JPH0756082Y2 - クロスロール圧延機 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、鋼板等の圧延に供され
るクロスロール圧延機に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、圧延製品（圧延鋼板等）の寸法、
特に板幅方向の厚みに対する要求精度は非常に高くなっ
てきている。そのため、圧延荷重によるロール撓みをキ
ャンセルすべく、ワークロールにイニシャルクラウン
（通常、２次曲線の凸カーブ形状）を設けた、いわゆる
クラウンロールを用いることが従来より行われている。

【０００３】ところが、圧延材の硬度，板幅，板圧等が
異なる場合には、その撓み具合が変化するため、単一の
クラウンロールによって良好な圧延を行うことはできな
かった。すなわち、形状の異なる多数のクラウンロール
を用意した上で、圧延機を一旦停止させてクラウンロー
ルの組替えを行う必要があった。

【０００４】一方、圧延作業を連続的に行うと、ワーク
ロール表面の磨耗と熱膨張とが相俟ってクラウン形状が
著しく変化するため、結果として、著しく圧延精度が低
下する欠点を有していた。

【０００５】そこで、圧延製品の板幅方向の厚み精度の
向上とロールの摩耗寿命の延長を図る目的でクロスロー
ル式の圧延機が提案されている。これは、上ロール（上
ワークロール，上バックアップロール等）と下ロール
（下ワークロール，下バックアップロール等）とを水平
面内において圧延方向に直角な方向に対して所要角交差
させたものである。

【０００６】図３には、その一例である４段圧延機のロ
ールクロス機構を表わした概略基本構成を示す。ハウジ
ング１内の上側にあり圧下装置１ａに連結されれいる上
バックップロールチョック３ｂに上ワークロールチョッ
ク３ａが支持されており、これらの上ロールチョック３
ａ，３ｂに上ワークロール２ａ，上バックアップロール
２ｂが支持されている。又、ハウジング１内の下側には
下バックアップロールチョック１３ｂがあり、このロー
ルチョック１３ｂに下ワークロールチョック１３ａが支
持され、これら下ロールチョック１３ａ，１３ｂに前記
上ワークロール２ａ，上バックアップロール２ｂに対向
させて下ワークロール１２ａ，下バックアップロール１
２ｂが支持されている。ハウジング１の上側及び下側に
は、受台４ａ，４ｂ，１４ａ，１４ｂが設けてあり、こ
れら受台４ａ，４ｂ，１４ａ，１４ｂには、バックアッ
プロールチョック３ｂ，１３ｂに係合するジャッキ５
ａ，５ｃ，１５ｂ，１５ｄ並びにワークロールチョック
３ａ，１３ａに係合するジャッキ５ｂ，５ｄ，１５ａ，
１５ｃが設けられている。

【０００７】従って、圧延方向と直角な軸に対する交差
は、ロールチョック３ａ，３ｂ，１３ａ，１３ｂを直接
的または間接的にハウジング１に取付ける受台４ａ，４
ｂ，１４ａ，１４ｂに設けられて図示しない電動機によ
り動作するジャッキ５ａ，５ｂ，５ｃ，５ｄ及びジャッ
キ１５ａ，１５ｂ，１５ｃ，１５ｄにより、ロールチョ
ック３ａ，３ｂとロールチョック１３ａ，１３ｂとをそ
れぞれ逆方向に水平移動させて、上ロール２ａ，２ｂと
下ロール１２ａ，１２ｂを鉛直軸回りに逆方向に旋回し
て行うこととしていた。図４は、以上に説明したロール
クロス操作の状況を示したもので、θはクロス角であ
る。

【０００８】一方、ロールチョック３ｂの上方にはトッ
プエコライザビーム６が、ロールチョック１３ｂの下方
にはボトムエコライザビーム１６がそれぞれハウジング
１のウィンド内に位置決めされて設けられている。従っ
て、ジャッキ５ａ，５ｂ，５ｃ，５ｄ及びジャッキ１５
ａ，１５ｂ，１５ｃ，１５ｄをそれぞれ駆動して上ロー
ル２ａ，２ｂ及び下ロール１２ａ，１２ｂにクロス角θ
を与える場合、ロールチョック３ｂとトップエコライザ
ビーム６との間及び、ロールチョック１３ｂとボトムエ
コライザビーム１６との間には、相対すべり運動が生じ
る。尚、エコライザビームのない形式のクロスロール圧
延機の場合には、ロールチョックとハウジングまたはロ
ールチョックと圧下装置の間に水平すべり運動が生じる
こととなる。

