JPH0775580A - 新規なt−PA改変体 - Google Patents

新規なt−PA改変体

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JPH0775580A
JPH0775580A JP5354355A JP35435593A JPH0775580A JP H0775580 A JPH0775580 A JP H0775580A JP 5354355 A JP5354355 A JP 5354355A JP 35435593 A JP35435593 A JP 35435593A JP H0775580 A JPH0775580 A JP H0775580A
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JP
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amino acid
natural
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acid sequence
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JP5354355A
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English (en)
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Takaatsu Negoro
尚温 根來
Hidefumi Sato
英史 佐藤
Munemasa Kaneko
宗聖 金子
Hideo Agui
英夫 安喰
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Sumitomo Pharmaceuticals Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Pharmaceuticals Co Ltd
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  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】t−PAのアミノ酸配列中、天然型のt−PA
のアミノ酸配列の276位から306位に相当するアミ
ノ酸配列の少なくとも一部が対応関係を有するUKのア
ミノ酸配列に置換されており、さらに天然型のt−PA
の117位から119位、184位から186位及び4
48位から450位に相当するN結合糖鎖付加コンセン
サス配列の少なくとも1つが、N結合糖鎖付加コンセン
サス配列以外の配列に置換されていることを特徴とする
t−PA改変体。 【効果】本発明のt−PA改変体は、血漿塊特異性が向
上した新規なt−PA改変体であり、その結果として全
身性の出血傾向というt−PAの副作用を減じることが
できる。さらに、改変体によっては血中半減期が延長す
るので、血栓症治療剤として有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な組織プラスミノ
ーゲン活性化因子(以下、t−PA)改変体に関する。
更に詳しくは、t−PAのアミノ酸配列中、天然型のt
−PAの276位から306位までに相当するアミノ酸
配列の少なくとも一部が尿プラスミノーゲン活性化因子
(以下、UK)の対応するアミノ酸配列に置換されてお
り、さらに天然型のt−PAの117位から119位、
184位から186位及び448位から450位に相当
するN結合糖鎖付加コンセンサス配列の少なくとも1つ
が、N結合糖鎖付加コンセンサス配列以外の配列に置換
されていることにより、血漿塊特異性が向上し、かつ改
変体によっては血中半減期が延長している新規なt−P
A改変体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】t−PAは、血漿中に存在する不活性型
酵素前駆体であるプラスミノーゲンを加水分解すること
によって活性型酵素であるプラスミンに変換する。プラ
スミンは、血管内に種々の原因によって生じた血栓、あ
るいは血漿塊のマトリックスを構成するフィブリンを分
解し、その結果血栓、血漿塊を溶解する(文献a)。U
Kやストレプトキナーゼなどの旧来の血栓溶解剤がフィ
ブリン特異性を全く有していないのに対し、t−PAは
比較的高いフィブリン特異性を有している。このためt
−PAはフィブリン、ひいては臨床において血栓を特異
的に溶解する性質を有し、そして出血等の副作用の少な
い血栓溶解剤として注目されてきた。しかしながら、実
際t−PAを臨床に用いた場合、閉塞冠動脈の再開通に
は予想されていたよりも遙かに大量の投与が必要である
ことが明らかとなった(文献b)。大量投与の結果、t
−PAはフィブリン特異的であるとはいえ若干は血液中
のフィブリノーゲンをも分解してしまうため、結局全身
性の出血傾向が生じてしまうという副作用が無視できな
い問題となっている。
【0003】この様な観点から、より高い血栓特異性の
付与を目的としたt−PA改変体の作製も行われ、多数
の報告(文献c,d)がなされているが、未だ目的を充
分に達成したものは数少ない。成功例としては文献e
に、天然型のt−PAの296位から299位までの4
個のアミノ酸を全てアラニンに置換した改変体が示され
ているが、そのフィブリン特異性は4.4倍、血漿塊特
異性はせいぜい約3倍向上したに過ぎない。ここで血漿
塊特異性とは、文献eの著者らによって報告された方法
