JPH08131157A - マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼ並びにこれら酵素の生産能を有するプレシオモナス属新菌株 - Google Patents

マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼ並びにこれら酵素の生産能を有するプレシオモナス属新菌株

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JPH08131157A
JPH08131157A JP23245795A JP23245795A JPH08131157A JP H08131157 A JPH08131157 A JP H08131157A JP 23245795 A JP23245795 A JP 23245795A JP 23245795 A JP23245795 A JP 23245795A JP H08131157 A JPH08131157 A JP H08131157A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 新規なマルトースホスホリラーゼ及びトレハ
ロースホスホリラーゼを高い生産性で生成し得る新規微
生物、前記新規な酵素、並びにこれら酵素の製造方法の
提供。 【解決手段】 マルトースホスホリラーゼ及びトレハロ
ースホスホリラーゼ生産能を有し、プレシオモナス(Pl
esiomonas )属に属する微生物(生命研条寄第5144
号)。この微生物から得られた新規なマルトースホスホ
リラーゼ及びトレハロースホスホリラーゼ。上記微生物
を培養する前記酵素の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な微生物、新
規な酵素及び新規な酵素の製造方法に関する。更に詳し
くは、トレハロースを酵素的に生産する場合に必要なマ
ルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラ
ーゼの生産能を有するプレシオモナス(Plesiomonas) 属
に属する新規微生物、この微生物から得られる新規なマ
ルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラ
ーゼ、並びにこれら酵素の製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】トレ
ハロースは、医薬、化粧品、食品などに広い用途が期待
されている物質である。そこで、トレハロースを工業的
に生産する多くの試みがなされてきた。これらの技術は
大別して三つに分類する事ができる。その一つはトレハ
ロースを菌体内に蓄積する性質を有する微生物から該物
質を抽出精製する方法である〔ジャーナル・オブ・アメ
リカン・ケミカル・ソサエテー(J.Am.Chem.Soc.)72巻,
2059頁、1950年、ドイツ特許第266584号、特開平
3−130084号、特開平5−91890号、特開平
5−184353号、特開平5−292986号〕。こ
の方法は、微生物の培養工程、微生物の分離工程、微生
物からのトレハロースの抽出工程、抽出したトレハロー
スの精製結晶化工程から構成されており、製造工程が非
常に煩雑である。しかも、トレハロースの生産性も他の
方法に比較して少ないばかりでなく、多量の微生物抽出
残査が廃棄物として発生する事から経済的に効率の良い
方法とは言えなかった。
【0003】また、他の方法として、トレハロースを菌
体外(培地中)に生産する微生物が検索され、ブレビバ
クテリウム(Brevibacterium)属やコリネバクテリウム(C
orynebacterium) 属等の微生物を培養してトレハロース
を菌体外(培地中)に生産させる発酵法が開発されてい
る〔特開平5−211882号〕。しかしながら、本方
法においてもトレハロースの培地中への蓄積率は約3%
(w/v)程度と低収率であることから工業的規模でト
レハロースを大量生産するためには大容量の発酵槽とそ
れに見合う精製設備が必要であり経済的に問題がある。
しかも、本方法においても精製したトレハロースを得る
ためには除菌操作が必要とされるばかりでなく、培養時
に使用菌株が生産するトレハロース以外の夾雑物あるい
は培地成分等の除去に煩雑な工程を必要としている。
【0004】一方、これら発酵法の種々の問題点を一挙
に解決する方法として酵素法が既に開発されている。こ
れには、微生物由来のマルトースホスホリラーゼ(Malto
se:orthophosphate β-D-glucosyltransferase) と藻類
由来のトレハロースホスホリラーゼ( α, α-Trehalos
e:orthophosphate β-D-glucosyltransferase) を燐酸
存在下でマルトースに作用させてトレハロースを生産す
る方法(特許第1513517号、Agri.Biol.Chem.,49
巻, 2113頁, 1985年) 、および細菌由来のシュークロー
ズホスホリラーゼ(Sucrose:orthophosphate α-D-gluco
syltransferase)と担子菌由来のトレハロースホスホリ
ラーゼ( α, α-Trehalosep:orthophosphateα-D-gluco
syltransferase) を燐酸存在下で蔗糖に作用させてトレ
ハロースを得る方法(平成6年度日本農芸化学会大会講
演要旨集、3Ra14)とが報告されている。
【0005】これらの方法によればマルトースあるいは
蔗糖から60〜70%の高い収率でトレハロースが生成
する事が報告されている。また、本方法は使用する原料
