JPH0741853Y2 - エンジンのブローバイガス還流装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案はエンジンのブローバイガス還流装置に関する。

〔従来の技術〕

一般に、エンジンの燃焼室からクランクケース内へ漏れ
るブローバイガスには、未燃HC成分やオイルや水分が含
まれており、大気汚染の防止及び潤滑オイルの劣化防止
のため、このブローバイガスはブローバイガス還流装置
により吸気系へ還流して燃焼室で燃焼処理するようにな
っている。

ところで、最近ではオイル劣化防止の観点から、クラン
クケース内空間へ新気を供給してクランク内空間を積極
的に換気するようにしたブローバイガス還流装置が提案
されている。

例えば、実開昭63−119812号公報に記載されたＶ型エン
ジンのブローバイガス還流装置では、スロットル弁の上
流側の吸気通路から一方のバンクのヘッドカバー内空間
へ新気を導入し、そこからシリンダブロック内通路を経
てクランクケース内空間へ新気を導入し、クランクケー
ス内空間に充満したブローバイガスをシリンダブロック
内通路を経て他方のバンクのヘッドカバー内空間へ導出
し、PCVバルブで圧力調節しつつスロットル弁の下流側
の吸気通路内へ還流するようになっており、シリンダブ
ロックの一方の側壁部にはブローバイガス還流装置の新
気導入側通路の一部である導入側通路がその長手方向略
中央部に１箇所形成され、他方の側壁部にはブローバイ
ガス排出側通路の一部である排出側通路がその長手方向
略中央部に１箇所形成され、これら通路の下端部はクラ
ンクケース内空間の上部に略対向して開口されている。

〔考案が解決しようとする課題〕

上記公報のブローバイガス還流装置では、導入側通路の
下端部がクランクケース内空間の上部に１箇所だけ開口
され、しかも導入された新気はクランクケース内のコン
ロッド大端部やカウンタウェイト等の回転部材の影響を
受けるので、開口部の付近のクランクケース内空間に供
給された新気は、クランクケース内空間全体を十分に換
気しないうちにクランクケース外へ排出されるという問
題がある。

一方、シリンダブロックに複数の導入側通路を形成し、
クランクケース内空間の換気性を向上することも考えら
れるが、シリンダブロックの壁部にはウォータジャケッ
トなどが複雑に形成されており、その構造が複雑になる
という問題がある。

本考案の目的は、クランクケース内空間の換気性を向上
し得るエンジンのブローバイガス還流装置を提供するこ
とである。

〔課題を解決するための手段〕

本考案に係るエンジンのブローバイガス還流装置は、ク
ランクケースの外壁部とその内側に形成した内壁部との
間にクランク軸方向に延び下端部がクランクケース内空
間に開口したエア通路を設け、吸気通路からシリンダヘ
ッド内通路とシリンダブロック内通路を経てクランクケ
ース内空間へ連なるブローバイガス還流装置の新気導入
側通路の下流端部を上記エア通路で構成したものであ
る。

〔作用〕

本考案に係るエンジンのブローバイガス還流装置におい
ては、ブローバイガス還流装置の新気導入側通路の下流
端部が、クランクケースの外壁部とその内側に形成した
内壁部との間にクランク軸方向に延び下端部がクランク
ケース内空間に開口されたエア通路で構成されているの
で、給気通路から新気導入側通路へ導入された新気は、
上記エア通路を介してクランクケース内空間の略全域に
亙って供給される。従って、クランクケース内空間を均
一に換気することが出来る。

〔考案の効果〕

本考案に係るエンジンのブローバイガス還流装置によれ
ば、上記〔作用〕の項で詳述したように、簡単な構成の
エア通路を形成することにより、クランクケース内空間
の略全域に亙って新気を供給出来るので、クランクケー
ス内空間全体に均一に新気を導入することが可能とな
り、クランクケース内空間の換気性を向上することが出
来る。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。

