JPH081332A - アルミニウム製シリンダヘッドの製造方法 - Google Patents

アルミニウム製シリンダヘッドの製造方法

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JPH081332A
JPH081332A JP13621394A JP13621394A JPH081332A JP H081332 A JPH081332 A JP H081332A JP 13621394 A JP13621394 A JP 13621394A JP 13621394 A JP13621394 A JP 13621394A JP H081332 A JPH081332 A JP H081332A
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Yuichi Takemoto
裕一 武本
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 アルミニウム製シリンダヘッドのMMC層を
含む部分的な再溶融処理を入熱量少なくして低コストで
行う製造方法の提供。 【構成】 アルミニウム製シリンダヘッド1の被処理部
2に凹部3とその周囲に凸壁5を形成し、凹部2にアル
ミニウムと複合化する金属かセラミックスのメッシュ状
プリフォーム5を入れて、被処理部2をTIGトーチ6
でアーク溶融させる。凸壁4の溶融金属で凹部3を埋
め、プリフォーム5に含浸させてMMC層8を形成し、
凹部3の凹底部の溶融金属とプリフォーム5でMMC層
8を形成する。MMC層8と再溶融で被処理部2が増強
される。被処理部2の耐熱亀裂性を決めるMMC層8の
深さDaは、凹部3の底の深さで決まり、凹部3の深さ
を所定値にすることで、被処理部2の必要な耐熱亀裂性
が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウム製シリン
ダヘッドの吸気孔と排気孔の間の狭い領域等の被処理部
を再溶融処理して増強する再溶融処理工程での製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高出力ディーゼルエンジンにおい
て、軽量化の一環としてアルミニウム製シリンダヘッド
が多く採用されている。この種アルミニウム製シリンダ
ヘッドは、エンジンの軽量化を可能にするが、高熱負荷
により吸気孔と排気孔の間等の狭い部分で熱疲労による
亀裂発生が問題となっている。
【0003】そこで、アルミニウム製シリンダヘッドの
熱疲労で亀裂が発生し易い部分を再溶融処理して増強す
ることが行われている。この再溶融処理は、一般にシリ
ンダヘッドの被処理部の表面層をTIGアーク溶融法に
よる高密度エネルギー照射で再溶融させることで行われ
る。即ち、シリンダヘッドの被処理部にアルゴンやヘリ
ウム等の不活性ガスをノズルで噴き付けけながら、不活
性ガスのシールドガス雰囲気中で被処理部を順にアーク
溶融させている。再溶融処理されたシリンダヘッドの被
処理部は、引け巣等の鋳造欠陥が除去され、また、アル
ミニウム結晶粒による金属組織微細化効果で増強され
て、耐熱亀裂性が向上する。
【0004】エンジンの高性能化の要求で、アルミニウ
ム製シリンダヘッドの耐熱亀裂性は、高いものが要求さ
れ、この要求から次の再溶融処理方法が開発され、実行
されている。上記再溶融処理中に、ニッケルやクロム等
の金属粉末或いはセラミック粉末等のアルミニウムと複
合化する粉末を、シリンダヘッドの被処理部に供給し
て、被処理部に金属基複合材料(以下、MMCと称す
る)層を形成する。この再溶融処理方法においては、シ
リンダヘッドの被処理部表面層でのMMC層を深く形成
するほど、被処理部の耐熱亀裂性が向上することが分か
っている。かかる再溶融処理の製造方法の具体例を、図
3と図4(a)及び(b)を参照して説明する。
【0005】図3は、鋳造されたアルミニウム製シリン
ダヘッド1’の吸気孔11、排気孔12、副燃焼チャン
バー13の在る領域の平面が示され、吸気孔11と排気
孔12の間の狭い部分が再溶融処理される被処理部10
である。被処理部10の再溶融処理前の断面は、図4
(a)に示すような表面が平坦なアルミニウム素材の断
面である。
【0006】この被処理部10に対して、図4(b)に
