JPH08133158A - 自動二輪車 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 スクータータイプの自動二輪車に対して、空
冷効果が充分与えられるようにリザーバータンクを配置
して、リザーバータンク付油圧緩衝器をクッションユニ
ットのショックアブソーバーとして使用する。 【構成】 シート６の下方に配置された動力系ユニット
７が、後輪８を後端に軸着したスイングアームとして、
車体フレームに揺動自在に枢着されており、マフラーと
は反対側の車体側方で、動力系ユニット７の後部と車体
フレームの間に、コイルスプリング２３と油圧緩衝器２
１からなるクッションユニット２０が設置されていて、
シート６の下方がカバー１５で覆われている自動二輪車
１において、油圧緩衝器２１にはクッションユニット２
０の上部後側に位置してリザーバータンク２２を付設
し、シート６下方を覆うカバー１５の下端縁１５ａを前
から後に向かって斜め上方に傾斜させ、リザーバータン
ク２２を、カバー１５の下端縁１５ａから下方に露出さ
れた状態で、後輪８のタイヤ部８ａ側方に配置する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、エンジンとミッション
を含む動力系ユニットが、後輪を後端に軸着したスイン
グアームとして、車体フレームに揺動自在に枢着されて
いるスクータータイプの自動二輪車に関し、特に、リザ
ーバータンク付油圧緩衝器を設置したスクータータイプ
の自動二輪車に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動二輪車のリアサスペンションにショ
ックアブソーバーとして使用される油圧緩衝器の一つと
して、ピストンロッドの侵入体積変化や温度変化などに
よるシリンダ内部の油量変動を補償するために、モノチ
ューブからなるシリンダケースの内部を、シリンダケー
スとは別に設けたリザーバータンク内に連通させて、シ
リンダケース内での油量変動に相当する分のオイルをリ
ザーバータンク内に出入させるリザーバータンク付の油
圧緩衝器というものが従来から一般的に知られている。

【０００３】このようなリザーバータンク付の油圧緩衝
器は、インナーチューブ（シリンダケース）とアウター
チューブの間にリザーバ室を形成した複筒式の油圧緩衝
器と比べて、シリンダケースを小径としても全体の油量
を増やすことができ、しかも、シリンダケース内のオイ
ルをリザーバータンクに逃がして冷却することができる
ため、サスペンションの上下動の繰り返しにより生じる
オイル温度の上昇を抑えて、オイル温度の上昇によるオ
イル粘度の変化によって起きる所謂熱ダレを防止するの
に有効なものである。

【０００４】しかしながら、上記のようなリザーバータ
ンク付油圧緩衝器は、所謂オートバイタイプの自動二輪
車には使用されているものの、エンジンとミッションを
含む動力系ユニットを後輪のスイングアームとしている
スクータータイプの自動二輪車には従来は使用されてい
ない。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】すなわち、オートバイ
タイプの自動二輪車では、リアクッションユニットが車
体側方に大きく露出されていることが多く、リザーバー
タンクが充分空冷されるようにリザーバータンク付油圧
緩衝器を設置することが容易である一方、スクータータ
イプの自動二輪車では、通常、車体側方に突出した動力
系ユニットの側面やシート下方のカバーの側面よりも車
体内側に引っ込んだ状態でクッションユニットが設置さ
れているため、油圧緩衝器にリザーバータンクを付設し
ようとすると、リザーバータンクを充分空冷できるよう
に配置スペースを取るのが困難であり、空冷効果が余り
期待できないと考えられていたからである。

【０００６】本発明は、上記のような従来のスクーター
タイプの自動二輪車の持つ不都合を解消することを目的
としており、より具体的には、空冷効果が充分与えられ
るようにリザーバータンクを配置して、リザーバータン
ク付油圧緩衝器をクッションユニットのショックアブソ
ーバーとして使用したスクータータイプの自動二輪車を
提供することを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決しかつ目的を達成するために、シートの下方に配置
された動力系ユニットが、後輪を後端に軸着したスイン
グアームとして、車体フレームに揺動自在に枢着されて
おり、マフラーとは反対側の車体側方で、動力系ユニッ
トの後部と車体フレームの間に、コイルスプリングと油
圧緩衝器からなるクッションユニットが設置されてい
て、シートの下方がカバーで覆われている自動二輪車に
おいて、油圧緩衝器にはクッションユニットの上部後側
に位置してリザーバータンクが付設されており、シート
下方を覆うカバーの下端縁が前から後に向かって斜め上
方に傾斜していて、リザーバータンクが、カバーの下端
縁から下方に露出された状態で、後輪のタイヤ部側方に
配置されていることを特徴とするものである。

