JPH0757395B2 - 金属球殻状部品の製作方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は金属球殻状部品の製作方法に係り、特に金属製
ポラボラアンテナ、カーブミラー及び自動車ボディのル
ーフ等の周辺に補強部分を有するゆるやかな曲面を持っ
た部品の製作に好適な金属球殻状部品の製作方法に関す
るものである。

〔従来の技術〕

従来の製作方法は、特開昭59−218004号に記載のように
被加工材に水圧を作用させて球殻状凹曲面に被加工材を
成形し、しかる後球殻状部品の外周フランジ部を加工し
成形して製作する方法となっていた。しかし、被加工材
を挾持する部分が平面状であるため、被加工材が水圧に
より内面へ引張られ挾持部で不均一な材料の引込まれ現
象が発生し、成形された球殻状曲面の加工面精度が加工
条件で大幅に変り、又、均一さも少いと言う点から高価
な超塑性材料等が使われていた。

又、従来のプレス技術で凹型と凸型よりなる雌雄型の間
に金属板をプレスすることにより製作する方法では雌雄
型を必要とすることと薄板加工用の型の隙間の管理が困
難なため試験と修正作業を何回も繰り返すため高額な金
型コストを必要としていた。その理由は、ゆるやかな曲
面を雌雄型で成形するため、スプリングバックが多い
上、型との摩擦の不均一がさけられぬため、スプリング
バックも不均一でプレス後の製品形状の予測が困難なた
め型のトライアルテストにも大きな費用を必要とし、加
工精度も余り良いものではなかった。

〔発明が解決しようとする問題点〕

上記従来技術は被加工材が球殻状曲面の部品に成形され
た後、最終形状の球殻部品になった時の球殻状曲面の精
度を高めると同時に成形された部品が均一な精度の部品
になるための外周補強フランジ部の成形と該フランジ部
の引込まれを防止するクランプ方法、及び、凸型の球殻
状曲面を持つ成形型表面と被加工材との摩擦低減と均一
化の方法について配慮がされておらず、被加工材の材質
や厚さにより、また、挾持部の挾持力の差や部分的板厚
の不均一さからくる成形完成品の曲面精度が悪く、均一
なものが得られない問題があった。

本発明の目的はパラボラアンテナやカーブミラ及び自動
車ボディのルーフのような周辺に補強部を持ったゆるや
かな曲線面を有する金属球殻状部品を高精度に、しかも
安価な金型で製作する方法を提案することにある。

〔問題点を解決するための手段〕

上記目的は、球殻状凸曲面を有する下型と、この下型の
上方に位置されており上記球殻状凸曲面が貫通できると
共にその上部が上方にいくにしたがって大きく開いたテ
ーパー状の傾斜面を有する貫通した孔を形成された中台
板と、この中台板の上方に位置されており上記下型の球
殻状凸曲面に被加工材を押圧すると共に上記テーパー状
の傾斜面に係合する形状に形成されたテーパー状の傾斜
面を有する上型とからなる装置を用い、上記上型のテー
パー状の傾斜面と中台板のテーパー状の傾斜面をクラン
プ部として、両クランプ部の間で被加工板の外周フラン
ジ部にテーパー状をした外周補強フランジ部を成形する
とともにクランプする工程と、上記工程後に上記凸曲面
を有する下型のその凸曲面に前記被加工材を押圧せしめ
るとともに、上記凸曲面と被加工材との間に流体を吐出
させ、上記凸曲面で被加工材を液体浮上させて金属板の
球殻状曲面を成形する工程とからなる金属球殻状部品の
製作方法とすることにより、達成される。