示すように、高密度エネルギーのTIGトーチ14を相
対移動させて被処理部10の表面層を不活性ガスのシー
ルドガス雰囲気中で順にアーク溶融していく。同時に被
処理部10のアーク溶融部分にノズル15からニッケル
等の金属粉末或いはセラミック粉末のアルミニウム複合
粉末16を供給する。これにより、被処理部10の表面
層の溶融した部分から順にMMC層17が形成される。
MMC層17の深さDbは、アーク溶融の処理速度に反
比例し、アーク電流値に比例する。また、MMC層17
の深さDbは、アーク溶融時のシールドガス雰囲気作り
に使用される不活性ガスの種類により左右される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】アルミニウム製シリン
ダヘッドの再溶融処理でMMC層が形成された被処理部
の、要求される耐熱亀裂性に必要なMMC層の深さは約
5mm以上であるとされている。そこで、MMC層が必
要な深さ以上になるようにアーク処理電流値を増大、又
は、アーク溶融の処理速度を遅くして、被処理部への入
熱量を増大させている。ところが、処理電流値を増大さ
せたり、処理速度を遅くして入熱量を増大させると、被
処理部の入熱量が過大になり、MMC層の表面に目立っ
たビード凹凸が生じて、黒皮残りが発生したり被処理部
が溶け落ちたりして品質が安定しない不具合があった。
また、MMC層表面の凹凸を見越して、再溶融処理後に
仕上げ切削加工するときの加工代を大きくする必要があ
って、シリンダヘッドの材料費と加工費の両方で不利と
なる問題もあった。またMMC層17を形成する場合は
ノズル15から供給される金属の粉末16の一部がTI
Gトーチ14で吹き飛ばされてしまう問題があった。
【0008】なお、再溶融処理時に使用される不活性ガ
スは安価なアルゴンが普通で、高価なヘリウムを使用す
れば電位傾度の関係で再溶融深さを深くできることが知
られてはいるものの、コスト高となるため実際には使用
されていない。
【0009】本発明の目的は、アルミニウム製シリンダ
ヘッドのMMC層を伴う再溶融処理深さを、入熱量を増
大させないで深くする方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、アルミニウム
製シリンダヘッドの部分的な被処理部を再溶融して増強
する再溶融処理方法であって、被処理部にシリンダヘッ
ド鋳造時に形成された、周囲に凸壁を有する凹部の底
に、アルミニウムと複合化する金属或いはセラミックス
のプリフォームを設置し、凹部の凸壁と凹底部を高密度
エネルギーの照射で加熱溶融して、この溶融アルミニウ
ムで凹部を埋めると共に、凹部内にアルミニウムとプリ
フォームの金属基複合材料(MMC)層を形成したこと
を特徴とする。
【0011】
【作用】アルミニウム製シリンダヘッドの被処理部に形
成された凹部の周囲の凸壁と凹部底を高密度エネルギー
で加熱溶融すると、凸壁の溶融金属が凹部内に流れ込ん
でプリフォームに含浸複合してMMC層を形成し、この
MMC層で被処理部が増強される。このときの再加熱に
要するエネルギーは、凹部の凸壁や凹部の底を溶融させ
る程度の低エネルギーでよくて、入熱量が少なくて済
む。
【0012】また、MMC層を形成するためのプリフォ
ームは凹部の底に在るために、MMC層の深さが凹部の
底の深さ相当となり、凹部を深く形成しておくことでM
MC層が十分に深く形成される。MMC層は、凸壁の再
溶融したものと、凹部の底面を再溶融したもので2層的
に形成されて、MMC層による被処理部の増強効果が増
大する。またプリフォームは粉末のようにTIGトーチ
によって簡単に吹き飛ばされる心配がない。
【0013】
【実施例】以下、本発明製造方法の具体的実施例を図1
と図2(a)〜(e)を参照して説明する。
【0014】図1はアルミニウム製シリンダヘッド1の
部分平面が示され、図2(a)はシリンダヘッド1の被
処理部2の断面が示される。被処理部2は、例えばシリ
ンダヘッド1の吸気孔11と排気孔12の間の狭い部分
である。本発明においては、被処理部2に所定の深さの
凹部3と、その周囲に所定高さ、幅の凸壁4をシリンダ
ヘッド1の鋳造時に形成しておく。
【0015】被処理部2を再溶融処理する際に、凹部3
の底に凹部3の内部形状に合わせた定量のプリフォーム
