JPH0795682A - Fmθを誘導する可聴音とその発生方法 - Google Patents

Fmθを誘導する可聴音とその発生方法

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JPH0795682A
JPH0795682A JP5258993A JP25899393A JPH0795682A JP H0795682 A JPH0795682 A JP H0795682A JP 5258993 A JP5258993 A JP 5258993A JP 25899393 A JP25899393 A JP 25899393A JP H0795682 A JPH0795682 A JP H0795682A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ヒトに聴かせることにより、人為的にFmθ
を誘導し得る可聴音と、その可聴音を人為的に発生させ
る方法を提供することを目的とする。 【構成】 可聴域の低周波に周波数約20ヘルツ以下の
超低周波が重畳した変調波を含んでなるFmθを誘導す
る可聴音と、可聴域の低周波を周波数約20ヘルツ以下
の超低周波で振幅変調し、得られる低周波に超低周波が
重畳してなる変調波を含む電気信号を電気音響変換する
ことを特徴とするFmθを誘導する可聴音の発生方法と
を要旨とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ヒトの脳波における
Fmθを誘導する可聴音と、その可聴音を発生させる方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】大脳皮質や頭皮上の相違する2点間に観
察される電位差は「脳波」と呼ばれ、心身の状態に対応
する独特の波形、律動を有している。脳波、律動の周期
に因って、通常、α波、β波、θ波及びδ波の4波に分
類される。このうち、周期8乃至13ヘルツのα波は、
心身が弛緩するにつれて、強く、広範囲に連続して出現
するようになる。周期18乃至30ヘルツのβ波は、逆
に、心身が緊張するにつれ、強く、広範囲に出現するよ
うになる。周期4乃至8ヘルツのθ波と周期4ヘルツ未
満のδ波は入睡眠に関連する脳波であり、入眠時にはθ
波が強く現われ、睡眠が深くなるにつれてδ波が優勢に
なると言われている。イノウエ等『ジ・イー・イー・ジ
ー・オブ・メンタル・アクティビティーズ』、第136
〜148頁(1988年)に見られるように、θ波のう
ちでも、成人の前頭正中部付近に観察される6乃至7ヘ
ルツの優勢なθ律動は「Fmθ」と呼ばれ、精神作業に
深く関与すると言われている。精神作業しているヒトの
脳波を分析すると、作業者の前頭正中部付近にFmθが
出現しているのが観察され、その強度と分布は、作業者
の注意力や集中力が高まれば高まるほど、強く、広範囲
に出現するようになる。
【0003】このように、Fmθが注意・集中力と密接
な関係を有していることから、何等かの方法で人為的に
Fmθを誘導できければ、作業者の注意力や集中力を向
上でき、作業の効率や精度を改善できると期待される。
しかしながら、これまで、人為的にFmθを誘導し得る
装置や方法は全く知られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】斯かる状況に鑑み、こ
の発明の目的は、ヒトに聴かせることにより、人為的に
Fmθを誘導し得る可聴音を提供することにある。
【0005】この発明の別の目的は、斯かる可聴音を人
為的に発生させる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者が斯かる課題を
解決し得る手段について鋭意研究したところ、可聴域の
低周波に周波数約20ヘルツ以下の超低周波が重畳した
変調波を含む可聴音は、ヒトに聴かせると、Fmθの出
現をより強く、広範囲に誘導することを見出した。この
発明は斯かる新規な知見に基づくものであり、可聴域の
低周波に周波数約20ヘルツ以下の超低周波が重畳して
なる変調波を含んでなるFmθを誘導する可聴音を要旨
とするものである。
【0007】本発明者が斯かる可聴音を人為的に発生さ
せる方法についても研究したところ、斯かる可聴音は、
可聴域の低周波を周波数約20ヘルツ以下の超低周波で
振幅変調し、得られる低周波に超低周波が重畳してなる
変調波を含む電気信号を電気音響変換することにより、
比較的容易に得られることが判明した。すなわち、この
発明は、可聴域の低周波を周波数約20ヘルツ以下の超
低周波で振幅変調し、得られる低周波に超低周波が重畳
してなる変調波を含む電気信号を電気音響変換すること
を特徴とするFmθを誘導する可聴音の発生方法を要旨
とするものである。
【0008】
【作用】この発明の可聴音は、ヒトに聴かせると、その
脳波におけるFmθの出現を促す。とりわけ、超低周波
の周波数が約2乃至10ヘルツの範囲にあるときには、
Fmθのみならず、α波の出現をも促す。
【0009】この発明による可聴音の発生方法は、斯か
る可聴音を人為的に発生させるためのものであり、可聴
域の低周波を周波数約20ヘルツ以下の超低周波で振幅
変調すると、前者の低周波に後者の超低周波が重畳して
なる変調波を含む電気信号が得られる。この電気信号
は、電気音響変換することにより、前記変調波を含む可
聴音を与える。
【0010】以下、実施例、実験例などによりこの発明
を詳細に説明すると、この発明でいう変調波とは、可聴
域の低周波に周波数約20ヘルツ以下の超低周波が重畳
してなるものである。斯かる低周波としては、通常、超
低周波の周波数を越え、約20,000ヘルツを越えな
い周波数の適宜波形の連続波やパルス波が使われる。本
発明者が健常者を対象に種々試験したところ、低周波の
周波数が約6,000ヘルツを越えると、被検者の一部
が聴き取り難さや軽微な不快感を訴えることがあった。
実際には、超低周波の周波数や再生装置の周波数特性な
どを勘案すると、通常、約50乃至3,000ヘルツ、
望ましくは、約100乃至500ヘルツ、さらに望まし
くは、約120乃至200ヘルツに設定するのがよい。
波形についても種々試験したところ、正弦波のような連
続波や、例えば、鋸状波、方形波、三角波、矩形波など
のパルス波であって、パルスの持続時間が比較的長いも
のが好適であった。一方、超低周波には、周波数約20
ヘルツ以下、通常、約2乃至10ヘルツの連続波若しく
はパルス波が望ましく、また、その波形は、低周波の場
合と同様、正弦波のような連続波や、持続時間の比較的
長いパルス波が好適である。
【0011】斯かる変調波を発生するには、通常、変調
波発生回路と呼ばれる電気回路が使われ、この変調波発
生回路は、例えば、可聴域の低周波を発生する第一の発
振回路と、周波数約20ヘルツ以下の超低周波を発生す
る第二の発振回路と、それら発振回路の出力端に接続さ
れた入力端を有し、前者の低周波を後者の超低周波で振
幅変調する変調回路とを含んでなる。すなわち、第一の
発振回路で発生させた低周波を第二の発振回路で発生さ
せた超低周波により変調回路において振幅変調し、前者
の低周波に後者の超低周波が重畳してなる変調波を含む
電気信号を得る。これら発振回路や変調回路における回
路構成や回路素子については、変調回路の出力端に現わ
れる変調波が前記要件を満たす限りにおいて、特に制限
を設けないが、通常一般には、トランジスタ、電界効果
トランジスタ及び/又は集積回路を中心に構成される。
変調回路の出力自体が低かったり、変調回路の出力端と
電気音響変換器とがインピーダンス的に整合しないなど
の理由により、変調回路のみでは電気音響変換器を実質
的に付勢し得ない場合には、変調回路と電気音響変換器
との間に適宜の増幅器や整合回路などを介挿することを
妨げない。
【0012】斯くして得られる変調波は、超低周波が低
周波を包絡したような波形を有しており、低周波の電圧
値が超低周波の周波数に応じて周期的に変動する。本発
明者が、Fmθ誘導能と副作用ということに着目し、健
常者を対象に当該変調波の変調度を種々変えて試験した
ところ、変調度が約30乃至100%、望ましくは、約
60乃至90%の範囲にあるときに、不快感などの副作
用を惹起することなく、最高レベルのFmθを誘導する
ことができた。変調波の最適変調度や変調波における低
周波及び超低周波の最適周波数は、個々の対象者に依っ
て若干相違するのが通例であるから、各個の対象者が最
適の変調度や周波数の可聴音を聴けるよう、変調波発生
回路にこれら変調度や周波数を一定の範囲内で調節でき
る機能を設けるのが望ましい。
【0013】ところで、この発明による可聴音は、いわ
ゆる「1/fゆらぎ」を付加すると、Fmθ誘導能が顕
著に高まる。すなわち、可聴音の出現頻度、持続時間、
周波数及び/又は強度を1/fゆらぎ則にしたがって変
動させるときには、当該変調波に基づく可聴音と1/f
ゆらぎ則による変動とが相乗的に作用し、何れか一方の
みでは容易に達成できない程度にFmθの出現を促すこ
とが判明した。とりわけ、脳波、心拍数、血圧、呼吸、
体温を始めとする生体現象の長期的変動からサンプリン
グした1/fゆらぎを有する系列は極めて有用であり、
斯かる系列に基づいて可聴音の出現頻度、持続時間、周
波数及び/又は強度を変動させるときには、僅少の刺激
量で極めて高レベルのFmθを誘導でき、しかも、それ
が刺激後も長時間持続する。これは、ヒトの生体現象に
おける長期的変動からサンプリングした1/fゆらぎを
有する系列には、神経系に代表される生体制御機構に関
する多くの重要な情報が含まれており、その情報は、聴
覚を通じて知覚させると、Fmθの出現促進にことのほ
か効果的に作用し、この発明による可聴音の生理作用を
相乗的に高める結果であると理解される。可聴音に斯か
る変動を付与するには、例えば、前記したような系列を
マイクロコンピュータに記憶させておき、そこから取り
出した擬似1/fゆらぎ系列を含む電気信号をインター
フェースを介して前記発振回路や変調回路に供給して制
御すればよい。
【0014】さて、前記のようにして得られる電気信号
は電気音響変換器に供給され、そこで当該変調波を含む
可聴音に変換される。この発明でいう可聴音とは、ヒト
が聴覚器官により知覚し得る音波を意味し、したがっ
て、ここでいう電気音響変換器とは、前記電気信号を当
該変調波を含む音波に変換する手段ということになる。