が精製された高純度の糖質であることから、酵素反応に
より得られるトレハロースの精製も容易であり、他の方
法に比較して工業的に有利な方法と考えられている。し
かしながら、これらの方法においても使用される酵素、
特に、トレハロースホスホリラーゼの供給源はユーグレ
ナやマイタケなどのように藻類や担子菌であり、これら
から酵素を生産するためには経済的な問題ばかりでなく
技術的にも困難な点があった。しかも、得られるトレハ
ロースホスホリラーゼやこれに組み合わせて用いられる
シュークローズホスホリラーゼやマルトースホスホリラ
ーゼはそれぞれの酵素の至適pH領域が大きく異なるた
めに組み合わせて使用する際のpH管理が非常に困難で
あるばかりでなく、温度に対する安定性も非常に低く、
トレハロースの生成反応は25〜37℃程度の低温下で
しか行えなかった。このことは解放型の反応槽を用いて
行われる酵素反応時に雑菌汚染が起こることを示唆して
おり、これによる副次的な反応を防止するために厳密な
衛生管理を必要とする等の欠点を有している。さらに
は、これら公知の酵素を組み合わせて用いる場合、これ
らの酵素の有する基質濃度依存性の為に高濃度の原料が
使用出来なかった。この為、この方法も経済的に効率の
良い方法とは言えなかった。
【0006】以上のことから、製造および精製が容易
で、高い熱安定性を有し、基質濃度依存性が無い新たな
マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリ
ラーゼを見出すことができれば、容易に且つ大量に入手
できるマルトースを原料として高収率でしかも容易に且
つ効率よくトレハロースを製造することができる。
【0007】そこで、本発明の第一の目的は、上記の各
種条件を満足する新規な酵素、マルトースホスホリラー
ゼおよびトレハロースホスホリラーゼを高い生産効率で
生成し得る新規微生物を提供することにある。本発明の
第二の目的は、製造および精製が容易で、高い熱安定性
を有し、基質濃度依存性が無い新たなマルトースホスホ
リラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを提供する
ことにある。さらに本発明の第三の目的は、上記微生物
を用いて、上記2種類の酵素を簡単且つ高い収率で得る
製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、工業的に
使用するためのマルトースホスホリラーゼおよびトレハ
ロースホスホリラーゼが具備すべきこれらの諸性質を有
する酵素を生産する能力を持つ微生物を得るべくして広
く天然界を検索した。その結果、プレシオモナス属に属
する微生物が上記要件を備えた両酵素を著量生産するこ
とを見い出し、本発明を完成せしめたものである。
【0009】即ち、本発明は、マルトースホスホリラー
ゼおよびトレハロースホスホリラーゼ生産能を有し、プ
レシオモナス(Plesiomonas) 属に属する微生物、生命研
条寄第5144号に関する。
【0010】さらに本発明は、以下に示す理化学的性質
を有するマルトースホスホリラーゼに関する。 (イ)作用:マルトース中のα−1,4−グルコピラノ
シド結合を燐酸存在下で可逆的に加燐酸分解し、グルコ
ースおよびβ−D−グルコース1−燐酸を生成する。 (ロ)基質特異性(分解反応):マルトースに作用し、
他の二糖類に作用しない。 (ハ)至適pHおよび安定pH範囲:分解反応の至適p
Hは7.0〜7.5であり、合成反応の至適pHは6.
0である。50℃、10分間の加熱条件下ではpH5.
5〜7.0の範囲内で安定である。 (ニ)温度に対する安定性:pH6.0、15分間の加
熱条件下では45℃まで安定である。 (ホ)作用適温の範囲:50℃近傍に分解反応の至適作
用温度を有し、合成反応の作用適温は50〜55℃であ
る。 (ヘ)失活条件:50℃、10分間の加熱条件下ではp
H5.0および8.0で完全に失活する。また、pH
6.0、15分間の処理では55℃で完全に失活する。 (ト)阻害:銅、水銀、カドミウム、亜鉛、N−ブロモ
サクシニイミド、p−クロロマーキュリベンゾエイト、
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムで阻害される。 (チ)アイソエレクトロフォーカシング法による等電
点:3.8 (リ)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子
量:約92,000(ゲル濾過法による分子量は約20
0,000であり、2ケのサブユニットから構成されて
いる)。
【0011】さらに本発明は、以下に示す理化学的性質
を有するトレハロースホスホリラーゼに関する。 (イ)作用:トレハロース中のα−1,1−グルコピラ
ノシド結合を燐酸存在下で可逆的に加燐酸分解し、グル
コースおよびβ−D−グルコース1−燐酸を生成する。 (ロ)基質特異性(分解反応):トレハロースに作用
し、他の二糖類に作用しない。 (ハ)至適pHおよび安定pH範囲:分解および合成反
応の至適pHは7.0である。50℃、10分間の加熱
条件下ではpH6.0〜9.0の範囲内である。 (ニ)温度に対する安定性:pH7.0、15分間の加
熱条件下では50℃まで安定である。 (ホ)作用適温の範囲:分解反応及び、合成反応の作用
適温は50〜55℃である。 (ヘ)失活条件:50℃、10分間の加熱条件下ではp
H5.0および9.5で完全に失活する。また、pH
7.0、15分間の処理では55℃で完全に失活する。 (ト)阻害:銅、水銀、カドミウム、亜鉛、N−ブロモ
サクシニイミド、p−クロロマーキュリベンゾエイトで
阻害される。 (チ)アイソエレクトロフォーカシング法による等電