であり、血栓特異性評価において、試験管内における評
価を生体内により近い条件で行なう目的で、実際にヒト
血漿及び血漿塊を用いた試験方法により評価される血栓
特異性の指標である。従って、純粋なフィブリン及びフ
ィブリン塊を用いて行なわれるフィブリン特異性に比較
して、実際の臨床における血栓特異性をより反映すると
考えられる。
【0004】また、t−PAの生体内での持続時間−い
わゆる血中半減期が数分と短いことが大量投与の一因と
なっており、上述の血栓特異性の問題と共にt−PAを
臨床に用いる際の問題点となっている。このことから生
体内での持続時間を延長することを目的としたt−PA
改変体の作成も多数行われており、その中に、天然型の
t−PAの117位から119位、184位から186
位及び448位から450位に相当するN結合糖鎖付加
コンセンサス配列のいずれか、あるいは全部をN結合糖
鎖付加コンセンサス配列以外の配列に変異させたt−P
A改変体、即ち該変異後の変異配列部分に糖鎖を持たな
いt−PA改変体が知られている。
【0005】これらの報告の中で、特に天然型のt−P
Aの117位から119位に相当するN結合糖鎖付加コ
ンセンサス配列に糖鎖を持たないt−PA改変体あるい
はその改変体にさらに別の部位の改変を付加した改変体
において、血中半減期が延長していることも知られてい
る(文献f,g,h)。これらの報告は、生体内におけ
る安定性を向上させ、投与量を減少させるという意味で
は成功をおさめた。しかしながら前述の通り、これらの
報告においても天然型のt−PAの血栓特異性は充分で
はないため、生体内での持続時間のみが延長されても結
局出血性副作用が発現するという問題は未解決のままで
ある。従って、高い血栓特異性、即ち血漿塊を特異的
に溶解するという血漿塊特異性を有するとともに、血
中半減期が天然型のt−PAに比べて延長されている、
という2つの特性を有したt−PA改変体は、未だ知ら
れていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、天然型のt
−PAと比較して血漿塊を特異的に溶解するという血漿
塊特異性が向上し、かつ改変体によっては血中半減期が
延長している新規なt−PA改変体を提供することを目
的とする。即ち、本発明の課題は、(1)血漿中−すな
わちフィブリノーゲン存在下ではプラスミノーゲン活性
化活性が非常に低く、従ってフィブリノーゲンの分解は
僅かであるが、血漿塊中−すなわちフィブリン存在下で
は天然型のt−PAより高いプラスミノーゲン活性化活
性を発現し、それゆえフィブリンを充分に溶解する、す
なわち血漿塊特異性が向上しており、かつ(2)改変体
によっては血中半減期が延長しているため、臨床面で効
果の持続が期待されると共に投与量を減少させることの
可能な新規なt−PA改変体を提供することである。
【0007】従って、本発明のt−PA改変体は血漿塊
特異性が向上しているので、循環血漿中にある時はプラ
スミノーゲンの活性化およびそれに引き続くフィブリノ
ーゲンの分解が非常に少なく、フィブリンの存在する血
栓(血漿塊)局所に到達して初めて天然型のt−PAよ
り高いプラスミノーゲン活性化活性を発現して血栓を溶
解するので、天然型のt−PAに比べてはもとより、従
来の技術の欄に記載された文献を代表とする、フィブリ
ン特異性が向上した公知の改変体と比較した場合であっ
ても血漿塊特異性が高く、全身性の出血傾向という副作
用を生じ難いことが期待される。従って本発明は、実際
の臨床における治療用血栓溶解剤として安全性の高い新
規な血栓溶解剤を提供するものである。
【0008】先の従来の技術の欄に記載したように、天
然型のt−PAの117位から119位、184位から
186位及び448位から450位に相当するN結合糖
鎖付加コンセンサス配列をN結合糖鎖付加コンセンサス
配列以外の配列に置換させると該置換後の配列中に糖鎖
が結合しなくなることが知られており、該糖鎖を持たな
いt−PA改変体の中に、血中半減期が延長しているも
のが見い出されている(文献f,g,h)。本発明のt
−PA改変体も、上記N結合糖鎖付加コンセンサス配列
の少なくとも1つがN結合糖鎖付加コンセンサス配列以
外の配列に置換を行なうため、改変体によっては血中半
減期が延長される。これにより、上述の血漿塊特異性に
加えて本発明の血栓症治療剤としての効用をさらに高め
るものと期待される。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、最近t−
PAの276位から306位までのアミノ酸配列のうち
少なくとも一部がUKの対応アミノ酸配列に置換された
t−PA改変体が、優れた血漿塊特異性を示すことを見
いだしている。このような性質を有するt−PA改変体
の代表的化合物としては、例えばCS1が挙げられる
(PCT/JP92/00415号明細書)。本発明者
らは、さらに研究を継続した結果、上記のような置換を
有し、さらに天然型のt−PAの117位から119
位、184位から186位及び448位から450位に
相当するN結合糖鎖付加コンセンサス配列の少なくとも
1つが、N結合糖鎖付加コンセンサス配列以外の配列に
置換されることにより、血漿塊特異性がさらに向上し、
かつ改変体によっては血中半減期が延長している新規な
t−PA改変体が得られることをはじめて見いだした。
【0010】すなわち、本発明の要旨は、 (1)t−PAのアミノ酸配列中、天然型のt−PAの
アミノ酸配列の276位から306位に相当するアミノ
酸配列の少なくとも一部が下記に示すような対応関係を
有するUKのアミノ酸配列に置換されており、さらに天
然型のt−PAの117位から119位、184位から