【０００９】圧延開始前にロールクロス操作を行う場合
には、下側すべり面に加わる垂直荷重は、下ロール１２
ａ，１２ｂ及びロールチョック１３ａ，１３ｂより成る
下ロール群の合計重量であり、また、上側すべり面に加
わる垂直荷重は図示しないロール吊上げ装置によるオー
ババランス荷重である。これら垂直荷重は余り大きくな
いのでロール交差のため、ロールチョックを水平方向に
滑らせるのはそれほど困難ではない。

【００１０】しかし、圧延中にはロールチョック３ｂ，
１３ｂと各エコライザビーム６，１６との間にはそれぞ
れ大きな圧延荷重が負荷されており、クロス角θを変化
するには、ストリップＳの巾方向板厚分布変動を検出
し、その変動量に応じて圧延荷重から生ずる大きい摩擦
抵抗に対抗して変化させなければならず、複雑かつ精密
な操作が必要となっていた。

【００１１】図５は上記課題を解決するために提案され
た従来方法を用いた一例を示したもので、バックアップ
ロールチョック１３ｂとスレッド２７との間に、ロール
クロス操作時にスレッド２７の上面を摺動面としてロー
ルチョック１３ｂと一体に移動するスライドブロック２
６を介装し、また前記スレッド２７とハウジング１底部
との間に圧延高さ調整用のテーパウェッジ２８を挿設す
ると共に、前記スライドブロク２６とスレッド２７間に
ころがり軸受２０を挿設した構成となっている。従っ
て、ころがり軸受２０によって、ロールクロス操作時に
スレッド２７上面とスライドブロック２６下面との間に
生ずる摩擦抵抗を減少するようになっている。なお、ス
ライドブロック２６内には、圧延に伴う垂直荷重を検出
するロードセル２５が設置され、また、スレッド２７に
はロール組替え時の引出し力を小さくするよういに車輪
１９が装備されている。

【００１２】

【考案が解決しようとする課題】前記した従来のクロス
ロール圧延機において、各構成部材はハウジング１内に
おいてはロールクロス機構によって位置決めされてい
る。但し、バックアップロールまたはワークロールを組
替える際に、クロス角θを零にし、これらのロールが組
込まれたロールアンセンブリをスレッド２７ごとハウジ
ング１外へ引出したときには、これらの横移動を阻止す
るものがなく、スライドブロック２６及びロールアセン
ブリが横滑りする危険性がある。同様に、ロールアセン
ブリを組込む為に、クレーン等でこれらをスレッド２７
上へ積載したときにも、横滑りする危険性がある。すな
わち、以上のように横滑りすると、機器の重大な破損ト
ラブルにつながる虞れを生じる。

【００１３】

【課題を解決するための手段】請求項１の本考案による
クロスロール圧延機は、被圧延材を圧延するロールが支
持されるバックアップロールチョックと該バックアップ
ロールチョックを支持するスレッドとの間に、該バック
アップロールチョックと共に摺動するスライドブロック
を挿設し、該スライドブロックと圧延機の枠体を構成す
るハウジングの底部との間にテーパウェッジを挿入し、
前記スライドブロックと前記スレッドとの間に前記スラ
イドブロックを摺動させるころがり軸受を介装したクロ
スロール圧延機において、前記スライドブロック及び前
記スレッドの端部にそれぞれ貫通孔を穿設し、該貫通穴
を連通するストッパを嵌着したことを特徴とするもので
ある。

【００１４】請求項２の本考案によるクロスロール圧延
機は、被圧延材を圧延するロールが支持されるバックア
ップロールチョックと該バックアップロールチョックを
支持するスレッドとの間に、該バックアップロールチョ
ックと共に摺動するスライドブロックを挿設し、該スラ
イドブロックと圧延機の枠体を構成するハウジングの底
部との間にテーパウェッジを挿入し、前記スライドブロ
ックと前記スレッドとの間に前記スライドブロックを摺
動させるころがり軸受を介装したクロスロール圧延機に
おいて、前記スライドブロック及び前記スレッドの端部
にそれぞれ貫通孔を穿設し、該貫通穴を連通するストッ
パを嵌着すると共に、前記スレッドに設けた貫通穴内に
該ストッパを押し下げるように弾性部材を装着したこと
を特徴とするものである。

