JPH0811943B2

JPH0811943B2 - ピストンリング

Info

Publication number: JPH0811943B2
Application number: JP62165035A
Authority: JP
Inventors: 學品田
Original assignee: Riken Corp
Current assignee: Riken Corp
Priority date: 1987-07-01
Filing date: 1987-07-01
Publication date: 1996-02-07
Anticipated expiration: 2011-02-07
Also published as: JPS6412053A

Description

【発明の詳細な説明】（産業上の利用分野）本発明はピストンリングに係り、更に詳しくは、初期
運転時の摺動特性を改善した鉄基合金からなる内燃機関
用ピストンリングに関する。

（従来技術と問題点）近年、内燃機関の軽量化と高出力化に伴って、ピスト
ンリングに要求される品質が高度になってきている。従
来から、内燃機関用ピストンリングにあっては、耐久性
を改善する手段として、特に外周摺動面に硬質クロムめ
っき層や溶射表面層或いは窒化層を形成させる方法が採
用されている。

これらの表面層のうち、特に窒化層は耐摩耗性に優れ
苛酷な運転条件下で使用されるピストンリングの表面処
理として注目され広く実用に供されている。

しかしながら、窒化層は耐摩耗性に優れているが、初
期なじみ性が良好でなく苛酷な運転条件では運転初期で
の耐焼付け性が満足すべきものでなく、その結果、異常
摩耗を起こすことがあるという問題がある。

（発明の目的）本発明は、耐摩耗性に優れていて、かつ苛酷な運転条
件でも初期なじみ性が良好で焼付きが起こり難く、特に
初期運転時の摺動特性に優れたピストンリングを提供す
ることを目的としてなされたものである。

（問題点を解決するための手段）本発明は、鉄基合金からなるピストンリングの少なく
とも外周摺動面に窒化層が形成され、更に窒化層の上に
厚さが0.5〜20μｍの複合分散めっき層が形成されてこ
れらの層が摺動表面層を構成し、前記複合分散めっき層
が、コバルト:10〜50重量％、燐:2〜10重量％を含有す
るニッケル合金でなる基地中に窒化珪素、酸化クロム又
は二硫化モリブデンの粒径が0.3〜10μｍの粒子を５〜3
0容積％分散させた複合分散ニッケルめっき層であるピ
ストンリングである。

本発明のピストンリング母材としては、優れた耐摩耗
性を示す窒化層が表面に形成されるに適する材料を採用
することが望ましく、C:0.16〜1.3重量％、Cr:12〜19重
量％を含有する鋼材や、更に上記合金元素に加えてMoや
Ｖ等を少量含有させた鋼材、例えば17クロム鋼などが好
適である。

本発明にあっては、窒化層の前述した問題点を解消す
るため、初期なじめ性の良好な複合分散めっき層を窒化
層の上に形成させる。

本発明のピストンリングでは、耐摩耗性に優れた窒化
層の上に初期なじみ性の良好な薄い複合分散めっき層が
形成されていて、この複合分散めっき層によって運転初
期に発生し易い焼付きを効果的に防止される。

複合分散めっき層の厚さは、0.5μｍ未満では、初期
なじみ状態が達成される前にめっき層が摩耗によって消
失してしまい上記の効果が期待できなくなる。他方、め
っき層が20μｍを超えて厚くなると、めっき処理コスト
が上昇するばかりでなく、運転中にめっき層に剥離が発
生し易くなり、又、下地の窒化層による耐摩耗性が発揮
できる状態に至るまでに、20μｍを超えた厚さのめっき
層が摩耗したことになるので、リング合い口隙間が大き
くなってピストンリングの気密性が劣化するようにな
る。従って、めっき層の厚さは0.5〜20μｍの範囲と
し、特に１〜10μｍとするのが好ましい。

めっき層はコバルトと燐を含有するニッケル合金基地
中に、窒化珪素又は酸化クロムの硬質粒子或いは二硫化
モリブデンの固体潤滑材粒子を分散した複合分散めっき
層とする。

以下、めっき層の基地及びこの基地中に分散させる分
散粒子について説明する。

コバルトはニッケル中に固溶して基地の硬度を上げ、
耐摩耗性、耐焼付き性を改善すると共に表面層の靭性強
度を向上させる。基地中のコバルト含有量が10重量％以
上で上記の効果が顕著になる。また、コバルト含有量が
50重量％を超えても上記効果の増大は顕著でなく、また
コスト高になる。従って、基地中のコバルト含有量は10
〜50重量％とする。

燐はめっき基地の硬度を上げ、耐摩耗性向上させる。
2.0重量％以上で上記の効果が顕著になる。また、燐の
含有量が10重量％を超えて含有させるとめっき基地を脆
弱にする。従って、燐含有量は2.0〜10重量％とする。

