JPH0765376A - 光情報記録媒体およびその情報読取り方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、極めて高密度な情報記録ができ、複
数の情報を一度に同時に再生して情報の読取りをより高
速に行なうことができ、成形性よく安価にして大量生産
を実現できることを最も主要な目的としている。 【構成】本発明は、光情報記録媒体本体を作製するため
の第１の元データに基づいて、セルを構成する回折格子
の線幅と格子間隔との比を適切に変化させることにより
第１のデータを記録し、またその情報を読取る際に、少
なくとも１個の受光素子を配設し、上記セルに対して一
つの入射光を入射し、当該セルから出射される回折光を
受光素子で受光することにより、回折光の強度の変化と
してデータを再生することを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、光学的に情報を再生す
る光情報記録媒体およびその情報読取り方法に係り、特
に回折格子を情報記録要素として、極めて高密度な情報
記録ができると共に、複数の情報を一度に同時に再生し
て、情報の読取りをより高速に行なえ、しかも成形性よ
く安価にして大量生産を実現し得るようにした光情報記
録媒体およびその情報読取り方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、光学式記録は、磁気式記録と比
較して記録媒体とヘッドとが非接触であり、かつ高密度
の記録が可能である等の利点がある。この光学式記録媒
体としては、読出し専用のもの、追加書込み可能なも
の、消去再書込み可能なもの等、種々のものが知られて
いる。

【０００３】この種の光学式記録媒体としては、既に例
えば光学式記録ディスク（ＣＤ、ＣＤ−ＲＯＭ、ＣＤ−
Ｉ、レーザーディスク、追記型および書換可能型ディス
ク、光磁気ディスク等）や、光カ―ド（ＲＯＭ型カー
ド、追記型および書換可能型カード、光磁気カード等）
等の形で、いろいろな分野で実用に供されてきている。
ところで、従来の読出し専用、あるいは追加書込み可能
な光学式記録ディスクは、半導体レーザー等の光源から
出たレーザー光を、ディスク面上において１〜２μｍの
径のスポットに集光して、ディスク面上での当該部分の
表面状態を、その反射光を利用して検出するものであ
る。

【０００４】すなわち、ピットが存在する時には、光が
乱反射して反射光が弱くなり、ピットが存在しない時に
は、鏡面の反射をするという現象により、この２つの状
態の差（光の強弱）を利用してデータを読取るものであ
る。

【０００５】しかしながら、この場合、レーザー光のス
ポット径は、１〜２μｍ程度が限界であり、これ以上極
端に小さくすることは不可能である。

【０００６】従って、従来の光学式記録ディスクの情報
量は、ディスク上の一つのピットが一つの２値情報を表
わしているということ、およびこの限られたレーザー光
のスポット径によって制限されており、結果として、あ
る限度以上の密度の高い情報記録を行なえないのが実情
である。

【０００７】一方、最近では、回折格子を情報記録要素
として、高密度な情報記録ができる光情報記録媒体が提
案されてきている。

【０００８】しかしながら、この種の光情報記録媒体で
は、情報の高密度化のために２値以上の記録を行なう場
合、回折光強度を情報記録単位である各セルに形成する
回折格子の面積を変化させる等して、多値表現を行なう
しかない。このため、回折格子が偏在して局所的に形成
されることになり、例えばエンボス等による複製におけ
る成形性等の点で問題がある。さらに、面積変化では、
情報記録要素の面積を大きくしない限り、記録できる値
は少ない。従って、実際上、高度化が困難である。

【０００９】また、回折格子の深さを制御することによ
り、回折光強度を変化させる方法も考えられるが、例え
ば電子線露光装置のような２値デバイスでの作製は非常
に困難であり、また仮に作製できた場合でも、複製時に
深さ方向の忠実な再現性が要求され、複製にも高度な技
術が必要となり、エンボス等による複製方法では、厳し
い条件で管理しなければならない。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の
光情報記録媒体においては、ある限度以上の密度の高い
情報記録を行なえないばかりでなく、成形性の点でも問
題があり、大量生産を実現する上で問題があった。

