本噴射時間を演算する基本噴射時間演算手段と、
噴射履歴情報記憶手段に記憶された情報と内燃機関の温
度の検出値とを用いてマップ演算を行うことにより始動
時噴射時間の補正係数を求める補正係数演算手段と、求
められた補正係数を前記基本噴射時間に乗じることによ
り始動時噴射時間を演算する補正係数乗算手段とにより
構成できる。
【0030】始動時に要求される燃料の量(始動時要求
ガソリン量)は、例えば図18に示したように、機関の
温度Tに応じて変化する。すなわち、機関の温度が低い
ときには、始動時に要求されるガソリン量が多くなる
が、機関の温度が高くなっていると始動時に要求される
ガソリン量は少なくて済む。このように、始動時に要求
される燃料の量は機関の温度により変化するため、温度
が大幅に変化する機関の場合には、機関の温度を制御条
件に入れることが望ましい。温度がそれ程変化しない機
関の場合には、機関の温度を制御条件から外すことがで
きる。その他、制御条件としては、吸気温度、大気圧
等、種々の条件があるが、機関の用途、使用条件等に応
じてこれらの条件を適宜に取捨選択して使用する。
【0031】なおマップとは所定の制御条件(例えば機
関の温度や噴射履歴情報)と被演算データ(制御条件に
対して演算する必要があるデータ、例えば始動時噴射時
間の補正係数)との間の関係を与える複数次元のテーブ
ルを意味する。またマップ演算とは、マップを用いて、
与えられた制御条件に対して所定の被演算データの値を
求めること(例えば機関の温度と噴射履歴情報とに対し
て始動時噴射時間の補正係数を求めること)を意味す
る。
【0032】与えられた制御条件に対して被演算データ
を細かく求める場合(検出された制御条件の各値に対し
て所定の被演算データの値を正確に求める場合)には、
マップを構成する制御条件の飛び飛びの値の間を補間す
るために補間法を用いるが、それ程精度を必要としない
場合には、制御条件の特定の範囲と被演算データとの間
の関係を与えるようにマップを作成して、与えられた制
御条件に対する被演算データの値をマップから読み取る
だけで決定する場合もある。
【0033】本明細書でいう「マップ演算」は、上記の
ようにマップと補間法とを用いて各制御条件に対して被
演算データの値を演算する場合、及びマップから数値を
読み取るだけで与えられた制御条件に対して被演算デー
タの値を決定する場合の双方を包含する。
【0034】上記噴射履歴情報記憶手段は、内燃機関始
動装置が駆動されている間にインジェクタが燃料を噴射
した時間の総和に相当する情報を記憶するようにしても
よく、インジェクタに与えられた始動時噴射指令パルス
のパルス幅と定常時用噴射指令パルスのパルス幅との総
和に相当する情報を記憶するようにしてもよい。
【0035】ここで「パルス幅の総和に相当する情報」
と言っているのは、パルス幅の総和そのものの情報でも
よく、パルス幅の総和との間に一定の関係を有する情報
でもよいとの趣旨である。例えば、逐次発生する噴射指
令パルスのパルス幅または該噴射指令パルスのパルス幅
に相応する時間をデジタル量として扱って逐次加算した
情報(累計値)を噴射履歴情報としてもよく、逐次発生
する噴射指令パルスのパルス幅または該噴射指令パルス
のパルス幅に相応した時間をアナログ量として扱って積
分することにより得た情報を噴射履歴情報としてもよ
い。
【0036】上記噴射履歴情報記憶手段は、インジェク
タ駆動回路に与えられる噴射指令パルスまたは該噴射指
令パルスのパルス幅に相応するパルス幅を有するパルス
信号により一定の時定数で充電される噴射時間記憶用コ
ンデンサ(噴射指令パルスまたは該噴射指令パルスと同
じパルス幅を有するパルス信号を積分する積分回路)に
より構成できる。この場合には、噴射時間がコンデンサ
に電圧の形で記憶されるので、該コンデンサの電圧をC
PUのアナログ入力ポートに入力する。
【0037】上記のように、噴射履歴情報を噴射時間記
憶用コンデンサに記憶させる場合には、該コンデンサを
オンオフ制御が可能なスイッチ手段を介してCPUの入
力ポートに接続して、CPUの電源電圧がCPUを駆動
し得るレベルに達したときにスイッチ手段を導通させ、
CPUの電源電圧がCPUを駆動し得るレベルよりも低
くなることが検出されたときにスイッチ手段を遮断状態
にするように電源部の出力電圧に応じてスイッチ手段を
制御するスイッチ制御回路を設けるのが好ましい。
【0038】上記噴射履歴情報記憶手段はまた、書き込
み及び消去が可能な不揮発性メモリ(EEPROM)に
より構成することもできる。この場合には逐次発生する
噴射指令パルスのパルス幅の累計値を該不揮発性メモリ
に記憶させるパルス幅累計値記憶手段が設けておく。
【0039】なお本明細書において「CPU」は広義に
解釈するものとし、中央演算処理装置(マイクロプロセ
ッサ)だけでなく、メモリ、A/D変換器、インタフェ
ース等の周辺装置をも含むものとする。
【0040】
【作用】本発明においては、複数回の始動操作が行われ
る場合に、既に行われた始動操作の際の噴射時間を積分
または加算して得た情報を噴射履歴情報とし、該噴射履
歴情報に応じて次に噴射する燃料の量(始動時噴射量)
を修正する。EFIにおいては、インジェクタに与えら
れる燃料の圧力がレギュレータにより一定に管理されて
いるので、噴射時間は燃料の噴射量に対応している。し
たがって、過去の噴射時間の総和に相当する情報は、既
に噴射された燃料の量に相当している。このように、既
に噴射された燃料の量に応じて次回に噴射する燃料の量
を修正するするようにすれば、EFIを磁石発電機によ
り駆動し、機関を人力による始動装置により始動する場
合であっても、混合気がオーバリッチの状態になった
り、燃焼可能な濃度に達しなかったりするのを確実に防
ぐことができるため、混合気の着火が不可能になる状態
が生じるのを防いで機関の始動性を向上させることがで
きる。
【0041】上記のように、噴射指令パルスまたは該噴
射指令パルスのパルス幅に相応したパルス幅を有するパ
ルス信号によりコンデンサを充電することにより、噴射
履歴情報を記憶させるようにすると、該情報の記憶を簡
単に行わせることができる。またこのようにコンデンサ
に噴射履歴情報を記憶させる場合に、コンデンサとCP
Uとの間にスイッチ手段を設けて、電源部の出力電圧に
応じて該スイッチ手段を制御することにより、CPUの
電源が失われることが検出されたときにコンデンサをC
PUから切り離すようにすると、機関が停止してCPU
の電源が失われた際に、コンデンサの電荷がCPU内を
通して放電するのを防ぐことができるため、始動に失敗