個々の電気音響変換器としては、例えば、動電スピー
カ、電磁スピーカなどの電磁型変換器や静電スピーカ、
圧電スピーカなどの静電型変換器、あるいは、これらを
適宜組合せたものなどが挙げられる。電気音響変換器の
動作原理、形状・形態、大きさについては特に制限がな
く、対象者がその聴覚を通じて当該変調波を知覚し得る
ものである限り、何れもこの発明で使用することができ
る。この発明の可聴音を発生する装置を携帯して使用す
る場合には、小形ヘッドホンやイヤホンが好適である。
【0015】変調波発生回路で発生させた変調波を電気
音響変換器に供給する方法であるが、斯かる方法は二種
類に大別され、その一つは、変調波発生回路と電気音響
変換器をケーブル等により直接接続する有線方式であ
る。この方式においては、通常、対象者又はその補助者
が、対象者が実際に聴く場所で変調波発生回路を含む電
気的構成部分を操作する。いま一つの方式は、変調波発
生回路を含む電気的構成部分と電気音響変換器を含む電
気的構成部分とを別個に構成し、変調波発生回路の出力
を無線通信や光通信などにより後者の電気的構成部分に
供給する無線方式である。無線方式においては、通常、
対象者又はその補助者が、対象者が実際に聴く場所とは
やや離れた場所でその電気的構成部分を操作することと
なる。Fmθを誘導するということにおいては、何れの
方式を採用しても実質的な違いは無いけれども、後者の
方式の場合には、この発明による可聴音を複数の対象者
に同時に聴かせるのが容易となり、しかも、無線の到達
範囲内であれば、対象者が自由に移動できるという利点
がある。
【0016】前述のようにして得られる変調波を含む電
気信号は、磁気若しくは光学記録体に再生可能に記録す
ることができる。斯かる記録体は、適宜再生装置で再生
すると、元の変調波を含む電気信号を与え、その電気信
号は、前記と同様にして電気音響変換すると、この発明
による可聴音となる。この発明による可聴音の発生方法
は、当然、斯かる態様をも包含するものとする。ここで
いう記録体とは、通常、磁気テープ、磁気ディスク、磁
気フロッピーなどの磁気記録体や光ディスクなどの光学
記録体を意味し、これら記録体に変調波を記録する方法
は、使用する個々の記録体に応じた方法を採用すればよ
い。記録体が、例えば、コンパクトカセット方式の磁気
テープである場合には、磁気ヘッドに接触させた状態で
磁気テープを走行させ、その磁気ヘッドに変調波を含む
電気信号を印加すればよい。記録体が、例えば、コンパ
クトディスクである場合には、変調波を含む電気信号を
一旦デジタル信号に変換し、そのデジタル信号を光学読
取可能に記録した原盤を作成する。そして、その原盤を
もとにポリカーボネートにどのディスク原料をプレス加
工すれば、変調波を光学記録したトラックを有するコン
パクトディスクが得られる。記録体がビデオテープやビ
デオディスクなどの画像記録可能な記録体である場合に
は、この発明による変調波に加えて、Fmθ及び/又は
α波を誘導し得る画像を記録してもよい。
【0017】なお、この発明による可聴音は、片耳で聴
いても両耳で聴いても、誘導されるFmθに実質的な違
いがないので、上記記録方法はモノラル方式であっても
ステレオ方式であってもよい。但し、ステレオ方式によ
る場合には、例えば、第一のトラックに変調波を記録す
る一方、第二のトラックに無変調の低周波を記録するこ
とができるので、使用に際しては、通常、変調波を記録
した第一のトラックのみを聴くこととし、必要に応じ
て、両方のトラックをステレオ方式で聴けるようにして
おけば、対象者は変調波と無変調の低周波とを適宜切り
換えて聴くことができる。対象者に因っては、当該可聴
音を長時間聴かせると、疲労感を感じたり可聴音への馴
れが生じることがあり、上記のようにするときには、斯
かる疲労感や馴れを最少限にすることができる。
【0018】斯くして得られる記録体は、適宜再生装置
で再生すると、変調波を含む電気信号を与える。斯かる
電気信号が得られる限り、再生装置そのものについて特
に制限はなく、通常、業務乃至民生用のオーディオ・ビ
デオ装置が使用される。
【0019】次に、この発明による可聴音の投与方法に
ついて説明するに、使用目的にも依るが、一般に、この
発明による可聴音は最初はやや強く、徐々に弱めていく
のがよい。使用目的が精神作業時の注意力や集中力の向
上にあるときには、必要に応じて、その都度その都度、
作業前若しくは作業中に適当時間聴かせればよい。疾病
等の予防・治療が目的の場合には、対象者の状態を注意
深く観察しつつ、例えば、1日に1乃至3回、1回当た
り最長2時間を目安に、毎週1乃至7日、1カ月乃至1
年に亙って聴かせればよい。使用目的や対象者にも依る
が、そのときの可聴音の音圧は、通常、約20乃至90
dB、望ましくは、約30乃至80dBとするのがよ
い。前述のとおり、この発明による可聴音は、片耳で聴
いても両耳で聴いても、誘導されるFmθの強度や分布
において実質的な違いがない。対象者にも依るが、この
発明による可聴音には、長時間聴き続けると、その後は
ごく短時間聴くか、全く聴かなくてもFmθを促す性質
がある。斯かる対象者にとって、この発明の可聴音は、
いわゆる「メンタルトレーニング」の手段としても有用
である。
【0020】以上、この発明による可聴音の発生方法を
応用したFmθ誘導装置とFmθ誘導用記録体に係わる
2〜3の参考例を示す。
【0021】
【参考例1 Fmθ誘導装置】図1に示すのは、この発
明による可聴音を発生するFmθ誘導装置における電気
的構成部分のブロックダイアグラムである。図中、O1
及びO2は、それぞれ、第一の発振回路又は第二の発振
回路であり、通常、オペアンプが使われる。第一の発振
回路O1は、周波数約150ヘルツの正弦波を発生し、
第二の発振回路O2は、正弦波波形を有する周波数約2
乃至10ヘルツの超低周波を発生する。第二の発振回路
O2には可変抵抗器V1が設けられ、これを操作するこ
とにより、超低周波の周波数を約2乃至10ヘルツの範
囲で変えられるようになっている。Mは変調回路であ
り、その入力端には第一の発振回路O1と第二の発振回
路O2の出力端が接続されており、前記低周波と超低周
波はここで振幅変調され、その出力端には低周波に超低
周波が重畳してなる変調波が導出される。変調回路Mに
設けられた可変抵抗器V2は振幅変調の深度を調節する
ためのものであり、これを操作することにより、変調度
約30乃至100%の範囲で変えることができる。第一
の発振回路O1の出力端は切換スイッチSを介して増幅
回路A1の入力端に、また、変調回路Mの出力端は第二
の増幅回路A2の入力端と切換スイッチSにおける接点
bに接続されている。第一及び第二の増幅回路A1、A
2の出力端には、断接自在なコネクタCを介して電気音
響変換器としてのヘッドホンPが接続されている。一対
の増幅器A1、A2の入力端にそれぞれ設けられた可変
抵抗器V3は、それら増幅器A1、A2に加える電気信
号の大きさを変えることにより、ヘッドホンPにおける
左右のスピーカユニットから輻射される可聴音の大きさ
を調節するためのものである。一対の増幅器A1、A2
の入力端間に交叉して設けられた可変抵抗器V4は、そ
れら増幅器A1、A2に加える電気信号の大きさを加減
することにより、ヘッドホンPにおける左右のスピーカ
ユニットから輻射される可聴音のバランスをとるための
ものである。
【0022】本例の動作について説明するに、切換スイ
ッチSを接点bの位置にした状態で回路を始動させる
と、第一及び第二の発振回路O1、O2の出力が変調回
路Mに供給される。両出力はここで混合され、振幅変調
されて、変調回路Mの出力端には図2に示すような波形
の変調波が導出される。図2に見られるように、この変
調波には周波数約150ヘルツの正弦波に周波数約2乃
至10ヘルツの正弦波が重畳されている。変調回路Mの
出力は増幅器A1、A2により増幅され、ヘッドホンP
における一対のスピーカユニットを付勢する。切換スイ
ッチSを接点aに接続すると、変調波は増幅器A2のみ
に供給され、増幅器A1には、第一の発振回路O1が発
生する周波数約150ヘルツの低周波が供給される。こ
の場合には、ヘッドホンPにおける一方のスピーカユニ
ットからは変調波を含む可聴音が、また、もう一方のス
ピーカユニットからは無変調の正弦波を含む可聴音が輻
射されることとなる。
【0023】本例は斯く構成されているので、対象者が
その頭部にヘッドホンPを装着した状態で動作させる
と、対象者の耳には周波数約150ヘルツの正弦波か、
この正弦波に周波数約2乃至10ヘルツの正弦波が重畳
してなる変調波を含む可聴音を聴くことができる。
【0024】
【参考例2 Fmθ誘導装置】図3に示すのは、変調波
発生回路の出力を無線方式により電気音響変換器に供給
するFmθ誘導装置の電気的構成部分を示すブロックダ
イアグラムである。図中の符号O1、O2、M、V1乃
至V4、P及びCは、図1に示す参考例の場合と全く同
じ回路乃至回路素子を参照するためのものであり、それ
らの使用目的、機能も実質同じである。
【0022】図3に示すように、本例は送信系統と受信
系統からなる。送信系統においては、第一の発振回路O
1、第二の発振回路O2及び変調回路Mで発生した変調
波又は正弦波は、前の参考例と同様、切換スイッチSを
介してステレオ方式の周波数変調回路FSMの入力端に
接続されている。周波数変調回路FSMは、通常、前記
入力端に印加される変調波乃至正弦波を増幅するための
低周波増幅回路と、その低周波増幅回路の出力端に接続
された入力端を有し、前記変調波乃至正弦波に基づいて
周波数変調された高周波に変換する周波数変調回路とに
より構成され、その周波数変調回路FSMの出力端は、
前記高周波を適宜増幅するための高周波電力増幅回路R
FPの入力端に接続されている。高周波電力増幅回路R
FPの出力端には、高周波を輻射するための空中線AN
T1が接続されている。受信系統は、高周波を受信する
ための空中線ANT2と、空中線ANT2からの高周波
電圧を元の変調波乃至正弦波を含む電気信号に復調する
ステレオ方式の受信回路FSRと、その受信回路FSR
の出力を可聴音に変換する電気音響変換器としてのヘッ
ドホンPを含んでなるものである。
【0023】本例の動作について説明すると、本例は斯
く構成されているので、送信系統を動作させた状態で受
信系統を始動させると、ヘッドホンPにおける一対のス
ピーカユニットからは、周波数約150ヘルツの正弦波
