JPH076559U - 内燃機関のピストンピン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 潰れ方向の剛性を損なわずに軽量化を図る。 【構成】 ピストン２とコネクティングロッドの間を連
結する内燃機関のピストンピンにおいて、円筒体を円周
方向に複数分割して、円弧状の周面部１ａと、半径方向
に設けられた側壁部１ｂよりなる複数のピン部材１₁ 〜
１₃ を形成し、かつこれらピン部材１₁ 〜１₃ の各側壁
部１ｂが互に密着するよう円筒状に組合わせてピストン
ピン本体１を構成した。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は自動車等に搭載された内燃機関のピストンおよびコネクティングロ ッドを連接するピストンピンに関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来の内燃機関のピストンピンにおいては、内燃機関の運転時、燃焼圧力を受 けて往復動するピストンの動きを、コネクティングロッドにより回転動に変換し てクランクシャフトへ伝達するのであるが、この際、ピストンピンは内燃機関の 燃焼圧力による高負荷を受けることから、これに耐え得る剛性を必要とすると共 に、内燃機関を軽量化するため、ピストンピンの軽量化も求められている。

【０００３】 かかるを要求を満たすために、例えば実公昭５９−１８１９６号公報や、実開 昭５７−１２１４５２号公報のように、中空なピストンピン内にはしご形補強材 を設けたり、中実のピストンピン内に軸線と平行する長孔を複数個形成すること により、剛性を損なわずに軽量化を図ったピストンピンが提案されている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

しかし上記のいずれの従来例も、結局ピストンピンの外周は連続した構造とな っている。この為、ピストンピンが内燃機関の燃焼圧力特にピストンの上死点回 りの負荷を受けた場合、ピストンピン孔との間に接触部を形成することとなるが 、互いに断面円形をしているために、余り大きな接触面積を有する接触部を確保 できなかった。このことによって、前記接触部は、圧力の分散をなし得ず高面圧 部となってしまう。従って、軽量化の為に中空のピストンピンにはしご形補強材 を設けたり、中実のピストンに長孔を設けて軽量化を図り得たとしても、上記高 面圧部の発生によって、所期の潰れ方向の剛性を発揮し得ないという問題があっ た。

【０００５】 この考案はかかる不具合を改善するためになされたもので、ピストンが内燃機 関より高負荷を受けた場合、ピストンピン孔との接触面積を大きくし、高面圧部 の発生を防止して、潰れ方向の剛性を損なわずに軽量化を図った内燃機関用のピ ストンピンを提供することを目的とするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

この考案は上記の目的を達成するために、内燃機関のピストンとコネクティン グロッドの間を連接する内燃機関のピストンピンにおいて、円筒体を円周方向に 少なくとも３分割して、円弧状の周面部と、半径方向に形成された一対の側壁部 よりなる中空のピン部材を形成し、かつこれらピン部材の各側壁部が互いに密着 して円筒状に組合わせることによりピストン本体を構成したものである。

【０００７】

【作用】

上記のように構成したピストンピンをピストンピン孔に挿着した場合、各ピン 部材の密着側壁部がピストンの燃焼圧力方向に対して傾斜面を形成することとな る。このことから、ピストンよりピストンピン本体に伝達された燃焼圧力の方向 に対して、ピストンピン孔の内壁に向かう分力が発生して、ピストンピン孔との 接触部を拡大させ、燃焼圧力を分散して高面圧部を形成させない。

【０００８】

【実施例】

この考案の一実施例を図面を参照して詳述する。

【０００９】 図１はピストンピン本体の端面図、図２はピストンピン本体を構成するピン部 材の単体を示す斜視図である。

【００１０】 これら図において１は円筒状をなすピストンピン本体で、円周方向に３分割さ れている。

【００１１】 ３分割されたピン部材１₁ 、１₂ 、１₃ は、図２に示すように円弧状の周面部 １ａと、これら周面部１ａの両側縁部より中心へ向かう一対の側壁部１ｂより構 成されていて、周面部１ａと側壁部１ｂにより囲まれた内部にほぼ扇形の空洞１ ｃが形成されて中空となっていると共に、周面部１ａと側壁部１ｂ及び各側壁部 １ｂ間の連設部の角部は面取り１ｄが施されている。

【００１２】 上記構成された各ピン部材１₁ 〜１₃ は、各側壁部１ｂが互いに密着するよう に組合わせることにより、ピストンピン本体１が断面円形状に構成されるように なっている。

【００１３】 上記構成されたピストンピン本体１は、図３に示すように、ピストン２のピス トンピン孔２ａ内に挿入されて、ピストン２と図示しないコネクティングロッド とを連接している。そして、ピン部材１₁ と１₂ との互いに密着する両側壁部１ ｂは図３で示す燃焼圧力Ｆに対して略平行にピストンピン孔２ａ内に配置され、 その下部にピン部材１₃ が配置されている。

【００１４】 また内燃機関の運転中ピストン２に作用する燃焼ガス圧により、図３の矢印に 示すように上方より燃焼圧力Ｆを受け、この燃焼圧力Ｆはピストンピン孔２ａが 形成されたピンボス２ｂよりピストンピン孔２ａの上側に位置するピン部材１₁ 、１₂ に伝達される。この時下側のピン部材１₃ は、コネクティングロッドによ り拘束されているため、下方へは移動しない。従って、各側壁部１ｂは燃焼圧力 Ｆに対して、傾斜して斜面を形成しているのでピン部材１₃ の側壁部１ｂに対し て、ピン部材１₁ , １₂ の側壁部１ｂが分力によってピストンピン孔２ａ側に滑 り、両周面部１ａがピストンピン孔２ａに密着して、図３に示すように燃焼圧力 Ｆに対して、ピストンピン孔中心Ｏを通る水平線Ｓより下部まで及ぶ接触部３が 形成されることとなる。