186位及び448位から450位に相当するN結合糖
鎖付加コンセンサス配列の少なくとも1つが、N結合糖
鎖付加コンセンサス配列以外の配列に置換されているこ
とを特徴とするt−PA改変体、
【0011】
【化2】
【0012】(なお、アミノ酸配列において対応関係と
は、天然型のt−PAの276位がUKの159位に対
応し、以下順次上段の配列が下段の配列に対応する関係
を示す。また、上記の配列表示における−は、UKのア
ミノ酸配列への置換においてアミノ酸が欠失した状態で
対応するものとする。) (2)形質転換された原核性生物細胞または真核性生物
細胞において、前記(1)記載のt−PA改変体をコー
ドしているDNAを発現させ得る組換え発現ベクター、 (3)前記(2)記載の組換え発現ベクターで形質転換
された原核性生物細胞または真核性生物細胞、並びに (4)前記(1)記載のt−PA改変体を有効成分とし
て含有することを特徴とする血栓症治療剤に関する。
【0013】本発明において、天然型のt−PAのアミ
ノ酸配列とは、Pennicaらにより既に報告された
527個のアミノ酸からなる配列をいう(文献i)。ま
た、UKのアミノ酸配列とはHolmesらにより既に
報告された411個のアミノ酸からなる配列をいう(文
献j)。本発明のt−PA改変体は、天然型のt−PA
のアミノ酸配列の276位から306位に相当するアミ
ノ酸配列の少なくとも一部が、下記の対応関係を有する
UKのアミノ酸配列に置換されているが、ここに言う天
然型のt−PAの276位は一本鎖から二本鎖への開裂
部位の直後の位置にあって、これに対応するUKのアミ
ノ酸配列領域は、UKの一本鎖前駆体であるプロUKの
二本鎖型(すなわちUK)への開裂部位直後のアミノ酸
残基である159位を指す。
【0014】
【化3】
【0015】なお、アミノ酸配列において対応関係と
は、天然型のt−PAの276位がUKの159位に対
応し、以下順次上段のt−PAのアミノ酸配列が下段の
UKのアミノ酸配列に対応する関係を指す。また、本発
明でいうUKの置換領域におけるアミノ酸配列は、天然
型のt−PAの置換領域におけるアミノ酸配列よりアミ
ノ酸が1個少なく、天然型のt−PAの295位に対応
するUKのアミノ酸(上記の配列表示において−で示さ
れる部分)は、UKのアミノ酸配列への置換においてア
ミノ酸が欠失した状態で対応するものとする。従って、
本発明において天然型のt−PAの276位から306
位に対応するUKのアミノ酸配列とは、UKの159位
から188位のアミノ酸配列を指す。本発明のt−PA
改変体は、このような対応関係を有するUKのアミノ酸
配列に置換されているが、その置換領域は天然型のt−
PAの276位から306位のすべてであってもよく、
その一部であってもよい。
【0016】本発明において、N結合糖鎖付加コンセン
サス配列とはタンパク質全般において共通の公知のアミ
ノ酸配列であり、「アスパラギン−X(プロリン以外の
アミノ酸)−セリン又はスレオニン」を指す。従って、
天然型のt−PAにおける117位から119位のN結
合糖鎖付加コンセンサス配列とは「アスパラギン−セリ
ン−セリン」のアミノ酸配列を指し、184位から18
6位のそれは「アスパラギン−グリシン−セリン」のア
ミノ酸配列を指し、448位から450位のそれは「ア
スパラギン−アルギニン−スレオニン」のアミノ酸配列
を指す。本発明において、N結合糖鎖付加コンセンサス
配列以外の配列とは、上記のN結合糖鎖付加コンセンサ
ス配列「アスパラギン−X(プロリン以外のアミノ酸)
−セリン又はスレオニン」以外の配列を指し、通常これ
らのコンセンサス配列におけるアミノ酸の置換、挿入、
削除等によりN結合糖鎖付加コンセンサス配列以外の配
列からなる改変体を作製することができる。例えば、ア
ミノ酸の置換による方法としては、天然型のt−PAの
117位、184位及び448位に相当するアスパラギ
ンを他のアミノ酸(例えば、グルタミン等)に置換する
のも1つの方法である。
【0017】本発明においては、これらのN結合糖鎖付
加コンセンサス配列の少なくとも1つが、N結合糖鎖付
加コンセンサス配列以外の配列に置換されているもので
ある。例えば、次のような態様が挙げられる。 天然型のt−PAの117位から119位、184
位から186位及び448位から450位に相当するN
結合糖鎖付加コンセンサス配列のすべてがN結合糖鎖付
加コンセンサス配列以外の配列に置換されたもの、 N結合糖鎖付加コンセンサス配列のうち、天然型の
t−PAの117位から119位及び184位から18
6位に相当するN結合糖鎖付加コンセンサス配列のみが
N結合糖鎖付加コンセンサス配列以外の配列に置換され
たもの、 N結合糖鎖付加コンセンサス配列のうち、天然型の
t−PAの117位から119位及び448位から45
0位に相当するN結合糖鎖付加コンセンサス配列のみが
N結合糖鎖付加コンセンサス配列以外の配列に置換され
たもの、 N結合糖鎖付加コンセンサス配列のうち、天然型の
t−PAの117位から119位に相当するN結合糖鎖
付加コンセンサス配列のみがN結合糖鎖付加コンセンサ
ス配列以外の配列に置換されたもの。
【0018】本発明のt−PA改変体は、前記のように
UKのアミノ酸の置換領域を有し、かつN結合糖鎖付加
コンセンサス配列を改変したものであれば特に制限され
ることはなく、種々の改変体を挙げることができる。な
かでも好ましい例としては、例えば、次のような態様が
挙げられる。 天然型のt−PAのアミノ酸配列の276位から3
06位のアミノ酸配列がUKの159位から188位の
アミノ酸配列に置換されており、さらに天然型のt−P
