JPH08129382A - 電子楽器のパラメータ供給装置 - Google Patents

電子楽器のパラメータ供給装置

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JPH08129382A
JPH08129382A JP7236170A JP23617095A JPH08129382A JP H08129382 A JPH08129382 A JP H08129382A JP 7236170 A JP7236170 A JP 7236170A JP 23617095 A JP23617095 A JP 23617095A JP H08129382 A JPH08129382 A JP H08129382A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 楽音設定・制御用のパラメータを記憶するメ
モリの容量の節約。 【解決手段】 複数組のパラメータを記憶したパラメー
タメモリと、少なくとも3つのパラメータ決定因子(例
えば音高、音色、タッチ)の組合せに対応してパラメー
タメモリのアドレスデータをそれぞれ記憶するパラメー
タアドレステーブルとを具備し、パラメータ決定因子の
組合せを特定する入力に対応して、該入力によって特定
されるパラメータ決定因子の組合せに対応する特定のア
ドレスデータをパラメータアドレステーブルから読み出
し、読み出したアドレスデータに応じてパラメータメモ
リからパラメータを読み出す。パラメータアドレステー
ブルに記憶されたアドレスデータの中にはパラメータ決
定因子の異なる組合せに対してパラメータメモリにおけ
る同じアドレスを指示するものがある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電子楽器その他
の楽音発生機能を有する機器あるいはディジタル音声処
理機器等において使用することができる電子楽器のパラ
メータ供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電子楽器の音色回路にディジタルフィル
タを用いることは、例えば特開昭59−44096号公
報において示されている。1組のフィルタパラメータが
ディジタルフィルタに供給され、これに応じてフィルタ
特性(振幅一周波数特性)が設定される。音色決定因子
の各内容に対応して複数組のフィルタパラメータがメモ
リに予め記憶され、選択された音色決定因子の内容に応
じて1組のフィルタパラメータが読み出される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のものにおいて
は、複数の音色決定因子(例えば鍵タッチ、音域、定常
的な音色選択情報、時間経過に応じた情報、ブリリアン
ス操作子等手動操作子の操作量など)に応じて異なる音
色制御を行う場合には、各音色決定因子の組合せに1対
1に対応させて複数組のフィルタパラメータをメモリに
記憶しておかねばならなかった。例えば、44通りの音
域、16通りの鍵タッチグループ、32種類の定常音
色、の組合せのすべて(22528通り)に1対1で対
応して個別にフィルタパラメータを記憶する場合、パラ
メータメモリには22528組のパラメータを記憶し得
る大容量が要求される。この発明は上述の点に鑑みてな
されたもので、複数のパラメータ決定因子(音色決定因
子)の組合せに応じて1組のパラメータを、楽音の設定
又は制御のために供給するようにする場合において、パ
ラメータメモリの容量を節約できるようにした電子楽器
のパラメータ供給装置を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】この発明に係る電子楽器
のパラメータ供給装置は、複数組のパラメータを記憶し
たパラメータ記憶手段と、少なくとも3つのパラメータ
決定因子の組合せに対応して前記パラメータ記憶手段か
ら読み出すべきパラメータの該パラメータ記憶手段にお
けるアドレスを指示するアドレスデータをそれぞれ記憶
するものであって、記憶された当該各アドレスデータの
中には前記パラメータ決定因子の異なる組合せに対して
前記パラメータ記憶手段における同じアドレスを指示す
るものがあることを特徴とするパラメータアドレス記憶
手段と、パラメータ決定因子の組合せを特定する入力に
対応して、該入力によって特定されるパラメータ決定因
子の組合せに対応する特定のアドレスデータを前記パラ
メータアドレス記憶手段から読み出し、読み出したアド
レスデータに応じて前記パラメータ記憶手段から1組の
パラメータを読み出す読出し手段とを具え、読み出した
パラメータを楽音の設定又は制御のために供給するよう
にしたものである。
【0005】パラメータ決定因子の組合せに対応して、
パラメータ記憶手段からパラメータが直接読み出される
のではなく、パラメータアドレス記憶手段から該パラメ
ータ記憶手段を読み出すためのアドレスデータが読み出
され、このアドレスデータに応じて該パラメータ記憶手
段から1組のパラメータが読み出される。従って、パラ
メータ決定因子の組合せに対応して1対1でデータを記
憶しているのはパラメータアドレス記憶手段であり、パ
ラメータ記憶手段ではない。パラメータアドレス記憶手
段は単にアドレスデータだけを記憶するものであるので
それほどの大容量は要求されない。パラメータ記憶手段
は複数組のパラメータを記憶するものであるが、パラメ
ータ決定因子の組合せに対応して記憶したアドレスデー
タに基づきパラメータを読み出すようにした間接アドレ
ス方式であるため、パラメータ決定因子の組合せのすべ
てに1対1で対応してパラメータを記憶する必要がなく
なり、パラメータ記憶手段ではその組合せ数よりも少な
い数のパラメータ組を記憶するだけでもよいことにな
る。つまり、パラメータ決定因子の組合せが異なってい
ても或るパラメータ組は共通のものを使用することがで
きる場合があるので、パラメータ記憶手段に記憶してお
くパラメータの組数を少なくし、これによりメモリ容量
を節約することができる。例えば、前述の音域、鍵タッ
チ、音色種類からなる22528通りの組合せに対して
は、僅か2620組のパラメータをパラメータ記憶手段
に記憶しておけば対処できることが後述の実施例におい
て示されている。このような場合、パラメータ決定因子
の或る組合せに応じてパラメータアドレス記憶手段から
読み出されたアドレスデータと別の組合せに応じて読み
出されたアドレスデータとが同じであることがあり、パ
ラメータ記憶手段からはこの異なる組合せの各々に対応
して同じパラメータを読み出す。なお、パラメータ決定
因子を示すデータとしては、例えば、押圧鍵を示すキー
コード、鍵タッチを示すタッチデータ、選択された定常
音色を示す音色コード、時間経過に応じた情報、適宜の
手動操作子出力情報、などを用いることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照してこの発
明の実施の形態を詳細に説明しよう。 <一実施例の全体構成説明>図1において、鍵盤10は
発生すべき楽音の音高を指定するための複数の鍵を具備
している。鍵タッチ検出器11は、鍵盤10で押圧され
た鍵に加えられたタッチを検出するものであり、イニシ
ャルタッチあるいはアフタータッチのどちらを検出する
ものであってもよい。音色選択装置12は発生すべき楽
音の音色を選択する操作子群から成るものである。ピッ
チベンド操作子13は、発生すべき楽音のピッチをその
操作量に応じて連続的に変調するためのものであり、例
えば、ダイヤル式の操作子から成る。マイクロコンピュ
ータ14は、CPU(中央処理ユニット)15、プログ
ラム及びその他データを記憶しているROM(リードオ
ンリメモリ)16、ワーキング及びデータ記憶用のRA
M(ランダムアクセスメモリ)17を含んでおり、デー
タ及びアドレスバス28を介して電子楽器内の各回路と
の間でデータの授受を行い、鍵盤10における押鍵検出
処理及び複数の発音チャンネルに対する押圧鍵の発音割
当て処理、音色選択装置12における音色選択操作の検
出処理、ピッチベント操作子13における操作量の検出
処理、その他種々の処理を実行する。
【0007】トーンジェネレータ18は複数の発音チャ
ンネルで夫々独立にディジタル楽音信号を発生すること
が可能なものであり、各チャンネルに割当てた鍵を示す
キーコードKC及び該鍵のオン・オフを示すキーオン信
号KONその他必要なデータをマイクロコンピュータ1
4からバス28を介して受け取り、これに基づき各チャ
ンネルでディジタル楽音信号を発生する。トーンジェネ
レータ18の内部にはピッチ同期信号発生回路19を含
んでおり、各チャンネルで発生する楽音信号のピッチに
同期するピッチ同期信号を各チャンネル毎に発生する。
【0008】この実施例の仕様においては、トーンジェ
ネレータ18は第1乃至第16チャンネル(Ch1〜C
h16)の合計16チャンネルで時分割的にディジタル
楽音信号を発生する。トーンジェネレータ18から時分
割多重的に出力されるディジタル楽音波形サンプル値デ
ータをTDXで示す。マスタクロック発生器20から発
生されるマスタクロックパルスφは、トーンジェネレー
タ18の基本的な動作時間を制御するものである。ディ
ジタル楽音波形サンプル値データTDXの時分割多重化
の1サイクルはマスタクロックパルスφの64周期であ
り、この1サイクル64周期における各周期毎のタイム
スロットを1〜64の番号を付して示すと第3図のよう
である。同図には、多重化されたディジタル楽音波形サ
ンプル値データTDXのチャンネルタイミング1〜16
の仕様も示されている。例えば、第1チャンネルのデー
タTDXはタイムスロット33〜36の4スロットに割
当てられている。
【0009】この実施例の仕様においては、楽音波形サ
ンプル値データTDXは16チャンネル分のデータが上
述のように共通に多重化されて出力されるが、各チャン
ネルのピッチ同期信号PS1,PS2は2系統に分けて
8チャンネル毎に時分割多重化されて出力される。一方
のピッチ同期信号PS1は第1〜第8(Ch1〜Ch
8)のピッチ同期信号を時分割多重化したもので、その
チャンネルタイミングは第3図のようである。他方のピ
ッチ同期信号PS2は第9〜第16(Ch9〜Ch1
6)のピッチ同期信号を時分割多重化したもので、その
チャンネルタイミングは図2のようである。図から明ら
かなように、各チャンネルのピッチ同期信号PS1,P
S2は1タイムスロットの幅で発生し、その時分割多重
化の1サイクルは8タイムスロットである。
【0010】2系列のアダプティブディジタルフィルタ
装置(以下ADFと略称することがある)21、22
は、楽音信号のフィルタリングに適するように構成され
たディジタルフィルタ装置であって、この実施例の仕様
では夫々8チャンネル分の楽音信号のフィルタリングが
可能であり、一方のADF21は第1〜第8チャンネル
の楽音信号のフィルタリングを行い、他方のADF21
は第9〜第16チャンネルの楽音信号のフィルタリング
を行う。このADF21、22の内部には、所定の型式
のディジタルフィルタ回路、フィルタパラメータメモ
リ、フィルタパラメータの供給を制御する各種回路、フ
ィルタを施すべき楽音信号のピッチに同期してフィルタ
演算動作を行わせる制御回路、フィルタを施した楽音信
号をそのピッチに同期して出力するピッチ同期出力回
路、など各種機能の回路が含まれており、楽音信号のフ
ィルタリングに適した構成となっている。
【0011】トーンジェネレータ18から出力されたデ
ィジタル楽音波形サンプル値データTDXはADF21
及び22に入力される。また、第1〜第8チャンネルの
ピッチ同期信号PS1はADF21に入力され、第9〜
第16チャンネルのピッチ同期信号PS2はADF22
に入力される。ADF21及び22では、ピッチ同期信
号PS1、PS2が発生した(信号“1”となった)タ
イムスロットに対応するチャンネルのデータTDXを内
部に取り込み、そのチャンネルの1サンプル値データに
関してフィルタ演算を実行する。従って、一方のADF
21では、ピッチ同期信号PS1に応じて第1〜第8チ
ャンネルの楽音信号のフィルタ演算を行い、他方のAD
F22では、ピッチ同期信号PS2に応じて第9〜第1
6チャンネルの楽音信号のフィルタ演算を行う。こうし
て、ADF21及び22におけるフィルタ演算の単位時
間(サンプリング周期に同期した信号遅延時間)がフィ
ルタを施すべき楽音信号のピッチに同期したものとな
り、ピッチに応じてフィルタ演算単位時間が変動するこ
とにより移動フォルマント特性のフィルタリングが実現
される。なお、回路の基本的な動作タイミングを制御す
るためにマスタクロックパルスφとシステムシンクロパ
ルスSYNCがADF21及び22に与えられる。シス
テムシンクロパルスSYNCは図2に示すように64タ
イムスロット周期で発生するパルスであり、ディジタル
楽音信号の時分割多重化の1サイクルに同期している。
また、ADF21及び22には、フィルタ動作を制御す
るための各種のデータがバス28を介してマイクロコン
ピュータ14の制御の下で与えられる。
【0012】また、このADF21及び22では、実際
のフィルタ演算動作がフィルタを施すべき楽音信号のピ
ッチに同期して行われるのみならず、フィルタ済みの楽
音波形サンプル値データをそのピッチに同期してサンプ
リングし直し、完全にピッチ同期させた状態で出力する
ようになっている。このフィルタ済みデータをピッチに
同期して再サンプリングするためにもピッチ同期信号P
S1、PS2が利用される。ADF21及び22出力さ
れた各チャンネルのディジタル楽音波形サンプル値デー
タをアキュムレータ23で合計し、16チャンネル分の
サンプル値データを合計した楽音波形サンプル値データ
を求める。アキュムレータ23の出力データをディジタ
ル/アナログ変換器24でアナログの楽音信号に変換
し、サウンドシステム25を介して発音する。
【0013】この実施例の仕様において、フィルタ係数
の供給は2つのモードで制御される。1つは「スタティ
ックモード」であり、これは楽音の発音期間中はフィル
タ係数を変更しないモードである。もう1つは「ダイナ
ミックモード」であり、これは楽音の発音期間中はフィ
ルタ係数を時間的に変化させるモードであり、フィルタ
リングによる音色の時間的変化が得られる。スタティッ
クモードのためのフィルタ係数は、ADF21及び22
の内部のフイルタパラメータメモリ内に記憶されてい
る。ダイナミックモードのためのフィルタ係数は、ダイ
ナミック制御用パラメータメモリ26に記憶されてお
り、これはマイクロコンピュータ14の制御の下で時間
的に切替えて読み出され、バス28を介してADF21
及び22に与えられる。ダイナミック/スタティック選
択スイッチ27は、フィルタ係数の供給をどちらのモー
ドで制御するかを選択するためのスイッチである。な
お、クロック周波数について一例を示すと、マスタクロ
ックパルスφは約3.2MHzであり、ピッチ同期信号
PS1,PS2の時分割1サイクル(8タイムスロッ
ト)の繰返し周波数は400kHzであり、ディジタル
楽音波形サンプル値データTDXの時分割1サイクル
(フィルタにおける1演算サイクル)(64タイムスロ
ット)の繰返し周波数は50kHZである。
【0014】次に、図1における各回路の詳細例につい
て説明する。 <ピッチ同期信号の発生について>図3はピッチ同期信
号発生回路19の一例を示すもので、これは一方の系統
(第1〜第8チャンネル)のピッチ同期信号PS1を発
生する。もう一方のピッチ同期信号PS2も図3と同一
の構成によって発生される。ピッチ同期信号PS1は、
Pナンバメモリ29から読み出したPンバをカウンタ3
