JPH0790525A - 強度、延性、疲労強度に優れたニアーα型チタン合金の製造方法 - Google Patents

強度、延性、疲労強度に優れたニアーα型チタン合金の製造方法

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JPH0790525A
JPH0790525A JP22932093A JP22932093A JPH0790525A JP H0790525 A JPH0790525 A JP H0790525A JP 22932093 A JP22932093 A JP 22932093A JP 22932093 A JP22932093 A JP 22932093A JP H0790525 A JPH0790525 A JP H0790525A
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JP22932093A
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Hideki Fujii
秀樹 藤井
Kazuhiro Takahashi
一浩 高橋
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、製品の表層から内部まで均一で、
かつ高い強度、延性、疲労強度を有し、変形や割れなど
の欠陥がなく信頼性の高いニアーα型チタン合金を、従
来よりも安価な製造コストで製造する方法を提供する。 【構成】 ニアーα型チタン合金に、0.2重量%以上
で、室温において実質的にチタン水素化物が生成しない
量の水素を含有させ、酸化雰囲気中で、β変態点以上に
加熱保持する溶体化処理を行った後、連続冷却変態線図
において、600℃より高い温度域ではα相が析出しな
い冷却速度で、Ms 点以上の温度まで冷却し、Ms 点以
上600℃以下の温度域で、α相が析出開始後5分以上
8時間未満保持する時効処理を行い、さらに、表層部の
酸化スケールを除去した後、真空もしくは不活性雰囲気
にて、脱水素処理を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ニアーα型チタン合金
の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、鋳造
法や素粉末混合法などのニアーネットシェイプ成形法に
よって製造されたニアーα型チタン合金の熱処理に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】ニアーα型チタン合金は、軽量、高強
度、高耐熱などの諸特性が要求される航空機部品などの
素材として使用されてきた。しかし一方で、熱間加工や
切削加工などの加工性に著しく劣っており、また、素材
そのものがきわめて高価であるため、あらかじめ最終製
品の形状に近い形状の半製品を製造しておく、いわゆる
ニアーネットシェイプ成形技術の研究開発が盛んに行わ
れてきた。中でも、鋳造法や粉末冶金法の一種である素
粉末混合法は、製造コストが比較的安価であるという利
点を有しており、特に期待されている技術である。
【0003】さて、鋳造法や素粉末混合法で製造された
製品は、溶解工程やあるいは高温β域での焼結工程を経
ており、両者ともβ域からα+β域に冷却される際に生
成した、粒界α相と層状α相およびこれらの間に残留し
たβ相の混合組織となっている。このような組織は、延
性や疲労強度が低いという欠点があった。
【0004】この欠点を補うべく、1985年Deutsche Ges
ellschaft fur Metallkunde E. V.発行のTitanium Scie
nce and Technology Vol.1, 179頁〜 186頁に記載され
ているように、β変態点以上から焼入れし、α+β二相
温度域で時効処理を行う方法が開発された。また、特開
昭62−4804号公報に記載されているように、β変
態点以上から焼入れし、α+β二相域でHIP(熱間静
水圧成形)などの加圧処理を行う方法が開発された。し
かし、これらの方法は、いずれもβ域からの焼入れを行
い、マルテンサイト組織とする工程が必要であり、焼入
れ性の悪いニアーα型チタン合金では、特に厚肉の製品
では、表層部しか焼きが入らず、疲労特性の向上が十分
に達成されないという欠点があった。
