JPH0813090A

JPH0813090A - ピストンリング材

Info

Publication number: JPH0813090A
Application number: JP14688894A
Authority: JP
Inventors: Isao Nakayoshi; 勲中吉
Original assignee: Individual
Current assignee: Individual
Priority date: 1994-06-29
Filing date: 1994-06-29
Publication date: 1996-01-16

Abstract

(57)【要約】【目的】良好な被削性を有し、また充分な耐摩耗性と
耐焼付性を有するピストンリング材を提供する。【構成】Ｃを０．９〜１．２重量％、Ｓｉを０．１５
〜０．３５重量％、Ｍｎを０．３〜０．５重量％、Ｃｒ
を１．３〜１．６重量％、Ｐｂを０．１〜０．３重量％
含有し、残部がＦｅおよび不可避的不純物からなるピス
トンリング材。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は往復動内熱機関に使用さ
れるピストン部品のうち、特にセカンドリングとして好
適に使用されるピストンリング材に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】往復動内熱機関、特に自動車用エンジン
のピストン部は、図１にその断面を示すように、ピスト
ン１に設けられた複数本の溝に、円環状のピストンリン
グがはめ込まれ、それぞれのピストンリングの外周面が
シリンダ２の内周面を摺動する構造になっている。

【０００３】上記ピストンリングは、トップリング３、
セカンドリング４、およびオイルリング５とからなる。
トップリング３は、燃焼室の機密性、ガス圧力を保持す
る役目を果たし、オイルリング５は、シリンダ内周面に
付着した潤滑油をかき落とし、潤滑油膜を調整する役目
を果たす。また、セカンドリング４は、トップリング３
とオイルリング５の中間にあり、前記それぞれのリング
の役目を補助するようになっている。

【０００４】ピストンリングの材質は、従来の鋳鉄製か
ら鋼製への移行が進んでいる。これは、エンジンの高速
化、高出力化に対応するため、ピストンリングの軽量化
や機械的強度向上の必要性が背景にあり、さらにリング
製造工程の短縮によるコスト低減の効果もその要因とな
っている。

【０００５】ところで、鋼製ピストンリングは、高負荷
環境で使用されるトップリングやオイルリングに先行し
て適用されており、その材質としては、高炭素鋼、Ｓｉ
−Ｃｒ鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼等が使用され
ている。しかし、比較的負荷の小さいセカンドリングに
ついては、依然としてＦＣ２５のような鋳鉄が使用され
ているのが現状である。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところが、最近では、
さらなるエンジンの高性能化を図るために、セカンドリ
ングにもスチール化を図り、鋳鉄リングより機械的強度
を向上し、かつ軽量化を達成しようとする試みがなされ
ている。この際に考慮すべき点として、セカンドリング
はトップリングほど過酷な使用環境ではないが、同じ摺
動部材として耐摩耗性、耐焼付性を具備することが基本
原則である。

【０００７】また、セカンドリングは、トップリングと
オイルリングの中間にあり、それぞれのリングを補助す
るという機構上、断面形状が図３に示すようなバイトの
先端部の様な形状となっている。そのため、セカンドリ
ングを製作する場合、鋼材をリング成形した後、切削加
工を施して所定の形状に仕上げる必要がある。従って鋼
材自体の良好な被削性が要求される。

【０００８】しかし、鋼材は鋳鉄に比べて被削性に劣っ
ているのが現状である。そのため鋼材の切削工程におい
て、加工能率が悪く、また工具寿命が短くなる等の問題
が生じる。これらの問題は、切削工程の自動化・無人化
を阻害する要因である。

【０００９】本発明は、上記従来のセカンドリングの問
題点を解決するためになされたものであり、良好な被削
性を有し、また充分な耐摩耗性と耐焼付性を有するピス
トンリング材を提供することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明のピストンリング材は、Ｃを０．９〜１．２
重量％、Ｓｉを０．１５〜０．３５重量％、Ｍｎを０．
３〜０．５重量％、Ｃｒを１．３〜１．６重量％、Ｐｂ
を０．１〜０．３重量％含有し、残部がＦｅおよび不可
避的不純物からなる。

