JPH0735340B2 - 血栓溶解促進剤 - Google Patents

血栓溶解促進剤

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JPH0735340B2
JPH0735340B2 JP60109256A JP10925685A JPH0735340B2 JP H0735340 B2 JPH0735340 B2 JP H0735340B2 JP 60109256 A JP60109256 A JP 60109256A JP 10925685 A JP10925685 A JP 10925685A JP H0735340 B2 JPH0735340 B2 JP H0735340B2
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Description

【発明の詳細な説明】 a.産業上の利用分野 本発明はヒトα2−プラスミンインヒビター(α2−plas
min inhibitor;α2−antiplasmin)に対するモノクロー
ナル抗体、特にヒトα2−プラスミンインヒビターの線
維素溶解部位(reactive site)を抗原として認識し、
その結果ヒトα2−プラスミンインヒビターの、プラス
ミンの線維素溶解作用に対する阻害活性を抑制し、線溶
促進させる働きを有するモノクローナル抗体を有効成分
とする、血栓症(Thrombosis),広汎性血管内凝固症
(DIC;Disseminated intravascular coagulation)等の
如き血栓性疾患の新規治療剤として使用される血栓溶解
促進剤に関する。
b.従来技術 ヒトα2−プラスミンインヒビターは、青木と諸井によ
つて最初に単離・精製され、線維素溶解酵素のプラスミ
ン(plasmin)のエステラーゼ活性を瞬間的に阻害する
強力なプラスミンインヒビターであり、11.7%の糖を含
む分子量約67,000の1本鎖の糖蛋白質であることが知ら
れている〔Moroi&Aoki;The Journal of Biological Ch
emistry,251,5956-5965(1976)参照〕。
一方ヒトのα2−プラスミンインヒビターには3種類の
活性部位があることが知られている。第1はプラスミン
の線維素溶解作用阻害部位(以下これを“リアクテイブ
サイト”ということがある)〔B.Wiman&D.Collen;The
Journal of Biological Chemistry,254,9291-9297(197
9)参照〕であり、第2はカルボキシル基末端側のプラ
スミン結合部位〔B.Wiman&D.Collen;European Journal
of Biochemistry,84,573-578(1978)参照〕であり、
第3はアミノ基末端のフイブリン結合部位である〔Y.Sa
kata,et al.,Thrombosia Rcsearch,16,279-282(1979)
参照〕。
ヒトα2−プラスミンインヒビターにおけるこれら3種
類の活性部位のうち、リアクテイブサイトを抗原として
選択的に認識するモノクローナル抗体を提供できれば、
これを使用することによつてヒトα2−プラスミンイン
ヒビターの線維素溶解阻害作用を直接抑え、線溶を促進
することができるので非常に興味あることである。
一方、血栓性疾患は血液の性状の変化、血流のうつ滞、
血管壁の変化等により、血管内で血液が凝固する病気で
あり、DICは凝固活性因子の血管内侵入等により、全身
の細小血管に血栓が形成された病気である。これらの治
療に於て血栓の溶解を目的として、プラスミノーゲンを
活性化させる為の酵素、例えばウロキナーゼの投与が行
われている。しかし、血中のα2−プラスミンインヒビ
ターによつてプラスミンが速やかに阻害されるので効果