【0005】これに対し、例えば1985年発行のMetallur
gical Transaction A 誌、Vol. 16A, 1077頁〜1087頁記
載の「水素化脱水素法」では、チタン合金に大量の水素
を吸蔵させ、さらに時効処理により微細な水素化物を生
成させ、その後、700℃付近の温度で脱水素処理を行
うことにより、強度、延性、疲労特性に優れた微細等軸
組織を得ることが可能であり、焼入れを必ずしも必要と
しないため、厚肉の製品でも疲労特性の向上が達成でき
る。しかし、この方法では、大量の水素を必要とするた
め、水素にかかる費用、水素の吸蔵・排出に要する時間
および設備、さらには安全上の対策など、経済的に負荷
が大きくなるという欠点があった。さらにこの方法で
は、体積変化が大きく、かつ著しく脆い水素化物の生成
・消滅を行うため、製品に変形が生じたり、外周部のみ
ならず内部にまで割れなどの欠陥を生じるという問題点
があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上のような現状か
ら、本発明は、製品の表層から内部まで、均一でかつ高
い強度、延性、疲労強度を有し、変形や割れなどの欠陥
がなく信頼性の高いニアーα型チタン合金を、従来より
も安価な製造コストで製造する方法を提供しようとする
ものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明は、(1)ニアーα型チタン合金に、0.2重量
%以上で、室温において実質的にチタン水素化物が生成
しない量の水素を含有させ、酸化雰囲気にてβ変態点以
上に加熱保持する溶体化処理を行った後、連続冷却変態
線図において、600℃より高い温度域では、α相が析
出しない冷却速度で、Ms 点以上の温度まで冷却し、M
s 点以上600℃以下の温度域で、α相が析出開始後5
分以上8時間未満保持する時効処理を行い、さらに、表
層部の酸化スケールを除去した後、真空もしくは不活性
雰囲気にて脱水素処理を行うことを特徴とする強度、延
性、疲労強度に優れたニアーα型チタン合金の製造方法
であり、(2)β変態点以上に加熱保持する溶体化処理
を、大気雰囲気で行うことを特徴とする前項記載の強
度、延性、疲労強度に優れたニアーα型チタン合金の製
造方法であり、(3)β変態点以上に加熱保持する溶体
化処理と、Ms 点以上で600℃以下の温度域への冷却
処理と、この温度域に保持する時効処理を大気雰囲気で
行うことを特徴とする前項(1)記載の強度、延性、疲
労強度に優れたニアーα型チタン合金の製造方法であ
る。
【0008】ここで、ニアーα型チタン合金とは、室温
における平衡状態で、α相の体積分率が75%以上を占
める種類の合金を意味しており、例えば、Ti−6Al
−4V,Ti−5Al−2.5Sn,Ti−5Al−
2.5Fe,Ti−6Al−4Zr−2Sn−4Mo,
Ti−6Al−4Zr−2Sn−4Mo−0.1Siな
どである。また、β変態点とは、それ以上の温度ではα
相の体積分率がゼロであり実質的にβ単相(極微量の介
在物や析出物を含む場合もある)となる温度であり、水
素を含有していないニアーα型チタン合金では通常90
0〜1050℃である。Ms 点とは、β変態点以上の温
度から急速冷却した場合に、マルテンサイト変態を開始
する温度であり、水素を含有していないニアーα型チタ
ン合金では通常750〜950℃である。また、連続冷
却変態線図とは、β変態点以上の温度から試料を冷却し
た場合に、試料の温度と、β変態点通過後の時間を変数
とした場合の、試料に含有される相状態を示した図であ
り通常、縦軸に温度、横軸にβ変態点通過後の時間をと
って示される。なお、脱水素処理については、不活性雰
囲気あるいは真空雰囲気で、β変態点以下の600〜7
50℃で行われるのが普通である。
【0009】
【作用】本発明者らは、焼入れを必要とせず、比較的厚
肉の鋳造製品や素粉末混合法製品でも、疲労特性に優れ
た等軸微細組織を均一に付与できるという特徴を有する
も、工程途中で製品に変形や割れなどの欠陥を生じると
いう致命的欠点を有していた「水素化脱水素法」の改良
に努力を重ねた結果、水素吸蔵量、熱処理の温度、時
間、冷却速度、雰囲気などを特定することにより、微細
等軸組織と同様に強度、延性、疲労特性に優れた微細針
状組織を、製品の表層から内部まで均一に、しかも、変
形や割れなどの欠陥を生じることなく付与することが可
