JPH0775515B2 - 冷凍、凍結乾燥変性抑制物質、それを含有する冷凍、凍結乾燥品及びその製造法 - Google Patents

冷凍、凍結乾燥変性抑制物質、それを含有する冷凍、凍結乾燥品及びその製造法

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JPH0775515B2
JPH0775515B2 JP3292462A JP29246291A JPH0775515B2 JP H0775515 B2 JPH0775515 B2 JP H0775515B2 JP 3292462 A JP3292462 A JP 3292462A JP 29246291 A JP29246291 A JP 29246291A JP H0775515 B2 JPH0775515 B2 JP H0775515B2
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行司 松本
康二 高崎
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、魚肉及び/又は畜肉を
冷凍、凍結乾燥する際に、冷凍、凍結乾燥によってタン
パク質が変性するのを抑制する冷凍、凍結乾燥変性抑制
物質、それを含有する冷凍、凍結乾燥品及びその製造法
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、欧米諸国において、例えば「かに
あし」のようなアナログ製品の需要が高まり、原料とな
る冷凍スリ身さえもそれらの国で生産される動向が強ま
っている。そのため、我が国では、新しい水産魚貝類資
源の有効利用の研究や、輸入されてくる種々の魚貝類原
料を高度利用するために必要な技術開発の研究が要望さ
れている。
【0003】魚肉、畜肉又はこれらの加工品を、長期に
貯蔵可能にする方法として、例えば冷凍、凍結乾燥が知
られている。しかしながら、魚肉、畜肉又はこれらの加
工品を、そのまま何の処理も施さずに冷凍、凍結乾燥し
た場合、タンパク質が変性して品質を保持することがで
きない場合が多い。そのため、それぞれの製品に応じた
各種の処理を施した後、冷凍、凍結乾燥する方法がとら
れている。
【0004】例えば、冷凍スリ身は、スケトウダラから
造られるが、この魚肉は元来極めて不安定な性質を有し
ていて、そのまま冷凍したのでは、長期に冷凍貯蔵する
ことは不可能であるが、水晒しという処理をし、重合リ
ン酸塩と糖類とを添加した後、冷凍すると、数年間にお
よぶ長期の保存が可能になることが知られている。
【0005】また、乾燥食肉の製造に際し、乾燥前に肉
を浸すピックル液として、食塩、ビロリン酸ナトリウム
とともに、グルコース、シュクロース等の糖類を添加し
たものを用いると、ソフトな食感を有する乾燥食肉製品
が得られることが報告されている(日本食品工業学会
誌,vol.37,No.5,363−368,199
0参照)。
【0006】更に、凍結乾燥食品の品質保持のため、サ
イクロデキストリンを添加することも行われている(食
品と科学,vol.27,No.11,82−84,1
985参照)。
【0007】このように、魚肉、畜肉又はこれらの加工
品を冷凍、凍結乾燥する際に、各種の糖類を添加するこ
とにより、タンパク質等の変性を抑制して品質保持を図
る種々の試みがなされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、魚肉、
畜肉又はこれらの加工品を冷凍、凍結乾燥する際に、糖
類を添加して品質保持を図る研究がなされているが、こ
れまでの研究では、糖類として、例えばシュクロース、
グルコース、ソルビトール、サイクロデキストリンなど
が用いられていた。
【0009】しかしながら、品質保持効果は、糖類の種
類によって異なるので、糖類として何を用いるのが最も
効果的かについての研究は、未だ十分になされていない
のが現状である。
【0010】また、糖類の添加量が多いほど、品質保持
効果が高められる傾向はあるが、糖類の種類によって
は、添加量を多くすると、冷凍品、凍結乾燥品の味覚を
甘くしすぎてしまうという問題もあった。
【0011】したがって、本発明の目的は、魚肉、畜肉
又はこれらの加工品を冷凍、凍結乾燥する際に添加し