的ではなかつた。従つて血中のα2−プラスミンインヒ
ビターのプラスミン活性阻害作用を直接抑えるモノクロ
ーナル抗体を治療に用いれば血栓を速やかに消失させる
事ができる。
c.本発明の構成 本発明によれば、ヒトα2−プラスミンインヒビターに
対するモノクローナル抗体であつて、ヒトα2−プラス
ミンインヒビターにおけるプラスミンの線維素溶解阻止
作用を抑制するモノクローナル抗体或いはその少なくと
もFab部分を有する断片を有効成分とする血栓溶解促進
剤が提供される。かゝる本発明の血栓溶解促進剤は、例
えば血栓が原因となつている血栓性疾患を治療するため
に有効である。
本発明のモノクローナル抗体はケーラーとミルシユタイ
ンの方法〔Khler and Milstein,Nature 256,495〜49
7(1975)〕として知られた手法によつて産生される。
すなわち、ヒトα2−プラスミンインヒビターでマウス
を免疫した後、このマウスの脾臓細胞をマウスミエロー
マ細胞と融合させ、得られたハイブリドーマ細胞は、マ
イクロタイタープレート(microtiter plates)に固定
されたヒトα2−プラスミンインヒビターと反応する抗
体に対し系統的に検査し選択される。このようにしてヒ
トα2−プラスミンインヒビターに対する抗体を合成
し、分泌するハイブリドーマ細胞を選別する。得られた
ハイブリドーマ細胞を無血清培地中で培養し、その培養
上清中に分泌されたヒトα2−プラスミンインヒビター
に対する抗体は、フイブリンプレート(fibrin plate
s)上でヒトα2−プラスミンインヒビターの線維素溶解
阻害作用を抑える活性について検査を行なう。その結
果、ヒトα2−プラスミンインヒビターの線維素溶解阻
止作用を特異的に抑える活性を有するモノクローナル抗
体を産生するハイブリドーマ細胞が単離された。
本発明のモノクローナル抗体は、かゝるハイブリドーマ
細胞が産生する産出物から得られる。かくして得られた
モノクローナル抗体は、ヒトα2−プラスミンインヒビ
ターのリアクテイブサイトに対して単一特異的(monosp
ecitic)に作用する。
次に本発明のハイブリドーマ細胞を産生する具体的方法
について詳細に説明する。
A.抗原の単離.精製; 抗原に用いるヒトα2−プラスミンインヒビターは前記
青木と諸井の方法によりヒト血漿中より単離精製され
た。
B.ヒトα2−プラスミンインヒビターによるマウスの免
疫; 雄Balb/cマウスを用いるが、他の系(strains)のマウ
スを使用することもできる。その際、免疫計画及びヒト
α2−プラスミンインヒビターの濃度は十分な量の抗原
刺激を受けたリンパ球が形成されるよう選ばれるべきで
ある。例えばマウスに少量のα2−プラスミンインヒビ
ターで或る間隔で腹腔に数回免疫の後、さらに数回静脈
に投与した。最終免疫の数日後に融合の為に脾臓細胞を
取り出す。
C.細胞融合; 脾臓を無菌的に取り出し、それから単細胞懸濁液を調製
する。それらの脾臓細胞を適当なラインからのマウス骨
髄腫細胞と適当な融合促進剤の使用により細胞融合させ
る。脾臓細胞対骨髄腫細胞の好ましい比率は約20:1〜約
2:1の範囲である。約108個の脾臓細胞について0.5〜1.5
mlの融合媒体の使用が適当である。
細胞融合に用いる骨髄腫細胞は多く知られているが、本
発明ではP3-X63-Ag8-U1細胞(以下P3-U1と略記する)
〔Yelton,D.E.et al.,Current Topics in Microbiology
and Immunology,81,1(1978)参照〕を用いた。これ
は、8−アザグアニン耐性の細胞ラインであり、酵素ヒ
ポキサンチン−グアニンホスホリポシルトランスフエラ
ーゼ(hypoxanthine-guanine phosphoribosyl transfer
ase)が欠失しており、それゆえにHAT(ヒポキサンチ