能な、信頼性の高いニアーα型チタン合金の製造方法の
考案に到達した。
【0010】本発明では、まずニアーα型チタン合金
に、0.2重量%以上で室温において実質的にチタン水
素化物が生成しない量の水素を含有させる。水素はβ相
を安定化させる元素であり、β変態点およびMs 点を低
下させ、さらにα相の析出を遅らせる効果がある。本発
明は、これらの性質を活用したものであるが、後の工程
で本発明の効果を十分に達成するには、0.2重量%以
上の水素を含有させることが必要である。なぜならば、
本発明では後の工程で、Ms 点以上で600℃以下の温
度でα相の析出を目的とした時効処理を行うこととして
おり、0.2重量%以上の水素を含有させないとMs 点
の低下が十分でなく、600℃以上になってしまい、時
効処理を行う温度域が存在しなくなるからである。一
方、含有させる水素の上限値は、室温において実質的に
チタン水素化物が生成しない量の水素である必要があ
る。この理由は、水素化物が生成すると、「従来の技
術」の項でも説明したように、製品に変形が生じたり、
外周部のみならず内部にまで割れなどの欠陥を生じるか
らである。
【0011】さて、次に、本発明(1)では、酸化雰囲
気にてβ変態点以上に加熱保持する溶体化処理を行い、
連続冷却変態線図において、600℃より高い温度域で
はα相が析出しない冷却速度で、Ms 点以上の温度まで
冷却し、Ms 点以上600℃以下の温度域で、α相が析
出開始後5分以上8時間未満保持する時効処理を行う。
【0012】これらの一連の工程については、図1に示
した、連続冷却変態線図を用いて説明する。図1におい
て、横軸に示された時間と縦軸で示された温度の座標点
で試料がある時、その試料の構成相が示されている。図
中、α相析出開始曲線とは、曲線より左(短時間側)で
はα相は析出しておらず、非平衡(準安定)β相であ
り、この曲線より右(長時間側)ではα相が析出してお
り、α+βの両相が存在する。また、α相析出開始曲線
の最左部は、直線となっているが、この直線部以下の温
度領域でかつ直線部に相当する時間領域はα″マルテン
サイトの領域である。
【0013】まず、β変態点以上での溶体化処理を行う
が、これは製品中の水素を均質にするとともに、製品を
実質的にβ単相とすることを目的とした工程である。こ
こで溶体化処理は酸化雰囲気で行わなくてはならない。
それは、還元雰囲気や不活性雰囲気で溶体化処理を行う
と、製品表面に存在して水素が試料から抜け出るのを防
止している酸化皮膜が消滅し、製品中に含有させた水素
が、外部へ抜け出るため、試料中の水素量が減少するか
らである。減少した後の水素量が、0.2重量%以上
で、室温において実質的にチタン水素化物が生成しない
量であれば、後の工程で微細針状組織を得ることは可能
であるが、水素は表層部から抜け出て行くため、製品の
表層部と内部で含有水素量に差が生じ、そのため、後の
工程を行っても、針状組織の微細度が表層部と内部で異
なり、均質な組織を得ることは困難となる。
【0014】次に、連続冷却変態線図において、600
℃より高い温度域ではα相が析出しない冷却速度で、M
s 点以上の温度まで冷却し、Ms 点以上600℃以下の
温度域で、α相が析出開始後5分以上8時間未満保持す
る時効処理を行う。これは、溶体化処理時に生成せしめ
たβ相中に微細針状α相を析出させる工程である。この
冷却および時効処理工程を連続冷却変態線図にて図示す
ると、図1におけるα相析出開始曲線のうち、Ms 点以
上600℃以下の太線で示した部分を、冷却中あるいは
時効中に通過するようなパターン(図中点線で例示)
で、冷却および保持を行うことになる。太線部分を通過
させた後は5分以上8時間未満の時間Ms点以上600
℃以下の温度域に保持し、微細針状α相を完全に析出さ
せる。この時、α相析出開始曲線を通過する前に、所定
温度まで冷却し、その後一定温度に保持する時効処理を
行ってもよいし、冷却中にα相析出開始曲線を通過し、
その後の冷却中に時効処理を兼ねて行ってもよい。
【0015】この工程に於いて、冷却速度は、600℃
より高い温度域でα相が析出しない程度の、比較的早い
冷却速度である必要がある。換言すると、冷却中の製品
の温度が600℃以下になるまでα相の析出が起こらな
いことが必要である。なぜなら600℃より高い温度域
では、拡散が活発なためβ粒界に沿って粗大なα相が生