【００１５】

【作用】請求項１に係る考案の作用を以下に説明する。

【００１６】スライドブロック及びスレッドの端部にそ
れぞれ穿設された貫通孔にストッパを嵌設するようにし
たので、ロール組替えの際、ロールが組込まれたロール
アンセブリをスレッドごとハウジングの外へ引出したと
き、またはロールアンセンブリをハウジングに組込む為
にスレッド上へ積載したときに、位置決めされるので、
これらが横滑りしなくなる。

【００１７】次に、請求項２に係る考案の作用を以下に
説明する。

【００１８】スレッドに設けた貫通孔内に、ストッパと
併設してストッパを下方に押し下げるように弾性部材を
装着したので、ロール組替えの際、スレッドを引出しま
たは押込むときの摺動面にストッパの頭部面がしっかり
と接触するようになり、スレッドの引出しまたは押込み
動作が安定する。

【００１９】

【実施例】請求項１のクロスロール圧延機に係る一実施
例を図１に示し、この図に基づき本実施例を説明する。
尚、従来の技術で説明した部材と同一部材には同一符号
を付し、重複した説明は省略する。

【００２０】図１に示すように、バックアップロールチ
ョック１３ｂとスレッド３７との間には、ロールクロス
操作時にスレッド３７の上面を摺動面としてこのロール
チョック１３ｂと一体に移動するスライドブロック３６
が挿設されている。スライドブロック３６とハウジング
１の底部との間には、圧延高さ調整用のテーパウェッジ
１８を挿設し、スライドブロック３６とスレッド３７と
の間に、ころがり軸受２０が介装されている。さらに、
スレッド３７の下部に、ロール組替え時のスレッド３７
の引出しまたは押込み用として車輪１９が付設されてい
る。そして、スライドブロック３６及びスレッド３７の
端部に、相互に対応する位置関係で、それぞれ貫通孔３
６ａ，３７ａが穿設され、これら貫通孔３６ａ，３７ａ
に棒状のストッパ２２を嵌設する。

【００２１】すなわち、本実施例のクロスロール圧延機
におけるロール組替えは、以下のように行われる。

【００２２】ストッパ２２は、圧延中のようにロールア
センブリが枠体であるハウジング１内にあって位置決め
されているときには、必ずしも使用しなくてもよいが、
図１上、図示しないワークロール１２ａまたはバックア
ップロール１２ｂを組替える際に、人手または他の手段
によってストッパ２２を貫通孔３６ａ，３７ａ内に嵌入
し、スライドブロック３６とスレッド３７とを一体とし
て横方向の相対移動を拘束する。この後、上記ロール１
２ａ，１２ｂ等が組込まれたロールアセンブリごとスレ
ッド３７をハウジング１外へ引出すこととするが、この
引き出し前、スレッド３７の基部側はハウジング１内に
あって位置決めされている。従って、スライドブロック
３６を含むロールアセンブリは、ストッパ２２を介して
スレッド３７と同じように位置決めされた状態にあり、
横滑りを起こすことはない。そして、スレッド３７を引
出した後、図示しないクレーンなどによってロールアセ
ンブリのみ外部へ搬出することが出来るので、安全な作
業が確保される。

【００２３】次に、請求項２のクロスロール圧延機に係
る一実施例を図２に示し、この図に基づき本実施例を説
明する。尚、従来の技術及び請求項１に係る実施例で説
明した部材と同一部材には同一符号を付し、重複した説
明は省略する。

【００２４】図２に示す本実施例は図１とほぼ同様であ
るが、スレッド４７の端部に穿設された貫通孔４７ａ内
にストッパ３２と併設して弾性部材であるばね２３を設
けたものである。この場合ストッパ３２は、貫通孔４６
ａ，４７ａに対して下から上方に向って嵌入され、その
頭部３２ａはレール２１に接して、支持されている。そ
して、ばね２３は、スレッド４７の貫通孔４７ａ内に形
成された支持面４７ｂとストッパ３２の頭部３２ａとの
間に装着されていて、ストッパ３２の頭部３２ａをレー
ル２１に押付けている。

【００２５】このようにスライドブロック４６の横方向
移動はストッパ３２を介してスレッド４７と一体に拘束
されているので、ロール組替えの際、ロールアセンブリ
ごとスレッド４７を引出したとき、あるいは、ロール組
込みに伴ってクレーンでロールアセンブリをスレッド４
７上に積載したとき、これらが横滑りしない。そしてこ
の場合、ばね２３によってストッパ３２の頭部３２ａは
レール２１にしっかりと接触しているので、スレッド４
７の引出しまたは押込み動作が安定して行われる。