ン,アミノプリテン,チミジン)培地中では生存しな
い。また、この細胞ラインは、それ自体抗体を分泌しな
い、いわゆる非分泌型である。
好ましい融合促進剤としては例えば平均分子量が1,000
〜4,000のポリエチレングリコールを有利に使用できる
が、この分野で知られている他の融合促進剤を使用する
こともできる。本発明の実施例では平均分子量1,540の
ポリエチレングリコールを用いた。
D.融合した細胞の選択; 別の容器内(例えばマイクロタイタープレート)で未融
合の脾臓細胞,未融合の骨髄腫細胞および融合した細胞
の混合物を、未融合の骨髄腫細胞を支持しない選択培地
で希釈し、未融合の細胞を死滅させるのに十分な時間
(約1週間)培養する。培地は薬物抵抗性(例えば8−
アザグアニン抵抗性)で未融合の骨髄腫細胞を支持しな
いもの(例えば前記HAT培地)が使用される。この選択
培地中では未融合の骨髄腫細胞は死滅する。この未融合
の脾臓細胞は非腫瘍性細胞なのである一定期間後(約1
週間後)死滅する。これらに対して融合した細胞は骨髄
腫の親細胞の腫瘍性と親脾臓細胞の性質をあわせ持つた
めに選択培地中で生存できる。
E.各容器中のヒトα2−プラスミンインヒビターに対す
る抗体の確認; かくしてハイブリドーマ細胞が検出された後、その培養
上清を採取し、ヒトα2−プラスミンインヒビターに対
する抗体について酵素免疫定量法(Enzyme Linked Immu
no Sorbent Assay)によりスクリーニングする。
F.ヒトα2−プラスミンインヒビターに対する活性を持
つ抗体を産生するハイブリドーマ細胞の選択; ヒトα2−プラスミンインヒビターに対する抗体を産生
しているハイブリドーマ細胞を、無血清培地で培養して
得られた、抗体を含んだ培養上澄液を濃縮し、ヒトα2
−プラスミンインヒビターと共に一定時間インキユベー
トした。さらにこのヒトα2−プラスミンインヒビター
混合液にプラスミンを加え、フイブリンプレート上にの
せ、フイブリン溶解面積を測定した。このようにして、
ヒトα2−プラスミンインヒビターに対する活性を持つ
抗体を産生するハイブリドーマ細胞を選択する。
G.目的の抗体を産生するハイブリドーマ細胞のクローン
化; 目的の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を適当な方法
(例えば限定希釈法)でクローン化すると、抗体は2つ
の異なつた方法で産生される。その第1の方法によれば
ハイブリドーマ細胞を一定時間適当な培地で培養するこ
とにより、その培養上清からそのハイブリドーマ細胞の
産生するモノクローナル抗体を得ることができる。第2
の方法によればハイブリドーマ細胞は同質遺伝子又は半
同質遺伝子を持つマウスの腹腔に注射することができ
る。一定時間後の宿主動物の血液中及び腹水中より、そ
のハイブリドーマ細胞の産生するモノクローナル抗体を
得ることができる。
本発明で用いるモノクローナル抗体は、抗体全体を用い
るのはもちろんの事、抗体を、蛋白質分解酵素であるパ
パインを用いてPorterの方法〔R.R.Porter,Biochemical
Journal 73,119〜126(1959)参照〕により切断し、添
付図面の点線で囲まれた部分、いわゆるFab成分を含む
構造のモノクローナル抗体であればよい。
このモノクローナル抗体のFabの部分構造はフイブリン
プレート上でヒトα2−プラスミンインヒビターの線維
素溶解阻害作用を抑える活性について調べられた。その
結果、上記のモノクローナル抗体のFabの部分構造のみ
でヒトα2−プラスミンインヒビターの線維素溶解阻害
作用を特異的に抑える活性を有する事が確かめられた。
本発明のFab構造の少なくとも有するモノクローナル抗
体及び部分は、ヒトα2−プラスミンインヒビターのリ
