JPH0740953A - 合成樹脂製壜体 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 壜体全体の剛性を高めるために、胴部に多数
の周溝を平行に周設した大型合成樹脂製壜体において、
減圧吸収能力を高めることを技術的課題とし、もって壜
体全体の高い剛性を維持した状態で、減圧吸収能力の高
い壜体を提供することにある。 【構成】 胴部２に少なくとも一対の平坦壁部６と、複
数の周溝５を設け、平坦壁部６に平坦状の減圧吸収用の
陥没壁部分７を、この陥没壁部分７の周溝５の深さを浅
くして陥没設することにより、周溝５を設けた平坦壁部
６の減圧吸収のための陥没変形をし易くした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、合成樹脂製壜体、特に
ポリエチレンテレフタレート樹脂で代表される合成樹脂
製の大型２軸延伸ブロー成形壜体の内、内部に減圧の発
生する用途に使用される壜体に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】２軸延伸ブロー成形された大型の合成樹
脂製壜体は、耐内容物性に優れていること、軽量で耐衝
撃強度に優れていること、成形が容易であること等の理
由により、特に液体収納用容器として多量に使用されて
いる。

【０００３】このように、大型の合成樹脂製壜体は、容
器として数多くの優れた特性を有するのであるが、容器
としての主体部分である胴部の肉厚が薄いために、例え
ば内容液を加熱充填する場合のように、密封した壜体内
に減圧が発生する使用条件では、胴部の壁に、壜体内に
発生した減圧により不正陥没変形が生じると云う不都合
があった。

【０００４】この不都合を解消するものとして、例えば
実開昭５７−１９９５１１号公報に開示されたもののよ
うに、壜体の胴部の一部に陥没変形し易い変形パネル壁
を底壁として有する凹部を設け、壜体内に発生した減圧
をこの変形パネル壁における一定した陥没変形により吸
収し、もって胴部の他の壁部分に不正な陥没変形が発生
しないようにした構成がある。

【０００５】この構成のものは、変形パネル壁の大きさ
を充分に大きくすることにより、略満足できる程度の減
圧吸収能力を得ることができるのであるが、胴部の壁厚
が極めて薄いので圧下荷重に対する機械的耐久力、すな
わち剛性強度が低く、壜体全体の剛性強度を充分に高め
ることができないと云う不満があった。

【０００６】そこで、この不満を解消する従来技術とし
て、図５ないし図７に示した壜体、すなわち有底四角筒
形状の胴部２の上端に、角錐台筒形状をした肩部３を介
して口筒４を連設した壜体１’が考えられている。

【０００７】この壜体１’は、図７に示すように、胴部
２に多数の周溝５を平行にかつ等しい浅い深さで周設す
ることにより、壜体全体の剛性強度を高めると共に、胴
部２の四つの平坦な壁部分、すなわち平坦壁部６を、そ
のまま平坦状に維持することにより、この平坦壁部６全
体が、壜体１’内に発生した減圧により陥没変形ができ
るようにし、この平坦壁部６全体の陥没変形により、大
きな減圧吸収能力を発揮できるようにしている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た従来技術は、壜体内の減圧吸収に有利な広い平坦壁部
分を有しているとは言え、この平坦壁部分に、この平坦
壁部分の機械的強度、すなわち平坦壁部分を変形し難く
する周溝が設けられているので、この周溝の補強作用に
より、平坦壁部分が減圧吸収のために充分にかつ容易に
陥没変形することができず、このため発揮する減圧吸収
能力が決して充分ではないと云う問題があった。

【０００９】特に、２リットル級の大型壜体で、内容液
を８０度程度の高温に加熱して充填する場合には、壜体
内に発生する減圧程度が高く、上記した従来技術では、
この高い減圧程度を平坦壁部分の陥没変形で吸収するこ
とができず、胴部の一部に減圧による屈曲陥没永久変形
が発生すると云う問題があった。

【００１０】そこで、本発明は、上記した従来技術にお
ける問題点を解消すべく創案されたもので、壜体全体の
剛性を高めるために、胴部に多数の周溝を平行に周設し
た大型合成樹脂製壜体において、減圧吸収能力を高める
ことを技術的課題とし、もって壜体全体の高い剛性を維
持した状態で、減圧吸収能力の高い壜体を提供すること
を目的とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記技術的課題を解決す
る本発明の手段は、２軸延伸ブロー成形された大型合成
樹脂製壜体であること、有底筒形状をした胴部に、少な
くとも一対の平行に対向した平坦壁部を設けると共に、
複数の周溝を平行に周設すること、平坦壁部に略平坦状
となった減圧吸収用の陥没壁部分を陥没設すること、こ
の陥没壁部分の周溝の深さを浅くすること、にある。