て、タンパク質の変性を抑制する物質であって、その効
果が高く、かつ、製品の風味を害さない冷凍、凍結乾燥
変性抑制物質、それを含有する冷凍、凍結乾燥品及びそ
の製造法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するため鋭意研究した結果、魚肉及び/又は畜肉
を冷凍、凍結乾燥する際に、マルトテトラオース及び/
又はその還元物を主成分とする糖質、マルトトリオース
及び/又はその還元物を主成分とする糖質、又は、サイ
クロデキストリン及び重合度3〜10のオリゴ糖を主成
分とする糖質を添加すると、冷凍、凍結乾燥に伴うタン
パク質の変性が効果的に抑制されること、また、これら
のオリゴ糖及び/又はその還元物は、低甘味かつ低浸透
圧であるため、製品の風味も良好に保つことを見出し、
本発明を完成させるに至った。
【0013】すなわち、本発明の冷凍、凍結乾燥変性抑
制物質の一つは、魚肉及び/又は畜肉を冷凍、凍結乾燥
する際に、冷凍、凍結乾燥に伴うタンパク質の変性を抑
制する物質であって、マルトテトラオース及び/又はそ
の還元物を主成分とする糖質からなることを特徴とす
る。本発明の冷凍、凍結乾燥変性抑制物質のもう一つ
は、魚肉及び/又は畜肉を冷凍、凍結乾燥する際に、冷
凍、凍結乾燥に伴うタンパク質の変性を抑制する物質で
あって、マルトトリオース及び/又はその還元物を主成
分とする糖質からなることを特徴とする。 本発明の冷
凍、凍結乾燥変性抑制物質の更にもう一つは、魚肉及び
/又は畜肉を冷凍、凍結乾燥する際に、冷凍、凍結乾燥
に伴うタンパク質の変性を抑制する物質であって、サイ
クロデキストリン及び重合度3〜10のオリゴ糖を主成
分とする糖質からなることを特徴とする。
【0014】また、本発明の冷凍、凍結乾燥品は、上記
冷凍、凍結乾燥変性抑制物質を含有する魚肉及び/又は
畜肉を、冷凍又は凍結乾燥したものからなることを特徴
とする。
【0015】更に、本発明の冷凍、凍結乾燥品の製造法
は、魚肉及び/又は畜肉に、上記冷凍、凍結乾燥変性抑
制物質を添加した後、冷凍又は凍結乾燥することを特徴
とする。
【0016】以下、本発明について好ましい態様を挙げ
て詳細に説明する。
【0017】本発明において、マルトテトラオース及び
/又はその還元物を主成分とする糖質としては、マルト
テトラオース及び/又はその還元物を50%以上含有す
る糖質が好ましく用いられる。この糖質は、他のオリゴ
糖及び/又はその還元物や、グルコース、マルトースな
どの他の糖質を含むものであってもよい。このような糖
質の具体例としては、「フジオリゴ#450」、「フジ
オリゴ#470」(商品名、日本食品化工株式会社製)
が挙げられる。
【0018】また、マルトトリオース及び/又はその還
元物を主成分とする糖質としては、マルトトリオース及
び/又はその還元物を50%以上含有する糖質が好まし
く用いられる。この糖質は、他のオリゴ糖及び/又はそ
の還元物や、グルコース、マルトースなどの他の糖質を
含むものであってもよい。このような糖質の具体例とし
ては、「フジオリゴ#350」、「フジオリゴ#36
0」(商品名、日本食品化工株式会社製)が挙げられ
る。
【0019】更に、サイクロデキストリン及び重合度3
〜10のオリゴ糖を主成分とする糖質としては、サイク
ロデキストリン及び重合度3〜10のオリゴ糖を68%
以上含有する糖質が好ましく用いられる。この糖質は、
グルコース、マルトースなどの他の糖質を含むものであ
ってもよい。このような糖質の具体例としては、「CH
−20」、「CH−20P」、「CH−30」、「CH
−30P」(商品名、日本食品化工株式会社製)が挙げ
られる。
【0020】本発明において、魚肉及び/又は畜肉は、
動物性タンパク質を含有するもの一般のことをいう。す
なわち、魚肉、畜肉そのものだけでなく、魚肉、畜肉を
切ったり、すりつぶしたり、又は必要に応じて他の物質
を添加したり、加工したりしたものも含有し、具体的に
は、魚や畜肉の切り身、スリ身、ひき肉、あるいはこれ
らに野菜等の具を混合したもの等を意味する。
【0021】本発明の冷凍、凍結乾燥品は、このような
魚肉及び/又は畜肉に、上記冷凍、凍結乾燥変性抑制物
質を添加した後、冷凍又は凍結乾燥することにより製造
される。冷凍、凍結乾燥変性抑制物質の添加量は、1.