硬質粒子や固体潤滑材粒子の分散量及び粒径は形成す
るめっき膜の厚さとも関係する。

窒化珪素と酸化クロムの硬質粒子は耐摩耗性、耐焼付
き性改善に寄与する。更に、相手材摺動面を摩耗させる
作用は少ない。

その粒径は、0.3μｍ未満では耐摩耗性、耐焼付き性
改善の効果が顕著でなく、これが10μｍを超えるとめっ
き層の強度が低下して脆くなると共に、相手材の摩耗を
増大させるようになる。従って、粒径は0.3〜10μｍと
する。

又、粒子の分散量は、５容量％未満では耐摩耗性、耐
焼付き性改善の効果が顕著でなく、これが30容積％を超
えるとめっき層の強度が低下して脆くなると共に、相手
材の摩耗を増大させるようになる。従って、分散量は５
〜30溶液％とする。

酸化クロムの粒子にはCr₂O₃の粒子が、窒化珪素の粒
子にはSi₃N₄の粒子が好適である。

尚、硬質粒子として金属の窒化物例えばTiN、Cr₂N、
金属の酸化物例えばAl₂O₃、TiO₂、Cr₂O₃又は、金属の炭
化物例えばTiC、SiC、Cr₃C₂など、固体潤滑材として二
硫化タングステン、ボロンナイトライドなども勿論使用
可能である。

（実施例１）マルテンサイト系ステンレス鋼SUS440B（C:0.75〜0.9
5％、Si:1.0％以下、Mn1.0％以下、P:0.04％以下、Ni:
0.06％以下、Cr:16.0〜18.0％、Mo:0.75％以下）の供試
材を用いて、表面に表面処理し下記の試料を作成した。

A:厚さ10μｍの硬質クロムめっき層を形成した比較例の
試料 B:厚さ100μｍの窒化層を形成した比較例試料 C1:前記試料Ｂの窒化層の上にコバルト30重量％、燐５
重量％を含有するニッケル基地中に粒径３μｍ以下のSi
₃N₄を容積比で約10％分散させた厚さ10μｍの複合分散
ニッケルめっき層を形成した本発明の試料 C2:前記試料C1のSi₃N₄に代えて、Cr₂O₃を分散させた本
発明の試料。

D:前記試料Ｂの窒化層の上にコバルト30重量％、燐５重
量％を含有するニッケル基地中に粒径３μｍの二硫化モ
リブデンが容積比で５％分散させた厚さ10μｍの複合分
散めっき層を形成した本発明の試料作成した試料で下記の試験を行った。

１）焼付き試験試験装置は第１図及び第２図に要部を図解的に示すも
ので、ステータホルダ１に取外し可能に取付けられた直
径80mmの円板３の中央には裏側から注油孔４を通して潤
滑油が注油される。ステータホルダ１には図示しない油
圧装置によって図において右方へ向けて所定圧力で押圧
力Ｐが作用するようにしてある。円板３に相対向してロ
ータ５があり、図示しない駆動装置によって所定速度で
回転するようにしてある。ロータ５に取外し可能に取付
けられた試験片保持具６には5mm角、高さ10mmの試験片
７が同心上に等間隔に４個取付けてある。このような装
置によってステータホルダ１に所定の押圧力Ｐをかけ、
所定の面圧で円板（相手材）３と試験片７とが接触する
ようにしておいて、注油孔４から摺動面に所定給油速度
で給油しながらロータ５を回転させる。この試験装置に
より、次のような方法で耐焼付き性試験を行った。

試験片５を円板３に摺動させ、一定時間毎にステータ
ホルダ１に作用する圧力を段階的に増加しながら、試験
片７と円板３との間の摩擦によってステータホルダ１に
生ずるトルク（摩擦力）Ｆを、第１図のＸ−Ｘ矢視側面
図である第２図に示すスピンドル８を介してロードセル
９に作用せしめ、その変化を動歪計10で読む。トルクＦ
が急激に上昇したとき、焼付きが生じたものとし、その
時の接触面圧をもって焼付き発生面圧とし、その大小を
もって耐焼付き性の良否を判断する。

試験条件は次の通りである。

摩擦速度:8m/sec 潤滑油：モーターオイル＃30 接触面圧:40kg/cm²から３分間経過毎に10kg/cm²づつ上
昇させる試験結果、焼付き発生面圧はクロムめっき層を形成し
た試料Ａは115kg/cm²、窒化層を形成した試料Ｂは130kg
/cm²であったのに比し、本発明の複合分散めっき層を形
成した試料C1、C2及びＤはいずれも135kg/cm²と耐焼付
き性が大幅に改善されている。

