JPH0751888A - 高温、高濃度硫酸用高Si含有ステンレス鋼溶接ワイヤ - Google Patents
高温、高濃度硫酸用高Si含有ステンレス鋼溶接ワイヤInfo
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- JPH0751888A JPH0751888A JP20391793A JP20391793A JPH0751888A JP H0751888 A JPH0751888 A JP H0751888A JP 20391793 A JP20391793 A JP 20391793A JP 20391793 A JP20391793 A JP 20391793A JP H0751888 A JPH0751888 A JP H0751888A
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Abstract
(57)【要約】
【構成】重量%で、C:0.08%以下と、Si:5.
0〜8.0%と、Mn:2.0%以下と、Ni:10〜
35%と、Cr:10〜25%と、Cu:0.5〜3.
0%、Mo:0.2〜2.0%、及びPd:0.005
〜1.0%からなる群から選択された1種以上と、残部
Fe及び不可避的不純物からなり、且つCr,Mo,S
i及びNi含有量が(1)式を満たす高温、高濃度硫酸
用高Si含有ステンレス鋼溶接ワイヤ。 −2≦Cr(%) +Mo(%) +3×Si(%) −Ni(%) −
14<20…(1) 【効果】溶接時の高温割れもなく、95%硫酸中におい
ては65〜100℃、98%硫酸中では150〜220
℃の環境で良好な耐食性を有し、かつ延性に優れた溶接
部が得られる。
0〜8.0%と、Mn:2.0%以下と、Ni:10〜
35%と、Cr:10〜25%と、Cu:0.5〜3.
0%、Mo:0.2〜2.0%、及びPd:0.005
〜1.0%からなる群から選択された1種以上と、残部
Fe及び不可避的不純物からなり、且つCr,Mo,S
i及びNi含有量が(1)式を満たす高温、高濃度硫酸
用高Si含有ステンレス鋼溶接ワイヤ。 −2≦Cr(%) +Mo(%) +3×Si(%) −Ni(%) −
14<20…(1) 【効果】溶接時の高温割れもなく、95%硫酸中におい
ては65〜100℃、98%硫酸中では150〜220
℃の環境で良好な耐食性を有し、かつ延性に優れた溶接
部が得られる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、硫酸製造プラントの
乾燥塔、吸収塔等の装置材料として有用な、延性、耐高
温割れ性ならびに高温、高濃度硫酸中での耐食性に優れ
た高Si含有ステンレス鋼の溶接ワイヤに関する。
乾燥塔、吸収塔等の装置材料として有用な、延性、耐高
温割れ性ならびに高温、高濃度硫酸中での耐食性に優れ
た高Si含有ステンレス鋼の溶接ワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】接触式硫酸製造法で重要となる吸収、乾
燥、冷却工程において、装置材料は一般的に、濃度95
〜99%、温度65〜120℃の硫酸環境に曝される。
本材料としては、従来、耐酸レンガを内張りした炭素
鋼、Cr鋳鉄、高Si鋳鉄、ステンレス鋼、高Ni合金
等が使用されている。しかし、耐酸レンガでは長時間使
用すると目地より硫酸が浸透し、外側の炭素鋼が腐食さ
れる問題がある。また、鋳鉄では装置の設計上、制限を
受けるばかりでなく、内部欠陥が多いためメインテナン
スにも難がある。一方、ステンレス鋼及び高Ni合金は
構造用材料として適しているが、SUS316L等の汎
用ステンレスでは上記環境に耐えず、また、UNS N
10276等の高Ni合金でも100℃以上の温度では
使用できない。
燥、冷却工程において、装置材料は一般的に、濃度95
〜99%、温度65〜120℃の硫酸環境に曝される。
本材料としては、従来、耐酸レンガを内張りした炭素
鋼、Cr鋳鉄、高Si鋳鉄、ステンレス鋼、高Ni合金
等が使用されている。しかし、耐酸レンガでは長時間使
用すると目地より硫酸が浸透し、外側の炭素鋼が腐食さ
れる問題がある。また、鋳鉄では装置の設計上、制限を
受けるばかりでなく、内部欠陥が多いためメインテナン
スにも難がある。一方、ステンレス鋼及び高Ni合金は
構造用材料として適しているが、SUS316L等の汎
用ステンレスでは上記環境に耐えず、また、UNS N
10276等の高Ni合金でも100℃以上の温度では
使用できない。
【0003】一般に乾燥塔での操業環境は、濃度95