アクテイブサイトに対して単一特異的に作用する。
本発明に使用される抗体である“α2−プラスミンイン
ヒビターにおけるプラスミンの線維素溶解作用の阻止部
位を特異的に認識して結合し得るモノクローナル抗体”
は、本発明者らによつて初めて見出され、先に特許出願
された(昭和59年4月17日出願:発明の名称“モノクロ
ーナル抗体,ハイブリドーマ細胞及びモノクローナル抗
体の製造方法",昭和59年10月12日出願:発明の名称“モ
ノクローナル抗体”)。
かくして、本発明においては前記モノクローナル抗体或
いはそのFab部分を少なくとも有する抗体の断片を有効
成分と含有するものであれば、それを血栓に接触させる
ことによりそれがヒトα2−プラスミンインヒビターに
おけるプラスミンのリアクテイブサイトに特異的に作用
し、結果的に血栓を溶解させるので血栓溶解促進剤とし
て利用できる。例えば本発明の血栓溶解促進剤は、静注
用製剤として使用することができ、その場合、上記モノ
クローナル抗体或いはそのFab部分を少なくとも有する
抗体断片は広い範囲の含有割合でよく、またこれらは通
常静注用として使用されている水性媒体中に溶解乃至分
散して使用することができる。例えば該モノクローナル
抗体を、ヒト血清アルブミン等の安定化剤、pH、浸透圧
などの調節剤例えばアミノ酢酸を含む生理食塩に溶か
し、凍結乾燥して製剤化できる。かかる方法は当業界周
知であるが、例えば以下の組成、 モノクローナル抗体 5 重量% アミノ酢酸 2.25 〃 人血清アルブミン 0.25 〃 D-マンニトール 1.0 〃 塩化ナトリウム 0.9 〃 が例示できる。
かかる薬剤を例えば点滴静注で400〜500mg/人・日で投
与することができる。
以下実施例を掲げ本発明を詳細に説明する。
実施例1 (1)ヒトα2−プラスミンインヒビターの調製 前記、青木及び諸井の方法に従い、ヒト血漿2,360mlか
らヒトα2−フラスミンインヒビター7.7mgを得た。
(2)マウスの免疫 雄のBalb/cマウスをヒトα2−プラスミンインヒビター1
00μgと完全なフロイントのアジユバント(Complete F
reund′s adjuvant)とのエマルジヨン(emulsion)で2
1日間の間隔をおいて2回腹腔に免疫した。さらに7日
後及び88日後にヒトα2−プラスミンインヒビター30μ
gを生理食塩水とともに静脈に追加投与した。最終免疫
の4日後にその脾臓細胞を細胞融合のために用いた。
(3)脾臓細胞の懸濁液の調製 脾臓を無菌的に取り出し、ステンレス製メツシユを通過
させることにより単細胞懸濁液が得られた。細胞をL−
グルタミン0.39g/l,硫酸カナマイシン0.2g/l及びNaHCO3
2.0g/lを補充したRPMI-1640培地(GIBCO製)に移した。
増殖した細胞をRPMI-1640で3回洗浄しRPMI-1640培地に
再懸濁させた。
(4)骨髄腫細胞の調製 マウス骨髄種細胞P3-U1は、L−グルタミン0.39g/l,硫
酸カナマイシン0.2g/l,NaHCO32.0g/l及び10%のウシ胎
児血清で補充されたRPMI-1640培地(10%FCS-RPMI-1640
と略記する)中で培養した。骨髄腫細胞は細胞融合の時
点に細胞分裂の対数期にあつた。
(5)細胞融合 脾臓細胞と骨髄腫細胞とを10:1の比率で無血清RPMI-164
0培地中に懸濁し、5分間約200gで遠心分離した。上澄
液培地を除去した後、沈降物を平均分子量1.540の50%
ポリエチレングリコール溶液(pH8.2)1mlと共に2分間
37℃でインキユベーシヨンした。次いで無血清RPMI-164
0培地9mlを加え、細胞を5分間注意深く再懸濁した。次
いでこの懸濁液を5分間約200gで遠心分離し、その後8
×106細胞/mlの濃度が得られるように10%FCS-RPMI-164
0培地に再懸濁し、次いで96マイクロウエルプレート上