〔作用〕

被加工材は上型の凸形クランプ部と中台板の凹形クラン
プ部との間で外周の補強フランジ部部を全周にわたって
成形され、同時に該フランジ部をクランプされる。更に
被加工材は下型の凸曲面に押圧されるが、被加工材と凸
曲面との間に流体を吐出させることにより被加工材が型
面との当り部で被加工材を流体浮上させるので、被加工
材と凸曲面の型表面での摩擦を低減し、摩擦による被加
工材の部分的な伸びの違いを減すことができる。従っ
て、所要の曲面をもった部分を作るための凸曲面は材料
による伸びや降伏応力等から曲面のスプリングバック量
を類似の実験結果より計算した修正曲面を容易に求める
ことができるので、被加工材の成形品は加工面の精度が
高く均一な曲面部品を作ることができる。

〔実施例〕

以下、本発明の第１の実施例を第１図及び第２図により
説明する。

第１図は球殻状凸曲面２を持った下型３にガイドポスト
12とバネ９により支持された中台板７の上に被加工材１
を乗せ、更に上型10がプレスの上ラムに取付けられて上
死点に止っている状態を示す型と加工前の被加工材１の
関係位置を示す縦断面図で、第２図は第１図の型と被加
工材１がプレスの下死点で流体と流体作用口４を通じて
流体吐出孔６より吐出させ被加工材を流体浮上させてい
る状態を示す縦断面図である。上記中台板７はその上部
が上方にいくにしたがって大きく開いたテーパー状の傾
斜面（以下、凹型クランプ部８と称す）を有する貫通し
た孔を形成されており、上記上型10は中台板７のテーパ
ー状の傾斜面に係合する形状の傾斜面（以下、凸型クラ
ンプ部11と称す）を有し、これら両傾斜面の間で被加工
板１の外周フランジ部をテーパー状に成形するとともに
クランプするようにされている。

第１図に示す状態で投入された被加工材１は予め外周フ
ランジ部が成形後均一になるように展開した寸法で切断
したおき、板の状態で中台板７上に所定の位置に置く。
しかる後、プレスを作動させると同時に下型３に具備し
た流体作用口４に高圧の気体又は液体の流体を接続投入
し、流体作用孔５を通って流体吐出孔６より球殻状凸曲
面２の頂上付近に多数箇所から同時に吐出させる。

上記プレスの作動によって上記プレスの上ラムが下降す
ると、先づ上型10と中台板７が噛み合うが被加工材１の
外周補強フランジ部を上型10の凸型クランプ部11と中台
板７の凸形クランプ部８の間でテーパー状に成形し、同
時にクランプする。クランプ部ではバネ９の力により被
加工材１が球殻状凸曲面２により膨らまされるため内部
に引込まれる力が働くがスリップすることなくクランプ
されるバネ反力を設定しておく。

下型３に設けた多数の流体吐出孔６により流体が型面と
被加工材１との間に吐出されると被加工材１は流体によ
り膜状に浮上し、その隙間より流体は下型３の外周に向
って流れる。プレスが下降している間は流体を吐出さ
せ、又、該プレスの下死点にて所要の球殻状曲面の成形
が完了する位置に型の高さを決めておく。又、被加工材
１と球殻状凸曲面２の間に吐出された流体は流体逃げ口
13より型外に放出され被加工材１を上部に吹き上げる事
はなく、球殻状凸曲面に沿った被加工材を成形すること
ができる。

第２図は上述の被加工材が成形を完了した状態を示す。

吐出流体は高圧の圧縮空気や潤滑油等を使うこともでき
プレス型と被加工材の加工成形時の摩擦を流体浮上によ
り無くす作用をする。又、該流体吐出孔６は表面出口部
で孔径を細くし、均等に吐出するのが好ましい。又、流
体吐出孔６は球殻状凸曲面の頂上付近に多く周辺部は少
くする方が流体の使用量の低減に効果的であり、又、均
等な流体浮上をさせるためには流体吐出孔を細くし、尚
かつその孔ピッチを密にするのが好ましい。

本実施例によれば球殻状凸曲面を予め設計された曲面で
作れば所要の球殻状部品を精度良く、しかも均一な精度
の面精度をもったものが製作できる。又、本実施例では
超塑性材料等の高価な材料を使わなくても良く、鉄板等
の安価な材料でも吐出流体の圧力調整で使うことがで
き、成形品のフランジ加工等も当初から成形されている
ため成形品のフランジ加工を後工程で行う必要がない。
又、型は所要の球殻状曲面が下型のみしかなく、その分
安価に製作できる。

