JPH0812426A - ジルコニア質焼結体及びその製造方法 - Google Patents

ジルコニア質焼結体及びその製造方法

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JPH0812426A
JPH0812426A JP6170250A JP17025094A JPH0812426A JP H0812426 A JPH0812426 A JP H0812426A JP 6170250 A JP6170250 A JP 6170250A JP 17025094 A JP17025094 A JP 17025094A JP H0812426 A JPH0812426 A JP H0812426A
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zirconia
zro
mol
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JP6170250A
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Tadahiro Mino
忠弘 美濃
Terumitsu Ichimori
照光 一森
Susumu Nakayama
享 中山
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Shinagawa Refractories Co Ltd
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Shinagawa Refractories Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 安定化剤としてNd2O3を用いたジルコニア質
焼結体及びその製造方法を提供すること。 【構成】 ZrO2を主成分とし、安定化剤としてのNd
2O3、Al2O3及びSiO2を含む、又は更にホウ素化合物を含
むジルコニア質焼結体であって、Nd2O3とZrO2とのモル
比:1/99〜5/95、Al2O3:0.1〜5モル%、SiO2:0.05
〜1.5モル%、ホウ素化合物:0.05〜8モル%(Bに換算)
であるジルコニア質焼結体。上記組成となるように原料
配合物を調製し、500〜1200℃で仮焼した後解砕し得た
原料粉末を成形し、1300〜1650℃で焼結する。 【効果】 熱安定性、機械的特性に優れたジルコニア質
焼結体を提供することができ、特に200〜300℃の温度に
て大気、水又は水蒸気中において長時間使用しても焼結
体の劣化が起こり難いジルコニア質焼結体を提供するこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ジルコニア質焼結体及
びその製造方法に関し、特に低価格で、高い機械的特性
を有し、しかも熱安定性に優れた、安定化剤としてNd2O
3を用いたジルコニア質焼結体及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、ジルコニア(ZrO2)質焼結体は、そ
の強靱性を応用したセラミックス製ハサミ、耐熱摩耗性
を利用したメディア、潤滑性を利用した金型押し出し用
ダイス、断熱性、熱膨張性の特性を利用した断熱型エン
ジン用部品、酸素物イオン導電性を応用した酸素センサ
や燃料電池の構成材料として幅広く使用されている。
【0003】一般に、このようなジルコニア質焼結体の
安定化剤としては、希土類元素の酸化物、MgO、CaOが最
も多く用いられている。このうち希土類元素の酸化物と
しては、Y2O3の使用が殆どであるが、Y2O3以外の安定化
剤についても種々検討されており、例えば東北大学金属
材料研究所 共通施設技術研究報告、No.12,19-21(198
7)には、ZrO2-3.5mol%Ln2O3系(Ln2O3=Sc2O3,Y2O3,L
a2O3,Ce2O3,Pr2O3,Nd2O3)における正方晶安定化効果
について、また、同報告、No.12,23-24(1987)には、Zr