してCPUの電源が失われた状態でもコンデンサに蓄積
された情報を保持できる。従って、人力による始動操作
が反復される場合に、噴射履歴情報を確実に保持して、
始動補正係数の演算を行わせるすることができる。
【0042】なおインジェクタに噴射指令パルスを与え
た場合に、噴射指令パルスが立上がりに遅れがない完全
なパルス波形で、インジェクタの動作に遅れがない場合
には、噴射指令パルスのパルス幅が実際の噴射時間に等
しくなるが、現実には噴射指令パルスの立ち上がりに遅
れが生じるのを避けられず、またインジェクタの弁の開
閉動作に多少の遅れが生じるのを避けられないため、厳
密に言えば噴射指令パルスのパルス幅と実際の噴射時間
とは等しくならない。しかしながら、噴射指令パルスの
パルス幅と実際の噴射時間とは一定の対応関係にあるの
で、噴射指令パルスのパルス幅を噴射時間として扱って
そのパルス幅から燃料の噴射量の情報を得るようにして
も何等差支えがない。
【0043】
【実施例】図1は本発明の制御方法を実施する装置のハ
ードウェアの構成を概略的に示したもので、この例では
2サイクル内燃機関を制御するものとする。同図におい
て1はインジェクタを制御するCPUである。CPUは
ROMやRAM等のメモリや、タイマ、コンパレータ等
を備えているがそれらの図示は省略してある。
【0044】2は内燃機関と同期回転して機関の所定の
回転角度位置で信号を発生する信号発電機で、図示の信
号発電機は、リラクタ2a1を有するロータ2aと、信号
発電子2bとからなっている。信号発電子2bは、ロー
タ2aに対向する磁極部を有する鉄心に巻回された信号
コイルLsと該信号コイルが巻回された鉄心に磁気結合
された磁石とを有し、ロータ2aのリラクタ2a1が信号
発電子の鉄心の磁極部に対向し始める際及び該対向を終
了する際にそれぞれ生じる磁束変化により、信号コイル
Lsにパルス状の信号Vs1及びVs2が誘起する。信号V
s1及びVs2はそれぞれ一定の回転角度位置で発生するた
め、これらの信号により機関の回転角度位置に関する情
報を得ることができる。また特定の信号の発生間隔、例
えば信号Vs1が発生してから信号Vs2が発生するまでの
時間、または各信号Vs1が発生してから次の信号Vs1が
発生するまでの時間により、機関の回転数N[rpm]を検
出することができる。信号コイルLsから得られる信号
Vs1及びVs2は波形整形回路3及び4を介してマイクロ
コンピュータが認識し得る波形に変換されてCPU1に
入力されている。
【0045】マイクロコンピュータのCPU1にはま
た、内燃機関の吸入空気量を調整するスロットルバルブ
の開度(スロットル開度)を検出するスロットルセンサ
5の出力と、内燃機関の冷却水の温度またはクランクケ
ースの温度(機関の温度)を検出する温度センサ6の出
力とが入力されている。
【0046】内燃機関の吸気マニホールドにはインジェ
クタ7が取り付けられている。インジェクタ7は例えば
ニードルバルブと該ニードルバルブを駆動する電磁石と
を備えたもので、このインジェクタには燃料ポンプによ
り燃料が与えられ、インジェクタに与えられる燃料の圧
力はレギュレータにより一定に保たれている。インジェ
クタ7の電磁石を駆動する駆動コイル7aの一端は、内
燃機関に取り付けられた磁石発電機内の発電コイル8を
電源とした直流電源回路9の非接地側の出力端子(正極
側の出力端子)に接続され、該駆動コイル7aの他端は
エミッタが接地されたNPNトランジスタTr1のコレク
タに接続されている。トランジスタTr1は、駆動コイル
7aの駆動電流をオンオフするスイッチ手段を構成する
もので、このトランジスタTr1のベースは抵抗R1 を通
してCPU1の出力ポートP1 に接続され、CPU1の
出力ポートP1 から抵抗R1 を通してトランジスタTr1
のベースにパルス波形(矩形波)の噴射指令パルスSj
が与えられている。この例ではトランジスタTr1と抵抗
R1 とによりインジェクタ駆動回路10が構成されてい
る。
【0047】直流電源回路9は例えば磁石発電機内の発
電コイル8の整流出力で充電される電源コンデンサと、
該電源コンデンサの両端の電圧を一定値に保つように充
電を制御する制御回路とにより構成され、該電源回路9
からインジェクタの駆動コイル7aに電源電圧(インジ
ェクタ駆動電圧)Vj が与えられている。また電源回路
9からレギュレータ15を通して降圧された電圧Vc が
CPU1の電源端子に電源電圧Vc として与えられてい
る。Vj は例えば20[V]であり、Vc は例えば5
[V]である。この例では、電源回路9とレギュレータ
15とにより、磁石発電機を電源として直流電圧を発生
する電源部が構成されている。
【0048】またCPU1は出力ポートP2 及びP3 を
有していて、出力ポートP3 には、ダイオードD1 を介
して抵抗R2 の一端が接続され、該抵抗R2 の他端と接
地間に噴射時間記憶用コンデンサC1 が接続されてい
る。コンデンサC1 の両端には放電用抵抗R3 が接続さ
れ、ダイオードD1 と抵抗R2 及びR3 とコンデンサC
1 とからなる積分回路により、噴射履歴情報記憶手段1
2が構成されている。CPU1の出力ポートP3 は、噴
射指令パルスSj が発生したときに、該噴射指令パルス
のパルス幅と同じパルス幅のコンデンサ充電用パルス信
号Sj ´を出力する。このパルス信号Sj ´が発生する
と、ダイオードD1 及び抵抗R2 を通してコンデンサC
1 が図示の極性に充電される。これによりコンデンサC
1 の両端にはその充電時定数(抵抗R2 ,R3 の抵抗値
とコンデンサC1 の静電容量とにより決まる)により決
まる電圧VCRが現れる。コンデンサC1 は噴射指令パル
スが発生する毎に該噴射指令パルスのパルス幅に等しい
パルス幅のパルス信号Sj ´により充電されるため、該
コンデンサの両端の電圧VCRは、始動操作開始時から逐
次行われる噴射動作の噴射時間の総和に相当する大きさ
になる。即ち、コンデンサC1 には、始動操作開始後に
行われた噴射時間の総和に相当する情報が記憶されるこ
とになる。本発明においては、この情報を噴射履歴情報
と呼ぶことにする。
【0049】なお本実施例ではコンデンサ充電用パルス
信号Sj ´のパルス幅を噴射指令パルスのパルス幅に等
しくしているが、パルス信号Sj ´はそのパルス幅が噴
射時間に相応している(噴射時間と一定の関係を有す
る)ものであればよく、必ずしもパルス信号Sj ´のパ
ルス幅と噴射指令パルスSj のパルス幅とを等しくする
必要はない。
【0050】噴射時間記憶用コンデンサC1 の両端の電