0で各チャンネル毎に時分割的にカウントすることに基
づき発生される。Pナンバとは、或る基準オクターブに
おける各音名C〜Bに対応する周波数を持つ楽音波形の
1周期中のサンプル点数を示す数である。ピッチ同期信
号PS1を図2に示すように8チャンネル時分割で発生
するようにする場合、その基本的なサンプリング周波数
(換言すればピッチ同期信号PS1の分解能)はマスタ
クロックパルスφの1/8の周波数(例えば400kH
z)であり、これはどの音名でも共通である。他方、基
本的なサンプリング周波数が共通であるため、各音名の
Pナンバは、その音名周波数に対応して夫々異なる値を
示す。基準オクターブにおける或る音名の周波数をfn
とし、上述の共通のサンプリング周波数(400kH
z)をfcとすると、その音名に対応するPナンバは次
のようにして定まる。
【0015】Pナンバ=fc÷fn …(1) ここで、共通サンプリング周波数fcがfc=400kH
z、音名Aの周波数fnがfn=440Hz(つまりA4
音)であるとすると、音名AのPナンバは、上記式か
ら、 音名AのPナンバ=400000÷440=909 となる。一方、トーンジェネレータ18内で発生可能な
楽音波形1周期当りの異なるサンプル点振幅値のサンプ
ル点数が64であるとすると、周波数fnの実効サンプ
リング周波数feは、 fe=fn×64 …(2) となり、fn=440Hzの場合は、 fe=440×64=28160Hz となる。同様にして、或る基準オクターブにおける各音
名のPナンバと実効サンプリング周波数feを下記表の
ように決定することができる。この場合、基準オクター
ブはG4音からF#5音までの1オクターブである。
【0016】
【表1】
【0017】図3のカウンタ30において、ピッチ同期
信号PS1は、マスタクロックパルスφに基づき確立さ
れる共通サンプリング周波数fcをPナンバに応じて分
周することにより得られる。前述から明らかなように、
Pナンバは1周期波形中の共通サンプリング周波数fc
の周期数つまりサンプル点数であり、一方、トーンジェ
ネレータ18で発生可能な楽音波形1周期当りの実効的
なサンプル点数は前述の通り64である。従って、共通
サンプリング周波数fcを分周する分周数を 分周数=Pナンバ÷64 …(3) とすれば、その分周出力として楽音1周期当り64個の
パルスを得ることができ、これにより64個の実効的な
サンプル点をすべて確立することができる。このように
して定まる分周数によって共通サンプリング周波数fc
を分周すると、前記(1)、(2)、(3)式より、 fc÷分周数=(fn×Pナンバ)÷(Pナンバ÷64) =fn×64=fe …(4) となり、この分周出力によってサンプル点アドレスを変
化させることにより実効サンプリング周波数feを確立
することができる。このようにして確立される実効サン
プリング周波数feは、音名周波数fnに調和しており、
ピッチ同期が実現される。カウンタ30から発生される
各チャンネルのピッチ同期信号PS1はそのチャンネル
に割当てられた鍵の音名に対応して上記(4)式で示され
るような分周出力信号すなわち実効サンプリング周波数
feを持つ信号である。
【0018】ところで上記(3)式で定まる分周数は整数
になるとは限らず、小数を含むことが多い。例えば、音
名Aの場合、 分周数=909÷64〓14.20 である。そこで、カウンタ30における分周動作は、後
述のように、(3)式で定まる分周数に近い2つの整数で
適宜分周し、その平均的な結果として(3)式で定まる分
周数で分周したのと同じ結果が得られるようにしてい
る。
【0019】図3において、Pナンバメモリ29は、前
記表1に示すような基準オクターブにおける各音名のP
ナンバを予め記憶している。各チャンネルに割当てられ
た鍵のキーコードKCがバス28を介してトーンジェネ
レータ18に与えられ、該トーンジェネレータ18の内
部において第1〜第8チャンネルのキーコードKCが図
2のPS1のチャンネルタイミングに示すようなタイミ
ングで時分割多重化され、第9〜第16チャンネルのキ
ーコードKCが図2のPS2のチャンネルタイミングに
示すようなタイミングで時分割多重化される。こうして
時分割多重化された第1〜第8チャンネルのキーコード
KCがPナンバメモリ29に入力される。Pナンバメモ
リ29は入力された第1〜第8チャンネルのキーコード
KCの音名に対応してPナンバを時分割的に読み出す。
【0020】カウンタ30は、Pナンバメモリ29から
読み出されたPナンバを入力する加算器31と、この加
算器31の出力を「0」入力に入力したセレクタ32
と、このセレクタ32の出力を入力した8ステージのシ
フトレジスタ33と、シフトレジスタ33の出力の下位
ビット(小数部)をゲートして加算器31の他の入力に
与えるゲート34と、シフトレジスタ33の出力の上位
ビット(整数部)を入力して全ビットが“1”の7ビッ
トから成るオール“1”信号と加算する加算器35とを
含んでいる。Pナンバそれ自体は12ビットの2進コー
ド化信号であるが、加算器31の出力は桁上がり信号の
ビットとして1ビット余分に含む13ビットの信号から
成る。反転キーオンパルス/KONP(/は反転のバー
記号を示す)と加算器35のキャリアウト出力COから
出力された信号がアンド回路36に入力されており、こ
のアンド回路36の出力がセレクタ32の選択制御入力
に加わる。アンド回路36の出力信号が“0”のときは
加算器31からセレクタ32の「0」入力に与えられた
信号が選択され、“1”のときは「1」入力に与えられ
た信号が選択される。セレクタ32の「1」入力には、
シフトレジスタ33の出力の下位ビット(小数部)と加
算器35の出力7ビット(整数部)とから成る13ビッ
トの信号が与えられる。キーオンパルスKONPは鍵の
押し始めで一度だけ“1”となる信号であり、第1〜第
8チャンネルに対応するものが時分割多重化されてい
る。反転キーオンパルス/KONPはこのキーオンパル
スKONPを反転した信号である。
【0021】セレクタ32、シフトレジスタ33、加算
器35の部分は、Pナンバに応じて前記(3)式に示すよ
うな分周数を確立し、この分周数の整数部に応じて共通
サンプリング周波数fcの分周を行うための回路であ
る。加算器31は、上記分周数の小数部に応じて前記整
数部の値を調整するためのものである。前記(3)式にお
いて除数64は「2の6乗」であるため、分周数を求め
るために格別の割算を行うことなく、単にPナンバの下
位6ビットを小数部として取扱うだけで該Pナンバに対
応する分周数を確立することができる。従って、加算器
31、セレクタ32及びシフトレジスタ33の出力信号
13ビットのうち下位6ビットが小数部の重みであり、
上位7ビットが整数部の重みである。加算器35におい
てオール“1”信号を加算することは1減算することに
等しい。従って、加算器35では、事実上、シフトレジ
スタ33の出力の整数値から1減算することを行う。こ
の加算器35の減算結果は演算されなかった小数部の6
ビットデータと共にセレクタ32の「1」入力に戻さ
れ、シフトレジスタ33を経由して再び加算器35に入
力される。シフトレジスタ33はマスタクロックパルス
φによってシフト制御されるため、同じチャンネルの信
号がシフトレジスタ33から出力される周期はマスタク
ロックパルスφの8倍の周期つまり共通サンプリング周
波数fcの周期である。
【0022】鍵の押し始めにおいて、その鍵が割当てら
れたチャンネルタイミングで反転キーオンパルス/KO
NPが一度だけ“0”となり、このとき、セレクタ32
の「0」入力を介して該鍵のPナンバが選択される。こ
のPナンバの整数部がシフトレジスタ33から加算器3
5に与えられ、共通サンプリング周波数fcの周期で該
整数部から1が繰返し減算される。整数部の減算結果が
1以上の値のとき、加算器35のキャリィアウト出力C
Oからは絶えずキャリィアウト信号“1”が出力され、
アンド回路36の条件が成立するので、セレクタ32は
「1」入力を選択し続ける。減算の繰返しによってやが
て加算器35の出力が“0”になったときつまりPナン
バの整数部の数と同数のfcの周期が経過したとき、加
算器35のキャリィアウト信号は出力されず、アンド回
路36の条件は成立しない。そのとき、セレクタ32は
「0」入力を選択し、Pナンバとシフトレジスタ33の
出力の下位6ビット(小数部データ)とを加算した加算
器31の出力を選択する。こうして、小数部の加算によ
って幾分変更された値のPナンバがシフトレジスタ33
に与えられ、今度は変更されたPナンバの整数値から1
減算することが繰返される。なお、ゲート34は反転キ
ーオンパルス/KONPによって鍵の押し始めでだけ不
能化され、それ以外のときは常時小数部データを加算器
31に与える。加算器31におけるPナンバに対する小
数部データの加算によって実際に分周に使用する分周数
の整数値はPナンバから求まる分周数の整数値よりも1
大きくなることがある。例えば、音名AのPナンバは9
09であり、その分周数は14.20であるが、最初は
その整数値14に従って分周を行うが、次は14.20
+0.20=14.40となり、やがて15.00とな
りその整数値15に従って分周を行うことになる。こう
して、Pナンバによって求まる分周数の整数値と同じ
か、それよりも1大きい数に従って、共通サンプリング
周波数fcの分周が行われ、平均的な結果としてPナン
バによって求まる分周数に従う分周動作が達成される。
加算器35のキャリィアウト出力COの信号がその分周
出力に相当するものであり、これをインバータ37で反
転した信号がピッチ同期信号PS1として出力される。
【0023】理解を深めるために、音名Aを例にして、
セレクタ32の出力の変化の一例を示す。変化タイミン
グは共通サンプリング周波数fcの周期である。最初は
Pナンバ909に対応する分周数14.20であり、次にそ
の整数値が1減った13.20であり、以下、12.20、11.2
0、10.20、…2.20、1.20とその整数値が順次1づつ減少
する。fcの14周期目にセレクタ32の「1」入力に
加わる数値が0.20となり、このときキャリィアウト信号
が“0”となり、ピッチ同期信号PS1が“1”とな
り、セレクタ32では「0」入力を選択する。セレクタ
32の「0」入力にはPナンバ909に対応する分周数
14.20にシフトレジスタ33から与えられる小数値0.20
を加算した値14.40が与えられている。従って、14.40が
セレクタ32から出力される。その後セレクタ32の出
力は13.40、12.40、11.40、…2.40、1.40と順次1づつ
減少してゆき、fcの14周期目にセレクタ32の
「1」入力に加わる数値が0.40となると共に、加算器3
5のキャリィアウト信号が“0”となり、ピッチ同期信
号PS1が発生される。このとき加算器31の出力は1
4.20+0.40=14.60であり、これがセレクタ32の
「0」入力を介してシフトレジスタ33に与えられる。
こうして、音名Aの場合は14又は15を分周数として
分周が行われ、共通サンプリング周波数fc(例えば400
kHz)の14又は15サイクル毎にピッチ同期信号P
S1が“1”となる。もう一方の第9〜第16チャンネ
ルに対応するピッチ同期信号PS2も上述と同様にして
発生される。
【0024】<トーンジェネレータの説明>トーンジェ
ネレータ18においては上述のようにして発生した各チ
ャンネルのピッチ同期信号PS1、PS2を利用して、
発生すべき楽音のピッチに同期したサンプリングタイミ
ングに従って該楽音信号を発生するようにすることがで
きる。勿論、これに限らず、ピッチに同期していないサ
ンプリングタイミングに従って楽音信号を発生するよう
にすることも可能である。発生すべき楽音のサンプル点
アドレス(瞬時位相角)を指定するアドレスデータは、
各チャンネルのピッチ同期信号PS1、PS2をチャン
ネル別に夫々独立にカウントすることにより発生するこ
とができる。ただし、ピッチ同期信号PS1、PS2は
前述の基準オクターブ(G4〜F#5音)のピッチに対
応しているので、上記アドレスデータを発生する場合
は、発生すべき楽音のオクターブ音域に応じて上記ピッ
チ同期信号PS1、PS2のカウントの際のカウントレ
ートを切換える必要がある。例えば、G3〜F#4のオ
クターブの楽音を発生する場合は、ピッチ同期信号PS
1、PS2が発生する毎に0.5をカウントし、G4〜
F#5のオクターブの楽音を発生する場合は、ピッチ同
期信号PS1、PS2が発生する毎に1をカウントし、
G5〜F#6のオクターブの楽音を発生する場合は、ピ
ッチ同期信号PS1、PS2が発生する毎に2をカウン
トする。こうして、発生すべき楽音のピッチ及びオクタ
ーブに同期して変化するアドレスデータを各チャンネル
毎に発生し、このアドレスデータに基づきディジタル楽
音信号を発生する。
【0025】トーンジェネレータ18における楽音信号
発生方式はどのようなものを用いてもよい。例えば、上
記アドレスデータに応じて波形メモリに記憶した楽音波
形サンプル値データを順次読み出す方式(メモリ読出し
方式)、あるいは上記アドレスデータを位相角パラメー
タデータとして所定の周波数変調演算を実行して楽音波
形サンプル値データを求める方式(FM方式)、あるい
は上記アドレスデータを位相角パラメータデータとして
所定の振幅変調演算を実行して楽音波形サンプル値デー
タを求める方式(AM方式)、など公知のどのような方
式を用いてもよい。また、メモリ読出し方式を採用する
場合、波形メモリに記憶する楽音波形は1周期波形のみ
であってもよいが、複数周期波形である方が音質の向上
が図れるので好ましい。複数周期波形を波形メモリに記
憶しこれを読み出す方式は、例えば特開昭52ー121
313号に示されたように発音開始から終了までの全波
形を記憶しこれを1回読み出す方式、あるいは特開昭5
8ー142396号に示されたようにアタック部の複数
周期波形と持続部の1又は複数周期波形を記憶し、アタ
ック部の波形を1回読み出した後持続部の波形を繰返し
読み出す方式、あるいは特開昭60ー147793号に
示されたように離散的にサンプリングした複数の波形を
記憶し、読み出すべき波形を時間的に順次切換えて指定
し、指定された波形を繰返し読み出す方式、など種々の
方式が公知であり、これらを適宜採用してよい。
【0026】〈アダプティブディジタルフィルタの予備
的説明〉ディジタルフィルタの演算型式としては、基本
的には有限インパルス応答(FIR)フィルタと無限イ
ンパルス応答(IIR)フィルタとがあるが、この実施
例のアダプティブディジタルフィルタ装置21、22に
おいてはFIRフィルタを採用している。まずFIRフ
ィルタに関連する一般的説明を行う。 (a)FIRフィルタの基本回路構成 第5図はFIRフィルタの基本回路構成図であり、x
(n)は任意のn番目のサンプル点のディジタル楽音波形
サンプル値データであり、該FIRフィルタの入力信号
である。ここで、
【数1】 は単位時間遅れ要素であり、1サンプリング周期の時間
遅れを設定するものである。従って、x(n−1)はn−1
番目のサンプル点のディジタル楽音波形サンプル値デー
タであり、x(n−N+1)はn−N+1番目のサンプル
点のディジタル楽音波形サンプル値データである。Nは
インパルス応答の持続時間であり、該FIRフィルタの
次数に相当する。h(0)〜h(N−1)はN次のフィルタ
係数である。このフィルタ係数が入力された三角形のブ
ロックは乗算要素であり、遅延要素で遅延された各サン
プル点のデータx(n)〜x(n−N+1)に対して夫々に
対応するフィルタ係数h(0)〜h(N−1)を乗算する。