【００１２】胴部を有底長方形筒形状とし、この胴部の
長手辺面部分に該当する壁部分を平坦壁部とするのが良
く、また胴部を有底正方形筒形状とし、この胴部の四つ
の平板状壁部分を平坦壁部とするのが良い。

【００１３】

【作用】壜体の胴部には、補強周溝として機能する複数
の周溝が平行に周設されているので、この周溝が発揮す
る補強機能により、壜体全体、特に胴部は、通常の補強
周溝を付形した壜体と同程度の高い剛性強度を発揮す
る。

【００１４】この胴部の剛性強度を高めている周溝は、
胴部の平坦壁部にも位置しているのであるが、この平坦
壁部に陥没形成された陥没壁部分の周溝は、その深さを
浅くした構造となっているので、この周溝が陥没壁部分
に対して発揮する機能、すなわち径方向に作用する外力
に対する陥没壁部分の自己形状保持能力を高めると云う
機能が、他の胴部部分に対してよりも弱くなっている。

【００１５】このため、壜体内に減圧が発生して、胴部
の壁を内方に押し込む力が作用すると、周溝による補強
機能が弱い陥没壁部分が、この減圧の作用により比較的
容易に陥没変形し始め、減圧吸収作用を発揮する。

【００１６】この減圧吸収のための陥没壁部分の陥没変
形は、この陥没壁部分全体が内方に円弧状に湾曲して陥
没変形するのであるが、陥没壁部分は、元来が減圧によ
り陥没変形し易い平坦壁部に設けられているので、この
陥没壁部分の陥没変形の進行に従って平坦壁部もその全
体が大きな曲率半径で湾曲変形する。

【００１７】このように、陥没壁部分が陥没変形して減
圧を吸収すると共に、平坦壁部も、その全体を大きな曲
率半径で陥没方向に湾曲変形するので、発揮される減圧
吸収量はきわめて大きくなり、充分な減圧吸収能力を発
揮する。

【００１８】また、陥没壁部分には、深さが浅いとは言
え周溝が、他の胴部部分から連続した状態で周設されて
いるので、胴部全体に対する周溝の補強機能が低下する
ことがなく、壜体の高い剛性強度は維持される。

【００１９】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図１ないし図４を
参照しながら説明する。図示実施例は、ポリエチレンテ
レフタレート樹脂製の大型２軸延伸ブロー成形壜体を示
すもので、壜体１は、有底長方形筒形状をした胴部２の
上端に、四角錐台形状をした肩部３を介して、外周面に
螺条を刻設した短円筒形状の口部４を立設して構成され
ている。

【００２０】胴部２は、高さ方向の略中央に周設された
中央周溝により上部と下部とに区画されており、この胴
部２の上部に補強用の横溝が、各辺の幅長に応じた長さ
で断続形成されており、そして胴部２の下部には、六つ
の周溝５が平行に周設されており、この胴部２の下部を
構成する四つの平板状の壁部分の内、長手辺に該当する
壁部分が平坦壁部６を構成している。

【００２１】この平坦壁部６の中央部の上端部から下部
にかけての部分には、周溝５の深さを浅くする形態で、
略縦長四角状の陥没壁部分７が陥没設されており、この
陥没壁部分７は、そこに位置する周溝５が浅いことか
ら、他の平坦壁部６に比べて減圧による湾曲陥没変形が
し易いものとなっている。

【００２２】陥没壁部分７の陥没深さ、および陥没壁部
分７における周溝５の深さの具体的な数値は、壜体１の
大きさ、収納される液体の種類、内容液の充填時の加熱
程度等の使用条件に応じて設定されるものであるが、例
えばミネラルウォータ、ウーロン茶、ジュース等の内容
液を８０〜８５度程度で高温充填する条件で、胴部２の
高さが２４０mm、長手辺の幅が１０５mm、短手辺の幅が
８７mmの２リットル壜の場合では、陥没壁部分７の陥没
深さは１．５mm程度、平坦壁部６における周溝５の深さ
は２mm程度、陥没壁部分7 における周溝５の深さは１mm
程度とするのが適当である。

【００２３】上記寸法構成から明らかなように、陥没壁
部分７は、周溝５の深さを浅くすると共に、この周溝５
をも含めて陥没させた形態（図３参照）で成形されるも
のとなっている。