【００１１】

【作用】本発明における各添加元素の範囲限定理由は以
下の通りである。Ｃは固溶強化に寄与し、靱性を高め、
また炭化物を形成して耐摩耗性を付与するために重要な
元素であり、０．９重量％以上必要であるが、多すぎる
と平線の冷間加工性やリングの成形性が悪化するため、
１．２重量％を上限とした。Ｓｉは脱酸剤として０．１
５重量％以上必要であるが、多すぎると冷間加工性を害
するだけでなく、熱伝導率を低下させることにより、エ
ンジン稼働中の摺動面の昇温を助長し、耐焼付性を害す
るため０．３５重量％を上限とした。ＭｎはＳｉと同様
に脱酸剤として０．３重量％以上必要であるが、多すぎ
ると熱間加工性を害するので０．５重量％を上限とし
た。ＣｒはＣｒ炭化物となって材料を強化すると共に、
一部基地に固溶して軟化抵抗を高め、エンジン稼働中の
昇温による熱ヘタリに対して効果がある。また焼入性を
確保し、十分な熱処理硬さを得るためにも必要である。
さらに窒化処理により窒素と結びついて硬い窒化物を形
成し、耐摩耗性、耐焼入性を向上させる。以上の理由に
より、Ｃｒは１．３重量％以上必要である。しかし、Ｓ
ｉと同様に過度の添加は熱導電率を低下せしめ、耐焼付
性を害するため１．６重量％を上限とした。本発明での
Ｐｂは鉛介在物又は鉛と非金属介在物の複合介在物とし
て鋼中に存在し、切削応力集中源として被削性を向上さ
せる。そのためには、０．１重量％以上必要であるが、
多すぎると冷間加工性を害するので０．３重量％を上限
とした。

【００１２】

【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明す
る。表１に供試材の化学成分を示す。

【００１３】

【表１】

【００１４】本発明材および比較材は、溶製、鍛伸、熱
間圧延後、球状化焼鈍を行ない、冷間加工後、所定の焼
入れ、焼戻し処理（８８０℃焼入れ、４５０℃焼戻し）
によって硬度をＨＲＣ４３〜４７に調整して、摩耗試験
片を得た。また、本発明材および比較材を、溶製、鍛
伸、熱間圧延後、球状化焼鈍を行ない、その後、冷間伸
線および冷間圧延により、図２に示す形状のセカンドリ
ング４ａに仕上げた。図２においてＴ₀ ＝３．５ｍｍ、
Ｂ₀ ＝２．０ｍｍである。その後、所定の焼入れ、焼戻
し処理（８８０℃焼入れ、４５０℃焼戻し）により、硬
度をＨＲＣ＝４３〜４７に調整し、さらにリング成形し
て、切削試験片を得た。以下、各試験結果について説明
する。

【００１５】（１）摩耗試験摩耗試験は、往復動摩耗試験機を用いて、シリンダ材で
あるＦＣ２５鋳鉄を相手材として試験を行ない、摩耗量
と焼付荷重を測定して、セカンドリングの従来材である
ＦＣ２５の値を１００とした指数で求め、摩耗量比およ
び焼付荷重比として算出した。（２）切削試験切削試験は、前記切削試験片を用いて、総断面減少率３
０％の切削を行ない、図３に示すような最終形状（Ｔ₁
＝３．２ｍｍ、Ｂ₁ ＝１．７ｍｍ）のセカンドリング４
になるまでの切削に要した時間を、比較材４を１００と
して指数で求めた。以上の試験結果を表２に示す。

【００１６】

【表２】

【００１７】表２に明らかなように、本発明材は比較材
に比べると切削時間が大きく短縮できる。これは本発明
材に含まれるＰｂが鉛介在物又は鉛と非金属介在物の複
合介在物として鋼中に存在するため、切削応力集中源と
なり、切削作用を向上させるためである。また、本発明
材は、従来材であるＦＣ２５と比べて耐摩耗性が大幅に
優れている。これは、本発明材がＣｒ炭化物を適正量含
み、また高硬度であることによる。比較材の耐摩耗性は
従来材より良好であるが、本発明材より劣る。これは、
主として比較材のＣ量、Ｃｒ量が低目であることによ
り、Ｃｒ炭化物が不足しているためである。耐焼付性に
ついては、本発明材は、従来材とほぼ同等もしくは優れ
ている。又、比較材より優れている。

【００１８】

【発明の効果】本発明に係るピストンリング材は、従来
材であるＦＣ２５より大幅に優れた耐摩耗性と、従来材
と同等以上の耐焼付性を有する。従って、本発明材を用
いた場合、ピストンのさらなる高速化が可能となり、エ
ンジンの高出力化、高性能化を達成できる。また、本発
明のピストンリング材は、鋼製ピストンリングに不可欠
な被削性に優れている。従って、セカンドリングの切削
工程において、加工能率が良く、また工具寿命が延長で
きるため、切削工程の自動化、無人化を達成できる等、
産業上の利用価値の極めて高い材料である。

【図面の簡単な説明】

【図１】自動車用エンジンのピストン部の概略断面端面
図である。

【図２】切削加工前のセカンドリングの概略断面図であ
る。

【図３】切削加工後のセカンドリングの概略断面図であ
る。

【符号の説明】

１ピストン２シリンダ３トップリング４セカンドリング４ａセカンドリング５オイルリング

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】Ｃを０．９〜１．２重量％、Ｓｉを０．
１５〜０．３５重量％、Ｍｎを０．３〜０．５重量％、
Ｃｒを１．３〜１．６重量％、Ｐｂを０．１〜０．３重
量％含有し、残部がＦｅおよび不可避的不純物からなる
ピストンリング材。