圧は、スイッチSWを介してCPUのアナログ入力ポー
トA1 に入力されている。スイッチSWはトランジスタ
やリレー等のオンオフ制御が可能なスイッチで、CPU
1の出力ポートP2 からスイッチSWの制御端子に駆動
信号(スイッチを導通させるための信号)Sc が与えら
れている。スイッチSWは、駆動信号Sc が与えられて
いるときに導通してコンデンサC1 の両端の電圧(噴射
履歴情報)をCPU1に入力する。
【0051】上記の噴射履歴情報記憶手段12におい
て、放電用抵抗R3 は、機関が停止した後、コンデンサ
C1 の電荷を放電させるためのもので、C1 R3 の時定
数は、C1 R2 の時定数に比べて十分に大きく設定され
ている。なおコンデンサC1 の絶縁抵抗が抵抗R3 の抵
抗値にほぼ等しい場合には、抵抗R3 をコンデンサC1
の絶縁抵抗で代用することができる。
【0052】またダイオードD1 は、CPUの電源が低
下した場合に、コンデンサC1 の電荷が抵抗R2 とCP
U1の出力ポートP3 とを通して放電するのを防止する
ために設けられたものである。即ち、MOSFETタイ
プのCPUでは、多くの場合入出力ポートに図2に示し
たようにダイオードDa 及びDb からなる保護回路が設
けられているため、CPUの電源が落ちるとコンデンサ
C1 の電荷がダイオードDa と電源回路とを通して放電
してしまう。この放電を防ぐためにダイオードD1 を設
けている。CPUの出力ポートP3 にコンデンサC1 を
放電させる回路がつながっていない場合にはダイオード
D1 を省略できる。
【0053】CPU1のアナログ入力ポートA1 はアナ
ログデジタル変換器の入力端子につながっていて、該入
力ポートA1 に入力されたアナログ信号はデジタル信号
に変換されてCPUに取り込まれる。本実施例で用いて
いるCPUでは、その電源が落とされたときにアナログ
入力ポートA1 もコンデンサC1 を放電させる回路を構
成するので、CPUの電源が落とされたときにコンデン
サC1 が放電するのを防ぐために、CPUの電源が確立
した後に(CPUを駆動し得るレベルに達した後に)ス
イッチSWに駆動信号Sc を与えることにより該スイッ
チSWを導通させてコンデンサC1 をCPUに接続する
ようにしている。
【0054】図1の例では、CPU1からスイッチSW
に駆動信号Sc を供給するようにしているが、CPU1
の電源が確立したときに該CPUを通さずに、外部から
スイッチSWに駆動信号を与えるようにしてもよい。
【0055】なおアナログ入力ポートがコンデンサの放
電回路を構成しないタイプのCPUを用いる場合には、
スイッチSWを省略することができる。
【0056】図1の例では、CPUが噴射指令信号を出
力したときに、該CPUから噴射指令信号と同じパルス
幅を有するコンデンサ充電用信号Sj ´を発生させて、
該信号Sj ´によりコンデンサC1 を充電するとした
が、図3に示したように、ダイオードD1 のアノードを
CPUの出力ポートP1 に接続することにより、噴射指
令信号Sj でコンデンサC1 を充電するようにしてもよ
い。
【0057】本実施例においてCPU1は、ROMに記
憶された所定のプログラムにしたがって、始動時の噴射
時間及び噴射開始時期の制御と、定常運転時(機関の始
動が完了した後)の噴射時間及び噴射開始時期の制御を
行う。
【0058】図10は、その制御のアルゴリズムの主要
部を示すフローチャートで、このフローチャートに従う
場合には、始動操作により機関が回転させられて電源回
路9の出力電圧が確立し、CPU1の電源電圧Vc が確
立したときに、スイッチSWを導通させ、コンデンサC
1 の両端の電圧VCRを読み込む指令を出す。次いでコン
デンサVCRの両端の電圧の読み込みが完了するまでの間
に、ROMに記憶されたマップを用いて、機関の温度、
吸気温度、大気圧等の制御条件に対して始動時基本噴射
時間Ti BASEを演算する。次いで、ROMに記憶された
始動補正係数演算用マップを用いて、コンデンサC1 の
両端の電圧と機関の温度等の制御条件に対して始動補正
係数Ks を演算し、既に演算されている始動時基本噴射
時間TiBASEに補正係数Ks を乗じることにより、始動
時噴射時間Tis(n) [=Ti BASE×Ks ]を演算する。
【0059】次いで、スイッチSWを遮断状態にしてコ
ンデンサC1 をCPUから切り離し、出力ポートP1 か
ら、演算された始動時噴射時間Tis(n) に等しいパルス
幅を有する1回目の噴射指令パルスSj を出力してメイ
ンルーチンに移行する。メインルーチンでは、スロット
ル開度、機関の回転数、機関の温度等の制御条件に応じ
て定常時噴射時間を演算し、所定の噴射開始位置で演算
された定常時噴射時間に等しいパルス幅の噴射指令パル
スSj を発生させる。定常時噴射指令パルスを発生させ
る位置は、信号コイルLs が特定の信号を発生する位置
か、または該信号の発生位置に対して一定の関係を有す
る位置とする。なお機関の回転数の情報は、信号発電機
2が出力する信号の発生周期から得ることができる。メ
インルーチンではまた、機関の回転数から機関の始動が
成功したか否かを確認し、始動の成功が確認された後、
始動時噴射時間の演算を停止させ、始動時用の噴射指令
パルスの発生を停止させる。始動の成功の確認は、例え
ば機関の回転数がアイドル回転数に達していることを検
出することにより行うことができる。
【0060】始動補正係数Ks の演算に用いるマップは
例えば図11に示す通りである。同図において、第1行
目のV1 ,V2 ,…は、コンデンサC1 の両端の電圧V
CRの値で、V1 <V2 <…Vn-1 <Vn の関係がある。
また第1列目の−40,−30,…,90,100は温
度センサから読み込まれている機関の温度を示してお
り、0.2〜1.0の数値は、コンデンサC1 の両端の
各電圧値及び機関の温度に対応する始動時補正係数を示
している。このマップから読み取った数値を用いて、補
間法により、検出されている機関の温度及びコンデンサ
C1 の両端の電圧値に対応する始動時補正係数Ks を演
算する。
【0061】本実施例では、図10において、噴射履歴
情報により補正された始動時噴射時間Tis(n) を演算す
る過程により、始動時噴射時間演算手段が実現される。
始動時噴射時間は始動時の燃料噴射量に対応しているの
で、上記始動時噴射時間演算手段により始動時噴射量調
節手段が実現される。
【0062】上記始動時噴射時間演算手段は、始動時基
本噴射時間Ti BASEを演算する基本噴射時間演算手段
と、噴射履歴情報記憶手段12に記憶された情報と内燃