点:4.5 (リ)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子
量:約88,000(ゲル濾過法による分子量は約20
0,000であり、2ケのサブユニットから構成されて
いる)。
【0012】加えて本発明は、前記プレシオモナス(Ple
siomonas) 属に属する本発明の微生物を培養し、前記本
発明のマルトースホスホリラーゼおよび前記本発明のト
レハロースホスホリラーゼの少なくとも1つを生成・蓄
積させ、これを採取することを特徴とするマルトースホ
スホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼの製造
方法に関する。以下本発明について説明する。
【0013】本発明の新規菌株は、本発明者等により静
岡県富士市田子の浦海岸の汚泥中から新たに単離された
ものである。この菌株は、バージェーズ・マニュアル・
オブ・デターミネイティブ・バクテオロジー(Bergey's
Mannual of Determinative Bacteriolgy) 、第8版、第
1巻に従って同定すると、単離した菌株の菌学的諸性質
を以下の表1に示しているように、プレシオモナス(Ple
seiomonas)属に属し、P.shigelloidesの類縁菌と同定さ
れた。しかしながら、VPテストおよびウレアーゼテス
トが陽性であること、並びに、D−マンノース、D−ガ
ラクトース、L−アラビノース、D−フラクトースを資
化出来ること、並びに、pH9のアルカリ性条件下でも
生育出来る点において記載内容と相違しており、しか
も、トレハロースホスホリラーゼとマルトースホスホリ
ラーゼの両酵素を菌体内および培地中(菌体外)に生成
・蓄積する点で既知菌株とは大幅に異なる。なお、上記
菌株プレシオモナスSH−35は工業技術院生命工学工
業技術研究所に条寄第5144号(FERM BP-5144)として
寄託している。
【0014】
【表1】
【0015】本発明の新菌株は次のようにしてスクリー
ニングした。まず、採取海岸汚泥を整理食塩水に懸濁
し、該懸濁液1滴を以下の組成の寒天培地に塗沫した。
使用した寒天平板培地は寒天2%(w/v)、トレハロ
ースまたはマルトース1%、ポリペプトン0.5%、酵
母エキス0.5%、燐酸二カリウム0.1%、硫酸マグ
ネシウム・七水塩0.02%を含有する。かくして、寒
天平板を37℃にて好気的に培養し、平板上に現れた各
コロニーを得、各々のコロニーを寒天を除いた上記組成
の液体培地中で37℃にて24〜72時間、180r.
p.m.で振盪培養した。次いで、各培養液を12,0
00×gにて10分間、4℃で遠心分離し菌体と上澄液
とに分離した。かくして得られた菌体は少量の0.1M
燐酸緩衝液(7.0)に菌体を懸濁させ、以下に述べる
方法で活性を測定した。その結果、上記のような菌学的
諸特性を有する菌株を分離できた。
【0016】本発明の新規な微生物は、新規なマルトー
スホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを
生産する菌である。次に、これらの酵素の製造方法につ
いて説明する。本発明の微生物(FERM BP-5144)を適当な
培地に接種し、培養する。培養は、該菌体の生育温度の
観点から、25〜42℃の温度範囲とし、8〜70時間
好気的に培養することが適当である。本発明の微生物を
培養することにより、本発明のトレハロースホスホリラ
ーゼおよび/またはマルトースホスホリラーゼが生成す
る。生成する酵素の大部分は菌体内に蓄積され、一部分
は菌体外(培地中)に蓄積される。そこで、菌体内ある
いは菌体外(培地中)に生成蓄積されたマルトースホス
ホリラーゼおよび/またはトレハロースホスホリラーゼ
を採取する。また、上記培養は、バッチ式、連続式のい
ずれによっても実施することができる。
【0017】上記培養に用いる培地について説明する。
炭素源としては、トレハロースやマルトースおよびこれ
らを含有する糖質を用いることができる。窒素源には各
種有機および無機の窒素化合物を用い、さらに培地は各
種の無機塩をさらに含むことができる。炭素源としてト
レハロースもしくは該物質を含有する糖質を用いると、
本発明の微生物はトレハロースホスホリラーゼを優先的
に生産する。また、マルトースもしくは該物質を含有す
る糖質を炭素源として用いると、本発明の微生物はマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼを同時に生産する。但し、この場合、トレハロースホ
スホリラーゼの生産量は、炭素源としてトレハロースを
用いた場合に比べれば、少なくなる傾向がある。さら
に、炭素源としてトレハロースとマルトースの両者又は
これらの物質を含有する糖質を用いると、トレハロース
ホスホリラーゼとマルトースホスホリラーゼとを同時に
生産させることができ、トレハロースとマルトースの量
を制御することで、トレハロースホスホリラーゼとマル
トースホスホリラーゼの生成割合をコントロールするこ
ともできる。
【0018】また、窒素源にはコーンスチープリカー、
大豆粕、あるいは各種ペプトン類等の有機窒素源、そし
て硫安、硝安、燐安、尿素等の無機窒素源などの一般に
微生物の培養に用いられている安価な化合物が使用可能
である。なお、尿素や有機窒素源は炭素源にもなること
はいうまでもない。
【0019】本発明の方法において使用するのに適した
培地としては、例えば、トレハロースホスホリラーゼを
優先的に生産したい場合には、トレハロース1〜2%
(w/v)、酵母エキス2%、燐酸アンモニウム0.1
5%、尿素0.15%、食塩1%、燐酸二カリウム0.