乗算出力が入力された+記号を付したブロックは加算要
素であり、各乗算出力を加算合計し、出力信号y(n)を
得る。このようなFIRフィルタのインパルス応答{h
(n)}のz変換すなわち伝達関数は、下記(5)式のよう
に、
【数2】 と表わされる。
【0027】(b)FIRフィルタの直線位相特性 このようなFIRフィルタの1つの特徴は、位相特性を
直線位相とすることができることである。直線位相とす
ると、フィルタの入出力波形間においてその位相が完全
に直線特性で対応し、出力波形に歪みが生じない。従っ
て、楽音、音声、オーディオ等の信号のフィルタ処理に
好適である。直線位相のFIRフィルタにおいては、位
相特性が角周波数ωの関数として θ(ω)=−αω …(6) となることが要求される。ここでαは位相遅れといわれ
る定数である。また、上記のような直線位相特性をもつ
FIRフィルタの必要十分条件は、下記(8)式のように
そのインパルス応答が対称性をもち、下記(7)式のよう
に位相遅れαが持続時間(フィルタの次数)Nによって
一意的に規定されることである。 α=(N−1)/2 …(7) h(n)=h(N−1−n) …(8) ただし0≦n≦N−1
【0028】(c)フィルタ係数の対称性 上記(8)式のようにインパルス応答が対称性をもつとい
うことは、フィルタ係数h(0)〜h(N−1)が対称性を
持つことを意味する。すなわち、フィルタ係数を対称特
性で設定することにより、前述の直線位相特性を実現す
ることができるのである。インパルス応答が対称性の一
例を図示すると、次数Nが奇数の場合は図5のようであ
り、Nが偶数の場合は図6のようである。図から明らか
なように、n=(N−1)/2を中心とする対称特性を示
す。Nが奇数の場合は、(N−1)/2次が中心となり、
その両側のインパルス応答が対称となる。Nが偶数の場
合は、(N−2)/2次とN/2の中間が中心となり、そ
の両側のインパルス応答が対称となる。対称位置にある
次数同士はフィルタ係数が同じ値であるため、全ての次
数Nのフィルタ係数を準備する必要はなく、その半分で
よい。詳しくは、Nが奇数の場合は、0次から(N−1)
/2次までの{(N−1)/2}+1個のフィルタ係数を準
備すればよく、{(N−1)/2}+1次からN−1次まで
のフィルタ係数は0次から{(N−1)/2}−1次までの
対称位置にあるフィルタ係数を利用すればよい。すなわ
ち0次とN−1次とでは同じフィルタ係数を使用し、1
次とN−2次とでも同じフィルタ係数を使用する。ま
た、Nが偶数の場合は、0次から(N−2)/2次までの
N/2個のフィルタ係数を準備すればよく、N/2次か
らN−1次までのフィルタ係数は0次から(N−2)/2
次までの対称位置にあるフィルタ係数を利用すればよ
い。
【0029】(d)直線位相FIRフィルタの周波数応
答 図5、図6のようにインパルス応答が対称性を示す直線
位相FIRフィルタの周波数応答
【数3】 の特性を例示すると図7、図8のようである。Nが奇数
の場合は図7のようにω=π(ここでπはサンプリング
周波数fsの1/2に対応している)のときのレベルが
0に固定されず、任意に設定できる。Nが偶数の場合は
図8のようにω=πのときのレベルが必らず0になる。
ここから明らかなように、次数Nが奇数の場合は、フィ
ルタ係数の設定によってハイパスフィルタ特性を実現す
ることが可能であるが、Nが偶数の場合はハイパスフィ
ルタ特性を実現することが不可能である。しかし、Nが
偶数の方がフィルタ設計がし易く、ローパスフィルタや
バンドパスフィルタの設計には適している。そこで、実
現しようとするフィルタ特性に応じてフィルタの次数N
の偶奇を切替えるようにすることが好ましく、この実施
例のアダプティブディジタルフィルタ装置21、22に
おいてはそのような次数Nの偶奇切替えを行うことがで
きるような仕様となっている。すなわちバンドパスフィ
ルタやローパスフィルタの特性のフィルタリングを行う
場合は次数Nを偶数に設定し、ハイパスフィルタ特性の
フィルタリングを行う場合は次数Nを奇数に設定する。
【0030】(e)FIRフィルタのその他の特徴 FIRフィルタのその他の特徴としては、フィードバッ
クループがないため、安定性がよいという特徴がある。
すなわち、IIRフィルタのようにフィードバックルー
プがある場合は発振等の問題が起るが、FIRフィルタ
では発振等の問題が生じず、設計も容易である。また、
フィルタ特性を時間的に変化させる場合においてもFI
Rフィルタは有利である。この場合、通常は、時間的に
異なるフィルタ特性の各々に対応してフィルタ係数の組
を夫々準備しなければならないが、そうするとフィルタ
特性の時変動を細かくするには多数のフィルタ係数の組
が必要とされる。この問題点を解決するために、時間的
にある程度離れた2組のフィルタ係数を準備し、その2
組のフィルタ係数の間で補間を行うことによりその間の
時間経過に伴ってフィルタ係数の組を密に発生させ、こ
うして補間によって発生したフィルタ係数によって時間
的に変動するフィルタ特性を設定することが考えられ
る。このようにフィルタ係数の補間を実時間で行いなが
ら時変動フィルタ特性を実現する場合、FIRフィルタ
のように安定性のよいものは、不安定性を考慮してフィ
ルタ係数を工夫する必要がないので、非常に有利であ
る。また、ディジタルフィルタにおける信号の語長は有
限であるため、制限された語長内に信号データを必然的
に丸めなければない。このような丸めがノイズとなるの
であるが、FIRフィルタではフィードバックループが
ないため、丸めによる誤差が累積されることがないの
で、ノイズ対策上有利である。なお、上述したようなF
IRフィルタの諸特性については、例えば書籍「Theory
and Application of Digital Signal Processing」(著
者:Lawrence,R.Rabiner;Bernard,Gold、発行社:P
rentice-Hall Inc)に詳しく記載されている。
【0031】次に、この実施例におけるアダプティブデ
ィジタルフィルタ装置21及び22におけるいくつかの
特徴について予め簡単に説明する。 (f)フィルタ係数の求め方 フィルタ係数は実際の楽音を分析することにより求めら
れる。フィルタ係数を求めるための手順の一例を図9を
参照して説明すると、まず、異なる音色を示す2種類の
楽音波形(原楽音波形)を自然楽器音からサンプリング
することにより準備する。例えば、原楽音波形1は強い
鍵タッチで演奏されたピアノ音の波形であり、原楽音波
形2は弱い鍵タッチで演奏されたピアノ音の波形であ
る。次に、高速フーリエ変換を行い、原楽音波形1、2
のフーリエ成分を分析し、これに基づき両波形1、2の
スペクトル特性を求める。次に、波形1、2のスペクト
ル特性の差を求める。次に、差のスペクトル特性を量子
化し、これに基づきフィルタ係数を求める処理を行う。
最後に求めたフィルタ係数をメモリに記憶する。フィル
タ特性の時変動を実現するするフィルタ係数はダイナミ
ック制御用パラメータメモリ26(図1)に記憶し、時
間的に変化しない定常的なフィルタ特性を実現するフィ
ルタ係数はADF22及び22(図1)内にパラメータ
メモリに記憶する。
【0032】なお、上述で2波形の差のスペクトル特性
に基づきフィルタ係数を求める理由は、トーンジェネレ
ータ18(図1)で一方の原楽音波形(例えば強い鍵タ
ッチに対応する波形)に相当する楽音信号を発生し、こ
れに対して差のスペクトル特性に従うフィルタリングを
施すことにより他方の原楽音波形(例えば弱いタッチに
対応する波形)に相当する楽音信号を得るようにするた
めである。鍵タッチに応じたフィルタリングを行う場
合、全ての鍵タッチ強度の段階に対応してフィルタ係数
の組を準備しておかずに、いくつかの段階に対応するフ
ィルタ係数の組だけを準備しておき、準備されていない
鍵タッチ強度に対応するフィルタ係数は上述と同様の補
間によって求めるようにしてもよい。勿論、鍵タッチに
対応するフィルタ係数のみならず、音高(又は音域)あ
るいは音色種類あるいはその他種々のファクタに対応す
るフィルタ係数を上述と同様の手法によって準備する。
【0033】(g)ピッチに同期したフィルタ演算 ADF21及び22(図1)における各サンプル点毎の
フィルタ演算タイミングはピッチ同期信号PS1及びP
S2によって設定される。このことは、フィルタ演算に
おける単位時間遅れ(図4参照)がピッチ同期信号PS
1,PS2によって設定されることを意味する。すなわ
ち、フィルタ演算におけるサンプリング周波数fsはピ
ッチ同期信号PS1,PS2によって設定される。具体
的には各音名G〜F#に対応するピッチ同期信号PS
1,PS2の周波数は前出の表1に示した実効サンプリ
ング周波数feと同じであるから、ADF21及び22
におけるフィルタ演算のサンプリング周波数fsは、入
力された楽音信号の音名に応じて同表に示すように異な
るものとなる。フィルタ演算におけるサンプリング周波
数fsは、図7及び図8に示すような周波数応答特性に
おけるω=2πに該当する。ここから明らかなように、
音名に応じてサンプリング周波数fsが変化すると、周
波数応答特性におけるω=2πに対応する周波数もそれ
に応じて変化することになり、得られるフィルタ特性は
移動フォルマント特性となる。このような移動フォルマ
ント特性は楽音信号の音色制御に非常に適したものであ
る。これに対してフィルタ演算におけるサンプリング周
波数が入力信号のピッチに無関係に一定である場合は、
得られるフィルタ特性は固定フォルマントとなる。
【0034】(h)ピッチ同期/非同期の切替 上述のように移動フォルマントのフィルタは楽音の音色
制御に適しているが、得ようとする音色又は効果によっ
ては固定フォルマントのフィルタの方が望ましい場合が
ある。また、ピッチベント操作子13(図1)を操作し
て発生音のピッチを大きくスライドさせる場合も固定フ
ォルマントのフィルタの方が好ましい。そのために、こ
の実施例のADF21及び22では、フィルタ演算をピ
ッチ同期で行うか非同期で行うかの切替えができるよう
な仕様となっている。また、このようなピッチ同期/非
同期の切替えは全チャンネル一様ではなく、各チャンネ
ル別に独立にピッチ同期又は非同期の指定を行うことが
できるようになっている。因みに、ピッチベント操作時
には固定フォルマントのフィルタの方が好ましい理由
は、次の通りである。ピッチベント操作子13によるピ
ッチ制御は、僅かなピッチずれ制御のみならず、数音程
にわたる大きなピッチスライド制御も可能であり、その
場合前出の表1に示す音名G〜F#のオクターブの境界
を横切ってピッチ制御が施されることがある。そのと
き、ピッチに同期したフィルタ演算を行っているとサン
プリング周波数fsが急激に変動し、それに伴ないカッ
トオフ周波数も急激に変動し(移動フォルマントである
ため)、不自然な音色変化をもたらす。例えば、ピッチ
ベント操作によって発音中の楽音がF#5音からG5音
にスライドしたとすると、サンプリング周波数が47.3
59kHzから25.088kHzに急激に変動し(前記表1
参照)移動フォルマントの場合は、その差と同じ分だけ
カット周波数も急激に変動する。このような不都合を防
ぐには、ピッチベント操作時は移動フォルマント(ピッ
チに同期したフィルタ演算)とせずに、固定フォルマン
ト(ピッチに非同期のフィルタ演算)とするのがよい。
ピッチ非同期のフィルタ演算の場合、ADF21及び2
2におけるフィルタ演算のサンプリング周波数は第3図
の例では50kHzである。
【0035】(i)ダイナミック/スタティックに応じ
たフィルタ次数の切替 前述の通り、ダイナミックモードにおいては、発音時に
実時間で、マイクロコンピュータ14の制御の下でダイ
ナミック制御用パラメータメモリ26(図1)からダイ
ナミック制御用パラメータデータを読み出し、これをA
DF21、22の内部に転送しなければならない。その
ため、データ転送時間に制限があり、フィルタ係数の次
数が多いと、制限された時間内に全次数のフィルタ係数
パラメータデータを転送できないおそれがある。従っ
て、ダイナミックモードにおけるフィルタ次数は実時間
のデータ転送時間に見合った制限された次数としなけれ
ばならない。他方、スタティックモードの場合は発音中
にフィルタ係数を変化させる必要がないためそのような
問題はない。また、フィルタ次数が多いほど細かなフィ
ルタ特性を実現することができるので好ましい。従っ
て、スタティックモードにおいてはフィルタ次数を十分
に多くするようにしている。以上のような理由で、この
実施例の仕様では、ダイナミックモードかスタティック
モードかに応じてフィルタ次数を切換えるようにしてい
る。例えば、スタティックモードのときのフィルタ次数
を32次(但しこれは偶数次特性の場合であって、奇数
次特性の場合は31次)とし、ダイナミックモードのと
きのフィルタ次数をその半分の16次(奇数次特性の場
合は15次)としている。
【0036】(j)フィルタ係数の重みづけ制御 1つのフィルタ係数の2進ディジタルデータ形式は、1
2ビットのフィルタ係数データ部と、3ビットの重みづ
けデータ部とからなる。3ビットの重みづけデータ部
は、0、+1、+2、+3、+4、及び+5ビットの6
通りのシフト量のうち1つを指示するものであり、この
シフト量に応じてフィルタ係数データ部がシフトされ、
その重みづけがなされる。12ビットのフィルタ係数デ
ータ部を最大で5ビットシフトし得る重みづけ制御を行
うことにより、フィルタ係数のダイナミックレンジが実
質的に17ビットに拡大される。このような重みづけ制
御によって、十分なダイナミックレンジを確保しつつ、
メモリに記憶しておくフィルタ係数のビット数は少なく
て済むので、フィルタ係数メモリの容量の節約に役立
つ。
【0037】<アダプティブディジタルフィルタの全体
説明>図10は第1〜第8チャンネルに対応するアダプ
ティブディジタルフィルタ装置(ADF)21の内部構
成例を略示するブロック図であり、もう一方のADF2
2も全く同様に構成することができる。入力インターフ
ェース38はトーンジェネレータ18(図1)からピッ
チ同期信号PS1を受入れて、各チャンネルのピッチ同
期信号PS1をADF21内部の演算タイミングに適合
させた状態に整形するものであり、その詳細例は図11
に示されている。タイミング信号発生回路39は、AD
F21内部の各種の動作を制御するタイミング信号を発
生すると共に、入力インターフェース38から与えられ
る各チャンネルのピッチ同期信号に対応する信号に基づ
きフィルタ演算動作に必要な種々の演算タイミング信号
を発生するものであり、その詳細例は図12に示されて
いる。後述するように、各チャンネルのフィルタ演算は
時分割的に行われるため、このタイミング信号発生回路
39から適切なタイミングで各チャンネルのフィルタ演
算動作制御用のタイミング信号を与えてやるようになっ
ている。
【0038】ステートメモリ40、42及び乗算器及び
アキュムレータ部41、43は、FIRフィルタのフィ
ルタ演算を実行するディジタルフィルタ回路である。ス
テートメモリ40と乗算器及びアキュムレータ部41か
らなるディジタルフィルタ回路(これをA系列のディジ
タルフィルタ回路という)は第1乃至第4チャンネル
(Ch1〜Ch4)のフィルタ演算を行うものでステー
トメモリ42と乗算器及びアキュムレータ部43からな
るディジタルフィルタ回路(これをB系列のディジタル
フィルタ回路という)は第5乃至第8チャンネル(Ch
5〜Ch8)のフィルタ演算を行うものである。各系列
A,Bのディジタルフィルタ回路では、夫々4チャンネ
ル分のフィルタ演算を時分割的に行うようになってい
