JPH0754068A - NiTi金属間化合物の製造法 - Google Patents

NiTi金属間化合物の製造法

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JPH0754068A
JPH0754068A JP20072293A JP20072293A JPH0754068A JP H0754068 A JPH0754068 A JP H0754068A JP 20072293 A JP20072293 A JP 20072293A JP 20072293 A JP20072293 A JP 20072293A JP H0754068 A JPH0754068 A JP H0754068A
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heat treatment
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liquid phase
thickness
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JP20072293A
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Tsutomu Omori
勉 大森
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Nippon Yakin Kogyo Co Ltd
Original Assignee
Nippon Yakin Kogyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 厚板のみならず薄板状の高純度NiTi金属間化
合物を工業的に安価に製造すること。 【構成】 積層体を30%以上の圧下率で圧下してNi箔と
Ti箔とを圧着し、さらに一回以上の圧下を加えてNi箔お
よびTi箔各層の厚みがそれぞれ20〜3μmになるように
全体の厚み調整圧延を行い、このように圧延して得られ
た圧下積層材を、次に、予備固相拡散熱処理、固相拡散
熱処理、50at%TiよりもTi過剰側の部分のみが液相とな
る第1液相拡散熱処理を施し、50at%よりもNi過剰側の
部分のみが液相となる第2液相拡散熱処理を施し、最後
に、均質化熱処理を施す、という順次熱処理を施すこ
と。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、反応拡散技術を利用し
て、とくに圧下と熱処理に工夫を加えることによって、
Ni箔およびTi箔の積層体から、直接、NiTi金属間化合物
を簡易に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、NiTi系合金は、その組成に応じ
て様々な機能を示すことから、各種の機能材料として多
方面にわたり実用化が進められている。従来、NiTi系合
金の板材や線条材は、通常の金属材料と同様に、溶解−
熱間圧延−冷間圧延−中間軟化焼鈍−冷間圧延……最終
製品という工程を経て製造されていた。しかしながら、
この方法による製造は、後述するNiTi系合金に特有の性
質上、困難な面があったたことから、それに代わるもの
として、粉末焼結法も開発されている。この粉末焼結法
は、NiおよびTi粉末を目標組成となるような割合で混合
し、この混合粉末をプレス、HIP、CIPおよび冷間
粉末圧延法などの成形技術によって目的とする製品形状
かまたはそれに近い形状に圧粉成形したのち、高温焼結
を施してNiとTiの反応拡散により単相のNiTi系合金を得
ようとするものである。この方法によれば、前述した溶
解から冷間加工を経る方法に較べると、成分調整時や中
間工程における歩留りは格段に向上する。
【0003】上述した各方法が、現在、NiTi系合金の製
造に用いられている一般的な方法であるが、これらの製
造法が有する問題点を解決する他の製造手段として、さ
らに、特開昭59−116340号公報や特開昭61−104006号公
報には、NiとTiをメッキまたは蒸着などの膜形成法によ
り密着させてから加熱し、ついで反応拡散法によってNi
