JPH081297A - 竪型鋳造装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 金型キャビテイ内に溶湯凝固物を侵入させる
ことなく溶湯を射出充填でき、かつ射出後溶湯の加圧補
充が確実に行えるようにする。 【構成】 キャビテイ４を備えた金型１の下部に射出ス
リーブ５を挿設し、該射出スリーブ５内にピストン１４
を摺動自在に嵌合し、金型１にキャビテイ４と射出スリ
ーブ５内とを連通させる湯口７を形成した竪型鋳造装置
において、湯口７の断面積を射出スリーブ５の内部断面
積と略等しく形成すると共に、湯口７に臨む金型１に放
射状に複数の収容孔９を形成し、これらの収容孔９の一
端を各々湯口７の壁面に開口させ、収容孔９に各々閉じ
板１０を摺動自在に嵌合し、該閉じ板１０の少なくとも
一つの内側先端部１０ａに切欠部１０ｂを設けて、湯口
７の中心部の方向に閉じ板１０を集合させることにより
射出スリーブ５の内部断面積より断面積が小さい連通孔
１１を形成可能とした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、射出スリーブ内に注
湯された溶湯をピストンで押し出して金型のキャビテイ
内に下方から射出充填するダイカストマシン等の竪型鋳
造装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、この種の竪型鋳造装置では、射
出スリーブ内に溶湯が注湯されると、その直後から溶湯
は射出スリーブ及びピストンに熱を奪われて周囲から凝
固して行く。このため、溶湯の射出時には射出スリーブ
の内周面側に溶湯凝固物が発生していて射出スリーブの
中心部だけが凝固していない状態にある。溶湯の射出時
に溶湯凝固物が溶湯と共に金型のキャビテイ内に侵入し
た場合には製品の強度の低下を来すことから、溶湯凝固
物の侵入を阻止して射出スリーブの中心部の溶湯のみを
金型のキャビテイ内に射出充填することが必要である。

【０００３】そこで、実開昭６２−１５８５０号公報に
記載された竪型鋳造装置では、キャビテイを備えた金型
の下部に垂直孔部を形成して鋳込スリーブ（射出スリー
ブ）を挿設し、前記金型に前記鋳込スリーブ内と前記キ
ャビテイとを連通させるくびれ部（湯口）を形成してい
る。このくびれ部を金型キャビテイ側から鋳込スリーブ
側に向って次第に断面積が大きくなるテーパ状に形成
し、かつ該くびれ部と鋳込スリーブ内との間に断面積差
による段差面部を形成している。そして、溶湯の射出
時、鋳込スリーブ内に生じた溶融凝固物を前記段差面部
に当接させて金型のキャビテイ内に侵入しないようにし
ている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の竪型鋳造装置にあっては、くびれ部を金型キャビテ
イ側から鋳込スリーブ側に向って次第に断面積が大きく
なるテーパ状に形成したことから、該くびれ部と鋳込ス
リーブ内との間に段差面部を形成するためには、鋳込ス
リーブを大径化することが必要となる。しかし、鋳込ス
リーブを挿設する金型側からの制約等で鋳込スリーブの
大径化にも限界があり、この点から、くびれ部を大径に
形成することができない。このため、金型のキャビテイ
内に溶湯を射出充填した後の状態において、くびれ部に
おける溶湯の凝固の方が金型のキャビテイ内における溶
湯の凝固完了よりも速くなり、金型のキャビテイ内で溶
湯の凝固が完了する前にくびれ部が溶湯凝固物で閉塞さ
れることとなる。この場合には、金型のキャビテイ内の
凝固完了まで射出スリーブ内からピストンによる加圧で
溶湯が補充されないこととなり、この結果、金型のキャ
ビテイ内で溶湯が凝固により体積が減少するいわゆる凝
固収縮で製品にひけ巣が発生し、歩留りが低下するとい
う問題がある。

【０００５】この発明は前記従来の課題を解決するため
になしたもので、その目的は、金型キャビテイ内に溶湯
凝固物を侵入させることなく溶湯を射出充填でき、かつ
射出後溶湯の加圧補充が確実に行えるようにすることに
ある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、この発明は、キャビテイを備えた金型の下部に射出
スリーブを挿設し、該射出スリーブ内にピストンを摺動
自在に嵌合し、前記金型に前記キャビテイと前記射出ス
リーブ内とを連通させる湯口を形成した竪型鋳造装置に
おいて、前記湯口の断面積を前記射出スリーブの内部断
面積と略等しく形成すると共に、前記湯口に臨む前記金
型に放射状に複数の収容孔を形成し、これらの収容孔の
一端を各々前記湯口の壁面に開口させ、前記収容孔に各
々閉じ板を摺動自在に嵌合し、該閉じ板の少なくとも一
つの先端部に切欠部を設けて、前記湯口の中心部の方向
に前記閉じ板を集合させることにより前記射出スリーブ
の内部断面積より断面積が小さい連通孔を形成可能とし
たものである。