【００１１】本発明は上記のような課題を解決するため
に成されたもので、回折格子を情報記録要素として極め
て高密度な情報記録ができると共に、複数の情報を一度
に同時に再生して情報の読取りをより高速に行なうこと
ができ、しかも成形性よく安価にして大量生産を実現す
ることが可能な光情報記録媒体およびその情報読取り方
法を提供することを目的とする。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、平面状の基板の表面に、微小な回折格子（グレー
ティング）からなるセルを少なくとも１個配設すること
により形成される光情報記録媒体において、まず、請求
項１に対応する発明の光情報記録媒体は、光情報記録媒
体本体を作製するための第１の元データに基づいて、回
折格子セルを構成する回折格子の線幅と格子間隔との比
を適切に変化させることにより第１のデータを記録する
ようにしている。

【００１３】また、請求項２に対応する発明の光情報記
録媒体は、光情報記録媒体本体を作製するための第１の
元データに基づいて、回折格子セルを構成する回折格子
の線幅と格子間隔との比を適切に変化させることにより
第１のデータを記録し、また光情報記録媒体本体を作製
するための第２の元データに基づいて、回折格子セルを
構成する回折格子の格子間隔を適切に変化させることに
より第２のデータを記録するようにしている。

【００１４】さらに、請求項３に対応する発明の光情報
記録媒体は、光情報記録媒体本体を作製するための第１
の元データに基づいて、回折格子セルを構成する回折格
子の線幅と格子間隔との比を適切に変化させることによ
り第１のデータを記録し、また光情報記録媒体本体を作
製するための第３の元データに基づいて、回折格子セル
を構成する回折格子の角度を適切に変化させることによ
り第３のデータを記録するようにしている。

【００１５】さらにまた、請求項４に対応する発明の光
情報記録媒体は、光情報記録媒体本体を作製するための
第１の元データに基づいて、回折格子セルを構成する回
折格子の線幅と格子間隔との比を適切に変化させること
により第１のデータを記録し、また光情報記録媒体本体
を作製するための第２の元データに基づいて、回折格子
セルを構成する回折格子の格子間隔を適切に変化させる
ことにより第２のデータを記録し、さらに光情報記録媒
体本体を作製するための第３の元データに基づいて、回
折格子セルを構成する回折格子の角度を適切に変化させ
ることにより第３のデータを記録するようにしている。

【００１６】ここで、特に上記回折格子の線幅と格子間
隔との比として、下記式に基づいて回折光強度をコーデ
ィングするようにしている。

【００１７】

【数２】 ただし、η：回折効率（０〜１の値をとる）、ｒ：回折
格子の深さ、ｌ：線幅、ｄ：格子間隔、θ：再生照明光
の入射角、λ：再生照明光の波長。

【００１８】また、上記回折格子セルとして、反射型の
回折格子セル、または透過型の回折格子セルのいずれか
のものを用いるようにしている。

【００１９】一方、請求項７に対応する光情報記録媒体
の情報読取り方法は、少なくとも１個の受光素子を配設
し、回折格子セルに対して一つの入射光を入射し、当該
回折格子セルから出射される回折光を受光素子で受光す
ることにより、回折光の強度の変化として第１のデータ
を再生するようにしている。

【００２０】また、請求項８に対応する光情報記録媒体
の情報読取り方法は、複数個の受光素子を配設し、回折
格子セルに対して一つの入射光を入射し、当該回折格子
セルから出射される回折光を受光素子で受光することに
より、回折光の強度の変化として第１のデータを再生
し、また回折光の回折角の変化として第２のデータを再
生するようにしている。

【００２１】さらに、請求項９に対応する光情報記録媒
体の情報読取り方法は、複数個の受光素子を配設し、回
折格子セルに対して一つの入射光を入射し、当該回折格
子セルから出射される回折光を受光素子で受光すること
により、回折光の強度の変化として第１のデータを再生
し、また回折光の出射方向の変化として第３のデータを
再生するようにしている。

