JPH0738366Y2 - ドレーン材の打設装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 《産業上の利用分野》 この考案はドレーン材を確実に地盤中に残置できるよう
にしたドレーン材の打設装置に関する。

《従来の技術》 周知のように、軟弱地盤の改良工法としてドレーン工法
があり、この種の工法ではペーパーや合成樹脂，不織布
などをドレーン材料とし、これらのドレーン材を地盤中
に残置させ、ドレーン材に周辺の地盤拘留水を集中させ
てこれを排除し、地盤の早期沈下を促進して地盤の改良
を行う工法である。

ドレーン材の打設作業は、ドレーン材を挿通した中空筒
状のケーシングを振動あるいは押圧によって地盤中の所
定深度まで貫入した後、ケーシングのみを引き抜くこと
でドレーン材を地盤中に残置させる。

ところで、この工法での重要な技術的課題の一つとし
て、ケーシングの引き抜き時にドレーン材が一緒に引き
上げられる、いわゆる共上がり現象があり、この現象が
発生すると所期の地盤改良効果が得られなくなる。

このため従来から各種の共上がり防止対策が提供されて
おり、例えば実開昭62−133728号公報に見られるような
ドレーン材保持装置が提案されている。

この装置は、ケーシング先端にあって、これより突出し
たドレーン材を折り込んだ状態に固定する蓋と、ケーシ
ング先端内部にあってケーシングより出没可能な押し込
みロッドを備えている。

そして、この打設装置では、前記蓋を閉止するときにド
レーン材を折り込んでケーシングの先端に固定し、この
状態で地中の所定深度まで貫入し、次いで前記蓋を開け
るとともに、押し込みロッドを突出させ、ドレーン材の
先端部分に形成されたＵ字型折れ曲り部分をさらに地中
深く押し込み、その状態で押し込みロッドおよびケーシ
ングを上昇させることによりドレーン材自体のアンカー
効果によってドレーン材を地中に残置するようにしてい
る。

《考案が解決しようとする課題》 しかしながら、この装置では、押し込みロッドがドレー
ン材先端を押し込んでいる状態でこれを確実に保持して
いるか否かは疑問であり、特に、ドレーン材の繰出し抵
抗が何等かの原因で少しでも大きくなると、押し込みロ
ッドはドレーン材の表面を滑って突出することになり、
このような状態になるとＵ字型の折れ曲り部分がなくな
るので、ドレーン材にアンカー効果が作用せず、ケーシ
ングを引き抜くとドレーン材の共上りが発生する。

このような共上りを回避するには、例えば、Ｕ字型の折
れ曲り部分の長さを大きくすることが考えられるが、こ
の解決手段では、以下に説明する問題がある。

すなわち、折れ曲り部分の長さを大きくすると、ドレー
ン材は蓋から大きく外方に突出することになるが、これ
が貫入される地盤は軟弱とはいえ、その表面付近は締ま
って堅くなっていることが多く、また、礫が存在してい
ることもあり、このような地盤での改良工事は実際にか
なり多くある。

ところが、このような地盤にドレーン材の折れ曲りを大
きくして貫入しようとすると、ドレーン材がケーシング
と礫との間に挟まれて、摩擦力によりドレーン材が切断
されることになり、あまり有効な解決手段ではなかっ
た。

この考案は以上の従来技術の欠点に鑑みなされたもので
あって、地盤中の所定深度まで確実に貫入させ、かつ、
確実に地盤中に残置できるドレーン材の打設装置を提供
することを目的とする。

《課題を解決するための手段》 前記目的を達成するため、この考案は、中空筒状にして
先端が先細り状のケーシングと、このケーシングの先端
開口を開閉可能に設けられ該ケーシングの先端より僅か
に大きな面積を有している蓋体と、前記ケーシング内に
配置され該ケーシングが所定の深度まで貫入されたとき
前記蓋体を開放してケーシングの下端から突出されるマ
ンドレルと、前記ケーシング内に挿通され前記蓋体の閉
止時に前記ケーシングの先端と蓋体との間から僅かに突
出した状態で該蓋体と前記マンドレルとの間で挟持され
るドレーン材とを備えたドレーン材の打設装置であっ
て、前記マンドレルの先端部に前記ドレーン材に当接す
る複数の突起を形成するとともに、前記蓋体の該突起と
対応する個所に凹部を形成し、さらに、前記マンドレル
の外周部に拡径部を形成する一方、前記ケーシングの内
周部には、該マンドレルの出没動作を規制するために該
拡径部を係止する上下のストッパを形成したことを特徴
とする。