Aの117位、184位及び448位に相当するアスパ
ラギンがグルタミンに置換されたt−PA改変体、 天然型のt−PAのアミノ酸配列の276位から3
06位のアミノ酸配列がUKの159位から188位の
アミノ酸配列に置換されており、さらに天然型のt−P
Aの117位及び184位に相当するアスパラギンがグ
ルタミンに置換されたt−PA改変体、 天然型のt−PAのアミノ酸配列の276位から3
06位のアミノ酸配列がUKの159位から188位の
アミノ酸配列に置換されており、さらに天然型のt−P
Aの117位及び448位に相当するアスパラギンがグ
ルタミンに置換されたt−PA改変体、 天然型のt−PAのアミノ酸配列の276位から3
06位のアミノ酸配列がUKの159位から188位の
アミノ酸配列に置換されており、さらに天然型のt−P
Aの117位に相当するアスパラギンがグルタミンに置
換されたt−PA改変体。 なかでも、後述の試験例で示すように血漿塊特異性が特
に顕著に向上したものとしては前記ののt−PA改変
体(CS1Y)が、血漿塊特異性に加え、さらに血中半
減期が特に顕著に延長したものとしては前記ののt−
PA改変体(CS1Z)が挙げられる。
【0019】本発明のt−PA改変体は、前記のような
置換の領域を有するが、これらの領域以外のアミノ酸配
列については特に限定されない。即ち、天然型のt−P
Aのアミノ酸配列と同一であってもよく、あるいは本発
明のt−PA改変体の特性に影響を与えない範囲で変異
体のアミノ酸であってもよい。本発明のt−PA改変体
の調製は、例えば天然型のt−PAの117位から11
9位、184位から186位及び448位から450位
に相当するN結合糖鎖付加コンセンサス配列の少なくと
も一つをコンセンサス配列以外の配列に置換したt−P
A改変体をまず作製し、次にこのt−PA改変体におい
て、天然型のt−PAのアミノ酸配列の276位から3
06位に相当するアミノ酸配列の少なくとも一部を、対
応関係を有するUKのアミノ酸配列に置換することによ
って行うことができる。
【0020】具体的には、例えば天然型のt−PAのc
DNAの117位、184位及び448位に相当するア
スパラギンをコードするコドンを部位特異的変異により
他のアミノ酸(例えばグルタミン)をコードするコドン
に置換し、さらに天然型のt−PAの276位から30
6位に相当する領域を含むEcoRI断片を制限酵素消
化によって切り出し、これに代えて、天然型のt−PA
の276位から306位のアミノ酸配列がUKの159
位から188位のアミノ酸配列に置換されたt−PA類
似体遺伝子CS1(PCT/JP92/00415号明
細書)より調製した対応するEcoRI制限断片を挿入
し、適当な発現ベクターと連結してから、これを宿主内
に導入して形質転換を行ない、形質転換宿主細胞を培養
することにより、本発明のt−PA改変体を調製するこ
とができる。以下、個々の技術の詳細について述べる。
また、本発明においては、このような調製順序を逆にし
て、まず対応するUKの配列の置換を行った後、部位特
異的変異によりN結合糖鎖付加コンセンサス配列の改変
を行ってもよい。
【0021】本発明のt−PA改変体の作成には、通常
天然型のt−PAをコードするcDNAを原材料として
用いるのが好都合である。天然型のt−PAをコードす
るcDNAは、たとえばボーズメラノーマ細胞からのク
ローニングによって、たとえば文献kに記載されている
ように既に取得されており、従ってそのcDNA配列、
アミノ酸配列も知られている。プラスミド中にクローニ
ングしたt−PAcDNAの特定の配列を置換する方法
は、既に自由に行える状況になっており、置換の手法と
しては、ゾラー及びスミスらの方法が参照される(文献
k)。
【0022】置換されるべき塩基配列を含む変異プライ
マーの作製は、ホスホアミダイト法(文献l)が有効に
利用され、オリゴヌクレオチドの合成と精製は、アプラ
イドバイオシステムズ社のモデル381A DNAシン
セサイザー及び同社のオリゴヌクレオチド精製用カート
リッジを利用するのが便利である。また、目的とする置
換、あるいは挿入されたDNA配列を確認するために
は、ジデオキシ法(文献m)の原理を用い、例えばTa
qポリメラーゼを利用したサイクルシークエンスの手法
により行うことができる。そのためには、アプライドバ
イオシステムズ社のモデル373A DNAシークエン
サーが有効に用いられる。その他、実施例に記載されて
いるような制限酵素によるDNAの切断、それにより生
ずるDNA断片のポリアクリルアミドゲル電気泳動によ
る分離、回収、あるいは連結等の遺伝子操作は全て公知
であり、主として文献nが参照される。
【0023】このようにして得られたt−PA改変体を
コードするcDNAは、CDM8(ori- )等、周知
の発現ベクターに連結された後、適当な宿主に導入され
ることにより、本発明の最終目的物質であるt−PA改
変体タンパクを発現・生産することができる。宿主とし
ては、原核性生物細胞または真核性生物細胞のいずれで
もよく、例えば大腸菌株や動物細胞株は、とくに記載の
ない限り既に広く普及しており入手は容易である。例え
ば動物細胞宿主としては、COS−1,CHO細胞が挙
げられる。発現プラスミドを用い適当な動物細胞宿主を
形質転換するには、電気パルス法(文献o)を用いれば
よい。形質転換された細胞の培養上清は、適当な希釈に
よりそのまま種々の活性測定に使用され得る程度のt−
PA改変体を含んでいる。培養上清中に産生されたt−
PA改変体は、亜鉛キレートアガロース、コンカナバリ
ンAアガロース、セファデックスG−150等を用いる
公知の方法(文献p)等によって、容易に精製すること