%、温度65℃程度の硫酸中であるが、配管類の一部に
おいては100℃程度まで温度が上昇することもある。
さらに、98%硫酸環境である吸収塔は、現状100〜
120℃で操業されているが、温度を上げることにより
操業効率の向上を図ることが可能となるため、150℃
以上での使用に耐える材料が必要とされている。
%、温度65℃程度の硫酸中であるが、配管類の一部に
おいては100℃程度まで温度が上昇することもある。
さらに、98%硫酸環境である吸収塔は、現状100〜
120℃で操業されているが、温度を上げることにより
操業効率の向上を図ることが可能となるため、150℃
以上での使用に耐える材料が必要とされている。
【0004】上記環境での使用を目的としたステンレス
鋼として、特開昭52−4418号公報及び特開平2−
290949号公報には、ステンレス鋼のSi含有量を
高めることにより、95%及び98%のいずれの硫酸濃
度においても高温まで良好な耐食性が得られると開示さ
れている。
鋼として、特開昭52−4418号公報及び特開平2−
290949号公報には、ステンレス鋼のSi含有量を
高めることにより、95%及び98%のいずれの硫酸濃
度においても高温まで良好な耐食性が得られると開示さ
れている。
【0005】しかし、高Si含有ステンレス鋼ではSi
含有量の増加にともない、硬い(HV:500〜100
0)金属間化合物等の脆化相が生成する。特に、溶接金
属では偏析が著しいため、この脆化相が増加し延靭性は
極端に低下する。また、Ni−Si系金属間化合物は低
融点であるため、溶接時にクレーター部等で高温割れが
発生し易い。
含有量の増加にともない、硬い(HV:500〜100
0)金属間化合物等の脆化相が生成する。特に、溶接金
属では偏析が著しいため、この脆化相が増加し延靭性は
極端に低下する。また、Ni−Si系金属間化合物は低
融点であるため、溶接時にクレーター部等で高温割れが
発生し易い。
【0006】このため、特開昭52−4418号公報及
び特開平2−290949号公報では、高Si含有ステ
ンレス鋼の溶接材料として、Ni当量をコントロールす
ることにより延靭性及び耐高温割れ性を改善する方法が
開示されている。
び特開平2−290949号公報では、高Si含有ステ
ンレス鋼の溶接材料として、Ni当量をコントロールす
ることにより延靭性及び耐高温割れ性を改善する方法が
開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】特開昭52−4418
号公報及び特開平2−290949号公報によるもので
は、上記した溶接部の延靭性、耐高温割れ性が全く考慮
されていない。一方、特開昭52−4418号公報及び
特開平2−290949号公報によるものは、耐硝酸用
として発明されたものであり、上記環境では十分な耐食
性を有しておらず、また、溶接部の延性は未だ十分とは
いえず、曲げ加工等が困難である。
号公報及び特開平2−290949号公報によるもので
は、上記した溶接部の延靭性、耐高温割れ性が全く考慮
されていない。一方、特開昭52−4418号公報及び
特開平2−290949号公報によるものは、耐硝酸用
として発明されたものであり、上記環境では十分な耐食
性を有しておらず、また、溶接部の延性は未だ十分とは
いえず、曲げ加工等が困難である。
【0008】そこで、特開平5−104282号公報に
おいて、Pdを適量添加することによりSi含有量を低
減しても高温高濃度硫酸中における耐食性が良好で、且
つ曲げ加工性に優れた溶接材料が提案された。しかし、
この溶接材料も耐高湿割れ性の観点からは十分とは言え
ず、クレーター部で割れが発生することもある。
おいて、Pdを適量添加することによりSi含有量を低
減しても高温高濃度硫酸中における耐食性が良好で、且
つ曲げ加工性に優れた溶接材料が提案された。しかし、
この溶接材料も耐高湿割れ性の観点からは十分とは言え
ず、クレーター部で割れが発生することもある。
【0009】この発明は上記のような従来技術における
問題を解決するためになされたもので、高Si含有ステ
ンレス鋼の成分範囲を規定することにより、95%硫酸
中においては100℃まで、98%硫酸中では150℃
以上の環境で良好な耐食性を有し、かつ溶接部の延性と
耐高温割れ性に優れたステンレス鋼溶接ワイヤを得るこ
とを目的とする。
問題を解決するためになされたもので、高Si含有ステ
ンレス鋼の成分範囲を規定することにより、95%硫酸
中においては100℃まで、98%硫酸中では150℃