る。第1〜第8チャンネルのフィルタ演算を2系列A,
Bに分けて行うようにした理由は、回路設計上の理由に
よる。ステートメモリ40、42はトーンジェネレータ
18(図1)から与えられたディジタル楽音信号サンプ
ル値データTDXをピッチ同期信号PS1に同期して取
込み、所定のフィルタ次数に対応する段数だけ該ピッチ
同期信号PS1に対応するタイミングで遅延するもので
あり、図4のFIRフィルタ基本回路における単位遅延
要素
【数4】 の集合に対応する。乗算器及びアキュムレータ部41、
43は、ステートメモリ40、42で遅延されたディジ
タル楽音信号サンプル値データに対してその遅延次数に
対応する次数のフィルタ係数を乗算し、各次数の乗算結
果を累算合計するものであり、図4のFIRフィルタ基
本回路における乗算要素及び加算要素に対応する。A系
列のステートメモリ40と乗算器及びアキュムレータ部
41の詳細例は第14図に示されており、B系列のもの
もこれと同様に構成することができる。
【0039】マイコンインタフェース44はマイクロコ
ンピュータ14(図1)の制御の下でデータ及びアドレ
スバス28を介して与えられる各種データを受入れ、A
DF21内の各回路に供給するものである。このインタ
フェース44を介して受入れられるデータの種類は次の
通りである。 キーコードKC: 各チャンネルに割当てられた鍵を示
す。 キーオンパルスKONP: 各チャンネルに割当てられ
た鍵の押し始めで一度だけ信号“1”となる。 タッチコードTCH: 各チャンネルに割当てられた鍵
の押圧時のタッチの強さを示す。 音色コードVN: 各チャンネルに割当てられた鍵に対
して選択されている音色種類(ボイス)を示す。 上記KC、KONP、TCH、VNは、所定の時分割タ
イミングに従って各チャンネルのものが時分割多重化さ
れた状態でインタフェース44から出力され、パラメー
タプロセシングユニット(PPUということがある)4
5に与えられる。
【0040】ピッチ同期/非同期指定信号PASY:
このADF21におけるディジタルフィルタ演算をピッ
チ同期で行うか非同期で行うかの指定を行う信号であ
る。この信号PASYも各チャンネル毎に時分割で与え
られるようにすることができ、フィルタ演算のピッチ同
期/非同期制御を各チャンネル毎に独立に行うことがで
きる。この信号PASYは、選択された音色種類、ある
いはピッチベント操作子13(図1)の操作内容、ある
いは専用又は適宜の操作子の操作状態、等に応じて発生
され、バス28を介してインタフェース44に与えられ
る。インタフェース44から出力されたピッチ同期/非
同期指定信号PASYは入力インタフェース38に与え
られ、ピッチ同期信号PS1に応じた信号の発生を該入
力インタフェース38が行うべきか否かの制御を行うため
に使用される。 ダイナミック用フィルタパラメータDPR: マイクロ
コンピュータ14の制御の下でダイナミック制御用パラ
メータメモリ26(図1)から読み出されたフィルタパ
ラメータ(フィルタ係数)である。前述の通り、このダ
イナミックモード用フィルタパラメータDPRの内容は
発音中の時間経過に伴って変化する。このダイナミック
モード用フィルタパラメータDPRのデータ形式も前述
と同様に、12ビットのフィルタ係数データ部と3ビッ
トの重みづけデータ部とから成り、更に、次数の偶奇を
識別するデータを含む。また、前述の通り、このダイナ
ミックモード用フィルタパラメータDPRの一組の次数
は16次(又は15次)である。更に、前述から明らか
なように、直線位相特性におけるフィルタ係数の対称性
により、実際に準備する一組のダイナミックモード用フ
ィルタパラメータDPRは8次分だけでよい。
【0041】ダイナミック/スタティック選択信号D
S: ダイナミック/スタティック選択スイッチ27
(図1)の操作に応じて発生される信号であり、フィル
タ演算を前述のダイナミックモードで行うかスタティッ
クモードで行うかを指示する。上記DPR、DSはイン
タフェース44からパラメータセレクタ46に与えられ
る。パラメータメモリ47は、スタティックモードのた
めのフィルタパラメータ(フィルタ係数)を記憶したも
のである。パラメータプロセシングユニット45は、上
記パラメータメモリ47からスタティックモード用のフ
ィルタパラメータを読み出す働きをする。すなわち、キ
ーオンパルスKONPが与えられたとき、音色コードV
N、タッチコードTCH、キーコードKCの内容に基づ
き読み出すべきパラメータメモリ47のアドレスを計算
し、このアドレスに記憶されているフィルタパラメータ
を該メモリ47から読み出す。読み出されたスタティッ
クモード用フィルタパラメータSPRはパラメータセレ
クタ46に与えられる。このスタティックモード用フィ
ルタパラメータSPRのデータ形式も前述のDPRと同
様である。また、前述の通り、スタティックモード用フ
ィルタパラメータSPRの一組の次数は32次(又は3
1次)である。更に、前述から明らかなように、直線位
相特性におけるフィルタ係数の対称性により、実際に準
備する一組のスタティックモード用フィルタパラメータ
SPRは16次分だけでよい。
【0042】パラメータセレクタ46は、ダイナミック
/スタティック選択信号DSの内容に応じてダイナミッ
クモード用又はスタティックモード用のフィルタパラメ
ータDPR、SPRの一方を選択する。選択されたパラ
メータはA系列及びB系列のパラメータ供給回路48、
49に入力される。A系列のパラメータ供給回路48で
は第1〜第4チャンネルのフィルタパラメータDPR又
はSPRを受け入れ、これを記憶し、フィルタ演算タイ
ミングに同期してステートメモリ40及び乗算器及びア
キュムレータ部41に供給する。B系列のパラメータ供
給回路49では第5〜第8チャンネルのフィルタパラメ
ータに関して同様のことを行う。スタティックモード用
のフィルタパラメータSPRは、鍵押圧当初に一度だけ
パラメータメモリ47から読み出されて、以後はパラメ
ータ供給回路48、49に記憶される。従って、スタテ
ィックモードにおいては発音期間中はフィルタ係数が変
化せず、一定のフィルタ特性を維持する。他方、ダイナ
ミックモード用のフィルタパラメータDPRは、新しい
内容のパラメータがマイコンインタフェース44を介し
て与えられるまでパラメータ供給回路48、49で記憶
され、その記憶内容はパラメータDPRの内容が時間的
に変化する毎に書替えられる。
【0043】パラメータ供給回路48、49から出力さ
れるフィルタパラメータのうち次数の偶奇を識別する偶
奇識別データEOA1〜EOA4,EOB1〜EOB4
はステートメモリ40、42に与えられ、フィルタ係数
データ部COEA、COEB及び重みづけデータ部WE
IA、WEIBは乗算器及びアキュームレータ部41、
43に与えられる。なお、図中の符号において末尾のA
又はBはA系列とB系列の区別を表わす。データEOA
1〜EOA4,EOB1〜EOB4は各チャンネルのも
のが並列的に与えられるが、データCOEA,COE
B,WEIA,WEIBは各チャンネルのものが時分割
的に与えられる。パラメータプロセシングユニット4
5、パラメータセレクタ46、パラメータメモリ47、
パラメータ供給回路48、49の詳細例は図14に示さ
れている。
【0044】ピッチ同期出力回路50は、乗算器及びア
キュムレータ部41,43から出力された各チャンネル
のフィルタ済みの楽音信号サンプル値データを入力し、
これらを各々のピッチに同期したタイミングでサンプリ
ングし直す回路である。ここでサンプリング制御に用い
る信号は、入力インタフェース38から与えられる。ピ
ッチ同期信号PS1Dであり、これは各チャンネルのピ
ッチ同期信号PS1を所定時間遅延したものである。ピ
ッチに同期した再サンプリングのために、遅延したピッ
チ同期信号PS1Dを用いる理由は、前段でのディジタ
ルフィルタ演算における各チャンネルの楽音信号の時間
遅れに合わせるためである。このようにディジタルフィ
ルタ出力信号をそのピッチに同期して再サンプリングす
る処理は、サンプリング周波数を楽音ピッチに調和させ
るので、折返しノイズの問題を解決する。ピッチに同期
してディジタルフィルタ演算を行う場合は、ディジタル
フィルタ出力信号はピッチに同期したサンプリング周期
を持つのでピッチ同期出力回路50を特に設けなかった
としてもピッチ同期を実現することができるが、ピッチ
に非同期でディジタルフィルタ演算を行う場合はピッチ
同期を実現するためにはピッチ同期出力回路50が必要
である。ピッチ同期出力回路50の詳細例は図15に示
されている。
【0045】次にアダプティブディジタルフィルタ装置
21の各部の詳細例について説明する。なお、各図にお
いてブロック中に「1D」、「8D」等の数字と文字D
が伴記された回路は、遅延回路若しくはシフトレジスタ
であり、前の数字は遅延段数若しくはステージ数を示
す。また、この遅延回路又はシフトレジスタブロックに
おいて、遅延制御クロックパルス又はシフト制御クロッ
クパルスが入力されることが図示されていないものは、
マスタクロックパルスφ(図2参照)によって遅延又は
シフト制御がなされる。
【0046】<入力インタフェース38:図11>図1
1において、ピッチ同期信号PS1はオア回路51、5
2を介してシフトレジスタ53に入力される。図2に示
すようにこのピッチ同期信号PS1は8タイムスロット
を1サイクルとして8チャンネル分が時分割多重化され
ており、或るチャンネルに割当てられた鍵のピッチに同
期する周期でそのチャンネルに対応する1タイムスロッ
トに信号“1”が生じる。シフトレジスタ53の出力は
アンド回路54、オア回路52を介して入力側に戻さ
れ、8チャンネル分のピッチ同期信号PS1が8ステー
ジのシフトレジスタ53内で循環保持される。各チャン
ネルに対応する8個のラッチ回路55が並列的に設けら
れており、シフトレジスタ53から出力されるピッチ同
期信号がそのデータ入力Dに並列的に入力される。各ラ
ッチ回路55のラッチ制御入力Lには各チャンネルに対
応するラッチタイミング信号φFS1(25),φFS2
(29),…φFS8(56)が夫々入力去れる。φF
Sの次に記された数字はチャンネル番号を示し、その次
のかっこ内の数字は1演算サイクル(図2に示す64タ
イムスロット)中のタイムスロット番号を示し、そのタ
イムスロット番号に対応するタイムスロットにおいて該
ラッチタイミング信号が信号“1”となる。例えば、信
号φFS1(25)はタイムスロット25で信号“1”
となり、これは第1チャンネルに対応している。図2を
参照すると明らかなようにタイムスロット25はピッチ
同期信号PS1における第1チャンネルの時分割タイミ
ングに対応している。従って、この信号φFS1(2
5)によってラッチ制御されるラッチ回路55の部分に
はチャンネル1のピッチ同期信号PS1の内容(ピッチ
に同期したタイミングでは信号“1”、それ以外のタイ
ミングでは信号“0”)がラッチされる。他のチャンネ
ル2〜8も同様であり、各チャンネルのピッチ同期信号
が所定のタイミングでラッチ回路55に夫々並列的にラ
ッチされる。
【0047】なお、各チャンネルに対応するラッチタイ
ミング信号φFS1(25)〜φFS8(56)は図1
2ものデコーダ56から発生される。デコーダ56はカ
ウンタ57の出力をデコードして様々な種類のタイミン
グ信号を発生する。カウンタ57はマスタクロックパル
スφをカウントするモジュロ64のカウンタであり、シ
ステムシンクロパルスSYNC(図2)によって定期的
にリセットされる。各チャンネル1〜8に対応するラッ
チタイミング信号φFS1(25)〜φFS8(56)
がどのタイムスロットで発生するかは図12の表示から
明らかであろう。図11に戻り、各タイミング信号φF
S1(25)〜φFS8(56)はノア回路58で多重化さ
れかつ反転される。ノア回路58の出力はアンド回路5
4に入力される。これにより、ラッチ回路55への取り
込みが行われたチャンネルに関するシフトレジスタ53
の記憶がクリアされる。
【0048】一方、ピッチ同期信号PS1が“1”とな
ったチャンネルに対応してラッチ回路55にラッチされ
た信号“1”は、次のサイクルでそれに対応するラッチ
タイミング信号φFS1(25)〜φFS8(56)が発生
するまで保持される。こうして、ラッチ回路55には、
ピッチ同期信号PS1が“1”となったチャンネルに対
応して64タイムスロット分の時間だけ信号“1”が保
持される。各チャンネルに対応するラッチ回路55の出
力はフィルタ演算要求信号φF1〜φF8として図12
のタイミング信号発生回路39に与えられる。後述する
ように、このフィルタ演算要求信号φF1〜φF8が
“1”になったとき1サンプル点分のフィルタ演算が実
行される。ピッチ同期信号PS1が発生したときのみフ
ィルタ演算要求信号φF1〜φF8が“1”となるの
で、結局、フィルタを施すべき楽音信号のピッチに同期
したディジタルフィルタ演算が行われることになる。例
えば、図16に示すように、タイムスロット9のときに
ピッチ同期信号PS1が“1”となったとすると(この
場合この信号“1”はチャンネル1のピッチ同期信号で
ある)、これがシフトレジスタ53で循環保持され、タ
イムスロット25でタイミング信号φFS1(25)が
発生したときラッチ回路55にラッチされ、チャンネル
1に対応するフィルタ演算要求信号φF1がそのタイム
スロット25において“1”に立上る。この信号φF1
は次のサイクルのタイムスロット24まで合計64タイ
ムスロット分の時間幅だけ信号“1”を維持する。
【0049】<タイミング信号発生回路39:図12>
図12において、タイミング信号発生回路39は、前述
のデコーダ56及びカウンタ57の他に、図11の入力
インタフェース38から与えられる各チャンネルのフィ
ルタ演算要求信号φF1〜φF8に応じてフィルタ演算
動作制御用のタイミング信号を発生する演算タイミング
発生回路391〜398を各チャンネル(Ch1〜Ch
8)毎に具えている。図ではチャンネル1の回路391
のみ詳細を示したが、他のチャンネル2〜8の回路39
2〜398も同一構成であり、そこに入力されるタイミ
ング信号T(33),T(49),…の時間関係だけが異な
る。タイミング信号T(33),T(49),…はデコーダ
56から発生される。前述と同様に、タイミング信号を
示す符号においてかっこ内の数字は、1演算サイクル
(図2に示す64タイムスロット)中のタイムスロット
番号を示し、そのタイムスロット番号に対応するタイム
スロットにおいて該タイミング信号が“1”となること
を示す。デコーダ56から発生される他のタイミング信
号についても同様であり、かっこ内の数字を参照するこ
とによりそのタイミング信号がどのタイムスロットにお
いて発生するか(“1”となるか)が容易に判る。例え
ば、タイミング信号T(33)は図16に示すようにタイ
ムスロット33において信号“1”となるものであり、
信号T(3−18)はタイムスロット3から18までの間
で信号“1”となるものである。
【0050】チャンネル1の演算タイミング信号発生回
路391について説明すると、フィルタ演算要求信号φ
F1とタイミング信号T(33)がアンド回路59に与え
られる。従って、フィルタ演算動作を行うべきことが要
求されたならば、タイムスロット33のタイミングでア
ンド回路59の出力が“1”となる。このアンド回路5
9の出力信号と、この信号を遅延回路60で1タイムス
ロット遅延した信号とがオア回路61に与えられる。こ
のオア回路61の出力はフィルタデータサンプリングク
ロック信号RLA1としてディジタルフィルタ回路にお
ける単位遅延を制御するために利用される。この信号R
LA1は図16に示すようにタイムスロット33と34