機関の温度とを用いてマップ演算を行うことにより始動
補正係数Ksを演算する補正係数演算手段と、演算され
た補正係数を基本噴射時間に乗じることにより始動時噴
射時間を演算する乗算手段とにより構成される。またメ
インルーチンにおいて、始動時噴射時間演算手段により
演算された時間の間始動時噴射指令パルスを発生させる
図示しない過程により、始動時噴射指令パルス発生手段
が実現され、上記始動時噴射時間演算手段と始動時噴射
指令パルス発生手段とにより、始動時噴射指令パルス供
給手段が実現される。
【0063】更に、メインーチンにおいて、各種の制御
条件に対して定常時噴射時間を演算して、演算された定
常時噴射時間の間定常時噴射指令パルスを発生させる過
程により、定常時噴射指令パルス供給手段が実現され、
この定常時噴射指令パルス供給手段と前記始動時噴射指
令パルス供給手段とにより、噴射量制御手段が構成され
る。
【0064】図9は、上記実施例において始動装置とし
てリコイルスタータが用いられている場合の始動時の動
作を示したもので、同図(A)はリコイル引き1回目な
いし3回目における機関の回転数Nの変化を示してい
る。この例では、1回目及び2回目のリコイル引きでは
機関の始動に成功せず、3回目のリコイル引きで始動に
成功している。図9(B)は、直流電源回路9からイン
ジェクタ7に印加されるインジェクタ駆動電圧Vj を示
したものである。ここでVj の設定値は20[V]であ
るとし、CPUの電源電圧Vc は5[V]であるとす
る。この例では、CPUの電源電圧がCPUを正常に動
作させ得るレベルにあるか否かを判定するために、CP
Uの電源電圧よりも高いインジェクタ駆動電圧Vj に対
して監視電圧VL (Vj >VL >Vc )を設定し、イン
ジェクタ駆動電圧Vj が監視電圧VLよりも低くなった
ときに、CPUの電源電圧Vc がCPUを駆動し得るレ
ベルよりも低くなること(まもなくCPUの電源が落ち
ること)を検出するようにしている。監視電圧VL は例
えば15[V]に設定する。
【0065】図9(C)はスイッチSWの動作を示して
おり、同図(E)はインジェクタ駆動回路10に与えら
れる噴射指令パルスSj を示している。なお図9(E)
において、斜線を施した噴射指令パルスは始動時の燃料
を増量するために与えられる始動時噴射指令パルスを示
し、斜線を施してない噴射指令パルスは定常運転時の機
関の回転を維持するために与えられる定常時噴射指令パ
ルスを示している。また図9(F)は噴射時間記憶用コ
ンデンサC1 の両端の電圧VCRの変化を示している。
【0066】1回目のリコイル引きにより、電源が確立
すると、始動時噴射時間Tis(1) が演算され、図9
(E)に示したように、演算された始動時噴射時間Tis
(1) にパルス幅が等しい始動時噴射指令パルスSj が発
生する。またこのとき噴射指令パルスSj とパルス幅が
等しいコンデンサ充電用パルスSj ´が発生するため、
コンデンサC1 が充電され、該コンデンサC1 の両端の
電圧VCRは図9(F)のようにVCR1 まで上昇する。こ
のコンデンサC1 の放電時定数は十分に大きいため、該
コンデンサの両端の電圧はそのまま次回の始動操作時ま
で保持される。
【0067】次に2回目のリコイル引きが行われると、
前回と同様に始動補正係数Ks が演算されるが、この場
合は、既にコンデンサC1 がVCR1 まで充電されている
ため、始動補正係数の演算結果は前回よりも小さくな
る。そのため該始動補正係数を始動時基本噴射時間に乗
じることにより演算される2回目の始動時噴射時間Tis
(2) は、前回演算された始動時噴射時間Tis(1) よりも
短くなる。この始動時噴射時間Tis(2) にパルス幅が等
しい噴射指令パルスSj が発生すると、コンデンサC1
が追加充電され、該コンデンサC1 の両端の電圧はVCR
2 まで上昇する。始動時噴射時間Tis(2) は短くなって
いるため、図9に示した例では、該噴射時間Tis(2) に
等しいパルス幅の噴射指令パルスが発生した後、続いて
パルス幅が1回目の定常時噴射時間Tin(1) に等しい定
常時噴射指令パルスが発生している。本実施例におい
て、CPUは定常時噴射指令パルスが発生したときにも
同じパルス幅のコンデンサ充電用パルスSj ´を発生す
るため、コンデンサC1 は更に電圧VCR3 まで充電され
る。
【0068】続いて3回目のリコイル引きが行われる
と、前回よりも更に短い始動時噴射時間Tis(3) が演算
され、この噴射時間に等しいパルス幅の始動時噴射指令
パルスが発生させられる。図示の例では、この噴射指令
パルスにより燃料の噴射が行われた直後に混合気の濃度
が燃焼可能範囲に入って機関の始動に成功している。
【0069】このように、本発明においては、機関の始
動操作が複数回行われる場合に、前回の始動操作時まで
に行われた燃料噴射の噴射時間の総和に相当する情報を
噴射履歴情報として記憶しておいて、この噴射履歴情報
を用いて始動時噴射時間を修正するので、実際に噴射さ
れた燃料の量を勘案して始動操作時に与える燃料の量を
適確に制御することができ、混合気がオーバリッチの状
態になったり、燃焼可能範囲に入らない状態が生じたり
するのを防いで、機関の始動を確実に行わせることがで
きる。
【0070】上記の説明では、始動操作により電圧が確
立したときに短時間だけ駆動信号Sc を発生させてスイ
ッチSWを短時間(コンデンサC1 の両端の電圧をCP
Uに読み込むのに必要な時間)だけ導通させるようにし
たが、図9(D)に示したように、CPUの電源電圧V
c がCPUを駆動し得るレベルに達した後、インジェク
タの駆動電圧Vj が監視電圧VL 以上になっている間ス
イッチSWを導通させるようにしてもよい。CPUの電
源が確立している状態では、コンデンサC1 の電荷がア
ナログ入力ポートA1 を通して放電することはないた
め、このようにインジェクタ駆動電圧が監視電圧以上に
なっている期間スイッチSWを導通状態に保持するよう
にしてもコンデンサC1 の電荷が失われることはない。
【0071】上記のように、CPUの電源電圧Vc より
も高い電圧Vj に対してCPUの電源電圧Vc よりも高
い監視電圧を設定して、電圧Vj を監視することにより
CPUの電源が確立しているか否かを検出するようにす
ると、CPUの電源が失われることを前もって検出でき
るため、CPUの電源が実際に失われる前にスイッチS
Wを遮断状態にするための処理等の必要な処理を実行さ
せることができる。
【0072】上記の実施例では、コンデンサC1 が定常