O2-Xmol%Nd2O3-Al2O3(X=2.5〜12)系の正方晶安定化効
果について報告されている。但し、Nd2O3の正方晶安定
化効果についてはY2O3を超えるものではなく、しかも、
上記両報告書には、正方晶の応力誘起変態率などについ
て一切述べられていない。
【0004】また、最近では、ア−ク溶解によって作製
したZrO2-RO1.5系(R=Nd,Sm,Er,Yb,Sc)の正方−単
斜相転移についても報告されている(八島正知等、J.Cer
am.Soc.Jpn.、101,871-876(1993)参照)。更に、充分な
機械的特性を有するジルコニア焼結体が得られるための
安定化剤としての希土類元素の酸化物は、Smよりイオン
半径が小さな希土類元素の酸化物が有効であり、Smより
イオン半径の大きなLa、Pr、Ndなどの酸化物を用いた場
合は、焼成中に微小亀裂などが生じるため有効ではない
ことが報告されている(渡辺宏、窯協、94,28-23(1986)
及び特公平2−58232号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ジルコニア
焼結体の安定化剤として有効なSm又はSmよりイオン半径
が小さな希土類元素(Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Y
b,Lu,Y)は、Yを除きその存在量は極端に少ない。「電
気化学、58,702-707(1990),塩川二郎」によると、地
殻における希土類元素の存在量は、Ce:60ppm、Y:33pp
m、La:30ppm、Nd:28ppmを除き、その他は数ppm以下で
あるとされている。なお、参考までにCoは25ppmであ
る。
【0006】また、希土類鉱石の成分元素の含有量と埋
蔵量とから推算された資源量は、軽希土(La,Ce,Pr,N
d):94%、中希土(Sm,Eu,Gd,Tb,Dy):3.6%、重希
土(Ho,Er,Tm,Yb,Lu):0.9%、Y:1.5%という配分
になる。各希土類元素の需要量を満たすために必要な鉱
石の使用量をもとに、各鉱石中の希土類含有率に応じた
各分離希土の生産量を算出すると、軽希土:19441ト
ン、中・重希土及びY:1579トンで、軽希土/(中・重希
土及びY)=12.3となる。中・重希土及びYの中にも未使
用のものがあるとしてもその量はあまり多くない。
【0007】これに対して、軽希土において、生産量
(A)と需要量(B)の差(A−B)の値をみると、La2O3:5
20トン(1.19)、CeO2:650トン(1.14)、Pr6O11:620トン
(5.33)、Nd2O3:1300トン(3.70)となり、混合希土900ト
ンも含め軽希土全体として約4000トンの生産過剰とな
る。なお、( )内の数値は“生産量(A)/需要量(B)”
の値である。
【0008】以上の事実より、従来からジルコニア焼結
体の安定化剤として使用されているY2O3又はSmよりイオ
ン半径が小さな希土類元素(中・重希土)の酸化物に代え
て、La2O3、CeO2、Pr6O11、Nd2O3などの軽希土を使用す
ることができれば、希土類産業の需要供給のバランス面
及びコスト面でメリットが大きいと考えられる。
【0009】しかしながら、前記したとおり、La2O3、C
eO2、Pr6O11、Nd2O3などの軽希土を安定化剤として用い
た場合には、焼成中に微小亀裂が発生し、充分な機械的
特性を有するジルコニア焼結体が得られないので(前掲
の「渡辺宏、窯協、94,28-23(1986)」及び特公平2−58
232号公報参照)、このような軽希土の使用は、安定化剤
として有効ではない。
【0010】一方、特開昭61-26562号公報及び特開昭62
-59571号公報には、Nd2O3のZrO2への添加が示されてい
るが、前者(特開昭61-26562号公報)では、NdとZrの複酸
化物、即ち、Nd2Zr2O7がZrO2焼結体中に析出しているこ
とが必須要件となっており、また、後者(特開昭62-5957
1号公報)では、着色を目的としてNd2O3を0.001〜0.08重