【００２２】さらにまた、請求項１０に対応する光情報
記録媒体の情報読取り方法は、複数個の受光素子を配設
し、回折格子セルに対して一つの入射光を入射し、当該
回折格子セルから出射される回折光を受光素子で受光す
ることにより、回折光の強度の変化として第１のデータ
を再生し、また回折光の回折角の変化として第２のデー
タを再生し、さらに回折光の出射方向の変化として第３
のデータを再生するようにしている。

【００２３】ここで、特に上記入射光としては、ビーム
状の光を入射するようにしている。

【００２４】

【作用】従って、請求項１ないし請求項４に対応する発
明の光情報記録媒体においては、光情報記録媒体本体を
作製するための第１の元データに基づいて、回折格子セ
ルを構成する回折格子の線幅と格子間隔との比を適切に
変化させて第１のデータを記録することにより、回折光
の強度の変化によるデータ再生が行なえるため、極めて
高密度に情報を記録することができる。

【００２５】また、回折格子セルを構成する回折格子の
線幅と格子間隔との比で階調を表現するため、回折格子
の分布が均一になり、エンボス複製における成形性もよ
くなる。

【００２６】さらに、回折格子の深さとは無関係である
ため、２値表現が可能な電子線露光装置等の微細加工能
力を持った装置であれば作製が可能であり、また複製に
おける深さに関する制御も容易であり、エンボス等の方
法で簡便に複製でき、安価にして大量生産を実現でき
る。

【００２７】以上により、簡便な複製が可能でありなが
ら、明るい（高回折効率を持った）光情報記録媒体の多
値表現を実現できる。

【００２８】一方、請求項２または請求項４に対応する
発明の光情報記録媒体においては、上記の回折光強度に
関する特性を備えた上、光情報記録媒体本体を作製する
ための第２の元データに基づいて、回折格子セルを構成
する回折格子の格子間隔を適切に変化させて第２のデー
タを記録することにより、回折光の回折角の変化による
データ再生が行なえるため、より一層高密度に情報を記
録することができる。また、請求項３または請求項４に
対応する発明の光情報記録媒体においては、上記の回折
光強度に関する特性を備えた上、光情報記録媒体本体を
作製するための第３の元データに基づいて、回折格子セ
ルを構成する回折格子の角度を適切に変化させて第３の
データを記録することにより、回折光の出射方向の変化
によるデータ再生が行なえるため、より一層高密度に情
報を記録することができる。

【００２９】一方、請求項７に記載の発明の光情報記録
媒体の情報読取り方法においては、情報を読取る際に、
少なくとも１個の受光素子を配設し、上記回折格子セル
に対して一つの入射光を入射し、当該回折格子セルから
出射される回折光を受光素子で受光することによって、
回折光の強度の変化としてデータを再生することによ
り、多値のデータを再生できるため、情報の読取りをよ
り高速に行なうことができる。

【００３０】また、請求項８または請求項１０に記載の
発明の光情報記録媒体の情報読取り方法においては、情
報を読取る際に、複数個の受光素子を配設し、上記回折
格子セルに対して一つの入射光を入射し、当該回折格子
セルから出射される回折光を受光素子で受光することに
よって、回折光の回折角の変化としてデータを再生する
ことにより、複数のデータを一度に同時に再生できるた
め、情報の読取りをより一層高速に行なうことができ
る。

【００３１】さらに、請求項９または請求項１０に記載
の発明の光情報記録媒体の情報読取り方法においては、
情報を読取る際に、複数個の受光素子を配設し、上記回
折格子セルに対して一つの入射光を入射し、当該回折格
子セルから出射される回折光を受光素子で受光すること
によって、回折光の出射方向の変化としてデータを再生
することにより、複数のデータを一度に同時に再生でき
るため、情報の読取りをより一層高速に行なうことがで
きる。

【００３２】

【実施例】本発明の要旨は、回折格子を光情報記録媒体
の情報記録要素として用いる場合に、回折格子セルを構
成する回折格子の線幅と格子間隔との比を適切に変化さ
せてデータを記録することによって、その回折格子の回
折効率を制御し、すなわちデータ再生時に回折光強度の
変化を実現することによって、データの読取りを可能と
し、データ記録の高密度化を実現する点にある。