本実施例はＶ型６気筒エンジンのブローバイガス還流装
置に本考案を適用した場合のものである。

第１図に示すように、エンジンＥのシリンダブロック１
はクランク軸14の軸心を含む水平面で分割されたシリン
ダブロックアッパ２とシリンダブロックロア３とで構成
され、シリンダブロックアッパ２の下部とシリンダブロ
ックロア３とでクランクケース４が形成され、エンジン
Ｅの左右のバンク５・６間の上方位置にはサージタンク
７が設けられ、サージタンク７は吸気管８を介してエア
クリーナ（図示略）に接続されるとともに、略Ｊ字状の
３対の吸気分岐管９を介して左右のバンク５・６の吸気
ポート（図示略）に接続され、吸気管８の途中部にはス
ロットル弁10が介設されている。

上記シリンダブロックロア３には、第１図・第２図に示
すように、その左右の側壁部11・12間に亙る４つの仕切
壁13Aが所定間隔おきに形成され、シリンダブロックア
ッパ２の下部には上記仕切壁13に対応する仕切壁13Bが
形成され、クランクケース内空間16は仕切壁13A・13Bに
より３分割され、各対の仕切壁13A・13Bには通気孔33が
形成され、各仕切壁13Aにはクランクシャフト14のジャ
ーナル軸部14aの下半部を支持するための主軸受15が設
けられている。左右の側壁部11・12は後述のエア供給通
路27とエア排出通路31を形成する為に肉厚壁に形成さ
れ、その内壁部11a・12aはカウンタウェイト（図示略）
の回転軌跡の外周部の外側近傍に沿って部分円筒壁状に
湾曲状に形成され、外壁部11b・12bは略鉛直に形成さ
れ、左右の内壁部11a・12aの下端部間にはクランクケー
ス内空間16とオイルパン17内のオイルパン内空間18とを
連通する大きな開口部19が形成されている。

ブローバイガス還流装置は、スロットル弁10の上流側の
吸気通路から左バンク５のヘッドカバー20とシリンダヘ
ッド21とシリンダブロック１とを経てクランクケース内
空間16へ連なる新気導入側通路と、クランクケース内空
間16からシリンダブロック１と、右バンクのシリンダヘ
ッド21と、シリンダヘッド21とヘッドカバー20間の空間
22とを経てスロットル弁10の下流側の吸気通路に連なる
ブローバイガス排出側通路と、ブローバイガス排出側通
路の途中部に設けられブローバイガスの圧力を調整可能
なPCVバルブ23とを備えている。尚、上記PCVバルブ23は
一般的な構成のものなのでその詳細な説明を省略する。

上記新気導入側通路について説明すると、第１図〜第３
図に示すように、吸気管８のスロットル弁10の上流側が
新気導入管24を介して左バンク５のヘッドカバー20に接
続され、シリンダブロックアッパ２の左側壁部2aの前側
１対のシリンダボア25間に対応する部分には略く字状の
導入通路26が左側壁部2aに沿って上下方向向きに形成さ
れ、導入通路26の上端部はシリンダヘッド21内の通路21
aとヘッドカバー20内の通路20aを介して新気導入管24に
連通され、左側壁部11の下半部の内壁部11aと外壁部11b
間にはクランク軸方向に延びる比較的大きな台形状断面
のエア供給通路27がその略全長に亙って形成され、エア
供給通路27の下端部にはその略全長に亙ってオイルパン
内空間18に開口する開口部27aが形成され、導入通路26
の下端部はシリンダブロックロア３に形成された導入通
路28を介してエア供給通路27に連通されている。

上記ブローバイガス排出側通路について説明すると、吸
気管８のスロットル弁10の下流側がブローバイガス排出
管29を介して右バンク６のヘッドカバー20に設けられた
PVCバルブ23に接続され、シリンダブロックアッパ２の
右側壁部2bの後側１対のシリンダボア25間に対応する部
分には略く字状の排出通路30が右側壁部2bに沿って上下
方向向きに形成され、排出通路30の上端部はシリンダヘ
ッド21に形成された通路21bを介してヘッドカバー内空
間22に開口され、ヘッドカバー内空間22からPVCバルブ2
3を介してブローバイガス排出管29に連通され、右側壁
部12の下半部の内壁部12aと外壁部12b間にはクランク軸
方向に延びる比較的大きな台形状断面のエア排出通路31
がその略全長に亙って形成され、エア排出通路31の下端
部にはその略全長に亙ってオイルパン内空間18に開口す
る開口部31aが形成され、排出通路30の下端部はシリン
ダブロックロア３に形成された排出通路32を介してエア
排出通路31に連通されている。