量%(約0.03mol%)添加しているのみである。
【0011】更に、高靱性を有し、工具材料などを対象
とした“Nd2O3・Y2O3を安定化剤として用いた正方・立
方晶からなるジルコニア焼結体”(特開昭64-76963号公
報参照)及び水冷却型原子炉の炉内構造材料を対象とし
た“Nd2O3を含む希土類元素の酸化物を安定化剤として
用いた立方晶からなるジルコニア焼結体”(特開平1-201
075号公報参照)も提案されている。
【0012】しかしながら、前者(特開昭64-76963号公
報)の“Nd2O3・Y2O3を安定化剤として用いた正方・立方
晶からなるジルコニア焼結体”は、Y2O3が安定化剤のう
ちモル%で半分以上存在することが必要であり、軽希土
単独からなる安定化剤ではない。また、後者(特開平1-2
01075号公報)の“立方晶からなるジルコニア焼結体”
は、結晶相が立方晶であるため、希土類元素の酸化物(L
n2O3)の添加量を6mol%以上必要とし、低温熱劣化に対
しては有効であるけれども、強度などの機械特性が著し
く低いものである。更に、該公報には、安定化剤として
のNd2O3の有効性及び添加量などについては全く述べて
いない。
【0013】ところで、従来のジルコニア質焼結体は、
200〜300℃付近で長時間にわたり放置されると、著しい
強度の低下が起こるという欠点を有している。これは、
ジルコニア質焼結体の結晶相のうち、常温では準安定相
である正方晶が安定相の単斜晶に転移し、この相転移に
伴う体積膨張が焼成体内に微小亀裂を発生させることに
よる。特にこの相転移は、水中もしくは水蒸気の環境下
においては上記温度範囲より低温である200℃未満でも
生じ、その速度も非常に速いものである。
【0014】そのため、ジルコニア質焼結体を用いたセ
ラミックスダイスのうち、100〜300℃付近にて使用する
樹脂用のダイス材料としては、特に100〜200℃の低温度
域での強度低下が顕著に現れてくることが大きな問題と
なる。また、従来のジルコニア質焼結体を、例えば溶媒
として水を用いる湿式粉砕装置用の部品材料として使用
する場合や、水等で洗浄した後高温(200℃付近)で乾燥
を行う際の乾燥装置用の部品材料として使用する場合、
支障をきたすことになる。
【0015】本発明は、従来のジルコニア質焼結体の有
する前記欠点、問題点に鑑み成されたものであって、そ
の目的とするところは、第1に、ジルコニア焼結体の安
定化剤として使用した場合に希土類産業の需要供給のバ
ランス面及びコスト面でメリットが大きいと考えられる
軽希土のうちNd2O3を用い、かつ、 熱安定性及び機械的
特性に優れたジルコニア質焼結体及びその製造方法を提
供することにあり、第2に、200〜300℃の温度で、大気
中、水中又は水蒸気中において長時間使用しても焼結体
の劣化が起こり難い特性を有するジルコニア質焼結体及
びその製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明に係るジルコニア
質焼結体は、ZrO2を主成分とし、所定範囲のNd2O3と所
定範囲のAl2O3、SiO2を含む、又は、さらに所定範囲の
ホウ素化合物を含む配合物を焼結してなることを特徴と
し、また、本発明に係る製造方法は、所定の原料組成と
なるように中和共沈法、加水分解法、アルコキシド法な
どの化学合成法又は酸化物混合法により原料配合物を調
製し、これを所定温度(500〜1200℃)で仮焼した後、解
砕し得た原料粉末を成形し、所定温度(1300〜1650℃)で
焼結することを特徴とし、これにより前記目的を達成し
たものである。
【0017】即ち、本発明に係るジルコニア質焼結体
は、「ZrO2を主成分とし、安定化剤としてのNd2O3と、A
l2O3及びSiO2を含む、又は、さらにホウ素化合物を含む
ジルコニア質焼結体であって、Nd2O3とZrO2とのモル比
(Nd2O3/ZrO2)が1/99〜5/95であり、かつ、Al2O3の含
有量が0.1〜5モル%、SiO2の含有量が0.05〜1.5モル%
である、又は、さらにホウ素化合物の含有量がホウ素