か、この正弦波に周波数約2乃至10ヘルツの正弦波が
重畳してなる変調波を含む可聴音が輻射される。
【0024】本例は斯く構成されているので、一つの送
信系統に対して一又は複数の受信系統を用意し、これら
受信系統を個々の対象者が携帯するとともに、そのヘッ
ドホンPを頭部に装着した状態で受信系統を動作させれ
ば、この発明の可聴音を聴くことができる。本例は、比
較的広い場所で、複数の対象者が同時に可聴音を聴くの
に好適である。
【0025】
【参考例3 Fmθ誘導用記録体】本例は、再生する
と、出現頻度と持続時間とが1/fゆらぎ則にしたがっ
て変化する可聴音を与える磁気記録体を例示するもので
ある。
【0026】斯かる可聴音を与える変調波を発生させる
ための電気回路手段につき、図4に基づいて説明すれ
ば、図中、1はマイクロプロセッサであり、このマイク
ロプロセッサ1には頻度系列記録回路2、持続時間記録
回路3及びクロック発振器4などが接続され、マイクロ
コンピュータを構成している。別途、5名の健常者(2
0歳台の男性3名、女性2名)のFmθからサンプリン
グした1/fゆらぎを持つ25例の時系列をもとにし
て、頻度については0乃至20回/分を5段階に、ま
た、持続時間については0乃至60秒を6段階を等比的
に分割し、頻度系列記憶回路2又は持続時間記憶回路3
に記憶させてある。マイクロプロセッサ1は両者の記憶
内容を参照しながらクロック発振器4からのクロックパ
ルスを制御し、頻度系列と持続時間系列に対応するパル
ス列を発生する。マイクロプロセッサ1の記憶容量は限
られているので、頻度系列、持続時間系列とも一定個数
まで参照すると、再び元のデータに戻るようになってい
る。斯くして得られた一定個数の擬似不規則信号は、イ
ンターフェース5により、変調波発生回路6の1/fゆ
らぎ制御信号となる。変調波発生回路6は、周波数約1
50ヘルツの正弦波を発生する第一の発振回路と、周波
数約8ヘルツの正弦波を発生する第二の発振回路と、そ
れら発振回路の出力端に接続された入力端を有し、前者
の正弦波を後者の正弦波で振幅変調する変調回路とを含
んでなり、インターフェース5からの制御信号は変調波
発生回路6における変調回路に印加され、その出力を制
御する。変調波発生回路6における変調回路及び第一の
発振回路の出力端は、ステレオ方式の磁気記録装置7に
おける別々の入力端に接続されている。
【0027】この状態で全ての回路乃至装置を始動さ
せ、オシロスコープにより変調波発生回路6の出力端に
現われる波形を観察しながら、変調波の変調度を約80
%に調整するとともに、磁気記録装置7に装填したコン
パクトカセット方式の磁気テープ8を4.8センチメー
トル/秒の速度で走行させ、周波数約150ヘルツの正
弦波と、その正弦波に周波数約8ヘルツの正弦波が重畳
してなる変調波を磁気テープ8における別々のトラック
に記録した。なお、磁気テープ8には、テープ幅3.8
1ミリメートルの通常品を使用した。
【0028】本例の記録体は、周波数約150ヘルツの
正弦波を磁気記録したトラックと、その正弦波に周波数
約8ヘルツの正弦波が重畳してなる変調波を磁気記録し
たトラックを有し、再生すると、上記正弦波か変調波を
含む可聴音を与えた。本例の記録体は通常一般の再生装
置で再生でき、しかも、取扱いや持ち運びも容易なこと
から、作業者が実際に精神作業する場所に再生装置とと
もに携帯し、作業中、必要に応じてこの発明による可聴
音を聴くことができる。本例の記録体が与える可聴音
は、その出現頻度及び持続時間が1/fゆらぎ則にした
がって変化するものであり、Fmθ誘導能が極めて高い
ものである。
【0029】なお、本例では、可聴音の出現頻度と持続
時間のみを1/fゆらぎ則にしたがって変化させている
が、その何れか一方のみを1/fゆらぎ則にしたがって
変化させ、他方を不規則に変化させるようにしたり、出
現頻度と持続時間に加えて、低周波及び/又は超低周波
の強度及び/又は周波数を一定の範囲内で1/fゆらぎ
則にしたがって変化させてもよい。本例では、ヒトのF
mθにおける長期的変動からサンプリングした系列を使
用する例についてのみ具体的に言及したが、本発明者
が、例えば、心拍数、血圧、呼吸、体温などの生体現象
における長期的変動からサンプリングした系列について
同様に実験したところ、Fmθの場合とはやや劣るもの
の、ほぼ同等の結果が得られた。
【0030】
【参考例4 Fmθ誘導用記録体】周波数約150ヘル
ツの正弦波を発生する第一の発振器と、周波数約8ヘル
ツの正弦波を発生する第二の発振器と、増幅回路を内蔵
する変調器と、ステレオ方式の磁気記録装置とを用意
し、第一の発振器の出力端を変調器と磁気記録装置にお
ける入力端の一つに、第二の発振器の出力端を変調器の
入力端に、変調器の出力端を磁気記録装置における残る
入力端の一つに接続した。これら全ての装置を始動さ
せ、変調器の出力端に現われる変調波の波形をオシロス
コープで観察しながら、変調波の変調度を約80%に調
節した。この状態で磁気記録装置に装填したコンパクト
カセット方式の磁気テープを4.8センチメートル/秒
で走行させ、磁気テープにおけるトラックの一つに変調
波を、もう一つのトラックに無変調の低周波、すなわ
ち、周波数約150ヘルツの正弦波を記録した。なお、
磁気テープには、テープ幅3.81ミリメートルの通常
品を使用した。
【0031】本例の記録体は、再生すると、周波数約1
50ヘルツの正弦波を含む可聴音と、図2に示すよう
な、その正弦波に周波数約8ヘルツの正弦波が重畳して
なる変調波を含む可聴音を与えた。本例の記録体は通常
一般の再生装置で再生でき、しかも、取扱いや持ち運び
も容易なことから、作業者が実際に精神作業する場所に
再生装置とともに携帯し、作業中、必要に応じてこの発
明による可聴音を聴くことができる。
【0032】
【参考例5 Fmθ誘導用記録体】本例は、再生する
と、この発明による可聴音を与える光学記録体を例示す
る。本例においては、先ず、所定の変調波と無変調の低
周波とをそれぞれ別のトラックに磁気記録した磁気テー
プを作製し、次に、この磁気テープを再生し、その再生
出力を光学記録装置により市販の書込可能な光ディスク
に光学記録した。
【0033】参考例3と同様にして、周波数約150ヘ
ルツの正弦波と、その正弦波に周波数約8ヘルツの正弦
波が重畳してなり、生体現象の長期的変動に基づく1/
fゆらぎを有する変調波を発生させ、これらを磁気記録
装置により磁気テープにおける別々のトラックにステレ
オ方式で8分間記録した。磁気テープには、テープ幅
6.25ミリメートルのオープンリール方式のものを使
用し、記録時のテープ走行速度は19センチメートル/
秒に設定した。次に、参考例4とほぼ同様にして、周波
数約150ヘルツの正弦波とその正弦波に周波数約2ヘ
ルツ、10ヘルツ、4ヘルツ、8ヘルツ、6ヘルツ、8
ヘルツ、4ヘルツ又は10ヘルツの正弦波が重畳してな
る5種類の変調波をこの順番で周波数が変わる度に10
秒間の休止期間を置いてそれぞれ1分間発生させ、上記
と同様にして前記磁気テープにおける残りの部分に記録
した。なお、何れの変調波においても、その変調度は、
参考例3や参考例4と同様、約80%に設定し、また、
変調波の休止期間中は他トラックにおける無変調の正弦
波の記録も停止させた。
【0034】斯くして得られた磁気テープを磁気再生装
置に装填し、その磁気再生装置の出力端をミキサーを介
して通常一般の簡易型光学記録装置の入力端に接続し
た。光学記録装置にパイオニア株式会社が製造・販売す
る書込可能な8センチ光ディスク『CDM−V8』を装
填し、この状態で両装置を始動させ、磁気テープの再生
出力を光ディスク上に記録した。なお、光学記録時のサ
ンプリング周波数と量子化ビット数は、それぞれ、4
4.1キロヘルツ、16ビットとし、光ディスク上に
は、前半及び後半の変調波それぞれにつき、呼出サブコ
ードを設けた。
【0035】斯くして得られる光学記録体は、周波数約
150ヘルツの正弦波を記録したトラックと、その正弦
波に周波数2乃至10ヘルツの正弦波が重畳してなる変
調波を記録したトラックを有し、再生すると、それら正
弦波若しくは変調波を含む可聴音を与えた。本例の記録
体は通常一般の再生装置で再生でき、しかも、取扱いや
持ち運びも容易なことから、作業者が実際に精神作業を
する場所に再生装置とともに携帯し、作業前若しくは作
業中、必要に応じてこの発明による可聴音を聴くことが
できる。また、本例の記録体には、変調波毎に呼出サブ
コードが設けてあるので、作業者、自身、最も効果があ
ると思う変調波だけを繰返し聴くのが容易である。
【0036】次に、実験例により、この発明の奏する効
果について具体的に説明する。
【0037】
【実験例】精神神経疾患のない20歳台の男女それぞれ
5名を被検者とし、その頭部にステレオヘッドホンとと
もに、脳波計測用生体電極を『国際脳波学会連合標準電
極配置法』にしたがって装着した。脳波計測用生体電極
にはデータ処理装置を備えたNEC三栄株式会社が製造
・販売する脳波計『1A97A型』を、また、ステレオ
ヘッドホンには超低周波の周波数範囲を若干拡大した以
外、参考例4と同様に作製した記録体を装填した磁気再
生装置を接続した。次に、先ず、可聴音を聴かせない状
態で、被検者に精神作業としてクレペリン試験(連続一
位加算作業)を15分間負荷し、その間、被検者の脳波
を検出し、増幅した後、ティアック株式会社が製造・販
売するデータレコーダ『XR−710型』に記録した。
前半の試験が終了した後、被検者を5分間休憩させ、今
度は、可聴音を聴かせながら後半15分間のクレペリン
試験を負荷するとともに、その間、前記と同様にして被
検者の脳波を検出し、得られたデータを増幅した後、デ
ータレコーダに記録した。なお、可聴音の音圧は、被検
者の鼓膜上で約70dBになるように設定した。
【0038】試験終了後、データレコーダに記録したデ
ータをNEC三栄株式会社が製造・販売するシグナルプ
ロセッサ『7T18A型』により9回加算演算処理し、
周波数解析した後、被検者10名のFmθを平均して1
分間当たりのトポグラフとして表示した。それととも
に、前半、後半それぞれ15分間に亙る精神作業中、被
検者頭部におけるF3、Fz及びF4から導出したFm
θにつき、前半15分間及び後半15分間についてそれ
ぞれ1分間当たりの平均強度(マイクロボルト)を求
め、得られた平均強度を部位毎に数1に代入してFmθ