に分配した(ウエル1個につき約100μl)。この融合
細胞は37℃において5%CO2を使用して培養した。
(6)ヒトα2−プラスミンインヒビターに対する抗体
産生ハイブリドーマ細胞の選択及び培養 細胞融合の1日後にHAT培地をウエル1個につき100μl
加えた。以後2日間隔で半分量の培地を新たなHAT培地
と交換して培養した。8日後、ハイブリドーマ細胞の培
養上澄液中のヒトα2−プラスミンインヒビターに対す
る抗体について酵素免疫定量法によりスクリーニングを
おこなつた。スクリーニングに用いられた抗原はヒトα
2−プラスミンインヒビター、第2抗体はアルカリフオ
スフアターゼ(alkali phosphatase)標識付のウサギ抗
マウス抗体であつた。
総数349個のウエルの全てが酵素免疫定量法により陽性
であり、α2−プラスミンインヒビターに対する抗体を
産生しているという結果が得られた。
細胞の増殖が活発になつたと観察されたとき、HT培地を
加えた。1日間隔で計4回HT培地を用いて培地交換をお
こない、その後は通常の10%FCS-RPMI-1640培地を用い
て培養した。
実施例2(ヒトα2−プラスミンインヒビターに対する
抗体を産生するハイブリドーマ細胞の選択) 上記ヒトα2−プラスミンインヒビターに対する抗体を
産生しているハイブリドーマ細胞中からヒトα2−プラ
スミンインヒビターの線維素溶解阻害活性を抑える働き
を持つた抗体を産生するハイブリドーマ細胞を次の方法
でスクリーニングした。
各ウエルのハイブリドーマを10%FCS-RPMI-1640培地中
で培養し、細胞数を約2×107個とした。この細胞を5
分間約200gで遠心分離し、培養上澄液を除去した後、細
胞を無血清RPMI-1640培地10mlで洗浄した。さらに5分
間約200gで遠心分離し、上澄液を除去し、細胞を2−メ
ルカフトエタノール5.0ml/l,インシユリン7.5ml/l,トラ
ンスフエリン5.0ml/l,エタノールアミン5.0ml/l,ナトリ
ウムセレナイト5.0ml/l,L−グルタミン0.39g/l,硫酸カ
ナマイシン0.2g/l,Hepes2.38g/l及びNaHCO31.5g/lで補
充されたRPMI-1640:Dulbecco′sMEM:Ham′sF-12(2:1:
1)の混合無血清培地(以下これを“MITES培地”と略記
する)10mlに懸濁し、3日間培養した。
培養上澄液を回収し、これを25倍に濃縮した。この濃縮
液25μlにヒトα2−プラスミンインヒビター0.4μgを
加え、37℃で30分間インキユベーシヨンした。次いでプ
ラスミノーゲン0.025ユニツト及びウロキナーゼ0.031ユ
ニツトを加え液量を40μlとした。このうち10μlをフ
イブリンプレートにのせた。フイブリンプレートは、37
℃,湿度95%以上の条件下で18時間静置し溶解した面積
を測定した。
その結果、1D10ハイブリドーマ細胞の産生する抗体に加
えたヒトα2−プラスミンインヒビターの線維素溶解阻
害活性を完全に抑える働きが見出された。
実施例3 ハイブリドーマ細胞のクローニング; ヒトα2−プラスミンインヒビターに対する抗体の活性
試験において陽性の結果を示したハイブリドーマ細胞
(1D10)を次の方法でクローン化した。
1D10細胞を96ウエルマイクロタイタープレートの1ウエ
ルあたり0.9細胞となるよう希釈し、Balb/cマウス胸腺
細胞をフイーダー細胞として加えプレートに分配し10%
FCS-RPMI-1640倍で培養した。顕微鏡下で観察し、確実
にシングルセルコロニーであることを認めた。ハイブリ
ドーマ細胞の培養上澄液中のヒトα2−プラスミンイン
ヒビターに対する抗体につき酵素免疫定量法によりスク
リーニングをおこなつた。
総数26個のウエルが酵素免疫定量法により陽性でありヒ
トα2−プラスミンインヒビターに対するモノクローナ