のときに“1”となる。
【0051】アンド回路62にはアンド回路59の出力
とチャンネル1の偶奇識別データEOA1(これは図1
0のパラメータ供給回路48から出力されたものであ
る)をインバータ63で反転した信号が与えられる。こ
のデータEOA1は実現しようとするフィルタ特性の次
数が偶数次のとき信号“1”であり、奇数次のとき信号
“0”、である。アンド回路62の出力は遅延回路64
で2タイムスロット遅延され、インヒビット信号INH
A1として出力される。フィルタ次数が奇数のときアン
ド回路62の出力信号はタイムスロット33で“1”と
なり、その2タイムスロット後のタイムスロット35の
とき信号INHA1が“1”となる(図16参照)。フ
ィルタ次数が偶数ならば、信号INHA1は常に“0”
である。このインビット信号INHA1は、ディジタル
フィルタ回路の演算動作において偶数次の最高次数(3
2次)の演算を禁止することにより奇数次のフィルタ特
性を実現するために使用される。
【0052】タイミング信号T(3−18)とT(35
−50)がオア回路65に入力されており、その出力と
アンド回路59の出力がオア回路66に入力されてい
る。オア回路66の出力は遅延回路67で1タイムスロ
ット遅延され、第1シフトクロック信号φFFA1とし
て出力される(図16参照)。また、オア回路66の出
力と遅延回路64の出力をインバータ68で反転した信
号がアンド回路69に加わっており、その出力を遅延回
路70で1タイムスロット遅延した信号が第2シフトク
ロック信号φFLA1として出力される(図16参
照)。信号φFLA1は、フィルタ次数が偶数ならばタ
イムスロット36のとき“1”であるが、奇数ならば
“0”である。これらのシフトクロック信号φFFA
1,φFLA1は、ディジタルフイルタ回路において各
次数毎の演算動作を時分割的に行うために、ステートメ
モリ40(図10)内の各遅延段階に対応する楽音信号
サンプル値データを順次シフトするために使用される。
タイミング信号T(35−50)に応じてタイムスロッ
ト35から50の間で“1”となる乗算タイミング信号
PDOA1(図16参照)は、ディジタルフィルタ回路
において楽音信号サンプル値データとフィルタ係数との
乗算を行うべき期間を指示するものである。
【0053】A系列における他のチャンネル2〜4に対
応する演算タイミング信号発生回路392〜394にお
いて用いられるタイミング信号T(49),T(19−
34),T(51−2),…はチャンネル1のタイミン
グ信号T(33),T(3−18),T(35−50)
のタイミングから順に16タイムスロットづつずれたも
のである。従って、チャンネル1の回路391から出力
される各信号RLA1〜PDOA1と同様の信号RLA
2〜PDOA2,…RLA4〜PDOA4が他のチャン
ネル2〜4の回路392〜394から夫々順次16タイ
ムスロットづつずれたタイミングで発生される。これに
基づき、A系列のディジタルフィルタ回路(特に乗算器
及びアキュムレータ部41)において、1演算サイクル
=64タイムスロットの間で16タイムスロット毎の時
間区間で4つのチャンネル1〜4のフィルタ演算動作を
時分割的に行わせることができるようになっている。
【0054】B系列の各チャンネル5〜8に対応する演
算タイミング信号発生回路395〜398においても各
チャンネル間で16タイムスロットづつずれた所定のタ
イミングでタイミング信号T(49),T(19−3
4),T(51−2),…が使用され、上述と同様の各
種信号RLB1〜PDOB1,…RLB4〜PDOB4
が発生される。A系列に対応する演算タイミング信号発
生回路391〜394で発生された各信号RLA1〜P
DOA4はA系列のステートメモリ40に与えられ、B
系列に対応する回路395〜398で発生された各信号
RLB1〜PDOB4はB系列のステートメモリ42
(図10)に与えられる。
【0055】<ステートメモリ40:図13>図13に
おいて、A系列のステートメモリ40はA系列の各チャ
ンネル1〜4に対応するステートメモリ401〜404
を並列的に具えている。チャンネル1のステートメモリ
401のみ詳細を示したが、他のチャンネル2〜4のス
テートメモリ402〜404も同一構成であり、そこに
入力される信号が異なっている。上述の各チャンネル1
〜4に対応する演算タイミング信号発生回路391〜3
94(図12)から発生された各信号RLA1〜PDO
A1,…RLA4〜PDOA4は、自己のチャンネルに
対応するステートメモリ401〜404に夫々入力され
る。同図に示したステートメモリ40と乗算器及びアキ
ュムレータ部41の詳細を説明する前に、これらの回路
から成るディジタルフィルタ回路の基本動作について図
17及び図18に示す略図を参照して説明する。
【0056】<偶数次のフィルタ演算基本動作:図17
>図17は、上記ディジタルフィルタ回路において偶数
次(32次)から成るフィルタ特性を実現する場合のF
IR型フィルタ演算の基本動作を説明するための略図で
あり、(a)はブロック図、(b)は各演算タイミング
における(a)のシフトレジスタSR1,SR2の各ス
テージQ0〜Q15,Q16〜Q31内の楽音信号サン
プル値の状態を示す。第1のシフトレジスタSR1は1
6ステージを持ち、フィルタをかけるべきディジタル楽
音信号サンプル値データxnがセレクタSEL1を介し
て入力される。セレクタSEL1を介して新しいサンプ
ル値データxnを取り込むための信号としては前述のフ
ィルタデータサンプリングクロック信号RLA(チャン
ネル1の場合はRLA1)が使用され、シフトレジスタ
SR1のシフトクロックパルスとしては前述の第1シフ
トクロック信号φFFA(チャンネル1の場合はφFF
A1)が使用される。第1のシフトレジスタSR1の各
ステージQ0〜Q15にはサンブル点nからn−15まで
の16個のサンプル値データxn〜xn-15が保持され
る。このシフトレジスタSR1の最終ステージの出力は
セレクタSEL1を介してサンプリングクロック信号R
LAが無いとき第1ステージに戻される。このシフトレ
ジスタSR1は右方向のみにシフトされる。
【0057】第2のシフトレジスタSR2も16ステー
ジを持ち、第1のシフトレジスタSR1の出力がセレク
タSEL2を介して入力される。セレクタSEL2を介
してSR1の出力をSR2に取り込むための信号として
前述のフィルタデータサンプリングクロック信号RLA
が使用され、該SR2のシフトクロックパルスとしては
前述の第2シフトクロック信号φFLA(チャンネル1
の場合はφFLA1)が使用される。この第2のシフト
レジスタSR2の各ステージQ16〜Q31にはサンブ
ル点nからn−16からn−31までの16個のサンプ
ル値データxn-16〜xn-31が保持される。シフトレジス
タSR2の最終ステージQ31はセレクタSEL2を介
してサンブリングクロック信号RLAが無いとき第1ス
テージQ16に接続される。このシフトレジスタSR2
は双方向シフト型であり、サンプリングクロック信号R
LAが“1”のとき右シフトモード,“0”のとき左シ
フトモードとなる。シフトレジスタSR1、SR2のス
テージQ15とQ16の出力が加算器ADDで加算さ
れ、その加算結果が乗算器MULに与えられ、フィルタ
係数COEAが乗算される。その乗算結果はアキュムレ
ータACCに与えられ、全次数に関する乗算結果がそこ
でアキュムレートされる。こうして、アキュムレータA
CCからは1サンプル点分のフィルタ演算結果が出力さ
れる。
【0058】加算器ADDで2サンプル点分のサンプル
値データを加算し、それに共通のフィルタ係数COEA
を乗算器MULで乗算する理由は、前述の「フィルタ係
数の対称性」による。すなわち、対称関係にある2つの
サンプル値データには同じ値のフィルタ係数が掛けられ
るため、それらを別々に乗算せずに、加算した上で1回
の乗算によって両サンプル値データへの係数乗算を同時
に行うようにしている。図17の(b)において、たて
軸の演算タイミングはマスタクロックに応じた1タイム
スロット毎に進行する。そこに示した数字は便宜上の順
序を示すもので1演算サイクル(64タイムスロット)
中のタイムスロット番号を絶対的に示すものではない。
図の例では、演算タイミング1のとき、シフトレジスタ
SR1、SR2の各ステージQ0〜Q31にxnからxn
-31までの32サンプル点のサンプル値データが入って
いる。
【0059】図の例では、演算タイミング2のときサン
プリングクロック信号RLAが“1”になるものとして
いる。これにより、シフトクロック信号φFFA、φF
LAに応じてシフトレジスタSR1、SR2が1ステー
ジ右シフトされ、この演算タイミング2では図示のよう
な状態となる。このときのシフトクロック信号φFF
A、φFLAはチャンネル1の場合は図16のφFFA
1、φFLA1の欄に示すようにタイムスロット34で
発生するものである。同図から明らかなように、次の1
タイムスロットはシフトクロック信号φFFA、φFL
Aは発生せず、従って図17(b)の演算タイミング3
では各ステージQ0〜Q31の状態は変化しない。しか
し、演算タイミング3から18までの16タイムスロッ
ト幅は、チャンネル1でいえば乗算タイミング信号PD
OA1(図16)が発生するタイムスロット35〜50
に対応しており、この間で乗算及びアキュムレートが行
われる。つまり、演算タイミング3では、ステージQ1
5とQ16に入っているxn-14とxn-15のサンプル値デ
ータが加算器ADDで加算され、これに第16次のフィ
ルタ係数が掛けられ、その結果がアキュムレータACC
に保持される。
【0060】演算タイミング4から18までの間は、1
タイムスロット毎に、第1のシフトレジスタSR1は右
シフト、第2のシフトレジスタSR2は左シフトされ、
各ステージQ0〜Q31の状態は図示のように順次変化
する。従って、演算タイミング4ではxn-13とxn-16が
加算され、これに第15次のフィルタ係数が乗算され、
その結果がアキュムレータACCに累算される。次の演
算タイミング5ではxn-12とxn-17について同様の演算
が行われ、こうして対称位置にある2サンプル値データ
に関して同様のフィルタ係数演算が順次時分割で行わ
れ、演算タイミング18では最後の対称位置にあるxn+
1とxn-30に関して同様の演算が行われ、これで全次数
のフィルタ演算が完了する。次の演算タイミング19で
はもう一度シフトが行われ、図示のように、各ステージ
Q0〜Q31に遅延された時間順に各サンプル値データ
xn+1〜xn-30が並ぶ。
【0061】<奇数次のフィルタ演算基本動作:図18
>図18は、奇数次(31次)からなるフィルタ特性を
実現する場合のFIR型フィルタ演算の基本動作を説明
するための略図であり、(a)はブロック図、(b)は
各演算タイミングにおける(a)のシフトレジスタSR
1、SR2の各ステージQ0〜Q15,Q16〜Q30
の楽音信号サンプル値の状態を示す。図18(a)にお
ける各ブロックは図17(a)に示したものと同一であ
り、異なる点は、ステージQ16の出力がゲートGTを
介して加算器ADDに与えられることである。ゲートG
Tはインヒビット信号INHA(第1チャンネルではI
NHA1)を反転した信号によって制御されるようにな
っており、該信号INHAが“1”のときステージQ1
6の出力信号が加算器ADDに与えられることを禁止す
る。また、第2のシフトレジスタSR2の第16ステー
ジQ31は利用せず、第15ステージQ30と第1ステ
ージQ16がセレクタSEL2を介して接続される。図
18(b)において、第1シフトレジスタSR1の状態
変化は図17(b)と同じである。第2シフトレジスタ
SR2の状態変化は図17(偶数次の場合)とは若干異
なる。第2のシフトレジスタSR2のシフトクロック信
号φFLAは、演算タイミング4のとき偶数次モードで
は“1”であったが奇数次モードでは“0”となる(チ
ャンネル1の場合は図16のφFLA1の欄のタイムス
ロット36参照)。従って、奇数次モードでは、図18
(b)に示すように、第2のシフトレジスタSR2の内
容は、演算タイミング4ではシフトされず、演算タイミ
ング5から19の間で順次左シフトされる。
【0062】演算タイミング3では、シフトレジスタS
R1、SR2の各ステージQ0〜Q30には31次の各
遅延段階に対応する楽音信号サンプル値xn+1〜xn-29
が順番に入っており、ステージQ15に中央の次数のサ
ンプル値xn-14が入っている。図5に示されているよう
に、奇数次モードの対称の中央に位置する次数ではそれ
単独に対応して固有のフィルタ係数が割り当てられる。
従って、演算タイミング3では、インヒビット信号IN
HAによってステージQ16の出力を禁止し、中央次数
に対応するステージQ15の出力信号のみを加算器ADD
に加え、乗算器MULにおいて該中央次数に対応する固
有のフィルタ係数を乗算する。演算タイミング4では、
第1のシフトレジスタSR1のみが右シフトされ、第2
のシフトレジスタSR2はシフトされない。従って、ス
テージQ15にはxn-13が入り、Q16にはxn-15が入
っている。また、インヒビット信号INHAは“0”と
なり、ゲートGTが開かれる。こうして、中央次数の両
隣の次数に対応するサンプル値xn-13,xn-15が加算器
ADDに与えられて加算され、乗算器MULにおいて両
者に共通のフィルタ係数が乗算される。演算タイミング
5〜18ではSR1が順次右シフト、SR2が順次左シ
フトされ、図示のように対称位置にあるサンプル値がス
テージQ15,Q16に入り、両者が加算されて共通の
フィルタ係数が乗算される。
【0063】<ディジタルフィルタ回路:図13>図1
3を参照してチャンネル1に対応するステートメモリ4
01について説明する。16ステージの一方向シフトレ
ジスタ71は図17、図18の第1のシフトレジスタS
R1に対応するものであり、チャンネル1に対応する第
1のシフトクロック信号φFFA1によってシフト制御
される。トーンジェネレータ18(図1)から供給され
たディジタル楽音信号サンプル値データTDXはラッチ
回路73に入力され、ラッチタイミング信号XLDA1
に従ってチャンネル1のサンプル値データが該ラッチ回
路73に取込まれる。楽音信号サンプル値データTDX
における各チャンネルの時分割タイミング(図2参照)
に対応して、各チャンネル1〜8に対応するラッチタイ
ミング信号XLDA1〜XLDA4,XLDB1〜XL
DB4がデコーダ56(図12)から発生される。前述
のように、図12の各信号表示の末尾のかっこ内の数字
はその信号が発生するタイムスロット番号を示す。各チ
ャンネルに対応するステートメモリ内にはラッチ回路7
3と同様のラッチ回路が設けられており、各々に対応す
るラッチタイミング信号XLDA1〜XLDA4,XL
DB1〜XLDB4によって各チャンネル1〜8の楽音
信号サンプル値データTDXが別々にラッチされ、こう
してデマルチプレクスされる。
【0064】ラッチ回路73にラッチされたチャンネル
1の楽音信号サンプル値データはセレクタ74のA入力
にあたえられる。セレクタ74は図12の演算タイミン
グ信号発生回路391から与えられるフィルタデータサ
ンプリングクロック信号RLA1が“1”のときA入力
を選択し、それ以外のときはB入力に加わるシフトレジ
スタ71の第16ステージの出力信号を選択する。前述
の通り、この信号RLA1は楽音のピッチに同期するも
のであり、ピッチに同期してセレクタ74で新しいサン
プル値データ(A入力)を選択し、これをシフトレジス
タ71に与える。図16から明らかなように、信号RL