【００２６】なお、ロールクロス操作を行う場合には、
テーパウェッジ１８によってスライドブロック４６を押
上げてストッパ３２と貫通孔４６ａとの係合を開放すれ
ば、スライドブロック４６はころがり軸受２０を介して
自由に横移動できるので、任意にクロス角θを設定する
ことができる。また、本実施例ではストッパ３２の頭部
３２ａと接する摺動面をレール２１としたが、ハウジン
グ１の底部としてもよい。

【００２７】

【考案の効果】以上詳細に説明したように、請求項１の
クロスロール圧延機は、スライドブロック及びスレッド
の端部にそれぞれ貫通孔を穿設して、この貫通孔にスト
ッパを嵌設するようにした結果、ロール組替えの際、ロ
ールアセンブリをスレッドごとハウジングの外へ引出し
たとき、あるいは、ロールアセンブリをハウジングに組
込むのに伴ってクレーンでスレッド上に積載したとき
に、ストッパで位置決めされるのでこれらが横滑りする
ことがなくなり、横滑りに伴う機器の破損トラブルの発
生を防止することができる。

【００２８】請求項２のクロスロール圧延機は、スレッ
ドに設けた貫通孔内に、ストッパと併設してストッパを
押し下げるように弾性部材を装着したので、ロール組替
えの際、スレッドを引出しまたは押込むときの摺動面と
なるレール面、あるいはハウジング底部にストッパの頭
部面がしっかりと接触するようになり、スレッドの引出
しまたは押込み動作が安定し、安全な作業が確保される
等の効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】請求項１の一実施例に係るクロスロール圧延機
の摩擦抵抗減少機構の正面図である。

【図２】請求項２の一実施例に係るクロスロール圧延機
の摩擦抵抗減少機構の正面図である。

【図３】クロスロール圧延機のロールクロス機構を表す
正面図である。

【図４】クロスロール圧延機のロールクロス操作状況を
示す斜視図である。

【図５】従来のクロスロール圧延機の摩擦抵抗減少機構
の正面図である。

【符号の説明】

１ ハウジング １３ｂ バックアップロールチョック １６ ボトムエコライザビーム １８ テーパウェッジ １９ 車輪 ２０ ころがり軸受 ２１ レール ２２ ストッパ ２３ ばね ３２ ストッパ ３６ スライドブロック ３６ａ 貫通穴 ３７ スレッド ３７ａ 貫通穴 ４６ スライドブロック ４６ａ 貫通穴 ４７ スレッド ４７ａ 貫通穴

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 松田 裕 広島県広島市西区観音新町四丁目６番22号 三菱重工業株式会社 広島製作所内 (72)考案者 梶原 哲雄 広島県広島市西区観音新町四丁目６番22号 三菱重工業株式会社 広島研究所内

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 被圧延材を圧延するロールが支持される
   バックアップロールチョックと該バックアップロールチ
   ョックを支持するスレッドとの間に、該バックアップロ
   ールチョックと共に摺動するスライドブロックを挿設
   し、該スライドブロックと圧延機の枠体を構成するハウ
   ジングの底部との間にテーパウェッジを挿入し、前記ス
   ライドブロックと前記スレッドとの間に前記スライドブ
   ロックを摺動させるころがり軸受を介装したクロスロー
   ル圧延機において、前記スライドブロック及び前記スレ
   ッドの端部にそれぞれ貫通孔を穿設し、該貫通穴を連通
   するストッパを嵌着したことを特徴とするクロスロール
   圧延機。
2. 【請求項２】 被圧延材を圧延するロールが支持される
   バックアップロールチョックと該バックアップロールチ
   ョックを支持するスレッドとの間に、該バックアップロ
   ールチョックと共に摺動するスライドブロックを挿設
   し、該スライドブロックと圧延機の枠体を構成するハウ
   ジングの底部との間にテーパウェッジを挿入し、前記ス
   ライドブロックと前記スレッドとの間に前記スライドブ
   ロックを摺動させるころがり軸受を介装したクロスロー
   ル圧延機において、前記スライドブロック及び前記スレ
   ッドの端部にそれぞれ貫通孔を穿設し、該貫通穴を連通
   するストッパを嵌着すると共に、前記スレッドに設けた
   貫通穴内に該ストッパを押し下げるように弾性部材を装
   着したことを特徴とするクロスロール圧延機。