【００３３】また、この回折効率の制御は、格子間隔や
格子の角度を用いた情報の記録とは独立して行ない、こ
れらを必要に応じて複合してそれぞれ独立したデータを
記録することによって、データ記録のより一層の高密度
化を実現する点にある。

【００３４】以下、上記のような考え方に基づいた本発
明の一実施例について、図面を参照して詳細に説明す
る。

【００３５】図１は、本発明による反射型の光情報記録
媒体の構成例を示す平面図である。すなわち、本実施例
の光情報記録媒体は、図１に示すように、平面状の基板
１の表面に、微小な回折格子（グレーティング）からな
る回折格子セル（以下、単にセルと称する）２，３，４
を複数個、図示しない反射層を介して配設することによ
り構成している。

【００３６】ここで、セル２は、本光情報記録媒体を作
製するための第１の元データに基づいて、セル２を構成
する回折格子の線幅と格子間隔との比を適切に変化させ
ることにより第１のデータを記録している。

【００３７】また、セル３は、本光情報記録媒体を作製
するための第２の元データに基づいて、セル３を構成す
る回折格子の格子間隔を適切に変化させることにより第
２のデータを記録している。

【００３８】さらに、セル４は、本光情報記録媒体を作
製するための第３の元データに基づいて、セル４を構成
する回折格子の角度を適切に変化させることにより第３
のデータを記録している。

【００３９】一方、セル２において、回折格子の線幅と
格子間隔との比としては、下記式に基づいて回折光強度
をコーディングするようにしている。

【００４０】

【数３】 ただし、この式は、表面レリーフ型の浅い矩形回折格子
について成り立つものである。

【００４１】η：回折効率（０〜１の値をとる）、ｒ：
回折格子の深さ、ｌ：線幅、ｄ：格子間隔、θ：再生照
明光の入射角、λ：再生照明光の波長。

【００４２】図２は、上記各セルのうち、セル２を構成
する回折格子の構成例をそれぞれ示す平面図である。

【００４３】図２において、回折格子の線幅が格子間隔
の２分の１になった場合、すなわち線幅：格子間隔＝
１：２の場合に、図３に示すように回折効率が最大値と
なり、その値から離れるほど回折効率は低下する。な
お、図３は、上記式に基づいて作製したものである。

【００４４】なお、図２では、凹部を線として記述して
いるが、凸部を線と見なしてもよい。また、図２では、
凹凸で回折格子を形成した例を挙げているが、光の透過
率や、反射率、あるいは位相を変化させる方法等、どの
ような方法で回折格子を形成するようにしてもよい（凹
凸で回折格子を形成するのは、位相を凹部と凸部で変化
させていることに相当する）。

【００４５】光の透過率、反射率で回折格子を形成する
例としては、濃淡で回折格子を表現する方法（図２の凹
部と凸部に相当するところを、それぞれ黒（吸光、遮
光）や白（反射、透過）で表現する）が挙げられる。

【００４６】また、位相で回折格子を形成する他の例と
しては、屈折率の異なる２つの媒質の層で格子を形成す
る方法（図２の凹部と凸部に相当するところを、それぞ
れ異なる媒質にする）が挙げられる。

【００４７】図４は、表面の凹凸で矩形形状の回折格子
を形成した場合の構成例を示す断面図である。

【００４８】図４に示すように、本実施例の光情報記録
媒体を凹凸で形成する場合、深さ方向については２値表
現で十分である。従って、本光情報記録媒体では、例え
ば電子線露光装置等の２値デバイスを用いても作製が可
能であり、しかも簡便な複製工程において、成形性がよ
く、深さ等の制御の必要がない。

【００４９】図５は、本実施例の光情報記録媒体をカー
ド形状の基材に適用した場合の構成例を示す平面図であ
る。

【００５０】図５に示すように、本実施例の光情報記録
媒体は、その厚さを極めて薄くできるため、カード形状
の基材に貼り付ける場合等でも、厚みに関する問題は全
く生じない。