ができる。
【0024】このようにして得られた本発明のt−PA
改変体は、高い血漿塊特異性を有するので、血栓症治療
剤として生体内に投与された場合、天然型のt−PAと
比較して全身性の出血傾向という副作用が減少した血栓
症治療剤の有効成分とすることができる。血漿塊特異性
とは、前記のようにヒトの血漿及び血漿塊を用いて血漿
塊に対する特異性を評価したものであり、実際の臨床に
おける血栓特異性をより反映するものと考えられる。具
体的には後述の実施例において記載した方法により評価
がなされる。また本発明のt−PA改変体は、改変体に
よっては血中半減期が延長されるため、天然型のt−P
Aと比較して低投与量で効果を発揮する血栓症治療剤の
有効成分とすることができる。従って、高い血漿塊特異
性を有することによる副作用の減少と共に、更に血中半
減期の延長を考慮して低投与量とすることが可能とな
る。本発明のt−PA改変体は、常法により容器に所定
量分注し、凍結乾燥を行うことにより極めて容易に製剤
化することができる。この凍結乾燥品は、製剤的に容認
されるキャリアー物質、例えば生理食塩水に溶解し、静
脈内又は冠動脈内への注射によって投与される。投与量
は、現在臨床で用いられている天然型のt−PAの投与
量程度でも良いが、本発明のt−PA改変体は副作用が
少ないので該投与量より多く使用することもできる。ま
た血中半減期が延長していることにより天然型のt−P
Aより少量でも同等の効果が期待し得る。投与方法は、
単回静注、持続静注あるいは投与予定量の一部を最初に
静注し、残りを持続静注するなどの方法で行われる。
【0025】
【実施例】以下、本発明の一例として実施例により本発
明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例
によりなんら限定されるものではない。なお、以下の実
施例で使用されるpCDM8−CS1は特開平4−14
4682号公報に記載のpCDM8−CSTUと同一の
もので、天然型のt−PAの276位から306位のア
ミノ酸配列がUKの159位から188位の配列に置換
された公知のプラスミドである。該プラスミドの名称は
PCT/JP92/00415号明細書においてpCD
M8−CSTUをpCDM8−CS1と名称変更した
為、本明細書においても同様にpCDM8−CS1と称
して以下のプラスミドの構築に用いた。
【0026】実施例1:3カ所の糖鎖欠失置換、即ち1
17位、184位及び448位のアスパラギンコドンの
グルタミンコドンへの置換を有するt−PA改変体中間
プラスミドpCDM8−XΔEEの構築 pTZB005は、448位アスパラギンのグルタミン
への置換(以下、N448Q置換と略す)以外に462
位アルギニンのグリシンへの置換(以下、R462G置
換と略す)を含む改変体をコードしている(文献q)。
N448Q置換部位とR462G置換部位の間にはNs
pI切断部位が存在するので、これを利用してN448
Q置換のみを含むEcoRI−NspI断片270bp
を切り出した。NspI切断部位は多数存在することか
ら、天然型のt−PAの塩基配列をコードするpCDM
8−001(後述)よりNspI−SmaI断片170
bpを切り出し、先の断片とともにpUC19(東洋紡
績(株)製)のEcoRI−SmaI間に挿入し、N4
48Q置換のみを含むEcoRI−SmaI断片を保持
するpUCES(N448Q)を構築した(図1)。該
断片の存在を制限酵素消化によって確認した後、Eco
RI及びSmaIで消化し440bpのフラグメントE
Sを得た。
【0027】一方pTZB015は、pTZB009〜
012(文献q)構築の過程で副産物として得られたプ
ラスミドであり、117位アスパラギンのグルタミンへ
の置換(以下、N117Q置換と略す)および184位
アスパラギンのグルタミンへの置換(以下、N184Q
置換と略す)以外に27位アルギニンのグリシンへの置
換(以下、R27G置換と略す)及び83位システイン
のセリンへの置換(以下、C83S置換と略す)を含む
改変体をコードしている。C83S置換部位とN117
Q置換部位の間にはNarI切断部位が存在することか
ら、これを利用してN117Q置換及びN184Q置換
のみを含むNarI−EcoRI断片280bp(フラ
グメントNE)を切り出した。
【0028】哺乳類細胞において種々の改変体を発現さ
せるためのベクターには、pCDM8(BglII)を利
用した。本ベクターはCDM8(ori- )のCMVプ
ロモーター下流のスタッファー配列を除いてBglIIサ
イトを導入したものであり(文献q)、pCDM8−0
01はpCDM8(BglII)のBglII部位に天然型
のt−PAcDNAを挿入したものである(文献q)。
pCDM8−001をNarI及びSmaIで消化後脱
リン酸化処理を行い、これにフラグメントNE及びフラ
グメントESを挿入した。大腸菌MC1061/p3株
を形質転換し、得られたクローンが目的のものであるか
否かの識別は、約480bpのEcoRI断片の有無
(ない方が目的物)で行い、目的物が得られたことを確
認した。得られた目的のクローンを、pCDM8−XΔ
EEと命名した。以上の構築過程を図1および図2に示
した。
【0029】実施例2:3カ所の糖鎖欠失置換、即ち1
17位、184位及び448位のアスパラギンコドンの
グルタミンコドンへの置換を有するCS1の類縁体であ
るCS1X、CS3Xを哺乳類細胞で発現し得るプラス
ミドpCDM8−CS1X、pCDM8−CS3Xの構
築 pCDM8−CS1由来の約480bpのEcoRI断
片中には天然型のt−PAの276位から306位に相
当するアミノ酸配列が、対応関係を有するUKのアミノ