【０００７】

【作用】上記構成によれば、溶湯の射出時、全ての閉じ
板を湯口の中心に向って前進させる。このときには、前
記閉じ板の先端部は前記湯口の中心部に集合して、湯口
の中心部に連通孔が形成され、湯口の断面積は実質的に
射出スリーブの内部断面積より連通孔の断面積まで小さ
くなる。また、連通孔以外は前記閉じ板により閉塞され
る。このため、射出スリーブ内に生じた溶融凝固物は閉
じ板に当接して金型のキャビテイ内に侵入することが阻
止され、射出スリーブの中心部の溶湯のみが金型のキャ
ビテイ内に射出充填される。

【０００８】また、溶湯の射出後、全ての閉じ板を湯口
の中心から後退させる。このときには、湯口が拡大開口
し、該湯口の断面積は実質的に射出スリーブの内部断面
積と略等しくなるまで大きくなる。このため、湯口に存
在する溶湯の凝固が遅れることから、溶融凝固物による
湯口の閉塞が阻止され、金型のキャビテイ内は凝固完了
まで射出スリーブ内のピストンによる加圧で溶湯が補充
される。

【０００９】

【実施例】以下、この発明の実施例を説明する。

【００１０】図１はこの発明の一実施例になる竪型鋳造
装置の溶湯射出時の状態を示す正断面図、図２は図１の
Ａ−Ａ線に沿う平断面図、図３は図２の溶湯射出後の状
態を示す図２に対応した断面図である。

【００１１】図１において１は金型であり、該金型１は
互いに対向する固定型２と可動型３とから構成されてい
る。可動型３は固定型２に対して水平方向に型開閉可能
に設けられている。

【００１２】前記金型１内の上部にはキャビティ４が形
成され、金型１内の下部には射出スリーブ５を挿設する
垂直孔部６が形成されている。

【００１３】また、前記金型１には前記キャビテイ４と
前記垂直孔部６に挿設した前記射出スリーブ５内とを連
通させる湯口７が形成され、該湯口７の断面積は射出ス
リーブ５の内部断面積と略等しく形成されている。この
湯口７と前記垂直孔部６との間には前記射出スリーブ５
を当接させる段部８が形成されている。

【００１４】更に、前記湯口７に臨む前記金型１には金
型１の型開閉方向に２つの収容孔９が形成され、これら
の収容孔９の一端は各々前記湯口７の壁面に開口してい
る。実施例では前記収容孔９は金型１の型開閉方向に向
かって固定型２と可動型３に各々１つずつ形成されてい
るが、これに限定されず、放射方向に３つ以上の収容孔
９が形成されても良い。

【００１５】前記収容孔９には各々閉じ板１０が摺動自
在に嵌合されていて、該閉じ板１０の内側先端部１０ａ
には垂直方向から見て略半円状の切欠部１０ｂが設けて
あり、前記湯口７の中心部の方向に前記閉じ板１０が集
合されることにより略円形の連通孔１１が形成可能とな
っている。この連通孔１１の断面積は前記射出スリーブ
５の内部断面積より小さいものとされている。

【００１６】また、前記金型１には前記収容孔９を各々
金型１の外側面に貫通開口させる凹部１２が形成され、
該凹部１２内にはシリンダ１３（アクチュエータ）が設
置され、該シリンダ１３のロッド先端は前記閉じ板１０
の外側先端部１０ｃに連結されている。

【００１７】更に、前記射出スリーブ５内にはピストン
１４が摺動自在に嵌合されていて、該ピストン１４の上
面と射出スリーブ５の内周面とから溶湯Ｍを注湯する溶
湯溜め部１５が形成されている。

【００１８】上記構成において、溶湯Ｍの射出は、ま
ず、射出スリーブ５内の溶湯溜め部１５に溶湯Ｍを注入
した後、型閉じされた金型１の垂直孔部６に前記射出ス
リーブ５を挿設し、次いで、ピストン１４で溶湯Ｍを射
出スリーブ５内から押し出すことにより行う。このと
き、溶湯Ｍは湯口７を介して金型１のキャビテイ４内に
下方から射出充填される。

【００１９】上記溶湯Ｍの射出時、シリンダ１３のロッ
ド伸長作動により全ての閉じ板１０を湯口の中心に向っ
て前進させる。このときには、略半円状の切欠部１０ｂ
を設けた前記閉じ板１０の内側先端部１０ａは前記湯口
７の中心部に集合して、湯口７の中心部に略円形の連通
孔１１が形成され、湯口７の断面積は実質的に射出スリ
ーブ５の内部断面積より連通孔１１の断面積まで小さく
なる。また、連通孔１１以外は前記閉じ板１０により閉
塞される。このため、射出スリーブ５内に生じた溶融凝
固物ｓは閉じ板１０に当接して金型１のキャビテイ４内
に侵入することが阻止され、射出スリーブ５の中心部の
溶湯Ｍのみが金型１のキャビテイ４内に射出充填され
る。