【０００８】

【作 用】上記のような構成により、マフラーによる排
気熱の影響を受けることがなく、車体シートの下方を覆
うカバーに邪魔されずにリザーバータンクが配置され、
リザーバータンクがカバーから下方に露出しているため
にリザーバータンクの熱が籠もるようなことがなく、後
輪の回転によってタイヤ部の側方に起こされる空気の流
れにリザーバータンクが曝されることによって、リザー
バータンクが効果的に空冷されることとなる。

【０００９】

【実施例】以下、本発明の自動二輪車の実施例について
図面に基づいて説明する。

【００１０】図１は、本発明の自動二輪車の一実施例を
示すもので、自動二輪車１は、車体の前部に、前輪２を
下端に軸着したフロントフォーク３やその上方の操向ハ
ンドル部４が配置され、それに続く車体の中央に、低い
位置で両足が載置できる広いステップ５が形成され、ス
テップ５に続く車体の後部に、ステップ５に両足を載せ
た状態で腰掛けられるようにシート６が配置され、シー
ト６の下方に、エンジンとミッションを含む動力系ユニ
ット７が車体フレームに揺動自在に枢着され、動力系ユ
ニット７の後端に後輪８が軸着されているスクータータ
イプの自動二輪車である。

【００１１】このスクータータイプの自動二輪車１の車
体フレームは、図２に示すように、ステアリングヘッド
パイプ１１から下方に延びたダウンチューブ１０ａが下
方で大きく屈曲し、このダウンチューブ１０ａの屈曲部
の後方にステップを下方から支える左右に分かれたアン
ダーフレーム部分１０ｂが接続され、当該部分１０ｂの
後端から一旦上方に屈曲してから再び水平に近く屈曲し
て、シート下方のフレーム部分１０ｃがアンダーフレー
ム部分１０ｂに連続して形成されているアンダーボーン
形のフレームである。

【００１２】そして、この車体フレーム１０のシート下
方部分１０ｃの前端付近に、取付ブラケット１２を介し
て、前端にエアクリーナー９が付設されてその内部にエ
ンジンとミッションが収納された動力系ユニット７が、
その後端に後輪８が軸着されてスイングアームとして機
能するように、略水平状態にピボット軸１３により揺動
自在に枢着されている。

【００１３】動力系ユニット７と車体フレーム１０の間
には、その上端部がフレームのシート下方部分１０ｃの
後端付近に形成された取付部１４に枢着され、その下端
部が動力系ユニット７の後端付近に形成された取付部１
５に枢着されることによって、クッションユニット２０
が設置されている。なお、このクッションユニット２０
が設置されているのは、図３に示すように、マフラー１
６とは反対側の車体側方である。

【００１４】図４は、上記のクッションユニット２０自
体の構造を示すもので、クッションユニット２０は、油
圧緩衝器本体２１とリザーバータンク２２とコイルスプ
リング２３を主要部として構成され、その上端には、車
体フレーム（シート下方部分１０ｃの後端付近）の取付
部１４に枢着するための車体取付部２４が設けられ、そ
の下端には、動力系ユニット（スイングアーム）７の取
付部１５に枢着するためのスイングアーム取付部２５が
設けられている

【００１５】クッションユニット２０の油圧緩衝器本体
２１は、モノチューブからなるシリンダケース２６の下
端からピストンロッド２７がシリンダケース２６内に出
入自在に貫通されているもので、ピストンロッド２７の
下端には、ロックナット２８とスイングアーム取付部２
５がスプリングガイド２９を挟み込んで螺着され、ロッ
クナット２８の上方にストッパー３０が設置されてい
て、ピストンロッド２７の上端にはピストン３１が形成
されている。