0w/w%以上とするのが好ましく、2〜25w/w%
がより好ましい。添加量が1.0w/w%未満では、冷
凍、凍結乾燥によってタンパク質が変性するのを抑制す
る効果が十分に期待できない。
【0022】上記冷凍、凍結乾燥変性抑制物質の添加方
法は、特に限定されないが、例えば上記冷凍、凍結乾燥
変性抑制物質を溶解した水溶液に、魚肉及び/又は畜肉
を浸漬して含浸させる方法、上記冷凍、凍結乾燥変性抑
制物質を、魚肉及び/又は畜肉に直接添加する方法など
が挙げられる。なお、冷凍又は凍結乾燥する方法は、通
常の方法でよい。
【0023】
【作用】本発明により、マルトテトラオース及び/又は
その還元物を主成分とする糖質、マルトトリオース及び
/又はその還元物を主成分とする糖質、又は、サイクロ
デキストリン及び重合度3〜10のオリゴト糖を主成分
とする糖質は、魚肉及び/又は畜肉を冷凍、凍結乾燥す
る際に、冷凍、凍結乾燥に伴うタンパク質の変性を抑制
する効果を有し、その効果は、従来使用されていた糖
類、例えばソルビトール等より大きいことが明らかにな
った。すなわち、魚肉及び/又は畜肉を冷凍、凍結乾燥
した際に、冷凍、凍結乾燥に伴うタンパク質の変性を抑
制する物質として、マルトテトラオース及び/又はその
還元物を主成分とする糖質、マルトトリオース及び/又
はその還元物を主成分とする糖質、又は、サイクロデキ
ストリン及び重合度3〜10のオリゴ糖を主成分とする
糖質を用いれば、従来のものより少ない使用量で、従来
のものと同様の効果を得ることができる。
【0024】なお、近年食品添加物について、人体に対
する影響が注目されているが、マルトテトラオース、マ
ルトトリオース、サイクロデキストリン等のオリゴ糖及
び/又はその還元物は、人体に対して安全であるばかり
でなく、むしろ近年機能性食品として脚光をあびている
ものであるので、これを食品等に添加することは、むし
ろ好ましいといえる。
【0025】また、マルトテトラオース、マルトトリオ
ース、サイクロデキストリン等のオリゴ糖及び/又はそ
の還元物は、低甘味かつ低浸透圧であるので、冷凍、凍
結乾燥変性抑制物質として、冷凍、凍結乾燥する魚肉及
び/又は畜肉にこれを添加しても、得られる冷凍品又は
凍結乾燥品が甘くなりすぎてしまうことを防止でき、製
品の風味を良好に保つことができる。
【0026】
【実施例】本発明においては、筋原繊維Ca−ATPa
se活性を測定し、その値を、オリゴ糖共存下に魚肉及
び/又は畜肉を冷凍、凍結乾燥する際の、冷凍、凍結乾
燥に伴うタンパク質の変性の指標とした。この指標は、
魚肉及び/又は畜肉を冷凍、凍結乾燥する際の、冷凍、
凍結乾燥に伴うタンパク質の変性を、食品学的視点から
議論する際にその品質をよく反映するとされている。
【0027】更に、筋原繊維Ca−ATPase活性の
値から、筋原繊維Ca−ATPase活性の変性速度定
数(K)を算出し、算出された筋原繊維Ca−ATP
ase活性の変性速度定数(K)の対数値(log
)と、糖のモル濃度(M)との関係から、糖類のタ
ンパク質変性防止効果の強さ、すなわち糖類の保護効果
(E値)を算出して、糖類の保護効果を数量的に比較で
きるようにした。
【0028】なお、これらの測定方法、算出方法は以下
に示すようにして行なった。
【0029】(1)筋原繊維Ca−ATPase活性の
測定 筋原繊維Ca−ATPase活性は、0.1M KC
l,5mM CaCl,25mM Tris−マレイ
ン酸塩(pH7.5)、及び1mM ATP の組成液
を25℃において反応させ、遊離する無機リン酸をGo
moriの方法によって比色定量し、比活性(μmol
・Pi/min・mg)を求めた。
【0030】なお、糖類が共存すると、Ca−ATPa
se活性が見かけ上阻害されるため、対照に同濃度の糖
類を添加して測定した凍結前の比活性を基準とした。
【0031】(2)筋原繊維Ca−ATPase活性の
変性速度定数の算出筋原繊維Ca−ATPase活性の
失活を、一次反応式に従って解析し、見かけの変性速度
定数(K)を下記数1によって計算した。
【0032】
【数1】
【0033】(3)糖類の保護効果の算出 筋原繊維Ca−ATPaseの失活に対する糖類の保護
効果(E値)を、そのモル濃度とlog Kの関係の
勾配から、下記数2によって算出した。
【0034】
【数2】
【0035】つまり、E値は、筋原繊維Ca−ATPa