【００１５】 そして、燃焼圧力Ｆはピストンピン孔２ａとピン部材１₁ 、１₂ の接触部３よ り、ピン部材１₁ 、１₂ とピン部材１₃ の接触面４を介してピン部材１₃ へと分 散して伝達され、さらにピン部材１₃ よりコネクティングロッドへと伝達される ようになる。

【００１６】 またピストン本体１に作用する燃焼圧力Ｆによる潰れに対する剛性は、水平線 Ｓの下部まで及ぶ広い接触部３が受けて、高面圧部を形成せず、更にピン部材１ ₁ 〜１₃ の各側壁部１ｂが確保するため、ピストンピン本体１が上下方向に潰れ ることがないと共に、ピン部材１₁ 〜１₃ の周面部１ａと側壁部１ｂ及び各側壁 部１ｂ間の連設部の角部には予め面取り１ｄが施されているため、この部分に応 力が集中するのを防止することができる。

【００１７】 なお、上記実施例では、ピストン２のピストンピン孔２ａにピストンピン本体 １を挿入した際、ピン部材１₁ 、１₂ の両側壁部１ｂが燃焼圧力Ｆに略平行にな るよう配置したが、これに限定されず、図４に示すように、ピン部材１₁ の周面 部１ａが燃焼圧力Ｆと対向するように上側に配置し、そしてピン部１₂ 、１₃ が ピン部材１₁ の下側に位置するようにしてもよい。

【００１８】 この場合、燃焼圧力Ｆはピン部材１₁ へ伝達され、ピストンピン孔２ａとの間 で接触部３を形成すると共に、下側のピン部材１₂ 、１₃ はピン部材１₁ が燃焼 圧力Ｆを受ける反動として、各側壁部１ｂ間に滑りを起こし、ピストンピン孔２ ａ方向に移動して、ピストンピン孔２ａとの間に接触部３、３が形成される。こ の結果、この接触部３は図３に示す実施例と同様水平線Ｓより下部まで広い範囲 に及び、高面圧部を形成させず、燃焼圧力Ｆを、分散させることとなる。

【００１９】 そして各ピン部材１₂ 、１₃ よりコネクティングロッドへ伝達されると共に、 潰れに対する剛性は、図３の場合と同様に、各ピン部材１₁ 〜１₃ の側壁部１ｂ により確保される。

【００２０】 また上記実施例では、ピストンピン本体１を３分割した場合について述べたが 、複数分割であれば、３分割に限定されるものでないことは勿論である。

【００２１】

【考案の効果】

この考案は以上詳述したように、円筒状のピストンピン本体を円周方向に複数 分割して、周面部と、半径方向の側面部よりなるピン部材を構成し、これらピン 部材を円筒状に組合わせて、ピストンとコンロッドの連結に使用するようにした ことから、内燃機関の運転中にピストンよりピストンピン本体へ伝達された燃焼 圧力は、各ピン部材よりコネクティングロッドへ伝達されるようになる。

【００２２】 そして、各ピン部材の密着側壁部がピストンの燃焼圧力に対して傾斜面を形成 することができ、このことから、燃焼圧力に対して、ピストンピン孔の内壁に向 かう分力が発生して、ピストンピン孔との接触部を形成して、燃焼圧力が各ピン 部材の周面部より側面部に分散されて伝達されるため、燃焼圧力による潰れ方向 の剛性が大幅に向上すると共に、ピン部材の側壁部はピストンピン本体の全長に 亘って存在するため、局部的に潰れるのを防止することもできる。

【００２３】 また図５において示す従来の一体形ピストンピン１０では、ピストンピン孔２ ０ａとピストンピン１０の接触部３０が水平線Ｓより上方付近にしか形成されな かったのに対して、本考案はピストンピン本体を複数分割することによりピスト ンピン孔との接触部を大きくすることが可能になる。

【００２４】 これによって大きな接触部で燃焼圧力を受けることができ、ピストンピン孔と ピストンピン間に高面圧部を形成せず、単位当りの面圧を低減することができる ため、ピストンピンを中空にしたり、その全長を短かくして軽量化を図った場合 でも、ピン孔とピストンピン間の面圧が高くなって焼付きなどの不具合を解消す ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の一実施例になる内燃機関のピストン
ピンを示す側面図である。

【図２】この考案の一実施例になる内燃機関のピストン
ピンを構成するピン部材単体の斜視図である。

【図３】この考案の一実施例になる内燃機関のピストン
ピンを示す作用説明図である。

【図４】この考案の一実施例になる内燃機関のピストン
ピンの別の使用例を示す説明図である。

【図５】従来のピストンピンとピン孔の接触状態を示す
説明図である。

【符号の説明】

１ ピストンピン本体 １₁ 〜１₃ ピン部材 １ａ 周面部 １ｂ 側壁部 １ｃ 空洞（中空） ２ ピストン

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ピストンとコネクティングロッドの間を
   連接する内燃機関のピストンピンにおいて、円筒体を円
   周方向に少くとも三分割して、円弧状の周面部と、半径
   方向に形成された一対の側壁部よりなる中空のピン部材
   を形成し、かつこれらピン部材の各側壁部が互いに密着
   し円筒状に組合わせてピストンピン本体を構成したこと
   を特徴とする内燃機関のピストンピン。