【００５１】以上のように構成した本実施例の光情報記
録媒体においては、光情報記録媒体本体を作製するため
の第１の元データに基づいて、セル２を構成する回折格
子の線幅と格子間隔との比を適切に変化させて第１のデ
ータを記録するようにしていることにより、回折光の強
度の変化によるデータ再生が行なえるため、極めて高密
度に情報を記録することができる。

【００５２】また、セル２を構成する回折格子の線幅と
格子間隔との比で多値を表現するため、回折格子の分布
が均一になり、エンボスにおける成形性もよくなる。

【００５３】さらに、回折格子の深さとは無関係である
ため、２値表現が可能な電子線露光装置等の微細加工能
力を持った装置であれば作製が可能であり、また複製に
おける深さに関する制御も容易であり、表面レリーフ型
であるため、エンボス等の方法で簡便に複製でき、安価
にして大量生産を実現できる。

【００５４】すなわち、回折格子が空間的に均一に形成
されていることにより、複製工程においては成形性がよ
くなり、また回折格子の深さは均一であればよいため、
複製時の条件は緩くなり、より簡便な複製が可能であ
る。

【００５５】以上により、簡便な複製が可能でありなが
ら、安定した（信頼性の高い）光情報記録媒体の多値表
現を実現できる。

【００５６】一方、上記の回折光強度に関する特性を備
えた上、光情報記録媒体本体を作製するための第２の元
データに基づいて、セル３を構成する回折格子の格子間
隔を適切に変化させて第２のデータを記録するようにし
ていることにより、回折光の回折角の変化によるデータ
再生が行なえるため、より一層高密度に情報を記録する
ことができる。

【００５７】また、上記の回折光強度に関する特性を備
えた上、光情報記録媒体本体を作製するための第３の元
データに基づいて、セル４を構成する回折格子の角度を
適切に変化させて第３のデータを記録するようにしてい
ることにより、回折光の出射方向の変化によるデータ再
生が行なえるため、より一層高密度に情報を記録するこ
とができる。

【００５８】次に、以上のように構成した本実施例の光
情報記録媒体の情報読取り方法について説明する。

【００５９】まず、図６は、本実施例の光情報記録媒体
（反射型）の情報読取り方法を実現するための光学系の
一構成例を示す概要図である。なお、ここでは、基板１
上の１個のセルのみを考えることにする。

【００６０】図６において、データを記録したセル５を
配設した基板１に対して、レーザー光源等の光源６から
ビーム状の入射光７を垂直に入射できるようになってい
る。また、複数個の受光素子８を図示のように円周状に
配設し、セル５からの回折光９，１０を受光できるよう
になっている。

【００６１】いま、光情報記録媒体の情報を読取る際に
は、光源６からビーム状の入射光７を、セル５に対して
垂直に入射する。このセル５に入射光７が垂直に入射し
た場合、±１次の回折光が対称的な位置関係で出射され
る。

【００６２】ここで、＋１次回折光９のみが、図示黒塗
りで示されている受光素子８により検出され、他の受光
素子８では光が検出されていない場合を考える。この場
合、黒塗りで示されている受光素子８の位置により、該
当するセルの回折格子の格子間隔と格子の角度を知るこ
とができる。また、受光素子８で検出される光強度によ
り、セルの回折格子の線幅と格子間隔との比を知ること
ができる。

【００６３】すなわち、例えば下記式により、回折格子
の格子間隔が図示の場合よりも狭い回折格子の場合に
は、同じ円周方向位置にある、より外側の受光素子８に
より回折光が検出される。

【００６４】回折格子による回折光は、次式で表わされ
る。

【００６５】ｍλ＝ｄ（ｓｉｎα＋ｓｉｎβ） ただし、λ：照明光（入射光）の波長、ｄ：格子間隔、
α：照明光の入射角度、β：ｍ次の回折光の出射角度。
なお、通常は、ｍ＝＋１、すなわち１次の回折光につい
て考慮する。

