JPH0779795A - ヒトモノクローナル抗体産生株の製造法 - Google Patents

ヒトモノクローナル抗体産生株の製造法

Info

Publication number
JPH0779795A
JPH0779795A JP6168389A JP16838994A JPH0779795A JP H0779795 A JPH0779795 A JP H0779795A JP 6168389 A JP6168389 A JP 6168389A JP 16838994 A JP16838994 A JP 16838994A JP H0779795 A JPH0779795 A JP H0779795A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
human
antibody
antigen
mouse
cells
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP6168389A
Other languages
English (en)
Inventor
Osamu Shiho
理 志甫
Yukio Toyoda
幸生 豊田
Kunio Matsuoka
邦夫 松岡
Naoto Uchibayashi
直人 内林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Takeda Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Takeda Chemical Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Takeda Chemical Industries Ltd filed Critical Takeda Chemical Industries Ltd
Priority to JP6168389A priority Critical patent/JPH0779795A/ja
Publication of JPH0779795A publication Critical patent/JPH0779795A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】ヒトモノクローナル抗体産生株製造法の提供。 【構成】ヒトリンパ球を移植した重症免疫不全(SCI
D)マウスを抗原感作し、得られた感作リンパ球を株化
しヒトモノクローナル抗体産生株を製造する。 【効果】本発明の製造法によると、抗体陽性者より調製
したヒト末梢血リンパ球を形質転換する従来法に比較し
て、ヒトモノクローナル抗体産生株の取得率が非常に高
い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はヒトリンパ球を移植した
重篤複合免疫不全(severe combined immunodeficienc
y:SCID)マウス系を用いて目的とする抗原に対して
特異的なヒトモノクローナル抗体の産生株を誘導する方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】1975年にケーラーとミルスタインが
細胞融合技術を確立して以来、種々のモノクローナル抗
体が作成され、分析,測定,診断あるいは治療に応用さ
れている。現在までに報告されているモノクローナル抗
体はほとんどが動物、特にマウス由来であり、免疫動物
の抗体産生細胞を細胞融合法を用いて不死化することに
よって取得されている。モノクローナル抗体は、抗体サ
ブクラスにおいて均一であり、抗原結合特異性が高く、
非常に小さなクリアランスをもつという点から考えても
魅力ある薬物キャリアーであり、これを利用した新たな
Drug Delivery System(DDS)が検討されている。し
かしながら、上記のように動物を抗原感作させて得られ
る動物由来の抗体は、ヒトへ投与した場合、抗体自体が
免疫原性を示すことが懸念され、治療薬として常用する
ことは困難である。この免疫原性を避けるために、動物
由来のモノクローナル抗体を例えばFab2,F(ab)'2
どへフラグメント化あるいはヒト抗体とのキメラ化やヒ
ト化するなどの手法により抗原性を低下させる、あるい
は実際の患者からスクリーニングして得られた抗体産生
細胞やイン ビトロ(in vitro)感作させたヒトリンパ
球を用いてヒト抗体産生細胞株を樹立する手法などが検
討されている。しかし、いずれの手法も抗原性の残留、
あるいはヒト抗体産生株樹立の困難性、細胞培養時の抗
体生産能の低下や等の点で問題があり、別のアピプロー
チによる簡便かつ効率的なヒト抗体の樹立方法の確立が
強く望まれている。
【0003】SCIDマウスはBALB/cマウスの免
疫グロブリン(Ig)重鎖のアロタイプ共通遺伝子(alloty
pe congenic)系マウスであるC. B−17マウスより、
血中免疫グロブリン濃度の極端に低いマウスとして発見
された〔ネイチャー 第301巻,527頁(198
3)〕。このマウスは重症の免疫不全症を呈しており、
免疫系の主要な担当細胞である成熟TおよびB細胞を欠
損していることが示されている〔ジャーナル オブ イム
ノロジー 第132巻,1084頁(1984)〕。T、
B細胞の成熟にはそれぞれT細胞レセプターや膜型免疫
グロブリン分子の発現が必要であるが、SCIDマウス
にはこれらの分子を発現するために不可欠な遺伝子の再
構成に関わる酵素(recombinase)群に異常があり、特に
recombinaseの基質特異性に欠陥があることが明らかに
されている〔ジャーナル オブ イムノロジー 第134
巻,227頁(1985)〕。その結果、SCIDマウス
のT、B細胞はほとんど未成熟な分化段階に留まってお
り、SCIDマウスでは自己の抗体はほとんど産生され
ず、したがって抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)も認
められない。一方、抗原提示細胞〔プロシーディングス
オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンス USA
第83巻,3427頁(1988)〕やNK細胞〔セル
第55巻,7頁(1988)〕の機能については異常は認
められていない。
【0004】ヌードマウスや放射線照射によって一次的
に免疫機能を失わせたマウスとは異なるこのようなSC
IDマウスの性質を応用して、(1)異種動物の各種組
織、特にヒトリンパ系組織などを移植したヒトT、B細
胞機能の解析〔ジャーナル オブ イムノロジー 第1
32巻,1804頁(1984)〕、(2)ヒト腫瘍を移植
した抗癌剤の作用機作の解析〔ジャーナル オブ エクス
ペリメンタル メディスン 第172巻,1055頁(1
990)〕、(3)後天性免疫不全症候群(AIDS)〔カ
レント トピックス イン ミクロバイオロジー アンド
イムノロジー 第152巻,259頁(1989)〕やエ
プスタイン バー ウイルス(EBV)〔サイエンス 第2
41巻,546頁(1990)〕などのヒトに特異的な感
染症のモデルの作製などに広く応用されている。ヒト免
疫機能をSCIDマウスで再構築する方法として報告さ
れているものにはヒト胎児胸腺と胎児肝の小片を腎皮膜
下に組織学的構造を保持したまま移植したSCID−hu
マウス〔ネイチャー 第251巻,791頁(199
1)〕と呼ばれるものと、ヒト末梢血リンパ球(PBL)
を腹腔内に移植したhu−PBL−SCIDマウス〔サイ
エンス 第247巻,564頁(1990)〕と呼ばれる
ものがあり、後者においてはマウスを免疫することによ
り破傷風毒素やB型肝炎ウイルスC抗原に対するヒト抗
体を誘導できることが報告されている〔ジャーナル オ
ブ エクスペリメンタル メディスン 第173巻,14
7頁(1991)〕。さらに自己免疫疾患モデルへの応用
もなされ、全身性エリスマトーデス患者のリンパ球を移
植したSCIDマウスではヒト抗核抗体の産生やSLE
類似の腎糸球体病変の出現が報告されている。このよう
にSCIDマウスは種々の異種異系の組織、特にヒト組
織の移植により他の動物では得られないヒト型病態を示
すモデル動物となり得る。
【0005】緑膿菌〔シュードモナス・エルギノーサ
(Pseudomonas aeruginosa)〕は、湿潤な環境には比較
的普遍的に存在するグラム陰性桿菌であり、健康な状態
では何ら問題とならない菌である。しかし、白血病、広
範囲熱傷、慢性呼吸器疾患など人体の感染防御機構に破
綻をきたした場合には、しばしば致命的な感染症を引き
おこす。例えば、抵抗力の弱い入院患者が病院内でこの
菌の二次感染(日和見感染)を受けたり、免疫機能が未
発達であり感染防御に重要な役割を果している腸内常在
菌叢が形成されていない新生児が重篤な感染を受ける場
合があり、現在、緑膿菌の病院内感染や新生児室感染は
重要な問題となっている。緑膿菌感染症の治療のための
化学療法では、抗緑膿菌抗生物質であるゲンタマイシ
ン、コリスチン、ポリミキシンB等が従来から使用さ
れ、最近ではペニシリン系抗生物質(チカルシリン、ピ
ペラシリン等)、セファロスポリン系抗生物質(セフス
ロジン、セフォタキシム等)、アミノグリコシド系抗生
物質(シソマイシン、ミクロマイシン等)が用いられる
(講談社刊、医科学大辞典「ENCYCLOPEDIA OF MEDICAL
SCIENCE」第49巻、158〜159頁参照)。しかし
ながら、緑膿菌は、本来、抗生物質に対して比較的抵抗
性があるところから化学療法にも限界があり、感染防御
機構の減弱または欠落に際して発生する難治性感染症の
原因となっている。CD2分子は、主にヒトT細胞に発
現している細胞接着分子であり、ヒツジ赤血球と結合す
る分子として同定された分子量約5万の糖蛋白質であ
る。CD2分子のcDNAのクローニングとそれに基づ
く一次構造の報告〔Sewell WA ら プロシーディングス
オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンス(Proc.
Natl.Acad. Sci.)U.S.A 第83巻 8718頁(1986)〕か
ら、この分子は336個のアミノ酸残基からなる膜貫通
型の蛋白質であることが明らかとなっている。また、C
D2分子の細胞外部に免疫グロブリン様の構造を有する
ことから、免疫グロブリン・スーパーファミリーに属す
ると考えられている〔Williams AF アニュアルリビュー
オブ イムノロジー(Ann. Rev. Immunol.)第6巻 381
頁(1988)〕。CD2分子は、モノクローナル抗体によ
って3つのエピトープT111,T112およびT113を持つ
ことが判明している。抗原提示細胞上などに発現してい
るLFA-3との結合に関与するT111およびT112は第
1ドメイン内に存在し〔Peterson Aおよび Seed B ネイ
チャー(Nature)第329巻 842頁(1987)〕、LFA-3に
よりその発現が誘導されるT113は第2ドメイン内に存
在することが知られている〔Mueer S C ら セル(Cel
l)第36巻 897頁(1984)〕。CD2分子は免疫系におい
て、T細胞の分化、増殖を抑制する接着分子として機能
しているが、慢性関節リウマチなどの炎症性疾患や多発
性硬化症などの自己免疫疾患においては自己反応性T細
胞の活性化を誘導し、症状を増悪する分子の一つである
と考えられている。従って、この分子の活性を中和し得
る抗CD2抗体は、例えばリウマチでは関節内でのT細
胞の活性化を抑制することによりIL−1やTNF−α
等の組織破壊作用のあるリンフォカインの産生を低下さ
せて症状を改善させることが期待され、また炎症性疾患
あるいは自己免疫疾患においては、自己反応性T細胞の
活性化を抑制することにより、同様の治療効果が期待で
きる。このような理由からヒト抗CD2抗体の調製法の
樹立が強く望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、目的とする
抗原に対して特異的なヒトモノクローナル抗体を効率的