以上の環境で良好な耐食性を有し、かつ溶接部の延性と
耐高温割れ性に優れたステンレス鋼溶接ワイヤを得るこ
とを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記したような従来技術
における課題は、その組成が重量%で、C:0.08%
以下と、Si:5.0〜8.0%と、Mn:2.0%以
下と、Ni:10〜35%と、Cr:10〜25%と、
Cu:0.5〜3.0%、Mo:0.2〜2.0%、及
びPd:0.005〜1.0%からなる群から選択され
た1種以上と、残部Fe及び不可避的不純物からなり、
且つCr,Mo,Si及びNi含有量が(1)式を満た
すことを特徴とする高温、高濃度硫酸用高Si含有ステ
ンレス鋼溶接ワイヤにより解決される。 −2≦Cr(%) +Mo(%) +3×Si(%) −Ni(%) −14<20 …(1)
における課題は、その組成が重量%で、C:0.08%
以下と、Si:5.0〜8.0%と、Mn:2.0%以
下と、Ni:10〜35%と、Cr:10〜25%と、
Cu:0.5〜3.0%、Mo:0.2〜2.0%、及
びPd:0.005〜1.0%からなる群から選択され
た1種以上と、残部Fe及び不可避的不純物からなり、
且つCr,Mo,Si及びNi含有量が(1)式を満た
すことを特徴とする高温、高濃度硫酸用高Si含有ステ
ンレス鋼溶接ワイヤにより解決される。 −2≦Cr(%) +Mo(%) +3×Si(%) −Ni(%) −14<20 …(1)
【0011】
【作用】以下に、この発明のステンレス鋼溶接ワイヤの
成分添加理由、成分限定理由を述べる。Cは含有量が多
くなると炭化物を形成し、耐食性を劣化させるため、そ
の上限値は0.08%とする。
成分添加理由、成分限定理由を述べる。Cは含有量が多
くなると炭化物を形成し、耐食性を劣化させるため、そ
の上限値は0.08%とする。
【0012】Siは高温、高濃度硫酸中での耐食性を著
しく向上させる成分であるが、上記環境で良好な耐食性
を得るには、5.0%以上含有する必要がある。また、
8.0%を超えて添加すると多量の金属間化合物の生成
により、ワイヤ用素材の鋳造時に凝固割れが発生する。
したがって、Si含有量は5.0〜8.0%とする。
しく向上させる成分であるが、上記環境で良好な耐食性
を得るには、5.0%以上含有する必要がある。また、
8.0%を超えて添加すると多量の金属間化合物の生成
により、ワイヤ用素材の鋳造時に凝固割れが発生する。
したがって、Si含有量は5.0〜8.0%とする。
【0013】Mnは脱酸作用を有する成分であり、オー
ステナイト生成元素でもある。しかし、その含有量が
2.0%を超えると耐食性が劣化する。したがって、M
n含有量の上限値は2.0%とする。
ステナイト生成元素でもある。しかし、その含有量が
2.0%を超えると耐食性が劣化する。したがって、M
n含有量の上限値は2.0%とする。
【0014】Niはオーステナイト組織を得るのに必須
の成分であり、含有量が10%未満ではδフェライトや
金属間化合物等の脆化相が多くなり延性を劣化させる。
また、Cr,Mo及びSi含有量の増加にともないNi
含有量も多くする必要があり、詳細は後述する。ただ
し、その含有量を過多にするとコスト高になるばかりで
なく、Ni−Si系低融点化合物の形成により溶接時に
高温割れが発生し、また、溶接ワイヤの製造も不可能と
なるため、上限値は35%とする。
の成分であり、含有量が10%未満ではδフェライトや
金属間化合物等の脆化相が多くなり延性を劣化させる。
また、Cr,Mo及びSi含有量の増加にともないNi
含有量も多くする必要があり、詳細は後述する。ただ
し、その含有量を過多にするとコスト高になるばかりで
なく、Ni−Si系低融点化合物の形成により溶接時に
高温割れが発生し、また、溶接ワイヤの製造も不可能と
なるため、上限値は35%とする。
【0015】Crはステンレス鋼の一般的な耐食性に対
して最も重要な元素であり、高Si含有ステンレス鋼に
おいては、その含有量を10%以上とする必要がある。
一方、高温高濃度硫酸中での耐食性もCr含有量の増加
にともない向上するが、25%を超えると耐食性に及ぼ
す効果は飽和する。また、Cr含有量が多くなると脆化
相の析出が促進される。したがって、Cr含有量は10
〜25%とする。
して最も重要な元素であり、高Si含有ステンレス鋼に
おいては、その含有量を10%以上とする必要がある。
一方、高温高濃度硫酸中での耐食性もCr含有量の増加
にともない向上するが、25%を超えると耐食性に及ぼ
す効果は飽和する。また、Cr含有量が多くなると脆化