(B)に換算して0.05〜8モル%であることを特徴とする
ジルコニア質焼結体。」(請求項1、請求項2)を要旨と
する。
【0018】また、本発明に係るジルコニア質焼結体の
製造方法は、「ZrO2を主成分とし、安定化剤としてのNd
2O3と、Al2O3及びSiO2を含む、又は、さらにホウ素化合
物を含むジルコニア質焼結体の製造方法であって、(1)
原料組成として、前記Nd2O3とZrO2とのモル比(Nd2O3/Z
rO2)が1/99〜5/95、前記Al2O3が0.1〜5モル%、前記S
iO2が0.05〜1.5モル%となるように、又は、さらに前記
ホウ素化合物がホウ素(B)に換算して0.05〜8モル%と
なるように、中和共沈法、加水分解法、アルコキシド法
などの化学合成法又は酸化物混合法によって原料配合物
を調製する工程、(2) 上記原料配合物を500〜1200℃で
仮焼する工程、(3) 上記仮焼物を解砕、成形する工程、
(4) 上記成形体を1300〜1650℃で焼成する工程、を含む
ことを特徴とするジルコニア質焼結体の製造方法。」を
要旨とする。
【0019】以下、本発明に係るジルコニア質焼結体及
びその製造方法について詳細に説明する。まず、本発明
に係るジルコニア質焼結体について説明すると、これ
は、ZrO2を主成分とし、Nd2O3を安定化剤として用いる
ものである。そして、この安定化剤の割合は、ZrO2との
モル比(Nd2O3/ZrO2)が1/99〜5/95(好ましくは1.5/9
8.5〜3/97)とすることを特徴とする。Nd2O3/ZrO2モル
比が1/99未満では、得られるジルコニア質焼結体に亀
裂が発生し(後記表1、2の組成No.1、2参照)、一方、N
d2O3/ZrO2モル比が5/95を超えるものでは、十分な機
械的強度を有するジルコニア質焼結体が得られないので
(後記表1、2の組成No.10〜12参照)、いずれも好まし
くない。
【0020】本発明に係るジルコニア質焼結体は、Nd2O
3以外にAl2O3及びSiO2を配合することを特徴とし、ま
た、さらにホウ素化合物を配合することを特徴とする。
Al2O3及びSiO2の配合は、ZrO2を容易に焼結させ、低温
で焼成することができる利点を有する。また、必要に応
じ配合するホウ素化合物の添加量を少なくすることもで
きる。
【0021】但し、Al2O3の配合量が5モル%を超えると
強度が低下し(後記表1、3の組成No.16参照)、逆に0.1
モル%未満では、Al2O3の添加効果が得られないので好
ましくない。また、SiO2についても、その配合量が1.5
モル%を超えると強度の低下を招き(後記表1、3の組
成No.20参照)、一方、0.05モル%未満では、SiO2の添加
効果は得られないので好ましくない。従って、本発明に
係るジルコニア質焼結体においては、Al2O3:0.1〜5モ
ル%、SiO2:0.05〜1.5モル%を配合するものである。
なお、Al2O3源及びSiO2源としては、添加成分(Al、Si)
の酸化物以外に窒化物、炭化物、水酸化物などの形で添
加しても同様の効果が得られ、このような原料を使用す
る場合も本発明に包含されるものである。
【0022】次に、ホウ素化合物について説明すると、
250℃で250時間の水中テストを行った試料の曲げ強度及
び表面組織を観察した結果、ホウ素化合物を含まないジ
ルコニア質焼結体では、ホウ素化合物を微量含むジルコ
ニア質焼結体に比して幾分強度の低下が見られ、試料表
面においても多少の微亀裂が観察された。これに対し
て、ホウ素化合物を配合したジルコニア質焼結体には、
上記のような亀裂現象が認めらず、しかも、テストを行
う前の試料の強度がホウ素化合物の配合の有無によって
異なり、添加したもののほうが明らかに強度の向上が認
められた。
【0023】これらの試験結果から、ホウ素化合物を配
合することによりジルコニア質焼結体の熱安定性を向上
させることができることを見いだした。従って、本発明
に係るジルコニア質焼結体において、特に熱安定性を必
要とする場合、ホウ素化合物をさらに配合することがで
きる。
【0024】但し、ホウ素化合物を含有する場合であっ