かつ簡便に得る抗体産生株を提供しようとするものであ
る。
【0007】
【発明が解決するための手段】本発明者らは、ヒトリン
パ球を移植した重篤複合免疫不全(以下、SCIDと略
記することがある)マウスを抗原感作して得られた感作
リンパ球を株化することによって効率的にヒトモノクロ
ーナル抗体産生細胞を取得できることを見い出し、さら
に検討を重ね本発明を完成した。すなわち、本発明は、 1)ヒトリンパ球を移植した重篤複合免疫不全マウスを
抗原感作し、得られた感作リンパ球を株化することを特
徴とするヒトモノクローナル抗体産生株の製造法、 2)エプスタイン バー ウイルスにより株化する前記
(1)記載のヒトモノクローナル抗体産生株の製造法、 3)ヒトミエローマ細胞株との細胞融合により株化する
前記(1)記載の製造法、 4)抗原が緑膿菌膜成分である前記(1)記載の製造
法、 5)抗原がCD2分子である前記(1)記載の製造法、 6)抗体がIgG抗体である前記(1)記載の製造法お
よび、 7)ヒトリンパ球を移植した重篤複合免疫不全マウスを
抗原感作し、得られた感作リンパ球を株化することによ
り得られたヒトモノクローナル抗体産生細胞株である。
【0008】本発明においてSCIDマウスは通常5な
いし15週令、好ましくは8ないし12週令のSCID
マウスを用いる。このSCIDマウスの腹腔内あるいは
静脈内に、ヒトの免疫細胞を含む抹梢血、骨髄液、また
は免疫系組織、例えば脾臓などから公知の方法で精製し
たヒトリンパ球画分を生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩
水(PBS)等の細胞および生体に影響を与えない溶液に
懸濁した1×107個から5×108個、好ましくは約1
×108個のヒトリンパ球を腹腔内あるいは静脈内に移
植する。移植手段の1つとして、免疫隔離膜に封入した
移植細胞を腹腔内に移植する方法を採用してもよい。こ
の方法では、免疫隔離膜により移植後に移植細胞と宿主
の組織が接触しないため、GVH(graft-versus-host;
移植片対宿主)反応が抑えられ、目的とする抗原に対す
る抗体産生の効率を高められる。
【0009】目的とする抗原としては主に蛋白質または
ペプチドが対象となるが、その他の化学物質等でも抗原
とすることが可能である。具体的にはあらゆる可溶性の
外来抗原はもとより緑膿菌などの感染性の細菌膜画分、
肝炎ウイルスなどのウイルス膜成分、各種癌細胞などの
不溶化抗原や免疫系細胞膜成分、さらにはヒトの生体内
微量成分もこれに含まれる。最初の抗原投与は移植と同
時もしくは1日後に行い、抗原の追加免疫は最初の抗原
投与から3日ないし14日の間、好ましくは約7日後に
行い、その後、3日ないし14日おきに、好ましくは約
7日おきに行う。抗原の投与経路としては腹腔、静脈、
筋肉などが挙げられるが、好ましくは腹腔にマウスに負
荷を与えすぎない量の抗原を生理食塩水、リン酸緩衝生
理食塩水などの細胞および生体に影響しない溶液に溶解
し投与する。
【0010】ヒト抗原特異抗体産生細胞の回収は通常移
植後7日ないし60日の間に行うがなかでも7日ないし
28日、特に25ないし28日の間が好ましい。特に回
収効率の点から移植後7日目ごろから毎週、SCIDマ
ウスの眼窩より適量の血液を採血し、ヒト抗体量の上昇
およびヒト抗原特異抗体価の上昇を検査することが好ま
しい。ヒト抗体量およびヒト抗原特異抗体価の測定に
は、酵素免疫測定法(以下、EIAと略記することがあ
る)、受動的赤血球凝集反応法、蛍光抗体法、オクタロ
ニー法など様々なものがあるが、抗原が可溶性抗原の場
合、公知の抗ヒトイムノグロブリン抗体と目的とする抗
原を固相化したイムノプレート(例えば、ヌンク社、デ
ンマーク製など)を使用する酵素免疫測定法が好ましく
用いられる。これらの方法で高い抗体量、抗体価を示し
たSCIDマウスよりヒト抗体産生細胞を回収する。
【0011】SCIDマウスの各臓器から、適宜、抗体
産生細胞が回収できるがなかでもリンパ節から回収する
と、回収率、純度の点で非常に有利である。本発明で得
られるヒトモノクローナル抗体産生細胞は従来の試験管
内におけるヒト抗体産生細胞の誘導に比べ、抗体価測定
またはプラーク法や蛍光免疫測定法などでヒト抗体産生
細胞を誘導し得る点において非常に優れており、ヒトモ
ノクローナル抗体取得に非常に有利である。本発明のヒ
ト抗体産生細胞の回収および精製の具体的な方法として
は例えば以下の方法が用いられる。最初に、各臓器を物
理的に単細胞化する。ここで、臓器から回収した細胞に
占める抗体産生細胞の割合が大きければ、そのまま抗体
産生細胞の株化に用いることができるが、抗体産生細胞
の純度が低いとき、例えばSCIDマウスの細胞の混入
が甚だしい場合は比重遠心法、抗原を用いたパンニング
法、マウスの細胞を除去するために抗マウス細胞抗体と
補体を用いた細胞溶解法、または公知の抗ヒトB細胞抗
体を用いたアフイニティーカラム法などで精製すること
により抗体産生細胞の純度を上昇させる。
【0012】次に、精製されたヒト抗体産生細胞は以下
のような方法で株化することができる。株化の方法とし
ては主にエプスタインバーウイルスによる形質転換法、
または適当な増殖性の細胞と融合することによる細胞融
合法が挙げられる。エプスタインバーウイルスによる形
質転換には公知の方法で調製されたエプスタインバーウ
イルス、例えば細胞株B95.8の培養上清などをヒト
抗体産生細胞を増殖培地に0.5ないし5×107個/ml
で懸濁したものに対して1:10〜10:1の割合で添
加し、37℃で1時間ないし18時間反応する。反応
後、室温で遠心し増殖培地で1×106個/mlないし1
×105個/mlの細胞濃度で96穴プレートに0.1mlず
つ分注する。37℃のフラン器で培養し、7日ないし3
0日の間に形質転換細胞の増殖が認められた穴の培養上
清を採取して、それを上記に示したようなEIAなどの
適切なスクリーニング系を用いて、目的とする抗体を産
生している形質転換細胞を単離する。細胞融合法は公知
の方法によって実施され、融合剤としてポリエチレング