Ti相を得る方法が提案されている。
【0004】また、特開昭62−120467号公報には、NiTi
系合金の線条材について、上記特開昭59−116340号公報
に開示の技術の改良方法として、Ti心線の表面をNiで被
覆した複合線条材を複数本束ね、ついで縮径加工を施し
てから、拡散処理によってNiTi相を生成させる方法が提
案されている。この方法は、線条材の製造方法としては
十分に実用的であり、また得られた線条材を圧迫するこ
とによって、数mm〜数cm程度の板条材の製造も可能であ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したようにNiTi系
合金については、種々の製造方法が提案されているが、
いずれも以下にのべるとおり、解決すべき多くの問題点
を残していた。その主な原因は、NiTi系合金が有用な特
性を示すのはNiとTiの原子比が1:1付近の限られた組
成であるが、この組成範囲では通常の金属材料に比べ
て、冷間加工性が極めて悪い点にある。
【0006】たとえば、板状のNiTi系合金を得るために
一般的に用いられている、溶解−熱間圧延−冷間圧延−
中間軟化焼鈍−冷間圧延……最終製品という製造工程で
は、冷間圧延と中間軟化焼鈍工程をかなりの回数繰返さ
なければ所定の厚みまで加工することができない。この
連続加工−軟化焼鈍の繰返しは、圧延中における耳割れ
の発生、焼鈍酸洗時における酸化・酸洗ロス等による歩
留りの低下、さらには焼鈍時の酸化による材質の劣化な
どの原因となり、そのためNiTiは生産性が悪く、また価
格も高いものとならざるを得なかった。とくに、低温に
おける超弾性を発現させるために必要なNi含有量が61at
%以上の組成のものについては、冷間加工による板製品
の製造は工業的には事実上不可能であった。このように
NiTi合金は難加工性であるため、従来大量に製造されて
いるのは加工が比較的容易な線材が主であり、板材の生
産量は極めて少ない。
【0007】この他にも、生産性を阻害し、コストを上
昇させる大きな要因として、適正組成への溶解の難しさ
が挙げられる。たとえば、形状記憶材料においては、そ
の動作温度を目標どおりに制御することが最も重要であ
るが、NiTi合金の場合、Ni濃度が 0.1%変化しただけで
動作温度は10℃も変化する。そのため正確な成分調整が
不可欠であるが、Tiは高温で極めて活性に富み、溶解鋳
造時に酸化ロスや鋳型との反応などで失われてしまうた
め、目標どおりの組成に調整することは極めて難しかっ
た。従って、溶解には特別の設備を必要とし、かかる要
因が歩留り良く一定の品質のものを安価に製造すること
を妨げていたのである。
【0008】上述した溶解および冷間加工に伴う諸問題
を回避する方法として開発されたのが粉末焼結法である
が、この方法では、それ自体製造が難しくまた高価でも
あるTi粉末を用いなければならないこともあって、やは
り製品価格は高くならざるを得なかった。従って、粉末
焼結法は、複雑形状または少量多品種の部材製造に適用
する場合にはそれなりの利点があると言えるけれども、
板条材のようにある程度まとまった量を安定かつ安価に
供給しなければならない製品の製造には適しない。さら
に、反応拡散を用いるという点で粉末焼結法と同じ原理
に基づき、しかも粉末焼結法に較べてより安価に板条材
を製造する方法として提案された特開昭59−116340号公
報に開示の方法を、実際の板条材の製造に適用した場合
には、 0.1mm厚程度の単相のNiTi合金板を得ようとする
場合にも数百時間にも及ぶ長時間の拡散熱処理を必要と
する。また、NiおよびTi各層の層厚が厚い場合には、拡
散熱処理中に材料内部にボイドなどの欠陥が多発し、組
織の健全性が害されることから、この方法で実用材料と
して製造可能な板厚は、せいぜい数十μm 程度にすぎな
い。従って、この方法も工業的製造方法として実用的と
はいい難い。
【0009】なお、上記反応焼結法による製造方法の延
長と考えられるものに、特開昭64−31938 号公報に開示
された方法がある。この方法は、とくにNiTiには限定し
ていないが、箔状の金属素材を複数層積層し、その後熱
処理によって拡散を起こさせるというものである。しか