尚、上記シリンダブロックアッパ２は鋳鉄製又はアルミ
ニウム合金製であるが、シリンダブロックロア３はアル
ミニウム合金製であり、このシリンダブロックロア３の
強度・剛性の確保及びシリンダブロックアッパ２とのボ
ルト結合の為にも、シリンダブロックロア３の側壁部11
・12が肉厚壁に形成されている。

次に、上記ブローバイガス還流装置の作用について説明
する。

吸気管８のスロットル弁10の上流側部分から導入された
新気は、新気導入管24と通路20a・21aと導入通路26・28
を経てエア供給通路27へ供給され、エア供給通路27の下
端開口部27aからオイルパン内空間18内へ供給され、各
開口部19を通ってクランクケース内空間16内へ流入する
ので、クランクケース内空間16内のブローバイガスがエ
ア排出通路31側へ押し出され、エア排出通路31から排出
通路30・32及び通路21bを経てヘッドカバー内空間22内
へ排出され、PCVバルブ23により圧力調整されつつブロ
ーバイガス排出管29から吸気管８のスロットル弁10の下
流側部分へ排出され、燃焼室で燃焼処理される。

仕切壁部13A・13Bでクランクケース内空間16が３分割さ
れるが、エア供給通路27がシリンダブロックロア３の左
側壁部11の略全長に亙って形成されているので、オイル
パン内空間18から各開口部19を介して各クランクケース
内空間16内へ均一に新気を供給することが出来、クラン
クケース内空間16及びオイルパン内空間18の換気が良好
となる。

エア供給通路27の開口部27aがコンロッド大端部やカウ
タウェイトなどの回転部材よりも下側に形成されるとと
もに、開口部27aがオイルパン内空間18を介してクラン
クケース内空間16内に連通されているので、上記回転部
材の影響を受けにくく、しかも新気導入側通路は左バン
ク５のヘッドカバー内空間22内に開口しておらず、カム
シャフトやロッカーアームの作動による外乱を受けない
ので、安定した新気の供給が可能となる。しかも、エア
排出通路31の開口部31aを右側壁部12の下端部の略全長
に亙って形成してあるので、ブローバイガスの排出もコ
ンロッド大端部やカウンタウェイトなどの回転部材によ
る外乱の影響を受けにくく安定したものとなる。

以上のように、新気導入側通路の下流端部をエア供給通
路27で構成することにより、コンロッド大端部やカウタ
ウェイトなどの回転部材による影響を低減しつつクラン
クケース内空間16の略全域に亙って新気を供給すること
が出来、クランクケース内空間16全体に均一に新気を導
入してクランクケース内空間16の換気を向上出来る。

尚、図示省略したが、左バンク５のヘッドカバー内空間
のオイルミストなどを排出する為、この空間22を配管に
て吸気管８のスロットル弁10の下流側部分へ接続した
り、或いは上記空間22を右バンク６のヘッドカバー内空
間22へ連通させることもある。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示すもので、第１図はエンジン
及びその吸気系の要部縦断面図、第２図はシリンダブロ
ックロアの下面図、第３図はシリンダブロックアッパの
平面図である。 Ｅ……エンジン、１……シリンダブロック、４……クラ
ンクケース、８……吸気管、16……クランクケース内空
間、20a・21a……通路、24……新気導入管、26・28……
導入通路、27……エア供給通路。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】クランクケースの外壁部とその内側に形成
   した内壁部との間にクランク軸方向に延び下端部がクラ
   ンクケース内空間に開口したエア通路を設け、 吸気通路からシリンダヘッド内通路とシリンダブロック
   内通路を経てクランクケース内空間へ連なるブローバイ
   ガス還流装置の新気導入側通路の下流端部を上記エア通
   路で構成したことを特徴とするエンジンのブローバイガ
   ス還流装置。