リコール(以下、PEGと略記することがある)、セン
ダイウイルスなどが用いられる。また、融合剤を用いな
い電気融合法を用いることもできるが好ましくはPEG
が用いられる。
【0013】PEGとしては、平均分子量1000〜9
000のものが用いられ、特に好ましくはPEG400
0またはPEG6000が用いられる。濃度は10ない
し80%、好ましくは40ないし50%の範囲で用い
る。細胞融合はSCIDマウスより得られた抗体産生細
胞と適切な細胞株、好ましくはヒトミエローマおよびヒ
トリンフォーマ細胞株、特に好ましくはヒトリンフォー
マAC−33株を適当な無血清培地で洗浄し、通常1:
1ないし10:1の比率で混合し、室温で700回転、
5分間遠心して細胞ペレットを得る。細胞ペレットを3
7℃の恒温槽で温めながらほぐし、予め温めておいたP
EG溶液を徐々に加えながら混ぜる。通常PEG量は1
8個細胞当たり1ml加えられるが、必要に応じて増減
してもよい。ついで予め温めておいた培地を細胞溶液に
徐々に滴下しPEG濃度を下げていく。通常は10分位
の時間をかけて1ないし30mlの培地を加える。室温で
遠心して細胞を集め、10%牛胎児血清(以下、FCS
と略記することがある)を含む培地で親細胞株として1
ないし5×105個/mlの細胞濃度で1晩放置後、HA
Tおよび10%FCSを含む培地(HAT培地)を添加
する。この操作を省略するために細胞融合後、細胞を直
接HAT培地に懸濁してもよい。2ないし3週間に数回
の培地交換を行う。培地の交換方法としては培地0.1
から0.2mlを除き、新鮮な等量のHAT培地を加え
る。この間、ハイブリドーマの出現が認められれば、出
来るだけ早急に上記に示したようなEIAなどの適切な
スクリーニング系を用いて、目的とする抗体を産生して
いるハイブリドーマ細胞を単離する。得られたハイブリ
ドーマは直ちに適当な方法でクローニングを行う。
【0014】細胞培養に使用する液体培地としては、一
般的にダイゴT培地(日本製薬)ダルベッコ改変イーグ
ル培地、RPMI−1640培地、イスコフ改変ダルベ
ッコ培地などが挙げられるが、好ましくはダイゴT培地
(日本製薬、東京)を用いる。エプスタインバーウイル
スによる形質転換法の場合は、これらの培地に約20%
FCSを添加し増殖培地とする。細胞融合法では10な
いし15%のFCSを添加して増殖培地とする。こうし
て得られたヒト特異抗体産生細胞株は公知の方法でヒト
モノクローナル抗体を得ることができる。例えば、SC
IDマウスの腹腔にヒト抗体産生細胞株を移植すること
により、マウスハイブリドーマなどと同様なモノクロー
ナル抗体を高濃度に含む腹水が得られる。また、適当な
無血清培地、例えばGIT培地(日本製薬)、HB10
4(ハナメディア社)、ハイブリティ1(日本薬品開発
社)などを用いて、大量培養を行うことも可能である。
これら腹水もしくは培養上清から公知の分離、精製法を
適切に組み合わせれば高純度のヒトモノクローナル抗体
を大量に得ることができる。例えば、抗体を含む溶液を
遠心分離後、上清液を塩析する。通常は硫酸アンモニウ
ムを用いる。得られた蛋白沈殿物を適当な緩衝液に溶解
し透析後、カラムクロマトグラフィー(DEAEイオン
交換カラム、ヒドロキシルアパタイトカラム、ゲル濾過
カラム、プロテインAカラム、プロテインGカラムな
ど)、イムノアフィニティクロマトグラフィなどに供
し、目的とするヒトモノクローナル抗体を分離、精製す
ることができる。これらの方法で精製したヒトモノクロ
ーナル抗体の純度は99.9%以上であり、医薬として
ヒトに投与する場合に好都合である。
【0015】こうして得られる本発明のヒトモノクロー
ナル抗体は感染症、薬物中毒における抗血清の代替物、
抗イディオタイプ抗体を用いたワクチン、炎症反応を鎮
静化させるための接着分子に対する抗体、または触媒型
抗体などモノクローナル抗体で計画されている種々の治
療、診断の分野において使用する場合、抗原性が低いな
いし無いという点で非常に有利である。具体的には、例
えば本発明抗体を診断薬として用いる場合、酵素,色
素,放射性同位原素等の適当な標識物質と化学的あるい
は遺伝子工学的に結合した標識抗体として用いればよ
く、また例えば治療薬として用いる場合には、例えば抗
原が毒素等の活性物質の場合、好ましくは抗原の活性に
対する中和能を有する本発明抗体を単独あるいは適当な
併用薬剤等との混合剤として、また例えば癌や血栓症等
の治療においては、適当な薬剤と化学的あるいは遺伝子
工学的に結合させた抗体ターゲッティング製剤として調
製し、投与することができる。
【0016】本発明のヒトモノクローナル抗体は、必要
により例えばメンブレインフィルター等による濾過、除
菌操作の後に、それ自体あるいは適宜の薬理学的に許容
され得る担体、賦形剤、希釈剤などと混合し、常法に従
い非経口剤好ましくは注射剤などとして製剤化して、哺
乳動物(マウス、ラット、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、サ
ル、ヒトなど)の皮下、静脈内あるいは筋肉内に投与
し、各種の疾患の治療に用いることが可能である。ま
た、本発明のヒトモノクローナル抗体を、リン酸緩衝
液、生理食塩水、リンゲル液などの適当な担体に溶解
し、常法に従って、例えば無菌濾過により無菌化し、ア
ンプルに密封することにより製造することができる。さ
らに、これらの液状の医薬を常法に従って凍結乾燥等に
より固形状の医薬とすることができる。
【0017】本発明のモノクローナル抗体の投与量は、
投与対象の体重,年齢,性別や対象となる疾患、症状あ
るいは投与ルートなどによって異なるが、イムノグロブ
リン量として1μg〜1mg/kg 体重/1日の範囲から1
日1ないし数回を連続的にあるいは間欠的に投与するこ
とができる。本発明で取得された緑膿菌に対するヒトモ
ノクローナル抗体はそれ自体で菌に対して溶菌作用を示
すことが期待でき、また、ヒトに対しても毒性が非常に
少ないと考えられることから上記のような難治性の感染