相の析出が促進される。したがって、Cr含有量は10
〜25%とする。
【0016】Cuは95%硫酸中での耐食性向上に有効
な成分であることを発明者らは見出した。特にその効果
は、温度が高くなるほど顕著となるが、含有量が0.5
%未満では発揮されない。また、3.0%を超えて添加
しても耐食性に及ぼす効果は飽和するので、Cu含有量
は0.5〜3.0%とする。
な成分であることを発明者らは見出した。特にその効果
は、温度が高くなるほど顕著となるが、含有量が0.5
%未満では発揮されない。また、3.0%を超えて添加
しても耐食性に及ぼす効果は飽和するので、Cu含有量
は0.5〜3.0%とする。
【0017】Moは95%硫酸中での耐食性向上に有効
な成分であることを発明者らは見出したが、含有量が
0.2%未満ではその効果が発揮されない。また、2.
0%を超えて添加しても耐食性に及ぼす効果は飽和し、
かつ含有量の増加にともない脆化相の形成が促進される
ので、上限値は2.0%とする。
な成分であることを発明者らは見出したが、含有量が
0.2%未満ではその効果が発揮されない。また、2.
0%を超えて添加しても耐食性に及ぼす効果は飽和し、
かつ含有量の増加にともない脆化相の形成が促進される
ので、上限値は2.0%とする。
【0018】Pdは硫酸中での耐食性向上に有効な成分
であることを発明者らは見出した。しかし、その含有量
が0.005%未満ではその効果が発揮されず、また、
1.0%を超えて添加しても耐食性に及ぼす効果は飽和
し、コスト高となる。したがって、Pd含有量は0.0
05〜1.0%とする。
であることを発明者らは見出した。しかし、その含有量
が0.005%未満ではその効果が発揮されず、また、
1.0%を超えて添加しても耐食性に及ぼす効果は飽和
し、コスト高となる。したがって、Pd含有量は0.0
05〜1.0%とする。
【0019】また、本発明者らは、溶接時の耐高温割れ
性、及び溶接後熱処理後の溶接金属の延性と第二相との
関係を詳細に検討した結果、高温割れ防止のためにはδ
フェライトを生成させる必要があり、一方、延性は脆化
相の体積率が15%以上になると著しく低下することが
明らかとなった。さらに、溶接材料の成分と溶接金属に
おける第二相との関係を調査した結果、δフェライトを
生成し、且つ脆化相の体積率を15%未満とするには、
溶接材料のCr,Mo,Si,Ni含有量が(1)式を
満たす必要があることを見出した。したがって、Cr,
Mo,Si及びNi含有量は上記の限定に加えて、
(1)式を満たす範囲とする。 −2≦Cr(%) +Mo(%) +3×Si(%) −Ni(%) −14<20 …(1) なお、上記成分範囲の鋼は、常法に従って、溶鋼内に所
定の添加成分を母合金または単体の形で添加することに
より成分調整される。
性、及び溶接後熱処理後の溶接金属の延性と第二相との
関係を詳細に検討した結果、高温割れ防止のためにはδ
フェライトを生成させる必要があり、一方、延性は脆化
相の体積率が15%以上になると著しく低下することが
明らかとなった。さらに、溶接材料の成分と溶接金属に
おける第二相との関係を調査した結果、δフェライトを
生成し、且つ脆化相の体積率を15%未満とするには、
溶接材料のCr,Mo,Si,Ni含有量が(1)式を
満たす必要があることを見出した。したがって、Cr,
Mo,Si及びNi含有量は上記の限定に加えて、
(1)式を満たす範囲とする。 −2≦Cr(%) +Mo(%) +3×Si(%) −Ni(%) −14<20 …(1) なお、上記成分範囲の鋼は、常法に従って、溶鋼内に所
定の添加成分を母合金または単体の形で添加することに
より成分調整される。
【0020】
【実施例】本発明に係る実験例および実施例について説
明する。 実験例1 溶接材料及び母材用として、表1に示す化学成分の50
kgインゴットを用意した(試料番号のうち試料番号2
〜5,7〜9,11〜14,17,18のインゴットは
本発明範囲の成分、他は本発明範囲外の成分である)。
このインゴットを1050℃×10hr均熱後、12m
mt 鋼板に圧延した。母材用鋼板の2種類には、110
0℃の固溶化熱処理を施し、溶接構造用として十分な延
靭性を有するものとした。また、溶接材料には12mm
t 鋼板を冷間圧延で3mmt まで圧延し、3mm角棒に
加工した。この表1に示す組合せの溶接棒、母材を用い
てTIGによる突合せ溶接を行い、溶接継手を作成し
た。なお、開先形状はルート高さ:1mm、ベベル角
度:45°のV開先とし、溶接条件は150A×11V