酸配列(159位から188位)に置換された領域(配
列番号:1)を含む。この領域中にEcoRI切断部位
が存在するため、目的の480bpの断片を得るため
に、部分消化を行った。
【0030】pCDM8−CS3は、文献iの第6図に
示される合成オリゴヌクレオチド、イ及びロの替わりに
本発明におけるCS4M(配列番号:2)及びCS4R
(配列番号:3)を用いて同様の手法で構築されたプラ
スミドであり、CS1の類縁体であるCS3(天然型の
t−PAの294位から306位に相当するアミノ酸配
列が対応関係を有するUKのアミノ酸配列(配列番号:
4)に置換されたt−PA類縁体)を発現可能な形でコ
ードしている。pCDM8−CS3中のUKへの置換領
域にはEcoRI切断部位は存在しないので、これをE
coRIで完全消化してEcoRI断片を調製した。こ
れらを、EcoRI消化後脱リン酸化処理を行ったpC
DM8−XΔEEとライゲーションさせ、大腸菌MC1
061/p3株を形質転換した。このようにして得られ
た形質転換株から、PCRを用いた挿入断片の有無の確
認及び制限酵素消化による確認により、目的のクローン
を選択した。得られたプラスミドを各々pCDM8−C
S1X及びpCDM8−CS3Xと命名した。以上の構
築過程を図3に示した。
【0031】実施例3:2カ所の糖鎖欠失置換、即ち1
17位及び184位のアスパラギンコドンのグルタミン
コドンへの置換を有するCS1類縁体であるCS1Yを
哺乳類細胞で発現し得るプラスミドpCDM8−CS1
Yの構築 pCDM8−CS1Yは、実施例2により得られたpC
DM8−CS3XとpCDM8−CS1より構築した。
すなわち、pCDM8−CS3XのN184Q置換とU
K配列への置換領域の間、およびpCDM8−CS1の
これに相当するN184QとUK置換領域の間にはSc
aI切断部位が存在する。ScaI切断部位はpCDM
8ベクター側にも1カ所存在するのでこれを利用し、p
CDM8−CS3XとpCDM8−CS1をScaIで
消化後、ライゲーションすることにより構造遺伝子の後
半領域をpCDM8−CS1のそれと乗せ換えた。得ら
れたクローンについて制限酵素消化により目的物である
ことを確認し、これをpCDM8−CS1Yと命名し
た。以上の構築過程を図4に示した。
【0032】実施例4:1カ所の糖鎖欠失置換、即ち1
17位のアスパラギンコドンのグルタミンコドンへの置
換を有するCS1類縁体であるCS1Zを哺乳類細胞で
発現し得るプラスミドpCDM8−CS1Zの構築 pCDM8−XΔEEのN117Q置換とN184Q置
換をコードする塩基配列の間には唯一のBstXI認識
部位が存在する。実施例1により得られたpCDM8−
XΔEEをBstXI及びSmaIで消化し、これにp
CDM8−CS1由来のBstXI−SmaI断片を挿
入した。このようにして得られたクローンについて、制
限酵素消化により目的の挿入が起きたことを確認し、p
CDM8−CS1Zと命名した。以上の構築過程を図5
に示した。
【0033】実施例5:2カ所の糖鎖欠失置換、即ち1
17位及び448位のアスパラギンコドンのグルタミン
コドンへの置換を有するCS1類縁体であるCS1Wを
哺乳類細胞で発現し得るプラスミドpCDM8−CS1
Wの構築 pCDM8−XΔEEのEcoRI切断部位及びN44
8Q置換をコードする塩基配列の間にはSacI切断部
位が存在する。pCDM8−CS1のこれに相当する部
分にもSacI切断部位が存在する。さらにpCDM8
ベクター側、より詳しくはCMVプロモーター直後にS
acI切断部位が存在するので、これを利用し、pCD
M8−XΔEEとpCDM8−CS1をSacI消化
後、ライゲーションすることにより、pCDM8−XΔ
EEの構造遺伝子の前半部分をpCDM8−CS1のそ
れと乗せ換えることができる。得られたクローンについ
て制限酵素消化により目的物であることを確認すればよ
い。これをpCDM8−CS1Wと命名できる。
【0034】実施例6:本発明の血栓溶解タンパク質の
COS−1細胞での発現及び分泌 pCDM8−CS1X、pCDM8−CS1Y、pCD
M8−CS1Z、およびコントロールとしてpCDM8
−CS1を用いて既述の電気パルス法によりCOS−1
細胞を形質転換した。リジンセファロースクロマト処理
した牛胎児血清10%およびアプロチニン10μg/m
lを含有するDMEM培地で24時間培養後、培地を無
血清かつアプロチニン無含有DMEM培地に交換し、さ
らに96時間培養を継続した。培養液を遠心後その上清
を回収し、これに1%牛血清アルブミン(BSA)含有
DMEM培地を1/9量添加し、凍結保存した。この凍
結保存上清を改変体試料と称し、以後の評価に用いた。
【0035】試験例1:蛋白量の定量 実施例6により得られた各培養上清中の改変体試料の蛋
白量については、市販のキット(バイオプール社製)を
用いた酵素免疫測定法(ELISA)により測定した。
【0036】試験例2:血漿塊特異性の評価 ヒト血漿を用いて血漿中及び血漿塊中における前記実施
例6により得られた各改変体試料のプラスミノーゲン活
性化活性を、発色性合成基質S−2251を用いた反応
系で測定した。方法は、文献eに示されている方法に準
じて行った。 1)血漿塊中プラスミノーゲン活性化活性(血漿塊系に
おける活性) 96穴プレートのウェル中に60国際単位/mlのトロン
ビン(0.01% Tween 80 含有PBS)10μl を添加し
た。次に0.01% Tween 80 含有PBSで200ng/mlに
希釈された各改変体試料40μl を添加し、さらに反応
混合液〔血漿90μl 、S−2251 9.1mM(0.
