JPH08120556A - 縫製品の形態安定加工方法 - Google Patents

縫製品の形態安定加工方法

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JPH08120556A
JPH08120556A JP4135295A JP4135295A JPH08120556A JP H08120556 A JPH08120556 A JP H08120556A JP 4135295 A JP4135295 A JP 4135295A JP 4135295 A JP4135295 A JP 4135295A JP H08120556 A JPH08120556 A JP H08120556A
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Kazunari Nakamoto
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 特別な前処理をしていない原反を自由に選ん
で繊維製品を製作することができるとともに、原反の長
期の保存が可能でその保存方法にも制約がない、液状の
架橋剤による縫製品の形態安定加工方法を提供する。 【構成】 架橋剤付与工程53において、水平軸回りに
回転可能である回転ドラム内に縫製品を収容し、該回転
ドラムを回転させながら、前記回転ドラム内に霧化され
た液状の架橋剤を供給することによって、縫製品に液状
の架橋剤を均一に付与する。キュアリング工程56で、
架橋剤付与工程53を経た縫製品に、前記架橋剤による
架橋結合が進行する温度でキュアリングする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、縫製後の衣類等の繊維
製品である縫製品の加工技術に関し、特に、縫製品の
綿,麻等のセルロース系繊維などの組織を架橋剤を用い
て改質することによる、縫製品の形態安定加工方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】有職,専業を問わず主婦の洗濯は、ほと
んど毎日、もしくは週2〜3回とかなり頻繁に行われて
いる。その洗濯に伴う労働と、被洗濯物の繊維の縮みや
捻れや歪みと、衣類の形状の乱れとが、主婦を悩ませて
いる。そして、その洗濯物の形状を整えるアイロンがけ
の作業が、主婦の貴重な自由時間を短くしている。大多
数の主婦がアイロンがけを「できることならやりたくな
い」と考えていることが、主婦を対象とした調査で判っ
ている。
【0003】これらの要求を受けて、数十年くらい前よ
り、“縮まないYシャツ”に対する繊維メーカーの取組
みが始まった。その結果、ポリエステル等の合成繊維の
開発が行われ、ナイロン,アクリル,ポリエステル,ビ
ニロンが四大合成繊維と呼ばれた。その後、ポリエステ
ルの普及と共にウォッシュアンドウェアー加工、パーマ
ネントプレス加工などが現われ、洗濯による縮みの解消
やアイロンからの解放により主婦の家事労働を大幅に軽
減し、一時期、「洗濯革命」とさえ称された。
【0004】しかし、その後、消費者の好みが次第に高
度化してきている。現在では、着心地・風合いなどから
綿や綿の高率混紡のYシャツ地が好まれ、また、カジュ
アルなパンツ(ズボン)やスカートやドレスシャツに、
綿100%,麻100%のものや、これ等とレーヨン混
紡のもの等に対する要求が強まっている。そして、これ
らに対して、風合いを良くし、防皺性,防縮性,手触り
を良くする高度な加工技術が要求されるようになってき
た。また、最近は、綿製品の肌ざわり,風合いが好ま
れ、ドレスシャツ,ポロシャツ,綿のパンツ,ブラウス
に対しても、洗濯後、アイロンをかけなくてもしわにな
らず縮まない形状を元の状態に保った形態安定製品が求
められている。
【0005】そこで、従来、綿などの織物に架橋剤を浸
透させ、この織物を該架橋剤による架橋結合が進行する
温度でキュアリングすることにより、架橋剤の分子と綿
などの繊維の分子が手をつなぐ架橋結合を行わせ、これ
により、防皺性,防縮性,形を整える性質などを繊維製
品に付与することができる形態安定加工方法が提供され
た。
【0006】従来のこの形態安定加工方法としては、図
2(イ)〜(ハ)にそれぞれ示すような加工方法があ
る。図2(イ)〜(ハ)は、それぞれ従来の形態安定加
工方法を示す工程図である。
【0007】図2(イ)に示す形態安定加工方法は、繊
維に付与された架橋剤を活性化して架橋結合させるキュ
アリング(熱処理)を縫製前に行うので、プレキュア法
と呼ばれている。
【0008】この図2(イ)に示すプレキュア法では、
まず、工程61で、綿生地(綿の原反)に樹脂処理を施
す。すなわち、綿生地に液状の架橋剤を均一に付与す
る。次に、工程62で、この綿生地を乾燥させる。その
後、工程63で、熱処理により綿繊維のミクロアイブリ
ルのセルロース分子の非結晶部分に樹脂(架橋剤)が架
橋結合し、これにより綿生地に防縮性等が付与される。
次に、工程64で、この綿生地が洗浄され、架橋結合さ
れなかった樹脂等が洗い落とされる。その後、縫製工場
にて、工程65で当該綿生地が裁断された後に、工程6
6で縫製される。最後に、工程67で、この縫製品が高
温によりプレスされることにより形が整えられ、形態安
定加工が完了する。
【0009】しかしながら、このプレキュア法では、次
の欠点がある。
【0010】第1に、繊維製品を製作する際に用いる原
反(生地)が予め前処理されたもの(図2(イ)中の工
程61〜64を経た原反)に限定され、繊維製品のデザ
インの自由度が制限されてしまう。
【0011】第2に、予め前処理された原反(図2
(イ)中の工程61〜64を経た原反)は長期の保存が
できず、その保存方法にも制約がある。
【0012】第3に、カジュアル製品などに最近要求さ
れている、洗濯して使い古しの感じ(洗濯の風合い感)
を出す繊維製品に対して、プレキュア法を適用すること
ができず、形態安定加工を行うことができない。すなわ
ち、繊維製品に使い古しの感じを出すためには縫製品を
洗い加工する必要があるが、プレキュア法を適用しよう
とした場合には、必然的に前記工程66の後に前記洗い
加工を行うことになる。この場合には、洗い加工によっ
て、既に形態加工が施されたプリーツ等の角部がすり切
れてしまうことになり、商品価値を失ってしまう。これ
が、使い古しの感じを出す繊維製品に対してプレキュア