×10cm/minで、多層溶接をした(初層は裏波溶
接)。溶接時の高温割れは目視及びX線透過法により調
査し、下記サンプルは割れの無い部位より採取した。こ
の溶接継手に対し、1050℃の後熱処理を行い、曲げ
試験片(JISZ3122)を溶接線直角方向から採取
するとともに、溶接金属表層より腐食試験サンプル(3
t ×15w ×50l )を採取した。試料番号16〜21
の鋼を溶接材料に用いた継手の溶接金属表層からは、さ
らに孔食電位測定(JIS G0577)用サンプルも
採取した。曲げ試験は曲げ半径R=2t(t:母材厚)
で実施した。ただし、8%を超えるSi含有量の試料番
号22の鋼では、鋳込みままのインゴット全体に割れが
発生していたため、圧延はできなかった。
明する。 実験例1 溶接材料及び母材用として、表1に示す化学成分の50
kgインゴットを用意した(試料番号のうち試料番号2
〜5,7〜9,11〜14,17,18のインゴットは
本発明範囲の成分、他は本発明範囲外の成分である)。
このインゴットを1050℃×10hr均熱後、12m
mt 鋼板に圧延した。母材用鋼板の2種類には、110
0℃の固溶化熱処理を施し、溶接構造用として十分な延
靭性を有するものとした。また、溶接材料には12mm
t 鋼板を冷間圧延で3mmt まで圧延し、3mm角棒に
加工した。この表1に示す組合せの溶接棒、母材を用い
てTIGによる突合せ溶接を行い、溶接継手を作成し
た。なお、開先形状はルート高さ:1mm、ベベル角
度:45°のV開先とし、溶接条件は150A×11V
×10cm/minで、多層溶接をした(初層は裏波溶
接)。溶接時の高温割れは目視及びX線透過法により調
査し、下記サンプルは割れの無い部位より採取した。こ
の溶接継手に対し、1050℃の後熱処理を行い、曲げ
試験片(JISZ3122)を溶接線直角方向から採取
するとともに、溶接金属表層より腐食試験サンプル(3
t ×15w ×50l )を採取した。試料番号16〜21
の鋼を溶接材料に用いた継手の溶接金属表層からは、さ
らに孔食電位測定(JIS G0577)用サンプルも
採取した。曲げ試験は曲げ半径R=2t(t:母材厚)
で実施した。ただし、8%を超えるSi含有量の試料番
号22の鋼では、鋳込みままのインゴット全体に割れが
発生していたため、圧延はできなかった。
【0021】図1及び図2に、95%,100℃及び9
8%,150℃硫酸中での耐食性と溶接材料のSi含有
量との関係を示す。図1及び図2によれば本環境では5
%以上のSi含有により、腐食速度が著しく低下するこ
とがわかる。
8%,150℃硫酸中での耐食性と溶接材料のSi含有
量との関係を示す。図1及び図2によれば本環境では5
%以上のSi含有により、腐食速度が著しく低下するこ
とがわかる。
【0022】図3に、95%,100℃硫酸中での耐食
性及び3.5%NaCl中での孔食電位と溶接材料のC
r含有量との関係を示す。図3によればCr含有量が1
0%未満になると、Si含有量が8%程度であっても孔
食電位は著しく低下することがわかる。また、硫酸中で
の耐食性はCr含有量の増加にともない向上するが、2
5%を超えると腐食速度は一定になることが理解され
る。
性及び3.5%NaCl中での孔食電位と溶接材料のC
r含有量との関係を示す。図3によればCr含有量が1
0%未満になると、Si含有量が8%程度であっても孔
食電位は著しく低下することがわかる。また、硫酸中で
の耐食性はCr含有量の増加にともない向上するが、2
5%を超えると腐食速度は一定になることが理解され
る。
【0023】図4及び図5に、95%,100℃硫酸中
での耐食性と溶接材料のCu含有量及びMo含有量との
関係を各々示す。図4及び図5によればCuを0.5%
以上、あるいはMoを0.2%以上添加すると、95
%,100℃硫酸中での腐食速度は著しく低下する。し
かし、その含有量がCuでは3%、Moでは2%を超え
ると腐食速度は一定になることがわかる。
での耐食性と溶接材料のCu含有量及びMo含有量との
関係を各々示す。図4及び図5によればCuを0.5%
以上、あるいはMoを0.2%以上添加すると、95
%,100℃硫酸中での腐食速度は著しく低下する。し
かし、その含有量がCuでは3%、Moでは2%を超え
ると腐食速度は一定になることがわかる。
【0024】図6に、95%,100℃及び98%,2
20℃硫酸中での耐食性と溶接材料のPd含有量との関
係を示す。図6によれば95%,100℃及び98%,
220℃硫酸中での耐食性は、0.005%以上のPd
添加により向上することがわかる。しかし、その含有量