【００６６】また、回折格子の角度が変わると、それに
応じて、直径方向の距離は同じで円周方向の位置が異な
る受光素子８により回折光が検出される。

【００６７】さらに、回折格子の線幅と格子間隔との比
が変わると、それに応じて受光素子８により検出される
回折光の光強度が変化する。

【００６８】従って、本実施例の光情報記録媒体では、
第１ないし第３の３種類の独立した情報が、再生用の照
明光（図６では、入射光７として記述）の入射するセル
のみで記録できる。しかも、この３種類の情報は、それ
ぞれ２値以上のデータを記録できるため、高密度な記録
が可能である。

【００６９】さらに、入射光７を走査する、あるいは基
板１を移動させることによって、例えば従来と同じ走査
速度、あるいは回転速度であっても、複数倍の速度で
（高速に）大容量の情報の読み取りを実現することがで
きる。

【００７０】一方、図７は、線幅と格子間隔のみを変化
させてデータを記録した光情報記録媒体の情報読取り方
法の様子を示す概要図であり、図６と同一要素には同一
符号を付して示している。なお、図７では、透過型の光
情報記録媒体について示している。

【００７１】図７において、ある波長の入射光（平行
光）７に対して、格子間隔の異なるセルでは、回折光１
１，１２のように、異なる方向に回折光を出射する。ま
た、回折格子の線幅と格子間隔との比も異なるため、回
折光１１と回折光１２では光強度も異なる。この回折光
１１，１２を受光素子８により検出して、各回折光１
１，１２の回折角と光強度を知ることができ、これらか
ら元の情報を再生することができる。

【００７２】以上のように、本実施例の光情報記録媒体
の情報読取り方法においては、一つの入射光７に対し
て、１個のセルが複数の方向に同時に回折光を出射する
ため、同時に複数のデータを再生することができるた
め、極めて高速な情報読取りを実現することが可能とな
る。

【００７３】また、入射光７の径およびセルの数を大き
くすることにより、回折光の出射方向も増やすことがで
き、より多くの情報の読取りを瞬時に行なうことも可能
となる。

【００７４】これにより、従来のようにスポット径を小
さくする必要がなく、スポット径を小さくするためのレ
ンズ系等を、省略あるいは簡略化することができる。

【００７５】さらに、入射光７として、各セルに対応し
た複数のビーム状の光をセルに入射する場合、各セルか
ら出射される回折光もビーム状となり、受光素子８での
受光が容易であるばかりでなく、読取りエラーも無くす
ることが可能となる。

【００７６】なお、以上の説明において、回折格子の角
度とは、基板表面の法線を回動軸として回折格子を回動
した角度を指し、また回折光の回折角とは、基板表面の
法線に対して回折光の出射する角度を指し、さらに回折
光の出射方向とは、基板表面の法線を軸とした回動方向
を指すものとする。

【００７７】尚、本発明は上記実施例に限定されるもの
ではなく、次のようにしても同様に実施できるものであ
る。

【００７８】（ａ）上記図６の実施例では、セルとして
反射型のセルを用い、また上記図７の実施例では、セル
として透過型のセルを用いる場合について説明したが、
これに限らず、上記図６の実施例で、セルとして透過型
のセルを用い、また上記図７の実施例で、セルとして反
射型のセルを用いることも可能である。

【００７９】そして、セルとして透過型のセルを用いる
場合には、回折格子セルを基板に配設する際に反射層を
設ける必要がなくなるため、その分だけ光情報記録媒体
の作製作業工程を簡略化することができる。

【００８０】（ｂ）上記実施例では、平面状の基板の表
面に、微小な回折格子（グレーティング）からなるセル
を複数個配設することにより光情報記録媒体を形成する
場合について説明したが、これに限らず、平面状の基板
の表面に、セルを少なくとも１個配設することにより光
情報記録媒体を形成する場合についても、本発明を同様
に適用することが可能である。

【００８１】（ｃ）上記実施例では、光情報記録媒体と
して、第１ないし第３のデータの３種類のデータを記録
する場合について説明したが、これに限らず、少なくと
も第１のデータを記録するようにすればよい。

【００８２】（ｄ）上記図６の実施例では、入射光とし
てビーム状の光を入射し、また上記図７の実施例では、
入射光として平行光を入射する場合について説明した
が、これに限らず、上記図６の実施例で、入射光として
平行光を入射し、また上記図７の実施例で、入射光とし
てビーム状の光を入射することも可能である。