法を適用することができない理由である。一方、綿製品
には、Gパンのように新品であっても何度か洗濯した風
合いを持つ加工をした「洗い加工製品」のものが要求さ
れている。
【0013】また、図2(ロ)に示す形態安定加工方法
は、繊維に付与された架橋剤を活性化して架橋結合させ
るキュアリング(熱処理)を縫製後に行うので、ポスト
キュア法と呼ばれている。
【0014】この図2(ロ)に示すポストキュア法で
は、まず、工程71で、漂白その他の前処理の行われた
原反(生地)に液体アンモニア処理を行った後に、樹脂
処理を施す。すなわち、原反に液状の架橋剤を均一に付
与する。次に、工程72で、この原反を乾燥させる。そ
の後、縫製工場にて、工程73でこの原反を裁断し、工
程74で縫製される。その後、工程75で、この縫製品
がアイロン又は熱プレスにより形を整える。最後に、工
程76で、この縫製品に熱処理すなわちキュアリングを
行って、形態安定加工が完了する。
【0015】しかしながら、このポストキュア法では、
次の欠点がある。
【0016】第1に、前記プレキュア法と同様に、繊維
製品を製作する際に用いる原反(生地)が予め前処理さ
れたもの(図2(ロ)中の工程71〜72を経た原反)
に限定され、繊維製品のデザインの自由度が制限されて
しまう。
【0017】第2に、前記プレキュア法と同様に、予め
前処理された原反(図2(ロ)中の工程71〜72を経
た原反)は長期の保存ができず、その保存方法にも制約
がある。具体的には、例えば、生地の保存は、乾燥した
低温の所で短時間(20゜Cで3ヶ月、40゜Cで3週
間)しかできない。
【0018】第3に、前記プレキュア法と同様に、洗濯
して使い古しの感じ(洗濯の風合い感)を出す繊維製品
に対して、ポストキュア法を適用することができず、形
態安定加工を行うことができない。
【0019】第4に、前記工程76の熱処理の前に水滴
等がつくとしみになる等の制約がある。
【0020】図2(ハ)に示す形態安定加工方法は、V
P加工法と呼ばれている。
【0021】このVP加工法では、まず、工程81で綿
等の生地(原反)が縫製工場に入荷され、工程82でこ
の生地が裁断され、工程83で縫製される。次に、工程
84で、この縫製品をアイロン又はプレスして形を整え
る。最後に、工程85で、この縫製品をホルマリンガス
室に入れて、繊維のミクロアイブリルのセルロース分子
にホルマリンによる架橋結合を行う。これにより、形態
安定加工が完了し、縫製品に防縮性及び防皺性が付与さ
れるとともに、縫製品の形態が固定されてプリーツ等の
形状が保持される。
【0022】このVP加工法によれば、前記プレキュア
法及び前記ポストキュア法の前述した欠点は生じない。
【0023】しかし、液体状の架橋剤であれば、生地の
種類や最終製品に望まれる特性に応じて多種多様な架橋
剤があるが、前記VP加工法では、架橋剤がガス状のホ
ルマリンに限定されてしまう。したがって、前記VP加
工法では、ホルマリンによる架橋結合による形態安定特
性しか得ることができず、生地の種類や最終製品に望ま
れる特性によっては、VP加工法が適切でない場合があ
る。また前記VP加工法では、ホルマリンガス室が必要
であるため、大規模な設備投資が必要である。
【0024】ところで、形態安定加工においては、繊維
に架橋剤を均一に付与することが極めて重要である。そ
の理由は、繊維に架橋剤を均一に付与しないと、防縮
性、形態保持性能や風合いにむらが生じ、当該繊維製品
は商品価値を失ってしまうからである。
【0025】しかし、従来、繊維に架橋剤に均一に付与
する方法としては、紡績により得られる1枚のロール状
の原反(生地)に対して液状の架橋剤を均一に付与する
方法と、気体であるホルマリンガスを用いて、縫製後の
衣類等の複雑な立体形状を有する繊維製品すなわち縫製
品に、架橋剤であるホルマリンを均一に付与する方法
と、があるのみであり、縫製品に液状の架橋剤を十分に
均一に付与する良い方法は見出されていなかった。
【0026】例えば、従来、縫製品に薬液を付与する一
般的な方法として、薬液に縫製品を浸した後に引き上
げ、この縫製品を吊り下げて温風などで乾燥させる方法
がある。しかし、この方法では、薬液は、縫製品が乾く
までに薬液自体の重量により縫製品の下部の方に流れて
来るので、縫製品の下部に多くの薬液が付着しまい、縫
製品に薬液(すなわち、液状の架橋剤)を均一に付与す
ることができない。
【0027】また、縫製品に薬液を付与する従来の方法
として、薬液に縫製品を浸した後、この縫製品を遠心脱
水機により脱水する方法がある。しかし、この方法で
は、遠心脱水機の円筒内壁面に対して縫製品の布が重な
る場合とそうでない場合が必然的に生ずる。したがっ
て、縫製品に対する薬液の付着状態にむらが生じ、縫製
品に薬液(すなわち、液状の架橋剤)を均一に付与する
ことができない。
【0028】さらに、原反に対して液状の架橋剤を付与
する方法として、霧吹きを用いて該架橋剤を原反に付与
する方法がある。この方法を縫製品に液状の架橋剤を付
与する方法として単に採用した場合、たとえ液状の架橋
剤の均一な霧を発生させることができたとしても、平面
の1枚布(原反)の場合と違い、パンツやシャツ等の立
体構造物である縫製品では表裏(内外)や影や重なりの
ある部分があるので、液状の架橋剤を縫製品に均一に付
与することはできない。
【0029】したがって、前記プレキュア法及び前記ポ
ストキュア法では原反に液状の架橋剤を均一に付与し、
前記VP加工法ではホルマリンガスを用いて縫製品に架
橋剤であるホルマリンを均一に付与しているのである。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記事情に
鑑みてなされたもので、多種多様なものが存在する液状
の架橋剤を用いて縫製品の形態安定加工を行うことを前
提とした上で、特別な前処理をした原反に限定されず
に各種の原反を自由に選んで衣類等の繊維製品を製作す
ることができ、繊維製品のデザインの自由度を大きくす
ることができること、原反の長期の保存が可能で、そ
の保存方法にも制約がないこと、及び、必要に応じて
繊維製品に使い古しの感じ(洗濯の風合い感)を出す洗
い加工を行うことができること、という条件を満たす形
態安定加工方法を提供することを目的とするものであ
る。
【0031】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、本発明の第1の態様による縫製品の形態安定加工方