時噴射指令パルスによっても充電されるため、該コンデ
ンサは機関が運転されている間に飽和状態にまで充電
(満充電)される。機関が停止するとコンデンサC1 の
電荷は抵抗R3 を通して放電していく。このコンデンサ
C1 の放電時の電圧の時間的変化は図12(B)に示し
た通りである。一方機関が停止した直後は燃料の供給経
路の内面に多くの液膜が残留しており、残留している液
膜は時間の経過に伴って気化していくため、燃料の供給
経路に残留している燃料の液膜の量(この液膜量を残留
液膜量と呼ぶことにする。)は時間tの経過に伴って図
12(A)のように変化していく。この残留液膜量の時
間tに対する変化の特性は、コンデンサC1 の両端の電
圧の変化の特性に近似している。
【0073】残留液膜量が多い場合ほど始動時に必要な
燃料の量(始動時要求ガソリン量)が少なくて済み、残
留液膜量が少なくなるに従って始動時要求ガソリン量が
多くなる。従って機関が停止した後余り時間が経過して
いない状態で始動を行う場合には、始動時噴射時間を短
くする必要があり、機関が停止した後長時間が経過した
後に機関を始動させる際には、始動時噴射時間を長くす
る必要がある。
【0074】上記の実施例では、コンデンサC1 の放電
時定数を適当に選ぶことにより、コンデンサC1 の両端
の電圧の時間的な変化を残留液膜量の時間的変化の特性
に近似させることができるため、機関の始動時に該コン
デンサC1 の両端の電圧を用いて始動時噴射時間の補正
係数を演算することにより、残留液膜量に見合った始動
時噴射時間を得ることができ、機関の始動時に混合気が
オーバリッチの状態になるのを防いで機関の始動性を向
上させることができる。
【0075】上記の実施例では、機関の始動時に、始動
時噴射指令パルスが発生したときにコンデンサC1 を充
電するとともに、定常時噴射指令パルスが発生したとき
にもコンデンサC1 を充電するようにしているが、機関
の始動時には、始動時噴射時間が定常時噴射時間に比べ
て十分に長く、殆ど始動時噴射指令パルスが発生したと
きの燃料の噴射により機関に与えられる燃料の量が決る
ため、始動時噴射指令パルスが発生している間のみコン
デンサC1 を充電するようにしても、前回の始動操作ま
でに機関に与えられた燃料の量に関する情報(噴射履歴
情報)を得て各始動操作時の噴射時間を適当な値に修正
することができ、上記の実施例と同じ効果を得ることが
できる。
【0076】始動時噴射指令パルスが発生しているとき
にのみコンデンサC1 を充電するようにした場合には、
機関の始動が確認された後にCPUの出力ポートP3 を
高レベルの状態に保持するようにCPUを動作させるプ
ログラムを組んでおくことにより、コンデンサC1 を飽
和状態まで充電するようにすれば、前記の実施例と同様
に、機関が停止している間の残留液膜量の経時変化に関
する情報を得て、再始動を適確に行わせることができ
る。
【0077】図3のように、インジェクタ駆動回路に与
えられる噴射指令パルスによりコンデンサC1 を充電す
るように構成した場合には、必然的に定常時噴射指令パ
ルスによってもコンデンサC1 が充電されるため、機関
の運転中にコンデンサを満充電の状態にすることができ
る。従ってCPUを働かせるためのプログラムにおい
て、機関が始動した後コンデンサC1 を満充電にする手
段を実現するための過程が不要になり、プログラムの構
成を簡単にすることができる。
【0078】上記のように、機関の運転中にコンデンサ
C1 を飽和状態まで充電し、機関が停止した後に該コン
デンサを所定の時定数でゆっくりと放電させて再始動時
の噴射時間を適値に設定する制御を行わせるためには、
コンデンサC1 の電荷がCPUのアナログ入力ポートを
通して失われないようにしておく必要がある。特にMO
SFETタイプのCPUが用いられる場合には、CPU
の電源電圧Vc が監視電圧VL よりも低くなる前にコン
デンサC1 をCPUから切り離す必要がある。そのため
に上記の実施例ではスイッチSWを設けて、該スイッチ
SWをCPUにより制御するようにしているが、コンデ
ンサC1 の電荷がCPUを通して放電しないようにする
ための手段には種々の変形が考えられる。そのいくつか
の例を図4ないし図8に示した。
【0079】図4の例では、スイッチSWとしてリレー
13が用いられ、その励磁コイル13aが、図1のレギ
ュレータ15の出力端子と、エミッタが接地されたNP
NトランジスタTr2のコレクタとの間に接続されてい
る。トランジスタTr2のベースは抵抗R4 とツェナーダ
イオードZDとを通して直流電源回路9の出力端子に接
続されている。またコンデンサC1 の非接地側の端子が
リレーの接点13bを通してCPUのアナログ入力ポー
トA1 に接続されている。
【0080】この例では、インジェクタの駆動電圧Vj
が確立したときにツェナーダイオードZDが導通してト
ランジスタTr2にベース電流が与えられるため、該トラ
ンジスタが導通して励磁コイル13aを励磁する。これ
によりリレーの接点13bが閉じるため、該接点13b
を通してコンデンサC1 がCPUの入力ポートA1 に接
続される。
【0081】図5に示した例では、図4に示したトラン
ジスタTr2のベースが抵抗R4 を通してCPUの出力ポ
ートP2 に接続されている。また抵抗R5 及びR6 の直
列回路から成る分圧回路の両端にインジェクタ駆動電圧
Vj が印加され、該分圧回路の分圧出力がアナログ入力
ポートA2 と割り込み信号入力端子INTとに入力され
ている。
【0082】図5に示した例では、インジェクタ駆動電
圧Vj が抵抗R5 及びR6 からなる分圧回路により検出
されてCPUのアナログ入力ポートに入力される。CP
Uはインジェクタの駆動電圧Vj が監視電圧VL よりも
高いときに出力ポートP2 からトランジスタTr2のベー
スに信号を与えて該トランジスタTr2を導通させる。こ
れによりリレー13を励磁してその接点13bを閉じ、
コンデンサC1 を入力ポートA1 に接続する。機関が停
止してインジェクタ駆動電圧Vj が監視電圧VL よりも
低くなったときにトランジスタTr2へのベース電流の供
給を停止して該トランジスタを遮断状態にし、これによ
りリレー13を消勢してコンデンサC1をCPUから切
り離す。
【0083】なお上記の説明では、アナログ入力ポート
A2 に入力されたインジェクタ駆動電圧Vj の検出値か
らインジェクタ駆動電圧が監視電圧VL よりも低くなっ
たことが検出されたときにトランジスタTr2を遮断状態
にするようにしたが、図5に破線で示したようにインジ