A1が“1”となるタイムスロット34で、シフトクロ
ック信号φFFA1が“1”となるので、シフトレジス
タ71はセレクタ74から与えられる新しいサンプル値
データを第1ステージ(Q0)に取込む。次のタイムス
ロット35ではシフト動作を一時休止し、続くタイムス
ロット36〜51で順次右シフトするのは前述の通りで
ある。
【0065】双方向シフトレジスタ72は図17、図1
8の第2のシフトレジスタSR2に対応するものであ
る。この双方向シフトレジスタ72の各ステージQ16
〜Q31は図示のようにセレクタSL1〜SL16とラ
ッチ回路LC1〜LC16から成っていて、双方向シフ
トが可能なように接続されている。すなわち、最初のス
テージQ16のセレクタSL1のA入力には第1のシフ
トレジスタ71の最終ステージ(Q15)の出力信号が
入力され、他の各ステージQ17〜Q31のセレクタS
L2〜SL16のA入力には夫々前のステージのラッチ
回路LC1〜LC15の出力が入力され。また、各ステ
ージのセレクタSL1〜SL16のB入力には次のステ
ージのラッチ回路LC2〜LC16,LC1の出力が入
力される。これにより、各セレクタSL1〜SL16の
A入力が選択されたとき右シフトモードとなり、B入力
が選択されたとき左シフトモードとなる。各セレクタS
L1〜SL16の選択信号としてサンプリングクロック
信号RLA1が用いられ、これが“1”のときA入力選
択つまり右シフトモードとなる。ただし、奇数次モード
のときにステージQ31を無効にするために、ステージ
Q30のセレクタSL15が他とは幾分異なっている。
つまり、このセレクタSL15にはC入力が設けられて
おり、そこにステージQ16の出力信号が加わる。チャ
ンネル1に関する偶奇識別データEOA1が“1”(つ
まり偶数次モード)のときアンド回路751が可能化さ
れ、信号RLA1が“0”のとき該アンド回路751の
出力が信号“1”となり、これによりセレクタSL15
がB入力を選択し、ステージQ31の出力がステージQ
30に与えられる(左シフトされる)。EOA1が
“0”のとき(奇数次モードのとき)アンド回路761
が可能化され、信号RLA1が“0”のときセレクタS
L15がC入力を選択し、ステージQ16の出力がステ
ージQ30に与えられる(Q31を飛越して左シフトさ
れる)。以上の構成により、第1及び第2のシフトレジ
スタ71,72の内容の変化状態は偶数次モードと奇数
次モードの別に応じて図17(b)、図18(b)に示した
ものと全く同様になる。
【0066】第2のシフトレジスタ72の第1ステージ
Q16の出力信号はゲート75を介してゲート76に与
えられる。ゲート75はインヒビット信号INHA1を
反転した信号によって制御されるもので、図18のゲー
トGTに対応するものである。ゲート76は、第1のシ
フトレジスタ71の出力信号(ステージQ15の出力信
号)とゲート75を介して与えられる第2のシフトレジ
スタ72の出力信号(ステージQ16の出力信号)を入
力し、乗算タイミング信号PDOA1(図16参照)に
よって開放される。ゲート76の出力は乗算器及びアキ
ュムレート部41の加算器77に与えられ、そこで2つ
の楽音信号サンプル値データが加算される。この加算器
77は図17、図18の加算器ADDに対応するもので
ある。加算器77の出力は遅延回路78で1タイムスロ
ット遅延されて乗算器79に入力される。乗算器79は
遅延回路78を介して与えられる楽音信号サンプル値デ
ータに遅延回路80を介して与えられるフィルタ係数デ
ータCOEAを乗算するものである。乗算器79の出力
は遅延回路81で4タイムスロット遅延されてシフタ8
2に与えられる。シフタ82のシフト制御入力には5タ
イムスロットの遅延を設定する遅延回路83を介して重
みづけデータWEIAが与えられる。この乗算器79と
シフタ82は、図17、図18の乗算器MULに対応す
るものである。すなわち、前述の通り、フィルタ係数デ
ータCOEAはフィルタ係数の有効ビットのデータであ
り、乗算器79においてこのフィルタ係数の有効ビット
と楽音信号サンプル値データとの乗算が行われる。そし
て、この乗算結果をシフタ82において重みづけデータ
WEIAの値に応じたビット数だけシフトすることによ
り、フィルタ係数の実数と楽音信号サンプル値データと
の乗算が完了する。
【0067】シフタ82の出力はアキュムレータ84に
与えられ、1チャンネル分の各次数に対応する乗算結果
がアキュムレートされる。アキュムレータ84の出力は
ラッチ回路85に入力され、演算終了タイミング信号F
ENDAに従ってラッチされる。この信号FENDAは
図12のデコーダ56から発生される。同図中に表示さ
れているように、この信号FENDAはタイムスロット
8,24,40,56において“1”となる。タイムス
ロット56ではチャンネル1の演算結果をラッチし、8
ではチャンネル2の演算結果をラッチし、24ではチャ
ンネル3の演算結果をラッチし、40ではチャンネル4
の演算結果をラッチする。デコーダ56からはB系列の
演算終了タイミング信号FENDBも同様に発生され
る。
【0068】乗算器及びアキュムレート部41は、4つ
のチャンネルによって時分割共用される。すなわち、加
算器77には、チャンネル1のステートメモリ401の
ゲート76の出力のみならず、チャンネル2〜4のステ
ートメモリ402〜404内に設けられている同様の機
能をもつゲートの出力信号が多重的に入力される。各ス
テートメモリ401〜404の出力ゲート76には、1
6タイムスロット幅の乗算タイミング信号PDOA1〜
PDOA4が16タイムスロットづつずれた異なるタイ
ミングで夫々入力される。従って、加算器77には各チ
ャンネル1〜4の信号が16タイムスロット毎に時分割
多重的に入力される。フィルタ係数データCOEA及び
重みづけデータWEIAは、4つのチャンネルのものが
上述と同じタイミングで16タイムスロット毎に時分割
多重化されており、1つのチャンネルに関する16タイ
ムスロットにおいては1次から16次までのデータが時
分割多重化されている。B系列のステートメモリ42と
乗算器及びアキュムレータ部43も図13と同一の構成
であり、但し、各種信号のタイミングが適宜異なってい
る。
【0069】図13に示されたようなA系列及びB系列
のディジタルフィルタ回路(すなわちステートメモリ4
0,42と乗算器およぴアキュムレータ部41,43)
における各チャンネル1〜8に関するフィルタ動作のタ
イミングを図19に示す。図19において、シフト1の
欄には第1のシフトレジスタ(チャンネル1の場合は7
1)のシフトタイミングを示し、シフト2の欄には第2
のシフトレジスタ(チャンネル1の場合は72)のシフ
トタイミングを示している。矢印の方向はシフト方向
(右シフト又は左シフト)を示している。各チャンネル
のシフトタイミングは演算タイミング信号発生回路39
1〜398(図12)から発生される第1及び第2のシ
フトクロック信号φFFA1〜φFFB4、φFLA1
〜φFLB4の発生タイミングに対応している。シフト
動作には、フィルタ演算のためのシフト動作と記憶デー
タリフレッシュのためのダミーシフト動作とがある。例
えばチャンネル1の場合、タイムスロット4〜19での
シフトがダミーシフトである。シフト2の欄における
(←)の記号は偶数次モードのとき左シフトを行い、奇
数次モードのときシフトを行わないことを示す。
【0070】図19において、INHの欄はインヒビッ
ト信号INHA1〜INHB4の発生タイミングを示し
ている。奇数次モードのときは○印のタイムスロットに
おいてインヒビット信号INHA1〜INHB4が
“1”となる。PDOの欄は、各チャンネルのステート
メモリ40,42から乗算器及びアキュムレータ部4
1,43に楽音信号サンプル値データが入力されるタイ
ミングを示している。これは各チャンネルの乗算タイミ
ング信号PDOA1〜PDOB4の発生タイミングに対
応している。SUMの欄は、アキュムレータ84の出力
タイミングを示している。PDOとSUMのタイミング
の間に6タイムスロットの遅れがあるのは、遅延回路7
8,81による5タイムスロットの遅れとアキュムレー
ト84による1タイムスロットの遅れによる。アキュム
レータ84の出力タイミングの最後のタイムスロットで
は演算終了タイミング信号FENDAが発生し、アキュ
ムレータ84の出力をラッチ回路85に取り込む。
【0071】<パラメータメモリ47:図20>図20
はパラメータメモリ47の記憶フォーマットの一例を示
しており、キーグループテーブル、タッチグループテー
ブル、パラメータアドレステーブルとパラメータバンク
から成っている。実際のフィルタパラメータはパラメー
タバンクに記憶されており、パラメータアドレステーブ
ルにはパラメータバンクから読み出すべきパラメータの
アドレスデータが記憶されている。キーグループテーブ
ルは各鍵に対応してその鍵をグループ化する情報を記憶
している。一例として鍵数は88、グループ数は44で
あり、キーグループテーブルでは各鍵に対応するアドレ
ス位置にその鍵の属するキーグループに関する相対アド
レスデータ(キーグループアドレスという)を記憶して
いる。従って、キーグループテーブルはキーコードKC
によってアドレスされる。このキーグループテーブルは
パラメータメモリ47の所定の絶対アドレス(オフセッ
トアドレスOADSという)から始まる記憶エリアを占
めている。
【0072】タッチグループテーブルは各音色毎の鍵タ
ッチ強度の各段階に対応してそのタッチ強度をグループ
化する情報を記憶している。一例として音色数は32で
あり、このタッチグループテーブルは音色コードVNの
値0〜31に対応する32の音色別エリアを含んでお
り、またタッチコードTCHによって表現し得るタッチ
強度の段階は一例として64であり、各音色別エリアは
タッチ0から63に対応する64個のアドレス位置を有
している。各タッチ強度に対応するアドレス位置にはそ
のタッチ強度の属するタッチグループに関する相対アド
レスデータ(タッチグループアドレスという)が記憶さ
れている。一例としてタッチグループ数は16である。
従って、タッチグループテーブルは音色コードVNとタ
ッチコードTCHによってアドレスされる。このタッチ
グループテーブルはパラメータメモリ47の所定の絶対
アドレス(これをオフセットアドレスOAD1という)
から始まる記憶エリアを占めている。このタッチグルー
プテーブルを読み出すための絶対アドレスデータは、6
ビットのタッチコードTCHの上位に5ビットの音色コ
ードVNを組合せて11ビットの相対アドレスデータ
(オフセットアドレスOAD1を0とするアドレス)を
作成し、これをオフセットアドレスOAD1に加算する
ことにより作成される。
【0073】パラメータアドレステーブルは、各キーグ
ループ毎に、かつ各音色毎に、各タッチグループに対応
するフィルタパラメータを記憶しているアドレスの相対
アドレスデータ(パラメータアドレスという)を記憶し
ている。このパラメータアドレステーブルは、各キーグ
ループ0〜43に対応する44個のキーグループエリア
を含んでおり、このキーグループエリアは上述のキーグ
ループテーブルから読み出したキーグループアドレスに
よってアドレスされる。各キーグループエリアは音色0
〜31に対応する32個の音色別エリアを夫々含んでお
り、この音色別エリアは音色コードVNによってアドレ
スされる。各音色別エリアはタッチグループ0〜15に
対応する16個のアドレス位置を有しており、各アドレ
ス位置は上述のタッチグループテーブルから読み出した
タッチグループアドレスによってアドレスされる。な
お、1アドレス位置に2バイト分の記憶位置が割当てら
れており、そこに上記パラメータアドレスデータが12
ビットで記憶されている。このパラメータアドレステー
ブルはパラメータメモリ47の所定の絶対アドレス(こ
れをオフセットアドレスOAD2という)から始まる記
憶エリアを占めている。このパラメータアドレステーブ
ルを読み出すための絶対アドレスデータは、最下位の1
ビットを“0”又は“1”に設定し(これは1アドレス
位置が2バイトつまり2絶対アドレスを占めるため)、
その上位に4ビットのタッチグループアドレスデータを
位置させ、更にその上位に5ビットの音色コードVNを
位置させ、更にその上位に6ビットのキーグループコー
ドを位置させて合計16ビットの相対アドレスデータ
(オフセットアドレスOAD2を0とするアドレス)を
作成し、これをオフセットアドレスOAD2に加算する
ことにより作成される。
【0074】パラメータバンクは一例として2620種
類のフィルタパラメータを記憶しており、パラメータア
ドレス0から2619に対応する2620個のパラメー
タ記憶エリアを含んでいる。1つのパラメータ記憶エリ
アは32バイトの記憶位置(32個の絶対アドレス位
置)を含んでおり、16次数分の1組のフィルタ係数に
対応するパラメータを記憶している。1次数分のフィル
タ係数は2バイトの記憶位置に記憶されており、その内
訳は、前述の通り、12ビットのフィルタ係数データ
(COE)と3ビットの重みづけデータ(WEI)と1
ビットの偶奇識別データ(EO)から成る。但し、重み
づけデータ(WEI)と偶奇識別データ(EO)は1組
のパラメータにおいては各次数間で共通であるため第1
次の記憶位置にのみ記憶し、他の次数の記憶位置には記
憶しない。しかし、重みづけデータ(WEI)は各次数
毎に独立に記憶するようにすることも可能である。この
パラメータバンクは上述のパラメータアドレステーブル
から読み出されたパラメータアドレスによってアドレス
される。パラメータバンクはパラメータメモリ47の所
定の絶対アドレス(これをオフセットアドレスOAD3
という)から始まる記憶エリアを占めている。このパラ
メータバンクを読み出すための絶対アドレスデータは、
12ビットのパラメータアドレスデータを17ビットの
相対アドレスデータ(オフセットアドレスOAD3を0
とするアドレス)の上位12ビットに位置させることに
より該相対アドレスデータを作成し、これをオフセット
アドレスOAD3に加算することにより作成される。こ
の絶対アドレスデータの下位5ビットを32ステップで
順次変化させることにより、パラメータアドレスによっ
て指定された1パラメータ記憶エリア内の16次数分か
らなる1組のフィルタパラメータが順次読み出される。
【0075】図20に示したような階層化されたパラメ
ータメモリ構造は、メモリ容量を節約することができる
ので有利である。このようにせずに、44キーグルー
プ、32音色、16タッチグループの組合せのすべて
(22528通り)に対応して個別にフィルタパラメー
タを記憶したとすると、22528×32バイトの記憶
容量が要求されるが、図20のようにすればパラメータ
アドレステーブルの1408(=44×32)×32バ
イトとパラメータバンクの2620×32バイトを合わ
せた4028×32バイトの記憶容量しか要求されな
い。つまり、キーグループ、音色、タッチグループの組
合せが異なっていてもフィルタパラメータは共通のもの
を使用できる場合があるので、図20の例では2252
8通りの組合せに対して2620種のパラメータを共用
する構造としており、これによりメモリ容量の節約を図
っている。
【0076】<パラメータプロセシングユニット45、
パラメータセレクタ46、パラメータメモリ47、パラ
メータ供給回路48、49:図14>パラメータプロセ
シングユニット45は、前述のスタティックモードのた
めに、上述したようなパラメータメモリ47の読み出し
を制御するものである。プログラムメモリ451には、
上述のようなパラメータメモリ47の読み出し制御を実