ても、その含有量がホウ素(B)に換算して0.05モル%未
満では、ホウ素化合物の添加による効果は見られず、逆
に8モル%を超えて添加した場合では、初期の曲げ強度
の低下を招く傾向がある。このことにより、本発明に係
るジルコニア質焼結体においては、ホウ素化合物の配合
量は、ホウ素(B)に換算して0.05〜8モル%が好まし
く、より好ましくは0.05〜5モル%である。なお、ホウ
素源としては、ホウ素からなる酸化物のほかに窒化物、
炭化物又は主成分であるZr或いは添加成分のAl、Siなど
からなる化合物(金属ホウ化物)の形で添加することがで
き、このような原料の使用も本発明に包含されるもので
ある。
【0025】本発明に係るジルコニア質焼結体は、焼結
体の結晶粒子が主として単斜晶、正方晶及び立方晶の混
合相よりなり、かつ平均結晶粒子径が5μm以下である
ことを特徴とする。また、本発明に係るジルコニア質焼
結体は、200〜300℃の温度にて大気中、水中又は水蒸気
中での長時間における使用に際し、焼結体の劣化が起こ
り難い特性を有するものである。平均粒子径が5μmを
超える焼結体では、耐摩耗性及び熱安定性の面において
向上が認められず、特に200〜300℃の温度にて大気中、
水中及び水蒸気中での長時間における使用に際し、焼結
体の劣化を招くこととなるので好ましくない。
【0026】このような焼結体の結晶粒子及び平均結晶
粒子径の各条件を満たさないもの及び上記特性を有しな
いものでは、ジルコニア材料を用いた湿式粉砕装置用の
部品材料やセラミックスダイス用材料として使用し難い
ものである。
【0027】次に、本発明に係るジルコニア質焼結体の
製造方法について説明すると、まず、酸化物混合法又は
中和共沈法などの化学合成法を用い、ZrO2にNd2O3、Al2
O3及びSiO2を添加し、又は更にホウ素化合物を添加し、
前記所定範囲内の組成となるように原料配合物を調製す
る。次に、この原料配合物を500〜1200℃の温度範囲内
で仮焼し、この仮焼粉を解砕した後成形し、続いて該成
形体を1300〜1650℃の温度範囲内で焼結(本焼成)し、目
的とするジルコニア質焼結体を製造する。
【0028】本発明の製造方法において、500〜1200℃
での仮焼は、混合原料配合物を出来る限り均一なものと
するためであり、また、ZrO2の一部を相転移させておき
焼成過程(本焼成工程)での焼結の促進を図るためのもの
であり、本発明の製造方法において重要な要件の1つで
ある。
【0029】仮焼温度の下限値:500℃は、仮焼によっ
てZrO2の単斜晶の一部を正方晶に相転移させることが可
能な最低温度である。一般に、ZrO2の単斜晶から正方晶
への転移は、1170℃付近と言われているが、ZrO2に安定
化剤を加えることによりその転移温度は低温側に移動
し、800℃ぐらいの温度で相転移が見られる。なお、こ
の転移温度は、安定化剤として用いたNd2O3の添加量に
より異なるものである。
【0030】一方、仮焼温度の上限値:1200℃は、仮焼
後の原料に見られる凝集粉が解砕工程により十分粉砕さ
れ得る最高温度であり、この温度を超えて仮焼を行った
ものでは、解砕後においても凝集粒が残留し、これが大
きな破壊点となり、ジルコニア質焼結体の強度の低下を
招くので好ましくない(後記表2の組成No.6-2参照)。従
って、本発明の方法における仮焼温度としては、500〜1
200℃が好ましい。
【0031】仮焼した後の原料配合物は凝集しているの
で、これを解砕し、続いてこの解砕物を成形した後1300
〜1650℃の温度範囲内で焼結(本焼成)する。本焼成とな
る焼結温度が1300℃未満では、緻密化が進まないので高
強度焼結体が得られず(後記表2の組成No.6-3参照)、一
方、1650℃を超えると、結晶粒の異常粒成長などにより
同じく高強度焼結体が得られないので好ましくない(後
記表2の組成No.6-7参照)。
【0032】
【実施例】次に、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、
本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を