【００８３】（ｅ）上記実施例では、セルとして、第１
ないし第３のデータの３種類をそれぞれ別のセルで記録
する場合について説明したが、これに限らず、１セルで
これらのデータを同時に記録するようにしてもよい。

【００８４】（ｆ）上記実施例では、複数個の受光素子
を用いる場合について説明したが、これに限らず、回折
光強度のみを読み取る場合には、少なくとも１個の受光
素子を設ければよい。

【００８５】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、光
情報記録媒体本体を作製するための第１の元データに基
づいて、セルを構成する回折格子の線幅と格子間隔との
比を適切に変化させることにより第１のデータを記録
し、また必要に応じて、光情報記録媒体本体を作製する
ための第２の元データに基づいて、セルを構成する回折
格子の格子間隔を適切に変化させることにより第２のデ
ータを記録し、さらに必要に応じて、光情報記録媒体本
体を作製するための第３の元データに基づいて、セルを
構成する回折格子の角度を適切に変化させることにより
第３のデータを記録するようにし、またその情報を読取
る際に、複数個の受光素子を配設し、上記セルに対して
一つの入射光を入射し、当該セルから出射される回折光
を受光素子で受光することにより、回折光の強度の変化
としてデータを再生し、また必要に応じて、回折光の回
折角の変化としてデータを再生し、さらに必要に応じ
て、回折光の出射方向の変化としてデータを再生するよ
うにしたので、回折格子を情報記録要素として極めて高
密度な情報記録ができると共に、複数の情報を一度に同
時に再生して情報の読取りをより高速に行なうことがで
き、しかも成形性よく安価にして大量生産を実現するこ
とが可能な光情報記録媒体およびその情報読取り方法が
提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による光情報記録媒体の一実施例を示す
平面図。