ェクタ駆動電圧Vj の検出値をCPUの割り込み信号入
力端子INTに入力し、機関が停止したときに生じるイ
ンジェクタ駆動電圧Vj の立ち下がりでCPUに割り込
みをかけることにより割り込み処理ルーチンを実行させ
て、この割り込み処理ルーチンでトランジスタTr2を遮
断状態にするようにしてもよい。
【0084】図6に示した例では、CPUの入力ポート
Pinにエミッタが接地されたトランジスタTr3のコレク
タが接続されている。トランジスタTr3のコレクタは抵
抗R7 を通してCPU1の電源端子(レギュレータ15
の出力端子)に接続され、CPUの電源電圧Vc が抵抗
R7 を介してトランジスTr3のコレクタエミッタ間に印
加されている。トランジスタTr3のベースには抵抗R8
とツェナーダイオードZDとを通してインジェクタ駆動
電圧Vj が印加されている。
【0085】図6に示した例において、インジェクタ駆
動電圧Vj が設定電圧VL 以上あるときには、ツェナー
ダイオードZDが導通してトランジスタTr3にベース電
流が与えられるため、該トランジスタが導通してCPU
の入力ポートPinの電位をぼぼ零にする。またインジェ
クタ駆動電圧Vj が監視電圧VL 未満であるときにはツ
ェナーダイオードZDが遮断状態になり、トランジスタ
Tr3が遮断状態になるため、CPUの入力ポートPinの
電位が高レベルになる。CPUは、入力ポートPinの電
位の変化を検出してトランジスタTr2へのベース電流の
供給を制御する。すなわち、Vj ≧VL で、入力ポート
Pinの電位がほぼ零のときには、トランジスタTr2にベ
ース電流を与えて該トランジスタを導通させ、リレー1
3を励磁してコンデンサC1 をCPUに接続する。また
Vj <VL で、入力ポートPinの電位が高レベルのとき
には、トランジスタTr2を遮断状態にしてリレー13を
非励磁にし、コンデンサC1 をCPUから切り離す。
【0086】上記の例では、スイッチSWをリレーによ
り構成したが、スイッチSWは半導体スイッチにより構
成することもできる。図7及び図8はスイッチSWをN
チャンネルMOSFET14により構成した例を示した
ので、図7の例では、図5に示した例と同様に、CPU
が抵抗R5 及びR6 からなる分圧回路によりインジェク
タ駆動電圧Vj を検出し、Vj ≧VL のときに出力ポー
トP3 からFET14のゲートに駆動信号を与える。こ
れによりFET14を導通させてコンデンサC1 をFE
Tのドレインソース間回路を通してCPUに接続する。
またVj <VLのときには、FET14への駆動信号の
供給を停止して該FETを遮断状態にし、コンデンサC
1 をCPUから切り離す。
【0087】図8の例では、インジェクタ駆動電圧Vj
をツェナーダイオードZDを介してFET14のゲート
に印加し、Vj ≧VL のときにFETを導通させてコン
デンサC1 をFETのドレインソース間回路を通してC
PUに接続するようにしている。
【0088】上記の例ではインジェクタ駆動電圧Vj が
監視電圧VL よりも低くなったときにスイッチSWをオ
フ状態にしてコンデンサC1 をCPUから切り離すよう
にしたが、機関の回転数を検出して、回転数の減少割合
が設定値以上になったときに機関が停止すると判断して
スイッチSWをオフ状態にするようにしてもよい。
【0089】また磁石発電機内にEFI駆動用の発電コ
イル8以外に他の発電コイルが設けられている場合に
は、その他の発電コイルの出力電圧を監視することによ
り、CPUの電源が確立されているか否か、及びCPU
の電源がまもなく失われるか否かを検出するようにして
もよい。
【0090】上記のように、コンデンサとCPUの入力
ポートとの間にスイッチ手段を設けて、CPUの電源電
圧が失われたときに該スイッチ手段を遮断状態にするこ
とによりコンデンサをCPUから切り離すようにしてお
くと、機関が停止してCPUの電源が失われた状態にあ
るときにコンデンサの電荷がCPU内を通して放電する
のを防止できるため、人力により機関の始動操作が反復
される場合に、コンデンサに蓄積された情報を確実に保
持することができる。
【0091】なお上記の考え方を適用し得るのは、コン
デンサに噴射履歴情報を記憶させる場合に限られるもの
ではなく、一般にアナログ情報を電圧の形にしてコンデ
ンサに蓄積し、該コンデンサの両端の電圧をCPUに入
力して特定の制御対象を制御する場合に広く適用するこ
とができる。
【0092】図1の実施例では、始動操作が行われる毎
に噴射時間に相当する電圧をコンデンサC1 に蓄積する
ことにより噴射時間の総和に相当する情報を得るように
したが、各始動操作時に行われた噴射動作の実際の噴射
時間は、CPUが認識し得るので、実際の噴射時間(噴
射指令パルスのパルス幅)の累計値を書き込み及び消去
が可能なROM(EEPROM)に記憶させることによ
り、噴射時間の総和に相当する噴射履歴情報を得るよう
にしてもよい。この場合には、1回の始動操作が終了し
て(リコイル引きが終了して)CPUの電源がなくなる
前にEEPROMに噴射時間を記憶させる。CPUの電
源がなくなることの判断は、前記の実施例と同様に、C
PUの電源電圧Vc よりも高いインジェクタ駆動電圧V
j に対して監視電圧VL を設ける(Vj <VL が検出さ
れたときにCPUの電源がまもなくなくなると判断す
る)ことにより行えばよい。
【0093】始動操作によりCPUの電源が確立してい
るときの動作は図13及び図14のフローチャートに従
う。即ち、先ずCPUの電源電圧が確立したときに図1
3のフローチャートに従って、前回までの噴射時間の合
計Ti TOTAL を噴射履歴情報として求める。この演算
は、Ti TOTAL =Tis(1) +Tis(2) +…+Tin(1) +
Tin(2) +…により行う。ここでTis(1) ,Tis(2) …
は、始動時の噴射時間であり、Tin(1) ,Tin(2) …は
定常時の噴射時間である。
【0094】次いでTi TOTAL の値(噴射履歴情報)T
1 ,T2 ,…と機関の温度とを用いて図15のマップか
ら始動補正計数Ks を求め、始動時噴射時間Tis(n) =
基本始動噴射時間Ti BASE×始動補正係数Ks により始
動時噴射時間Tis(n) を演算する。これらの過程によ
り、始動時噴射時間演算手段が実現される。演算された
始動時噴射時間を用いて第1回目の噴射を行わせる。
【0095】その後機関の始動が成功したか否かを判定
し、機関の始動の成功が確認されたときにEEPROM
をクリアした後、始動成功フラグを立ててメインルーチ
ンに復帰する。機関の始動が確認されなかったときに
