JPH0744751B2 - 指向性マイクロホン装置 - Google Patents

指向性マイクロホン装置

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JPH0744751B2
JPH0744751B2 JP9173692A JP9173692A JPH0744751B2 JP H0744751 B2 JPH0744751 B2 JP H0744751B2 JP 9173692 A JP9173692 A JP 9173692A JP 9173692 A JP9173692 A JP 9173692A JP H0744751 B2 JPH0744751 B2 JP H0744751B2
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pressure gradient
output signal
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gradient processing
microphone device
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敬 有吉
健雄 志賀
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Ricoh Co Ltd
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Ricoh Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、映画の撮影やテレビジ
ョンの撮影などに利用できる指向性マイクロホン装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば特開昭57−168596
号公報に開示されているような指向性マイクロホン装置
が知られている。図10は上記公報に開示の指向性マイ
クロホン装置の構成図であり、この指向性マイクロホン
装置は、2次圧力傾度型マイクロホンにおいて、低音
域,高音域での指向特性を改善し、非常に広い帯域にわ
たって鋭い指向特性を有する小型のマイクロホンを得る
ことを意図している。この目的のため、図10の指向性
マイクロホン装置には、同一の単一指向特性を有しかつ
前後方向においてそれぞれ異なる位置に一直線上に配置
された3つの圧力傾度型マイクロホンユニットM1
2,M3が設けられている。これらのマイクロホンユニ
ットM1,M2,M3は指向方向が一致するように配され
るとともに、マイクロホンユニットM1とM3とにより第
1の2次圧力傾度素子が構成され、マイクロホンユニッ
トM2とM3とにより第2の2次圧力傾度素子が構成され
ている。マイクロホンユニットM1,M2,M3からは、
それぞれ単一指向性出力A,B,Cが出力され、第1の
2次圧力傾度素子M1,M3からの出力A,Cが減算回路
75に加わり、また、第2の2次圧力傾度素子M2,M3
からの出力B,Cが減算回路76に加わる。この結果、
減算回路76の出力DはD=C−Bとなり、この出力D
が高音域での2次圧力傾度出力となる。一方、減算回路
75の出力EはE=C−Aとなり、この出力Eが低音域
での2次圧力傾度出力となる。
【0003】減算回路76,75の各出力D,Eは、イ
コライザ回路77,78にそれぞれ供給される。イコラ
イザ回路77は例えば図11に示すような補正特性を有
しており、このイコライザ回路77によって高音域用の
第2の2次圧力傾度素子の正面特性が高音域において平
坦に近づくように補正される。一方、イコライザ回路7
8は例えば図12に示すような補正特性を有しており、
このイコライザ回路78によって低音域用の第1の2次
圧力傾度素子の正面特性が低音域において平坦に近づく
ように補正される。このように補正されたイコライザ回
路77,78からの出力F,Gは加算回路80によって
互いに加算され、この結果、この加算回路80から低音
域から高音域に至るまで非常に広帯域にわたって平坦な
正面特性を有するマイクロホン出力Hを得ることが期待
できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように、上述した
従来の指向性マイクロホン装置では、相互間の距離を相
対的に長くとった単一指向性マイクロホンユニットM1
及びM3からなる低音域用の第1の2次圧力傾度素子
と、相互間の距離を相対的に短かくとった単一指向性マ
イクロホンユニットM2及びM3からなる高音域用の第2