症の治療に期待できる。また、同様に本発明により取得
されたCD2分子に対するヒトモノクローナル抗体は、
各種の炎症性疾患や自己免疫疾患の診断に、またこれら
疾患発症時のT細胞活性化を中和する機能を持ちかつヒ
トに対して低毒性であると考えられるので、治療におい
ての利用が期待できる。
【0018】
【実施例】以下に参考例および実施例を挙げて本発明を
具体的に説明するが、これらが本発明の範囲を制限する
ものではないことは言うまでもない。なお、後述の実施
例で得られたヒトEBVトランスフォーマントは、以下
のとおり財団法人発酵研究所(IFO;大阪市淀川区十
三本町2丁目17番85号)および通商産業省工業技術
院生命工学工業技術研究所(NIBH)にそれぞれ寄託さ
れている。
【表1】 ─────────────────────────────────── IFO NIBH 名 称 (IFO No.) (FERM No.) ─────────────────────────────────── ヒトEBVトランスフォーマント 50405 BP−4367 S84T2−6 (1993年7月12日) (1993年7月21日) ─────────────────────────────────── ( )内は寄託日を示す。
【0019】参考例1 抗原の調製 緑膿菌(Psuedomonas aeruginosa;IFO No. 344
5)を Tripricate soybroth 培地1.2リットルで6時
間、37℃で培養し、毎分5000回転で10分間遠心
して集菌した。得られた菌体をリン酸緩衝生理食塩水
(PBS)で2回洗い、超音波処理で破砕した後、毎分
9000回転10分間の遠心で膜画分とその他の不溶物
を分離した。膜画分はPBSを用い、毎分23000回
転30分の超遠心で3回洗い、可溶性の蛋白質などを除
いて精製した後、小量のPBSで懸濁し、これを抗原と
した。抗原の蛋白量はバイオラッド社のプロテインアッ
セイキットを用いて定量した。
【0020】参考例2 ヒトリンパ球の移植および免疫
操作 ヒトヒト白血球分画(buffy coat)40mlをRPMI−
1640培地(フローラボラトリーズ,米国)と等量混
合し、30mlの Ficoll Paque 溶液(ファルマシア社)
に重層した。毎分2400回転20分間の遠心で単核球
画分を得て、これをヒト末梢血リンパ球(ヒトPBL)と
して用いた。その後、RPMI−1640培地で3回遠
心洗浄し、PBS0.5mlにヒトPBL 0.5〜1×1
8個と抗原50μg を混合しSCIDマウス腹腔に移
植した。なお、実験には生化学的検査、ウイルス抗体検
査、血球数検査などに合格したヒト血液のみを用いた。
抗原の追加免疫は抗原10μg を移植後8−9日目から
7日間おきにヒトPBLを移植したSCIDマウスに腹
腔内投与した。血中ヒト抗体測定のため、追加免疫を行
う前にマウス眼窩静脈よりヘパリン処理ヘマトクリット
毛細管(Drummond)を用いて、採血した。血清を遠心分
離後、0.01%チメロサ―ル(シグマ社)を含むPB
Sで20倍希釈にして測定まで4℃に保存した。
【0021】参考例3 ヒト免疫グロブリン測定 血中ヒトIgGおよびIgMの濃度は酵素免疫測定法(E
IA)で定量した。精製ヤギ抗ヒトIgGまたは抗ヒトI
gM抗体(カペル社 米国)を0.01M 食塩を含む0.0
1Mリン酸緩衝液(pH8.0)で10μg/mlの濃度に調
製し、50μlずつ96穴イムノプレ―ト(ヌンク社,
デンマーク)に分注し、4℃、18時間静置して抗体を
結合させた。次に抗体溶液を除去した後、0.01%チ
メロサールを添加した8倍希釈ブロックエース(大日本
製薬)溶液を100μl ずつ分注し、4℃、18時間の
ブロッキングを行った。更に、ブロックエース溶液を除
去し、検体である血清を0.2% Tween 20(バイオラ
ット社)を含むPBS(CT−PBS)で任意に希釈
し、抗体結合プレートに50μl ずつ2穴に加え、37
℃、1時間反応させた。反応後、0.05% Tween20
を含むPBS(T−PBS)で洗浄し、10000倍希
釈西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識精製ヤギ
抗ヒトIgG抗体または抗ヒトIgM抗体、または抗マウ
スIgG+IgM+IgA抗体溶液を50μl ずつ添加
し、更に37℃、1時間反応させた。T−PBSでプレ
ートを洗浄後、50μl の20mM o−フェニレンジア
ミン(シグマ社)、0.02%過酸化水素水を含む0.1
Mクエン酸緩衝液(pH5.5)を添加し5分間、室温で
酵素反応を行った。1N硫酸を添加し、酵素反応を停止
させた後、マルチスキャン(タイターテック社製)で49
2nmの吸光度を測定し、各抗体量を定量した。
【0022】参考例4 抗原特異的抗体測定 参考例1で得られた抗原を0.1M重炭酸緩衝液(pH
9.6)に10μg/mlの濃度に調製し、50μl ずつ9
6穴イムノプレートに分注し、4℃、18時間反応さ
せ、抗原を結合させた。次に抗原溶液を除去した後、
0.01%チメロサールを添加した8倍希釈ブロックエ
ース溶液を100μl ずつ分注し4℃、18時間ブロッ
キングを行った。更に、ブロックエース溶液を除去し、
検体である血清をCT−PBSで100倍希釈し、抗体
結合プレートに50μl ずつ2穴に加え、37℃、1時
間反応させた。反応後、T−PBSで洗浄し、1000
0倍に希釈したHRP標識精製ヤギ抗ヒトIgG抗体あ
るいは抗ヒトIgM抗体を50μlずつ添加し、更に37
℃、1時間反応させた。T−PBSでプレートを洗浄
後、50μl の20mM o−フェニレンジアミン0.02
%過酸化水素水を含む0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.
5)を添加し5分間、室温で酵素反応を行った。1N硫
酸を添加し、酵素反応を停止させた後、マルチスキャン
で492nmの吸光度を測定し、抗体価を定量した。
【0023】参考例5 緑膿菌凝集試験 緑膿菌生菌に10%ホルマリンリン酸緩衝液(pH7.