成し、微細な針状組織が得られず、高い疲労特性が得ら
れないからである。しかし、ニアーα合金では、0.2
%以上の水素を含有すると、例えば鋳造法や素粉末混合
法で通常製造される厚さ50mm程度以下の厚肉部材な
ら、空冷程度で十分であり、焼入れのような非常に速い
冷却を行う必要はない。また、冷却はMs点以上で止め
なくてはならない。それは、Ms 点以下の温度にまで冷
却すると、マルテンサイト変態により粗大なα″相が生
成し、微細化が達成されないからである。
【0016】また時効温度をMs 点以上600℃以下と
したのは、Ms 点以下では拡散が不十分でありα相の析
出が極端に遅くなるためで、600℃以上では拡散が活
発に起こりすぎるため、β粒界に沿って粗大なα相が生
成し疲労特性を低下させるからである。また、時効時間
を5分以上8時間未満としたのは、α相の析出開始後5
分以上でないとα相の析出が十分ではなく、この後の、
より高温で行う脱水素工程にて新たなα相が粗大な寸法
で生成するためで、また、8時間未満でα相の析出は既
に完了しており、これ以上の長時間の時効処理はエネル
ギー的に無駄であるという理由による。
【0017】さて、本発明では次に、製品の表層部の酸
化スケールを除去した後、真空もしくは不活性雰囲気に
て、脱水素処理を行う。これは、時効処理までの工程で
生成した微細針状組織中に含まれる水素を除去する工程
である。時効処理で十分な量のα相を析出させておけ
ば、本工程で新たに粗大なα相が析出することはない。
ここで、本工程の前までは酸化皮膜は水素の脱出を防止
する役割を負っていたが、脱水素処理の工程ではこれは
不要であり、脱水素を円滑に行うためには酸化スケール
を除去しておく必要がある。なお、脱水素処理は、真空
もしくは不活性雰囲気で行うので、酸化スケールを除去
しておかなくとも、脱水素工程の初期に酸化スケール中
の酸素はチタン合金母材中に拡散し、スケールは除去さ
れるが、酸素はチタン合金の材質特性に悪影響をおよぼ
すのでこの方法は避けなくてはならない。また、脱水素
処理はβ変態点以下で行う必要がある。それは、β変態
点以上に加熱すると、時効処理で生成した微細針状α相
が消滅しβ単相になってしまうからである。
【0018】以上説明した一連の工程により、強度、延
性、疲労特性に優れた針状微細組織を、製品の表層から
内部まで均一に、しかも、変形や割れなどの欠陥を生じ
ることなく付与することが可能であるが、本発明では、
従来の水素化物の生成を利用した方法に比べ、水素の使
用量が少なく、水素にかかる費用、水素の吸収・排出に
要する時間および設備、さらには安全上の対策など、経
済的な負荷も従来法より少ないという利点も付加され
る。なお本発明(2)のように、β変態点以上に加熱保
持する溶体化処理を、大気雰囲気で行うと工業的には簡
便である。なお本発明(3)のように、β変態点以上に
加熱保持する溶体化処理と、Ms点以上で600℃以下
の温度域への冷却処理と、この温度域に保持する時効処
理を、いずれも大気雰囲気で行うと工業的にはさらに簡
便である。
【0019】
【実施例】本発明の効果を実施例を用いてさらに詳しく
説明する。粒径150μm以下の極低塩素チタン粉末
と、粒径44μm以下の60Al40V粉末を9:1の割合
で混合し、ウレタンゴム製容器に充填し、CIP(冷間
静水圧成形)により480MPa の圧力で圧粉成形し、容
器から圧粉体を取り出し、1250℃で2時間の真空焼
結を行い、さらに900℃で100MPa の圧力でHIP
処理を行い、直径10mm、長さ100mmの円柱形状のT
i−6Al−4V試験片を作製した。この工程は典型的
な素粉末混合法の工程であり、この素材の機械的性質は
表1の試験番号1に示すが如くである。この試料を、1
気圧の水素雰囲気中700℃に種々の時間加熱保持し
0.1〜0.6%の種々の量の水素を含有させた水素含
有合金試料を作製した。
【0020】図2は、Ti−6Al−4Vを原点に、横
軸に水素含有量、縦軸に温度をとった、平衡状態図であ
る。0.1重量%水素含有合金ではMs 点が600℃以
上であり、本発明の熱処理パターンの施工は不可能であ
った。一方、室温から600℃の範囲において、0.5
重量%以上の水素を含有する合金では水素化物が生成し
ており、この試料をβ変態点以上の800℃で1時間溶
体化処理後、空冷し、500℃で4時間時効処理すると