は、そのままメインルーチンに復帰する。
【0096】始動操作を行った後、インジェクタ駆動電
圧Vj が監視電圧VL よりも低くなったときには図14
のサブルーチンが実行される。このサブルーチンでは、
インジェクタ駆動電圧Vj を監視電圧VL と比較して、
Vj ≧VL のときにはメインルーチンに復帰し、Vj <
VL のときには次いで始動が成功したか否かを示す始動
成功フラグが立っているか否かを判定する。始動成功フ
ラグが立っていないときには、噴射を停止させてCPU
の動作開始時からの噴射時間Ti TOTAL をEEPROM
に記憶させ、その後メインルーチンに復帰する。始動成
功フラグが立っている場合には、そのままメインルーチ
ンに復帰する。
【0097】本実施例において、噴射時間の総和が記憶
されているEEPROMをクリアするのは、次回の始動
時に噴射履歴情報を零の状態から開始させるためであ
る。また、始動成功フラグを立てるのは、機関が停止し
てVj <VL となるときに、始動に成功しないでVj <
VL となったのか、または始動後、運転者の操作により
機関が停止させられたためにVj <VL となったのかを
判別するためである。
【0098】以上、本発明の好ましいと思われる実施例
を説明したが、本明細書に開示した発明の内、内燃機関
の制御装置において、制御情報をコンデンサに記憶させ
て、該コンデンサの両端の電圧をCPUに読み込む構成
をとる場合に適した発明の態様を以下に挙げる。
【0099】(1) 人力により駆動される始動装置
と、出力軸により駆動される磁石発電機と、前記磁石発
電機の出力電圧を直流電圧に変換する電源部により電源
電圧が与えられて動作するCPUと、前記CPUにより
制御される制御対象と、前記制御対象を制御するために
必要な情報を与える信号により充電される制御情報記憶
用コンデンサとを備え、前記コンデンサの両端の電圧を
読み込むことにより前記制御に必要な情報を前記CPU
に取り込むようにした内燃機関の制御装置であって、前
記コンデンサはオンオフ制御が可能なスイッチ手段を介
して前記CPUの入力ポートに接続され、前記CPUの
電源電圧が確立されているときに前記スイッチ手段を導
通させ、前記CPUの電源電圧が確立されていないとき
には前記スイッチ手段を遮断状態にするように前記電源
部の出力電圧に応じてスイッチ手段を制御するスイッチ
制御手段が設けられていることを特徴とする内燃機関制
御装置。
【0100】(2) 前記電源部は、前記CPUの電源
電圧よりも高い別の電源電圧を発生し得るよう構成さ
れ、前記スイッチ制御回路は、前記別の電源電圧を電源
確認用電圧として検出して、該電源確認用電圧のレベル
が所定の監視レベル以上になっているときに前記スイッ
チ手段を導通させ、該電源確認用電圧のレベルが監視レ
ベル未満のときに前記スイッチ手段を遮断させるように
前記別の電源電圧に応じてスイッチ手段を制御する上記
第1項に記載の内燃機関制御装置。
【0101】上記第1項の発明のように、制御対象を制
御するために必要な情報を与える信号により制御情報記
憶用コンデンサを充電して、該コンデンサの両端の電圧
をCPUに読み込むことにより制御に必要な情報を取り
込む構成がとられる場合に、コンデンサをスイッチ手段
を介してCPUに接続し、電源電圧が確立していないと
きにスイッチ手段を遮断状態にしてコンデンサをCPU
から切り離すようにすると、CPUの電源が無くなった
場合にコンデンサがCPU内を通して放電するのを防ぐ
ことができるため、CPUに電源が与えられていない状
態でもコンデンサの電荷を保持して制御に必要な情報を
保持することができる。従って、新たな制御動作を開始
する際に、前回の制御を終了した時点での情報を必要と
する場合に、記憶手段としてコンデンサを用いることが
可能になる。
【0102】また上記第2の発明のように、CPUの電
源電圧よりも高い別の電源電圧を発生させて、該別の電
源電圧が監視電圧よりも低くなったときにスイッチ手段
を遮断状態にしてコンデンサをCPUから切り離すよう
にすると、CPUが動作している間に前もってCPUの
電源がまもなく失われることを検出することができるた
め、スイッチ手段を遮断するための制御をCPUを用い
て行うことができ、スイッチ手段を制御するためのハー
ドウェア回路を必要としない。
【0103】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、前回の
始動操作時までに行われた燃料噴射の噴射時間の総和に
相当する情報を噴射履歴情報として記憶しておいて、こ
の噴射履歴情報を用いて始動時噴射時間を修正するよう
にしたので、実際に噴射された燃料の量を勘案して始動
操作時に与える燃料の量を適確に制御することができ、
混合気がオーバリッチの状態になったり、燃焼可能範囲
に入らない状態が生じたりするのを防いで、機関の始動
を確実に行わせることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の要部の構成を示した構成図で
ある。
【図2】本発明で用いるCPUの要部の構成を示した説
明図である。
【図3】本発明の他の実施例の要部の構成を示した構成
図である。
【図4】本発明の実施例において、コンデンサとCPU
との間に設けるスイッチを制御する手段の一例を示した
回路図である。
【図5】本発明の実施例において、コンデンサとCPU
との間に設けるスイッチを制御する手段の他の例を示し
た回路図である。
【図6】本発明の実施例において、コンデンサとCPU
との間に設けるスイッチを制御する手段の更に他の例を
示した回路図である。
【図7】本発明の実施例において、コンデンサとCPU
との間に設けるスイッチを制御する手段の更に他の例を
示した回路図である。
【図8】本発明の実施例において、コンデンサとCPU
との間に設けるスイッチを制御する手段の更に他の例を
示した回路図である。
【図9】本発明の実施例の動作を説明するためのタイム
チャートである。
【図10】本発明の実施例において始動時に行われる制
御のアルゴリズムの要部を示したフローチャートであ
る。
【図11】本発明の実施例で始動補正係数を演算するた
めに用いるマップの一例を示した図表である。
【図12】内燃機関における燃料の液膜量の時間的変化
及びコンデンサの両端の電圧の時間的な変化を示した線
図である。
【図13】本発明の他の実施例において始動時に行われ
る制御のアルゴリズムを示したフローチャートである。
【図14】本発明の他の実施例において噴射時間を記憶
する際に実行されるサブルーチンを示したフローチャー