01%(v/v) Tween 80含有PBS)10μl〕100μl
を添加した。37℃でインキュベートを開始後、プレー
トリーダーを用いて405nmにおける吸光度(O
405 )を経時的に測定した。同時にフィブリンによる
濁度の影響を補正するため、490nmにおける吸光度
(OD490)を測定し、各時間でそのOD490 値をOD
405 から差し引いた。吸光度(OD405 −OD490 )値
を時間の二乗に対してプロットし、最小二乗法により算
出される直線部分の勾配を活性の指標とした。その結果
を表1に示す。
【0037】2)血漿中プラスミノーゲン活性化活性
(血漿系における活性) 血漿塊中プラスミノーゲン活性化活性と同様に行った。
ただし、トロンビンの代わりに0.01% Tween 80 含
有PBSを用いた。表1に各改変体試料のプラスミノー
ゲン活性化活性を反応速度(mODx10-6/min2 )で示す。
血漿塊特異性は、このようにして得られたデータから
「血漿塊系における活性」/「血漿系における活性」の
比で表した。
【0038】
【表1】
【0039】CS1改変体は、血漿中のプラスミノーゲ
ン活性化活性が非常に低く、血漿塊中では天然型のt−
PAと同等のプラスミノーゲン活性化活性を示し、それ
ゆえ天然型のt−PAより高い血漿塊特異性を有するこ
とが既に判明しているが(PCT/JP92/0041
5号明細書)、表1の結果より、本発明のt−PA改変
体は、CS1改変体と比較して血漿中のプラスミノーゲ
ン活性化活性は同等であるが、血漿塊中においてはCS
1より高い活性を有しており、結果として血漿塊特異性
はCS1改変体よりさらに高いことが明らかとなった。
従って、本発明のt−PA改変体は、全身性の出血傾向
というt−PAの副作用を減じることができる。
【0040】試験例3:血中半減期の評価 血中半減期評価用に、CHO細胞発現用プラスミドを構
築した。一例を示すと、pCDM8−001(文献q)
のBamHI断片を公知のpB2L2(文献r記載)の
BglIIサイトに挿入したプラスミド、pBL001を
BglII、SmaIで切断し、ここにpCDM8−CS
l、pCDM8−CSlY、pCDM8−CSlZのB
glII−SmaI断片を挿入することにより、pBL−
CSl、pBL−CSlY、pBL−CSlZを得た。
これら各プラスミドと公知のプラスミドpAdD26S
Vp(A)3(文献r)を用いて、公知の方法(文献
r)によりCHO細胞の形質転換を行った。無血清培地
にて培養後、上清を抗t−PA抗体カラム処理、CMセ
ファロースカラム(ファルマシア製)処理することによ
り、2本鎖型が90%以上の各改変体試料(CSl、C
SlY、CSlZ)を得、これらを用いて血中半減期を
測定した。対照として、同様の手法により得られた天然
型t−PA(ただし、2本鎖化はプラスミンセファロー
ス処理により行った)を用いた。
【0041】即ち、日本白色種家兎(9週齢)各群3匹
を無麻酔下、固定して左総頸動脈にカニューレを挿入
し、薬物投与5分前にカニューレより1ml採血した
(0.1mlの3.8%クエン酸3ナトリウム含有)。
0.01% Tween80を含む生理食塩水(pH3)で1
mg/mlに希釈した各薬物を右耳介静脈より約10秒
間で急速注入し(体重1kgあたり1ml投与)、薬物
投与1、3、5、10、20、30、60、120、2
40および360分後に上記と同様に1ml採血した。
得られた血液を11,000rpm×2分間(4℃)に
て遠心して上清を得、t−PAの濃度測定に使用するま
で−70℃にて保存した。
【0042】各血漿中のt−PA濃度の測定は、バイオ
プール社製の測定キットを用いてELISAにより行
い、t−PA抗原濃度を測定した。すなわち、血漿を1
0mMのベンズアミジン塩酸塩、5mMのEDTAおよ
び1mg/mlのBSAを含むリン酸緩衝生理食塩液
(pH7.4、以下PBS/BA)で10倍以上に希釈
した。希釈血漿サンプル200μlを抗t−PAIgG
でコーティングした96穴マイクロプレートのウエルに
添加して室温にて3時間放置した。プレートをPBS/
BAで洗浄後、同緩衝液で600倍希釈したホースラデ
ィッシュペルオキシダーゼ標識抗t−PAIgGを20
0μl添加して室温にて2時間放置した。プレートを洗
浄後、ペルオキシダーゼの発色基質液を200μl添加
して室温において15分間放置し、50μlの4.5M
の硫酸を添加することにより反応を停止し、各ウエルの
490nmにおける吸光度を測定した。キット添付のt
−PA標準品を用いて同様な操作を行うことにより検量
線を作成し各サンプル中のt−PA抗原濃度を算出し
た。
【0043】得られたデータは表2に示すが、本発明の
t−PA改変体であるCS1Y、CS1Zは天然型t−
PAと比較して、血中半減期の延長が認められた。特
に、CS1Zはα相において約2倍の延長が認められ
た。なお、天然型のt−PAの276位から306位の
アミノ酸配列がUKの159位から188位の配列に置
換されてはいるが、N結合糖鎖付加コンセンサス配列に
おけるアミノ酸が置換されていないCS1は、天然型t
−PAと同様の血中半減期であった。表中、AUCは0
〜360分までの血中濃度曲線下面積を、またCLtは
血漿総クリアランスを表す。これら血中半減期、AU
C,CLtは、非線形最小二乗プログラム(MULT
I)を用い、2−コンパートメントモデルにあてはめる
ことにより算出した。このように本発明のt−PA改変
体は、改変体によっては天然型t−PAと比較して血中
半減期が延長するので、血中での有効濃度を効果的に保
持することが可能である。また、これにより低投与量と
したり、前記のように高い血漿塊特異性を有することか
ら副作用が少なく臨床上有用性の高い血栓症治療剤とす
ることができる。
【0044】
【表2】
【0045】引用文献 a)欧州特許出願公開 No.0041766 A2 b)The TIMI study group : N. Engl. J. Med., 320,
618, 1989. c)特開昭62-24 号公報 d)特開昭62-253380 号公報 e)国際公開 No.9002798 f)D. Lau et al. : BIO/TECHNOLOGY, 5, 953, 1987. g)特開昭62-282582 号公報 h)G. R. Larsen et al. : J. Biol. Chem., 263, 102
3, 1988. i)Pennica et al. : Nature, 301, 214, 1983. j)Holmes et al. : BIO/TECHNOLOGY, 3, 923, 1985. k)M. J. Zoller et al. : Methods in Enzymology, 1
00, 468, 1983. l)S. L. Beaucage et al. : Tetrahedron Letters, 2
2, 1859, 1981. m)F. Sanger et al. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA,
74, 5463, 1977. n)T. Maniatis et al. : Molecular Cloning, A Labo
ratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory. 198
2. o)高山伸一郎、細胞工学 6, 771, 1987. p)D.C. Rijken et al. : Biochemica Biophysyca Act
a, 580, 140-153, 1979. q)特願平2-87005 号 r)特開昭61-12288号公報
【0046】
【発明の効果】本発明のt−PA改変体は、血漿塊特異
性が向上した新規なt−PA改変体であり、その結果と
して全身性の出血傾向というt−PAの副作用を減じる
ことができる。さらに、改変体によっては血中半減期が
延長するので、血栓症治療剤として有用である。
【0047】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:30 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Ile Ile Gly Gly Glu Phe Thr Thr Ile Glu Asn Gln Pro Trp Phe Ala 1 5 10 15 Ala Ile Tyr Arg Arg His Arg Gly Gly Ser Val Thr Tyr Val 20 25 30
【0048】配列番号:2 配列の長さ:50 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA アンチセンス:No 配列 CGC ATC AAA GGA GGG CTC TTC GCC GAC ATC GCC TCC CAC CCC TGG CAG 48 GC 50
【0049】配列番号:3 配列の長さ:53 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA アンチセンス:Yes 配列 T GGC CGC CTG CCA GGG GTG GGA GGC GAT GTC GGC GAA GAG CCC TCC 46 TTT GAT G 53
【0050】配列番号:4 配列の長さ:12 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、プラスミドpCDM8−XΔEEの構
築の概略図の一部(前半部分)を示す。
【図2】図2は、プラスミドpCDM8−XΔEEの構
築の概略図の一部(後半部分)を示す。
【図3】図3は、プラスミドpCDM8−CS1Xおよ
びプラスミドpCDM8−CS3Xの構築の概略図を示
す。
【図4】図4は、プラスミドpCDM8−CS1Yの構
築の概略図を示す。
【図5】図5は、プラスミドpCDM8−CS1Zの構
築の概略図を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 5/10 9/64 Z 9152−4B //(C12N 1/21 C12R 1:91) (C12N 5/10 C12R 1:91) (C12N 9/64 Z C12R 1:91) 8412−4B C12N 5/00 A (C12N 5/00 A C12R 1:91) (72)発明者 安喰 英夫 大阪市中央区道修町2丁目2番8号 住友 製薬株式会社内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組織プラスミノーゲン活性化因子(以
    下、t−PAと略す)のアミノ酸配列中、天然型のt−
    PAのアミノ酸配列の276位から306位に相当する
    アミノ酸配列の少なくとも一部が下記に示すような対応
    関係を有する尿プラスミノーゲン活性化因子(以下、U
    Kと略す)のアミノ酸配列に置換されており、さらに天
    然型のt−PAの117位から119位、184位から
    186位及び448位から450位に相当するN結合糖
    鎖付加コンセンサス配列の少なくとも1つが、N結合糖
    鎖付加コンセンサス配列以外の配列に置換されているこ
    とを特徴とするt−PA改変体。 【化1】 (なお、アミノ酸配列において対応関係とは、天然型の
    t−PAの276位がUKの159位に対応し、以下順
    次上段の配列が下段の配列に対応する関係を示す。ま
    た、上記の配列表示における−は、UKのアミノ酸配列
    への置換においてアミノ酸が欠失した状態で対応するも
    のとする。)
  2. 【請求項2】 天然型のt−PAの117位から119
    位、184位から186位及び448位から450位に
    相当するN結合糖鎖付加コンセンサス配列のすべてがN
    結合糖鎖付加コンセンサス配列以外の配列に置換され
    た、請求項1記載のt−PA改変体。
  3. 【請求項3】 N結合糖鎖付加コンセンサス配列のう
    ち、天然型のt−PAの117位から119位及び18
    4位から186位に相当するN結合糖鎖付加コンセンサ
    ス配列のみがN結合糖鎖付加コンセンサス配列以外の配
    列に置換された、請求項1記載のt−PA改変体。
  4. 【請求項4】 N結合糖鎖付加コンセンサス配列のう
    ち、天然型のt−PAの117位から119位に相当す
    るN結合糖鎖付加コンセンサス配列のみがN結合糖鎖付
    加コンセンサス配列以外の配列に置換された、請求項1
    記載のt−PA改変体。
  5. 【請求項5】 N結合糖鎖付加コンセンサス配列のう
    ち、天然型のt−PAの117位、184位及び448
    位に相当するアスパラギンの少なくとも1つが他のアミ
    ノ酸に置換された、請求項1記載のt−PA改変体。
  6. 【請求項6】 天然型のt−PAの117位、184位
    及び448位に相当するすべてのアスパラギンが他のア
    ミノ酸に置換された、請求項5記載のt−PA改変体。
  7. 【請求項7】 N結合糖鎖付加コンセンサス配列のう
    ち、天然型のt−PAの117位及び184位に相当す
    るアスパラギンのみが他のアミノ酸に置換された、請求
    項5記載のt−PA改変体。
  8. 【請求項8】 N結合糖鎖付加コンセンサス配列のう
    ち、天然型のt−PAの117位に相当するアスパラギ
    ンのみが他のアミノ酸に置換された、請求項5記載のt
    −PA改変体。
  9. 【請求項9】 他のアミノ酸がグルタミンである、請求
    項5〜8いずれかに記載のt−PA改変体。
  10. 【請求項10】 形質転換された原核性生物細胞または
    真核性生物細胞において、請求項1〜9いずれかに記載
    のt−PA改変体をコードしているDNAを発現させ得
    る組換え発現ベクター。
  11. 【請求項11】 請求項10記載の組換え発現ベクター
    で形質転換された原核性生物細胞または真核性生物細
    胞。
  12. 【請求項12】 請求項1〜9いずれかに記載のt−P
    A改変体を有効成分として含有することを特徴とする血
    栓症治療剤。
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