しながらこの従来技術は、反応拡散が固相拡散であり、
Ni−Ti間の反応拡散、とくに平面状に積層したNi−Ti板
の固相反応拡散の場合には、粉末を素材とした場合に比
べると、以下に列挙するような特有な問題が生じるた
め、実用に耐え得る品質の材料は得がたく、また所要時
間も長い。なお、これらの点については、本発明者らの
実験により確かめられている。
【0010】(1) 第1の点は、反応拡散に要する時間で
あり、同一重量で考えた場合、粉末に比較して拡散が進
行する界面の面積(比表面積mm2/g)が少ないため、拡散
の進行に長時間を要することである。 (2) 第2の点は、上記したところと同じ原因により、単
位界面面積当りを通過する原子の絶対数が増大すること
から、相互拡散に特有の現象であるカーケンドール効果
によるボイドの発生が多発することである。とくに、Ni
とTi間の相互拡散の場合、Ti中のNi原子の拡散速度の方
がNi中のTi原子の拡散速度に較べて1000倍以上も大きい
ために、界面近傍においてNi原子が欠乏する傾向が大き
く、そのためカーケンドールボイドの発生が顕著とな
る。ボイドの発生は、単に組織を害するだけでなく、と
くに界面ボイドはそれ以降の反応拡散の障害となり、組
成均質化の妨げともなるので、極力減少する必要があ
る。なお、ボイドの発生は、反応拡散の熱処理温度と密
接な関係にあり、Ni−Tiの場合には 700℃程度の比較的
低い温度ではボイドの発生をある程度抑制することがで
きる反面、拡散速度が遅くなるため組成の均質化には長
時間を要し、実用的ではない。一方、反応時間を短縮す
るために 900℃程度の固相反応上限温度近傍で熱処理を
行うと、ボイドの多量の発生を招く。 (3) 第3の点は、これもNiとTiの相互拡散速度の差に起
因する現象で、NiとTi層との間に拡散の進行に伴って体
積の増減が起こり、その結果、界面に応力が発生して機
械的な剥離現象が生じることである。この点につき、い
ま少し具体的に説明すると、原子を優先的に放出するNi
層の方は当然体積が相対的に減少する方向に向かい、そ
の際における減少の仕方は、マクロ的には厚さ方向の層
厚の減少となって現れる。他方、原子を吸収する側のTi
層の方は、マクロ的にみると層厚の増加と共に層の平面
方向にも膨張することとなる。そのため、NiとTi層の境
界付近では平面方向に剪断力が働くことになり、その結
果、界面で機械的剥離が生じることになる。 上述した理由により、特開昭64−31938 号公報に開示の
製造法は、工業的規模での適用が実際的とは言えないわ
けである。
【0011】なお、特開昭62−120467号公報に開示の製
造法は、線条材の製造に際しては工業的に充分利用可能
と言えるけれども、この方法で得られる板条材の寸法
は、元になる線条材の寸法が限られているため自から限
界があり、厚肉のものや広幅のものなど多様な寸法要求
には応えられない。本発明は、上記の諸問題を有利に解
決するもので、たとえ薄肉または広幅なものであって
も、工業的に安価に製造することができるNiTi金属間化
合物の有利な製造方法を提案することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】さて、本発明者らは、上
記の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、反応拡散
の形態を単に固相拡散だけではなく、液相を利用した液
相拡散で行うこと、また、一部に液相は生じるが、それ
はあくまでも一部であって、反応拡散の途中では必ず、
Ni箔もしくはTi箔またはそれらの既に生成した金属間化
合物層のいずれか少なくとも一部は固相状態も残るよう
な段階的な熱処理を行うこと(このことは、積層形状が
乱れないという効果を生む)、さらには、均質化処理を
も行うことが、所期した目的の達成に関し、極めて有効
であることの知見を得た。すなわち、Ni−Ti二元系状態
図上で特定の組成範囲で液相を生成するような温度範囲
を選んで熱処理を行い、NiとTiの界面に部分的に液相を
生じさせてみたところ、反応が短時間に終了するのみな
らず、欠陥が極めて少ない材料を得ることができたので
ある。
【0013】なお、固相間の反応に液相を介在させる手