1%、硫酸マグネシウム・七水塩0.02%および炭酸
カルシウム0.2%を含むpH7.0〜7.5の液体培
地を用いることが適当である。また、マルトースホスホ
リラーゼとトレハロースホスホリラーゼを同時に生産し
たい場合には、マルトース1〜2%(w/v)、ポリペ
プトンS(日本製薬製)2〜3%、燐酸アンモニウム
0.15%、尿素0.15%、食塩1%、燐酸二カリウ
ム0.1%、硫酸マグネシウム・七水塩0.02%およ
び炭酸カルシウム0.2%を含む液体培地を用いること
が適当である。
【0020】尚、前記のように、マルトースを炭素源と
して用いるとマルトースホスホリラーゼばかりでなく、
トレハロースホスホリラーゼもある程度の量生産され
る。従って、トレハロース生産用の粗酵素(マルトース
ホスホリラーゼとトレハロースホスホリラーゼとの混合
物)を得るには、マルトースを炭素源として用いことが
便利かつ経済的である。
【0021】培養菌体内又は培養上清中に蓄積した各酵
素は、常法により単離することができる。まず、菌体内
の酵素は、菌体ごと粗酵素として用いることができる。
さらに、菌体から酵素を抽出することで粗酵素を回収す
ることもできる。また、菌体外の培養上清中にも酵素は
含まれており、菌体を分離した残りの培養液を粗酵素含
有液として利用することもできる。さらに、これらの粗
酵素は、エタノール、アセトン、イソプロパノール等に
よる溶媒沈澱法、硫安分画法、イオン交換クロマトグラ
フィー、ゲル濾過クロマトグラフィー等の通常の方法を
用いて、精製することができる。さらに、マルトースホ
スホリラーゼとトレハロースホスホリラーゼとの分離
は、両者の等電点が異なることから、陰イオン交換クロ
マトグラフィーにより行うことができる。
【0022】このようにして得られる本発明の酵素は、
後述の実施例において詳細に説明するように、前記の理
化学的性質を有するマルトースホスホリラーゼ及びトレ
ハロースホスホリラーゼである。これらの酵素の活性測
定は、本発明のプレシオモナスSH−35株がマルトー
スやトレハロースを加水分解するα−グルコシダーゼ
(マルターゼ)、グルコアミラーゼ、トレハラーゼ等を
生産しないので、加燐酸分解反応の測定にはそれぞれマ
ルトースあるいはトレハロースを基質とし、燐酸塩存在
下で酵素反応させて生成するグルコースをグルコースオ
キシダーゼ法で測定する簡便法が適用可能である。ま
た、合成反応はβ−D−グルコース1燐酸とグルコース
の混合液を基質とし、酵素反応により生成する無機燐酸
を常法により測定することで可能である。
【0023】酵素活性測定法(1)分解反応: 50mMの燐酸緩衝液(pH7)に溶
解させた20mMのマルトースもしくはトレハロース溶
液0.5mlに酵素液0.01mlを添加し、50℃で
15分間反応させた後、沸騰水浴中で3分間加熱して酵
素反応を止める。次いで、流水中で冷却した後、生成し
たグルコースをグルコースオキシダーゼ法(和光純薬工
業(株)製、グルコースC−IIテスト・ワコー)で測定
する。ここで1単位の酵素活性は同条件下で1分間に1
μmole(マイクロモル)のグルコースを生成する酵
素量とする。(2)合成反応: 70mMのヘペス(HEPES)緩衝
液(pH7.0)に溶解させた27mMのβ−D−グル
コース1燐酸Na塩と同濃度のグルコースとの混合溶液
0.15mlに0.05mlの酵素液を添加し、50℃
で15分間反応させた後、沸騰水浴中で2分間加熱して
酵素活性を止める。ついで、生成した無機燐酸を和光純
薬工業(株)製ピーテストワコーを用いて測定する。こ
こで1単位の酵素活性は同上条件下で1分間に1マイク
ロモル(μmole)の無機燐酸を生成する酵素量とす
る。
【0024】本発明の新規な酵素であるマルトースホス
ホリラーゼ及びトレハロースホスホリラーゼは、それぞ
れ粗酵素又は精製酵素として利用することができる。さ
らに、両酵素の活性を有する菌体および該菌体を適当な
担体に包括、吸着あるいは化学的に結合させた固定化菌
体などを、例えばトレハロースの製造に使用することも
可能である。さらには、本発明の酵素は、各酵素を公知
の方法で固定化させた固定化酵素として使用することも
できる。
【0025】
【実施例】以下本発明について実施例によりさらに説明
する。 実施例1菌体内及び菌体外マルトースホスホリラーゼの製造及び
精製 プレシオモナスSH−35株(FERM BP-5144)を、マルト
ース1%(w/v)、ポリペプトンS(日本製薬製)2
%、燐酸アンモニウム0.15%、尿素0.15%、食
塩1%、燐酸二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム・
七水塩0.02%および炭酸カルシウム0.2%を含む
pH7.0の液体培地に植菌した。次に、この液体培地
を37℃で24時間好気的に培養した。得られた培養液
を4℃で12,000×gにて15分間遠心分離して菌
体と上清液とに分けた。得られた菌体は少量の20mM
燐酸緩衝液(pH7.0)に懸濁させた後、超音波菌体
破砕機で菌体を破壊した。ついで、該破砕菌体懸濁液に
