JPH075449B2 - Ｗ／ｏ型の唇用化粧料 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、油中水滴型に乳化した液状の唇用化粧料（以
下、W/O型で液状の唇用化粧料という）に関し、詳しく
は、唇に塗布する時は、軽く伸びて、唇にしっとりとし
た感触（しっとり感）と、良好な光沢を与えて、密着性
が良く（よれ、動きがなく）、保湿効果、保存安定性に
も良好なW/O型で液状の唇用化粧料（口紅，リップクリ
ーム，リップトリートメント）に関する。

（従来の技術） 従来、口紅としては、ステイックタイプ、練りタイプの
ものがあるが、硬くかつ白濁したワックス類を多量に配
合しているため、塗布時に伸びにくく、唇に良好な光沢
やなめらかな感触を与えることができない。

また、これらの欠点を改良したとして、W/O型のリップ
ステックに関する提案が多くなされているが、実際には
ワックス類を多量配合しているので、伸びや光沢や感触
は充分でなく、満足し得るものではない。（特開昭56−
12608号公報、特開昭54−49337号公報、特開昭56−5360
8号公報）。

（発明が解決しようとする問題点） 本発明者等は、上記の油性リップスチックやW/O型リッ
プスチックの欠点を改良せんとして、鋭意広範囲な系統
的研究を行なった結果、後記の構成からなるW/O型の乳
化物は、唇に塗布すると、滑らかな伸びの良い、しっと
りとしたタッチ（感触）と、水々しい深みのある光沢を
唇に付与し、よく密着して、にじみや、よれや、動きな
く、化粧効果くずれし難く、また唇にエモリエント性を
与えて唇に荒れ防止に役立ち、保湿性や保存安定性も良
好であることを見出し、本発明を完成した。

（問題点を解決するための手段） すなわち、本発明は、デキストリン高級脂肪酸エステル
と、平均分子量が500〜5000の水素添加ポリブテンと、
マルチトールと、液状油性物質と水と、または更に色材
が配合されていることを特徴とする、W/O型で液状の唇
用化粧料である。本発明に使用する前記のデキストリン
高級脂肪酸エステルとしては、下記一般式（Ｉ）で表わ
されるデキストリン高級脂肪酸エステル（例えばラウリ
ン酸エステル，パルミチン酸エステル，ステアリン酸エ
ステル等）が好ましい。

一般式（Ｉ） （上記式中で、Acは、水素原子または炭素数12〜18のア
シル基で、ｎ＝20〜30である。） このデキストリン高級脂肪酸エステルは、皮膚刺激性な
く安全で、液状油性物質をゲル化または増粘させ、W/O
型で液状の唇用化粧料にチクソトロピック性を付与し、
保存安定性（乳化安定性）の向上に寄与する。

本発明におけるデキストリン高級脂肪酸エステルの使用
量（含有量）は、組成物の重量に対して0.5〜10重量
％、好ましくは1.0〜６重量％である。0.5重量％未満で
は保存安定性や密着性を低下しやすく、10重量％を超え
ると、密着性や感触がわるくなる傾向がある。

前記の水素添加ポリブテンは、ポリブテンの不飽和結合
に水素添加したものであって、皮膚刺激なく、安全性が
高い。その平均分子量は前記の如く500〜5000である。
平均分子量が500未満であると、保存安定性、密着性が
低下し、5000を超えると、塗布時の伸びがわるく、保存
安定性も低下するので好ましくない。

水素添加ポリブテンの使用量（含有量）は、組成物の重
量に対して５〜60重量％、好ましくは20〜50重量％であ
る。５重量％未満では唇に対する密着性が低下し、60重
量％を超えると、塗布時の伸びがわるくなりやすい。

前記のマルチトールは、通常水溶液として使用され、そ
の使用量（含有量）は、乾燥固形分として組成物の重量
に対して１〜25重量％、好ましくは２〜15重量％であ
る。１重量％よりも少なくなると保存安定性、保湿性、
感触がわるくなりやすい。

本発明に使用し得る液状油性物質は、常温では液状を呈
する化粧料用の油性物質であって、例えば流動パラフイ
ン，スクワラン，液状の合成エステル油類（例えば、ト
リカプリル・カプリン酸グリセリン，ミリスチン酸オク
チルドデシル等）、植物油（オリーブ油，ゴマ油，サフ
ラワ油等）、液状の高級アルコール（例えばオクチルド
デカノール，オレイルアルコール等）、液状の高級脂肪
酸（例えばイソステアリン酸等）、シリコン油等が挙げ
られる。但し、これらのものに限定されない。