【００２０】また、溶湯Ｍの射出後、シリンダ１３のロ
ッド短縮作動により全ての閉じ板１０を湯口７の中心か
ら後退させる。このときには、湯口７が拡大開口し、該
湯口７の断面積は実質的に射出スリーブ５の内部断面積
と略等しくなるまで大きくなる。このため、湯口７に存
在する溶湯Ｍの凝固が遅れることから、溶融凝固物ｓに
よる湯口７の閉塞が阻止され、金型１のキャビテイ４内
は凝固完了まで射出スリーブ５内のピストン１４による
加圧で溶湯Ｍが補充される。前記金型１で成形した製品
は、固定型２から可動型３を後退させて型開きすること
で取り出される。

【００２１】尚、この実施例では、湯口７の中心部に略
円形の連通孔１１を設けるために切欠部１０ｂを双方の
閉じ板１０に形成したが、この態様に限定されず、閉じ
板１０を前身集合させたときに射出スリーブ５内をキャ
ビティ４に連通可能であれば、切欠部１０ｂを一方の閉
じ板１０のみに形成しても良い。

【００２２】

【発明の効果】以上の通り、この発明は、キャビテイを
備えた金型の下部に射出スリーブを挿設し、該射出スリ
ーブ内にピストンを摺動自在に嵌合し、前記金型に前記
キャビテイと前記射出スリーブ内とを連通させる湯口を
形成した竪型鋳造装置において、前記湯口の断面積を前
記射出スリーブの内部断面積と略等しく形成すると共
に、前記湯口に臨む前記金型に放射状に複数の収容孔を
形成し、これらの収容孔の一端を各々前記湯口の壁面に
開口させ、前記収容孔に各々閉じ板を摺動自在に嵌合
し、該閉じ板の少なくとも一つの先端部に切欠部を設け
て、前記湯口の中心部の方向に前記閉じ板を集合させる
ことにより前記射出スリーブの内部断面積より断面積が
小さい連通孔を形成可能としたため、溶湯の射出時、閉
じ板を湯口の中心に向って前進させて、湯口の断面積を
実質的に射出スリーブの内部断面積より連通孔の断面積
まで小さくすることができ、また連通孔以外を前記閉じ
板により閉塞することができる。このため、射出スリー
ブ内に生じた溶融凝固物の侵入を阻止しながら溶湯を金
型のキャビテイ内に射出充填することができることとな
る。また、溶湯の射出後、閉じ板を湯口の中心から後退
させて、湯口の断面積を実質的に射出スリーブの内部断
面積と略等しくなるまで大きくすることができる。この
ため、湯口に存在する溶湯の凝固を遅らせて溶融凝固物
による湯口の閉塞を阻止し、金型のキャビテイ内に凝固
完了まで射出スリーブ内のピストンによる加圧で溶湯を
補充することができることとなる。従って、溶湯凝固物
の混入による強度の低下がなく、かつ凝固収縮によるひ
け巣がない製品が得られることとなり、従来に比べて製
品の歩留りが向上する。

【００２３】また、前記閉じ板により前記湯口の断面積
を可変することができることから、射出スリーブの大径
化で確保した従来の固定的な段差面部が不要となり、こ
の点から、射出スリーブの小径化が図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例になる竪型鋳造装置の溶湯
射出時の状態を示す正断面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ線に沿う平断面図である。

【図３】図２の溶湯射出後の状態を示す図２に対応した
断面図である。

【符号の説明】

１ 金型 ４ キャビティ ５ 射出スリーブ ７ 湯口 ９ 収容孔 １０ 閉じ板 １０ａ 内側先端部 １０ｂ 切欠部 １１ 連通孔 １４ ピストン

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 キャビテイを備えた金型の下部に射出ス
   リーブを挿設し、該射出スリーブ内にピストンを摺動自
   在に嵌合し、前記金型に前記キャビテイと前記射出スリ
   ーブ内とを連通させる湯口を形成した竪型鋳造装置にお
   いて、前記湯口の断面積を前記射出スリーブの内部断面
   積と略等しく形成すると共に、前記湯口に臨む前記金型
   に放射状に複数の収容孔を形成し、これらの収容孔の一
   端を各々前記湯口の壁面に開口させ、前記収容孔に各々
   閉じ板を摺動自在に嵌合し、該閉じ板の少なくとも一つ
   の先端部に切欠部を設けて、前記湯口の中心部の方向に
   前記閉じ板を集合させることにより前記射出スリーブの
   内部断面積より断面積が小さい連通孔を形成可能とした
   ことを特徴とする竪型鋳造装置。