トである。
【図15】本発明の実施例で始動補正係数を演算するた
めに用いるマップの他の例を示した図表である。
【図16】従来の装置の動作を説明するためのタイムチ
ャートである。
【図17】リコイルスタータにより始動される機関の混
合気濃度とリコイル引き回数との関係を示した線図であ
る。
【図18】内燃機関の温度と始動時に要求されるガソリ
ン量との関係を示した線図である。
【符号の説明】
1 CPU 2 信号発電機 7 インジェクタ 10 インジェクタ駆動回路 12 噴射履歴情報記憶手段 SW スイッチ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 F02D 45/00 376 B F02N 3/02 S

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 人力により駆動される内燃機関始動装置
    と、内燃機関の出力軸に取り付けられた磁石発電機と、
    前記磁石発電機を電源として直流電圧を発生する電源部
    により電源電圧が与えられて動作するCPUと、一定の
    圧力で燃料が与えられるインジェクタと、噴射指令パル
    スが与えられているときに前記インジェクタに駆動電流
    を流して該インジェクタに燃料の噴射を行わせるインジ
    ェクタ駆動回路と、前記CPUにより前記インジェクタ
    駆動回路への噴射指令パルスの供給を制御してインジェ
    クタからの燃料の噴射量を制御する噴射量制御手段とを
    備えた内燃機関用燃料噴射制御装置であって、 前記噴射量制御手段は、 前記インジェクタが燃料を噴射した時間の総和に相当す
    る情報を噴射履歴情報として記憶する噴射履歴情報記憶
    手段と、 前記噴射履歴情報記憶手段に記憶された情報に応じて内
    燃機関の始動時の燃料噴射量を調節する始動時噴射量調
    節手段とを具備したことを特徴とする内燃機関用燃料噴
    射制御装置。
  2. 【請求項2】 人力により駆動される内燃機関始動装置
    と、内燃機関の出力軸に取り付けられた磁石発電機と、
    前記磁石発電機を電源として直流電圧を発生する電源部
    により電源電圧が与えられて動作するCPUと、一定の
    圧力で燃料が与えられるインジェクタと、噴射指令パル
    スが与えられているときに前記インジェクタに駆動電流
    を流して該インジェクタに燃料の噴射を行わせるインジ
    ェクタ駆動回路と、前記CPUにより前記インジェクタ
    への噴射指令パルスの供給を制御して該インジェクタか
    らの燃料の噴射量を制御する噴射量制御手段とを備え、 前記噴射量制御手段は、内燃機関の始動時に適合した噴
    射時間に相応するパルス幅を有する始動時噴射指令パル
    スを前記インジェクタ駆動回路に与える始動時噴射指令
    パルス供給手段と、内燃機関の運転時に適合した噴射時
    間に相応するパルス幅の定常時噴射指令パルスを前記イ
    ンジェクタ駆動回路に与える定常時噴射指令パルス供給
    手段とを備えている内燃機関用燃料噴射制御装置であっ
    て、 前記始動時噴射指令パルス供給手段は、 前記インジェクタが燃料を噴射した時間の総和に相当す
    る情報を噴射履歴情報として記憶する噴射履歴情報記憶
    手段と、 前記噴射履歴情報記憶手段に記憶された情報を用いて前
    記始動時噴射指令パルスのパルス幅を決定する始動時噴
    射時間演算手段と、 前記始動時噴射時間演算手段により演算されたパルス幅
    を有するパルス信号を前記始動時噴射指令パルスとして
    発生する始動時噴射指令パルス発生手段とを具備したこ
    とを特徴とする内燃機関用燃料噴射制御装置。
  3. 【請求項3】 前記始動時噴射時間演算手段は、前記噴
    射履歴情報記憶手段に記憶された情報と内燃機関の温度
    の検出値とを用いてマップ演算を行うことにより始動時
    噴射時間の補正係数を求める補正係数演算手段と、求め
    られた補正係数を基本噴射時間に乗じることにより始動
    時噴射時間を演算する補正係数乗算手段とを備えている
    請求項2に記載の内燃機関用燃料噴射制御装置。
  4. 【請求項4】 前記噴射履歴情報記憶手段は、前記内燃
    機関始動装置が駆動されている間にインジェクタが燃料
    を噴射した時間の総和に相当する情報を記憶することを
    特徴とする請求項1,2または3のいずれかに記載の内
    燃機関用燃料噴射制御装置。
  5. 【請求項5】 前記噴射履歴情報記憶手段は、前記イン
    ジェクタ駆動回路に与えられた始動時噴射指令パルスの
    パルス幅と定常時噴射指令パルスのパルス幅との総和に
    相当する情報を記憶することを特徴とする請求項2また
    は3のいずれかに記載の内燃機関用燃料噴射制御装置。
  6. 【請求項6】 前記噴射履歴情報記憶手段は、前記イン
    ジェクタ駆動回路に与えられる噴射指令パルスまたは該
    噴射指令パルスのパルス幅に相応したパルス幅を有する
    パルス信号により一定の時定数で充電される噴射時間記
    憶用コンデンサからなっていることを特徴とする請求項
    1,2,3,4または5のいずれかに記載の内燃機関用
    燃料噴射制御装置。
  7. 【請求項7】 前記噴射時間記憶用コンデンサはオンオ
    フ制御が可能なスイッチ手段を介して前記CPUの入力
    ポートに接続され、 前記CPUの電源電圧がCPUを駆動し得るレベルに達
    したときに前記スイッチ手段を導通させ、前記CPUの
    電源電圧がCPUを駆動し得るレベルよりも低くなるこ
    とが検出されたときに前記スイッチ手段を遮断状態にす
    るように前記電源部の出力電圧に応じてスイッチ手段を
    制御するスイッチ制御回路が設けられていることを特徴
    とする請求項6に記載の内燃機関制御装置。
  8. 【請求項8】 前記噴射履歴情報記憶手段は、書き込み
    及び消去が可能な不揮発性メモリ(EEPROM)から
    なっていて、逐次発生する噴射指令パルスのパルス幅の
    累計値を該不揮発性メモリに記憶させるパルス幅累計値
    記憶手段が設けられていることを特徴とする請求項1,
    2,3,4または5のいずれかに記載の内燃機関用燃料
    噴射制御装置。
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