法は、縫製品に液状の架橋剤を均一に付与する架橋剤付
与工程と、該架橋剤付与工程を経た縫製品に、前記架橋
剤による架橋結合が進行する温度でキュアリングするキ
ュアリング工程とを備えたものである。そして、前記架
橋剤付与工程は、水平軸回りに回転可能である回転ドラ
ム内に縫製品を収容し、該回転ドラムを回転させなが
ら、前記回転ドラム内に霧化された液状の架橋剤を供給
する工程である。
【0032】本発明の第2の態様による縫製品の形態安
定加工方法は、前記第1の態様による形態安定加工方法
において、前記回転ドラムが、前面に縫製品出し入れ用
の扉を有する筐体内に設けられたものである。
【0033】本発明の第3の態様による縫製品の形態安
定加工方法は、前記第2の態様による形態安定加工方法
において、前記回転ドラム内の縫製品収容空間は、前記
扉が閉じられたときに実質的に前記縫製品収容空間の端
面側からのみ外部に連通するものである。
【0034】本発明の第4の態様による縫製品の形態安
定加工方法は、前記第3の態様による形態安定加工方法
において、前記縫製品収容空間は、前記縫製品収容空間
の端面に位置する部材に形成された複数の細孔を介して
外部に連通するものである。
【0035】本発明の第5の態様による縫製品の形態安
定加工方法は、前記第4の態様による形態安定加工方法
において、前記複数の細孔の開口率は、前記霧化された
液状の架橋剤の前記回転ドラム内への供給に支障を来さ
ない程度に小さいものである。
【0036】本発明の第6の態様による縫製品の形態安
定加工方法は、前記第1乃至第5のいずれかの態様によ
る形態安定加工方法において、前記霧化された液状の架
橋剤の前記回転ドラム内への供給は、前記液状の架橋剤
を噴霧する1つ又は複数の噴霧ノズルを用いて行われる
ものである。
【0037】本発明の第7の態様による縫製品の形態安
定加工方法は、前記第1乃至第5のいずれかの態様によ
る形態安定加工方法において、前記霧化された液状の架
橋剤の前記回転ドラム内への供給は、液状の架橋剤を超
音波振動により霧化する超音波噴霧器を用いて行われる
ものである。
【0038】本発明の第8の態様による縫製品の形態安
定加工方法は、前記第1乃至第7のいずれかの態様によ
る形態安定加工方法において、前記架橋剤付与工程は、
前記回転ドラムが正転及び逆転を繰り返すように前記回
転ドラムを回転させる工程を含むものである。
【0039】本発明の第9の態様による縫製品の形態安
定加工方法は、前記第1乃至第8のいずれかの態様によ
る形態安定加工方法において、前記架橋剤付与工程は、
前記回転ドラム内への前記霧化された液状の架橋剤の供
給と供給休止とを繰り返す工程を含むものである。
【0040】本発明の第10の態様による縫製品の形態
安定加工方法は、前記第1乃至第9のいずれかの態様に
よる形態安定加工方法において、前記回転ドラムの回転
速度が、前記回転ドラムの回転による遠心力で前記回転
ドラム内に収容された縫製品が鉛直方向に対して30゜
から60゜傾斜した位置まで上がるとともにそこから下
方へ重力落下する程度の回転速度であるものである。
【0041】本発明の第11の態様による縫製品の形態
安定加工方法は、前記第1乃至第10のいずれかの態様
による形態安定加工方法において、前記架橋剤付与工程
の前に行われる前処理工程であって、前記縫製品を水洗
いし脱水し乾燥させる前処理工程を、更に含むものであ
る。
【0042】本発明の第12の態様による縫製品の形態
安定加工方法は、前記第11の態様による形態安定加工
方法において、前記前処理工程が、洗濯の風合い感を出
す洗い加工工程を含むものである。
【0043】本発明の第13の態様による縫製品の形態
安定加工方法は、前記第1乃至第12のいずれかの態様
による形態安定加工方法において、前記架橋剤付与工程
の後であって前記キュアリング工程の前に行われる乾燥
工程であって、前記架橋剤による架橋結合が実質的に進
行しない温度で前記縫製品を乾燥する乾燥工程と、該乾
燥工程の後であって前記キュアリング工程の前に行われ
る形態付与工程であって、プレス又はアイロンにより前
記縫製品に所望の形態を付与する形態付与工程と、を更
に含むものである。
【0044】本発明の第14の態様による縫製品の形態
安定加工方法は、前記第1乃至第13のいずれかの態様
による形態安定加工方法において、前記キュアリング工
程の後に行われる後処理工程であって、前記縫製品を水
洗いし脱水し乾燥させる後処理工程を、更に含むもので
ある。
【0045】本発明の第15の態様による縫製品の形態
安定加工方法は、裁断,縫製を行う縫製工程の終了した
繊維製品に、水洗い,脱水を行う前処理水洗い工程を行
い、次に架橋剤を均一に付与する架橋付与工程を行い、
次に架橋結合が急激に進行しない温度で当該繊維製品を
乾燥する低温乾燥工程を行い、次にプレスまたはアイロ
ンにより当該繊維製品に形態を付与する形態付与工程を
行い、続いて熱処理を架橋進行温度にて3〜7分間行う
キュアリング工程を行い、続いて水洗い脱水,乾燥を行
う後処理工程から成るものである。
【0046】本発明の第16の態様による縫製品の形態
安定加工方法は、前記第15の態様による形態安定加工
方法において、前処理水洗い工程が、洗濯の風合い感を
出す洗い加工工程であるものである。
【0047】本発明の第17の態様による縫製品の形態
安定加工方法は、前記第15の態様による形態安定加工
方法において、円筒式の回転ドラムに繊維製品を入れ、
ドラムを垂直方向に回転させながら、ドラムの中に架橋
剤を霧の状態で付与する架橋剤付与工程であるものであ
る。
【0048】
【作用】本件発明者は、研究を重ねることにより、縫製
品に液状の架橋剤を十分に均一に付与することができる
方法を見出した。すなわち、本件発明者は、水平軸回り
に回転可能である回転ドラム内に縫製品を収容し、該回
転ドラムを回転させながら、前記回転ドラム内に霧化さ
れた液状の架橋剤を供給することによって、縫製品に液
状の架橋剤を均一に付与することができることを見出し
た。このようにすることによって、前記回転ドラム内に
おいて縫製品が攪拌されながら、液状の架橋剤の粒子が
縫製品の各部に直接に付着したり、一旦回転ドラムの内
壁に付着した液状の架橋剤の粒子が縫製品の各部に付着
したり、縫製品のある部分に付着した液状の架橋剤の粒
子が縫製品の他の部分に付着したりする。その結果、液
状の架橋剤が縫製品に均一に付与されるのである。
【0049】本発明は、この新たに見出した、縫製品へ
