JPH0783575A - 溶湯抜出用樋 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】製錬炉から溶湯が溢出する液面高さを定める溶
湯抜出用樋のレベル部に、溶湯の流れを遮断する遮断物
が固着し堆積しないようにする。 【構成】樋１１を流下する溶湯４をせき止める遮断物９
が投入されるストップ部３０は、製錬炉１内の溶湯４が
炉外に溢出する液面高さを定めるレベル部２０より下流
側に独立して設けられる。そして、ストップ部３０の溶
湯流路の底面３５は、レベル部の溶湯流路の底面２４よ
り一段低くされている。これにより、溶湯の流れをせき
止める遮断物９が、レベル部２０の底面に付着すること
がない。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、金属鉱の製錬設備等に
おいて、炉内の溶湯を抜き出すために用いられる溶湯抜
出用樋に関し、より詳しくは、溶湯の流れを遮断する遮
断物が投入されるストップ部の構造、および炉と溶湯抜
出用樋との配置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より、金属鉱の製錬炉等において、
溶融した金属鉱である溶湯を炉内からサイホン式に取り
出すとともに、この溶湯を次の工程に移送するために溶
湯抜出用樋が用いられている。例えば、図５に断面図と
して示す従来の製錬設備においては、製錬炉１の内部に
蓄えられた溶湯４は、製錬炉１の底部に連通する溶湯通
路２を通るとともに、溶湯溢出口３から溢出することに
より炉外に取り出されるようにされている。これによ
り、溶湯４を、その上部に溜まっているカラミ５と混ざ
ること無く、炉外に取り出すことができるようにされて
いる。そして、溶湯溢出口３から溢出した溶湯４は、樋
７により、図示されない次の工程に移送される。前記樋
７には、製錬炉１内の溶湯４が炉外へ溢出する液面高さ
を定めるレベル部８が溶湯溢出口３に隣接して設けられ
ており、製錬炉１内の溶湯４の液面高さがこのレベル部
８の溶湯流路の底面８ａより高くなると、炉内の溶湯４
が樋７に溢出するようにされている。また、この樋７に
おいては、溢出する溶湯４の流れをせき止める際には、
前記レベル部８に大量の粘土等の遮断物９を一気に投入
するとともに、樋７に溶湯４を流す際には、レベル部８
に投入された前記遮断物９を除去するようにされてい
る。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、レベル部８
に投入された遮断物９は、熱の影響によりレベル部８の
底面８ａに固着して完全に除去することができないか
ら、この遮断物９がしだいに堆積してレベル部８の底面
８ａが盛り上がる、いわゆる樋の底上がりが発生し、溶
湯４が製錬炉１の内部から溢出する液面高さが変化して
しまう。また、レベル部８に遮断物９を投入しあるいは
除去する作業は、もっぱら人手を介して行われている
が、レベル部８は溶湯溢出口３に隣接して設けられてい
るため、この作業は溶湯４の輻射熱により大変に暑い環
境の中で行われ、作業員の身体的負担が大きかった。

【０００４】そこで、本発明は上記のような現状に着眼
してなされたものであって、レベル部の底面に粘土等の
遮断物が固着しないようにして、溶湯が製錬炉の内部か
ら溢出する液面高さが変化することを防止するととも
に、ストップ部に遮断物を投入しあるいは除去する作業
や、レベル部の整備作業等の作業環境を改善することを
目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の請求項１に記載
の溶湯抜出用樋においては、溶湯の流れを遮断する遮断
物が投入されるストップ部を、溶湯が炉外へ溢出する液
面高さを定めるレベル部より下流側に独立して設けると
ともに、前記ストップ部の溶湯流路の底面を前記レベル
部の溶湯流路の底面より一段低くする。また、本発明の
請求項２に記載の溶湯抜出用樋においては、請求項１に
記載の溶湯抜出用樋を溶湯の流出方向側に作業空間が生
じるように屈曲して配置する。さらに、本発明の請求項
３に記載の溶湯抜出用樋においては、請求項２に記載の
溶湯抜出用樋を、前記レベル部の上流側および前記スト
ップ部の下流側で屈曲してクランク状に配置する。本発
明の請求項４に記載の溶湯抜出用樋においては、炉内に
連通する溶湯流路に対してＴ字型に分岐して配置する。
加えて、本発明の請求項４に記載の溶湯抜出用樋におい
ては、請求項１に記載の溶湯抜出用樋のストップ部の溶
湯流路をトンネル状に形成する。