硫安を加えて30%飽和とし、4℃で一夜放置した。次
いで、遠心分離をして沈澱物を除いて得られる上清液に
さらに硫安を加えて70%飽和とした。4℃で一夜放置
して生成する沈澱物を遠心分離で集め、20mM燐酸緩
衝液(pH7)に溶解させた後、同上緩衝液で充分に透
析した。
【0026】次いで、同上緩衝液で平衡化したDEAE−フ
ラクトゲル(メルク社製)カラムに通液し酵素を吸着さ
せた。吸着した酵素を同上緩衝液に含まれる0Mから
0.6Mの食塩の濃度勾配法で溶出させた後、UF膜
(アミコン社製、YM−30)で濃縮した。濃縮酵素は
0.2M食塩を含む同上緩衝液で平衡化したセファクリ
ルS−300(ファルマシア社製)カラムを用いてゲル
濾過クロマトグラフィーで精製した。得られた活性画分
を集め、1.5M硫安を含む同上緩衝液で充分に透析し
た後、1.5M硫安を含む同上緩衝液で平衡化したフェ
ニル・トヨパール(東ソー社製)カラムに通液し酵素を
吸着させた。吸着した酵素を同上緩衝液に含まれる1.
5Mから0Mの硫安の濃度勾配法で溶出させた後、得ら
れた活性画分を集め0.2M食塩を含む同上緩衝液で充
分に透析した。前述のUF膜を用いて濃縮した後、0.
2M食塩を含む同上緩衝液で平衡化したスーパーデック
ス200(ファルマシア社製)で再度ゲル濾過クロマト
グラフィーを行い、得られた活性画分を前述の方法で濃
縮してポリアクリルアミドゲルデイスク電気泳動法(P
AGE)並びにSDS−PAGE法において均一な菌体
内マルトースホスホリラーゼ精製酵素(活性収率約28
%)が得られた。また、菌体外酵素についても培養上清
を出発原料として、上記の方法と同様の方法で精製濃縮
して、活性収率約25%でマルトースホスホリラーゼの
精製酵素を得た。
【0027】実施例2菌体内および菌体外トレハロースホスホリラーゼの製造
及び精製 プレシオモナスSH−35株(FERM BP-5144)を、トレハ
ロース1%(w/v)、酵母エキス2%、燐酸アンモニ
ウム0.15%、尿素0.15%、食塩1%、燐酸二カ
リウム0.1%、硫酸マグネシウム・七水塩0.02%
および炭酸カルシウム0.2%を含むpH7.0の液体
培地に植菌した。この液体培地を実施例1と同様に培養
し、後処理して菌体破砕液と上清液を得た。得られた菌
体破砕液と上清液について、それぞれ実施例1と同様な
方法で精製した。PAGE法並びにSDS−PAGE法
において均一な菌体内トレハロースホスホリラーゼおよ
び菌体外トレハロースホスホリラーゼを、それぞれ活性
収率35%および32%で得た。
【0028】実施例3プレシオモナスSH−35株の生産するマルトースホス
ホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼの酵素化
学的諸性質 次に本発明のプレシオモナスSH−35株(FERM BP-51
44)が生産する新規マルトースホスホリラーゼおよびト
レハロースホスホリラーゼの一般的な酵素化学的特性に
関し、実施例1および2と同様な方法で精製して得た精
製酵素を用いて検討した結果を以下に示す。なお、予備
実験の結果、菌体内および菌体外の両酵素共にほぼ同様
な理化学的諸性質を示したので、ここでは菌体内酵素の
諸性質を示している。
【0029】(イ)作用 10mM燐酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた1%
(w/v)のマルトース及びトレハロース溶液にマルト
ースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼ
を基質1gに対してそれぞれ5単位(分解反応)添加
し、50℃で5時間反応させた後、沸騰水浴中で3分間
加熱して酵素を失活させて得られる糖化液中の糖を高速
液体クロマトグラフ法で測定した結果、グルコース及び
グルコース1燐酸がそれぞれ検出された。また、10m
Mのトリス(Tris)塩酸緩衝液(pH7.0)に溶
解させた1%(w/v)のグルコースおよびβ−D−グ
ルコース1燐酸Na塩もしくはα−D−グルコース1燐
酸Na塩の混合溶液を基質とし、マルトースホスホリラ
ーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを基質1gに対
してそれぞれ5単位添加し50℃で5時間反応させた
後、前述のように処理して糖組成を測定した結果、グル
コースとβ−D−グルコース1燐酸からはマルトースお
よびトレハロースがそれぞれ検出されたが、グルコース
とα−D−グルコース1燐酸からの二糖類の合成反応は
検出されなかった。
【0030】生成糖の分析は以下の方法で行った。即
ち、加熱失活させて得られる糖化液中の不溶物を0.4
5μmのメンブレンフィルターで濾別して得られる濾液
を供試糖液とし、YMC−Pack、ODS−AQ(A
Q−304、YMC社製)カラムを用いる高速液体クロ
マトグラフィー法で測定した。なお、移動相には水を用
い、カラム温度を30℃とし検出には示差屈折計を用い
た。(ロ)基質特異性(分解反応) 先に述べた活性測定法(分解反応)に示した基質(マル