の液状の架橋剤の均一付与方法を巧みに利用して、繊維
製品に形態安定加工を施すものである。
【0050】まず、本発明の第1乃至第17の態様によ
れば、液状の架橋剤を用いているので、多種多様な架橋
剤の中から生地の種類や最終製品に望まれる特性に応じ
て所望の架橋剤を選択することができる利点がある。
【0051】そして、本発明の第1乃至第17の態様に
よれば、縫製品に架橋剤を付与するのであるから、繊維
製品を製作する際に用いる原反として予め前処理された
ものを用いる必要がなく、したがって、繊維製品のデザ
インの自由度が制限されないとともに、原反の長期保存
が可能でかつその保存方法にも制約がなくなる。
【0052】また、本発明の第1乃至第17の態様によ
れば、縫製品に架橋剤を付与するのであるから、必要に
応じて、架橋剤付与前に縫製品に対して洗濯の風合い感
を出すための洗い加工を施すことによって、何ら不都合
が生ずることなく、洗濯の風合い感を有するとともに形
態安定加工が施された繊維製品を得ることができる。
【0053】さらに、本発明の第1乃至第17の態様に
よれば、縫製品に架橋剤を付与するのであるから、縫製
品の表面の生地のみならず、縫製品の芯材や裏地にも同
時に架橋剤を付与することができ、したがって、その芯
材や裏地を含めた縫製品の全体に対して形態安定加工を
行うことができる。
【0054】そして、本発明の第2の態様によれば、回
転ドラムが筐体内に設けられているので、該筐体によっ
て液状の架橋剤の外部への飛散が防止され、好ましい。
【0055】ところで、回転ドラム内の縫製品収容空間
を完全に密閉してしまうと、該縫製品収容空間への架橋
剤供給に伴って必然的に行われるべき排気が行われない
ので、縫製品収容空間への霧化された液状の架橋剤の供
給に支障を来たしてしまう。
【0056】そこで、縫製品収容空間は外部に連通され
る。しかし、縫製品収容空間の周面側から縫製品収容空
間を外部に連通させると、すなわち、回転ドラムの周壁
に多数の孔を設けてそこから縫製品収容空間を外部に連
通させると、該孔がなければ周壁に付着した後に縫製品
に付着するはずである液状の架橋剤が外部へ逃げてしま
い、液状の架橋剤の付着効率(液状の架橋剤の供給量に
対する液状の架橋剤の縫製品への付着量の比率)が悪化
し、不経済である。この点、前記第3の態様によれば、
縫製品収容空間が実質的にその端面側からのみ外部に連
通しているので、液状の架橋剤の付着効率が良く、経済
的である。
【0057】縫製品収容空間を実質的にその端面側から
のみ外部に連通させるためには、具体的には、例えば、
前記第4の態様のように、縫製品収容空間の端面に位置
する部材に複数の細孔を形成すればよい。この場合、前
記第5の態様のように、この複数の細孔の開口率を霧化
された液状の架橋剤の供給に支障を来さない程度に小さ
くしておけば、縫製品収容空間から液状の架橋剤が外部
に一層逃げ難くなるので、一層経済的である。
【0058】霧化された液状の架橋剤を前記回転ドラム
内へ供給するためには、前記第6の態様のように噴霧ノ
ズルを用いてもよいし、前記第7の態様のように超音波
噴霧器を用いてもよい。超音波噴霧器を用いると、噴霧
ノズルを用いる場合に比べて、コストアップを免れない
ものの、一層均一で細かい液状の架橋剤の霧(粒子)を
発生させることができる利点がある。
【0059】また、前記第8の態様によれば、回転ドラ
ムが正転及び逆転を繰り返すので、回転ドラム内に多量
の縫製品を収容しても縫製品が捻れたり絡んだりしなく
なり、好ましい。もっとも、縫製品の量を少なくすれ
ば、回転ドラムを一方方向にのみ回転させてもよい。
【0060】前記第9の態様によれば、液状の架橋剤の
供給と供給休止が繰り返されるので、液状の架橋剤の供
給中に縫製品のある部分や付着した液状の架橋剤が、液
状の架橋剤の供給休止中に縫製品の他の部分に行き渡
り、また、液状の架橋剤の供給中に回転ドラムの内壁に
付着した液状の架橋剤が縫製品に付着し、これらの動作
が繰り返されることにより、液状の架橋剤が縫製品に一
層均一に付着する。もっとも、本発明では、液状の架橋
剤の供給のみを継続してもよい。
【0061】前記第10の態様によれば、前記回転ドラ
ムの回転速度が、前記回転ドラムの回転による遠心力で
前記回転ドラム内に収容された縫製品が鉛直方向に対し
て30゜から60゜傾斜した位置(すなわち、時計の1
0時10分から11時5分の針の位置)まで上がるとと
もにそこから下方へ重力落下する程度の回転速度とされ
ているので、回転ドラム内に収容した縫製品が一層良く
攪拌され、したがって、液状の架橋剤が縫製品に一層均
一に付着する。
【0062】ところで、原反を裁断して縫製する際に
は、繊維に糊が付着されることが多い。また、繊維製品
に洗濯の風合い感を出すため、洗い加工を施す必要があ
る。このような場合には、前記第11及び第15の態様
のように、前記架橋剤付与工程の前に前記前処理工程を
行うことが好ましい。もっとも、縫製時に繊維に糊が付
着されないとともに洗濯の風合い感が必要ない場合に
は、前記前処理工程はなくてもよい。なお、繊維製品に
洗濯の風合い感を出す場合には、前記第12及び第16
の態様のように、前記前処理工程を洗濯の風合い感を出
す洗い加工工程を含むようにすればよい。
【0063】前記第1の態様においては、前記第13及
び第15の態様のような乾燥工程及び形態付与工程を必
ずしも行わなくてもよい。例えば、ジーパンなどをラン
ダムに皺が付いた状態の形態を保持するべく形態安定加
工する場合には、特別にアイロンやプレスにより形態を
付与する必要がないからである。この場合には、キュア
リング工程が縫製品を乾燥させる工程を兼ねることにな
る。一方、パンツ(ズボン)やスカートやドレスシャツ
などでは、プリーツを付与するなどアイロンやプレスに
より所望の形態を付与する必要があるので、前記第13
及び第15の態様のように、乾燥工程及び形態付与工程
を含むことが好ましい。
【0064】ところで、前記キュアリング工程で架橋剤
による架橋結合が完了するが、架橋剤の種類によって
は、その後にも未反応物質が残る場合がある。このよう
な場合には、前記第14の態様のように、未反応物質を
洗い落とすべく、後処理工程を含むことが好ましい。も
っとも、このような未反応物質が残らない架橋剤を用い
れば、後処理工程を必ずしも行う必要はない。
【0065】
【実施例】以下、図面を参照して、本発明による縫製品