【０００６】

【作用】請求項１に記載の溶湯抜出用樋によれば、溶湯
の流れを遮断する遮断物は、レベル部の下流にレベル部
とは独立して設けられたストップ部に投入されるので、
遮断物がレベル部に固着することがない。また、ストッ
プ部の溶湯流路の底面がレベル部の溶湯流路の底面より
一段低くされているので、ストップ部に遮断物が固着し
てしだいに底上がりが生じても、溶湯が炉外へ溢出する
液面高さが変化することがない。また、請求項２に記載
の溶湯抜出用樋は、溶湯の流出方向側に作業空間が生じ
るように屈曲して配置されるので、作業を容易に行うこ
とができる。さらに、請求項３に記載の溶湯抜出用樋
は、レベル部の上流側およびストップ部の下流側で屈曲
してクランク状に配置され、レベル部の上流およびスト
ップ部の下流に作業空間が生じるから、ストップ部に遮
断物を投入しあるいは除去する作業や、レベル部を整備
する作業を容易に行うことができる。請求項４に記載の
溶湯抜出用樋は、炉内に連通する溶湯流路に対してＴ字
型に分岐して配置されるので、溶湯抜出用樋の溶湯流路
とは反対側に作業空間を設けることができる。さらに請
求項５に記載の溶湯抜出用樋は、ストップ部の溶湯流路
がトンネル状に形成され、遮断物により容易にふさぐこ
とができるとともに、ストップ部の溶湯からの輻射熱が
外部に拡散しないから、作業環境を改善することができ
る。

【０００７】

【実施例】本発明の溶湯抜出用樋の１実施例を、図面に
基づいて詳細に説明する。ここで、図１は、製錬炉と本
発明の溶湯抜出用樋を模式的に示す縦断面図、図２は図
１に示す溶湯抜出用樋の平面図、図３はレベル部の横断
面図、図４はストップ部の横断面図である。

【０００８】図２に示すように、本発明の溶湯抜出用樋
１０は、製錬炉１に設けられた溶湯溢出口３に連通する
溶湯流路１３に対して対称に配置された一対の樋１１・
１２により構成され、図示されない精製炉に溶湯を移送
するようにされている。

【０００９】樋１１および樋１２は前記溶湯流路１３に
対して対称にＴ字型に配置されているとともに、同一構
造を有するようにされているので、以下に樋１１につい
て説明する。図２に示すように、樋１１は、溶湯流路１
３と分岐する部分でその溶湯流路が９０度屈曲されて屈
曲部１４が形成されているとともに、この屈曲部１４に
隣接してレベル部２０が設けられている。そして、この
レベル部２０の下流側にストップ部３０が独立して設け
られ、さらに、このストップ部３０の下流側に、樋１１
が９０度屈曲する屈曲部１５が設けられている。これに
より、樋１１の溶湯流路は屈曲部１４および屈曲部１５
で屈曲されて平面視でクランク状とされ、前記屈曲部１
４・１５の周囲および樋１１・１２の前記溶湯流路１３
とは反対側の部分に作業空間が形成される。

【００１０】図３に断面図として示すように、レベル部
２０は、耐火レンガ２１を組み合わせることにより上部
が開放されたＵ字型に成形された流路２３を有してい
る。また、耐火レンガ２１の周囲は、冷却水が供給され
る水冷ジャケット２２が取り付けられて、耐火レンガ２
１の温度上昇を抑え、耐火レンガ２１の耐久性を高めて
いる。そして、図１に示すように、このレベル部２０の
流路２３の底面２４は水平とされ、製錬炉１内の溶湯４
の液面高さがこの底面２４より高くなると、炉内の溶湯
４が樋１１に溢出するようにされている。

【００１１】ストップ部３０は、図４に断面図として示
すように、耐火レンガ３１を組み合わせることによりＵ
字型に成形された流路３４の上部を、耐火レンガ３３で
覆うことによりトンネル状に成形されている。そして、
耐火レンガ３１の周囲は、冷却水が供給される水冷ジャ
ケット３２が取り付けられて、耐火レンガ３１の温度上
昇を抑え、耐火レンガ３１の耐久性を高めている。ま
た、図１に示すように、このストップ部３０の流路３４
の底面３５は、前記レベル部２０の流路２３の底面２４
に対して一段低くされている。これにより、このレベル
部３０の底面３５が、溶湯４の流れをせき止める粘土等
の遮断物が固着して盛り上がっても、製錬炉１内の溶湯
４が樋１１側に溢出する液面レベルに影響しないように
されている。

【００１２】次に、本発明の溶湯抜出用樋１０の作動に
ついて説明する。まず、溶湯４を、樋１１を流下させて
図示されない精製炉に移送する際には、樋１２側のスト
ップ部３０に粘土等の遮断物９を充填して塞ぎ、溶湯４
が樋１２側を流下しないようにする。これにより、製錬
炉１内の溶湯４の液面高さが上昇して溶湯４が製錬炉１
の溶湯溢出口３より溢出し、樋１１・１２に流出して
も、樋１２側に溢出した溶湯４は樋１２のストップ部３
０に投入された遮断物９によりせき止められるので、樋
１２を流下することができない。これに対して、樋１１
側はせき止められていないので、溶湯４は樋１１を流下
して図示されない精製炉に移送される。