ル抗体を産生していた。
モノクローナル抗体の精製; 大量のヒトα2−プラスミンインヒビターに対するモノ
クローナル抗体を産生させるために、約107個のハイブ
リドーマ細胞をプリスタンで前処理したBalb/cマウスに
腹腔内注射した。約1週間後採取された腹水液よりEyら
の方法〔P.L.Ey,S.J.Prowse and C.R.Jenkin,Immunoche
mistry,15,429-436(1978)参照〕に従いプロテインA
−セフアロース4B(proteinA-Sepharose4B)カラムを用
いて抗体を精製した。腹水液2.5mlよりヒトα2−プラス
ミンインヒビターに対するモノクローナル抗体20mgを得
た。
精製したモノクローナル抗体の特徴; 精製したモノクローナル抗体の特定のクラスを、クラス
特異性抗マウス抗血清を使用してオクタロニーゲル拡散
試験で決定した。その結果を下記表1に示した。ヒトα
2−プラスミンインヒビターに対する抗体は、その多く
がH鎖γ1,L鎖Kであつた。
実施例4 ヒトα2−プラスミンインヒビターに対する抗体による
ヒトα2−プラスミンインヒビター活性の抑制 ヒトα2−プラスミンインヒビター1μgと各モノクロ
ーナル抗体5μgを0.05Mリン酸緩衝生理食塩水(以下P
BSと略す)50μlに溶解させ、37℃で30分間インキユベ
ーシヨンした。次いでプラスミノーゲン0.025ユニツト
及びウロキナーゼ0.031ユニツトを加え液量を60μlと
した。このうち10μlをフイブリンプレートにのせた。
フイブリンプレートは37℃,湿度95%以上の条件下で18
時間静置し、溶解した面積を測定した。その結果を下記
表2に示した。
なお、プラスミノーゲン0.025ユニツトとウローキナー
ゼ0.031ユニツトとによる溶解面積を100%とした。
実施例5 ヒトα2−プラスミンインヒビターとフイブリンの結合
に及ぼすヒトα2−プラスミンインヒビターに対するモ
ノクローナル抗体の効果 I125標識したヒトα2−プラスミンインヒビター0.01μ
Mとα2−プラスミンインヒビターに対するモノクロー
ナル抗体0.05μMを2%牛血清アルブミン−0.05Mトリ
ス緩衝液(pH7.4)−0.15M NaClを加えて、37℃で30分
間インキユベーシヨン後、4℃で一晩放置した。この抗
原−抗体反応混液に、2.5mM CaCl7,7μMフイブリノー
ゲン画分,2ユニツト/mlトロンビンを加え、全量で100μ
lとして37℃で30分間インキユベーシヨンした。凝固物
(フイブリン塊)の形成が認められた。30分後に200mM
EDTAを100μl加え、カルシウムイオンを除いた後、竹
串でこの凝固物を巻き取つた。竹串に巻き取つた凝固物
は5分間,3回洗浄液(2%BSA,0.05Mトリス緩衝液(pH
7.4),0.15M NaCl,2mM EDTA〕で洗つた。最後に凝固物
を竹串から試験管に回収し、凝固物の放射活性(cpm)
を測定した。元の反応混液中の放射活性に対する凝固物
の放射活性の割合を表3に示す。
なお表3中に通常の市販のマウスIgGを比較抗体として
使用した結果を併せて示した。
この結果から各ヒトα2−プラスミンインヒビターに対
するモノクローナル抗体はヒトα2−プラスミンインヒ
ビターのフイブリン結合部位を認識していないモノクロ
ーナル抗体であることがわかる。
実施例6(ヒトα2−プラスミンインヒビターのリアク
テイブサイトを認識するモノクローナル抗体の検索) 本実施例はヒトα2−プラスミンインヒビターによるプ
ラスミンの不活性化に及ぼすα2−プラスミンインヒビ
ターに対するモノクローナル抗体の効果を調べたもので
ある。
α2−プラスミンインヒビター0.15μMとα2−プラスミ
ンインヒビターに対するモノクローナル抗体0.75μMを
2%牛血清アルブミン溶液0.05Mトリス緩衝液(pH7.