法としては、粉末冶金における液相焼結法が知られてい
るが、この方法は、比較的体積分率の少ない低融点のバ
インダーとなる成分のみを液相として利用している。こ
れに対し、本発明で利用する方法は、液相焼結法におけ
るバインダーのような概念ではなく、拡散の進行に伴っ
て液相生成界面を順次に移動させる方法である。従っ
て、熱処理条件によっては最終的に材料のほぼ 100%に
近い部分が少なくとも一度は液相状態を得ることになる
という、液相焼結法とは全く異なる特徴を有している。
【0014】本発明は、Ni箔とTi箔の交互積層体を圧着
(接合)のためのクラッド圧延を施し、次いで厚み調整
圧延を施したのち、固相拡散領域での熱処理に引続き、
一部で(全部ではない)液相が生じる一部液相拡散領域
での熱処理を行う点に特徴がある。
【0015】すなわち、本発明は、Ni箔とTi箔を交互に
積層して積層体とし、この積層体を圧下してほぼ製品板
厚に減厚し、次いでこの減圧した加圧積層材を熱処理す
ることにより、48〜55at%Ni組成のNiTi金属間化合物を
製造する方法において、始めに、前記積層体を30%以上
の圧下率で圧下してNi箔とTi箔とを圧着し、さらに一回
以上の圧下を加えてNi箔およびTi箔各層の厚みがそれぞ
れ20〜3μmになるように全体の厚み調整圧延を行い、
次に、このように圧延して得られた圧下積層材を、 650 〜780 ℃の温度域に1〜10時間保持する予備固
相拡散熱処理を施し、 781 〜955 ℃の温度域に1〜10時間保持する固相拡
散熱処理を施し、 956 〜1110℃の温度域に10分から1時間保持する50
at%TiよりもTi過剰側の部分のみが液相となる第1液相
拡散熱処理を施し、 1111〜1240℃の温度域に1〜10分保持する50at%Ni
よりもNi過剰側の部分のみが液相となる第2液相拡散熱
処理を施し、 最後に1000〜1100℃の温度域に1〜10時間保持する
均質化熱処理を施す、 という順次熱処理を施すことを特徴とするNiTi金属間化
合物の製造法、である。
【0016】
【作用】本発明は、Ni箔とTi箔との交互積層と、該積層
材に施す一部液相が生じる状態での反応拡熱処理を基本
とするが、以下にその積層法と反応拡散熱処理の具体的
な内容について説明する。本発明では、NiTi金属間化合
物を製造するために、Ni箔とTi箔との相互拡散現象を利
用している。本発明では薄板状の製品を製造することを
目的としているため、まずNi箔およびTi箔が層状に重な
った積層体を造り、その後、そのNi箔とTi箔の界面で拡
散を行わせる。このときに重要なことは、円滑に拡散を
行わせるためにはNi箔とTi箔との界面が物理的に密着し
ている必要がある。本発明の場合、その密着を確保する
ために、Ni箔とTi箔とを交互に重ねて得られる積層体
を、まず圧下率30%以上の冷間圧延を施すことによって
果たす。この圧延時の圧下率を30%以上とするのは、こ
の値以下では両者の接合強度が弱く、圧延後に簡単には
がれてしまうなど実用に適しない密着度しか得られない
ためである。圧下率の上限は特に定めないが、圧延機の
能力上、60%以上の圧下率を施すのは困難である。接合
方法としては、HIP、熱間クラッド圧延等が適用可能
であるがコスト、生産性などの面から冷間クラッド圧延
が最も工業的に有用である。
【0017】しかも、本発明方法では、上述のようにし
て行う冷間クラッド圧延で接合させた後の積層材に対
し、さらに1回以上の圧延を繰返して圧下を加えること
により、Ni箔, Ti箔とも各層の厚みがそれぞれ20〜3μ
mになるようにして、しかも全体の板厚を目標の製品板
厚になるように調整する。この方法において、積層した
各箔の厚みを20〜3μmに圧下して減厚するのは、一層
の厚みが20μm以上では、本発明で行う拡散処理方法を
もってしても最終的に得られるNiTi金属間化合物中にボ
イドや組成の不均一(偏析)が存在してしまい、品質が
劣化してしまうからである。また、箔一層の厚みの下限
を3μmにするのは、拡散熱処理に要する時間の低減お
よび組織の健全化に対しては3μmで必要充分であり、
それ以下の厚みにした場合にはコストの上昇や生産性の
低下を招くからである。しかも、20μm以下というよう
な極薄の箔を素材として用いるのはコストが高く実用的