【００１３】そして、移送された溶湯４により図示され
ない精製炉が一杯となった際には、樋１１側のストップ
部３０に遮断物９を充填し、流路を塞いで溶湯４の流れ
を遮断する。この時、ストップ部３０の溶湯流路３４は
トンネル状とされているので、この流路に粘土等の遮断
物を充填して塞ぐ作業を容易に行うことができる。ま
た、この作業は、樋１１の屈曲部１５の周囲に設けられ
た作業空間内で行うことができるので、樋１１を跨いだ
りすることなく、作業を安全にかつ効率よく行うことが
できる。さらにストップ部３０の流路３４はその上部が
覆われてトンネル状とされているので、このストップ部
３０を流れる溶湯３からの輻射熱も弱められ、作業環境
が改善されている。

【００１４】また、溶湯４の流れをせき止める粘土等の
遮断物は、レベル部２０にではなくレベル部２０とは独
立して設けられたストッパ部３０に投入されるから、レ
ベル部２０の流路２４の底面２３に粘土等の遮断物が固
着することが無い。したがって、溶湯４が製錬炉１の内
部から溢出する液面高さが変化することが無い。さら
に、ストッパ部３０に粘土等の遮断物が固着してしだい
に堆積し、いわゆる底上がりが生じても、上述のように
ストッパ部３０の底面がレベル部２０の底面２３より一
段下げられているので、溶湯４が製錬炉１の内部から溢
出する液面高さに影響を与えることが無い。

【００１５】

【発明の効果】本発明は、上述のように構成したので、
以下のような優れた効果を得ることができた。すなわ
ち、本発明の溶湯抜出用樋によれば、溶湯の流れを遮断
する遮断物が、レベル部ではなくストップ部に投入され
るので、遮断物がレベル部に固着してしだいに堆積し、
溶湯が炉内から溢出する液面高さが変化することが無
い。また、溶湯の流れを遮断する遮断物を受け入れるス
トップ部が、その上部を覆われてトンネル状とされてい
るので、このトンネル部分を塞ぐ遮断物の量が少なくて
済む。これにより、この遮断物を投入しあるい除去する
作業を容易に行うことができるとともに、溶湯から輻射
される熱が弱められて作業環境を改善することができ
る。加えて、樋を屈曲させてその周囲に作業空間を形成
したので、ストップ部に遮断物を投入する作業あるいは
除去する作業を容易におこなうことができることとなっ
た。

【図面の簡単な説明】

【図１】製錬炉と本発明の溶湯抜出用樋を模式的に示す
断面図である。

【図２】図１に示す溶湯抜出用樋の平面図である。

【図３】レベル部の断面図である。

【図４】ストップ部の断面図である。

【図５】従来の溶湯抜出用樋を示す断面図である。

【符号の説明】

１ 製錬炉 ２ 溶湯通路 ３ 溶湯溢出口 ４ 溶湯 ５ カラミ ７ 従来の溶湯抜出用樋 ８ 従来のレベル部 ９ 遮断物 １０ 本発明の溶湯抜出用樋 １１ 第１の樋 １２ 第２の樋 １３ 溶湯流路 １４ 屈曲部 １５ 屈曲部 ２０ レベル部 ２１ 耐火レンガ ２２ 水冷ジャケット ２３ 流路 ２４ 流路の底面 ３０ ストップ部 ３１ 耐火レンガ ３２ 水冷ジャケット ３３ 流路の上部を覆う耐火レンガ ３４ 流路 ３５ 流路の底面

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】炉内の溶湯を抜き出す溶湯抜出用樋におい
   て、溶湯の流れを遮断する遮断物が投入されるストップ
   部が、溶湯が炉外へ溢出する液面高さを定めるレベル部
   より下流側に独立して設けられているとともに、前記ス
   トップ部の溶湯流路の底面が前記レベル部の溶湯流路の
   底面より一段低くされていることを特徴とする溶湯抜出
   用樋。
2. 【請求項２】前記溶湯抜出用樋が、溶湯の流出方向側に
   作業空間が生じるように屈曲して配置されていることを
   特徴とする請求項１に記載の溶湯抜出用樋。
3. 【請求項３】前記溶湯抜出用樋が、前記レベル部の上流
   側および前記ストップ部の下流側で屈曲されてクランク
   状に配置されていることを特徴とする請求項２に記載の
   溶湯抜出用樋。
4. 【請求項４】前記溶湯抜出用樋が、炉内に連通する溶湯
   流路に対してＴ字型に分岐して配置されていることを特
   徴とする請求項１または２に記載の溶湯抜出用樋。
5. 【請求項５】前記ストップ部の溶湯流路がトンネル状に
   形成されていることを特徴とする請求項１に記載の溶湯
   抜出用樋。