の2次圧力傾度素子とを組み合わせて、これらの素子か
らの出力を合成することにより、指向性の良くとれた周
波数帯域部分を互いに合成し、非常に広帯域にわたって
指向性のとれた平坦な2次圧力傾度特性を得ることを意
図している。
【0005】しかしながら、この指向性マイクロホン装
置における上記合成処理は、低域と高域との帯域部分を
つなぐための合成であって、合成された出力は、基本的
に2次圧力傾度特性を示すので、特定の入射角度の音波
に対する感度を下げることができないという欠点があっ
た。換言すれば、特定の入射角度の音波に対する感度を
下げると、これに伴なって、本来下がるべきでない他の
入射角度(例えば入射角度“0”)の音波に対する感度
も同時に下がってしまうという欠点があった。
【0006】本発明は、ある特定の入射角度の音に対す
る感度を下げることができ、より鋭い指向特性を得るこ
との可能な比較的小型の構造の指向性マイクロホン装置
を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の発明は、同一直線上に配置された複
数個の単一指向特性を有する受音素子と、前記複数個の
受音素子からの出力信号の全部,または一部を用いて、
所定の次数の圧力傾度処理を行なう複数の圧力傾度処理
手段と、前記複数の圧力傾度処理手段からの各出力信号
に対し、合成処理を行なう合成手段とを備えており、前
記複数の圧力傾度処理手段は、その少なくとも1つが他
とは異なる次数の圧力傾度処理を行なうようになってい
ることを特徴としている。
【0008】また、請求項2記載の発明では、前記複数
の圧力傾度処理手段からの各信号に対し、これらの出力
信号の位相がほぼ一致した周波数帯で特定の入射角に対
する各出力信号間の感度を合わせる処理を行なう出力信
号処理手段がさらに設けられており、前記合成手段は、
出力信号処理手段により互いに感度合わせのなされた各
出力信号を合成するようになっていることを特徴として
いる。
【0009】また、請求項3記載の発明では、前記複数
の圧力傾度処理手段が、前記複数個の受音素子の出力信
号の全部,または一部を用いたi(i:2以上の整数)
次の圧力傾度方式の処理を行なう第1の圧力傾度処理手
段と、前記複数個の受音素子の出力信号の全部,または
一部を用いたj(j:2以上の整数、j≠i)次の圧力
傾度方式の処理を行なう第2の圧力傾度処理手段とであ
って、前記出力信号処理手段は、前記第2の圧力傾度処
理手段の出力信号に対し、位相特性の調整並びに増幅を
行ない、前記合成手段は、前記第1の圧力傾度処理手段
の出力信号と前記出力信号処理手段からの出力信号とを
合成するようになっていることを特徴としている。
【0010】また、請求項4記載の指向性マイクロホン
装置では、前記合成手段は、これに入力する出力信号の
位相差の絶対値を0度から180度で表わす時、強い指
向性を得るべき予め定められた周波数帯域の信号に対し
て、該位相差の絶対値が90度未満の場合には、各出力
信号を減算することによって合成し、該位相差の絶対値
が90度を越える場合には、各出力信号を加算すること
によって合成するようになっていることを特徴としてい
る。
【0011】また、請求項5記載の発明は、同一直線上
に配置された複数個の単一指向性の受音素子と、前記複
数個の受音素子を隣合う2個の受音素子からなる組に分
け、該隣合う受音素子の出力信号の和の各組毎の信号の
全部,または一部を用いたk(k:2以上の整数)次の
圧力傾度処理を行なう圧力傾度処理手段とを備えている
ことを特徴としている。
【0012】また、請求項6記載の発明は、請求項3記
載の第1および第2の圧力傾度処理手段の他に、さらに
請求項5記載の圧力傾度処理手段が第3の圧力傾度処理
手段として設けられており、この場合、請求項2記載の
合成手段は、前記第1の圧力傾度処理手段の出力信号と
前記出力信号処理手段からの出力信号と第3の圧力傾度
処理手段の出力信号とを合成するようになっていること
を特徴としている。
【0013】
【作用】本発明では、複数の圧力傾度処理手段は、前記
複数個の受音素子からの出力信号の全部,または一部を
用いて、所定の次数の圧力傾度処理を行なうが、そのう
ちの少なくとも1つは、他の次数(i:2以上の整数)
とは異なった次数(j:2以上の整数,i≠j)の圧力
傾度処理を行なう。このように互いに次数の異なる複数
の圧力傾度処理を行なうことにより、入射角に対するそ
れぞれの出力信号の振幅特性を相違させることができ
る。この結果、各出力信号の合成処理を行なって、ある