の形態安定加工方法について説明する。
【0066】図1は、本発明の一実施例による縫製品の
形態安定加工方法を示す工程図である。
【0067】図1に示すように、本発明では、原反を裁
断し縫製する(図1中の工程51)ことによって得た繊
維製品、すなわち、縫製品を加工対象とする。この縫製
品は、原反から縫製した直後のもののみならず、いわゆ
るリサイクル品等であってもよい。前記原反は、従来の
プレキュア法やポストキュア法と異なり、特別な前処理
は行われていない。
【0068】なお、本発明の形態安定加工の対象となる
縫製品の材質としては、架橋剤との関係等により定まる
が、少なくとも、縫製品が、例えば、綿や麻などのセル
ロースからなる繊維及びセルロースから再生した再生繊
維すなわちキュプラ,ポリノジック,レーヨン、の単独
または混紡及び混織した布を有していれば、本発明の形
態安定加工を施すことができる。
【0069】そして、まず、必要に応じて、前処理工程
52で、前記縫製品を水洗いし脱水し乾燥させる(これ
を前処理水洗い工程ともいう)。原反を裁断して縫製す
る際には、繊維に糊が付着されることが多い。また、繊
維製品に洗濯の風合い感を出すため、洗い加工を施す必
要がある。このような場合には、前処理工程52を行う
ことが好ましい。もっとも、縫製時に繊維に糊が付着さ
れないとともに洗濯の風合い感が必要ない場合には、前
記前処理工程52はなくてもよい。なお、繊維製品に洗
濯の風合い感を出す場合には、前処理工程の水洗いにお
いて、洗濯の風合い感を出す周知の洗い加工工程を行え
ばよい。
【0070】次に、架橋剤付与工程52で、前記縫製品
に液状の架橋剤を均一に付与する。すなわち、後に詳細
に説明するように、水平軸回りに回転可能である回転ド
ラム内に当該縫製品を収容し、該回転ドラムを回転させ
ながら、前記回転ドラム内に霧化された液状の架橋剤を
供給する。縫製品への液状の架橋剤の付与の量及び(架
橋剤の原液を適当な薄め液で薄めた場合には)架橋剤の
薄め度合いは、例えば、架橋剤付与後の縫製品の湿り度
合いが、手で触ったときにベトベトにならずに軽く握り
しめたときでも液が滲み出るようなことのない状態とな
るようにする。例えば、液状の架橋剤の付与の量は、繊
維重量に対して、60%〜85%の範囲が好ましい。
【0071】液状の架橋剤としては、メラミン系、グリ
オキザール系、尿素−ホルマリン系等のアミノ樹脂ある
いはエポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、エチレン
イミン系樹脂等の架橋剤を挙げることができる。具体的
には、前記架橋剤として、例えば、(1)住友化学工業
株式会社から提供されている「スミテックス レジンN
S−200」と称する、特殊変性型のジメチロールジヒ
ドロキシエチレンウレア系のセルロース架橋剤、(2)
コタニ化学工業株式会社から提供されている「クインセ
ッター G−N NEW」と称するグリオキザール系の
反応レジンを用いることができる。
【0072】なお、前記液状の架橋剤は、ホルマリンを
含有していてもよいが、ホルマリンを含有しない方が好
ましい。前記液状の架橋剤がホルマリンを含有している
と、脱ホルマリン処理を行っても繊維の中にホルマリン
が残り、ホルマリンをアレルゲンとする人にとっては、
たとえ残留ホルマリンの量が規定値以下の微量であって
も、アレルギーの原因となってしまう可能性があるから
である。近年、ホルマリンの有害度が問題になり、19
75年「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法
律」により、内衣に対して強くホルマリン含有量の規制
が定められた。
【0073】次に、必要に応じて、乾燥工程54で、前
記架橋剤による架橋結合が実質的に進行しない温度(本
明細書では、これを低温という。)で当該縫製品を乾燥
させ、その後、形態付与工程55で、プレス又はアイロ
ンにより当該縫製品に所望の形態を付与する(例えば、
プリーツ等を付与する)。もっとも、本発明では、乾燥
工程54及び形態付与工程55を必ずしも行わなくても
よい。例えば、ジーパンなどをランダムに皺が付いた状
態の形態を保持するべく形態安定加工する場合には、特
別にアイロンやプレスにより形態を付与する必要がない
からである。この場合には、後述するキュアリング工程
56が当該縫製品を乾燥させる工程を兼ねることにな
る。一方、パンツ(ズボン)やスカートやドレスシャツ
などでは、プリーツを付与するなどアイロンやプレスに
より所望の形態を付与する必要があるので、本実施例の
ように、乾燥工程54及び形態付与工程55を含むこと
が好ましい。なお、縫製品がドレスなどの高級品である
場合には、縫製品の縁部のすれ等を防止するため、乾燥
工程54において、回転ドラム式の乾燥機を用いずに、
周知の静止乾燥機(縫製品に物理的な力を加えることな
く、縫製品を静止させたまま乾燥させる装置)を用いる
ことが好ましい。
【0074】次に、キュアリング(熱処理)工程56
で、当該縫製品に、前記架橋剤による架橋結合が進行す
る温度(架橋剤により異なるが、例えば、140〜16
0゜C)でキュアリングを行う。キュアリングの時間
は、繊維や架橋剤の種類等にもよるが、例えば、約3〜
7分とする。
【0075】最後に、必要に応じて、後処理工程57
で、当該縫製品を水洗いし脱水し乾燥させ、当該縫製品
の形態安定加工が完了する。架橋剤の種類によっては、
キュアリング工程56の後にも未反応物質が残る場合が
ある。このような場合には、本実施例のように、未反応
物質を洗い落とすべく、後処理工程57を行うことが好
ましい。もっとも、このような未反応物質が残らない架
橋剤を用いれば、後処理工程57を必ずしも行う必要は
ない。
【0076】以上説明した形態安定加工方法によれば、
液状の架橋剤を用いているので、多種多様な架橋剤の中
から生地の種類や最終製品に望まれる特性に応じて所望
の架橋剤を選択することができる。
【0077】また、前記形態安定加工方法によれば、縫
製品に架橋剤を付与するのであるから、繊維製品を製作
する際に用いる原反として予め前処理されたものを用い
る必要がなく、したがって、繊維製品のデザインの自由
度が制限されないとともに、原反の長期保存が可能でか
つその保存方法にも制約がなくなる。
【0078】さらに、前記形態安定加工方法によれば、
縫製品に架橋剤を付与するのであるから、必要に応じ
て、架橋剤付与前に縫製品に対して洗濯の風合い感を出