4),0.15M NaCl〕中で37℃,30分間インキユベーシヨン
し、4℃で一晩放置した。
この反応混液60μlとプラスミン溶液(0.47μM)20μ
lを混ぜ、0.05Mトリス緩衝液(pH7.4),0.15M NaClを
加えて全量を500μlとしたものを各サンプルについて
2本ずつ用意し、37℃で2分又は20分間インキユベーシ
ヨンした。次に3.5mM合成基質S-2251(H−D−バリル
−L−ロイシル−L−リジル−p−ニトロアニリド・二
塩酸塩)を200μl加え、分光光度計(Beckman,DU-8)
によつて単位時間当りの405nmの波長における吸光度の
変化を測定した。対照としてプラスミンのみを反応させ
た試料とモノクローナル抗体を加えずにヒトα2−プラ
スミンインヒビターとプラスミンを反応させた試料につ
いても同様に吸光度の変化を調べた。その結果を下記表
4に示した。
以上実施例5及び6の結果から本発明のモノクローナル
抗体はヒトα2−プラスミンインヒビターのリアクテイ
ブサイトを特異的に認識し、プラスミン結合部位及びフ
イブリン結合部位のいずれをも認識していないことがわ
かつた。
実施例7 ヒトα2−プラスミンインヒビターのリアクテイブサイ
トを認識するモノクローナル抗体のパパインによる切断 ヒトα2−プラスミンインヒビターのリアクテイブサイ
トを特異的に認識する上記実施例記載のモノクローナル
抗体1D10C1 1mgを溶解液〔2mM EDTA,12.5mMシステイン,
50mMトリス緩衝液(pH7.4),0.15M NaCl〕300μlに溶
解し、1mg/ml濃度のパパイン溶液100μlを加え、37℃
で18時間反応させた。
この反応液を液体クロマトグラフイーにかけ、Fab成分
を分取した。これをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気
泳動により、還元条件及び非還元条件下で分子量を測定
したところ、抗体のH鎖(Heavy chain)のアミノ基末
端より分子量約23,000の断片と分子量約23,000のL鎖全
体から成るFab成分であることが認識された。
実施例8 ヒトα2−プラスミンインヒビターに対する抗体のFab成
分によるヒトα2−プラスミンインヒビター活性の抑制 ヒトα2−プラスミンインヒビター1μgと、各モノク
ローナル抗体3μgを0.05M PBS50μlに溶解させ37℃
で30分間インキユベーシヨンした。次いでプラスミノー
ゲン0.025ユニツト及びウロキナーゼ0.031ユニツトを加
え液量を60μlとした。このうち10μlをフイブリンプ
レートにのせた。フイブリンプレートは37℃湿度95%以
上の条件で18時間静置し、溶解した面積を測定した。そ
の結果を下記表5に示した。なお下記表の値は、プラス
ミノーゲン0.025ユニツトとウロキナーゼ0.031ユニツト
とによる溶解面積を100%とした時の相対値である。
また、実施例6と同様の方法でこのモノクローナル抗体
のFab成分によるヒトα2−プラスミンインヒビター活性
の抑制の検討をおこなつた。
α2−プラスミンインヒビター0.6μg(9pmol)とα2
プラスミンインヒビターに対するモノクローナル抗体40
pmolを2%牛血清アルブミン溶液〔0.05Mトリス緩衝液
(pH7.4),0.15M NaCl〕60μlに溶解し、37℃,30分間
インキユベーシヨンし、4℃で一晩放置した。
この反応混液とプラスミン溶液(0.47μM)20μlを混
ぜ、0.05Mトリス緩衝液(pH7.4)0.15M NaClを加えて全
量を500μlとした。次に3.5mM合成基質S-2251水溶液を