se活性の変性速度に対する単位濃度の糖が示す抑制の
強さを表わしており、この値が大きいほど保護効果が強
いことを示す。
【0036】なお、タンパク質濃度は、ビウレット法に
よつて比色定量し、標準として牛血清アルブミン画分V
を用いた。
【0037】また、以下の実施例においては、マルトテ
トラオースを主成分とする糖組成物からなる「フジオリ
ゴ#450」、「フジオリゴ#470」(商品名、日本
食品化工株式会社製)、マルトトリオースを主成分とす
る糖組成物である「フジオリゴ#350」、「フジオリ
ゴ#360」(商品名、日本食品化工株式会社製)及び
それらの還元物、更にサイクロデキストリンとその他の
オリゴ糖とを主成分とする糖組成物である「CH−20
P」、「CH−20」、「CH−30」、「CH−30
P」(商品名、日本食品化工株式会社製)及び「イソエ
リート」(商品名、塩水港精糖株式会社製)を用いた。
【0038】フジオリゴ#450、フジオリゴ#47
0、フジオリゴ#350、フジオリゴ#360の標準糖
組成を表1に、CH−20P、CH−30の標準糖組成
を表2に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】実施例1(オリゴ糖共存下における魚肉タ
ンパク質の冷凍変性) スケトウダラの魚肉に、重合リン酸塩0.2重量%と、
各種の糖類5重量%とを添加し、撹拌機で練成してスケ
トウダラのスリ身を製造した。
【0042】上記において、糖類としては、フジオリゴ
#450、CH−30、ソルビトールを用いた。こうし
て得られたそれぞれのスリ身を−40℃で冷凍保存し
た。
【0043】1カ月後、3カ月後、6カ月後に、それぞ
れその一部を取り出し、加藤らの方法(日本水産学会
誌、vol.45,No.8,1027−1032,1
979参照)により筋原繊維を調製し、タンパク質濃度
が3〜4mg/mlになるように、0.16M KC
l,40mM Tris−HCl(pH7.5)溶液に
懸濁させた。
【0044】なお、加藤らの方法とは、以下に示す方法
である。
【0045】冷凍スリ身を細切し、5gを秤量してと
り、これに0.1M KCl,40mMホウ酸塩緩衝液
(pH7.0)15mlを加え、ホモジナイザーを使用
し、氷冷しつつ、20000rpmで6分間ホモジナイ
ズする(30秒の休止時間をおきながら1分間ずつ6回
くりかえす)。
【0046】次に、0.1M KCl液(pH7.0)
85mlを使用して細切肉を洗い出し、2400rpm
で10分間遠心分離する。得られた沈殿に、0.1M
KCl(pH7.0)100mlを加えてよく撹拌し、
再び遠心分離する。以上の洗浄処理をさらに5回くりか
えし、筋原繊維を得る(以上の操作はすべて氷冷下で行
なう)。
【0047】上記のようにして調製した筋原繊維の懸濁
液を用いて、筋原繊維Ca−ATPase活性の経時変
化を測定し、凍結前の活性値を基準としてその残存率を
求め、一次反応式によって解析した。
【0048】その結果を、図1に示す。図1において、
□−□はCH−30、△−△はフジオリゴ#450、○
−○はソルビトールを表わす。
【0049】図1の結果から、スケトウダラのスリ身
に、フジオリゴ#450、CH−30、ソルビトールを
共存させて冷凍すると、筋原繊維Ca−ATPase活
性の失活は、直線的で、それが単純な一次反応であるこ
とがわかる。
【0050】次に、それぞれの糖の筋原繊維Ca−AT
Pase活性の変性速度定数(K)を前記数1に基づ
いて算出し、更に、前記数2に基づいて糖類の保護効果
(E値)を求めた。なお、KDOは、糖を添加しないス
ケトウダラのスリ身を冷凍保存し、後は糖を添加したも
のと同様にして算出した。また、それぞれの糖の分子量
は、DE値から求めた平均重合度から算出した。これら
の結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】表3の結果から、スケトウダラのスリ身の
冷凍保存に対する糖の保護効果は、フジオリゴ#450
=CH−30>ソルビトールの順で強いこと、すなわ
ち、マルトテトラオースを主成分とするフジオリゴ#4
50、及びサイクロデキストリンとオリゴ糖を主成分と
するCH−30は、ソルビトールと比べて、タンパク質
変性防止効果が約4倍強いことがわかる。
【0053】従来のスケトウダラの冷凍スリ身には、ソ