すための洗い加工を施すことによって、何ら不都合が生
ずることなく、洗濯の風合い感を有するとともに形態安
定加工が施された繊維製品を得ることができる。
【0079】さらにまた、前記形態安定加工方法によれ
ば、縫製品に架橋剤を付与するのであるから、縫製品の
表面の生地のみならず、縫製品の芯材や裏地にも同時に
架橋剤を付与することができ、したがって、その芯材や
裏地を含めた縫製品の全体に対して形態安定加工を行う
ことができる。
【0080】ところで、前記架橋剤付与工程53につい
ては既に簡単に説明したが、架橋剤付与工程53は本発
明において特に重要であるので、以下に図3乃至図5を
参照して架橋剤付与工程53について詳細に説明する。
【0081】図3は、架橋剤付与工程53で用いること
ができる架橋剤均一付与装置の一例の構成を模式的に示
す説明図である。図4は該架橋剤均一付与装置の縦断面
図であり、図5は図4中のX−X線に沿った断面図であ
る。
【0082】この架橋剤均一付与装置は、図3乃至図5
に示すように、水平軸回りに(すなわち、垂直方向に)
回転可能であるとともに内部に縫製品が収容される回転
ドラム2を有している。
【0083】本例では、回転ドラム2は円筒容器として
構成されている。すなわち、図4及び図5に示すよう
に、回転ドラム2は、筒状の周壁21と、両端壁22,
23とから構成されている。もっとも、回転ドラムを多
角筒状に構成してもよい。
【0084】周壁21の内側面には、回転ドラム2内に
収容された縫製品を回転ドラム2の回転に従ってすくい
上げる複数のすくい上げ部材27が突設されている。該
複数のすくい上げ部材27は、水平方向(図4中の左右
方向)に延び、互いに円周方向に対して間隔をあけて配
置されている。なお、本例では、当該回転ドラム2の円
筒部壁面21には開口部や孔は全く形成されていない。
【0085】そして、この円筒容器の図3中の紙面の向
う側の平面壁面23には、細孔26があけられている。
また、この円筒容器の図3中の紙面の手前側の壁面22
に縫製品を出し入れするための開口部20が形成されて
いる。
【0086】すなわち、図4に示すように、前方の端壁
22には、縫製品を出し入れするための開口部20が形
成されている。なお、該開口部20の周囲に短筒部24
が形成されている。また、図4及び図5に示すように、
後方の端壁23には、回転ドラム2内の縫製品収容空間
25を外部に連通させるための複数の細孔26が形成さ
れている。該細孔26の開口率は、後述する噴霧ノズル
3,4からの霧化された液状の架橋剤の供給に支障を来
さない程度に小さくされている。
【0087】そして、図3中の紙面の向う側の壁面(円
盤)23の中央には、当該回転ドラム2を支えかつ回転
させるための軸28が固定されている。なお、図4中の
符号29は、補強部材を示す。該軸28には、プーリー
18が固定されている。
【0088】本実施例では、回転ドラム2は、筐体16
内に収容されている。筐体16は液状の架橋剤が外部に
飛散しないよう回転ドラム部を囲んでおり、図3に示す
ように筐体16の天井部に換気用煙突17を設けてい
る。なお、図4に示す例では、筐体16は、煙突17の
代わりに、排気ダクトを接続するための排気口17aを
背面に有している。
【0089】図4に示すように、筐体16の前面(前
壁)には、回転ドラム2の開口部20に対応する位置
に、縫製品出し入れ用の扉30が設けられている。該扉
30を開けることによって、回転ドラム2内に縫製品を
投入したり、回転ドラム2内から縫製品を取出したりで
きるようになっている。筐体16は、扉30の周縁に扉
受け部31を有するとともに、該扉受け部31に連続す
る短筒部32を有している。扉30の背部には、扉受け
部31との間を密閉するパッキン33が設けられてい
る。
【0090】そして、図4に示すように、回転ドラム2
の短筒部24が筐体16の短筒部32に周知の軸受け部
材34を介して嵌合され、回転ドラム2の軸28が筐体
16の背面に設けられた軸受け35により支持され、し
たがって、回転ドラム2が筐体2により水平軸回りに回
転可能に支持されている。なお、図4に示すように、短
筒部24,32間を気密に保つため、短筒部24,32
のいずれか一方にのみ固定されたシール部材36が設け
られている。もっとも、このシール部材36を取り除い
て、短筒部24,32間から縫製品収容空間25が外部
に連通するようにしてもよい。また、短筒部32に細孔
を形成し、この細孔を介して縫製品収容空間25が外部
に連通するようにしてもよい。
【0091】また、筐体16の後壁の下方位置には排水
管等が接続される排水口37が設けられている。筐体1
6の下方には、回転ドラム2内から細孔26を介して漏
れ出た液状の架橋剤を排水口37に案内する案内板38
が設けられている。
【0092】筐体16内には、回転ドラム2を回転駆動
するモータ1が設けられている。該モータ1のプーリー
19と前記軸28に固定されたプーリー18との間には
ベルト14が巻き掛けられており、モータ1を正転及び
逆転により回転ドラム2が回転するようになっている。
図4中、符号39は、プーリー18,19等を覆う補助
カバーである。
【0093】本実施例では、開口部20より液状の架橋
剤を噴霧する噴霧ノズル3,4が回転ドラム2内に向か
って臨んでいる。噴霧ノズル3及び4は、図4に示すよ
うに扉30に取り付けられているが、取り付け板を介し
て短筒部32に取り付けるなど、固定側の任意の部材に
対して取り付けることができる。また、噴霧ノズルの数
は限定されず、1つ又は2つ以上の噴霧ノズルを用いて
もよい。図3に示すように、噴霧ノズル3,4は、液状
の架橋剤を収容する液状の架橋剤容器8と、液状の架橋
剤に吐出圧を生ぜしめる加圧用ポンプ7と、噴霧をON
/OFFさせる電磁弁などの自動開閉弁6と、液状の架
橋剤容器8と加圧用ポンプ7との間を接続する配管9
と、加圧用ポンプ7と自動開閉弁6との間を接続する配
管11と、自動開閉弁6と噴霧ノズル3,4との間を接
続する配管5と共に、回転ドラム2内に霧化された液状
の架橋剤を供給する架橋剤供給手段を構成している。
【0094】本例による架橋剤均一付与装置は、図3に
示すように、モータ1を制御して回転ドラム2の回転を
制御するとともに、加圧用ポンプ7及び自動開閉弁6を
制御して回転ドラム2内への霧化された液状の架橋剤の
供給を制御する制御部12を有している。該制御部12
は、例えば、モータ1、加圧ポンプ7及び自動開閉弁6