超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】(実施例、比較例、その1)表1に示す組
成(組成No.1〜25)となるように、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ネオジム(Nd2O3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、
二酸化ケイ素(SiO2)及び酸化ホウ素(B2O3)を秤量し、溶
媒としてイオン交換水を用い、ゴムライニングのボ−ル
ミルにてZrO2質メディアを使用して混練した後、乾燥を
行った。なお、表1中の“B2O3のモル%”は、酸化ホウ
素のモル%であり、本発明で規定するホウ素(B)に換算
したモル%(0.05〜8モル%)ではない。従って、例えば
表1中の組成No.24における“B2O3:6モル%”は、ホウ
素(B)に換算すると12モル%となり、本発明の範囲外の
例(比較例)である。
【0034】
【表1】
【0035】次に、表2、表3に示す温度にて仮焼を行
い、得られた仮焼粉を上記混練時と同様のボ−ルミルに
て解砕し、アクリル系共重合樹脂を3重量%加えてスプ
レ−造粒した。この造粒粉を1000kgf/cm2の圧力でCIP
成形し、表2、表3に示す温度にて本焼成を行った。
【0036】得られた各ジルコニア質焼結体における
“平均結晶粒子径”及び“結晶相”、ファインセラミッ
クスの曲げ強さ試験方法(JIS R 1601)に基づいて測定し
た“3点曲げ強度”“ビッカ−ス硬さ(JIS R 1610)”
“熱安定性”“500℃での導電率”を表2、表3に示
す。
【0037】なお、焼結体における結晶相の単斜晶、正
方晶、立方晶の各含有量は、焼結体表面を#600のダイ
ヤモンド砥石で研削した後、1〜5μmのダイヤモンド粒
により鏡面に仕上げ、その表面のX線回折による強度比
より次式(1)〜(3)を用いて求めた。
【0038】
【数1】
【0039】また、平均粒子径の測定は、前記したよう
に鏡面に仕上げた焼結体の表面をフッ化水素酸によりエ
ッチング処理を行い、電子顕微鏡写真で粒子数(n)を50
個以上含むような一定面積(S)内に等しい円の直径(d)
を、式:d=(4S/π)1/2により計算し、そして、dを
同一試料の3カ所以上の視野について求め、その平均粒
子径とした。粒子数(n)は、一定面積(S)に完全に含ま
れる粒子の数と一定面積の境界線で切られる粒子の数の
1/2との和とした(この平均粒子径の測定法について
は、特公昭61-21184号公報参照)。
【0040】“熱安定性”は、焼結体をオ−トクレ−ブ
に入れ、200℃の熱水中にて200時間のエ−ジングテスト
を行った後、焼結体の劣化具合を観察して判断した。
“500℃での導電率”は、100〜10MHZの周波数範囲で複
素インピ−ダンス解析により求めた粒内と粒界を合わせ
た導電率を示す。なお、この導電率は、得られたジルコ
ニア質焼結体を酸素センサ素子用として使用する場合を
考慮して、その特性値を示したものである。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】前記表2及び表3から、安定化剤としての
Nd2O3とZrO2とのモル比が本発明の所定範囲内で、か
つ、所定範囲のAl2O3、SiO2及びホウ素化合物(B2O3)を
含む実施例(組成No.3〜5,6-4〜6-6,7〜9,14,15,1
8,19,22,23)では、高い機械的特性を示し、しかも熱
安定性が良好なジルコニア質焼結体が得られることが理
解できる。また、ホウ素化合物(B2O3)を含まない実施例
(組成No.21)では、熱安定性についてはやや劣るもの
の、極めて強度の高いものが得られ、熱安定性をさほど
必要としない例えば常温下での使用に好適であることが
理解できる。
【0044】これに対して、本発明で規定する上記所定
範囲の1つでもはずれたものでは、本発明で所望するジ
ルコニア質焼結体を得ることはできない。例えば、本発