ルビトールとシュクロースとがそれぞれ4%添加されて
いるが、上記結果から、添加する糖類をオリゴ糖及び/
又はその還元物を主成分とする糖質にすれば、その添加
量を少なくしても従来と同様のタンパク質変性防止効果
を得ることができると考えられる。
【0054】実施例2(オリゴ糖共存下における筋原繊
維懸濁液の凍結乾燥によるタンパク質の変性) 養殖コイの背筋を常法によって処理して筋原繊維を調製
し、この筋原繊維を、タンパク質濃度が12mg/ml
になるように、0.16M KCl,40mMTris
−HCl(pH7.5)溶液に懸濁させて魚類筋原繊維
懸濁液を製造した。
【0055】この魚類筋原繊維懸濁液を、一つには糖を
添加せず、残りにそれぞれ、フジオリゴ#350、フジ
オリゴ#360、フジオリゴ#450、フジオリゴ#4
70、CH−20P、ソルビトールを所定の濃度になる
ように添加し、4mlずつ試験管に分注した後、−20
℃で凍結し、真空乾燥した。
【0056】経時的にその一部を乾燥機から取り出し、
所定量の蒸留水を加え、0.5MKCl,40mM T
ris−HCl(pH7.5)溶液を加えた後、小型ガ
ラス製ハンドホモジナイザーを用いて全体を均一な一定
容量の懸濁液にし、前述した方法により、筋原繊維Ca
−ATPase活性を測定した。
【0057】上記の方法で、まず、凍結乾燥によるコイ
筋原繊維Ca−ATPase活性の変性におよぼすフジ
オリゴ#350の効果を検討した。すなわち、フジオリ
ゴ#350を種々の濃度で添加した筋原繊維懸濁液を凍
結乾燥し、Ca−ATPase活性の経時変化を測定し
た。そして、凍結前の活性値を基準としてその残存率を
求め、一次反応式によって解析した。
【0058】その結果を図2に示す。図2において●−
●はフジオリゴ#350を含まないもの、○−○はフジ
オリゴ#350の濃度が0.015Mのもの、△−△は
フジオリゴ#350の濃度が0.03Mのもの、□−□
はフジオリゴ#350の濃度が0.060Mのものを表
わす。
【0059】図2の結果から、フジオリゴ#350を含
まないもののCa−ATPase活性の失活は、初めの
数時間は直線的で、単純な一次反応であるが、その後、
乾燥を続けてもCa−ATPase活性は失活しないこ
とがわかる。また、フジオリゴ#350を0.015M
〜0.060M含有するものも、やはり初めの数時間は
直線的で、単純な一次反応であり、その後、乾燥を続け
てもCa−ATPase活性は失活しないが、Ca−A
TPase活性の失活は抑制され、その濃度が濃いほど
効果が大きいことがわかる。
【0060】次に、フジオリゴ#360を添加したもの
と、フジオリゴ#350を添加したものとについて、初
めの数時間のCa−ATPase活性の失活から、Ca
−ATPase活性の変性速度定数(K)を算出し、
その対数値(logK)と、糖のモル濃度(M)との
関係を調べた結果を図3に示す。図3において△−△は
フジオリゴ#360を添加したもの、○−○はフジオリ
ゴ#350を添加したものを表わす。
【0061】また、図2、図3の結果にならい、他のフ
ジオリゴ、CH−20P、ソルビトールについても同様
に解析し、その結果を図4、図5に示す。図4におい
て、△−△はフジオリゴ#470を添加したもの、○−
○はフジオリゴ#450を添加したものを表わし、図5
において、△−△はCH−20Pを添加したもの、○−
○はソルビトールを添加したものを表わす。
【0062】以上の結果から、筋原繊維Ca−ATPa
seの失活に対する糖類の保護効果(E値)を算出し、
その値を表4に表わす。
【0063】
【表4】
【0064】表4の結果から、コイ筋原繊維の凍結乾燥
に対する糖の保護効果は、フジオリゴ#450>フジオ
リゴ#470>CH−20P>フジオリゴ#350>フ
ジオリゴ#360>ソルビトールの順で強いことがわか
る。また、これらオリゴ糖の還元物である糖アルコール
品を用いて同じような実験を行った結果、同様の傾向を
示す結果が得られた。
【0065】なお、各種の糖類について、上記と同様に
して、凍結乾燥に対するタンパク質の変性防止効果(E
値)を求め、このE値と糖類に含まれるOH基の数との
関係を調べた結果を図6に示す。このように、その分子
中に有するOH基の数が多い糖ほどE値は大きく、本発
明のオリゴ糖が優れた変性防止効果を有する一つの理由
であると推測される。
【0066】