特定の入射角度の音に対する感度を下げることができ、
より鋭い指向特性を得ることができる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図1は本発明に係る指向性マイクロホン装置の第
1の実施例の構成図である。図1を参照すると、第1の
実施例の指向性マイクロホン装置には、単一指向特性を
有する4個の受音素子10,11,12,13と、第1
の圧力傾度処理部20と、第2の圧力傾度処理部21
と、フィルタ部31と、増幅部41と、合成部51とが
設けられている。
【0015】ここで、単一指向特性を有する4個の受音
素子10,11,12,13は、同一直線上の異なる位
置にそれぞれ配置されており、また、これらの受音素子
10,11,12,13は、指向方向が一致するように
配されている。
【0016】また、第1の圧力傾度処理部20には、2
つの受音素子11,12からの出力信号E1,E2が加わ
り、2次圧力傾度型マイクロホンの演算処理を行なうよ
うになっている。すなわち、第1の圧力傾度処理部20
は、受音素子11からの出力信号E1を加算し、受音素
子12からの出力信号E2を減算して、その結果を信号
H(=E1−E2)として出力するようになっている。
【0017】また、第2の圧力傾度処理部21には、4
つの受音素子10,11,12,13からの出力信号E
0,E1,E2,E3が加わり、3次圧力傾度型マイクロホ
ンの演算処理を行なうようになっている。すなわち、第
2の圧力傾度処理部21は、両端に配置されている2つ
の受音素子10,13からの出力信号E0,E3を加算
し、中間の2つの受音素子11,12からの出力信号E
1,E2を減算して、その結果を信号EM(=E0−E1
2+E3)として出力するようになっている。
【0018】また、フィルタ部31は、例えばローパス
フィルタで構成されており、3次圧力傾度型マイクロホ
ンの演算処理結果である第2の圧力傾度処理部21から
の出力信号EMに対し、その振幅特性と位相特性の調整
を行なうために設けられている。また、増幅部41は、
第2の圧力傾度処理部21からの出力信号EMを増幅す
るために設けられている。なお、図1の例では、増幅部
41は、フィルタ部31からの出力信号を増幅するよう
構成されている。
【0019】また、合成部51は、第1の圧力傾度処理
部20の出力信号EHと、フィルタ部31,増幅部41
を経た第2の圧力傾度処理部21の出力信号とを合成す
るために設けられている。この実施例では、合成部51
は、減算器として構成され、第1の圧力傾度処理部20
の出力信号EHと増幅部41からの出力信号との差をと
り、マイクロホン装置の出力信号Eoutとするようにな
っている。
【0020】次にこのような構成の第1の実施例の指向
性マイクロホン装置の動作について説明する。なお、受
音素子10,11,12,13は、図2に示すように、
一直線上に等間隔dで配置され、また、全て、同一の単
一指向特性(カージオイド特性)で、指向方向がその直
線の一方向を向いているとする。
【0021】いま、音波の音速をc,隣接する受音素子
間の間隔dの音響遅延時間をT(=d/c),周波数
(角周波数)をωとし、受音素子の中心CTを位相の基
準とすると、入射角θ(図2参照)からの平面波に対す
る受音素子10,11,12,13の出力信号E0
1,E2,E3は、それぞれ次式のように表わされる。
【0022】
【数1】
【0023】この場合、第1の圧力傾度処理部20から
は、次式のように、受音素子11,12の出力信号
1,E2の差をとった出力信号EHが2次圧力傾度型マ
イクロホンの演算処理結果として出力される。
【0024】
【数2】 EH=E1−E2 =j(1+cos θ)・sin(ωTcos θ/2)・exp(jωt)
【0025】また、第2の圧力傾度処理部21からは、
次式のように、受音素子10,13の出力信号E0,E3
を加算し、受音素子11,12の出力信号E1,E2を減
算した出力信号EMが3次圧力傾度型マイクロホンの演
算処理結果として出力される。
【0026】
【数3】 EM=E0−E1−E2+E3 =−2(1+cos θ)・sin(ωTcos θ/2)・ sin(ωTcos θ)・exp(jωt)
【0027】図3(a),(b)は音波の入射角θが
“0”ラジアン,“π/3”ラジアンである場合の上記
出力信号EH,EMの振幅特性,位相特性をそれぞれ示し
ている。なお、出力信号EH,EMの位相については、図
3(b)からわかるように、入射角θ,周波数ωにかか
わらず一定である。すなわち、2次圧力傾度方式の処理
