JPH0733084A - 舶用二重反転プロペラ式推進装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 舶用二重反転プロペラ式推進装置において、
同装置の歯車装置など軸系を構成する主要部品に不具合
が生じた場合、内軸あるいは外軸を個別に遊転状態に設
定できるようにした。 【構成】 前方プロペラ６を取り付けられた外軸４と後
方プロペラ７を取り付けられた内軸５とをそなえた舶用
二重反転プロペラ式推進装置において、原動機としての
高圧蒸気タービン11ｂおよび低圧蒸気タービン11ａの各
回転軸と外軸４および内軸５との間に、減速および逆転
機能を有する伝動装置を介装し、伝動装置の歯車13，20
を、駆動軸２，３上をスライド可能に配設して、いずれ
か一方の歯車13，20を歯車16，19のいずれかと非噛合と
することにより、内軸５あるいは外軸４へのトルク伝達
を遮断して遊転状態に設定できるようにした。また、歯
車16の出力側と外軸４との間に装備した短軸30を取り外
して、外軸４を遊転状態に設定することも可能である。
これにより一軸航走時の増速が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、船舶の二重反転プロペ
ラ式推進装置に関し、特に二重反転プロペラ式推進装置
を構成する内軸および外軸がそれらの回転駆動源として
の原動機からそれぞれ個別に切り離されて遊転状態に設
定できるようにした、舶用二重反転プロペラ式推進装置
に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、船舶の推進装置として、図５に示
すような蒸気タービンを主機関とした二重反転プロペラ
式推進装置が提案されている。すなわち図５において、
符号11ａは低圧蒸気タービンをまたは符号11ｂは高圧蒸
気タービンをそれぞれ示しており、高圧蒸気タービン11
ｂおよび低圧蒸気タービン11ａの回転を、１段減速装置
の歯車12，18と２段減速装置の歯車13，19とを介して、
内軸５に伝達する一方、小歯車20，アイドル歯車17およ
び外軸ホイール16を介して外軸４を内軸５に対し反転さ
せ、外軸４の後端部および内軸５の後端部にそれぞれ取
り付けられた前方プロペラ６および後方プロペラ７をそ
れぞれ互いに逆方向に駆動できるようになっている。な
お図５中の符号14は内軸スラスト軸受を、符号15は外軸
スラスト軸受をそれぞれ示している。

【０００３】また、図６に示すような内軸５をディーゼ
ル主機関10で、また外軸４を高圧および低圧の蒸気ター
ビン11ｂ，11ａで、それぞれ個別に駆動するようにした
二重反転プロペラ式駆動装置も提案されており、後方プ
ロペラ７は内軸５に接続され、フランジ継手24によって
ディーゼル主機関10により駆動されるようになってい
る。なお、後方プロペラ７で発生するスラストは、ディ
ーゼル主機関10に内蔵した図示省略のスラスト軸受で受
けられる。また前方プロペラ６は外軸４に結合されてお
り、そのスラストはスラスト軸受15にて支持される。さ
らに高圧蒸気タービン11ｂおよび低圧蒸気タービン11ａ
で発生するトルクは、第１段減速装置の歯車22，28およ
び第２段減速装置の歯車29，21を介して外軸４に伝達さ
れる。符号23はクラッチを示している。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のよう
な従来の舶用二重反転プロペラ式推進装置において、歯
車装置など軸系を構成する主要部品に不具合が生じた場
合、固縛しやすい外軸を船体に固定すると共に途中で主
機関のトルクを遮断し、内軸つまり後方プロペラのみで
航行する運転方式が考えられる。しかしこの場合、前方
プロペラが固定されることになるためにそのピッチによ
り後方プロペラに流入する水流が乱れる。その結果スム
ーズな水流（前方プロペラが正常回転した状態）をベー
スに設計されている後方プロペラの翼応力が増加する。
そしてこの翼応力を許容値以下にして航行する必要があ
るため、おのずと船速（主機回転数）が制限されるとい
う問題点がある。

【０００５】本発明は、舶用二重反転プロペラ式推進装
置の歯車装置など軸系を構成する主要部品に不具合が生
じた場合、内軸系／外軸系のトルク伝達を遮断できる手
段と、必要な場合には軸が抜けることを防止する機構と
を設け、一方の軸を固定せずに遊転させて次の２つの問
題点、すなわち 前方プロペラを固定した場合の上記問題点、 後方プロペラを固定した場合には前方プロペラのスラ
ストが全て後方プロペラに当たり、後方プロペラが邪魔
板となって、船速が得られない、 を解決し一軸航走時の船速を増加できるようにした、舶
用二重反転プロペラ式推進装置を提供することを目的と
する。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
め、本発明の舶用二重反転プロペラ式推進装置は、後端
部に前方プロペラを取り付けられるとともに船体に回転
可能に支持された中空状の外軸と、同外軸の内部に回転
可能に支持されるとともに後端部に後方プロペラを取り
付けられた内軸と、上記の内軸および外軸の回転駆動源
としての原動機と、同原動機と上記の内軸および外軸と
の間に介設されて上記の内軸および外軸を互いに反対方
向へ駆動可能な伝動装置とをそなえ、上記の内軸および
外軸をそれぞれ上記原動機から個別に切り離して上記の
内軸および外軸をそれぞれ個別に遊転状態に設定可能な
トルク遮断手段が上記伝動装置に組み込まれていること
を特徴としている。