水素化物の生成にともなう変形や割れが生じ、脱水素処
理後の十分な機械的性質などの調査は不可能であった
(表1、試験番号2)。
【0021】さて、0.2〜0.4重量%水素を含有さ
せた合金の場合、本発明の熱処理パターンの実施は可能
であり、かつ水素化物の生成もなく、機械的性質の調査
も行うことが可能であった。以下、0.4重量%水素含
有合金を例に本発明について詳細な説明を行う。熱処理
は2種類の大気炉と一つの真空炉を用いて行い、大気炉
の一つは溶体化処理を、もう一つは時効処理に使用し
た。溶体化処理炉から取り出した試料は、大気中にて空
冷し、所定の温度に達した時、時効処理炉に挿入し、さ
らに、所定の時間経過後炉の扉を閉じた。この間の試料
の温度変化は熱伝対にて測定した。なお、溶体化処理は
800℃で1時間行った。また、真空炉は、表層酸化層
を酸洗処理にて除去した試料を700℃で10時間保持
する脱水素処理に使用した。脱水素後の試料からは、試
験片を切り出し、引張試験と回転曲げ疲労試験を行っ
た。疲労強度は繰り返し数107 回でも破断しない強度
で評価した。
【0022】図3は0.4重量%水素含有Ti−6Al
−4V合金の連続冷却変態線図に、試料の温度と冷却時
間の関係を重ねて示した図である。いずれの試料もα相
析出開始曲線を通過後、Ms 点以上600℃以下の温度
域に4時間の保持を行った。これらの試料を脱水素した
後切り出した試験片の機械的性質を表1の試験番号3〜
8に示す。本発明の実施例である試験番号4,5,6,
7はいずれも、高い引張強度、伸び、疲労強度を示して
おり、本発明の効果が十分に現れている。これは、本発
明により、試料の変形や割れを生ずる水素化物を生成さ
せることなく、また粗大な粒界α相を生成させることな
く、高い機械的性質を示す微細針状組織を付与できたこ
とによるものである。
【0023】これに対し、試験番号3および8は、本発
明の実施例に比べて伸び値がやや低く、疲労強度は著し
く低いものであった。この理由は、試験番号3では、溶
体化処理後の冷却がMs 点以下の温度まで行ったため、
マルテンサイト変態により粗大なα″相が生成し、微細
化が達成されなかったためであり、試験番号8では、拡
散の活発な600℃以上の温度でα相析出開始曲線を通
過したため、粒界に沿って粗大なα相が生成し、微細な
針状組織が得られなかったことによるものである。
【0024】図4は、溶体化処理炉から取り出した試料
を、540℃の時効処理炉に挿入し、α相析出開始曲線
を通過後、4分30秒〜8時間30分、Ms 点以上60
0℃以下の温度域に保持した場合の熱処理パターンであ
る。本発明の範囲内の時間保持した試験番号10および
11は、表2に示すが如く優れた引張強度、伸び、疲労
強度を示すが、保持時間が本発明に規定された時間より
短かかった試験番号9では、低い伸び値および疲労強度
値しか得られなかった。これは、α相の析出が十分では
なく、この後のより高温(700℃)で行った脱水素工
程にて新たなα相が粗大な寸法で生成したためである。
また、保持時間が、本発明に規定された時間より長かっ
た試験番号12の機械的性質は、これよりも短かい試験
番号11とほとんど同じレベルであり、無駄に長い時効
処理を行っていたことが明らかとなった。
【0025】上述と同じ試料を、大気のような酸化雰囲
気ではなく、石英管に真空封入し、試験番号5と同じ熱
処理を行った場合の脱水素後の機械的性質を試験番号1
3に示す。強度、伸び、疲労強度のいずれもが低い値し
か得られなかった。これは、溶体化処理中に酸化皮膜中
の酸素が試料中に溶け込み、試料から水素が抜け出し、
そのためMs 点が上昇し、冷却中に粗大なマルテンサイ
ト組織が生成したことと、溶け込んだ酸素が機械的性質
を劣化させたことの両方の効果である。また、試験番号
14は、試験番号5と同じ処理を行った後、酸化スケー
ルを除去せずに脱水素処理を行った場合の脱水素後の機
械的性質を示しており、脱水素処理中に試料内部に溶け
込んだ酸素が機械的性質を劣化させている。
【0026】図5は、遠心鋳造法により鋳造後HIP処
理を行った、50mmφ×100mm長さのTi−6Al−
4V試料に、0.4重量%水素を含有させた試料を、8
00℃×1時間溶体化処理し、表層部が500℃に達し
た時点で540℃の時効処理炉に挿入した場合の熱処理
パターンを示している。この時試料中心部も本発明に規