でないため、本発明では数mm〜数百μmの板厚の素材を
冷間クラッド圧延し、その後その積層材をさらに圧延を
加えることにより、より薄くすることにより、積層した
各箔の厚みを、所定の極薄箔(20〜3μm)にすること
を特徴としている。
【0018】次に、加圧積層材を反応拡散させて金属間
化合物にするための熱処理の方法について説明する。 予備固相拡散:多層積層状態のNi/Tiを急激に 781
℃以上の温度にすると反応熱により自己発熱溶解してし
まうため、あらかじめ緩やかな温度条件で拡散の緩衡帯
となる反応層を生成させておく。 固相拡散: 液相拡散時に急激な反応により自己発
熱溶解してしまうのを防ぐため、緩衡帯となる反応層を
生成させておく。 第1液相域: Tiリッチ側の未反応層を液相状態と
し反応拡散させる。 第2液相域: Niリッチ側の未反応層を液相状態と
し反応拡散させる。 均質化域: NiTi中の濃度不均一を均すための熱処
理(ソーキング)。
【0019】以下に、各段階の熱処理についてさらに詳
しく説明する。 予備固相拡散処理;650 〜780 ℃に1〜10時間保持
するこの熱処理は、図1に示すNi−Ti二元系状態図上
で、αTi-Ti2Niが存在する上限温度780 ℃と、Ni−Ti系
において実用的な相互拡散速度が得られる下限の温度65
0 ℃の間の温度域での熱処理である。この温度域では固
相拡散により反応が進行し、TiとNiの界面に Ti2Ni、Ni
Ti、Ni3Tiの化合物が層状に生成する(図2(b))。この
熱処理の目的は、その後に行う液相拡散熱処理の前処理
を行うことにあり、NiとTiからNiTi金属間化合物が生成
する反応が発熱反応であるため、積層板を急激に加熱し
た場合に反応が進みすぎて自己の発熱により融点を超え
て溶解してしまうのを防ぐことにある。この段階におけ
る熱処理では、NiとTiとの界面に、Ni3Ti, TiNi および
Ti2Niなどの層を生成させることにより、NiとTiが直接
反応して自己発熱反応による溶解を防止することにあ
る。
【0020】 固相拡散処理;781 〜955 ℃の温度域
に1〜10時間保持するこの熱処理は、図1に示すNi−Ti
二元系状態図上で、液相が生じない上限の温度 955℃
と、Ti側がβ相になる下限温度 781℃の間の温度域での
熱処理である。この温度域での反応は、上記650 〜780
℃の温度域での熱処理と同様であるが、拡散速度が非常
に速い。例えば、上記 650〜 780℃の温度域での熱処理
を行わずにこの温度域での熱処理を行うと自己発熱反応
により材料が溶融してしまうが、液相拡散の前処理とし
て充分な量の反応相を生成させるためには、上記熱処理
だけでは長時間を要するため、この温度域での熱処理が
必要となる。
【0021】 液相1拡散処理;956〜1110℃の温度
域に10分から1時間保持するこの熱処理は、図1に示す
Ni−Ti二元系状態図上で、βTi−Ni固溶体およびTi2Ni
と液相とが共存する温度範囲( 図中、領域I)で拡散熱
処理を行うものであり、また、βTi−Ni固溶体およびTi
Niと液相とが共存する温度範囲でかつ、TiNiよりもNiリ
ッチ側では液相が生成しない温度範囲(図中、領域II)
で熱処理を行うものである。領域Iの温度範囲では、Ti
リッチ側の相に液相が生じ、理想的に反応が進行した場
合には、最終的に材料全体の83 vol%が液相となり、Ti
リッチ側の相が全てTi2Ni となった時点で液相反応は終
了する(図2(c))。実際には、固相であるNi側にも固相
拡散によって若干Tiが拡散して行くので、液相生成率は
83 vol%未満である。また、領域IIの温度範囲では、Ti
リッチ側の相に液相が生じ、理想的に反応が進行した場
合には最終的に材料全体の 99vol%程度が液相となり、
Tiリッチ側の相が全て48at%Ni−52at%Tiの組成(状態
図上のTiNiとTiNi+液相共存領域の境界線上の組成)と
なった時点で液相反応は終了する(図2(d))。実際の液
相生成率は、積層状態におけるNiTiとNiTi+液相の2領
域の境界も完全に確定されているわけではないので、現
時点では明確には規定できない。この温度範囲では、材
料のほぼ全量が、一度は液相状態を経ることから、NiTi