【０００７】

【作用】上述の本発明の舶用二重反転プロペラ式推進装
置では、歯車装置など軸系を構成する主要部品に不具合
が生じた場合、伝動装置に組み込まれたトルク遮断手段
により、内軸および外軸を、それぞれ個別に遊転状態に
設定することができ、これにより一軸航走時の船速を増
加することができる。

【０００８】

【実施例】以下、図面により本発明の実施例について説
明すると、図１は第１実施例としての舶用二重反転プロ
ペラ式推進装置の模式平面図、図２は同トルク遮断時の
模式平面図、図３は第２実施例としての舶用二重反転プ
ロペラ式推進装置の模式平面図、図４は同トルク遮断時
の模式平面図である。

【０００９】図１，２に示した第１実施例としての舶用
二重反転プロペラ式推進装置は、蒸気タービンを主機関
とする図５に示した舶用二重反転プロペラ式推進装置を
その基本構成とするもので、図５の場合と同様に、後端
部に前方プロペラ６を取り付けられるともに船体に回転
可能に支持される中空状の外軸４と、この外軸４の内部
に回転可能に支持されるとともに後端部に後方プロペラ
７を取り付けられた内軸５とをそなえる一方、原動機と
して高圧蒸気タービン11ｂおよび低圧蒸気タービン11ａ
をそなえ、高圧蒸気タービン11ｂおよび低圧蒸気タービ
ン11ａの回転を内軸５に伝達するための１段減速装置を
構成する歯車12，18と２段減速装置を構成する歯車13，
19とが設けられ、さらに、外軸４を接続された外軸ホイ
ール16を逆回転させるための小歯車20およびアイドル歯
車17が設けられている。符号14は内軸スラスト軸受、符
号15は外軸スラスト軸受をそれぞれ示している。

【００１０】そして、１段減速装置の出力側の駆動軸
２，３が長尺化されて、歯車13や小歯車20がスライドで
きる（図２参照）ように構成され、さらに外軸４が外軸
ホイール16に直結されないで、外軸４と外軸ホイール16
との間に分割構造の短軸30が装備された構成となってい
る。

【００１１】上述の構成により、舶用二重反転プロペラ
式推進装置の歯車装置など軸系を構成する主要部品に不
具合が生じた場合、次のような対処が可能となる。 (1) 図１の状態から１段減速装置の歯車13を駆動軸２，
３上でスライドさせて歯車19との噛合を解除する（小歯
車20は図１の状態のまま）と、内軸５に対するトルク伝
達が遮断されて内軸５が遊転状態となり、外軸４のみに
よる航行が可能な状態に設定することができる。 (2) 図１の状態から小歯車20を駆動軸２，３上でスライ
ドさせてアイドル歯車17との噛合を解除する（歯車13は
図１の状態のまま）と、外軸４に対するトルク伝達が遮
断されて外軸４が遊転状態となり、内軸５のみによる航
行が可能な状態に設定することができる。 (3) 上記(2)に代えて、外軸ホイール16の出力側に装備
の短軸30を取り外すことにより、外軸４を遊転状態にし
て内軸５のみによる航行が可能な状態に設定することも
できる（図２参照）。

【００１２】次に、図３，４に示した第２実施例として
の舶用二重反転プロペラ式推進装置は、内軸５を原動機
としてのディーゼル主機関10でまた外軸４を原動機とし
て高圧および低圧の蒸気タービン11ｂ，11ａでそれぞれ
駆動するようにした図６に示した舶用二重反転プロペラ
式推進装置をその基本構成とするもので、図６の場合と
同様に、後端部に前方プロペラ６を取り付けられるとと
もに船体に回転可能に支持される中空状の外軸４と、こ
の外軸４の内部に回転可能に支持されるとともに後端部
に後方プロペラ７を取り付けられた内軸５とをそなえる
一方、ディーゼル主機関10に内軸５がフランジ接手24を
介して接続され、また、高圧蒸気タービン11ｂおよび低
圧蒸気タービン11ａの発生トルクが第１段減速装置の歯
車22，28および第２段減速装置の歯車29，21を介して外
軸４に伝達されるようになっており、さらに、歯車28と
歯車29との間にクラッチ23が介装され、歯車21と外軸４
との間に分割構造の短軸30が装備されている。さらにま
た、フランジ接手24に短軸24ａが装備され、内軸５にス
ラストカラー32が設けられていて、これに一軸航走用の
スラスト軸受31を装着できるようになっている。