結果である出力信号EHの位相は、入射角θ,周波数ω
に依存せずπ/2と一定であり、また、3次圧力傾度方
式の処理結果である出力信号EMの位相も、入射角θ,
周波数ωに依存せずπと一定である。
【0028】第2の圧力傾度処理部21から出力信号E
Mが出力されると、フィルタ部31では、この出力信号
Mの振幅特性と位相特性の調整を行なう。フィルタ部
31には、例えば時定数τが8T/πで、2次(−12
dB/oct)のローパスフィルタが用いられており、
この場合、フィルタ部31の伝達関数HLPFは、次式の
ように表わされる。
【0029】
【数4】
【0030】従って、フィルタ部31からの出力信号
は、次式のように、第2の圧力傾度処理部21からの出
力信号EMに上記伝達関数HLPFを乗算したものとなる。
【0031】
【数5】
【0032】図4(a)は、音波の入射角θが“0”ラ
ジアンの場合と“π/3”ラジアンとのそれぞれに対す
るフィルタ部31からの出力信号EM・HLPFの振幅特性
と第1の圧力傾度処理部20からの出力信号EHの振幅
特性との比較結果を示し、また、図4(b)は、出力信
号EM・HLPFの位相特性と出力信号EHの位相特性との
比較結果を示している。
【0033】いま、特定の入射角θ(例えば“π/3”
ラジアン)からの音を極力抑えることを考える。そのた
めには、第1の圧力傾度処理部20からの出力信号EH
と第2の圧力傾度処理部21からの出力信号EMとの2
つの信号について、位相のほぼ一致した周波数帯域の感
度を合わせ、互いの差をとれば良い。図4(b)を参照
すると、第1の圧力傾度処理部20からの出力信号EH
とフィルタ部31からの出力信号EM・HLPFとは、周波
数ω=π/(8T)の付近で両者の位相が一致している
ことがわかる。また、このとき(すなわち周波数ω=π
/(8T)の付近で)、入射角“π/3”ラジアンの音
に対する出力信号EHとEM・HLPFとの感度の比は、数
2,数5からあるいは図4(a)から“5.1”(1
4.2dB)となっている。従って、位相のほぼ一致し
た周波数帯域(上記例ではω=π/(8T)の付近)に
おいて入射角“π/3”ラジアンの音に対する両者の感
度を合わせるために増幅部41のゲインをここでは
“6”に設定する(正確に“5.1”にする必要はな
い)。これにより、フィルタ部31からの出力信号EM
・HLPFは、増幅部41において、感度が約6倍に増幅
されて合成部51に加わる。合成部51では、次式のよ
うに、第1の圧力傾度処理部20からの出力信号EH
増幅部41からの出力信号との差をとり、これをマイク
ロホン装置の出力信号Eoutとして出力する。
【0034】
【数6】Eout=EH−6・EM・HLPF
【0035】図5(a),(b)は音波の入射角θが
“0”ラジアン,“π/3”ラジアンである場合の合成
部51からの出力信号Eoutの振幅特性,位相特性をそ
れぞれ示している。
【0036】 図5(a)の振幅特性か
らわかるように、増幅部41において入射角θが“π/
3”ラジアンに対する2次圧力傾度処理信号(すなわち
出力信号EH)と3次圧力傾度処理信号(すなわち出力
信号EM・HLPF)との感度合わせを行ない、合成部51
でこれらの差をとった結果、合成部51からの出力信号
outは、周波数ω=π/(8T)の付近で入射角“π
/3”ラジアンに対する感度が極端に小さくなる。一
方、入射角“0”ラジアンに対する感度は、入射角“π
/3”ラジアンに対する感度が小さくなっても、これに
伴なって低下しないことがわかる。
【0036】これにより、第1の実施例では、特定の入
射角θ(上記例では、“π/3”ラジアン)の音に対す
る感度だけを極力抑え、それ以外の入射角θ(例えば、
“0”ラジアン)の音に対する感度については、これを
抑えずに済むことが可能となる。
【0037】換言すれば、2つの圧力傾度方式を用いる
場合、従来の指向性マイクロホン装置のように、2つの
圧力傾度処理を互いに同じ次数(例えば2次)のものに
すると、入射角“0”ラジアンと他の入射角との感度の
比はほぼ一定となり、この結果、いずれかの入射角に対
する感度,例えば上述の例のように、入射角“π/3”
ラジアンに対する感度を抑えようとすると、これに伴な
って、本来抑えられるべきでない入射角“0”ラジアン
に対する感度も同時に抑えられてしまう。
【0038】これに対し、上記第1の実施例では、2次
と3次という互いに異なった次数の圧力傾度処理を行な
っているので、2次の圧力傾度処理と3次の圧力傾度処
理とで入射角に対する出力信号の振幅特性を互いに相違
させることができ、特定の入射角について両者の出力信