5を置く。プリフォーム5は、Cu−Ni,Cu,N
i,Cr等のアルミニウムと合金化する金属か、セラミ
ックスのMMC形成材料である。プリフォーム5は、メ
ッシュ状に成形されたものが、溶融アルミニウムが全体
に含浸して、MMCを早急に、確実に形成する上で望ま
しい。
【0016】再溶融処理は、被処理部2の凸壁4の外近
傍の表面層から凹部3の底に向けて、不活性ガス雰囲気
中で高密度エネルギーを照射して、被処理部2を順に再
溶融する。即ち、図2(b)〜(d)に示すように、被
処理部2の真上でTIGトーチ6を移動させて、被処理
部2を順にアーク溶融させる。
【0017】詳しくは、図2(b)に示すように、凸壁
4の外近傍の表面層がアーク溶融してアルミニウムの溶
融プール7が形成される。TIGトーチ6の移動で溶融
プール7が凸壁4に達して、凸壁4が溶融し、この溶融
アルミニウムは図2(c)に示すように凹部3の中に流
れ込み、凹部3を埋めていくと共に、メッシュ状のプリ
フォーム5に含浸して、プリフォーム5と溶融アルミニ
ウムのMMC層8が形成される。
【0018】TIGトーチ6がプリフォーム5上に移動
する間に、凹部3の凹底部がアーク溶融されて、この凹
底部の溶融アルミニウムとでMMC層8が形成される。
図2(d)に示すように、TIGトーチ6が残りの凸壁
4に達すると、凸壁4がアーク溶融して凹部3を埋め、
プリフォーム5とMMC層8を形成する。全ての凸壁4
が溶融して、被処理部2の全域の再溶融処理が完了す
る。被処理部2は、図2(e)に示すように、内部がM
MC層8で増強された、表面がほぼ平坦な部分となる。
【0019】被処理部2のMMC層8は、凸壁4からの
溶融アルミニウムによるMMC層8と、凹部3の凹底部
の溶融アルミニウムによるMMC層8で2層的に形成さ
れて、被処理部2を効果的に増強する。また、凹部3の
凹底部の再溶融による増強効果も加わって、被処理部2
の再溶融処理による増強効果が顕著となる。
【0020】被処理部2でのMMC層8の深さDaは、
当初の凹部3の底の深さに凹底部の再溶融深さを追加し
た深さに相当するため、シリンダヘッド鋳造時に凹部3
を底の深いものに形成しておくと、MMC層8の深さD
aが簡単、確実に大きく設定できる。この深さDaの増
大の分に相応して、被処理部2の耐熱亀裂性が改善され
る。
【0021】また、TIGトーチ6で被処理部2をアー
ク溶融するに要するエネルギーは、凹部3の周囲の凸壁
4と凹部3の凹底部だけであり、これらの溶融に要する
エネルギーは少なくて済む。即ち、MMC層8の深さD
aを考慮すること無く、凸壁4と凹部3の底を浅く溶融
させるだけでよいので、再溶融に要するエネルギーが少
なくできる。その結果、被処理部2の入熱量が過大とな
らず、被処理部2の表面にビード凹凸による黒皮残りを
発生させずに、深いMMC層8を形成することが可能と
なり、また、再溶融処理後に仕上げ切削加工するときの
加工代を大きくする必要が無くなる。
【0022】また、再溶融処理された被処理部2のMM
C層8の深さDaは、凹部3の底の深さで決められるか
ら、再溶融処理時にシールドガス雰囲気作りに使用する
不活性ガスは、安価なアルゴンで間に合い、再溶融処理
費を安くできる。
【0023】次に、本発明方法と従来方法の実験データ
を、表1に基づき説明する。
【0024】
【表1】
【0025】表1の実験データは、要求される耐熱亀裂
性に必要なMMC層深さが5.5mm以上を合格とした
ものである。この場合、従来品B,Cにおいては、TI
Gトーチ移動速度が速くて被処理部の入熱量が過大とな
らず、処理面の凹凸が小さいが、MMC層が5mm未満
と浅くしか形成されず、要求される耐熱亀裂性が得られ
ない。従来品Dにおいては、MMC層深さが5.5mm
を超えて要求される耐熱亀裂性が得られるが、処理電流
値が大きく、TIGトーチ移動速度が遅くて入熱量が過
大となり、処理表面に2mmを超す顕著な凹凸が生じ
て、処理後に黒皮残りが生じたりする。
【0026】本発明品Aにおいては、処理電流値を小さ
く、TIGトーチ移動速度を速くして入熱量を少なくし
たにもかかわらず、MMC層深さが7.5mmと大幅に
増大して、耐熱亀裂性が格段に向上することが確認され
た。また、入熱量が少ないので、処理面の凹凸が問題無
いほど小さくなる。
【0027】なお、本発明は請求項1記載の他、次のよ