液状油性物質の使用量（含有量）は、組成物の重量に対
して５〜60重量％、好ましくは10〜40重量％である。５
重量％未満では唇に塗布する場合、伸びや光沢が低下
し、60重量％を超えると、唇への密着性や耐摩擦性が低
下しやすい。

本発明における前記の色材とは、無機顔料、有機顔料、
天然色素、食用色素、染料等であって、その使用量（含
有量）は、０〜30重量％である。

本発明の唇用化粧料は、比較的多量の水を含有している
ので天然色素、食用色素等の新たな幅広い水溶性染料を
有効適切に選択し使用でき、色相の調節も極めて容易で
ある。水は、通常マルチトール水溶液として添加され、
その使用量（含有量）は、組成物の重量に対して１〜50
重量％、好ましくは２〜30重量％である。１重量％未満
でも50重量％を超えても保存安定性が低下しやすい。

本発明の唇用化粧料には、前記の必須成分の他に、必要
に応じて香料、金属イオン封鎖剤、紫外線防止剤、防腐
剤、皮膚栄養剤、保湿剤、粘度調整剤、消炎剤等の他
に、例えばHLB値10以下の非イオン活性剤（例えばW/O型
乳化剤等）、化粧料用のワックス類等の少なくとも一種
を本発明の効果を阻害しない範囲内で配合することがで
きる。

本発明の唇用化粧料は、種々の方法で製造し得るが、そ
の一つの方法は、所要量の前記デキストリン脂肪酸エス
テルと水素添加ポリブテンと液状油性物質とまたは更に
色材との混合物に、マルチトール水溶液を撹拌下に添加
混合して乳化することによって行われる。

本発明の液状の唇用化粧料における液状とは、クリーム
状、ペースト状でかつ流動性を有するものを意味し、そ
の粘度は30℃において、通常10000〜100000cpsの範囲内
が好ましい。

本発明のW/O型で液状の唇用化粧料は比較的高粘度であ
るが流動性とチクソトロピック性を有しているのでチュ
ーブや筆ペン等の容器への充填、容器からの吐出が容易
である。また容器形態も何等限定されることなく、多種
多様のものを適用することができ、多様化する消費者ニ
ーズに応えることができる。

そして、本発明の唇用化粧料は、液状口紅、リップクリ
ーム、リップトリートメントとして極めて有用である。

（発明の効果） 本発明のW/O型で液状の唇用化粧料は、 （イ） W/O型の均一安定な乳化系を形成しており、保
存安定性が良好で、 （ロ） 流動性とチクソロピック性を有しているので、
唇に塗布すると、伸びが良く、滑らかな感触と、 （ハ） しっとりとした感触（タッチ）と、水々しい深
みのある光沢を唇に付与し、 （ニ） 唇によく密着して（にじみや、よれや、動きな
く）化粧くずれし難く、美粧効果を増大し、 （ホ） また唇にエモリエント性を与えて唇の荒れ防止
に役立ち、 （ヘ） 保水性も良好である。

等、商品価値の極めて高いものである。

（実施例） 以下、実施例について説明する。尚、実施例に示した部
とは重量部を、％とは重量％を意味する。

実施例１ デキストリンパルミチン酸エステル（前記一般式のｎ＝
20〜30）５部と、水素添加ポリブテン（平均分子量150
0）40部と、流動パラフイン33部と、酸化第二鉄1.6部
と、二酸化チタン1.6部と、赤色202号（色素）１部と、
黄色４号（色素）0.8部と、チタン−被覆マイカ７部と
を混合し、80℃で加熱撹拌し、均一に溶解し、次いで、
この溶液（顔料は分散している）を80℃で撹拌しなが
ら、これにマルチトール水溶液（濃度50％）10部（80
℃）を添加、混合して、10分間均一に乳化し、70℃に降
温した時点で香料適量を添加して、W/O型エマルジョン
の本発明の液状口紅（粘度は、30゜において26000cps）
を得た。この液状口紅は、肌目がこまかく（極めて良
好）、そして45℃の恒温槽に６ケ月放置した後の、肌目
も乳化状態も実質的に変化なく、保存安定性（経日安定
性）も極めて良好であった。また、この液状口紅は、チ
クソトロピック性を有しており、強く撹拌すると粘度は
著しく低下し、流動性が増大して、容器（チューブ）へ
の充填も容易であった。尚、これらのテストは、熟練し
た専門検査員３人によって行なった。