号の大きさを同じにし、これらを相殺するようにする場
合にも、他の入射角については両者の出力信号の大きさ
に差異をもたせることができる。具体的に、入射角
“0”ラジアンの場合と入射角“π/3”ラジアンの場
合とで感度を比較すると、3次の場合は約14.5d
B、2次の場合は約8.5dBで、約6dBの違いがあ
る。従って、入射角“π/3”ラジアンで感度を合わせ
て差をとり、入射角“π/3”ラジアンに対する感度を
抑えても、入射角“0”ラジアンに対する感度は残るこ
とになる。
【0039】これにより、入射角が0度,すなわち正面
の感度に対して、感度を抑えたいある特定の入射角(例
えば“π/3”ラジアン)の音に対する感度のみを相対
的に下げることができ、より鋭い指向性を得ることがで
きる。
【0040】なお、上述の例では、感度を抑えたい入射
角を“π/3”ラジアンとしたが、感度を抑えたい角度
が“π/3”ラジアン以外の角度であっても、上述した
原理に基づき、同様にしてこの入射角についての感度の
みを抑えることができる。また、この実施例では、2次
と3次の圧力傾度処理だけで済むので、高次音圧傾度型
マイクロホンの次数を差程上げることなく、上記効果を
得ることができる。
【0041】また、上述の実施例では、受音素子を4個
設けたが、受音素子の個数は、4個に限らない。また、
その配置は、2次,あるいはそれ以上の圧力傾度方式が
実現できれば良いので、全てが等間隔に配置される必要
はない。また、圧力傾度処理部20,21の圧力傾度の
次数の組み合せは、互いに異なっていれば良く、2次と
3次とに限らずとも良い。また、どの受音素子を用いて
圧力傾度方式を構成するかも選ぶことができる。さら
に、これらの圧力傾度処理部20,21を、それぞれ1
つの圧力傾度処理による出力に限らず、他の処理の出力
と合成したものをその出力とするように構成することも
できる。
【0042】また、フィルタ部31はローパスフィルタ
に限るものではなく、その次数と時定数の値も圧力傾度
処理部の選び方と感度を制限したい帯域によって異なる
ものである。すなわち、感度を制限したい帯域における
フィルタ部31の出力信号と圧力傾度処理部20の出力
信号の位相差が0(あるいは0に近い値)またはπ(あ
るいはπに近い値)となれば良い。同様の考え方から、
圧力傾度処理部20の後段に位相特性を調整するための
新たなフィルタを追加しても良い。この場合は、このフ
ィルタの出力信号とフィルタ部31の出力信号の位相差
が0またはπとなるように両フィルタを設計すれば良
い。また、増幅部41は、これをフィルタ部31の後段
に置くかわりに、合成部51よりも手前であれば、任意
の位置に置いても良い。例えばこれをフィルタ部31に
含めても良い。
【0043】また合成部51は、位相差が0の場合は上
述の例のように減算を行なうが、位相差がπの場合は加
算器に置き換わる。すなわち、合成部51は、第1の圧
力傾度処理部20の出力信号EHの位相とフィルタ部3
1,増幅部41を経た第2の圧力傾度処理部21の出力
信号の位相との位相差の絶対値を0度から180度で表
わす時、強い指向特性を得るべき予め定められた周波数
帯域の信号に対して、該位相差の絶対値が90度未満の
場合には、第1の圧力傾度処理部20の出力信号EH
フィルタ部31,増幅部41を経た第2の圧力傾度処理
部21の出力信号とを減算することによって合成し、該
位相差の絶対値が90度を越える場合には、第1の圧力
傾度処理部20の出力信号EHとフィルタ部31,増幅
部41を経た第2の圧力傾度処理部21の出力信号とを
加算することによって合成する。
【0044】また、図5(a),(b)で入射角“0”
ラジアンに対する振幅特性は、約6dB/octの傾き
を持っているが、目的とする音源が近い場合は、近接効
果による低域強調が期待できるし、ローパスフィルタに
よるイコライザで平坦にすることもできる。また、後述
のように、低域を担当する他の手段と合成することもで
きる。
【0045】図6は本発明に係る指向性マイクロホン装
置の第2の実施例の構成図である。この第2の実施例の
指向性マイクロホン装置には、第1の実施例と同様の単
一指向特性を有する4個の受音素子10,11,12,
13と、圧力傾度処理部22とが設けられている。ここ
で、圧力傾度処理部22には、4つの受音素子10,1
1,12,13からの出力信号E0,E1,E2,E3が加
わり、2次圧力傾度型マイクロホンに類似した演算処理
を行なうようになっている。すなわち、圧力傾度処理部
22は、隣合う2つの受音素子10,11からの出力信
号E0,E1を加算し、また、隣合う2つの受音素子1