明で規定する「Nd2O3/ZrO2:1/99〜5/95」の範囲外
である組成No.1(Nd2O3/ZrO2:0.5/99.5)、組成No.2(N
d2O3/ZrO2:0.7/99.3)の比較例では、安定化剤のNd2O
3が微量であるので焼結せず、一方、組成No.10(Nd2O3
ZrO2:6/94)、組成No.11(Nd2O3/ZrO2:8/92)、組成N
o.12(Nd2O3/ZrO2:10/90)の各比較例では、曲げ強度
が20kgf/mm2以下と低く、所望のジルコニア質焼結体を
得ることはできない。
【0045】また、本発明で規定するNd2O3/ZrO2モル
比の範囲内であっても、Al2O3、SiO2が所定範囲外であ
る組成No.13,16,17,20では、曲げ強度が30kgf/mm2
以下と低く、所望のジルコニア質焼結体を得ることはで
きない。更に、ホウ素化合物(B2O3)が所定範囲外である
組成No.24(ホウ素に換算すると12モル%)では、熱安定
性が劣るだけでなく、曲げ強度も27.2kgf/mm2と低く、
所望のジルコニア質焼結体を得ることはできない。な
お、Al2O3、SiO2、ホウ素化合物(B2O3)をいずれも添加
しない組成No.25では、焼成中に亀裂が生じ、ジルコニ
ア質焼結体が得られなかった。
【0046】更に、安定化剤Nd2O3とZrO2とのモル比が
本発明で規定する所定範囲内で、かつ、同じく所定範囲
内のAl2O3、SiO2及びホウ素化合物(B2O3)になるように
調製した原料配合物を用いても(表1の組成No.6)、仮焼
しない場合(表2の組成No.6-1)や仮焼条件として本発明
の所定範囲外で行った場合(表2の組成No.6-2)、また、
本焼条件として本発明で規定する範囲外で行った場合
(表2の組成No.6-3、同6-7)では、結果として、本発明
で所望するジルコニア質焼結体を得ることはできなかっ
た。
【0047】即ち、仮焼を行わず直ちに本焼成を行った
比較例(表2の組成No.6-1)及び仮焼条件として本発明の
所定範囲(500〜1200℃)外の1300℃で行った比較例(表2
の組成No.6-2)では、曲げ強度が30kgf/mm2以下と低い
ばかりでなく、熱安定性も悪いものであった。また、本
焼条件として本発明で規定する範囲(1300〜1650℃)外の
1200℃又は1700℃で本焼成した比較例(組成No.6-3、同6
-7)でも、曲げ強度が20kgf/mm2以下と低く、いずれも
所望のジルコニア質焼結体を得ることはできなかった。
【0048】(実施例その2)前記実施例その1では、
CIP成形し本焼成した例であるが、本実施例では、加圧
焼結処理(HIP処理)を行った例である。前記実施例その
1の“CIP成形後の焼成により製造されたジルコニア質
焼結体”では、その強度が50kgf/mm2以上であるが(表
2、3参照)、本実施例のHIP処理により、60kgf/mm2
上の高強度焼結体が得られた。このことから、本発明の
製造方法において、特に加圧焼結を行うことにより、よ
り強度の高いジルコニア質焼結体を製造することができ
ることが認められ、これは本発明の好ましい実施態様で
あり、本発明に包含されるものである。
【0049】(比較例その2)比較のため、Nd2O3に代
えてNdよりイオン半径の大きな希土類元素の酸化物であ
るLa2O3及びPr6O11を安定化剤として用い、本発明の範
囲内の条件でジルコニア質焼結体を製造することを試み
た。しかし、得られた焼結体中に微小亀裂が生じていた
り、あるいは強度が10kgf/mm2以下の焼結体しか得られ
ず、本発明のNd2O3による安定化ジルコニア質焼結体の
機械的特性を越えることはできなかった。
【0050】
【発明の効果】本発明は、以上詳記したとおり、ZrO2
主成分とし、所定範囲のNd2O3と所定範囲のAl2O3、SiO2
を含む、又は更に所定範囲のホウ素化合物を含む配合物
を焼結してなることを特徴とし、また、所定温度(500〜
1200℃)で仮焼した後、解砕し得た原料粉末を成形し、
所定温度(1300〜1650℃)で焼結することを特徴とし、こ