行するプログラムが記憶されている。プログラムカウン
タ452はプログラムメモリ451を読み出すためのプ
ログラムステップ信号PCを発生するもので、8ステー
ジのシフトレジスタ86と加算器87、ゲート88、8
9、エンド検出回路90を含んでおり、8チャンネル分
のカウント動作を時分割的に行う。キーオンパルスKO
NPがインバータ91で反転され、ゲート88の制御入
力に加わる。このキーオンパルスKONPは、鍵の押し
始めで信号“1”となるもので、各チャンネルに対応す
るものが時分割多重化されている。加算器87はシフト
レジスタ86の出力に対してゲート89から与えられる
“1”を加算するもので、その加算結果はゲート88を
介してシフトレジスタ86に与えられる。エンド検出回
路90はシフトレジスタ86の出力の値がプログラムの
最終ステップになったか否かを検出するもので、最終ス
テップに至らない場合は信号“0”を出力し、インバー
タ92を介して信号“1”をゲート89の制御入力に与
え、1カウントアップを指示する信号“1”が加算器8
7に与えられるようにするが、最終ステップに至った場
合は、信号“1”を出力し、インバータ92を介して信
号“0”をゲート89に与え、該ゲート89を閉じ、カ
ウントが行われないようにする。
【0077】以上の構成により、プログラムカウンタ4
52の内容つまりステップ信号PCは、キーオンパルス
KONPが発生したとき「0」にリセットされ、以後シ
フトレジスタ86が一巡する毎に(8タイムスロット毎
に)1カウントアップされ、やがて最終ステップに到達
するとカウントが停止される。一例としてプログラムス
テップ数は37であり、カウンタ452から出力される
ステップ信号PCは「0」から「36」(最終ステッ
プ)まで順次変化する。ステップ信号PCはシフトレジ
スタ86の出力であり、8チャンネルのものが時分割多
重化されている。プログラムメモリ451は入力された
ステップ信号PCのステップに応じて選択制御信号SE
LC1〜SELC4を読み出し、かつオフセットアドレ
スメモリ453を読み出すためのアドレスデータを読み
出す。オフセットアドレスメモリ453は前述のオフセ
ットアドレスOADS〜OAD3の値を記憶している。
オフセットアドレスメモリ453から読み出されたオフ
セットアドレスデータADOF(OADS〜OAD3の
いずれか)は加算器454に入力される。加算器454
はセレクタ455から与えられる相対アドレスデータR
ADDとオフセットアドレスデータADOFとを加算
し、その出力をアドレスデータPRADとしてパラメー
タメモリ47のアドレス入力に加わる。
【0078】キーグループアドレスレジスタ456、タ
ッチグループアドレスレジスタ457、パラメータアド
レスレジスタ458は夫々8ステージのシフトレジスタ
から成り、キーグループアドレスデータKEYG、タッ
チグループアドレスデータTCHG、パラメータアドレ
スデータPADを各チャンネル毎に時分割的に記憶する
ものである。各レジスタ456〜458の入力側にセレ
クタ93〜95が設けられており、パラメータメモリ4
7から読み出されたデータが各セレクタの一方の入力に
加わる。各セレクタ93〜95の他方の入力には各レジ
スタ456〜458の出力が加わる。セレクタ93〜9
5の選択制御信号SELC2〜SELC4はプログラム
メモリ451から与えられるようになっており、プログ
ラムのステップに応じて、パラメータメモリ47の読み
出し出力データをレジスタ456〜458に取り込む
か、あるいはレジスタ456〜458に一旦取り込んだ
データを循環保持するかの制御を行う。明らかなよう
に、パラメータメモリ47から前述のキーグループアド
レスデータが読み出されたときこれをキーグループアド
レスレジスタ456に取り込み、前述のタッチグループ
アドレスデータが読み出されたときこれをタッチグルー
プアドレスレジスタ457に取り込み、前述のパラメー
タアドレスデータが読み出されたときこれをパラメータ
アドレスレジスタ458に取り込むように選択制御信号
SELC2〜SELC4が発生される。各レジスタ45
6〜458にストアされたアドレスデータKEYG、T
CHG、PADはセレクタ455に入力される。セクタ
455にはキーコードKC、音色コードVN及びタッチ
コードTCH更にはプログラムカウンタ452から出力
されるステップ信号PCの最下位ビットPCLSB及び
このステップ信号PCから「4」(2進の“100”)
を引いたデータPCー4も入力されている。セレクタ4
55ではプログラムメモリ451から与えられる選択制
御信号SELC1に応じて入力データを所定の組合せで
選択しかつ選択したデータを相対アドレスデータRAD
Dにおける所定の重みに対応するビット位置に位置さ
せ、こうして相対アドレスデータRADDを作成し出力
する。
【0079】このパラメータプロセシングユニット45
において実行される37ステップの処理内容は下記の通
りである。 PC=0のとき: キーグループテーブル読出し処理 選択制御信号SELC1によりキーコードKCを選択
し、オフセットアドレスデータADOFとしてキーグル
ープテーブルのオフセットアドレスOADSを読み出
す。また、選択制御信号SELC2によりパラメータメ
モリ47の出力データをキーグループアドレスレジスタ
456に取り込む。これにより、パラメータメモリ47
のキーグループテーブルからキーコードKCに対応する
キーグループアドレスが読み出され、これがレジスタ4
56にストアされる。 PC=1のとき: タッチグループテーブル読出し処理 信号SELC1により音色コードVNとタッチコードT
CHを選択し、最下位ビットにTCHを、その上位にV
Nを、位置させて相対アドレスデータRADDを作成す
る。オフセットアドレスデータADOFとしてタッチグ
ループテーブルのオフセットアドレスOAD1を読み出
す。また、信号SELC3によりパラメータメモリ47
の出力データをタッチグループアドレスレジスタ457
に取り込む。これにより、パラメータメモリ47のタッ
チグループテーブルから音色コードVN及びタッチコー
ドTCHに対応するタッチグループアドレスが読み出さ
れ、これがレジスタ457にストアされる。
【0080】PC=2,3のとき: パラメータアドレ
ステーブル読出し処理 信号SELC1によりキーグループアドレスデータKE
YG、音色コードVN、タッチグループアドレスデータ
TCHG、ステップ信号PCの最下位ビットPCLSB
を選択し、最下位ビットからPCLSB、TCHG、V
N、KEYGの順で位置させて相対アドレスデータRA
DDを作成する。データADOFとしてパラメータアド
レステーブルのオフセットアドレスOAD2を読み出
す。また、信号SELC4によりパラメータメモリ47
の出力データをパラメータアドレスレジスタ458に取
り込む。これにより、パラメータメモリ47のパラメー
タアドレステーブルから適切なパラメータアドレスが読
み出され、これがレジスタ458にストアされる。前述
の通り、1つのパラメータアドレスデータは12ビット
から成り、2バイトの記憶位置に記憶されている(図2
0参照)。ビットPCLSBが“0”のとき(PC=2
のステップ)、下位8ビットのパラメータアドレスデー
タが読み出され、PCLSBが“1”のとき(PC=3
のステップ)、その上位4ビットのパラメータアドレス
データが読み出される。セレクタ95では、このパラメ
ータアドレスデータが12ビットデータに並列化される
ようにビット位置を振分けてレジスタ458にストアす
る。
【0081】PC=4〜35のとき: パラメータバン
ク読出し処理 信号SELC1によりパラメータアドレスデータPAD
と4減算したステップ信号PCー4を選択し、最下位ビ
ットからPCー4、PADの順で位置させて相対アドレ
スデータRADDを作成する。また、データADOFと
してパラメータバンクのオフセットアドレスOAD3を
読み出す。信号PCー4は、PC=4〜35の32ステ
ップにおいてその値が「0」から「31」まで変化す
る。従って、パラメータアドレスによって指定された3
2バイトから成る1組のフィルタパラメータ(図20参
照)がパラメータメモリ47のパラメータバンクから1
バイトづつ順次読み出される。
【0082】PC=36のとき:プログラムカウンタ4
52をストップし、フィルタパラメータの読み出しシー
ケンスを終了する。パラメータメモリ47から読み出さ
れたフィルタパラメータはタイミング同期化回路459
に入力される。この回路459はプログラムステップ信
号PCとタイミング信号発生回路39のデコーダ56
(図12)から与えられるタイミング信号群TS1を受
入れ、これらの信号に基づき、各次数のフィルタパラメ
ータを所定のタイミングに同期化して出力する。この同
期化回路459の出力はスタティックモード用のフィル
タパラメータSPRとしてパラメータセレクタ46のA
入力に与えられる。パラメータセレクタ46のB入力に
はマイコンインタフェース44(図10)から出力され
たダイナミックモード用のフィルタパラメータDPRが
与えられる。セレクタ46の選択制御入力SBにはマイ
コンインタフェース44から出力されたダイナミック/
スタティック選択信号DSが与えられ、ダイナミックモ
ード時はB入力のパラメータDPRを選択し、スタティ
ックモード時はA入力のパラメータSPRを選択する。
【0083】セレクタ46の出力はA,B各系列のパラ
メータ供給回路48、49に入力される。A系列の回路
48のみ詳細例を示したが、B系列の回路49も同一構
成である。パラメータ供給回路49において、分配回路
485は、セレクタ46からシリアルに与えられるパラ
メータデータのうちA系列のチャンネル1〜4に関する
データを取り込み、これを各チャンネル別に並列化する
と共に、フィルタ係数データ(チャンネル1ではCOE
A1)、重みづけデータ(チャンネル1ではWEIA
1)、偶奇識別データ(チャンネル1ではEOA1)の
別に並列化し、これらを各チャンネルに対応する記憶回
路481〜484に分配する。このような分配制御のた
めに、適宜のタイミング信号TS2がタイミング信号発
生回路39のデコーダ56(図12)から発生され、分
配回路485に与えられる。
【0084】記憶回路481〜484はチャンネル1に
ついて詳細例を示すが、他のチャンネルに関しても同様
である。12ビットのフィルタ係数データCOEA1は
セレクタ96を介して16ステージのシフトレジスタ9
7に入力される。このフィルタ係数データCOEA1は
16タイムスロットにおいて16次数分のデータが時分
割多重化されており、この16次数分のデータがシフト
レジスタ97の各ステージに取り込まれる。シフトレジ
スタ97の内容はセレクタ96を介して循環保持され
る。3ビットの重みづけデータWEIA1はラッチ回路
98に入力される。1ビットの偶奇識別データEOA1
はラッチ回路99に入力される。セレクタ96及びラッ
チ回路98、99の制御は、図示しない適宜の制御信号
によって適切なタイミングで行われる。すなわち、スタ
ティックモードのときは、鍵の押し始めに応答してパラ
メータメモリ47から読み出された16次数分のパラメ
ータデータが、タイミング同期化回路459、セレクタ
46、分配回路485を経由して記憶回路481に入力
されるタイミングに同期して、セレクタ96が16次数
分のフィルタ係数データCOEA1をシフトレジスタ9
7に取り込み、ラッチ回路98、99が重みづけデータ
WEIA1、偶奇識別データEOA1をラッチする。以
後、そのチャンネルに対して新しい押圧鍵が割当てられ
るまで、シフトレジスタ97、ラッチ回路98、99の
記憶は保持される。一方、ダイナミックモードのとき
は、マイコンインタフェース44(図10)からセレク
タ46、分配回路485を経由して8次数分のダイナミ
ック制御用パラメータデータDPRが与えられるタイミ
ングに同期して、該パラメータデータDPRのうち8次
数分のフィルタ係数データCOEA1をシフトレジスタ
97に取り込み、重みづけデータWEIA1をラッチ回
路98にラッチし、偶奇識別データEOA1をラッチ回
路99にラッチする。以後、新たなダイナミック制御用
パラメータデータDPRが与えられるまで、シフトレジ
スタ97、ラッチ回路98、99の記憶は保持される。
なお、ダイナミックモードにおいては、シフトレジスタ
97の16ステージのうち、9次から16次に対応する
8ステージに8次数分のダイナミック制御用パラメータ
のフィルタ係数データをストアし、1次から8次に対応
する8ステージの内容は0にしておく。
【0085】各記憶回路481〜484のシフトレジス
タ97から出力されるフィルタ係数データはセレクタ4
86に与えられ、そこでタイミング信号TS3に従って
各チャンネルのものが順次選択され、時分割多重化され
る。こうして、チャンネル1〜4に関するフィルタ係数
データが時分割多重化され、A系列のフィルタ係数デー
タCOEAとしてA系列の乗算器及びアキュムレータ部
41(図13)に供給される。各記憶回路481〜48
4のラッチ回路98から出力される重みづけデータはセ
レクタ487に与えられ、そこでタイミング信号TS4
に従って各チャンネルのものが順次選択され、時分割多
重化される。こうして時分割多重化されたチャンネル1
〜4の重みづけデータWEIAはA系列の乗算器及びア
キュムレータ部41(図13)に供給される。各記憶回
路481〜484のラッチ回路99にラッチされた各チ
ャンネル1〜4の偶奇識別データEOA1〜EOA4は
対応するチャンネルのステートメモリ401〜404
(図13)に並列的に与えられる。
【0086】<ピッチ同期出力回路50:図15>図1
5において、セレクタ501のB入力にはA系列の乗算
器及びアキュムレータ部41(図10、図13)から出
力されたチャンネル1〜4のフィルタ済み楽音信号サン
プル値データSMAが時分割多重的に与えられる。図1
3のラッチ回路85において各チャンネル1〜4のフィ
ルタ済み出力が取り込まれるタイミングは図19のSU
Mの欄の累算最終タイムスロット(斜線の部分)であ
り、これにより、各チャンネル1〜4のフィルタ済みサ
ンプル値データSMAのチャンネルタイミングを示すと
図16のようになる。セレクタ501のC入力にはB系
列の乗算器及びアキュムレータ部43(図10)から出
力されたチャンネル5〜8のフィルタ済み楽音信号サン
プル値データSMBが時分割多重的に与えられる。この
データSMBのチャンネルタイミングは図16のようで
ある。
【0087】セレクタ501のA入力には8ステージの
シフトレジスタ502の出力が与えられ、該セレクタ5
01の出力は該シフトレジスタ502に入力される。こ
のセレクタ501とシフトレジスタ502は、各チャン
ネル1〜8のフィルタ済みサンプル値データを図2のP
S1のチャンネルタイミングに示すような1タイムスロ
ット単位の高速の時分割タイミングに従って時分割多重
化するためのものである。図12のデコーダ56からタ
イムスロット57、13、26、46において“1”と
なるタイミング信号1REGLDAとタイムスロット1
1、31、44、64において“1”となるタイミング
信号1REGLDBが発生され、これが図15のセレク
タ501のB選択制御入力SBとC選択制御入力SCに
与えられる。これにより、B入力に与えられるデータS
MAのうち、チャンネル1のデータがタイムスロット5
7(これは図2に示すPS1のチャンネルタイミングの
うちチャンネル1のタイミングに対応する)で選択さ
れ、チャンネル2のデータがタイムスロット13(図2
のPS1のチャンネル2のタイミング)で選択され、チ
ャンネル3のデータがタイムスロット26(図2のPS