200μl加え、分光光度計(日立100-50)によつて405nm
の波長における単位時間当りの吸光度の変化を測定し
た。対照としてプラスミンのみを反応させた試料とモノ
クローナル抗体を加えずにヒトα2−プラスミンインヒ
ビターとプラスミンを反応させた試料についても同様に
吸光度の変化を調べた。その結果を下記表6に示した。
以上実施例8の結果から、本発明のFabを有するモノク
ローナル抗体はヒトα2−プラスミンインヒビターのリ
アクテイブサイトを特異的に認識し、ヒトα2−プラス
ミンインヒビターの線維素溶解阻止作用を抑制すること
がわかつた。
実施例9 ヒト血漿を用いた血栓溶解試験 正常人血漿150μlにトロンビン溶液(200ユニツト/m
l)60μlを加え、37℃で2分間加温して血漿を凝固さ
せ凝固塊を得た。一方、正常人血漿290μlに、α2−プ
ラスミンインヒビターに対するモノクローナル抗体溶液
(1D10C1;3.39mg/ml)を27μl加え、37℃で30分間加温
した。これにプラスミン溶液(1,000ユニツト/ml)100
μlを加え同時に凝固塊を浸し、37℃で加温した。比較
対照としてモノクローナル抗体溶液の代わりにリン酸緩
衝生理食塩水で置換えたものと、凝固塊溶解時間を比較
した。その結果、α2−プラスミンインヒビターに対す
るモノクローナル抗体を用いた場合、凝固塊は約2時間
で完全に溶解したのに比べ、モノクローナル抗体を用い
ない場合には10時間以上を要した。
実施例10 ヒト血液を用いた血栓溶解試験 正常人血液150μlにトロンビン溶液(200ユニツト/m
l)60μlを加え、37℃で2分間加温して血液を凝固さ
せ、凝固塊を得た。一方、正常人血液300μlに、α2
プラスミンインヒビターに対するモノクローナル抗体溶
液(1D10C1;3.39mg/ml)を27μl加え、37℃で30分間加
温した。これにプラスミン溶液(1,000ユニツト/ml)10
0μlを加え、同時に凝固塊を浸し37℃で加温した。比
較対照としてモノクローナル抗体溶液の代わりにリン酸
緩衝生理食塩水で置換えたものと、凝固塊溶解時間を比
較した。その結果、α2−プラスミンインヒビターに対
するモノクローナル抗体を用いた場合、凝固塊は約2時
間で完全に溶解したのに比べ、モノクローナル抗体を用
いない場合には10時間以上を要した。
【図面の簡単な説明】
添付図面は、本発明におけるモノクローナル抗体を、パ
パインを用いて分解したときの抗体のFabの部分構造を
示す図である。図中Vは可変領域、Cは定常領域を示
す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 青木 延雄 東京都文京区本郷4−20―2―304

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ヒトα2−プラスミンインヒビターに対す
    るモノクローナル抗体であつて、ヒトα2−プラスミン
    インヒビターにおけるプラスミンの線維素溶解阻止作用
    を抑制するモノクローナル抗体を有効成分とする血栓溶
    解促進剤。
  2. 【請求項2】ヒトα2−プラスミンインヒビターに対す
    るモノクローナル抗体であつて、ヒトα2−プラスミン
    インヒビターにおけるプラスミンの線維素溶解阻止作用
    を抑制する少なくともFab部分を有するモノクローナル
    抗体を有効成分とする血栓溶解促進剤。
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