が1.0%を超えると腐食速度は一定になる。
20℃硫酸中での耐食性と溶接材料のPd含有量との関
係を示す。図6によれば95%,100℃及び98%,
220℃硫酸中での耐食性は、0.005%以上のPd
添加により向上することがわかる。しかし、その含有量
が1.0%を超えると腐食速度は一定になる。
【0025】図7に、溶接時の高温割れ及び継手の曲げ
試験による割れの有無と溶接材料の成分との関係を示
す。図7によれば(2)式で表せるAの値が−2未満で
は高温割れが発生し、また、20を越えると曲げ試験で
割れが発生することがわかる。
試験による割れの有無と溶接材料の成分との関係を示
す。図7によれば(2)式で表せるAの値が−2未満で
は高温割れが発生し、また、20を越えると曲げ試験で
割れが発生することがわかる。
【0026】 A=Cr(%) +Mo(%) +3×Si(%) −Ni(%) −14 …(2) 実施例1 表2に示す化学成分の溶接ワイヤ(1.2mmφ)及び
母材板(15mmt )を用いてMIG溶接により溶接継
手を作成した。開先形状は表面側が深さ8mm、裏面側
が深さ5mmで、ベベル角度を45°とし、溶接条件は
190A×28V×25cm/minで、両面多層溶接
をした。実験例1と同様、溶接時の高温割れは目視及び
X線透過法により調査し、溶接継手に対し、1050℃
の後熱処理を行い、曲げ試験片及び腐食試験サンプルを
採取した。
母材板(15mmt )を用いてMIG溶接により溶接継
手を作成した。開先形状は表面側が深さ8mm、裏面側
が深さ5mmで、ベベル角度を45°とし、溶接条件は
190A×28V×25cm/minで、両面多層溶接
をした。実験例1と同様、溶接時の高温割れは目視及び
X線透過法により調査し、溶接継手に対し、1050℃
の後熱処理を行い、曲げ試験片及び腐食試験サンプルを
採取した。
【0027】上記サンプルの高温割れ、曲げ試験での割
れの有無及び高温高濃度硫酸中での腐食速度を表3に示
す。表3によれば、本発明の溶接ワイヤを用いた溶接で
は高温割れの発生もなく、継手の溶接金属は95%,6
5及び100℃硫酸、98%,150℃以上の硫酸中で
良好な耐食性を有し、延性にも優れていることが理解さ
れる。
れの有無及び高温高濃度硫酸中での腐食速度を表3に示
す。表3によれば、本発明の溶接ワイヤを用いた溶接で
は高温割れの発生もなく、継手の溶接金属は95%,6
5及び100℃硫酸、98%,150℃以上の硫酸中で
良好な耐食性を有し、延性にも優れていることが理解さ
れる。
【0028】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、溶接
時の高温割れもなく、95%硫酸中においては65〜1
00℃、98%硫酸中では150〜220℃の環境で良
好な耐食性を有し、かつ延性に優れた溶接部が得られる
効果がある。したがって、硫酸製造プラントの乾燥塔、
吸収塔等の溶接構造用材料に高Si含有ステンレス鋼の
適用が可能となる。
時の高温割れもなく、95%硫酸中においては65〜1
00℃、98%硫酸中では150〜220℃の環境で良
好な耐食性を有し、かつ延性に優れた溶接部が得られる
効果がある。したがって、硫酸製造プラントの乾燥塔、
吸収塔等の溶接構造用材料に高Si含有ステンレス鋼の
適用が可能となる。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【図1】本発明の実験例1による鋼の溶接金属の95
%,100℃硫酸中での耐食性と溶接材料のSi含有量
との関係を示す図。
%,100℃硫酸中での耐食性と溶接材料のSi含有量
との関係を示す図。
【図2】実験例1による鋼の溶接金属の98%,150
℃硫酸中での耐食性と溶接材料のSi含有量との関係を
示す図。
℃硫酸中での耐食性と溶接材料のSi含有量との関係を
示す図。
【図3】同じく実験例1による鋼の溶接金属の95%,
100℃硫酸中での耐食性及び3.5%NaCl中での
孔食電位と溶接材料のCr含有量との関係を示す図。
100℃硫酸中での耐食性及び3.5%NaCl中での
孔食電位と溶接材料のCr含有量との関係を示す図。
【図4】実験例1による鋼の溶接材料の95%,100
℃硫酸中での耐食性と溶接材料のCu含有量との関係を
示す図。
℃硫酸中での耐食性と溶接材料のCu含有量との関係を
示す図。
【図5】同じく実験例1による鋼の溶接材料の95%,
100℃硫酸中での耐食性と溶接材料のMo含有量との
関係を示す図。
100℃硫酸中での耐食性と溶接材料のMo含有量との
関係を示す図。