増加率(%)を計算した。これらトポグラフとFmθ増
加率をもって、各可聴音のFmθ誘導能を判断する目安
とした。結果を表1及び図5、図6に示す。
【0039】
【数1】
【0040】対照として、可聴音を全く聴かせない系
(以下、「対照1」と言う。)と無変調波、すなわち、
周波数約150ヘルツの正弦波のみを聴かせる系(以
下、「対照2」と言う。)などを設け、これら対照につ
いても前述と同様に試験した。
【0041】
【表1】
【0042】表1の結果から明らかなように、全ての可
聴音が共通して周波数約150ヘルツの正弦波を含んで
いながら、そのFmθ増加率には顕著な違いが認められ
た。すなわち、超低周波の周波数が約20ヘルツ以下の
範囲にあると、F3、Fz及びF4の全ての部位におい
てFmθ増加率が顕著に上昇し、導出部位に依っては対
照1の約130%にも達することがあった。図5、図6
のトポグラフも、この発明による可聴音を聴きながら精
神作業すると、Fmθが被検者の前頭正中部を中心に強
く、広範囲に出現するようになったことを裏付けてい
る。表1における対照3、対照4の結果に見られるよう
に、超低周波の周波数が20ヘルツを上回ると、Fmθ
増加率において対照1や対照2との有意差が認められな
くなり、被検者に依っては軽微な不快感や集中力の低下
を訴えたり、クレペリン試験の進捗に明らかな遅延が認
められた。
【0043】以上の実験事実から、超低周波の周波数と
しては約20ヘルツ以下、とりわけ、約2乃至10ヘル
ツの範囲の適していることが理解される。データは示し
ていないけれども、超低周波の周波数を8ヘルツ付近に
固定する一方、低周波の周波数を50乃至6,000ヘ
ルツの範囲で適宜変更しながら前記と同様に試験したと
ころ、低周波の周波数が約100乃至500ヘルツのと
きにFmθ増加率が有意に上昇し、約120乃至200
ヘルツのときにピークに達した。また、周波数約150
ヘルツの正弦波に周波数約8ヘルツの正弦波が重畳して
なる可聴音につき、変調波の変調度を適宜変更しながら
前記と同様に試験したところ、変調度が約30乃至10
0%のときに、Fmθ増加率がピークに達した。正弦波
以外に、鋸状波、方形波、三角波、矩形波などのパルス
波についても試験したところ、持続時間が比較的長いパ
ルスは、正弦波に比べるとやや劣るものの、ほぼ同等の
結果が得られた。
【0044】別途、前記の被検者10名を対象に、この
発明による可聴音がα波の出現に及ぼす影響について試
験した。すなわち、被検者の頭部に脳波測定用生体電極
とステレオヘッドホンを装着させ、できるだけリラック
スして閉眼座位した状態で60分間に亙って周波数約1
50ヘルツの正弦波に周波数約8ヘルツの正弦波が重畳
してなる変調波を含む可聴音を聴かせた。そして、その
間、常法により脳波を測定し、増幅した後、データレコ
ーダに記録した。試験終了後、記録したデータを周波数
解析し、周期8乃至10ヘルツのα波につき、測定開始
直後から20分間に亙り、5分間隔で1分間当たりのト
ポグラフとして表示した。3日後、同じ被検者を対象
に、可聴音を聴かせなかった点を除き、全く同じ実験を
行った。その結果、この発明による可聴音を聴かせると
被検者のα波に顕著な変化が現われ、可聴音を聴かせな
いときのα波が図7に見られるとおりであったところ、
この発明による可聴音を聴かせると、図8に見られるよ
うに、可聴音を聴かせ始めてから15分間の時点で被検
者の頭頂部を中心にα波が強く、極めて広範囲に出現し
ているのが認められた。それと同時に、β波の出現も顕
著に抑制されていた。この傾向は、超低周波の周波数を
約2乃至10ヘルツの範囲で変えても概ね変わらなかっ
た。
【0045】これらのことは、この発明による可聴音が
Fmθの出現を促すのみならず、α波の出現を促すと同
時に、β波の出現を抑制する作用のあることを示唆して
いる。前述のとおり、α波とβ波は、それぞれ心身の弛
緩又は緊張に対応する脳波であることから、この発明に
よる可聴音は、開眼して使用するとFmθを誘導して注
意・集中力を高め、閉眼して使用すると心身を弛緩・安
静化させるということになる。
【0046】前述のとおり、Fmθは注意・集中力のよ
い指標であることから、本実験例の結果は、この発明に
よる可聴音が、精神作業一般に使用して、使用者の注意
・集中力を高め、精神作業の効率・精度を高水準に保つ
ことを示唆していると言える。そして、このことは、ク
レペリン試験の進捗率(%)からも窺われ、表1に示す
ように、この発明による可聴音を聴かせた場合には、作
業の進捗率が有意に高まっていた。
【0047】
【発明の効果】この発明の可聴音は、ヒトに聴かせる
と、その脳波におけるFmθの出現を促す。とりわけ、
超低周波の周波数が約2乃至10ヘルツの範囲にあると
きには、Fmθだけではなく、α波の出現をも促す。し
たがって、この発明の可聴音は、ヒトに聴かせることに
より、Fmθやα波が係わる心身の望ましい状態、すな
わち、注意力や集中力の向上、さらには、心身の弛緩・
安静化を促す。
【0048】このようなことから、この発明の可聴音
は、注意力や集中力の向上に止どまらず、心身の弛緩・
安静化が学習力、創作力の向上、さらには、例えば、ノ
イローゼ、精神衰弱症、心身症、躁欝症、慢性アルコー
ル依存症などの精神疾患や、例えば、テレビ受像機、ビ
デオディスプレー、OA機器、自動車点火プラグなどか
ら輻射される電磁波による、いわゆる、テクノストレス
を含むストレス症一般による思考力、集中力、労働意欲
の低下、不眠、倦怠感、脅迫観念、恐怖症、不充実感な
どの軽減や緩解に効果を発揮する。したがって、この発
明による可聴音は、一般家庭、職場、競技場、学校、学
習塾、教習所、訓練所、研究所、アトリエなどにおいて
は精神作業の効率・精度、学習力、学術研究力、創作
力、あるいは、競技中の集中力を高める手段として、ま
た、職場、診療所、病院、療養所などにおいてはストレ
スを始めとする各種精神疾患を予防・治療するための手
段として有用である。対象者に依っては、この発明によ
る可聴音を長期間聴き続けると、その後はごく短時間聴
くか、全く聴かなくてもFmθの出現が促進させること
がある。斯かる対象者にとって、この発明による可聴音
は、いわゆる「メンタルトレーニング」の手段として有
用である。そして、斯くも有用なる当該可聴音は、この
発明による発生方法により、比較的容易に人為的に得る
ことができる
【0049】このように、この発明は斯界に貢献するこ
と誠に多大な、意義のある発明であると言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の可聴音を発生するFmθ誘導装置に
おける電気的構成部分のブロックダイアグラムである。
【図2】参考例1のFmθ誘導装置及び参考例4のFm
θ誘導用記録体が与える可聴音の波形図である。
【図3】この発明の可聴音を発生する別のFmθ誘導装
置における電気的構成部分のブロックダイアグラムであ
る。
【図4】磁気記録体にこの発明による変調波等を記録す
るための電気系統を示すブロックダイアグラムである。
【図5】可聴音を聴かせることなく被検者に精神作業を
負荷したときのFmθを示すトポグラフである。
【図6】この発明による可聴音を聴かせながら被検者に
精神作業を負荷したときのFmθを示すトポグラフであ
る。
【図7】可聴音を聴かせることなく被検者を閉眼座位さ
せたときのα波を示すトポグラフである。
【図8】この発明による可聴音を聴かせながら被検者を
閉眼座位させたときのα波を示すトポグラフである。
【符号の説明】
O1、O2 発振回路 A1、A2 増幅回路 M 変調回路 V1〜V4 可変抵抗 S 切換スイッチ C コネクタ P ヘッドホン FSM 周波数変調回路 RFP 高周波電力増幅回路 FSR 受信回路 ANT1、ANT2 空中線 1 マイクロプロセッサ 2 頻度系列記憶回路 3 持続系列記憶回路 4 クロック発振器 5 インターフェース 6 変調波発生回路 7 磁気記録装置 8 磁気テープ
【手続補正書】
【提出日】平成6年4月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正内容】
【0002】
【従来の技術】大脳皮質や頭皮上の相違する2点間に観
察される電位差は「脳波」と呼ばれ、心身の状態に対応
する独特の波形、律動を有している。脳波は、律動の周
期に依って、通常、α波、β波、θ波及びδ波の4波に
分類される。このうち、周期8乃至13ヘルツのα波
は、心身が弛緩するにつれて、強く、広範囲に連続して
出現するようになる。周期18乃至30ヘルツのβ波
は、逆に、心身が緊張するにつれ、強く、広範囲に出現
するようになる。周期4乃至8ヘルツのθ波と周期4ヘ
ルツ未満のδ波は入睡眠に関連する脳波であり、入眠時
にはθ波が強く現われ、睡眠が深くなるにつれてδ波が
優勢になると言われている。イノウエ等『ジ・イー・イ
ー・ジー・オブ・メンタル・アクティビティーズ』、第
136〜148頁(1988年)に見られるように、θ
波のうちでも、成人の前頭正中部付近に観察される6乃
至7ヘルツの優勢なθ律動は「Fmθ」と呼ばれ、精神
作業に深く関与すると言われている。精神作業している
ヒトの脳波を分析すると、作業者の前頭正中部付近にF
mθが出現しているのが観察され、その強度と分布は、
作業者の注意力や集中力が高まれば高まるほど、強く、
広範囲に出現するようになる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正内容】
【0016】前述のようにして得られる変調波を含む電
気信号は、磁気若しくは光学記録体に再生可能に記録す
ることができる。斯かる記録体は、適宜再生装置で再生
すると、元の変調波を含む電気信号を与え、その電気信
号は、前記と同様にして電気音響変換すると、この発明
による可聴音となる。この発明による可聴音の発生方法
は、当然、斯かる態様をも包含するものとする。ここで
いう記録体とは、通常、磁気テープ、磁気ディスク、磁
気フロッピーなどの磁気記録体や光ディスクなどの光学
記録体を意味し、これら記録体に変調波を記録する方法
は、使用する個々の記録体に応じた方法を採用すればよ
い。記録体が、例えば、コンパクトカセット方式の磁気
テープである場合には、磁気ヘッドに接触させた状態で
磁気テープを走行させ、その磁気ヘッドに変調波を含む
電気信号を印加すればよい。記録体が、例えば、コンパ