【発明の効果】以上説明したように、マルトテトラオー
ス及び/又はその還元物を主成分とする糖質、マルトト
リオース及び/又はその還元物を主成分とする糖質、又
は、サイクロデキストリン及び重合度3〜10のオリゴ
糖を主成分とする糖質は、魚肉及び/又は畜肉を冷凍、
凍結乾燥する際に、冷凍、凍結乾燥に伴うタンパク質の
変性を抑制する効果が特に優れており、冷凍、凍結乾燥
変性制物質として使用した場合、従来のものより少ない
使用量で、従来のものと同様の効果を得ることができ
る。また、上記の各オリゴ糖及び/又はその還元物は、
人体に対して安全であるばかりでなく、近年解明されつ
つある機能性食品としての効果も期待できる。また、
記の各オリゴ糖及び/又はその還元物は、グルコースや
マルトース及びそれらの還元物、又はシュクロースと比
較して低甘味かつ低浸透圧であるので、味覚が甘くなり
すぎることを防止し、かつ、製品の風味を良好に保つこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スケトウダラのスリ身に糖類を添加して冷凍保
存した際の、Ca−ATPase活性の対数値の経時変
化を示す図表である。
【図2】コイ筋原繊維に糖類を添加して凍結乾燥した際
の、Ca−ATPase活性の対数値の経時変化を示す
図表である。
【図3】コイ筋原繊維に糖類を添加して凍結乾燥した際
の、log Kと糖濃度との関係を示す図表である。
【図4】コイ筋原繊維に他の糖類を添加して凍結乾燥し
た際の、log Kと糖濃度との関係を示す図表であ
る。
【図5】コイ筋原繊維に更に他の糖類を添加して凍結乾
燥した際の、log Kと糖濃度との関係を示す図表
である。
【図6】各種の糖のOH基の数とE値との関係を示す図
表である。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 魚肉及び/又は畜肉を冷凍、凍結乾燥す
    る際に、冷凍、凍結乾燥に伴うタンパク質の変性を抑制
    する物質であって、マルトテトラオース及び/又はその
    還元物を主成分とする糖質からなることを特徴とする冷
    凍、凍結乾燥変性抑制物質。
  2. 【請求項2】 マルトテトラオース及び/又はその還元
    物を50%以上含有する糖質からなる請求項1記載の冷
    凍、凍結乾燥変性抑制物質。
  3. 【請求項3】 魚肉及び/又は畜肉を冷凍、凍結乾燥す
    る際に、冷凍、凍結乾燥に伴うタンパク質の変性を抑制
    する物質であって、マルトトリオース及び/又はその還
    元物を主成分とする糖質からなることを特徴とする冷
    凍、凍結乾燥変性抑制物質。
  4. 【請求頂4】 マルトトリオース及び/又はその還元物
    を50%以上含有する糖質からなる請求項3記載の冷
    凍、凍結乾燥変性抑制物質。
  5. 【請求項5】 魚肉及び/又は畜肉を冷凍、凍結乾燥す
    る際に、冷凍、凍結乾燥に伴うタンパク質の変性を抑制
    する物質であって、サイクロデキストリン及び重合度3
    〜10のオリゴ糖を主成分とする糖質からなることを特
    徴とする冷凍、凍結乾燥変性抑制物質。
  6. 【請求項6】 サイクロデキストリン及び重合度3〜1
    0のオリゴ糖を68%以上含有する糖質からなる請求項
    5記載の冷凍、凍結乾燥変性抑制物質。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1つに記載の冷
    凍、凍結乾燥変性抑制物質を含有する魚肉及び/又は畜
    肉を、冷凍又は凍結乾燥したものからなることを特徴と
    する冷凍、凍結乾燥品。
  8. 【請求項8】 前記冷凍、凍結乾燥変性抑制物質を、
    1.0w/w%以上含有する請求項記載の冷凍、凍結
    乾燥品。
  9. 【請求項9】 魚肉及び/又は畜肉に、請求項1〜6の
    いずれか1つに記載の冷凍、凍結乾燥変性抑制物質を添
    加した後、冷凍又は凍結乾燥することを特徴とする冷
    凍、凍結乾燥品の製造法。
  10. 【請求項10】 前記冷凍、凍結乾燥変性抑制物質を、
    1.0w/w%以上添加する請求項記載の冷凍、凍結
    乾燥品の製造法。
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