れにより次の(1)〜(3)の効果が生じる。 (1) 熱安定性及び機械的特性に優れたジルコニア質焼結
体を提供することができる。 (2) 200〜300℃の温度にて大気中、水中又は水蒸気中に
おいて長時間使用しても焼結体の劣化が起こり難い特性
を有するジルコニア質焼結体を提供することができる。 (3) ジルコニア焼結体の安定化剤としてNd2O3を使用す
るものであるから、希土類産業の需要供給のバランス面
及びコスト面でメリットが大きく、特に低価格で上記特
性を有するジルコニア質焼結体を提供することができ
る。
【0051】そして、本発明によれば、特に100〜300℃
付近で使用する樹脂用のダイス材料として好適なジルコ
ニア質焼結体を提供することができる。また、例えば溶
媒として水を用いる湿式粉砕装置用の部品材料として、
あるいは、水等で洗浄した後高温(200℃付近)で乾燥を
行う際の乾燥装置用の部品材料として、更には、酸素セ
ンサ素子用として好適なジルコニア質焼結体を提供する
ことができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ZrO2を主成分とし、安定化剤としてのNd
    2O3と、Al2O3及びSiO2とを含むジルコニア質焼結体であ
    って、Nd2O3とZrO2とのモル比(Nd2O3/ZrO2)が1/99〜5
    /95であり、かつAl2O3の含有量が0.1〜5モル%、SiO2
    の含有量が0.05〜1.5モル%であることを特徴とするジ
    ルコニア質焼結体。
  2. 【請求項2】 ZrO2を主成分とし、安定化剤としてのNd
    2O3と、Al2O3及びSiO2と、ホウ素化合物とを含むジルコ
    ニア質焼結体であって、Nd2O3とZrO2とのモル比(Nd2O3
    /ZrO2)が1/99〜5/95であり、かつ、Al2O3の含有量が
    0.1〜5モル%、SiO2の含有量が0.05〜1.5モル%、ホウ
    素化合物の含有量がホウ素(B)に換算して0.05〜8モル
    %であることを特徴とするジルコニア質焼結体。
  3. 【請求項3】 前記ホウ素化合物が、酸化ホウ素、窒化
    ホウ素、炭化ホウ素、又は、Nd以外の金属ホウ化物であ
    ることを特徴とする請求項2記載のジルコニア質焼結
    体。
  4. 【請求項4】 焼結体の結晶粒子が主として単斜晶、正
    方晶及び立方晶の混合相よりなり、かつ平均結晶粒子径
    が5μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記
    載のジルコニア質焼結体。
  5. 【請求項5】 ZrO2を主成分とし、安定化剤としてのNd
    2O3と、Al2O3及びSiO2とを含む、又は、さらにホウ素化
    合物を含むジルコニア質焼結体の製造方法であって、
    (1) 原料組成として、前記Nd2O3とZrO2とのモル比(Nd2O
    3/ZrO2)が1/99〜5/95、前記Al2O3が0.1〜5モル%、
    前記SiO2が0.05〜1.5モル%となるように、又は、さら
    に前記ホウ素化合物がホウ素(B)に換算して0.05〜8モ
    ル%となるように、中和共沈法、加水分解法、アルコキ
    シド法などの化学合成法又は酸化物混合法によって原料
    配合物を調製する工程、(2) 上記原料配合物を500〜120
    0℃で仮焼する工程、(3) 上記仮焼物を解砕、成形する
    工程、(4) 上記成形体を1300〜1650℃で焼成する工程、
    を含むことを特徴とするジルコニア質焼結体の製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006087959A1 (ja) * 2005-02-17 2006-08-24 Nippon Shokubai Co., Ltd. 固体酸化物形燃料電池用電解質シートおよびその製法、並びに固体酸化物形燃料電池セル

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