単相になるまでの反応は短時間(10分〜1時間)で完了
する。反応が律速となるのは、βTi−Ni固溶体の溶融が
生じるための固溶体中へのNiの拡散、あるいはβTi−Ni
固溶体と液相界面での溶融反応であると考えられるが、
どちらもさして問題となるほど遅い反応ではない。な
お、この反応の進行過程において液相部分を保持するの
は、主に固相状態にあるNi相であり、その他拡散反応に
よりNi相の外側に生成したTiNi3 およびTiNi相である。
【0022】液相反応終了後の材料中には少量の未反応
Ni相および/または固相拡散反応によって生成したNi2T
i 相が残存している。この温度範囲で液相反応終了後長
時間保持すると固相拡散に移行し、材料全体が均一な組
成になるまで反応拡散が進行するが、より短時間で均質
化を行うために、次の液相2拡散処理を行う。
【0023】 液相2拡散処理;1111〜1240℃の温度
域に1〜10分保持するこの液相2熱処理は、図1の状態
図上で、NiTiよりもTiリッチ側でβTi−Ni固溶体および
TiNiと液相とが共存し、かつNiTiよりもNiリッチ側では
TiNi3 およびTiNiと液相とが共存する温度範囲(図中、
領域III)で熱処理を行うものである。この領域III の温
度範囲では、それまで固相状態を保っていたNi相の残
り、ならびに反応によって生成したTiNi3 およびTiNiの
一部が液相状態となり、全体がTiNi単相となった状態で
反応が終了する(図2(e))。
【0024】このような2段階にわたる液相処理によれ
ば、材料の全量が一度は液相状態を経るものの、前半段
階ではNi相の一部が、一方後半段階では反応により生成
したTiNi相の一部が常に固相状態で存在するので、材料
が溶融してその形状を保持できなくなるような事態に至
ることはない。
【0025】 均質化熱処理;上記4段階の熱処理に
よって、積層材料は全てNiTi単相となっているが、なお
状態図上のNiTiの組成幅に応じた組成のばらつきがある
ため、1000〜1100℃で1時間〜10時間の均質化熱処理を
施す(図2(e))。
【0026】なお、本発明において、製造すべきNiTi金
属間化合物のNi組成を48〜55at%の範囲に限定したの
は、次の理由による。すなわち、下限のNi含有量を48at
%としたのは、それ以下では形状記憶合金あるいは超弾
性合金として有利な特性をもつものが得られない。一
方、その量が55at%を超えると、材料が脆くなり、疲労
強度などの面から実用に適しないからである。
【0027】また本発明において、Ni−Ti交互積層の形
成方法としては、箔を交互に重ねる方法をはじめとし
て、スパッタリングやCVD法などの気相蒸着法など、
従来公知の方法いずれもが適合する。このとき各相の厚
みは、処理時間を考慮すると薄いほど好ましいが、20μ
m 以下程度であれば実際上問題はない。要は、Ni, Ti各
層の全体厚みをそれぞれ目標組成となるように厳密に管
理することである。なお、組成は積層数にも影響する。
【0028】以上に説明した本発明にかかるNiTi金属間
化合物の利用形態に形状記憶材料があるが、一般にNiTi
の形状記憶合金については、実用上、「記憶のボケ」が
重要な問題となっている。この点、本発明にかかるNiTi
金属間化合物は、この「記憶のボケ」がなく、他の製造
方法によって得られるものに比較すると極めて優れてい
る。この理由は、本発明法の下で得られたNiTi金属間化
合物中には、拡散前のTi層中心部に対応して微細なTi酸
化物が層状に分散しているため、長時間の拡散処理、あ
るいは形状記憶処理に必要な溶体化処理に際しても結晶
粒粗大化が起こらないためと考えられる。
【0029】一般的にも、形状記憶特性向上のために細
粒化が有効なことは広く知られているが、本発明にかか
る材料について、この材料の組織を観ると、結晶粒は板
厚方向には層状の酸化物層で粒成長が抑制されており、
断面でみるといわゆるバンブーストラクチャーのように
長手方向に若干伸びた長方形の結晶粒で構成されている
(実際には板幅方向にも伸びた厚さ10μm程度の円盤状
に近い形状) 。しかも、酸化物による分散強化も特性向
上に寄与している可能性もある。この点、単に拡散させ