次に、この液状口紅の実用テスト（唇への伸び、感触、
密着性、化粧もち等）を冬期に女子パネル（年齢19才〜
30才）20人により１ケ月連続使用して（塗布用具は紅筆
を使用して）行ない、アンケート形式でその実用性能を
しらべた。

その結果、塗布時の伸びが良いと答えた人は20人中20
人、唇への感触（滑らかな、しっとりとした感触）が良
いと答えた人は20人中19人、唇への密着性が良い（よ
れ、にじみ、動きがない）と答えた人は20人中18人、光
沢が良いと答えた人は20人中20人、化粧もちが良いと答
えた人は20人中18人であった。また、専門検査員３人に
よる実用テストの結果では、唇に滑らかな、伸びの良
い、しっとりとしたタッチ（感触）と、深みのある良好
な光沢を与え、よれ、動き、にじみがなく、唇に対する
密着性が良く、化粧もちは良好であった。

比較例１（マルチトールを使用しない場合） マルチトールを使用することなく、かつ水を10部配合す
る他は、実施例１の本発明と同様に行なって、比較の液
状口紅（W/O型エマルジョン）を製造した。その結果、
得られた液状口紅は、肌目が荒く不良で、製造してから
１時間後に、分離を起した。このように、マルチトール
を欠除しても、乳化安定性（保存安定性）の良いW/O型
エマルジョンが得られない。

比較例２（マルチトールの代りにソルビトールを使用す
る場合） マルチトールの代りに、類縁化合物のソルビトールを使
用する他は、実施例１の本発明と同様に行なって、比較
の液状口紅（W/O型エマルジョン）を製造した。その結
果、得られた液状口紅は、外観（肌目）はやや良好であ
ったが、製造してから45℃の恒温槽中で２週間保存した
ところ、分離を起した。

比較例３ デキストリンパルミチン酸エステルの代りに、ソルビタ
ンモノオレートを使用する他は、実施例１の本発明と同
様に行なって、比較の液状口紅（W/O型エマルジョン）
を製造した。その結果、得られた液状口紅は、肌目が可
成りこまかく、外観は良好であったが、製造してから、
45℃恒温槽中で１ケ月後に分離を起した。

比較例４ デキストリンパルミチン酸エステルの代りに、ソルビタ
ンセスキオレートを使用する他は、実施例１の本発明と
同様に行なって、比較の液状口紅（W/O型エマルジョ
ン）を製造した。その結果、得られた液状口紅は、肌目
が可成りこまかく良好であったが、製造してから、45℃
恒温槽中に１ケ月後に分離を起した。

比較例５ デキストリンパルミチン酸エステルの代りに、ソルビタ
ンモノステアレートを使用する他は、実施例１の本発明
と同様に行なって、比較の液状口紅（W/O型エマルジョ
ン）を製造した。その結果、得られた液状口紅は、肌目
が荒く、不良で、製造してから30分後に分離を起した。

実施例２ 水素添加ポリブテン（HAPB）の平均分子量を第１表の如
く変化させる他は、実施例１の本発明と同様に行なっ
て、各液状口紅（W/O型エマルジョン）を製造した。得
られた各液状口紅の実用性能等を第１表に示した。

第１表の結果から明らかなように、水素添加ポリブテン
の平均分子量は、500〜5000が適している。

比較例６ 水素添加ポリブテンの代りに、白色ワセリンを使用する
他は、実施例１の本発明と同様に行なって、比較の液状
口紅（W/O型エマルジョン）を製造した。その結果、得
られた液状口紅は、製造してから45℃恒温槽中で２ケ月
後に分離を起した。

実施例３（リップクリーム） 酸化第二鉄と二酸化チタンと赤色202号と黄色４号とチ
タン被覆マイカと使用せず、かつ水素添加ボリブテン45
部、流動パラフイン38部、マルチトール水溶液（濃度50
％）を12部使用する他は、実施例１と同様に行なって、
本発明のW/O型エマルジョンのリップクリーム（粘度は3
0℃において16000cps）を得た。

このリップクリームは、肌目がこまかく（極めて良
好）、そして45℃の恒温槽に６ケ月間放置した後も、外
観に異状がなく、保存安定性（乳化安定性）が極めて良
好であった。

このリップクリームは、チクソトロピック性を有してお
り、強く撹拌すると粘度は著しく低下し、流動性は増大
して容器（チューブ）への充填も容易であった。次に、
このリップクリームの実用テストを前記と同様に行なっ
た。その結果、塗布時の伸びが良いと答えた人は20人中
20人、唇への感触（滑らかな、しっとりとした感触）が
良いと答えた人は20人中18人、光沢が良いと答えた人は
20人中18人、唇への密着性（よれ、にじみ、動きがな
い）が良いと答えた人数は20人中18人であった。