【００１６】ピストン３１は、図５に示すように、シリ
ンダケース２６内を上方油室２６ａと下方油室２６ｂに
区画して上下に摺動するもので、ピストン３１にはオイ
ル通過孔３１ａと一方向弁３１ｂが形成されており、ピ
ストン３１付近のピストンロッド２７には、ピストン３
１によって区画された上方油室２６ａと下方油室２６ｂ
を連通する絞り孔２７ａが形成されていて、一方向弁３
１ｂは、図５（Ａ）に示すように、シリンダケース２６
内でピストン３０が上昇するときに開き、図５（Ｂ）に
示すように、ピストン３０が下降するときに閉じるよう
に、オイル通過孔３１ａの下端開口部に形成されてい
る。

【００１７】シリンダケース２６には、その下端のピス
トンロッド２７が貫通される部分に、密封性を保った状
態でピストンロッド２７を摺動自在に保持できるよう
に、軸受部３２とシール部３３が設けられており、その
上端に鋼材製のボス部３４が抵抗溶接等により一体的に
固着されていて、ボス部３４には、その上端に車体取付
部２４が一体的に形成されており、下方に開口する空間
部３４ａが形成されていて、空間部３４ａから側方に開
口するオイル通過部３４ｂが貫通されている。

【００１８】コイルスプリング２３は、シリンダケース
２６の上端に固着されたボス部３４の鍔３４ｃによって
上方に抜け止めされているスプリングシート３５と、ピ
ストンロッド２７の下端に螺着されたスイングアーム取
付部２５とロックナット２８の間に挟み込まれたスプリ
ングガイド２９によって、油圧緩衝器本体２１のシリン
ダケース２６とピストンロッド２７の外側を囲むように
設置されている。

【００１９】リザーバータンク２２は、底部が開放され
たタンク本体４１と、ボス部３４の外周に嵌合される連
結部４２とが、アルミダイキャストのモノブロックとし
て一体的に形成されているもので、連結部４２には、ネ
ジ栓４３により外部に対して開閉自在に閉鎖されたオイ
ル通路４２ａが、ボス部３４のオイル通過部３４ｂとリ
ザーバータンク２２内とを連通するように形成されてい
る。

【００２０】また、タンク本体４１の外周面には、リザ
ーバータンク２２の空冷効果を高めるために、冷却フィ
ン４１ａが一体的に形成されている。

【００２１】リザーバータンク２２のタンク本体４１内
には、断面が逆Ｕ字状に上方に膨出した形状の可撓性の
膜体４４と、膜体４４との間に密閉空間部２２ｂを形成
するためのハウジングキャップ４５が、タンク本体４１
の開放された底部から挿入され、ハウジングキャップ４
５がリング部材４６でタンク本体４１に固定されること
により、膜体４４の上方にシリンダケース２６内と連通
する油室２２ａが、膜体４４の下方にＮ₂ ガス等の気体
が充填されるガス室２２ｂが、それぞれ区画形成されて
いる。

【００２２】ハウジングキャップ４５には、ガス室２２
ｂ内にＮ₂ ガス等を充填するための孔４５ａが開けられ
ており、ガスの充填が可能でガス充填後にはガス室が密
封されるように、孔４５ａはラバーバルブ４７によって
閉鎖されていて、ガス充填後に孔４５ａは外方からリベ
ット４８で閉鎖されている。

【００２３】上記のような構造のリザーバータンク２２
は、ボス部３４のオイル通過部３４ｂとリザーバータン
ク２２のオイル通路４２ａの位置が一致するように、ボ
ス部３４の外周にリザーバータンク２２の連結部４２が
嵌合され、サークリップ４９で固定されることにより、
油圧緩衝器本体２１に対して一体的に組付けられてい
る。

【００２４】上記のようにリザーバータンク２２が油圧
緩衝器本体２１に組付けられたクッションユニット２０
では、圧縮行程で、シリンダケース２６内に進入してく
るピストンロッド２７の体積分のオイルを排出するため
に、シリンダケース２６内のオイルが、ボス部３４のオ
イル通過部３４ｂから連結部４２のオイル通路４２ａを
通ってリザーバータンク２２内に流入し、伸長行程で、
シリンダケース２６内から抜けていくピストンロッド２
７の体積分のオイルを補償するために、リザーバータン
ク２２内のオイルが、オイル通路４２ａ，オイル通過部
３４ｂを通ってシリンダケース２６内に流入することと
なる。