次に、本発明の第２の実施例を第３図と第４図により証
明する。

第３図は所要の球殻状凸曲面の外周部に凸形クランプ部
11′を具備してなる上型10′がプレス等の上ラムに取付
けられ、プレスの上死点付近で止められ、下型３′にガ
イドポスト12′とバネ９′により支持された中台板７′
の所定の位置に被加工材１を乗せ、本発明の金属球殻状
部品の製作前の状態の位置関係を示す縦断面図で、第４
図は、第３図の型と被加工材１がプレスの下死点に保持
され、流体を流体作用口４′を通じて流体吐出孔６′よ
り吐出させて被加工材１を流体作用圧力により所要の球
殻状凸曲面に成形している状態を示す縦断面図である。

第３図に示す状態で投入された被加工材１は予め外周フ
ランジ部が成形後均一になるように展開した寸法で切断
しておき、平板の状態で中台板７′の上に所定の位置に
置く。しかる後、プレスを作動させると同時に下型３に
具備した流体作用口４′に高圧の気体又は液体の流体を
接続投入し、流体作用孔５′を通して流体吐出孔６′よ
り下型凸曲面２′の表面に多数の孔より同時に吐出させ
る。

プレスラムが下降すると、先づ上型10′と中台板７′が
噛み合うが被加工材１の外周補強フランジ部を上型10′
の凸型クランプ部11′と中台板７′の凸形クランプ８′
の間で本実施例ではテーパ状に成形し、バネ９′の支持
力で同時にクランプする。クランプ部ではバネ９′の力
により被加工材１が下型凸曲面２′により流体の作用に
より流体浮上し乍ら膨らまされるため、内部に引込まれ
る力が働くが滑り込むことなくクランプされる。

下型３′に設けた流体吐出孔６′より流体が型面と被加
工材１との間に吐出されると、被加工材１は流体により
膜状に浮上し、その隙間より流体は下型凸曲面２′の外
周方向に向って流れる。プレスが下降している間と下死
点で一定時間の間は流体を吐出させておくと、プレスが
下降中は下型凸曲面２′に沿って被加工材１の中央部が
所要の球殻状曲面より小さい曲面で一時成形される、し
かる後、プレスの下降端で加圧したままプレスしてお
き、流体を続けて吐出し続けると流体は中台板７′の下
部に具備したシールパッキング溝にかん合されたシール
パッキング17により、中台板７′と下型３′に形成され
た封止部16の間で封止され、同時に上型10′のクランプ
部での封止も同時に行われているため被加工材１は膨ら
まされる。しかるに、被加工材１は所要の球殻状凸曲面
14に押し拡げられ被加工材１は膜状に延伸されて該凸曲
面に成形される。被加工材１と該凸曲面14との間の空気
は被加工材１が膨らまされるので空気逃げ孔15より型外
に逃げる。

吐出流体は高圧の圧縮空気や潤滑油等を使うこともで
き、プレス型と被加工材の接触面での摩擦を流体浮上に
より無くす作用をする。又、該流体吐出口６′は表面へ
の出口部で孔径を細くし、均等に吐出するのが好まし
い。

下型凸曲面２′で一次成形するため凸曲面の凸部の高さ
を調節することにより被加工材の伸び量を外周部と中央
部で調整することができる。下型３′の凸面部を無くし
た場合は被加工材の中央部の板厚が最も薄くなるが凸曲
面の高さを上げる程、中央部の板厚は増加し、薄くなる
率が減る。

本実施例によれば所要の球殻状凸曲面14を予め設計され
た曲面で作れば所要の球殻状部品を精度良く、しかも均
一な精度の面精度をもったものが製作できる。又、本実
施例では超塑性材料等の高価な材料を使わなくてもよ
く、鉄板等の安価な材料でも流体の吐出圧力を調整すれ
ば使うことができ、成形品のフランジ加工等も当初から
成形されているため、成形品のフランジ加工は、後加工
で行う必要がなく、型製作時の試験成形も型合せがない
事から安価に型を製作できる。