うに構成することも可能である。
【0028】プリフォームがメッシュ状である請求項1
記載のアルミニウム製シリンダヘッドの製造方法。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、アルミニウム製シリン
ダヘッドの被処理部に形成された凹部にプリフォームを
入れて、凹部周囲の凸壁と凹底部を加熱溶融し、溶融し
た金属と凹部内のプリフォームでMMC層を形成するよ
うにしたので、MMC層の深さが凹部の深さ相当にな
り、凹部の深さを大きく設定しておくことでMMC層の
深さが耐熱亀裂性に必要な値に簡単、確実にできて、ア
ルミニウム製シリンダヘッドの耐熱亀裂性の改善が簡単
に達成される。また、被処理部の再加熱に要するエネル
ギーは、凹部の凸壁や凹底部を少し溶融させる程度の低
エネルギーで十分であるので、被処理部での入熱量が少
なくなって、被処理部表面にビード凹凸による黒皮残り
が発生する不具合が無くなり、再溶融処理後の仕上げ切
削加工の手間が軽減される。
【0030】また、被処理部のMMC層の深さは、凹部
の底の深さで決められる結果、再溶融処理時のシールド
ガス雰囲気作りに使用する不活性ガスは、安価なアルゴ
ンで十分に間に合い、高品質アルミニウム製シリンダヘ
ッドを安価に製作できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明製造方法を実施するために適応させたア
ルミニウム製シリンダヘッドの部分平面図。
【図2】本発明製造方法を説明するための各製造過程で
の断面図で、(a)は図1A−A線に沿う拡大断面図、
(b)〜(e)は図2(a)の部分の再溶融処理過程で
の断面図。
【図3】アルミニウム製シリンダヘッドの部分平面図。
【図4】(a)は図3B−B線に沿う拡大断面図、
(b)は図4(a)の部分の従来方法による再溶融処理
時の断面図。
【符号の説明】 1 シリンダヘッド 2 被処理部 3 凹部 4 凸壁 5 プリフォーム 6 TIGトーチ 8 金属基複合材料層(MMC層)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム製シリンダヘッドの部分的
    な被処理部を再溶融して増強する再溶融処理工程におい
    て、 被処理部にシリンダヘッド鋳造時に形成された、周囲に
    凸壁を有する凹部の底に、アルミニウムと複合化する金
    属或いはセラミックスのプリフォームを設置し、凹部の
    凸壁と凹底部を高密度エネルギーの照射で加熱溶融し
    て、この溶融アルミニウムで凹部を埋めると共に、凹部
    内にアルミニウムとプリフォームの金属基複合材料層を
    形成することを特徴とするアルミニウム製シリンダヘッ
    ドの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010112553A3 (de) * 2009-04-03 2011-01-06 Siemens Aktiengesellschaft Verfahren zum schweissen einer vertiefung eines bauteiles durch ausserhalb oder um die kontur angelegte schweissbahnen; entsprechender bauteil

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010112553A3 (de) * 2009-04-03 2011-01-06 Siemens Aktiengesellschaft Verfahren zum schweissen einer vertiefung eines bauteiles durch ausserhalb oder um die kontur angelegte schweissbahnen; entsprechender bauteil
US8866042B2 (en) 2009-04-03 2014-10-21 Siemens Aktiengesellschaft Welding method and component

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