《作用》 上記構成の打設装置によれば、ドレーン材をケーシング
の先端の外方の地盤に押し込み、あるいは押圧するマン
ドレルに突起が設けてあるので、マンドレルがドレーン
材の表面を滑ることが防止される。また、ドレーン材が
外部に突出しているので直ちに土砂と接触する。ケーシ
ングの先端は先細り状であるので、ケーシングの引抜き
時に土砂がドレーン材の折込部上（内側）に落ち込みや
すくなる。

さらに、ケーシングを引上げてからドレーン材を切断し
た後、ケーシングの先端からドレーン材を引き出して蓋
体を閉止するだけで次の打設に備えることができる。

さらにまた、蓋体がケーシングの先端より僅かに大きな
面積を有しているので、蓋体がドレーン材の折曲部を地
盤との摩擦から保護する。

《実施例》 以下この考案の一実施例を図面に基いて詳細に説明す
る。

第１図は、この考案にかかるドレーン材の打設装置の一
実施例を示している。

同図に示す打設装置は、ドレーン材10を挿通する中空筒
状のケーシング12と、このケーシング12の先端に配置さ
れた蓋体14と、前記ケーシング12の内部に設置されたマ
ンドレル16とから構成されている。

上記ケーシング12は、そのほぼ全長が円形断面に形成さ
れ、先端部12aが偏平な先細状に縮径され、この先端部1
2aの一方の側面にピン18を介して上記蓋体14が開閉可能
に取り付けられている。

上記マンドレル16は、軸方向に沿って上記ドレーン材10
の挿通孔16aが穿設された基部16bと、一側面がこの挿通
孔16aの一方の面に沿って下方に延設されたロッド部16c
と、このロッド部16cの下端面に突設された３個の突起1
6dから構成されている。

また、上記マンドレル16の基部16bの下端には、拡径部1
6eが形成され、この拡径部16eは上記ケーシング12の内
面に上下方向に間隔を置いて設けられた上下ストッパ2
2,24と係合する。

このように構成されたマンドレル16は、図外のウインチ
にワイヤ20を介して吊り下げられており、拡径部16eが
上ストッパ22に当接した状態でロッド部16cの下端がケ
ーシング12の先端部12aの下端とほぼ一致し、拡径部16e
が下ストッパ24に当接した状態でロッド部16cの大部分
が先端部12aの外方に突出し、ウインチの巻き上げ巻き
戻し操作により出没自在になっている。

なお、マンドレル16を出没可能にさせるには、ウインチ
だけでなく、例えば、マンドレル16を油圧ないしは空圧
のシリンダで押出すようにしても良い。

また、上記蓋体14は、ケーシング12の先端部12aよりも
若干大きく形成され、ピン18で先端部12aに取り付けら
れた側の反対側には、ドレーン材10の挿通用の隙間26が
形成されている。

第２図には、上記打設装置によってドレーン材10を打設
する状態が示されている。

ドレーン材10の打設に当たっては、まず、ドレーン材10
を所定長さだけ繰り出し、マンドレル16をケーシング12
内に収納して、その拡径部16eが上ストッパ22に当接し
た位置にセットされ、蓋体14とケーシング12との間の隙
間26からドレーン材10の先端部を少し突出させた状態で
蓋体14が閉じられ、この状態でケーシング12が地盤28中
に貫入させられる。

このとき、隙間26は蓋体14がピン18で結合されている反
対側だけしかないので、ケーシング12と蓋体14との隙間
から土砂が侵入することが防止される。

また、蓋体14を閉じると、ドレーン材10は、蓋体14の内
面とマンドレル16のロッド部16cの突起16dとの間に挟圧
され、例えば、ドレーン材10が不織布等のペーパードレ
ーン材10であれば、これに食込むようようにして保持さ
れる。

そして、ケーシング12が地盤28中の所定深度まで貫入さ
れると、ケーシング12が引き上げられ、これによりマン
ドレル16は、その位置が維持されるので、蓋体14を開放
して先端部12aの外方に突出させられる。

このような相対移動に対して、ドレーン材10の表面に
は、マンドレル16の複数の突起16dが当接しているの
で、そのロッド部16cが滑ることが防止される。

そして、ケーシング12が引き上げられることにより生じ
る空洞部30に周囲の土砂が崩れ落ち、ドレーン材10の先
端部分はこの土砂によって埋め込まれる。

ケーシング12の引き上げが進行し、マンドレル16の拡径
部16eが下ストッパ24に当接すると、マンドレル16もケ
ーシング12と共に引き上げられ、次の打設サイクルの準
備が行われる。