0)を添加し、懸濁した後4℃、18時間固定した。検
体であるhu−PBL−SCIDマウス血清をPBSで2
倍段階希釈した。PBSで3回洗浄し10%懸濁液とし
たホルマリン固定緑膿菌50μl と希釈した血漿50μ
l を96穴V底プレート上で混合し、37℃、1時間反
応させた。また、IgGの抗体凝集能を見るためには更
に100倍希釈精製ヤギ抗ヒトIgG抗体50μl を添
加し、同様に反応させた。反応後、凝集が認められる検
体の最大希釈倍数をその検体の凝集価とした。対照には
正常SCIDマウス血清を用いた。
【0024】参考例6 フローサイトメトリー法を使っ
た抗原特異的抗体の測定 ホルマリン固定菌10%懸濁液50μl に20倍に希釈
した検体血清50μlを添加し、氷中で30分間反応さ
せた。2%牛胎児血清(FCS)、0.2%アジ化ナト
リウムを含むPBS(FCS−PBS)で2回遠心洗浄
した。沈査となった固定菌に20倍希釈したフルオレセ
イン−イソシアネート標識ヤギ抗IgG抗体50μlを添
加し、更に氷中にて30分間反応させた。反応後、FC
S−PBSで2回遠心洗浄し、細胞自動解析分離装置
(FAC Star;Becton Deckinson)にて解析した。
【0025】参考例7 EIA結合競争阻害実験 参考例4で高い抗体価を示した培養上清とCT−PBS
に各種濃度で溶解した抗原を等量混合し、抗原を結合さ
せた96穴イムノプレートにその混合液50μl を添加
し、37℃、1時間反応させた。反応後、T−PBSで
洗浄し、10000倍希釈HRP標識ヤギ抗ヒトIgG
抗体を50μlずつ添加し、更に37℃、1時間反応さ
せた。T−PBSでプレートを洗浄後、抗原特異的抗体
測定の項で述べた方法に従って酵素反応を行い、固相化
抗原と可溶性抗原間の競争阻害を調べた。
【0026】実施例1 (1)ヒトリンパ球の調製 ヒト白血球分画40mlをRPMI−1640培地(フロ
ー ラボラトリーズ 米国)と等量混合し、30mlの Fic
oll Paque溶液(ファルマシア社)に重層した。毎分2
400回転20分間の遠心で単核球画分を得て、RPM
I−1640培地で3回遠心洗浄し、これをヒト末梢血
リンパ球(ヒトPBL)として用いた。 (2)SCIDマウスへのヒトPBLの移植と免疫操作 PBS0.5mlにヒトPBL0.5−1×108個と抗原
50μgを混合しSCIDマウス腹腔に移植した。な
お、実験には生化学的検査、ウイルス抗体検査、血球数
検査などに合格したヒト血液のみを用いた。抗原の追加
免疫は抗原10μg を移植後8−9日目から7日間おき
にヒトPBLを移植したSCIDマウス腹腔内に投与し
た。血中ヒト抗体測定のため、追加免疫を行う前にマウ
ス眼窩静脈よりヘパリン処理ヘマトクリット毛細管(ド
ラモンド社)を用いて、採血した。血漿を遠心分離後、
0.01%チメロサ―ル(シグマ社)を含むPBSで20
倍希釈にして測定まで4℃に保存した。
【0027】(3)EBVトランスフォーメーション 参考例2および3に記載のEIAで血中抗体価を測定
し、抗原特異的抗体価の高いhu−PBL−SCIDマウ
スを選択した。これらのマウスから腸管膜リンパ節を注
意深く取り出し、ステンレスメッシュとハサミあるいは
擦りガラスで単細胞化した後、RPMI−1640培地
で3回洗浄した。洗浄したリンパ節細胞は後述のEBV
を含む上清を加え、37℃、1時間反応させた。反応
後、20%FCSを含むダイゴT培地(日本製薬)に5
×105 個/mlの濃度に懸濁し、37℃、5%CO2
インキュベーター内で培養した。EBVはマーモセット
B細胞株B95.8の培養上清を小分けして、−80℃
に保存していたものを解凍して用いた。3−4週間後、
トランスフォ―マントの増殖の認められたウェルより培
養上清を得た。実験では6匹のPBL移植SCIDマウ
スリンパ節より0.8×107個の細胞を得た。それをE
BVで処理後、マイクロプレートの96穴に分注した。
96穴から32穴のトランスフォーマントを得た。
【0028】(4)トランスフォーマントの選択 トランスフォーマント培養上清を参考例3に記載の方法
でスクリーニングした。得られたトランスフォーマント
32穴をスクリーニングした結果、全穴に特異抗体陽性
トランスフォーマントの樹立を確認した。得られたトラ
ンスフォーマントの1つを、S84T2−6と命名し、
その培養上清希釈曲線を〔図1〕に示す。本トランスフ
ォーマントはIgGタイプの抗原特異的ヒト抗体を産生
し、その産生IgG量は参考例2に記載の方法で定量し
た結果13.3μg/mlであった。また、その抗原特異性
を確認するために参考例5に記載のEIA結合競合阻害
実験を行ったところ、特異抗体の固相抗原に対する結合
が可溶性抗原により濃度依存的に阻害された〔図2〕。
また、参考例4に記載のフローサイトメトリー法で調べ
たところ、抗体の緑膿菌表面への結合が確認された〔図
3〕。これらのことからこの株は緑膿菌に対する特異的
ヒト抗体を産生していることが確認された。
【0029】実施例 2 (1) CD2抗原の調製 ヒト抗CD2抗体を得るため、まず免疫原であるCD2
抗原の調製を行った。336アミノ酸残基からなるCD
2分子[W. A. Swelle ら,プロシーディングス ナショ
ナル アカデミー オブ サイエンス(Proc. Natl. Acad.