トースもしくはトレハロース)に代えて各種糖類を基質
とした場合の活性を相対活性として表した。結果を表2
に示す。
【0031】
【表2】
【0032】(ハ)至適pHおよび安定pH範囲 精製酵素を用いて分解および合成反応の最適pHを測定
した。その結果、図1のAに示したように、マルトース
ホスホリラーゼの分解反応(白丸で示す)の最適pHは
7.0〜7.5であり、合成反応(黒丸で示す)は6.
0が最適であった。また、図1のBに示すように、トレ
ハロースホスホリラーゼは分解反応(白丸)及び合成反
応(黒丸)共に7.0が最適であった。なお、pH分解
反応の場合は20mMの燐酸緩衝液を、合成反応の場合
には、MES(pH5.5〜6.5)、MOPS(pH
値6.5〜7.0)、HEPES(pH7.0〜8.
0)、トリスー塩酸(pH7.5〜9.0)の各緩衝液
を用いて調整した。また、精製した両酵素を各緩衝液中
で10分間、50℃で処理し、それらの残存酵素活性を
分解反応で測定した結果、図2に示したように、マルト
ースホスホリラーゼ(白丸)はpH5.5〜6.5の範
囲で、また、トレハロースホスホリラーゼ(黒丸)はp
H6.0〜9.0まで安定であった。なお、pHは酢酸
(pH5.0〜5.5)、燐酸(pH6.0〜8.
0)、炭酸(pH8.9)の各緩衝液を用いて調整し
た。
【0033】(ニ)作用適温 両酵素の分解反応および合成反応の作用適温を測定した
結果、図3に示したように、マルトースホスホリラーゼ
(A、白丸:分解反応、黒丸:合成反応)、トレハロー
スホスホリラーゼ(B、白丸:分解反応、黒丸:合成反
応)共に分解反応は50℃、合成反応は50〜55℃の
範囲であった。(ホ)温度による失活の条件 マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリ
ラーゼのそれぞれの安定pHであるpH6.0および
7.0の条件下で15分間処理し、残存する失活を無処
理と比較して常法により測定した。その結果、図4に示
したように、マルトースホスホリラーゼ(白丸)は55
℃で、また、トレハロースホスホリラーゼ(黒丸)は6
0℃で完全に失活した。(ヘ)阻害剤 両酵素の合成反応における活性を各種阻害剤存在下で測
定し、無添加時の活性を100%とする相対活性で表し
た結果を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】(ト)等電点 アイソゲル(FMC BioProducto社製) を用いるアイソエレ
クトロフォーカシング法により、両酵素の等電点を測定
した結果、図5に示したようにマルトースホスホリラー
ゼは3.8、トレハロースホスホリラーゼは4.5であ
った。(チ)分子量 両精製酵素の分子量をSDS−PAGE法並びにセファ
クリルS−200を用いるゲル濾過法により測定した。
その結果、図6に示したように、ゲル濾過法では両酵素
の分子量は約200,000であったが、SDS−PA
GE法ではマルトースホスホリラーゼが約92,000
そしてトレハロースホスホリラーゼが約88,000で
あったことから、これらの酵素はそれぞれ2ケのサブユ
ニットから構成されていることが予想された。上記の理
化学的諸性質を既知のマルトースホスホリラーゼおよび
トレハロースホスホリラーゼと比較して表4および表5
にまとめた。
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】実施例4菌体内および菌体外トレハロースホスホリラーゼの製造
方法 トレハロース1%(w/v)、酵母エキス(Difco社製)
2%、燐酸アンモニウム0.15%、尿素0.15%、
食塩1%、燐酸二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム
・七水塩0.02%および炭酸カルシウム0.2%を含
むpH7.5の液体培地20リットルに予め同上培地で
一夜培養して得たプレシオモナスSH−35株種菌(FE
RM BP-5144)1リットルを無菌的に添加し、37℃、3
00rpm、通気量1v.v.mの条件下で24時間通
気攪拌培養をした。本培養液のトレハロースホスホリラ
ーゼ活性を測定した結果、培養液1ml当たり1.5単
位であった。また同様にマルトースホスホリラーゼ活性
も測定したが、活性は微量であった。次いで、12,0
00×g、4℃で10分間遠心分離し、約160gの菌
体(湿潤時)および19.5リットルの上清液を得、ロ
ミコン(Romicon) 社製UF膜(YM−30)で濃縮し、
約1リットル(約6,400単位)の菌体外濃縮粗酵素
が得られた。上清液中の酵素活性を測定した結果、全活
性(約30×103 単位)の約25%(7.5×103
単位)の活性があった。また、菌体部分については10
mMの燐酸緩衝液(pH7)で充分洗浄し、500ml
の同上緩衝液に懸濁させた後、超音波菌体破砕機で菌体
を破砕し、常法によりトレハロースホスホリラーゼ活性
を測定した結果、全活性の約75%(22.5×103
単位)が菌体内に含まれていた。
【0039】実施例5 (マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホ
リラーゼ含有菌体および菌体外酵素の製造)実施例1で
用いた培地成分中のトレハロースをマルトースに、酵母
エキスをポリペプトンFC(日本製薬(株)製)5%
(w/v)にそれぞれ代え、他は同様な方法でSH−3
5株(FERM BP-5144)を培養した。本培養液のマルトー
スホスホリラーゼ活性並びにトレハロースホスホリラー
ゼ活性を測定した結果、培養液1ml当たり0.5単位
のマルトースホスホリラーゼ活性と0.45単位のトレ
ハロースホスホリラーゼが含まれていた。次いで、同様
に遠心分離して約150gの菌体(湿潤時)および1
9.6リットルの上清液を得た。ついで、菌体および上
清中のマルトースホスホリラーゼ活性を測定した結果、
マルトースホスホリラーゼの全活性の約78%(約1
0,000単位)が菌体内に、そして約22%が菌体外
(培養上清)に含まれていた。また、トレハロースホス
ホリラーゼの全活性の約82%(約9,000単位)が
菌体内に、そして約18%が菌体外(培養上清)に含ま
れていた。培養上清は実施例1と同様な方法で濃縮し、
約1リットルの濃縮酵素が得られ、該濃縮酵素中には約
1,700単位のマルトースホスホリラーゼと1,43
0単位のトレハロースホスホリラーゼが含まれていた。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、トレハロースを酵素的
に製造する際に必要なマルトースホスホリラーゼおよび
トレハロースホスホリラーゼを菌体内及び菌体外(培地
中)に生産し得る新規な微生物が提供される。本発明の
微生物は細菌であるので、従来トレハロースホスホリラ
ーゼの給源として知られていた緑藻や担子菌に比較し酵
素の取得方法が容易であるばかりでなく、培養時間も大
幅に短縮し得ることから経済的である。さらに、本発明
の微生物は、一種の細菌がトレハロースの酵素的生産に
必要な二種の酵素を同時に生産し得るという利点も有す
る。また、本発明の2つの酵素は、トレハロースを酵素
的に生産する際に要求される諸要件をいずれも満足する
ので、得られるトレハロースの有効利用を著しく容易に
し、経済的にも大幅な改善を保証し得るものである。即
ち、本発明のマルトースホスホリラーゼおよびトレハロ
ースホスホリラーゼは高い温度安定性を有し、高温での
酵素反応が可能であるので反応中の雑菌汚染から免れ
る。さらには、両方の酵素がほぼ同一の最適pH範囲を
有しているので反応中の煩雑なpH管理が不要であると
いう利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プレシオモナスSH−35株の生産するマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼの反応至適曲線〔シンボル:分解反応(○)、合成反
応(●)〕。
【図2】 プレシオモナスSH−35株の生産するマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼのpH安定性〔シンボル:マルトースホスホリラーゼ
(○)、トレハロースホスホリラーゼ(●)〕。
【図3】 プレシオモナスSH−35株の生産するマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼの作用適温〔シンボル:分解反応(○)、合成反応
(●)〕。
【図4】 プレシオモナスSH−35株の生産するマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼの温度安定性〔シンボル:マルトースホスホリラーゼ
(○)、トレハロースホスホリラーゼ(●)〕。
【図5】 プレシオモナスSH−35株の生産するマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼの等電点。
【図6】 プレシオモナスSH−35株の生産するマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼの分子量
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:01)

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マルトースホスホリラーゼおよびトレハ
    ロースホスホリラーゼ生産能を有し、プレシオモナス(P
    lesiomonas) 属に属する微生物、生命研条寄第5144
    号。
  2. 【請求項2】 以下に示す理化学的性質を有するマルト
    ースホスホリラーゼ。 (イ)作用:マルトース中のα−1,4−グルコピラノ
    シド結合を燐酸存在下で可逆的に加燐酸分解し、グルコ
    ースおよびβ−D−グルコース1−燐酸を生成する。 (ロ)基質特異性(分解反応):マルトースに作用し、
    他の二糖類に作用しない。 (ハ)至適pHおよび安定pH範囲:分解反応の至適p
    Hは7.0〜7.5であり、合成反応の至適pHは6.