クトディスクである場合には、変調波を含む電気信号を
一旦デジタル信号に変換し、そのデジタル信号を光学読
取可能に記録した原盤を作製する。そして、その原盤を
もとにポリカーボネートなどのディスク原料をプレス加
工すれば、変調波を光学記録したトラックを有するコン
パクトディスクが得られる。記録体がビデオテープやビ
デオディスクなどの画像記録可能な記録体である場合に
は、この発明による変調波に加えて、Fmθ及び/又は
α波を誘導し得る画像を記録してもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正内容】
【0045】これらのことは、この発明による可聴音が
Fmθの出現を促すのみならず、α波の出現を促すと同
時に、β波の出現を抑制する作用のあることを示唆して
いる。前述のとおり、α波とβ波は、それぞれ心身の弛
緩又は緊張に対応する脳波であることから、この発明に
よる可聴音は、開眼して使用するとFmθを誘導して注
意・集中力を高め、閉眼して使用するとα波を誘導する
とともにβ波を抑制して心身を弛緩・安静化させるとい
うことになる。 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年7月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 Fmθを誘導する可聴音とその発生方
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ヒトの脳波における
Fmθを誘導する可聴音と、その可聴音を発生させる方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】大脳皮質や頭皮上の相違する2点間に観
察される電位差は「脳波」と呼ばれ、心身の状態に対応
する独特の波形、律動を有している。脳波は、律動の周
期に依って、通常、α波、β波、θ波及びδ波の4波に
分類される。このうち、周期8乃至13ヘルツのα波
は、心身が弛緩するにつれて、強く、広範囲に連続して
出現するようになる。周期18乃至30ヘルツのβ波
は、逆に、心身が緊張するにつれ、強く、広範囲に出現
するようになる。周期4乃至8ヘルツのθ波と周期4ヘ
ルツ未満のδ波は入睡眠に関連する脳波であり、入眠時
にはθ波が強く現われ、睡眠が深くなるにつれてδ波が
優勢になると言われている。イノウエ等『ジ・イー・イ
ー・ジー・オブ・メンタル・アクティビティーズ』、第
136〜148頁(1988年)に見られるように、θ
波のうちでも、成人の前頭正中部付近に観察される6乃
至7ヘルツの優勢なθ律動は「Fmθ」と呼ばれ、精神
作業に深く関与すると言われている。精神作業している
ヒトの脳波を分析すると、作業者の前頭正中部付近にF
mθが出現しているのが観察され、その強度と分布は、
作業者の注意力や集中力が高まれば高まるほど、強く、
広範囲に出現するようになる。
【0003】このように、Fmθが注意・集中力と密接
な関係を有していることから、何等かの方法で人為的に
Fmθを誘導できければ、作業者の注意力や集中力を向
上でき、作業の効率や精度を改善できると期待される。
しかしながら、これまで、人為的にFmθを誘導し得る
装置や方法は全く知られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】斯かる状況に鑑み、こ
の発明の目的は、ヒトに聴かせることにより、人為的に
Fmθを誘導し得る可聴音を提供することにある。
【0005】この発明の別の目的は、斯かる可聴音を人
為的に発生させる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者が斯かる課題を
解決し得る手段について鋭意研究したところ、可聴域の
低周波に周波数約20ヘルツ以下の超低周波が重畳した
変調波を含む可聴音は、ヒトに聴かせると、Fmθの出
現をより強く、広範囲に誘導することを見出した。この
発明は斯かる新規な知見に基づくものであり、可聴域の
低周波に周波数約20ヘルツ以下の超低周波が重畳して
なる変調波を含んでなるFmθを誘導する可聴音を要旨
とするものである。
【0007】本発明者が斯かる可聴音を人為的に発生さ
せる方法についても研究したところ、斯かる可聴音は、
可聴域の低周波を周波数約20ヘルツ以下の超低周波で
振幅変調し、得られる低周波に超低周波が重畳してなる
変調波を含む電気信号を電気音響変換することにより、
比較的容易に得られることが判明した。すなわち、この
発明は、可聴域の低周波を周波数約20ヘルツ以下の超
低周波で振幅変調し、得られる低周波に超低周波が重畳
してなる変調波を含む電気信号を電気音響変換すること
を特徴とするFmθを誘導する可聴音の発生方法を要旨
とするものである。
【0008】
【作用】この発明の可聴音は、ヒトに聴かせると、その
脳波におけるFmθの出現を促す。とりわけ、超低周波
の周波数が約2乃至10ヘルツの範囲にあるときには、
Fmθのみならず、α波の出現をも促す。
【0009】この発明による可聴音の発生方法は、斯か
る可聴音を人為的に発生させるためのものであり、可聴
域の低周波を周波数約20ヘルツ以下の超低周波で振幅
変調すると、前者の低周波に後者の超低周波が重畳して
なる変調波を含む電気信号が得られる。この電気信号
は、電気音響変換することにより、前記変調波を含む可
聴音を与える。
【0010】以下、実施例、実験例などによりこの発明
を詳細に説明すると、この発明でいう変調波とは、可聴
域の低周波に周波数約20ヘルツ以下の超低周波が重畳
してなるものである。斯かる低周波としては、通常、超
低周波の周波数を越え、約20,000ヘルツを越えな
い周波数の適宜波形の連続波やパルス波が使われる。本
発明者が健常者を対象に種々試験したところ、低周波の
周波数が約6,000ヘルツを越えると、被検者の一部
が聴き取り難さや軽微な不快感を訴えることがあった。
実際には、超低周波の周波数や再生装置の周波数特性な
どを勘案すると、通常、約50乃至3,000ヘルツ、
望ましくは、約100乃至500ヘルツ、さらに望まし
くは、約120乃至200ヘルツに設定するのがよい。
波形についても種々試験したところ、正弦波のような連
続波や、例えば、鋸状波、方形波、三角波、矩形波など
のパルス波であって、パルスの持続時間が比較的長いも
のが好適であった。一方、超低周波には、周波数約20
ヘルツ以下、通常、約2乃至10ヘルツの連続波若しく
はパルス波が望ましく、また、その波形は、低周波の場
合と同様、正弦波のような連続波や、持続時間の比較的
長いパルス波が好適である。
【0011】斯かる変調波を発生するには、通常、変調
波発生回路と呼ばれる電気回路が使われ、この変調波発
生回路は、例えば、可聴域の低周波を発生する第一の発
振回路と、周波数約20ヘルツ以下の超低周波を発生す
る第二の発振回路と、それら発振回路の出力端に接続さ
れた入力端を有し、前者の低周波を後者の超低周波で振
幅変調する変調回路とを含んでなる。すなわち、第一の
発振回路で発生させた低周波を第二の発振回路で発生さ
せた超低周波により変調回路において振幅変調し、前者
の低周波に後者の超低周波が重畳してなる変調波を含む
電気信号を得る。これら発振回路や変調回路における回
路構成や回路素子については、変調回路の出力端に現わ
れる変調波が前記要件を満たす限りにおいて、特に制限
を設けないが、通常一般には、トランジスタ、電界効果
トランジスタ及び/又は集積回路を中心に構成される。
変調回路の出力自体が低かったり、変調回路の出力端と
電気音響変換器とがインピーダンス的に整合しないなど
の理由により、変調回路のみでは電気音響変換器を実質
的に付勢し得ない場合には、変調回路と電気音響変換器
との間に適宜の増幅器や整合回路などを介挿することを
妨げない。
【0012】斯くして得られる変調波は、超低周波が低
周波を包絡したような波形を有しており、低周波の電圧
値が超低周波の周波数に応じて周期的に変動する。本発
明者が、Fmθ誘導能と副作用ということに着目し、健
常者を対象に当該変調波の変調度を種々変えて試験した
ところ、変調度が約30乃至100%、望ましくは、約
60乃至90%の範囲にあるときに、不快感などの副作
用を惹起することなく、最高レベルのFmθを誘導する
ことができた。変調波の最適変調度や変調波における低
周波及び超低周波の最適周波数は、個々の対象者に依っ
て若干相違するのが通例であるから、各個の対象者が最
適の変調度や周波数の可聴音を聴けるよう、変調波発生
回路にこれら変調度や周波数を一定の範囲内で調節でき
る機能を設けるのが望ましい。
【0013】ところで、この発明による可聴音は、いわ
ゆる「1/fゆらぎ」を付加すると、Fmθ誘導能が顕
著に高まる。すなわち、可聴音の出現頻度、持続時間、
周波数及び/又は強度を1/fゆらぎ則にしたがって変
動させるときには、当該変調波に基づく可聴音と1/f
ゆらぎ則による変動とが相乗的に作用し、何れか一方の
みでは容易に達成できない程度にFmθの出現を促すこ
とが判明した。とりわけ、脳波、心拍数、血圧、呼吸、
体温を始めとする生体現象の長期的変動からサンプリン
グした1/fゆらぎを有する系列は極めて有用であり、
斯かる系列に基づいて可聴音の出現頻度、持続時間、周
波数及び/又は強度を変動させるときには、僅少の刺激
量で極めて高レベルのFmθを誘導でき、しかも、それ
が刺激後も長時間持続する。これは、ヒトの生体現象に
おける長期的変動からサンプリングした1/fゆらぎを
有する系列には、神経系に代表される生体制御機構に関
する多くの重要な情報が含まれており、その情報は、聴
覚を通じて知覚させると、Fmθの出現促進にことのほ
か効果的に作用し、この発明による可聴音の生理作用を
相乗的に高める結果であると理解される。可聴音に斯か
る変動を付与するには、例えば、前記したような系列を
マイクロコンピュータに記憶させておき、そこから取り
出した擬似1/fゆらぎ系列を含む電気信号をインター
フェースを介して前記発振回路や変調回路に供給して制
御すればよい。
【0014】さて、前記のようにして得られる電気信号
は電気音響変換器に供給され、そこで当該変調波を含む
可聴音に変換される。この発明でいう可聴音とは、ヒト
が聴覚器官により知覚し得る音波を意味し、したがっ
て、ここでいう電気音響変換器とは、前記電気信号を当
該変調波を含む音波に変換する手段ということになる。