Sci.)U.S.A 第83巻 8718-8722頁(1986)]のうち、第
1ドメインを含むN末端107アミノ酸残基に相当する
cDNAを化学合成し、これに翻訳開始コドンを付加し
て公知の発現ベクターpET3c[F. W. Studier ら,
ジャーナル セル バイオロジー(J. Cell Biol.)第189
巻 113-130頁(1987);A. H. Rozenberg ら,ジーン(G
ene)第56巻 125-135頁(1987)]に組込み、プラスミド
pTB1255を作製した。これを大腸菌 MM294
(DE3)/pLysSに組み込んだ後LB培地で培養
し、イソプロピルチオβ-D ガラクトシドを用いて遺伝
子発現を誘導した。この菌体を超音波処理により破砕し
たのち、14000rpmで10分間遠心した。その遠心
上清を2mM EDTA、0.1M APMSF含有10m
Mリン酸緩衝液(pH7.0)で6倍希釈し、2分の1溶
量の飽和硫安溶液を添加し、12000rpmで15分間
遠心した。沈殿物を7M塩酸グアニジンに溶解し、セフ
ァクリルS−300HR(ファルマシア社)カラムにか
け0.1M硫酸ソーダ−6Mウレア含有リン酸緩衝液(p
H7.0)で流出した。得られた活性画分を6Mウレア−
25mM トリス塩酸緩衝液(pH10)に対して透析し、
Q−セファロ−スFF(ファルマシア社)カラムを用い
た陰イオン交換クロマトグラフィーにかけ、0−0.2
M食塩のグラディエントにより組換え可溶性CD2抗原を
抽出精製した。
【0030】(2)ヒトPBLを移植したSCIDマウ
スの免疫操作 ヒトPBLの調製は実施例1に記載の方法と同様に行っ
た。移植および免疫操作は以下の通りに行った。0.3
mlのPBSにヒトPBL1x108個とCD2抗原5
0μgを混合しSCIDマウスに腹腔内移植した。さら
に免疫反応を増強するため、抗原50μgを移植1週間
後から7日おきにこのSCIDマウスに腹腔内投与し
た。血中ヒト抗CD2抗体価はマウス眼窩静脈よりヘパ
リン処理ヘマトクリット毛細管(ドラモンド社)を用いて
採血した血清により測定した。 (3)細胞融合と抗原特異的ヒト抗体産生株の取得 ヒトPBLの移植後3週の時点で上記において測定した
血中ヒト抗CD2抗体価の高い10匹のSCIDマウス
を選択し、脾臓および腸管膜リンパ節を摘出した。それ
らを研摩スライドガラスを用い単細胞化し混合してRP
MI-1640培地で3回洗浄した。前述ヒトリンフォ
ーマAC-33株とSCIDマウスからの細胞1x109
個を1:10の比率で混合し、遠心機にかけ細胞ペレッ
トとして、37℃の恒温槽で温めながらほぐし1mlの
PEG6000溶液(PEG6000 5.4gを6.6
mlのPBSに溶かし、さらにDMSOを加え12%
(v/v)溶液とした)を徐々に加えながら撹拌した。つ
いで20mlのRPMI-1640培地を細胞溶液に徐
々に滴下して懸濁し、室温で遠心して細胞を集め、10
%FCSを含むRPMI-1640培地で1x105/m
lの細胞濃度で96穴プレート10枚に0.1mlずつ
分注した。1晩放置後、HAT培地(HATおよび10
% FCSを含むRPMI-1640培地)0.1mlを
添加し、その後週に1回、培地交換を行なった。3週間
後、ハイブリドーマの増殖を確認後、細胞培養上清を参
考例4に記載の方法に従いCD2抗原特異性についてス
クリーニングして、抗原特異的抗体産生株を2株得た。
これらの抗体産生株は共にヒトIgG抗体を産生してい
た。
【0031】(4)CD2抗原に対するヒト抗体の結合
特異性 上記(3)で得られた2株からのヒト抗CD2抗体の抗原
特異性を確認するために結合阻害試験を行った。1x1
7/mlに調製したヒトPBL懸濁液を100mlずつ
96穴V字底プレート(ヌンク社,デンマーク)に分注
した。2%牛胎児血清と0.02%アジ化ナトリウムを
含むPBSでそれぞれ0、1あるいは20mg/mlに
なるように調製した培養上清からのヒト抗CD2抗体溶
液を添加し、ヒトPBLと4℃30分間反応させた。さ
らに陽性対照としてフルオレセイン-イソチオシアネー
ト(FITC)標識マウス抗CD2モノクローナル抗体
(生化学工業)、また陰性対照として、FITC標識マ
ウス抗スカシガイヘモシアニン(KLH)モノクローナル
抗体(ベクトンデキンソン社)0.5mgを含む反応液
50mlをそれぞれ添加し、4℃30分反応した。プレ
ートを洗浄した後、細胞自動解析分離装置(FACSt
ar:ベクトンデキンソン)にて解析したところ、ヒト
抗CD2抗体添加量に依存して陽性対照抗体の結合阻害
が認められた(図4)。すなわち、陽性対照抗体はヒト
抗CD2抗体と競合して置換されるため、ヒトPBLの
蛍光強度が添加抗体濃度に依存的に減少した。これは得
られたヒト抗CD2抗体が陽性対照抗体と同じ結合能を
もつことを示唆する。また、得られた2株から産生され
たヒト抗体の活性を比較したところ両者はほぼ同等だっ
た。これらのことからこのヒト抗CD2抗体は陽性対照
抗体と同じ結合能を持つことが示され、疾患におけるT
細胞の活性化を抑制する可能性が示唆された。
【0032】
【発明の効果】本発明のヒトモノクローナル抗体産生株
の製法は、例えば抗緑膿菌抗体産生株の樹立において、
抗体陽性者より調製したPBLを形質転換してトランス
フォーマントを取得する従来法と、樹立に要したPBL
供与者数及び目的の特異抗体産生トランスフォーマント
の取得率を試算して比較したところ、本発明では従来法
の約1/5程度のPBL供与者で約450倍の目的トラ
ンスフォーマント取得率となり、従来法に比べ非常に樹
立効率が高い。また、抗体陽性者の有無に左右されずに
目的の抗体を調製できる点でも有利である。例えば、本
実施例において抗CD2抗体を作製しているが、自己成
分であるCD2分子に対する抗体の産生はヒト生体内の
免疫寛容機構により抑制されるため、従来の技術ではこ
のような抗体産生株の樹立はほぼ不可能であった。この
ことは、本発明がこの種のヒト抗自己成分抗体産生株の
樹立を可能にし、自己成分が関与する癌や自己免疫疾
患、炎症等を含むあらゆる疾患において応用が期待され
る抗体を提供し得ることを示している。さらに、本発明
方法で得られたヒトモノクローナル抗体はヒトに対して
免疫原性が極めて低いと考えられ治療や診断に用いる際
に非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】抗緑膿菌ヒトモノクローナル抗体産生トランス
フォーマントの培養上清希釈線を示す。
【図2】固相化抗原と可溶性抗原の競合反応による抗緑
膿菌ヒトモノクローナル抗体の結合阻害曲線を示す。
【図3】抗緑膿菌ヒトモノクローナル抗体のホルマリン
固定緑膿菌への結合を示す。
【図4】実施例2で得られたヒト抗CD2抗体のヒトリ
ンパ球への結合特異性を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 39/395 ADZ J C07K 16/14 8318−4H C12N 5/10 15/02 G01N 33/53 D K // G01N 33/577 A (C12P 21/08 C12R 1:91)

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ヒトリンパ球を移植した重篤複合免疫不全
    マウスを抗原感作し、得られた感作リンパ球を株化する
    ことを特徴とするヒトモノクローナル抗体産生株の製造
    法。
  2. 【請求項2】エプスタイン バー ウイルスにより株化
    する請求項1記載の製造法。