をそれぞれ駆動する駆動回路と、これらの駆動回路を制
御するシーケンスコントローラ又はマイクロコンピュー
タとから構成される。
【0095】制御部12は、回転ドラム2が正転及び逆
転を繰り返すように、回転ドラム2の回転方向、回転ド
ラム2の回転速度、並びに正転及び逆転の継続時間T1
を制御するべく、信号線13を介してモータ12の回転
を制御する。また、制御部12は、回転ドラム2内への
霧化された液状の架橋剤の供給と供給休止が繰り返され
るように、噴霧時間(供給時間)T2と休止時間T3及び
そのサイクルを制御するべく、信号線10を介して加圧
用ポンプ7及び自動弁6を制御する。
【0096】前記各時間T1,T2,T3、サイクルタイ
ム及び回転ドラム2の回転スピードは、制御部12に接
続されている入力部(設定部)15により使用者が任意
に設定することができ、制御部12はこれらの設定に従
って前述した制御を行う。なお、必ずしも入力部15を
設けなくてもよい。
【0097】次に、前述した架橋剤均一付与装置の動作
について説明する。
【0098】回転ドラム2内に縫製品が収容され、回転
ドラム2が回転しながら、噴霧ノズル3,4から霧化さ
れた液状の架橋剤が回転ドラム2内に供給される。した
がって、回転ドラム2内において縫製品が攪拌されなが
ら、液状の架橋剤の粒子が縫製品の各部に直接に付着し
たり、一旦回転ドラム2の内壁に付着した液状の架橋剤
の粒子が縫製品の各部に付着したり、縫製品のある部分
に付着した液状の架橋剤の粒子が縫製品の他の部分に付
着したりする。その結果、液状の架橋剤が縫製品に均一
に付与される。
【0099】そして、本例では、回転ドラム2が筐体1
6内に設けられているので、筐体16によって液状の架
橋剤の外部への飛散が防止され、好ましい。
【0100】ところで、縫製品収容空間25の周面側か
ら縫製品収容空間25を外部に連通させると、すなわ
ち、回転ドラム2の周壁21に多数の孔を設けてそこか
ら縫製品収容空間25を外部に連通させると、該孔がな
ければ周壁25の付着した後に縫製品に付着するはずで
ある液状の架橋剤が外部へ逃げてしまい、液状の架橋剤
の付着効率(液状の架橋剤の供給量に対する液状の架橋
剤の縫製品への付着量の比率)が悪化し、不経済であ
る。この点、本例では、縫製品収容空間25が実質的に
その端面側からのみ、すなわち、本例では回転ドラム2
の後方の端壁23の複数の細孔26からのみ、外部に連
通しているので、液状の架橋剤の付着効率が良く、経済
的である。
【0101】そして、本例では、複数の細孔26の開口
率が、霧化された液状の架橋剤の供給に支障を来さない
程度に小さくされているので、縫製品収容空間25から
液状の架橋剤が外部に一層逃げ難くなるので、一層経済
的である。
【0102】また、本例では、回転ドラム2が正転及び
逆転を繰り返すので、回転ドラム2内に多量の縫製品を
収容しても縫製品が捻れたり絡んだりしなくなり、好ま
しい。もっとも、縫製品の量を少なくすれば、回転ドラ
ム2を一方方向にのみ回転させてもよい。
【0103】また、本例では、液状の架橋剤の供給と供
給休止が繰り返されるので、液状の架橋剤の供給中に縫
製品のある部分に付着した液状の架橋剤が、液状の架橋
剤の供給休止中に縫製品の他の部分に行き渡り、また、
液状の架橋剤の供給中に回転ドラム2の内壁に付着した
液状の架橋剤が縫製品に付着し、すなわち、供給された
液状の架橋剤が供給休止中に縫製品に良くなじみ、これ
らの動作が繰り返されることにより、液状の架橋剤が縫
製品に一層均一に付着する。もっとも、液状の架橋剤の
供給のみを継続してもよい。
【0104】さらに、本例では、使用者が回転ドラム2
の正転及び逆転時の回転速度や回転ドラム2の正転及び
逆転の継続時間T1、液状の架橋剤の供給時間T2及び供
給休止時間T3等を、入力部15によって設定すること
ができるので、縫製品の種類や量などに応じた適切な運
転を行うことができる。例えば、時間T1が10〜15
秒,時間T2が3分,時間T3が7分,液状の架橋剤の供
給と供給休止のサイクルが2〜3サイクルで、縫製品へ
の液状の架橋剤の良好な付与が得られる。
【0105】なお、回転ドラム2の回転速度は、回転ド
ラム2の回転による遠心力で回転ドラム2内に収容され
た縫製品が鉛直方向に対して30゜から60゜傾斜した
位置(すなわち、時計の10時10分から11時5分の
針の位置)(図5を参照すると、回転ドラム2の正転時
にはA位置からB位置、回転ドラム2の逆転時にはC位
置からD位置)まで上がるとともにそこから離れて下方
へ重力落下する程度の回転速度とすることが、好まし
い。こうすることにより、回転ドラム2内に収容した縫
製品が一層良く攪拌され、したがって、液状の架橋剤が
縫製品に一層均一に付着する。
【0106】なお、液状の架橋剤供給手段に関しては、
液状の架橋剤の噴霧の方法には、液状の架橋剤に圧力を
かけこれを噴霧ノズルより噴出させる方法と吹き出す圧
縮空気のベンチュリー効果より液状の架橋剤を吸い込み
霧化噴出する方法とがあるが、どちらの方法を採用した
ものでもよい。また、架橋剤供給手段として、前記例の
ように噴霧ノズルを用いた構成の代わりに、液状の架橋
剤を超音波振動により霧化する周知の構成の超音波噴霧
器を用いた構成としてもよい。超音波噴霧器を用いる
と、噴霧ノズルを用いる場合に比べて、コストアップを
免れないものの、一層均一で細かい液状の架橋剤の霧
(粒子)を発生させることができる利点がある。
【0107】
【発明の効果】本発明によれば、多種多様な液状の架橋
剤の中から生地の種類や最終製品に望まれる特性に応じ
て所望の架橋剤を選択することができる。
【0108】また、本発明によれば、繊維製品を製作す
る際に用いる原反として予め前処理されたものを用いる
必要がなく、したがって、繊維製品のデザインの自由度
が制限されないとともに、原反の長期保存が可能でかつ
その保存方法にも制約がなくなる。
【0109】さらに、本発明によれば、必要に応じて、
架橋剤付与前に縫製品に対して洗濯の風合い感を出すた
めの洗い加工を施すことによって、何ら不都合が生ずる
ことなく、洗濯の風合い感を有するとともに形態安定加
工が施された繊維製品を得ることができる。
【0110】さらにまた、本発明によれば、縫製品の表
面の生地のみならず、縫製品の芯材や裏地にも同時に架
橋剤を付与することができ、したがって、その芯材や裏