2,13からの出力信号E2,E3を減算して、その結果
を信号EL(=E0+E1−E2−E3)として出力し、こ
れにより2次圧力傾度方式として構成されている。
【0046】このような構成の第2の実施例の指向性マ
イクロホン装置では、2次圧力傾度処理が行なわれ、圧
力傾度処理部22における演算結果ELは次式によって
表わされる。
【0047】
【数7】 EL=E0+E1−E2−E3 =2j(1+cosθ)・cos(ωTcos θ/2)・ sin(ωTcos θ)・exp(jωt)
【0048】ここで、上記本発明による2次圧力傾度方
式の性能を、これと同じ外形寸法(最大受音素子間隔3
d)をもつ一般の2次圧力傾度方式の性能と比較する。
一般の2次圧力傾度方式として、低域の感度が最大のも
のであって、受音素子10の出力信号を加算し、受音素
子13の出力信号を減算するものを考えると、その出力
L2は、次式によって表わされる。
【0049】
【数8】 EL2=E0−E3 =j(1+cos θ)・sin(3ωTcos θ/2)・exp(jωt)
【0050】図7(a),(b)は音波の入射角が
“0”ラジアン,“π/3”ラジアンである場合の上記
演算結果EL,EL2の振幅特性,位相特性をそれぞれ示
している。図7(a)の振幅特性において、本発明の2
次圧力傾度方式による演算結果ELと一般の2次圧力傾
度方式による演算結果EL2とを比較すると、外形寸法が
同じである場合に、入射角θが“0”ラジアン,“π/
3”ラジアンのいずれの場合にも本発明の2次圧力傾度
方式によるものの方が低域の感度に関して、同じ次数
(2次)の(すなわち同様の指向特性の)一般の圧力傾
度方式よりも優れていることがわかる。すなわち、この
第2の実施例から、本発明の2次圧力傾度方式によれ
ば、使用できる受音素子の数が多いので、外形寸法が限
られた場合、圧力傾度方式の問題点である低域の感度に
関して、同じ次数の一般の圧力傾度方式より優れた特性
を有するマイクロホン装置を実現できることがわかる。
【0051】なお、図6の例では、受音素子の個数を4
個とし、圧力傾度処理部22において2次圧力傾度方式
の処理を行なうようになっているが、受音素子の個数は
4個に限らない。また圧力傾度処理部22における圧力
傾度処理を2次以上のものにすることもできる。換言す
れば、同一直線上に配置された複数個の単一指向特性の
受音素子と、上記複数個の受音素子を隣合う2個の受音
素子からなる組に分け、隣合う受音素子の出力信号の和
の各組毎の信号の全部,または一部を用いたk(k:2
以上の整数)次の圧力傾度方式の処理を行なう圧力傾度
処理部とを備えることにより、外形寸法が限られた場
合、一般の圧力傾度方式に対し、低域の感度をより向上
させることが可能となる。
【0052】図8は本発明に係る指向性マイクロホン装
置の第3の実施例の構成図である。なお、図8において
図1,図6と同様の箇所には同じ符号を付している。図
8を参照すると、この第3の実施例の指向性マイクロホ
ン装置は、図1の指向性マイクロホン装置に図6の指向
性マイクロホン装置をさらに組み入れた構成となってお
り、受音素子11,12の出力信号E1,E2は圧力傾度
処理部20と圧力傾度処理部21と圧力傾度処理部22
とに加わり、受音素子10,13の出力信号E0,E3
圧力傾度処理部21と圧力傾度処理部22とに加わるよ
うになっている。また、圧力傾度処理部21からの出力
信号はフィルタ部31に加わり、圧力傾度処理部22か
らの出力信号はフィルタ部32に加わるようになってい
る。さらに、フィルタ部31の出力信号は、増幅部41
に加わり、フィルタ部32の出力信号は、増幅部42に
加わり、圧力傾度処理部20の出力信号と増幅部41の
出力信号と増幅部42の出力信号とが、合成部52に入
力するようになっている。
【0053】ここで、フィルタ部32には、例えば時定
数τが20T/πで2次(−12dB/oct)のロー
パスフィルタが用いられ、フィルタ部32は、圧力傾度
処理部22の出力信号の振幅特性と位相特性の調整を行
なうようになっている。
【0054】また、増幅部42は、フィルタ部32から
の出力信号を所定のゲインで増幅するようになってお
り、そのゲインの値はフィルタ部32の出力信号と増幅
部40の出力信号の感度から定めることができる。
【0055】また、合成部52は、圧力傾度処理部21
の出力信号と増幅部42の出力信号とを加算し、増幅部
41の出力信号を減算して、その結果をマイクロホン装
置の出力信号Eoutとするようになっている。
【0056】このような構成の第3の実施例の指向性マ