実施例４（液状口紅） 流動パラフイン33部の代りにオリーブ油10部と流動パラ
フイン20部とシリコン油３部とを使用し、かつ水素添加
ポリブテンとして平均分子量が1000のものを使用する他
は、実施例１の本発明と同様に行なって、本発明の液状
口紅（W/O型エマルジョン）を製造した。得られた液状
口紅の粘度は30℃において21000cpsで、肌目がこまかく
（極めて良好）、そして45℃の恒温槽に６ケ月放置した
後の肌目も乳化状態も実質的に変化なく、保存安定性も
極めて良好であった。また、この液状口紅はチクソトロ
ピック性を有しており、強く撹拌すると粘度が低下し、
粘動性が増大して容器（チューブ）への充填も容易であ
った。

次に、この液状口紅の実用テストを前記と同様に行なっ
た結果、塗布時の伸びが良いと答えた人は、20人中20
人、唇への感触（滑らかな、しっとりとした感触）が良
いと答えた人は20人中18人、唇への密着性が良い（よ
れ、にじみ、動きがない）と答えた人は20人中18人、光
沢が良いと答えた人は20人中19人、化粧もちが良いと答
えた人は20人中18人であった。また専門検査員３人によ
る実用テストの結果では、唇に滑らかな、伸びの良い、
しっとりとしたタッチ（感触）と、深みのある良好な光
沢を与え、よれ、にじみ、動きなく、唇に対する密着性
が良く、化粧もちは良好であった。

比較例７（W/O型のリップスチック） カルナウバワックス9.0部、固形パラフイン7.0部、マイ
クロワックス5.0部、ラノリン9.0部、ヒマシ油15.0部、
スクアラン18.0部、ソルビタンモノオレート3.0部、二
酸化チタン4.0部、酸化第二鉄1.0部および赤色202号
（色素）2.0部をホモミキサーに入れ、80℃に加熱し撹
拌溶解する。この溶液（顔料は分散している）を80℃で
撹拌しながら、これにマルチトール7.0部と水20部とか
らなる水溶液（80℃）を添加混合して、乳化し、70℃に
降温した時点で香料適量を添加した。この口紅組成物は
W/O型のエマルジョンである。次にこれを口紅の成型用
金型に流し込み（温度70℃）、冷却してスチック状（直
径12.5mm）に成型した。

得られたW/O型のスチック状口紅と、前記実施例１の本
発明で得られたW/O型の液状口紅の実用性能を比較する
ために、パネル20人（女子年令19〜30才）による実用テ
スト（一対比較法）を行なった。その結果を第２表に示
した。

第２表の結果から明らかなように、本発明（実施例１）
の液状口紅（W/O型）は、前記のスチック状口紅（W/O
型）に比較して、塗布時の伸び、光沢、唇への密着性が
著しく優れている。

更に、このW/O型のスチック状口紅と、実施例１のW/O型
の液状口紅の前記伸びを数値的に評価するために、円錐
平板型粘度計を用い30℃でコーンとプレートの間に試料
を充填し、回転が1.5rpmの時に生じた各トルク値を測定
した。その結果、トルク（ｇ・cm）は、このW/O型のス
チック状口紅では50.7であるのに対して、本発明（実施
例１）のW/O型の液状口紅では8.3であって、非常に小さ
く、より伸びやすいこと（伸びが良いこと）を示してい
る。

実施例５ 更にキャンデリラワックスを3.0重量部を使用しかつ流
動パラフインを30部使用する他は、実施例１と同様に行
なって、本発明のW/O型の液状口紅（W/O型エマルジョ
ン）を製造した。得られた液状口紅は肌目がこまかく
（極めて良好）、そして45℃の恒温槽に６ケ月放置した
後の肌目も乳化状態も実質的に変化なく、保存安定性は
極めて良好であった。

また、専門検査員３人による実用テストの結果では、唇
に滑らかな、伸びのよい、しっとりとしたタッチ（感
触）と、良好な光沢を与え、よれ、にじみ、動きなく、
唇に対する密着性が良く、化粧もちは良好であった。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】デキストリン高級脂肪酸エステルと、平均
   分子量が500〜5000の水素添加ポリブテンと、マルチト
   ールと、液状油性物質と、水と、または更に色材が配合
   されていることを特徴とする、油中水滴型に乳化した液
   状の唇用化粧料。