２）耐摩耗性試験前記の耐焼付き性試験に使用した試験装置により耐摩
耗試験を行った。

試験条件は次の通りである。

摩擦速度:5m/sec 相手材：シリンダライナ用FC25 接触面圧:100kg/cm² 潤滑油：モータオイル＃30＋ダスト入り油温80℃ 給油
量400cc/min 試験結果を第３図に示す。

第３図から明らかなように、硬質ウロムめっき層を形
成させた試料Ａの摩耗の進行が一番速く、複合分散めっ
き層を形成させた本発明の試料C1、C2及びＤの摩耗速度
は窒化層を形成した試料Ｂの摩耗速度に近く、良好な耐
摩耗性を示している。

（実施例２） 17クロム鋼（C:0.6〜1.5重量％、Cr:12〜25重量％、C
o:2.0〜13.0重量％、Mo:0.2〜15.0重量％、W:0.4〜6.0
重量％、V:0.05〜6.0重量％、Nb:0.05〜3.0重量％、Ni:
0.3〜2.0重量％）からなる外周摺動面に窒化層を形成し
たピストンリングの窒化層の上に複合分散めっき層を形
成する第１の工程と、得られた複合めっき層に熱処理を
施す第２の工程により被膜を形成した。

第１の工程では、呼び径77mm×巾1.5mm×厚さ3.1mmの
ピストンリングを複数本まとめて母材とし、表１に示す
浴組成めっき浴を用い、浴温55℃、陰極電流密度5A/d
m²、電解時間10分の条件でニッケル−コバルト−燐複合
めっきを行った。この第１の工程で得られた17クロム鋼
窒化層上にニッケル−コバルト−燐複合めっき層の厚さ
は７μｍであり、その組成はコバルト30重量％、燐が6.
5重量％で、窒化珪素粒子は20容積％であった。

次に第２工程として、得られたニッケル−コバルト−
燐複合めっき皮膜に400℃で１時間の熱処理を施し、皮
膜を硬化させた。このときの硬度は、第１層であるニッ
ケル−コバルト−燐複合めっき層はマイクロビッカース
で980であった。

実機試験４サイクル水冷４気筒1800ccエンジンに、上記ピスト
ンリングを組込み、7500rpm、全負荷で100時間のベンチ
テストを行い、オイル消費量を測定した。

比較例として、前記のピストンリングの外周摺動面に
窒化層のみを形成したピストンリングを用いて同様な実
機試験を行い、オイル消費量を測定した。

試験結果を第４図に示す。

第４図から明らかなように本発明のピストンリング
は、ニッケル−コバルト−燐複合めっき層のみを摺動面
に有するピストンリングに比べて、初期の時点からオイ
ルの消費量が少なくなっていることがわかる。これはピ
ストンリングとシリンダとの隙間が短時間で消失してい
くため、すなわち初期なじみ性が良いためである。

また実施例では、17クロム鋼に窒化層のみのものはス
カッフィングが認められたが、本発明のニッケル−コバ
ルト−燐複合めっきにはスカッフィングも全く認められ
なかった。

（効果）本発明の内燃機関用鋼製ピストンリングは、耐摩耗性
の良好な窒化層の上に耐摩耗性、とりわけ耐焼付き性の
良好な複合分散めっき層によって、運転初期のなじみ運
転期間に発生し易い焼付き等の発生が効果的に防止さ
れ、苛酷な運転条件下で優れた耐久性を示し、寿命を増
大させることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図耐焼付き試験及び耐摩耗試験に使用した試験装
置の要部を示す一部破砕正面図第２図第１図のＸ−Ｘ矢視側面図第３図耐摩耗性試験の結果を示すグラフ第４図オイル消費量試験の結果を示すグラフ 1:ステータホルダ、2:摺動面 3:円板、4:注油孔 5:ロータ、6:試験片保持具 7:試験片、8:スピンドル 9:ロードセル、10:動歪計

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】鉄基合金からなるピストンリングの少なく
とも外周摺動面に窒化層が形成され、更に窒化層の上に
厚さが0.5〜20μｍの複合分散めっき層が形成されてこ
れらの層が摺動表面層を構成し、前記複合分散めっき層
が、コバルト:10〜50重量％、燐:2〜10重量％を含有す
るニッケル合金でなる基地中に、窒化珪素、酸化クロム
又は二硫化モリブデンからなりかつ粒径が.3〜10μｍの
粒子を５〜30容積％分散させた複合分散ニッケルめっき
層であることを特徴とする内燃機関用ピストンリング。