さて、以上のような装置でドレーン材10を打設すると、
マンドレル16のロッド部16cにドレーン材10に当接する
突起16dが設けてあるので、ドレーン材10をケーシング1
2と共上りさせることなく確実に地盤28中に残置でき
る。

第３図はこの考案の他の実施例を示しており、その特徴
点についてのみ以下に説明する。

この実施例では、蓋体14′をピン18でケーシング12の先
端部12aの幅狭な側面側に開閉可能に取り付けるととも
に、その内面にマンドレル16′に設けられた突起16d′
が侵入する凹部14a′を形成し、かつ、先端部12aの幅広
側にはドレーン材10を挿通する間隙となる凹状の切欠部
14b′が形成されている。

また、マンドレル16′は、基部16b′と、基部16b′の下
端から下方に延設された二股状のロッド部16c′と、拡
径部16e′とを備え、ドレーン材10の挿通孔16a′は基部
16b′の軸心上を貫通し、ロッド部16c′の対向する面に
沿ってその下端まで延びている。

そして、各ロッド部16c′の先端部には、先端が尖った
突起16d′がそれぞれ固着されている。

このように構成された打設装置でも、第２図に示した方
法でドレーン材10を打設すれば、これを確実に地盤中に
残置できる。

また、この実施例に示した装置では、ドレーン材10を蓋
体14′に閉めて装着するときに、二方向の選択ができる
ので、作業性が向上する。

《効果》 以上実施例により詳細に説明したように、この考案によ
るドレーン材の打設装置によれば、マンドレルのロッド
部に設けた突起によりドレーン材の先端を滑りを起こす
ことなく確実に保持した状態で所定深度に残置させるこ
とができるので、ドレーン材は地盤中の土砂との摩擦力
により確実に固定され、しかも、ケーシングが所定位置
まで打ち込まれてからこれを引き抜く際、ドレーン材が
外部に突出しているので直ちに土砂と接触することによ
り、ケーシングの先端を先細り状とすることでケーシン
グの引抜き時に土砂がドレーン材の折込部上（内側）に
落ち込みやすくなることと相俟って、ドレーン材の共上
がりを確実に防止することができる。

また、ケーシングを引上げてからドレーン材を切断した
後、ケーシングの先端からドレーン材を引き出して蓋体
を閉止するだけで次の打設に備えることができるので作
業がきわめて容易である。

さらに、蓋体がケーシングの先端より僅かに大きな面積
を有するよう構成することにより、蓋体がドレーン材の
折曲部を地盤との摩擦から保護することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案に係るドレーン材の打設装置の第１実
施例を示す断面図、第２図は同装置を用いてドレーン材
を地盤中に打設するときの説明図、第３図はこの考案の
他の実施例を示す断面図である。 10……ドレーン材 12……ケーシング 14,14′……蓋体 16,16′……マンドレル 16d,d′……突起

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 田中 暉一郎 東京都千代田区神田司町２丁目３番地 株 式会社大林組東京本社内 (56)参考文献 特開 昭59−195915（ＪＰ，Ａ) 特開 昭51−18108（ＪＰ，Ａ) 実公 昭48−39123（ＪＰ，Ｙ１)

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】中空筒状にして先端が先細り状のケーシン
   グと、このケーシングの先端開口を開閉可能に設けられ
   該ケーシングの先端より僅かに大きな面積を有している
   蓋体と、前記ケーシング内に配置され該ケーシングが所
   定の深度まで貫入されたとき前記蓋体を開放してケーシ
   ングの下端から突出されるマンドレルと、前記ケーシン
   グ内に挿通され前記蓋体の閉止時に前記ケーシングの先
   端と蓋体との間から僅かに突出した状態で該蓋体と前記
   マンドレルとの間で挟持されるドレーン材とを備えたド
   レーン材の打設装置であって、 前記マンドレルの先端部に前記ドレーン材に当接する複
   数の突起を形成するとともに、前記蓋体の該突起と対応
   する個所に凹部を形成し、さらに、前記マンドレルの外
   周部に拡径部を形成する一方、前記ケーシングの内周部
   には、該マンドレルの出没動作を規制するために該拡径
   部を係止する上下のストッパを形成したことを特徴とす
   るドレーン材の打設装置。