イクロホン装置において、フィルタ部32に時定数τが
20T/πで2次(−12dB/oct)のローパスフ
ィルタを用い、また、増幅部42のゲインの値を“2”
としたときの合成部52からの出力信号Eoutの振幅特
性,位相特性を図9(a),(b)にそれぞれ示す。な
お、図9(a),(b)には、音波の入射角θが“0”
ラジアン,“π/3”ラジアンである場合の出力信号E
outの振幅特性,位相特性が示されている。
【0057】図9(a)からわかるように、この第3の
実施例の指向性マイクロホン装置においても、第1の実
施例の指向性マイクロホン装置と同様に、入射角が
“0”ラジアン,すなわち正面の感度に対して、ある特
定の感度を抑えたい入射角(“π/3”ラジアン)の音
に対する感度を相対的に下げ、従来に比べより鋭い指向
特性を得ることが可能となる。さらに、この第3の実施
例では、図6に示す圧力傾度処理部22が組み込まれて
いるので、図1に示した構成に比べ低域での感度を向上
させることができる。この結果、図9(a)を図5
(a)と比較すれば明らかなように、振幅特性をより平
坦なものにすることが可能となる。
【0058】
【発明の効果】以上に説明したように、請求項1乃至4
記載の発明によれば、少なくとも1つが他と異なる次数
の複数の圧力傾度処理手段を用いているので、これらの
複数の圧力傾度処理手段からは、少なくとも1つが他に
比べ入射角に対する周波数特性(すなわち指向特性)の
異なる出力信号を出力させることができ、これらの出力
信号を合成することによって、高次音圧傾度型マイクロ
ホンの次数を上げることなく、ある特定の感度を抑えた
い入射角度の音に対する感度を相対的に下げ、より鋭い
指向性を得ることができる。
【0059】特に、請求項2記載のように上記複数の圧
力傾度処理手段からの各信号に対し、これらの出力信号
がほぼ一致した周波数帯で特定の入射角に対する各出力
信号間の感度を合わせる処理を行なう出力信号処理手段
がさらに設けられ、また、請求項4のように各出力信号
の音を互いに相殺するよう合成するようになっている場
合には、入射角が0度,すなわち正面の感度に対してあ
る特定の入射角の音に対する感度を相対的に確実に下げ
ることができ、より鋭い指向性を確実に得ることができ
る。
【0060】また、請求項5記載の発明によれば、同一
直線上に配置された複数個の受音素子を隣合う2個の受
音素子からなる組に分け、該隣合う受音素子の出力信号
の和の各組毎の信号の全部,または一部を用いたk
(k:2以上の整数)次の圧力傾度処理を行なうように
なっているので、低域における感度を向上させることが
できる。
【0061】また、請求項6記載の発明によれば、請求
項3記載の第1および第2の圧力傾度処理手段の他に、
さらに請求項5記載の圧力傾度処理手段が第3の圧力傾
度処理手段として設けられており、この場合、請求項2
記載の合成手段は、前記第1の圧力傾度処理手段の出力
信号と前記出力信号処理手段からの出力信号と第3の圧
力傾度処理手段の出力信号とを合成するようになってい
るので、高次音圧傾度型マイクロホンの次数を上げるこ
となく、正面の感度に対してある特定の感度を抑えたい
入射角度の音に対する感度を相対的に下げ、より鋭い指
向性を得ることができると同時に、外形寸法が限られた
場合、圧力傾度方式の問題点であった低域の感度を向上
させ、平坦な振幅特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る指向性マイクロホン装置の第1の
実施例の構成図である。
【図2】図1の指向性マイクロホン装置の複数の受音素
子の配置を説明するための図である。
【図3】(a),(b)は図1の指向性マイクロホン装
置の信号EH,EMの振幅特性,位相特性をそれぞれ示す
図である。
【図4】(a),(b)は図1の指向性マイクロホン装
置の出力信号EH,EM・HLPFの振幅特性,位相特性を
それぞれ示す図である。
【図5】(a),(b)は図1の指向性マイクロホン装
置の出力信号Eoutの振幅特性,位相特性をそれぞれ示
す図である。
【図6】本発明に係る指向性マイクロホン装置の第2の
実施例の構成図である。
【図7】(a),(b)は図6の指向性マイクロホン装
置の振幅特性,位相特性をそれぞれ示す図である。
【図8】本発明に係る指向性マイクロホン装置の第3の
実施例の構成図である。
【図9】(a),(b)は図8の指向性マイクロホン装
置の振幅特性,位相特性をそれぞれ示す図である。
【図10】従来の指向性マイクロホン装置の構成図であ
る。
【図11】図10に示すイコライザ回路77の補正特性