又、流体吐出圧力を流体浮上時と被加工材の球殻状凸曲
面への成形時で変えることにより成形品の板厚分布を調
整することができ、球殻の形状に合せて調整することも
できる。

又、テーパ部が長いとフランジ部の波打ち現象が多く発
生し易いので、テーパ部を少し設けてそのテーパ部の外
側を垂直のフランジ部とするクランプ部とすれば板厚の
薄い金属板を製作する時に被加工材の外周部で板押えを
使うことができフランジ部の波打ち現象を減らすことが
でき、外観を美麗にできる効果がある。

以上、述べた如く本発明の第２の実施例によれば材料を
安価な鉄板や高価なステンレス鋼板まで使うことがで
き、材料の種類による球殻状曲面の精度の誤差も少い利
点がある。又、打抜き鋼板や網状金属板を成形する場合
は薄い金属板等を同時に下面に敷いて成形することも出
来、同様に面精度の誤差の少いものを製作できる。

〔発明の効果〕

本実施例によれば、パラボラアンテナやカーブミラ、又
は自動車ボディのルーフのような周辺部に補強部を持つ
たゆるやかな曲線面を有する金属球殻状部品を成形する
際、先づ被加工材の外周部の補強フランジ部を成形し、
同時にその部をクランプして材料板の滑り込みを止めて
曲面の成形を一行程で行う。又、曲面成形時に被加工材
を流体浮上させて行うため被加工材は膜状に塑性変形
し、型表面の摩擦の影響を受けないので球殻状部品の曲
面精度が良いものを作ることができる。

また材料板厚は若干の変動をしてもクランプ部をテーパ
ーにしておけば異る厚さでも同様に材料の滑り込みを防
止できるため均一な製品を得ることができる。

しかも、第１の実施例の場合は、金型は所要の球殻状の
凸曲面部のみ作れば良く、雌雄型を作って合せ加工する
必要もないため安価な金型とすることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図・第３図は本発明の一実施例の被加工材を加工す
る前の金型との関係位置を示す縦断面図、第２図・第４
図は第１図・第３図の金型で被加工材を成形した金型の
状態を示す縦断面図である。 １……被加工材、２・２′……下型凸曲面、３・３′…
…下型、４・４′……流体作用口、５・５′……流体作
用孔、６・６′……流体吐出口、７・７′……中台板、
８・８′……凹形クランプ部、９・９′……バネ、10・
10′……上型、11・11′……凸型クランプ部、12・12′
……ガイドポスト、13……流体逃げ口、14……球殻状凹
曲面、15……空気逃し孔、16……封止部、17……シール
パッキング。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】球殻状凸曲面を有する下型と、この下型の
   上方に位置されており上記球殻状凸曲面が貫通できると
   共にその上部が上方にいくにしたがって大きく開いたテ
   ーパー状の傾斜面を有する貫通した孔を形成された中台
   板と、この中台板の上方に位置されており上記下型の球
   殻状凸曲面に被加工材を押圧すると共に上記テーパー状
   の傾斜面に係合する形状に形成されたテーパー状の傾斜
   面を有する上型とからなる装置を用い、 上記上型のテーパー状の傾斜面と中台板のテーパー状の
   傾斜面をクランプ部として、両クランプ部の間で被加工
   板の外周フランジ部にテーパー状をした外周補強フラン
   ジ部を成形するとともにクランプする工程と、 上記工程後に上記凸曲面を有する下型のその凸曲面に前
   記被加工材を押圧せしめるとともに、上記凸曲面と被加
   工材との間に流体を吐出させ、上記凸曲面上で被加工材
   を液体浮上させて金属板の球殻状曲面を成形する工程と
   からなることを特徴とする金属球殻状部品の製作方法。