  3. 【請求項3】ヒトミエローマ細胞株との細胞融合により
    株化する請求項1記載の製造法。
  4. 【請求項4】抗原が緑膿菌膜成分である請求項1記載の
    製造法。
  5. 【請求項5】抗原がCD2分子である請求項1記載の製
    造法。
  6. 【請求項6】抗体がIgG抗体である請求項1記載の製
    造法。
  7. 【請求項7】ヒトリンパ球を移植した重篤複合免疫不全
    マウスを抗原感作し、得られた感作リンパ球を株化する
    ことにより得られたヒトモノクローナル抗体産生細胞
    株。
JP6168389A 1993-07-21 1994-07-20 ヒトモノクローナル抗体産生株の製造法 Withdrawn JPH0779795A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6168389A JPH0779795A (ja) 1993-07-21 1994-07-20 ヒトモノクローナル抗体産生株の製造法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP18049993 1993-07-21
JP5-180499 1993-07-21
JP6168389A JPH0779795A (ja) 1993-07-21 1994-07-20 ヒトモノクローナル抗体産生株の製造法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH0779795A true JPH0779795A (ja) 1995-03-28

Family

ID=26492113

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP6168389A Withdrawn JPH0779795A (ja) 1993-07-21 1994-07-20 ヒトモノクローナル抗体産生株の製造法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0779795A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1687029A1 (en) * 2003-11-14 2006-08-09 Avanir Pharmaceuticals Neutralizing human antibodies to anthrax toxin generated by recall technology
CN116023442A (zh) * 2023-03-16 2023-04-28 北京丹大生物技术有限公司 一种多粘菌素b半抗原、人工抗原、特异性抗体及其制备方法和应用

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1687029A1 (en) * 2003-11-14 2006-08-09 Avanir Pharmaceuticals Neutralizing human antibodies to anthrax toxin generated by recall technology
EP1687029A4 (en) * 2003-11-14 2007-05-30 Avanir Pharmaceuticals NEUTRALIZATION OF HUMAN ANTIBODIES TO ANTHRAX TOXIN GENERATED BY CONCORDANCE TECHNOLOGY
CN116023442A (zh) * 2023-03-16 2023-04-28 北京丹大生物技术有限公司 一种多粘菌素b半抗原、人工抗原、特异性抗体及其制备方法和应用

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4391558B2 (ja) T細胞における抗原特異性アポトーシスの誘導のためのリガンド
JP2764019B2 (ja) 免疫グロブリンeのためのリセプターに対するモノクローナル抗体
JP2007197464A (ja) 細胞および血清タンパク質アンカー並びに接合体
SA96170384B1 (ar) وطرق تحضيرها واستخداماتها العلاجية (rsv) الاجسام المضادة المعادلة البشرية احادية النسيلة ذات الالفة العالية المختصة ببروتين - ف للفيروس المخلوي التنفسي
JPH0198478A (ja) IgGモノクローナル抗体−生産性ハイブリドマ
JPH0586378B2 (ja)
Bazin et al. Rat hybridomas and rat monoclonal antibodies
RU2322260C2 (ru) Пассивная иммунизационная терапия на основе пептидов для лечения атеросклероза
JPH01501201A (ja) 抗体
CN104684929A (zh) 治疗血管疾病及其并发症
US8394368B2 (en) Method for producing a composition for promoting survival of transplanted hematopoietic stem cell
JPH0213371A (ja) ハイブリドーマ細胞系、モノクローナル抗体およびそのキメラ
JPH09502184A (ja) 体液性免疫の持続性抑制方法
JPS62205034A (ja) 生物活性抗腫瘍抗体による腫瘍療法
SMITHSON et al. Heterogeneous expression of carcinoembryonic antigen in the normal colon and upregulation in active ulcerative colitis
JPH0779795A (ja) ヒトモノクローナル抗体産生株の製造法
US5565338A (en) Suppressor T-cell hybridoma and production of allergen specific glycosylation inhibiting factor
JP2002507967A (ja) 疾病治療のための抗cd40lイムノトキシン
EP0447489A1 (en) Human platelet-specific antibodies
CN109336975B (zh) 一种靶向pd-1的肿瘤抑制性抗体及其应用
JP4563573B2 (ja) 抗原およびこの抗原を識別するモノクローナル抗体
JPH08509963A (ja) IgG▲下3▼抗体を含む組成物
JPS63294795A (ja) ヒト免疫不全ウイルス(hiv)の検出と治療のための方法および物質
JP2004532626A (ja) 二重特異性分子のポリクローナル集団、ならびにそれらの産生方法および使用
RU2769223C1 (ru) Средство и способ терапии и экстренной профилактики заболеваний, вызываемых вирусом SARS-CoV-2 на основе рекомбинантного антитела и гуманизированного моноклонального антитела

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20011002