個々の電気音響変換器としては、例えば、動電スピー
カ、電磁スピーカなどの電磁型変換器や静電スピーカ、
圧電スピーカなどの静電型変換器、あるいは、これらを
適宜組合せたものなどが挙げられる。電気音響変換器の
動作原理、形状・形態、大きさについては特に制限がな
く、対象者がその聴覚を通じて当該変調波を知覚し得る
ものである限り、何れもこの発明で使用することができ
る。この発明の可聴音を発生する装置を携帯して使用す
る場合には、小形ヘッドホンやイヤホンが好適である。
【0015】変調波発生回路で発生させた変調波を電気
音響変換器に供給する方法であるが、斯かる方法は二種
類に大別され、その一つは、変調波発生回路と電気音響
変換器をケーブル等により直接接続する有線方式であ
る。この方式においては、通常、対象者又はその補助者
が、対象者が実際に聴く場所で変調波発生回路を含む電
気的構成部分を操作する。いま一つの方式は、変調波発
生回路を含む電気的構成部分と電気音響変換器を含む電
気的構成部分とを別個に構成し、変調波発生回路の出力
を無線通信や光通信などにより後者の電気的構成部分に
供給する無線方式である。無線方式においては、通常、
補助者が、対象者が実際に聴く場所とはやや離れた場所
で前者の電気的構成部分を操作することとなる。Fmθ
を誘導するということにおいては、何れの方式を採用し
ても実質的な違いは無いけれども、後者の方式の場合に
は、複数の対象者を同時に可聴刺激するのが容易とな
り、しかも、無線の到達範囲内であれば、対象者が自由
に移動できるという利点がある。
【0016】前述のようにして得られる変調波を含む電
気信号は、磁気若しくは光学記録体に再生可能に記録す
ることができる。斯かる記録体は、適宜再生装置で再生
すると、元の変調波を含む電気信号を与え、その電気信
号は、前記と同様にして電気音響変換すると、この発明
による可聴音となる。この発明による可聴音の発生方法
は、当然、斯かる態様をも包含するものとする。ここで
いう記録体とは、通常、磁気テープ、磁気ディスク、磁
気フロッピーなどの磁気記録体や光ディスクなどの光学
記録体を意味し、これら記録体に変調波を記録する方法
は、使用する個々の記録体に応じた方法を採用すればよ
い。記録体が、例えば、コンパクトカセット方式の磁気
テープである場合には、磁気ヘッドに接触させた状態で
磁気テープを走行させ、その磁気ヘッドに変調波を含む
電気信号を印加すればよい。記録体が、例えば、コンパ
クトディスクである場合には、変調波を含む電気信号を
一旦デジタル信号に変換し、そのデジタル信号を光学読
取可能に記録した原盤を作成する。そして、その原盤を
もとにポリカーボネートなどのディスク原料をプレス加
工すれば、変調波を光学記録したトラックを有するコン
パクトディスクが得られる。記録体がビデオテープやビ
デオディスクなどの画像記録可能な記録体である場合に
は、この発明による変調波に加えて、Fmθ及び/又は
α波を誘導し得る画像を記録してもよい。
【0017】なお、この発明による可聴音は、片耳で聴
いても両耳で聴いても、誘導されるFmθに実質的な違
いがないので、上記記録方法はモノラル方式であっても
ステレオ方式であってもよい。但し、ステレオ方式によ
る場合には、例えば、第一のトラックに変調波を記録す
る一方、第二のトラックに無変調の低周波を記録するこ
とができるので、使用に際しては、通常、変調波を記録
した第一のトラックのみを聴くこととし、必要に応じ
て、両方のトラックをステレオ方式で聴けるようにして
おけば、対象者は変調波と無変調の低周波とを適宜切り
換えて聴くことができる。対象者に因っては、当該可聴
音を長時間聴かせると、疲労感を感じたり可聴音への馴
れが生じることがあり、上記のようにするときには、斯
かる疲労感や馴れを最少限にすることができる。
【0018】斯くして得られる記録体は、適宜再生装置
で再生すると、変調波を含む電気信号を与える。斯かる
電気信号が得られる限り、再生装置そのものについて特
に制限はなく、通常、業務乃至民生用のオーディオ・ビ
デオ装置が使用される。
【0019】次に、この発明による可聴音の投与方法に
ついて説明するに、使用目的にも依るが、一般に、この
発明による可聴音は最初はやや強く、徐々に弱めていく
のがよい。使用目的が精神作業時の注意力や集中力の向
上にあるときには、必要に応じて、その都度その都度、
作業前若しくは作業中に適当時間聴かせればよい。疾病
等の予防・治療が目的の場合には、対象者の状態を注意
深く観察しつつ、例えば、1日に1乃至3回、1回当た
り最長2時間を目安に、毎週1乃至7日、1カ月乃至1
年に亙って聴かせればよい。使用目的や対象者にも依る
が、そのときの可聴音の音圧は、通常、約20乃至90
dB、望ましくは、約30乃至80dBとするのがよ
い。前述のとおり、この発明による可聴音は、片耳で聴
いても両耳で聴いても、誘導されるFmθの強度や分布
において実質的な違いがない。対象者にも依るが、この
発明による可聴音には、長時間聴き続けると、その後は
ごく短時間聴くか、全く聴かなくてもFmθを促す性質
がある。斯かる対象者にとって、この発明の可聴音は、
いわゆる「メンタルトレーニング」の手段としても有用
である。
【0020】以上、この発明による可聴音の発生方法を
応用したFmθ誘導装置とFmθ誘導用記録体に係わる
2〜3の参考例を示す。
【0021】
【参考例1 Fmθ誘導装置】図1に示すのは、この発
明による可聴音を発生するFmθ誘導装置における電気
的構成部分のブロックダイアグラムである。図中、O1
及びO2は、それぞれ、第一の発振回路又は第二の発振
回路であり、通常、オペアンプが使われる。第一の発振
回路O1は、周波数約150ヘルツの正弦波を発生し、
第二の発振回路O2は、正弦波波形を有する周波数約2
乃至10ヘルツの超低周波を発生する。第二の発振回路
O2には可変抵抗器V1が設けられ、これを操作するこ
とにより、超低周波の周波数を約2乃至10ヘルツの範
囲で変えられるようになっている。Mは変調回路であ
り、その入力端には第一の発振回路O1と第二の発振回
路O2の出力端が接続されており、前記低周波と超低周
波はここで振幅変調され、その出力端には低周波に超低
周波が重畳してなる変調波が導出される。変調回路Mに
設けられた可変抵抗器V2は振幅変調の深度を調節する
ためのものであり、これを操作することにより、変調度
約30乃至100%の範囲で変えることができる。第一
の発振回路O1の出力端は切換スイッチSを介して増幅
回路A1の入力端に、また、変調回路Mの出力端は第二
の増幅回路A2の入力端と切換スイッチSにおける接点
bに接続されている。第一及び第二の増幅回路A1、A
2の出力端には、断接自在なコネクタCを介して電気音
響変換器としてのヘッドホンPが接続されている。一対
の増幅器A1、A2の入力端にそれぞれ設けられた可変
抵抗器V3は、それら増幅器A1、A2に加える電気信
号の大きさを変えることにより、ヘッドホンPにおける
左右のスピーカユニットから輻射される可聴音の大きさ
を調節するためのものである。一対の増幅器A1、A2
の入力端間に交叉して設けられた可変抵抗器V4は、そ
れら増幅器A1、A2に加える電気信号の大きさを加減
することにより、ヘッドホンPにおける左右のスピーカ
ユニットから輻射される可聴音のバランスをとるための
ものである。
【0022】本例の動作について説明するに、切換スイ
ッチSを接点bの位置にした状態で回路を始動させる
と、第一及び第二の発振回路O1、O2の出力が変調回
路Mに供給される。両出力はここで混合され、振幅変調
されて、変調回路Mの出力端には図2に示すような波形
の変調波が導出される。図2に見られるように、この変
調波には周波数約150ヘルツの正弦波に周波数約2乃
至10ヘルツの正弦波が重畳されている。変調回路Mの
出力は増幅器A1、A2により増幅され、ヘッドホンP
における一対のスピーカユニットを付勢する。切換スイ
ッチSを接点aに接続すると、変調波は増幅器A2のみ
に供給され、増幅器A1には、第一の発振回路O1が発
生する周波数約150ヘルツの低周波が供給される。こ
の場合には、ヘッドホンPにおける一方のスピーカユニ
ットからは変調波を含む可聴音が、また、もう一方のス
ピーカユニットからは無変調の正弦波を含む可聴音が輻
射されることとなる。
【0023】本例は斯く構成されているので、対象者が
その頭部にヘッドホンPを装着した状態で動作させる
と、対象者の耳には周波数約150ヘルツの正弦波か、
この正弦波に周波数約2乃至10ヘルツの正弦波が重畳
してなる変調波を含む可聴音を聴くことができる。
【0024】
【参考例2 Fmθ誘導装置】図3に示すのは、変調波
発生回路の出力を無線方式により電気音響変換器に供給
するFmθ誘導装置の電気的構成部分を示すブロックダ
イアグラムである。図中の符号O1、O2、M、V1乃
至V4、P及びCは、図1に示す参考例の場合と全く同
じ回路乃至回路素子を参照するためのものであり、それ
らの使用目的、機能も実質同じである。
【0025】図3に示すように、本例は送信系統と受信
系統からなる。送信系統においては、第一の発振回路O
1、第二の発振回路O2及び変調回路Mで発生した変調
波又は正弦波は、前の実施例と同様、切換スイッチSを
介してステレオ方式の周波数変調回路FSMの入力端に
供給される。周波数変調回路FSMは、通常、前記入力
端に印加される変調波乃至正弦波を増幅するための低周
波増幅回路と、その低周波増幅回路の出力端に接続され
た入力端を有し、前記変調波乃至正弦波に基づいて周波
数変調された高周波に変換する周波数変調回路などによ
り構成される。周波数変調回路FSMの出力端には、前
記高周波を適宜増幅するための高周波電力増幅回路RF
Pの入力端が接続され、高周波電力増幅回路RFPの出
力端には、高周波を輻射するための空中線ANT1が接
続されている。受信系統は、高周波を受信するための空
中線ANT2と、空中線ANT2からの高周波電圧を元
の変調波乃至正弦波を含む電気信号に復調するためのス
テレオ方式の受信回路FSRと、受信回路FSRの出力
を可聴音に変換する電気音響変換器としてのヘッドホン
Pを含んでなるものである。
【0026】本例の動作について説明すると、本例は斯
く構成されているので、送信系統を動作させた状態で受
信系統を始動させると、ヘッドホンPにおける一対のス
ピーカユニットからは、周波数約150ヘルツの正弦波