地を含めた縫製品の全体に対して形態安定加工を行うこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による縫製品の形態安定加工
方法を示す工程図である。
【図2】従来の形態安定加工方法を示す工程図である。
【図3】本発明における架橋付与工程で用いることがで
きる架橋剤均一付与装置の一例の構成を模式的に示す説
明図である。
【図4】図3に示す架橋剤均一付与装置の縦断面図であ
る。
【図5】図5中のX−X線に沿った断面図である。
【符合の説明】
52 前処理工程 53 架橋剤付与工程 54 乾燥工程 55 形態付与工程 56 キュアリング工程 57 後処理工程
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D06M 15/00

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 縫製品に液状の架橋剤を均一に付与する
    架橋剤付与工程と、該架橋剤付与工程を経た縫製品に、
    前記架橋剤による架橋結合が進行する温度でキュアリン
    グするキュアリング工程とを備え、前記架橋剤付与工程
    は、水平軸回りに回転可能である回転ドラム内に縫製品
    を収容し、該回転ドラムを回転させながら、前記回転ド
    ラム内に霧化された液状の架橋剤を供給する工程であ
    る、ことを特徴とする縫製品の形態安定加工方法。
  2. 【請求項2】 前記回転ドラムが、前面に縫製品出し入
    れ用の扉を有する筐体内に設けられたことを特徴とする
    請求項1記載の縫製品の形態安定加工方法。
  3. 【請求項3】 前記回転ドラム内の縫製品収容空間は、
    前記扉が閉じられたときに実質的に前記縫製品収容空間
    の端面側からのみ外部に連通することを特徴とする請求
    項2記載の縫製品の形態安定加工方法。
  4. 【請求項4】 前記縫製品収容空間は、前記縫製品収容
    空間の端面に位置する部材に形成された複数の細孔を介
    して外部に連通することを特徴とする請求項3記載の縫
    製品の形態安定加工方法。
  5. 【請求項5】 前記複数の細孔の開口率は、前記霧化さ
    れた液状の架橋剤の前記回転ドラム内への供給に支障を
    来さない程度に小さいことを特徴とする請求項4記載の
    形態安定加工方法。
  6. 【請求項6】 前記霧化された液状の架橋剤の前記回転
    ドラム内への供給は、前記液状の架橋剤を噴霧する1つ
    又は複数の噴霧ノズルを用いて行われることを特徴とす
    る請求項1乃至5のいずれかに記載の縫製品の形態安定
    加工方法。
  7. 【請求項7】 前記霧化された液状の架橋剤の前記回転
    ドラム内への供給は、液状の架橋剤を超音波振動により
    霧化する超音波噴霧器を用いて行われることを特徴とす
    る請求項1乃至5のいずれかに記載の縫製品の形態安定
    加工方法。
  8. 【請求項8】 前記架橋剤付与工程は、前記回転ドラム
    が正転及び逆転を繰り返すように前記回転ドラムを回転
    させる工程を含むことを特徴とする請求項1乃至7のい
    ずれかに記載の縫製品の形態安定加工方法。
  9. 【請求項9】 前記架橋剤付与工程は、前記回転ドラム
    内への前記霧化された液状の架橋剤の供給と供給休止と
    を繰り返す工程を含むことを特徴とする請求項1乃至8
    のいずれかに記載の縫製品の形態安定加工方法。
  10. 【請求項10】 前記回転ドラムの回転速度が、前記回
    転ドラムの回転による遠心力で前記回転ドラム内に収容
    された縫製品が鉛直方向に対して30゜から60゜傾斜
    した位置まで上がるとともにそこから下方へ重力落下す
    る程度の回転速度であることを特徴とする請求項1乃至
    9のいずれかに記載の縫製品の形態安定加工方法。
  11. 【請求項11】 前記架橋剤付与工程の前に行われる前
    処理工程であって、前記縫製品を水洗いし脱水し乾燥さ
    せる前処理工程を、更に含むことを特徴とする請求項1
    乃至10のいずれかに記載の縫製品の形態安定加工方
    法。
  12. 【請求項12】 前記前処理工程が、洗濯の風合い感を
    出す洗い加工工程を含むことを特徴とする請求項11記
    載の縫製品の形態安定加工方法。
  13. 【請求項13】 前記架橋剤付与工程の後であって前記
    キュアリング工程の前に行われる乾燥工程であって、前
    記架橋剤による架橋結合が実質的に進行しない温度で前
    記縫製品を乾燥する乾燥工程と、該乾燥工程の後であっ
    て前記キュアリング工程の前に行われる形態付与工程で
    あって、プレス又はアイロンにより前記縫製品に所望の
    形態を付与する形態付与工程と、を更に含むことを特徴
    とする請求項1乃至12のいずれかに記載の縫製品の形
    態安定加工方法。
  14. 【請求項14】 前記キュアリング工程の後に行われる
    後処理工程であって、前記縫製品を水洗いし脱水し乾燥
    させる後処理工程を、更に含むことを特徴とする。請求
    項1乃至13のいずれかに記載の縫製品の形態安定加工
    方法。
  15. 【請求項15】 裁断,縫製を行う縫製工程の終了した
    繊維製品に、水洗い,脱水を行う前処理水洗い工程を行
    い、次に架橋剤を均一に付与する架橋付与工程を行い、
    次に架橋結合が急激に進行しない温度で当該繊維製品を
    乾燥する低温乾燥工程を行い、次にプレスまたはアイロ
    ンにより当該繊維製品に形態を付与する形態付与工程を
    行い、続いて熱処理を架橋進行温度にて3〜7分間行う
    キュアリング工程を行い、続いて水洗い脱水,乾燥を行
    う後処理工程から成ることを特徴とする縫製品の形態安
    定加工方法。
  16. 【請求項16】 前処理水洗い工程が、洗濯の風合い感
    を出す洗い加工工程であることを特徴とする請求項15
    記載の縫製品の形態安定加工方法。
  17. 【請求項17】 円筒式の回転ドラムに繊維製品を入
    れ、ドラムを垂直方向に回転させながら、ドラムの中に
    架橋剤を霧の状態で付与する架橋剤付与工程である請求
    項15記載の縫製品の形態安定加工方法。
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