を示す図である。
【図12】図10に示すイコライザ回路78の補正特性
を示す図である。
【符号の説明】
10,11,12,13 受音素子 20 第1の圧力傾度処理部 21 第2の圧力傾度処理部 22 第3の圧力傾度処理部 31,32 フィルタ部 41,42 増幅部 51,52 合成部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中嶋 正尚 東京都三鷹市上連雀1丁目12番17号 日本 圧電気株式会社内 (56)参考文献 特開 昭59−149494(JP,A)

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 同一直線上に配置された複数個の単一指
    向特性を有する受音素子と、前記複数個の受音素子から
    の出力信号の全部,または一部を用いて、所定の次数の
    圧力傾度処理を行なう複数の圧力傾度処理手段と、前記
    複数の圧力傾度処理手段からの各出力信号に対し、合成
    処理を行なう合成手段とを備えており、前記複数の圧力
    傾度処理手段は、少なくとも1つが他とは異なる次数の
    圧力傾度処理を行なうようになっていることを特徴とす
    る指向性マイクロホン装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の指向性マイクロホン装置
    において、前記複数の圧力傾度処理手段からの各信号に
    対し、これらの出力信号の位相がほぼ一致した周波数帯
    で特定の入射角に対する各出力信号間の感度合わせを行
    なう出力信号処理手段がさらに設けられており、前記合
    成手段は、出力信号処理手段により互いに感度合わせの
    なされた各出力信号を合成するようになっていることを
    特徴とする指向性マイクロホン装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の指向性マイクロホン装置
    において、前記複数の圧力傾度処理手段は、前記複数個
    の受音素子の出力信号の全部,または一部を用いたi
    (i:2以上の整数)次の圧力傾度方式の処理を行なう
    第1の圧力傾度処理手段と、前記複数個の受音素子の出
    力信号の全部,または一部を用いたj(j:2以上の整
    数、j≠i)次の圧力傾度方式の処理を行なう第2の圧
    力傾度処理手段とであって、前記出力信号処理手段は、
    前記第2の圧力傾度処理手段の出力信号に対し、位相特
    性の調整並びに増幅を行ない、前記合成手段は、前記第
    1の圧力傾度処理手段の出力信号と前記出力信号処理手
    段からの出力信号とを合成するようになっていることを
    特徴とする指向性マイクロホン装置。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の指向性マイクロホン装置
    において、前記合成手段は、これに入力する各出力信号
    の位相差の絶対値を0度から180度で表わす時、強い
    指向特性を得るべき予め定められた周波数帯域の信号に
    対して、該位相差の絶対値が90度未満の場合には、各
    出力信号を減算することによって合成し、該位相差の絶
    対値が90度を越える場合には、各出力信号を加算する
    ことによって合成するようになっていることを特徴とす
    る指向性マイクロホン装置。
  5. 【請求項5】 同一直線上に配置された複数個の単一指
    向特性を有する受音素子と、前記複数個の受音素子を隣
    合う2個の受音素子からなる組に分け、該隣合う受音素
    子の出力信号の和の各組毎の信号の全部,または一部を
    用いたk(k:2以上の整数)次の圧力傾度処理を行な
    う圧力傾度処理手段とを備えていることを特徴とする指
    向性マイクロホン装置。
  6. 【請求項6】 請求項3記載の第1および第2の圧力傾
    度処理手段の他に、さらに請求項5記載の圧力傾度処理
    手段が第3の圧力傾度処理手段として設けられており、
    この場合、請求項2記載の合成手段は、前記第1の圧力
    傾度処理手段の出力信号と前記出力信号処理手段からの
    出力信号と第3の圧力傾度処理手段の出力信号とを合成
    するようになっていることを特徴とする指向性マイクロ
    ホン装置。
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