【図２】本発明の光情報記録媒体に適用する１個のセル
の構成例を示す平面図。

【図３】同実施例における光情報記録媒体のセルを構成
する回折格子の線幅と格子間隔の比と回折効率との関係
の一例を示す特性図。

【図４】同実施例における光情報記録媒体のセルを構成
する矩形形状の回折格子の一例を示す断面図。

【図５】同実施例における光情報記録媒体をカード形状
の基材に適用した場合の構成例を示す平面図。

【図６】同実施例における光情報記録媒体の情報読取り
方法を実現するための光学系の構成例を示す概要図。

【図７】本発明による他の光情報記録媒体の情報読取り
方法の様子を示す概要図。

【符号の説明】

１…基板、２，３，４，５…セル、６…光源、７…入射
光、８…受光素子、９，１０，１１，１２…回折光。

Claims (11)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 平面状の基板の表面に、微小な回折格子
   （グレーティング）からなるセルを少なくとも１個配設
   することにより形成される光情報記録媒体において、 光情報記録媒体本体を作製するための第１の元データに
   基づいて、前記回折格子セルを構成する回折格子の線幅
   と格子間隔との比を適切に変化させることにより第１の
   データを記録するようにしたことを特徴とする光情報記
   録媒体。
2. 【請求項２】 平面状の基板の表面に、微小な回折格子
   （グレーティング）からなるセルを少なくとも１個配設
   することにより形成される光情報記録媒体において、 光情報記録媒体本体を作製するための第１の元データに
   基づいて、前記回折格子セルを構成する回折格子の線幅
   と格子間隔との比を適切に変化させることにより第１の
   データを記録し、 また前記光情報記録媒体本体を作製するための第２の元
   データに基づいて、前記回折格子セルを構成する回折格
   子の格子間隔を適切に変化させることにより第２のデー
   タを記録するようにしたことを特徴とする光情報記録媒
   体。
3. 【請求項３】 平面状の基板の表面に、微小な回折格子
   （グレーティング）からなるセルを少なくとも１個配設
   することにより形成される光情報記録媒体において、 光情報記録媒体本体を作製するための第１の元データに
   基づいて、前記回折格子セルを構成する回折格子の線幅
   と格子間隔との比を適切に変化させることにより第１の
   データを記録し、 また光情報記録媒体本体を作製するための第３の元デー
   タに基づいて、前記回折格子セルを構成する回折格子の
   角度を適切に変化させることにより第３のデータを記録
   するようにしたことを特徴とする光情報記録媒体。
4. 【請求項４】 平面状の基板の表面に、微小な回折格子
   （グレーティング）からなるセルを少なくとも１個配設
   することにより形成される光情報記録媒体において、 光情報記録媒体本体を作製するための第１の元データに
   基づいて、前記回折格子セルを構成する回折格子の線幅
   と格子間隔との比を適切に変化させることにより第１の
   データを記録し、 また前記光情報記録媒体本体を作製するための第２の元
   データに基づいて、前記回折格子セルを構成する回折格
   子の格子間隔を適切に変化させることにより第２のデー
   タを記録し、 さらに前記光情報記録媒体本体を作製するための第３の
   元データに基づいて、前記回折格子セルを構成する回折
   格子の角度を適切に変化させることにより第３のデータ
   を記録するようにしたことを特徴とする光情報記録媒
   体。
5. 【請求項５】 前記回折格子の線幅と格子間隔との比と
   して、下記式に基づいて回折光強度をコーディングする
   ようにしたことを特徴とする請求項１ないし請求項４の
   いずれか１項に記載の光情報記録媒体。 【数１】 ただし、η：回折効率（０〜１の値をとる）、ｒ：回折
   格子の深さ、ｌ：線幅、ｄ：格子間隔、θ：再生照明光
   の入射角、λ：再生照明光の波長。
6. 【請求項６】 前記回折格子セルとして、反射型の回折
   格子セル、または透過型の回折格子セルのいずれかのも
   のを用いるようにしたことを特徴とする請求項１ないし
   請求項５のいずれか１項に記載の光情報記録媒体。
7. 【請求項７】 前記請求項１に記載の光情報記録媒体の
   情報を読取る方法において、 少なくとも１個の受光素子を配設し、 前記回折格子セルに対して一つの入射光を入射し、当該
   回折格子セルから出射される回折光を前記受光素子で受
   光することにより、回折光の強度の変化として前記第１
   のデータを再生するようにしたことを特徴とする光情報
   記録媒体の情報読取り方法。
8. 【請求項８】 前記請求項２に記載の光情報記録媒体の
   情報を読取る方法において、 複数個の受光素子を配設し、 前記回折格子セルに対して一つの入射光を入射し、当該
   回折格子セルから出射される回折光を前記受光素子で受
   光することにより、回折光の強度の変化として前記第１
   のデータを再生し、また回折光の回折角の変化として前
   記第２のデータを再生するようにしたことを特徴とする
   光情報記録媒体の情報読取り方法。
9. 【請求項９】 前記請求項３に記載の光情報記録媒体の
   情報を読取る方法において、 複数個の受光素子を配設し、 前記回折格子セルに対して一つの入射光を入射し、当該
   回折格子セルから出射される回折光を前記受光素子で受
   光することにより、回折光の強度の変化として前記第１
   のデータを再生し、また回折光の出射方向の変化として
   前記第３のデータを再生するようにしたことを特徴とす
   る光情報記録媒体の情報読取り方法。
10. 【請求項１０】 前記請求項４に記載の光情報記録媒体
    の情報を読取る方法において、 複数個の受光素子を配設し、 前記回折格子セルに対して一つの入射光を入射し、当該
    回折格子セルから出射される回折光を前記受光素子で受
    光することにより、回折光の強度の変化として前記第１
    のデータを再生し、また回折光の回折角の変化として前
    記第２のデータを再生し、さらに回折光の出射方向の変
    化として前記第３のデータを再生するようにしたことを
    特徴とする光情報記録媒体の情報読取り方法。
11. 【請求項１１】 前記入射光としては、ビーム状の光を
    入射するようにしたことを特徴とする請求項７ないし請
    求項１０のいずれか１項に記載の光情報記録媒体の情報
    読取り方法。