ることだけを目的としている上記従来技術などの他の方
法では、結晶粒が粗大化し実用上は役に立つ材料は製造
できない。また、粉末冶金法による材料でも、同様の細
粒化が起きるが、酸化物の量が多すぎるために脆化が先
に立ち、良好な材料が得られない。
【0030】
【実施例】本発明法に従ってNiTi金属間化合物を製造す
るために、まず次のようにして素材を作成した。NiとTi
の原子比を50.5:49.5とするため、板厚比で38.8:61.2
となるように板厚を調整した純Ni板( 厚み 0.40mm)と純
Ti板( 厚み 0.63mm)をそれぞれ交互に、Ni板を外層とし
て7枚積層した。ただし、最外層のNiは板厚を半分の
0.20mm とし、全体の板厚比が38.8:61.2となるように
調整した。この積層体を3.09mmから2.0mm となるよう圧
延率35%で圧延し各層を接合させた。その後、数回の圧
延により、この積層材を厚み 100μmになるまで圧延し
た。この時の層の平均厚みは約17μmとなった。その
後、上記圧延積層材を、1×10-5torr以上の真空雰囲気
下で、 750℃−4時間の予備固相拡散熱処理を施し、 9
00℃−1時間の固相拡散熱処理を施し、1050℃−30分の
第1液相拡散熱処理を施し、1150℃−5分の第2液相拡
散熱処理を施し、最後に1000℃−10時間の均質化熱処理
を施した(図3)。なお、昇温時間、降温時間はともに
10℃/min とした。また、熱処理は素材をジルコニアセ
ラミックスの平板上に平らに載せた状態で行った。
【0031】かくして得られた試験片を室温で変形させ
たのち、90℃の温水中に浸したところ、直ちに元の形状
に復元した。また、この試験片の断面を顕微鏡で観察し
たところ、拡散熱処理前に存在した積層構造は消失し
て、NiTi単相の母相、および積層時のTi層の中心にあた
る部分に沿って層状に分散している微細なTi酸化物が観
察された。また、硝酸、弗酸混合液でエッチングしたと
ころ結晶粒は、板厚方向にはTi層の間隔に対応して高さ
約30μm、板幅方向にはその 1.5倍程度の長さの長方形
の形状になっていた。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、Ni
Ti金属間化合物のとくにその薄板を、組織欠陥の発生を
招くことなく、容易(短時間)に製造することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、Ni−Ti二元系状態図である。
【図2】図2(a) 〜(e) は、各熱処理段階の拡散状態の
概念を示す。
【図3】図3は、NiTi拡散熱処理パターンを示すグラ
フ。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni箔とTi箔を交互に積層して積層体と
    し、この積層体を圧下してほぼ製品板厚に減厚し、次い
    でこの減圧した加圧積層材を熱処理することにより、48
    〜55at%Ni組成のNiTi金属間化合物を製造する方法にお
    いて、 始めに、前記積層体を30%以上の圧下率で圧下してNi箔
    とTi箔とを圧着し、さらに一回以上の圧下を加え、Ni箔
    およびTi箔各層の厚みがそれぞれ20〜3μmになるよう
    に全体の厚み調整圧延を行い、 このように圧延して得られた圧下積層材を、次に、 650 〜780 ℃の温度域に1〜10時間保持する予備固
    相拡散熱処理を施し、 781 〜955 ℃の温度域に1〜10時間保持する固相拡
    散熱処理を施し、 956 〜1110℃の温度域に10分から1時間保持する50
    at%TiよりもTi過剰側の部分のみが液相となる第1液相
    拡散熱処理を施し、 1111〜1240℃の温度域に1〜10分保持する50at%Ni
    よりもNi過剰側の部分のみが液相となる第2液相拡散熱
    処理を施し、 最後に1000〜1100℃の温度域に1〜10時間保持する
    均質化熱処理を施す、という順次熱処理を施すことを特
    徴とするNiTi金属間化合物の製造法。
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