か、この正弦波に周波数約2乃至10ヘルツの正弦波が
重畳してなる変調波を含む可聴音が輻射される。
【0027】本例は斯く構成されているので、一つの送
信系統に対して一又は複数の受信系統を用意し、これら
受信系統を個々の対象者が携帯するとともに、そのヘッ
ドホンPを頭部に装着した状態で受信系統を動作させれ
ば、この発明の可聴音を聴くことができる。本例は、比
較的広い場所で、複数の対象者が同時に可聴音を聴くの
に好適である。
【0028】
【参考例3 Fmθ誘導用記録体】本例は、再生する
と、出現頻度と持続時間とが1/fゆらぎ則にしたがっ
て変化する可聴音を与える磁気記録体を例示するもので
ある。
【0029】斯かる可聴音を与える変調波を発生させる
ための電気回路手段につき、図4に基づいて説明すれ
ば、図中、1はマイクロプロセッサであり、このマイク
ロプロセッサ1には頻度系列記録回路2、持続時間記録
回路3及びクロック発振器4などが接続され、マイクロ
コンピュータを構成している。別途、5名の健常者(2
0歳台の男性3名、女性2名)のFmθからサンプリン
グした1/fゆらぎを持つ25例の時系列をもとにし
て、頻度については0乃至20回/分を5段階に、ま
た、持続時間については0乃至60秒を6段階を等比的
に分割し、頻度系列記憶回路2又は持続時間記憶回路3
に記憶させてある。マイクロプロセッサ1は両者の記憶
内容を参照しながらクロック発振器4からのクロックパ
ルスを制御し、頻度系列と持続時間系列に対応するパル
ス列を発生する。マイクロプロセッサ1の記憶容量は限
られているので、頻度系列、持続時間系列とも一定個数
まで参照すると、再び元のデータに戻るようになってい
る。斯くして得られた一定個数の擬似不規則信号は、イ
ンターフェース5により、変調波発生回路6の1/fゆ
らぎ制御信号となる。変調波発生回路6は、周波数約1
50ヘルツの正弦波を発生する第一の発振回路と、周波
数約8ヘルツの正弦波を発生する第二の発振回路と、そ
れら発振回路の出力端に接続された入力端を有し、前者
の正弦波を後者の正弦波で振幅変調する変調回路とを含
んでなり、インターフェース5からの制御信号は変調波
発生回路6における変調回路に印加され、その出力を制
御する。変調波発生回路6における変調回路及び第一の
発振回路の出力端は、ステレオ方式の磁気記録装置7に
おける別々の入力端に接続されている。
【0030】この状態で全ての回路乃至装置を始動さ
せ、オシロスコープにより変調波発生回路6の出力端に
現われる波形を観察しながら、変調波の変調度を約80
%に調整するとともに、磁気記録装置7に装填したコン
パクトカセット方式の磁気テープ8を4.8センチメー
トル/秒の速度で走行させ、周波数約150ヘルツの正
弦波と、その正弦波に周波数約8ヘルツの正弦波が重畳
してなる変調波を磁気テープ8における別々のトラック
に記録した。なお、磁気テープ8には、テープ幅3.8
1ミリメートルの通常品を使用した。
【0031】本例の記録体は、周波数約150ヘルツの
正弦波を磁気記録したトラックと、その正弦波に周波数
約8ヘルツの正弦波が重畳してなる変調波を磁気記録し
たトラックを有し、再生すると、上記正弦波か変調波を
含む可聴音を与えた。本例の記録体は通常一般の再生装
置で再生でき、しかも、取扱いや持ち運びも容易なこと
から、作業者が実際に精神作業する場所に再生装置とと
もに携帯し、作業中、必要に応じてこの発明による可聴
音を聴くことができる。本例の記録体が与える可聴音
は、その出現頻度及び持続時間が1/fゆらぎ則にした
がって変化するものであり、Fmθ誘導能が極めて高い
ものである。
【0032】なお、本例では、可聴音の出現頻度と持続
時間のみを1/fゆらぎ則にしたがって変化させている
が、その何れか一方のみを1/fゆらぎ則にしたがって
変化させ、他方を不規則に変化させるようにしたり、出
現頻度と持続時間に加えて、低周波及び/又は超低周波
の強度及び/又は周波数を一定の範囲内で1/fゆらぎ
則にしたがって変化させてもよい。本例では、ヒトのF
mθにおける長期的変動からサンプリングした系列を使
用する例についてのみ具体的に言及したが、本発明者
が、例えば、心拍数、血圧、呼吸、体温などの生体現象
における長期的変動からサンプリングした系列について
同様に実験したところ、Fmθの場合とはやや劣るもの
の、ほぼ同等の結果が得られた。
【0033】
【参考例4 Fmθ誘導用記録体】周波数約150ヘル
ツの正弦波を発生する第一の発振器と、周波数約8ヘル
ツの正弦波を発生する第二の発振器と、増幅回路を内蔵
する変調器と、ステレオ方式の磁気記録装置とを用意
し、第一の発振器の出力端を変調器と磁気記録装置にお
ける入力端の一つに、第二の発振器の出力端を変調器の
入力端に、変調器の出力端を磁気記録装置における残る
入力端の一つに接続した。これら全ての装置を始動さ
せ、変調器の出力端に現われる変調波の波形をオシロス
コープで観察しながら、変調波の変調度を約80%に調
節した。この状態で磁気記録装置に装填したコンパクト
カセット方式の磁気テープを4.8センチメートル/秒
で走行させ、磁気テープにおけるトラックの一つに変調
波を、もう一つのトラックに無変調の低周波、すなわ
ち、周波数約150ヘルツの正弦波を記録した。なお、
磁気テープには、テープ幅3.81ミリメートルの通常
品を使用した。
【0034】本例の記録体は、再生すると、周波数約1
50ヘルツの正弦波を含む可聴音と、図2に示すよう
な、その正弦波に周波数約8ヘルツの正弦波が重畳して
なる変調波を含む可聴音を与えた。本例の記録体は通常
一般の再生装置で再生でき、しかも、取扱いや持ち運び
も容易なことから、作業者が実際に精神作業する場所に
再生装置とともに携帯し、作業中、必要に応じてこの発
明による可聴音を聴くことができる。
【0035】
【参考例5 Fmθ誘導用記録体】本例は、再生する
と、この発明による可聴音を与える光学記録体を例示す
る。本例においては、先ず、所定の変調波と無変調の低
周波とをそれぞれ別のトラックに磁気記録した磁気テー
プを作製し、次に、この磁気テープを再生し、その再生
出力を光学記録装置により市販の書込可能な光ディスク
に光学記録した。
【0036】参考例3と同様にして、周波数約150ヘ
ルツの正弦波と、その正弦波に周波数約8ヘルツの正弦
波が重畳してなり、生体現象の長期的変動に基づく1/
fゆらぎを有する変調波を発生させ、これらを磁気記録
装置により磁気テープにおける別々のトラックにステレ
オ方式で8分間記録した。磁気テープには、テープ幅
6.25ミリメートルのオープンリール方式のものを使
用し、記録時のテープ走行速度は19センチメートル/
秒に設定した。次に、参考例4とほぼ同様にして、周波
数約150ヘルツの正弦波とその正弦波に周波数約2ヘ
ルツ、10ヘルツ、4ヘルツ、8ヘルツ、6ヘルツ、8
ヘルツ、4ヘルツ又は10ヘルツの正弦波が重畳してな
る5種類の変調波をこの順番で周波数が変わる度に10
秒間の休止期間を置いてそれぞれ1分間発生させ、上記
と同様にして前記磁気テープにおける残りの部分に記録
した。なお、何れの変調波においても、その変調度は、
参考例3や参考例4と同様、約80%に設定し、また、
変調波の休止期間中は他トラックにおける無変調の正弦
波の記録も停止させた。
【0037】斯くして得られた磁気テープを磁気再生装
置に装填し、その磁気再生装置の出力端をミキサーを介
して通常一般の簡易型光学記録装置の入力端に接続し
た。光学記録装置にパイオニア株式会社が製造・販売す
る書込可能な8センチ光ディスク『CDM−V8』を装
填し、この状態で両装置を始動させ、磁気テープの再生
出力を光ディスク上に記録した。なお、光学記録時のサ
ンプリング周波数と量子化ビット数は、それぞれ、4
4.1キロヘルツ、16ビットとし、光ディスク上に
は、前半及び後半の変調波それぞれにつき、呼出サブコ
ードを設けた。
【0038】斯くして得られる光学記録体は、周波数約
150ヘルツの正弦波を記録したトラックと、その正弦
波に周波数2乃至10ヘルツの正弦波が重畳してなる変
調波を記録したトラックを有し、再生すると、それら正
弦波若しくは変調波を含む可聴音を与えた。本例の記録
体は通常一般の再生装置で再生でき、しかも、取扱いや
持ち運びも容易なことから、作業者が実際に精神作業を
する場所に再生装置とともに携帯し、作業前若しくは作
業中、必要に応じてこの発明による可聴音を聴くことが
できる。また、本例の記録体には、変調波毎に呼出サブ
コードが設けてあるので、作業者、自身、最も効果があ
ると思う変調波だけを繰返し聴くのが容易である。
【0039】次に、実験例により、この発明の奏する効
果について具体的に説明する。
【0040】
【実験例】精神神経疾患のない20歳台の男女それぞれ
5名を被検者とし、その頭部にステレオヘッドホンとと
もに、脳波計測用生体電極を『国際脳波学会連合標準電
極配置法』にしたがって装着した。脳波計測用生体電極
にはデータ処理装置を備えたNEC三栄株式会社が製造
・販売する脳波計『1A97A型』を、また、ステレオ
ヘッドホンには超低周波の周波数範囲を若干拡大した以
外、参考例4と同様に作製した記録体を装填した磁気再
生装置を接続した。次に、先ず、可聴音を聴かせない状
態で、被検者に精神作業としてクレペリン試験(連続一
位加算作業)を15分間負荷し、その間、被検者の脳波
を検出し、増幅した後、ティアック株式会社が製造・販
売するデータレコーダ『XR−710型』に記録した。
前半の試験が終了した後、被検者を5分間休憩させ、今
度は、可聴音を聴かせながら後半15分間のクレペリン
試験を負荷するとともに、その間、前記と同様にして被
検者の脳波を検出し、得られたデータを増幅した後、デ
ータレコーダに記録した。なお、可聴音の音圧は、被検
者の鼓膜上で約70dBになるように設定した。
【0041】試験終了後、データレコーダに記録したデ
ータをNEC三栄株式会社が製造・販売するシグナルプ
ロセッサ『7T18A型』により9回加算演算処理し、
周波数解析した後、被検者10名のFmθを平均して1
分間当たりのトポグラフとして表示した。それととも
に、前半、後半それぞれ15分間に亙る精神作業中、被
検者頭部におけるF3、Fz及びF4から導出したFm
θにつき、前半15分間及び後半15分間についてそれ
ぞれ1分間当たりの平均強度(マイクロボルト)を求
め、得られた平均強度を部位毎に数1に代入してFmθ