【００２４】図４は、図１ないし図３に示した本発明の
一実施例の壜体１と、図５ないし図７に示した従来例の
壜体１’との、減圧クリープ特性の測定結果を示すもの
で、図４中、特性曲線ａが本発明の壜体１の特性であ
り、特性曲線ｂが従来例の壜体１’の特性である。

【００２５】この測定結果から明らかなように、本発明
の壜体１は、減圧吸収容量の最大値として８７mlを得、
従来の壜体１’の最大減圧吸収容量値６７mlに比べて、
はるかに大きい減圧吸収能力を発揮した。

【００２６】なお、陥没壁部分７が設けられる平坦壁部
６は、長方形筒体の長手辺壁部に限定されることはな
く、例えば、長方形筒体の各平板状壁部分のそれぞれを
平坦壁部６としても良いし、また有底正方形筒形状をし
た胴部２の四つの平板状壁部分のそれぞれを平坦壁部６
としても良い。

【００２７】また、図示実施例の場合、多数の周溝５を
設けることにより、従来の変形パネル壁を設けた減圧吸
収型の壜体に比べて、胴部２全体の剛性強度を高めるこ
とができ、その分、胴部２の壁厚を薄くすることが可能
となったので、一つの壜体を成形するのに要する材料量
が、前記したサイズの２リットル壜体において、従来の
変形パネル壁を設けた場合が約７０〜８０ｇであったの
に対して、同規格の一つの壜体を成形するのに，本発明
の場合は約６０〜６５ｇと大幅に減少させることが可能
となり、高い経済的効果を得ることができた。

【００２８】さらに、図示実施例の場合、肩部３に縦長
の凹陥部８を設けているが、この凹陥部８は、壜体１内
に発生した減圧により肩部３が不正に陥没変形するのを
防止するためのものである。

【００２９】

【発明の効果】本発明は、上記した構成となっているの
で、以下に示す効果を奏する。平坦壁部の中央に、周溝
の深さを浅くして陥没壁部分を設けたので、減圧吸収の
ための平坦壁部中央の陥没変形が発生し易いと共に、陥
没変形し易いものとなり、かつこの陥没壁部分の陥没変
形が引き金となって、平坦壁部全体も大きな曲率で湾曲
陥没変形して減圧を吸収するので、平坦壁部全体として
は、小さい陥没量で大きな減圧吸収量を得ることがで
き、もって壜体全体の外観体裁を損なうことなく、大き
な減圧吸収能力を発揮することができる。

【００３０】減圧吸収の主体部分となる平坦壁部には、
複数の周溝が設けられているので、構造的に高い剛性強
度を得ることができ、これにより例え減圧吸収のために
陥没変形した状態でも、容器としての充分な剛性を発揮
し、もって安定して良好な機能を発揮することができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す、全体正面図。

【図２】図１に示した壜体の全体側面図。

【図３】図１中、Ａ−Ａ線に沿って切断矢視した平断面
図。

【図４】本発明壜体と従来壜体の、減圧吸収特性を示す
特性測定結果線図。

【図５】従来例を示す全体正面図。

【図６】図５に示した実施例の全体側面図。

【図７】図５中、Ｂ−Ｂ線に沿って切断矢視した平断面
図。

【符号の説明】

１ ； 壜体 １’； 壜体 ２ ； 胴部 ３ ； 肩部 ４ ； 口部 ５ ； 周溝 ６ ； 平坦壁部 ７ ； 陥没壁部分 ８ ； 凹陥部 ａ ； 本発明特性曲線 ｂ ； 従来例特性曲線

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 有底筒形状をした胴部(2) に、少なくと
   も一対の平行に対向した平坦壁部(6) を設けると共に、
   複数の周溝（5)を平行に周設し、前記平坦壁部(6) に略
   平坦状となった減圧吸収用の陥没壁部分(7) を、該陥没
   壁部分(7) の前記周溝(5) の深さを浅くして陥没設して
   成る２軸延伸ブロー成形された合成樹脂製壜体。
2. 【請求項２】 胴部(2) を有底長方形筒形状とし、該胴
   部(2) の長手辺面部分に該当する壁部分を平坦壁部(6)
   とした請求項１に記載の合成樹脂製壜体。
3. 【請求項３】 胴部(2) を有底正方形筒形状とし、該胴
   部(2) の四つの平板状壁部分を平坦壁部(6) とした請求
   項１に記載の合成樹脂製壜体。