【００１３】上述の構成において、舶用二重反転プロペ
ラ式推進装置の歯車装着など軸系を構成する主要部品に
不具合が生じた場合、次のような対処が可能となる。 (1) 図３の状態からクラッチ23を「脱」とするか、もし
くは歯車21に装備の短軸30を取り除くと、外軸４と高圧
および低圧の蒸気タービン11ｂ，11ａとの縁が切れて、
外軸４が遊転状態となり、内軸５のみによる航行が可能
な状態に設定することができる。 (2) 図３の状態から内軸５のスラストカラー32に嵌合す
るようにスラスト軸受31を装着して内軸５の抜け止めを
計り、併せてフランジ継手24の短軸24ａを取り除いて内
軸５をディーゼル主機関10から切り離すと、内軸５が遊
転状態となり、外軸４のみによる航行が可能な状態に設
定することができる。

【００１４】このように、上述の各実施例のものでは、
外軸あるいは内軸をそれぞれ個別に遊転状態に設定する
ことができる。

【００１５】したがって、舶用二重反転プロペラ式推進
装置において、歯車装置などの軸系を構成する主要部品
に不具合が生じた場合、外軸あるいは内軸の一方を遊転
状態に設定し、他方のみで航行を行なうことができるた
め、前方プロペラすなわち外軸４を船体に固定したとき
の不都合（後方プロペラへ流入する水流が乱れ翼応力が
過大になったり、キャビテーションが発生するため、後
方プロペラの回転数を制限しなければならない）や、後
方プロペラすなわち内軸５を船体に固定したときの不都
合（前方プロペラで発生したスラストを後方プロペラが
邪魔板となって船速を低下させる）を解消することがで
きる。

【００１６】

【発明の効果】以上詳述したように、本発明の舶用二重
反転プロペラ式推進装置によれば、次のような効果ない
し利点が得られる。 (1) 舶用二重反転プロペラ式推進装置において、歯車装
置など軸系を構成する主要部品に不具合が生じた場合、
前方プロペラすなわち外軸を船体に固定すると、後方プ
ロペラへ流入する水流が乱れ翼応力が過大になったり、
キャビテーションが発生したりするために、後方プロペ
ラの回転数を制限しなければならないが、本発明により
外軸を遊転状態に設定することが可能となり、これによ
り、ある試算によると外軸固定時に比べ約２ノット増速
が可能となり、不稼動損失を大幅に低減できる。 (2) 同様に、後方プロペラつまり内軸を船体に固定する
と、折角前方プロペラで発生したスラストを後方プロペ
ラが邪魔板となって船速を大きく低下させるが、本発明
により内軸を遊転状態に設定することが可能になり、船
速低下を大きく軽減できて、運航コストの軽減に大きく
寄与できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例としての舶用二重反転プロ
ペラ式推進装置の模式平面図。

【図２】同トルク遮断時の模式平面図。

【図３】本発明の第２実施例としての舶用二重反転プロ
ペラ式推進装置の模式平面図。

【図４】同トルク遮断時の模式平面図。

【図５】従来の舶用二重反転プロペラ式推進装置の模式
平面図。

【図６】従来の他の舶用二重反転プロペラ式推進装置の
模式平面図。

【符号の説明】

２，３ 駆動軸 ４ 外軸 ５ 内軸 ６ 前方プロペラ ７ 後方プロペラ 10 原動機としてのディーゼル主機関 11ａ 原動機としての低圧蒸気タービン 11ｂ 原動機としての高圧蒸気タービン 12,13,18,19 減速装置を構成する歯車 14，15 スラスト軸受 17 逆転用のアイドル歯車 20 小歯車 21,22,28,29 減速装置を構成する歯車 23 クラッチ 24 フランジ継手 24ａ 短軸 30 短軸 31 スラスト軸受 32 ストライカー

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 舶用二重反転プロペラ式推進装置におい
   て、後端部に前方プロペラを取り付けられるとともに船
   体に回転可能に支持された中空状の外軸と、同外軸の内
   部に回転可能に支持されるとともに後端部に後方プロペ
   ラを取り付けられた内軸と、上記の内軸および外軸の回
   転駆動源としての原動機と、同原動機と上記の内軸およ
   び外軸との間に介設されて上記の内軸および外軸を互い
   に反対方向へ駆動可能な伝動装置とをそなえ、上記の内
   軸および外軸をそれぞれ上記原動機から個別に切り離し
   て上記の内軸および外軸をそれぞれ個別に遊転状態に設
   定可能なトルク遮断手段が上記伝動装置に組み込まれて
   いることを特徴とする、舶用二重反転プロペラ式推進装
   置。