1のチャンネル3のタイミング)で選択され、チャンネ
ル4のデータがタイムスロット46(図2のPS1のチ
ャンネル4のタイミング)で選択される。また、C入力
に与えられるデータSMBのうち、チャンネル5のデー
タがタイムスロット11(図2のPS1のチャンネル5
のタイミング)で選択され、チャンネル6のデータがタ
イムスロット31(図2のPS1のチャンネル6のタイ
ミング)で選択され、チャンネル7のデータがタイムス
ロット44(図2のPS1のチャンネル7のタイミン
グ)で選択され、チャンネル8のデータがタイムスロッ
ト64(図2のPS1のチャンネル8のタイミング)で
選択される。
【0088】タイミング信号1REGLDA、1REG
LDBをノア回路503で反転した信号がセレクタ50
1のA選択制御入力SAに与えられる。従って、上述の
各タイミングでシフトレジスタ502に取り込まれた各
チャンネルのフィルタ済みサンプル値データは、それ以
外のタイミングでは該シフトレジスタ502で循環保持
される。シフトレジスタ502の出力はセレクタ504
のA入力に与えられる。セレクタ504の出力は8ステ
ージのシフトレジスタ505に入力される。シフトレジ
スタ505の出力はセレクタ504のB入力を介して入
力側に戻される。セレクタ504及びシフトレジスタ5
05は、ディジタルフィルタの出力楽音信号をそのピッ
チに同期して再サンプリングするためのものである。セ
レクタ504のA選択制御入力SAには入力インタフェ
ース38(図11)から与えられる遅延されたピッチ同
期信号PS1Dが8タイムスロットの遅延回路506を
介して入力される。
【0089】図11において、ピッチ同期信号PS1は
オア回路51を介して64ステージのシフトレジスタ1
00に入力される。このシフトレジスタ100で24タ
イムスロット遅延されたピッチ同期信号がアンド回路1
01に入力され、40タイムスロット遅延されたものが
アンド回路102に入力され、48タイムスロット遅延
されたものがアンド回路103に入力され、64タイム
スロット遅延されたものがアンド回路104に入力され
る。各アンド回路101〜104の他の入力には、図1
2のデコーダ56から発生されたタイミング信号PSS
1〜PSS4が夫々入力される。各アンド回路101〜
104の出力はオア回路105に与えられ、遅延された
ピッチ同期信号PS1Dが得られる。各信号PSS1〜
PSS4の発生タイミングは図12中にかっこ書きで示
した通りである。そこにおいて、例えば「1y8」なる
表示は8タイムスロット周期で1番目のタイムスロット
で信号“1”が発生することを示す。従って、タイミン
グ信号PSS1の場合、「1y8,3y8」であるか
ら、8タイムスロット周期で1番目と3番目のタイムス
ロットで夫々信号“1”が発生する。図12中の各信号
PSS1〜PSS4のかっこ内の表示と図2のPS1の
チャンネルタイミングとを参照すれば明らかなように、
信号PSS1はPS1におけるチャンネル1と3のタイ
ミングで“1”となり、PSS2はPS1におけるチャ
ンネル2と6のタイミングで“1”となり、PSS3は
PS1におけるチャンネル3と7のタイミングで“1”
となり、PSS4はPS1におけるチャンネル4と8の
タイミングで“1”となる。以上により、チャンネル1
と5のピッチ同期信号PS1は24タイムスロット、2
と6のPS1は40タイムスロット、3と7のPS1は
48タイムスロット、4と8のPS1は64タイムスロ
ット、夫々遅延したものを遅延されたピッチ同期信号P
S1Dとする。このようにチャンネルによって遅延時間
が異なる理由は、アダプティブディジタルフィルタ装置
21(図10)における各チャンネル1〜4、5〜8の
演算タイミングのずれに合せたからである。
【0090】図15に戻り、遅延されたピッチ同期信号
PS1Dは遅延回路506で更に8タイムスロット遅延
され、セレクタ504の入力SAに与えられる。セレク
タ504は或るチャンネルの信号PS1Dが“1”のと
きそのチャンネルのフィルタ済みサンプル値データをシ
フトレジスタ502から取り込み、シフトレジスタ50
5に入力する。それ以外のときは、シフトレジスタ50
5の内容がセレクタ504のB入力を介して循環保持さ
れる。こうして、セレクタ504及びシフトレジスタ5
05の回路において、各チャンネルのフィルタ済みサン
プル値データがそのチャンネルで発生すべき楽音のピッ
チに同期して再サンプリングされる。
【0091】<フィルタ演算のピッチ同期/非同期の切
替>マイコンインタフェース44(図10)から図11
のオア回路51に与えられるピッチ同期/非同期指定信
号PASYは、ピッチ同期でフィルタ演算を行う場合常
に“0”であり、入力インタフェース38はピッチ同期
信号PS1に応答してフィルタ演算要求信号φF1〜φ
F8及び遅延されたピッチ同期信号PS1Dを発生す
る。従って、ピッチ同期信号PS1が発生したとき、つ
まりフィルタをかけるべき楽音信号のピッチに同期した
サンプリング周期で、ディジタルフィルタ演算が行われ
る。これにより、得られるフィルタ特性は移動フォルマ
ントとなる。ピッチに同期させずにフィルタ演算を行う
場合は、ピッチ同期/非同期指定信号PASYを常に
“1”とする。従って、図11のオア回路51の出力は
ピッチ同期信号PS1の有無にかかわらず、常に“1”
となる。従って、入力インタフェース38は各フィルタ
演算サイクル(64タイムスロット)毎に一定周期でフ
ィルタ演算要求信号φF1〜φF8及び信号PS1Dを
発生する。従って、ディジタルフィルタ演算におけるサ
ンプリング周波数はピッチに無関係に一定(例えば50
kHz)となり、得られるフィルタ特性は固定フォルマ
ントとなる。
【0092】<変更例>図15に示したピッチ同期出力
回路50はシフトレジスタ502、505を用いてチャ
ンネル時分割でピッチ同期処理を行っているが、これに
限らず、各チャンネル毎に並列的に記憶回路を設け、並
列的にピッチ同期処理を行うようにしてもよい。上記実
施例では、ディジタルフィルタとして係数が対称性を示
すFIRフィルタを用いたが、これに限らず非対称の係
数のFIRフィルタを用いてもよい。また、フィルタ型
式はFIRに限らずIIR(無限インパルス応答)やそ
の他の型式を用いるようにしてもよい。図20に示した
パラメータメモリの記憶フォーマットはこれに限定され
ず、様々な変更が可能である。また、パラメータメモリ
のアドレスの仕方は上記実施例に示した手順に限らず、
様々な変更が可能である。例えば、実施例ではキーグル
ープテーブルを先にアクセスし、次にタッチグループテ
ーブルをアクセスしているが、これは逆であってもよ
い。また、図14ではプログラムメモリ451に読み出
し手順を予め記憶したマイクロプログラミング方式を採
用し、これによりパラメータメモリ47の読み出しを行
うようにしているが、このようなマイクロプログラム方
式によらずに、完全なハードワイヤード回路あるいは完
全なソフトウェアプログラムによって読み出し制御を行
うようにしてもよい。
【0093】また、上記実施例ではパラメータ決定因子
が音高/音域、鍵タッチ、音色種類の3種であるとした
が、これに限らない。例えば時間経過をパラメータ決定
因子に含め、楽音発音時の時間経過に応じて変化するフ
ィルタパラメータを読み出すようにしてもよい。その場
合、図14のパラメータプロセシングユニット45は楽
音発音中も動作し得るように適宜設計するものとする。
また、ブリリアンス操作子等の適宜の手動操作子の操作
量に応じた出力をパラメータ決定因子として用いてもよ
い。また、上記実施例では複音型の電子楽器においてこ
の発明を適用しているが、単音型の電子楽器においても
適用することができるのは勿論である。また、専用の電
子楽器に限らず、楽音信号発生又は処理機能を持つ装置
一般においてこの発明を適用することができる。上記実
施例では、トーンジェネレータからアダプティブディジ
タルフィルタ装置に入力されるディジタル楽音信号サン
プル値データそれ自体がピッチに同期してサンプリング
された状態となっているものとしているが、これに限ら
ない。例えば、ピッチ非同期の固定サンプリング周期で
サンプリングされたディジタル楽音信号をディジタルフ
ィルタ装置に入力する場合でも、ピッチ同期信号によっ
てこの入力ディジタル楽音信号をサンプリングし直しな
がらピッチに同期したフィルタ演算動作を行うようにす
ればよい。また、上記実施例ではピッチ同期信号発生回
路はトーンジェネレータ内に含まれており、そこで発生
したピッチ同期信号をアダプティブディジタルフィルタ
装置に導入するようにしているが、これに限らない。例
えば、ピッチに同期したサンプリング周期を持つディジ
タル楽音信号をディジタルフィルタに入力する場合、こ
のディジタル楽音信号のサンプル値データの変化を検出
することによりピッチ同期信号を発生し、こうして発生
したピッチ同期信号によってフィルタ演算動作を制御す
るようにしてもよい。
【0094】
【発明の効果】以上の通り、この発明によれば、パラメ
ータ決定因子の組合せの総数に比較してパラメータ記憶
手段で記憶しておくパラメータ組数を少なくすることが
できるので、メモリ容量を節約することができる。特
に、鍵タッチや音域あるいは時間経過など多種類のパラ
メータ決定因子の多様な組合せによって微妙な音色制御
を行おうとする場合に、節約したパラメータメモリ構成
によって孫色のないそのような音色制御を行うことがで
きるので有利である。すなわち、この発明によれば、複
数のパラメータ決定因子の組合せの各々に対応するパラ
メータ記憶手段読出し用のアドレスデータをパラメータ
アドレス記憶手段においてそれぞれ記憶しておくことに
より、複数のパラメータ決定因子の組合せに従う音色制
御を、多様な制御態様で行なえることになり、夫々の組
合せに最適な高品質の音色制御が行なえるようになる、
という効果を奏すると共に、これらの各アドレスデータ
の中には、パラメータ決定因子の異なる組合せに対して
パラメータ記憶手段における同じアドレスを指示するも
のがあることを特徴としていることにより、パラメータ
記憶手段において実際に記憶するパラメータ数を、可能
なパラメータ決定因子の組合せ数よりも少数とすること
ができ、メモリ容量を節約することができる、という効
果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施例に係る電子楽器の全体構
成を示すブロック図。
【図2】 同実施例における主要な信号のタイミングを
示すタイミングチャート。
【図3】 図1のトーンジェネレータ内に含まれるピッ
チ同期信号発生回路の一例を示すブロック図。
【図4】 FIRフィルタの基本構成を示すブロック
図。
【図5】 直線位相FIRフィルタにおけるインパルス
応答の対称性の一例を次数Nが奇数のときについて示す
グラフ。
【図6】 直線位相FIRフィルタにおけるインパルス
応答の対称性の一例を次数Nが偶数のときについて示す
グラフ。
【図7】 直線位相FIRフィルタにおける周波数応答
特性の一例を次数Nが奇数のときについて示すグラフ。
【図8】 直線位相FIRフィルタにおける周波数応答
特性の一例を次数Nが偶数のときについて示すグラフ。
【図9】 フィルタ係数を求めるための手順の一例を示
すフローチャート。
【図10】 図1におけるアダプティブディジタルフィ
ルタ装置の一例を示すブロック図。
【図11】 図10における入力インタフェースの一例
を示すブロック図。
【図12】 図10におけるタイミング信号発生回路の
一例を示すブロック図。
【図13】 図10におけるステートメモリと乗算器及
びアキュムレータ部の一例(すなわちFIR型ディジタ
ルフィルタ回路の一例)を示すブロック図。
【図14】 図10におけるパラメータプロセシングユ
ニットとパラメータ供給回路の一例を示すブロック図。
【図15】 図10におけるピッチ同期出力回路の一例
を示すブロック図。
【図16】 フィルタ演算タイミングを制御する各種信
号の発生例を示すタイミングチャート。
【図17】 図13に示されたディジタルフィルタ回路
において偶数次(32次)から成るフィルタ特性を実現
する場合のFIR型フィルタ演算の基本動作を説明する
ための略図。
【図18】 同じディジタルフィルタ回路において奇数
次(31次)から成るフィルタ特性を実現する場合のF
IR型フィルタ演算の基本動作を説明するための略図。
【図19】 図13に示したようなA、B2系列のディ
ジタルフィルタ回路における8チャンネル分のフィルタ
演算動作タイミングを示す図。
【図20】 図10及び図14に示されたパラメータメ
モリにおける記憶フォーマットの一例を示す図。
【符号の説明】
10 鍵盤 11 鍵タッチ検出器 18 トーンジェネレータ 19 ピッチ同期信号発生回路 21,22 アダプティブディジタルフィルタ装置 40,42 ステートメモリ 41,43 乗算器及びアキュムレータ部 45 パラメータプロセシングユニット 47 パラメータメモリ 50 ピッチ同期出力回路

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数組のパラメータを記憶したパラメー
    タ記憶手段と、 少なくとも3つのパラメータ決定因子の組合せに対応し
    て前記パラメータ記憶手段から読み出すべきパラメータ
    の該パラメータ記憶手段におけるアドレスを指示するア
    ドレスデータをそれぞれ記憶するものであって、記憶さ
    れた当該各アドレスデータの中には前記パラメータ決定
    因子の異なる組合せに対して前記パラメータ記憶手段に
    おける同じアドレスを指示するものがあることを特徴と
    するパラメータアドレス記憶手段と、 パラメータ決定因子の組合せを特定する入力に対応し
    て、該入力によって特定されるパラメータ決定因子の組
    合せに対応する特定のアドレスデータを前記パラメータ
    アドレス記憶手段から読み出し、読み出したアドレスデ
    ータに応じて前記パラメータ記憶手段から1組のパラメ
    ータを読み出す読出し手段とを具え、読み出したパラメ
    ータを楽音の設定又は制御のために供給するようにした
    電子楽器のパラメータ供給装置。
  2. 【請求項2】 前記少なくとも3つのパラメータ決定因
    子は、発生すべき楽音の音高又は音域情報、音色情報、
    タッチ情報に対応するものである請求項1に記載の電子
    楽器のパラメータ供給装置。
  3. 【請求項3】 前記パラメータアドレス記憶手段は、前
    記各パラメータ決定因子を所定の順序で序列づけし、こ
    の序列に従って階層化されたメモリ構造を有することを
    特徴とする請求項1に記載の電子楽器のパラメータ供給
    装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009114900A (ja) * 2007-11-02 2009-05-28 Diamond Electric Mfg Co Ltd 内燃機関の燃焼状態検出装置及び燃焼制御方法

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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5840593A (ja) * 1981-09-04 1983-03-09 ヤマハ株式会社 電子楽器
JPS5950498A (ja) * 1982-09-16 1984-03-23 ヤマハ株式会社 電子楽器

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