【図6】実験例1による鋼の溶接金属の95%,100
℃及び98%,220℃硫酸中での耐食性と溶接材料の
Pd含有量との関係を示す図。
℃及び98%,220℃硫酸中での耐食性と溶接材料の
Pd含有量との関係を示す図。
【図7】同じく実験例1による鋼の溶接時の高温割れ及
び継手の曲げ試験における割れの有無と溶接材料の成分
との関係を示す図。
び継手の曲げ試験における割れの有無と溶接材料の成分
との関係を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 泰男 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 江原 隆一郎 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22号 三菱重工業株式会社広島研究所内 (72)発明者 中本 英雄 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22号 三菱重工業株式会社広島研究所内 (72)発明者 山田 義和 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22号 三菱重工業株式会社広島研究所内 (72)発明者 吉田 康之 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22号 三菱重工業株式会社広島研究所内 (72)発明者 長野 肇 東京都千代田区丸の内二丁目5番1号 三 菱重工業株式会社内
Claims (1)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.08%以下と、S
i:5.0〜8.0%と、Mn:2.0%以下と、N
i:10〜35%と、Cr:10〜25%と、Cu:
0.5〜3.0%、Mo:0.2〜2.0%、及びP
d:0.005〜1.0%からなる群から選択された1
種以上と、残部Fe及び不可避的不純物からなり、且つ
Cr,Mo,Si及びNi含有量が(1)式を満たすこ
とを特徴とする高温、高濃度硫酸用高Si含有ステンレ
ス鋼溶接ワイヤ。 −2≦Cr(%) +Mo(%) +3×Si(%) −Ni(%) −14<20 …(1)
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20391793A JPH0751888A (ja) | 1993-08-18 | 1993-08-18 | 高温、高濃度硫酸用高Si含有ステンレス鋼溶接ワイヤ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20391793A JPH0751888A (ja) | 1993-08-18 | 1993-08-18 | 高温、高濃度硫酸用高Si含有ステンレス鋼溶接ワイヤ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0751888A true JPH0751888A (ja) | 1995-02-28 |
Family
ID=16481837
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP20391793A Pending JPH0751888A (ja) | 1993-08-18 | 1993-08-18 | 高温、高濃度硫酸用高Si含有ステンレス鋼溶接ワイヤ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0751888A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103100803A (zh) * | 2013-01-31 | 2013-05-15 | 西安理工大学 | 高镍奥氏体球铁气焊丝 |
-
1993
- 1993-08-18 JP JP20391793A patent/JPH0751888A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103100803A (zh) * | 2013-01-31 | 2013-05-15 | 西安理工大学 | 高镍奥氏体球铁气焊丝 |
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Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20010306 |