増加率(%)を計算した。これらトポグラフとFmθ増
加率をもって、各可聴音のFmθ誘導能を判断する目安
とした。結果を表1及び図5、図6に示す。
【0042】
【数1】
【0043】対照として、可聴音を全く聴かせない系
(以下、「対照1」と言う。)と無変調波、すなわち、
周波数約150ヘルツの正弦波のみを聴かせる系(以
下、「対照2」と言う。)などを設け、これら対照につ
いても前述と同様に試験した。
【0044】
【表1】
【0045】表1の結果から明らかなように、全ての可
聴音が共通して周波数約150ヘルツの正弦波を含んで
いながら、そのFmθ増加率には顕著な違いが認められ
た。すなわち、超低周波の周波数が約20ヘルツ以下の
範囲にあると、F3、Fz及びF4の全ての部位におい
てFmθ増加率が顕著に上昇し、導出部位に依っては対
照1の約130%にも達することがあった。図5、図6
のトポグラフも、この発明による可聴音を聴きながら精
神作業すると、Fmθが被検者の前頭正中部を中心に強
く、広範囲に出現するようになったことを裏付けてい
る。表1における対照3、対照4の結果に見られるよう
に、超低周波の周波数が20ヘルツを上回ると、Fmθ
増加率において対照1や対照2との有意差が認められな
くなり、被検者に依っては軽微な不快感や集中力の低下
を訴えたり、クレペリン試験の進捗に明らかな遅延が認
められた。
【0046】以上の実験事実から、超低周波の周波数と
しては約20ヘルツ以下、とりわけ、約2乃至10ヘル
ツの範囲の適していることが理解される。データは示し
ていないけれども、超低周波の周波数を8ヘルツ付近に
固定する一方、低周波の周波数を50乃至6,000ヘ
ルツの範囲で適宜変更しながら前記と同様に試験したと
ころ、低周波の周波数が約100乃至500ヘルツのと
きにFmθ増加率が有意に上昇し、約120乃至200
ヘルツのときにピークに達した。また、周波数約150
ヘルツの正弦波に周波数約8ヘルツの正弦波が重畳して
なる可聴音につき、変調波の変調度を適宜変更しながら
前記と同様に試験したところ、変調度が約30乃至10
0%のときに、Fmθ増加率がピークに達した。正弦波
以外に、鋸状波、方形波、三角波、矩形波などのパルス
波についても試験したところ、持続時間が比較的長いパ
ルスは、正弦波に比べるとやや劣るものの、ほぼ同等の
結果が得られた。
【0047】別途、前記の被検者10名を対象に、この
発明による可聴音がα波の出現に及ぼす影響について試
験した。すなわち、被検者の頭部に脳波測定用生体電極
とステレオヘッドホンを装着させ、できるだけリラック
スして閉眼座位した状態で60分間に亙って周波数約1
50ヘルツの正弦波に周波数約8ヘルツの正弦波が重畳
してなる変調波を含む可聴音を聴かせた。そして、その
間、常法により脳波を測定し、増幅した後、データレコ
ーダに記録した。試験終了後、記録したデータを周波数
解析し、周期8乃至10ヘルツのα波につき、測定開始
直後から20分間に亙り、5分間隔で1分間当たりのト
ポグラフとして表示した。3日後、同じ被検者を対象
に、可聴音を聴かせなかった点を除き、全く同じ実験を
行った。その結果、この発明による可聴音を聴かせると
被検者のα波に顕著な変化が現われ、可聴音を聴かせな
いときのα波が図7に見られるとおりであったところ、
この発明による可聴音を聴かせると、図8に見られるよ
うに、可聴音を聴かせ始めてから15分間の時点で被検
者の頭頂部を中心にα波が強く、極めて広範囲に出現し
ているのが認められた。それと同時に、β波の出現も顕
著に抑制されていた。この傾向は、超低周波の周波数を
約2乃至10ヘルツの範囲で変えても概ね変わらなかっ
た。
【0048】これらのことは、この発明による可聴音が
Fmθの出現を促すのみならず、α波の出現を促すと同
時に、β波の出現を抑制する作用のあることを示唆して
いる。前述のとおり、α波とβ波は、それぞれ心身の弛
緩又は緊張に対応する脳波であることから、この発明に
よる可聴音は、開眼して使用するとFmθを誘導して注
意・集中力を高め、閉眼して使用すると心身を弛緩・安
静化させるということになる。
【0049】前述のとおり、Fmθは注意・集中力のよ
い指標であることから、本実験例の結果は、この発明に
よる可聴音が、精神作業一般に使用して、使用者の注意
・集中力を高め、精神作業の効率・精度を高水準に保つ
ことを示唆していると言える。そして、このことは、ク
レペリン試験の進捗率(%)からも窺われ、表1に示す
ように、この発明による可聴音を聴かせた場合には、作
業の進捗率が有意に高まっていた。
【0050】
【発明の効果】この発明の可聴音は、ヒトに聴かせる
と、その脳波におけるFmθの出現を促す。とりわけ、
超低周波の周波数が約2乃至10ヘルツの範囲にあると
きには、Fmθだけではなく、α波の出現をも促す。し
たがって、この発明の可聴音は、ヒトに聴かせることに
より、Fmθやα波が係わる心身の望ましい状態、すな
わち、注意力や集中力の向上、さらには、心身の弛緩・
安静化を促す。
【0051】このようなことから、この発明の可聴音
は、注意力や集中力の向上に止どまらず、心身の弛緩・
安静化が学習力、創作力の向上、さらには、例えば、ノ
イローゼ、精神衰弱症、心身症、躁欝症、慢性アルコー
ル依存症などの精神疾患や、例えば、テレビ受像機、ビ
デオディスプレー、OA機器、自動車点火プラグなどか
ら輻射される電磁波による、いわゆる、テクノストレス
を含むストレス症一般による思考力、集中力、労働意欲
の低下、不眠、倦怠感、脅迫観念、恐怖症、不充実感な
どの軽減や緩解に効果を発揮する。したがって、この発
明による可聴音は、一般家庭、職場、競技場、学校、学
習塾、教習所、訓練所、研究所、アトリエなどにおいて
は精神作業の効率・精度、学習力、学術研究力、創作
力、あるいは、競技中の集中力を高める手段として、ま
た、職場、診療所、病院、療養所などにおいてはストレ
スを始めとする各種精神疾患を予防・治療するための手
段として有用である。対象者に依っては、この発明によ
る可聴音を長期間聴き続けると、その後はごく短時間聴
くか、全く聴かなくてもFmθの出現が促進させること
がある。斯かる対象者にとって、この発明による可聴音
は、いわゆる「メンタルトレーニング」の手段として有
用である。そして、斯くも有用なる当該可聴音は、この
発明による発生方法により、比較的容易に人為的に得る
ことができる
【0052】このように、この発明は斯界に貢献するこ
と誠に多大な、意義のある発明であると言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の可聴音を発生するFmθ誘導装置に
おける電気的構成部分のブロックダイアグラムである。
【図2】参考例1のFmθ誘導装置及び参考例4のFm
θ誘導用記録体が与える可聴音の波形図である。
【図3】この発明の可聴音を発生する別のFmθ誘導装
置における電気的構成部分のブロックダイアグラムであ
る。
【図4】磁気記録体にこの発明による変調波等を記録す
るための電気系統を示すブロックダイアグラムである。
【図5】可聴音を聴かせることなく被検者に精神作業を
負荷したときのFmθを示すトポグラフである。
【図6】この発明による可聴音を聴かせながら被検者に
精神作業を負荷したときのFmθを示すトポグラフであ
る。
【図7】可聴音を聴かせることなく被検者を閉眼座位さ
せたときのα波を示すトポグラフである。
【図8】この発明による可聴音を聴かせながら被検者を
閉眼座位させたときのα波を示すトポグラフである。
【符号の説明】 O1、O2 発振回路 A1、A2 増幅回路 M 変調回路 V1〜V4 可変抵抗 S 切換スイッチ C コネクタ P ヘッドホン FSM 周波数変調回路 RFP 高周波電力増幅回路 FSR 受信回路 ANT1、ANT2 空中線 1 マイクロプロセッサ 2 頻度系列記憶回路 3 持続系列記憶回路 4 クロック発振器 5 インターフェース 6 変調波発生回路 7 磁気記録装置 8 磁気テープ

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 可聴域の低周波に周波数約20ヘルツ以
    下の超低周波が重畳した変調波を含んでなるFmθを誘
    導する可聴音。
  2. 【請求項2】 可聴域の低周波が周波数約120乃至2
    00ヘルツである請求項1に記載のFmθを誘導する可
    聴音。
  3. 【請求項3】 超低周波の周波数が約2乃至10ヘルツ
    である請求項1又は2に記載のFmθを誘導する可聴
    音。
  4. 【請求項4】 変調波の変調度が約30乃至100%の
    範囲にある請求項1、2又は3に記載のFmθを誘導す
    る可聴音。
  5. 【請求項5】 可聴音の周波数、出現頻度、持続時間及
    び/又は強度が1/fゆらぎ則にしたがって変動する請
    求項1、2、3又は4に記載のFmθを誘導する可聴
    音。
  6. 【請求項6】 低周波及び超低周波が正弦波波形を有す
    る請求項1、2、3、4又は5に記載のFmθを誘導す
    る可聴音。
  7. 【請求項7】 可聴域の低周波を周波数約20ヘルツ以
    下の超低周波で振幅変調し、得られる低周波に超低周波
    が重畳してなる変調波を含む電気信号を電気音響変換す
    ることを特徴とするFmθを誘導する可聴音の発生方
    法。
  8. 【請求項8】 可聴域の低周波が周波数約120乃至2
    00ヘルツである請求項7に記載のFmθを誘導する可
    聴音の発生方法。
  9. 【請求項9】 超低周波の周波数が約2乃至10ヘルツ
    である請求項7又は8に記載のFmθを誘導する可聴音
    の発生方法。
  10. 【請求項10】変調波の変調度が約30乃至100%の
    範囲にある請求項7、8又は9に記載のFmθを誘導す
    る可聴音の発生方法。
  11. 【請求項11】可聴音の周波数、出現頻度、持続時間及
    び/又は強度が1/fゆらぎ則にしたがって変動する請
    求項7、8、9又は10に記載のFmθを誘導する可聴
    音の発生方法。
  12. 【請求項12】低周波及び超低周波が正弦波波形を有す
    る請求項7、8、9、10又は11に記載のFmθを誘
    導する可聴音の発生方法。
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