    0である。50℃、10分間の加熱条件下ではpH5.
    5〜7.0の範囲内で安定である。 (ニ)温度に対する安定性:pH6.0、15分間の加
    熱条件下では45℃まで安定である。 (ホ)作用適温の範囲:50℃近傍に分解反応の至適作
    用温度を有し、合成反応の作用適温は50〜55℃であ
    る。 (ヘ)失活条件:50℃、10分間の加熱条件下ではp
    H5.0および8.0で完全に失活する。また、pH
    6.0、15分間の処理では55℃で完全に失活する。 (ト)阻害:銅、水銀、カドミウム、亜鉛、N−ブロモ
    サクシニイミド、p−クロロマーキュリベンゾエイト、
    ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムで阻害される。 (チ)アイソエレクトロフォーカシング法による等電
    点:3.8 (リ)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子
    量:約92,000(ゲル濾過法による分子量は約20
    0,000であり、2ケのサブユニットから構成されて
    いる)。
  3. 【請求項3】 以下に示す理化学的性質を有するトレハ
    ロースホスホリラーゼ。 (イ)作用:トレハロース中のα−1,1−グルコピラ
    ノシド結合を燐酸存在下で可逆的に加燐酸分解し、グル
    コースおよびβ−D−グルコース1−燐酸を生成する。 (ロ)基質特異性(分解反応):トレハロースに作用
    し、他の二糖類に作用しない。 (ハ)至適pHおよび安定pH範囲:分解および合成反
    応の至適pHは7.0である。50℃、10分間の加熱
    条件下ではpH6.0〜9.0の範囲内である。 (ニ)温度に対する安定性:pH7.0、15分間の加
    熱条件下では50℃まで安定である。 (ホ)作用適温の範囲:分解反応及び合成反応の作用適
    温は50〜55℃である。 (ヘ)失活条件:50℃、10分間の加熱条件下ではp
    H5.0および9.5で完全に失活する。また、pH
    7.0、15分間の処理では55℃で完全に失活する。 (ト)阻害:銅、水銀、カドミウム、亜鉛、N−ブロモ
    サクシニイミド、p−クロロマーキュリベンゾエイトで
    阻害される。 (チ)アイソエレクトロフォーカシング法による等電
    点:4.5 (リ)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子
    量:約88,000(ゲル濾過法による分子量は約20
    0,000であり、2ケのサブユニットから構成されて
    いる)。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の微生物を培養し、請求項
    2記載のマルトースホスホリラーゼおよび請求項3記載
    のトレハロースホスホリラーゼの少なくとも1つを生成
    ・蓄積させ、これを採取することを特徴とするマルトー
    スホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼの
    製造方法。
  5. 【請求項5】 上記培養を炭素源としてマルトースの存
    在下で行い、マルトースホスホリラーゼおよびトレハロ
    ースホスホリラーゼを生成・蓄積させる請求項4記載の
    製造方法。
  6. 【請求項6】 上記培養を炭素源としてトレハロースの
    存在下で行い、トレハロースホスホリラーゼを優先的に
    生成・蓄積させる請求項4記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 培養後の培養液から菌体を分離し、分離
    した菌体をそのままマルトースホスホリラーゼおよび/
    またはトレハロースホスホリラーゼの粗酵素とする請求
    項4記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 培養後の培養液から菌体を分離し、分離
    した菌体からマルトースホスホリラーゼおよび/または
    トレハロースホスホリラーゼの粗酵素を抽出する請求項
    4記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 培養後の培養液から菌体を分離し、得ら
    れた培養上清液をマルトースホスホリラーゼおよび/ま
    たはトレハロースホスホリラーゼの粗酵素含有液とする
    請求項4記載の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5827715A (en) * 1995-07-31 1998-10-27 Showa Sangyo Co., Ltd. Heat resistant maltose phosphorylase, process for preparation thereof, bacteria used for preparation thereof, and methods for using the enzyme
US5939308A (en) * 1995-07-31 1999-08-17 Showa Sangyo Co., Ltd. Heat resistant maltose phosphorylase, process for preparation thereof, bacteria used for preparation thereof, and methods for using the enzyme

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