定された範囲の熱処理パターンとなっており、表2の試
験番号15の結果に示すように、試料の内部も表層部
も、均質な高い引張強度、伸び、疲労強度を示してい
る。
【0027】このように、本発明を適用すれば、強度、
延性、疲労特性に優れた針状微細組織を、比較的大きな
寸法の製品の表層から内部まで均一に、しかも、変形や
割れなどの欠陥を生じることなく付与することが可能で
ある。加えて従来の水素化物の生成を利用した方法に比
べ、水素の使用量が少なく、水素にかかる費用、水素の
吸収・排出に要する時間および設備、さらには安全上の
対策など、経済的な負荷も従来法より少ない。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、本発明を適用する
ことにより、製品の表層から内部まで、均一でかつ高い
強度、延性、疲労強度を有し、変形や割れなどの欠陥が
なく信頼性の高いニアーα型チタン合金を、従来よりも
安価な製造コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水素を含有したニアーα型チタン合金の模式的
連続冷却変態線図。
【図2】Ti−6Al−4Vを原点に、横軸を含有水素
量、縦軸を温度にとった、平衡状態図。
【図3】試験番号3〜7について、0.4重量%水素を
含有したTi−6Al−4Vの連続冷却変態線図と試験
で使用した、熱処理のパターンを示した図。
【図4】試験番号8〜12について、0.4重量%水素
を含有したTi−6Al−4Vの連続冷却変態線図と試
験で使用した、熱処理のパターンを示した図。
【図5】試験番号15について、0.4重量%水素を含
有したTi−6Al−4Vの連続冷却変態線図と試験で
使用した、熱処理のパターンを示した図。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ニアーα型チタン合金に、0.2重量%
    以上で、室温において実質的にチタン水素化物が生成し
    ない量の水素を含有させ、酸化雰囲気中でβ変態点以上
    に加熱保持する溶体化処理を行った後、連続冷却変態線
    図において、600℃より高い温度域ではα相が析出し
    ない冷却速度で、Ms 点以上の温度まで冷却し、Ms 点
    以上600℃以下の温度域で、α相が析出開始後5分以
    上8時間未満保持する時効処理を行い、さらに、表層部
    の酸化スケールを除去した後、真空もしくは不活性雰囲
    気にて脱水素処理を行うことを特徴とする強度、延性、
    疲労強度に優れたニアーα型チタン合金の製造方法。
  2. 【請求項2】 β変態点以上に加熱保持する溶体化処理
    を、大気雰囲気で行うことを特徴とする請求項1記載の
    強度、延性、疲労強度に優れたニアーα型チタン合金の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 β変態点以上に加熱保持する溶体化処理
    と、Ms 点以上で600℃以下の温度域への冷却処理
    と、この温度域に保持する時効処理を大気雰囲気で行う
    ことを特徴とする請求項1記載の強度、延性、疲労強度
    に優れたニアーα型チタン合金の製造方法。
JP22932093A 1993-09-14 1993-09-14 強度、延性、疲労強度に優れたニアーα型チタン合金の製造方法 Withdrawn JPH0790525A (ja)

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JP22932093A JPH0790525A (ja) 1993-09-14 1993-09-14 強度、延性、疲労強度に優れたニアーα型チタン合金の製造方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US10006114B2 (en) 2013-05-29 2018-06-26 Honda Motor Co., Ltd. Titanium alloy, method of manufacturing high-strength titanium alloy, and method of processing titanium alloy

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