【００２５】ところで、シート６や動力系ユニット７が
配置されている車体の後部には、図１に示すように、ス
テップ４に続くシート６の下方が、動力系ユニット７の
上方までシートカウル１５で覆われており、シートカウ
ル１５は、その下端縁１５ａが前から後に向かって斜め
上方に傾斜するように、車体後方に行くにしたがって尻
上がりな形状に形成されている。

【００２６】そして、車体フレーム１０のシート下方部
分１０ｂの後部と動力系ユニット７の後部に渡って取付
けられたクッションユニット２０は、その大部分がシー
トカウル１５の下端縁１５ａから下方に露出されてい
て、リザーバータンク２２は、シートカウル１５から下
方に完全に露出された状態で、油圧緩衝器本体２１およ
びコイルスプリング２３の上部後側で、後輪８のタイヤ
部８ａの側方に配置されている。

【００２７】上記のようにリザーバータンク付油圧緩衝
器を有するクッションユニット２０が配置された本実施
例の自動二輪車によれば、クッションユニット２０がマ
フラー１６による排気熱の影響を受けることがなく、ま
た、クッションユニット２０の大部分がシートカウル１
５から下方に露出されているため、クッションユニット
２０の熱がシートカウル１５内に籠もるようなことがな
く、リザーバータンク２２を配置するスペースを確保す
ることもできる。

【００２８】そして、図３に示すように、シートカウル
１５の側面や動力系ユニット７の側面が突出していて前
方や下方からの走行風の流れが当たりにくい位置にクッ
ションユニット２０が配置されているにもかかわらず、
図１に示すように、リザーバータンク２２が、クッショ
ンユニット２０の上部後側で、後輪８のタイヤ部８ａ側
方に配置されているため、後輪８の回転によってタイヤ
部８ａの側方に起こされる後方からの空気の流れにリザ
ーバータンク２２が曝されることとなり、リザーバータ
ンク２２は充分に空冷されることとなる。

【００２９】

【発明の効果】以上説明したような本発明の自動二輪車
によれば、スクータータイプの自動二輪車に対して、リ
ザーバータンクの配置スペースを無理なく取ることがで
きて、リザーバータンク付油圧緩衝器をショックアブソ
ーバーとして使用したクッションユニットを設置するこ
とができ、そのリザーバータンクに対して充分な空冷効
果を与えることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の自動二輪車の一実施例を示す側面図。

【図２】図１に示した自動二輪車の車体フレームとスイ
ングアーム（動力系ユニット）とクッションユニットの
取付状態を示す側面図。

【図３】図１に示した自動二輪車の後面図。

【図４】図１に示した自動二輪車に設置されているクッ
ションユニットの構造を示す一部断面側面図。

【図５】図４に示したクッションユニットの油圧緩衝器
のピストン付近における（Ａ）圧縮行程時の状態，およ
び（Ｂ）伸長行程時の状態を示す一部拡大断面図。

【符号の説明】

１ 自動二輪車 ６ シート ７ 動力系ユニット（スイングアーム） ８ 後輪 ８ａ 後輪のタイヤ部 １０ 車体フレーム １５ シートカウル（カバー） １５ａ シートカウル（カバー）の下端縁 １６ マフラー ２０ クッションユニット ２１ 油圧緩衝器本体 ２２ リザーバータンク ２３ コイルスプリング

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シートの下方に配置された動力系ユニッ
   トが、後輪を後端に軸着したスイングアームとして、車
   体フレームに揺動自在に枢着されており、マフラーとは
   反対側の車体側方で、動力系ユニットの後部と車体フレ
   ームの間に、コイルスプリングと油圧緩衝器からなるク
   ッションユニットが設置されていて、シートの下方がカ
   バーで覆われている自動二輪車において、油圧緩衝器に
   はクッションユニットの上部後側に位置してリザーバー
   タンクが付設されており、シート下方を覆うカバーの下
   端縁が前から後に向かって斜め上方に傾斜していて、リ
   ザーバータンクが、カバーの下端縁から下方に露出され
   た状態で、後輪のタイヤ部側方に配置されていることを
   特徴とする自動二輪車。