JPH0732990Y2 - ドグクラッチ装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は，伝動機構に用いられるドグクラッチ装置に
関するものである。

〔従来の技術〕

内歯ギヤ構造のドグに外歯ギヤ構造のクラッチギヤを係
脱することで動力伝達の断続を図るドグクラッチ装置は
係脱が行い易く，かつ，構造が簡単であることから，走
行作業車のミッション等によく用いられている。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところで，この種のドグクラッチ装置で最大の問題は，
係合（挿入）が確実に行われる確率がどうかである。す
なわち，相互の山と山とが完全に合致したときには挿入
できないし（これを極力防ぐために挿入側面は大きな面
取りがしてある），また，挿入はできても相互の部分が
重合しておれば，完全に挿入し終わるためにはどちらか
を強制的に動かさなければならないから，挿入抵抗が非
常に大きくなって操作性が悪いことになる。

この考案は，このような課題を解決するために案出され
たものであって，その目的とする処は，クラッチギヤに
自動復帰機構を設けた逃がしを設けることで，挿入抵抗
を小さくしようとしたものである。

〔課題を解決するための手段〕

すなわち，この考案は，ギヤに対してクラッチを側面同
士が接触する状態で嵌合し，このギヤを軸上スライドさ
せて側方に設けられるドグに前記クラッチギヤを係脱す
ることで動力断続を図るドグクラッチ装置において，前
記ギヤおよびクラッチギヤに円弧状の長孔と，この長孔
に挿入され，一定角度回転を許容されるピンをそれぞれ
設けるとともに，相互の接触側面に皿もみ穴，ボールお
よびスプリングを設けて前記ピンが前記長孔の中央に位
置するよう弾性付勢してなるドグクラッチ装置提案する
ものである。

〔作用〕

以上の手段をとることにより，クラッチギヤはボール，
スプリングからなる自動復帰機構を有する一定角度逃が
し構造を施されたことになり，たとえ，クラッチギヤと
ドグとの山部分が重合する場合であっても，軽い挿入抵
抗で挿入できることになる。

〔実施例〕

以下，この考案の実施例を図面を参照して説明する。

第１図はドグクラッチ装置の要部断面図，第２図は第１
図のII−II断面図であるが，両端をベアリング１で支持
された軸２上に上流側伝動ギヤ３と常時噛合いしている
ギヤ４が嵌着されており，このギヤ４の両側面に側面同
士が接触する状態で二つのクラッチギヤ5,6が遊嵌され
ている。そして，このクラッチギヤ5,6の側方に内歯構
造のドグ7,8が同じく軸２上に遊嵌されている。なお，
このドグ7,8はそれぞれ下流側伝動ギヤ9,10に噛合って
いる。したがって，ギア４を軸２上スライドさせ，両側
のクラッチギヤ5,6をいずれかのドグ7,8に係脱すること
で（第３図），上流伝動ギヤ３の動力は下流側伝動ギヤ
9,10に伝達されて行くのである。

ところで，この考案では，ギヤ４とクラッチギヤ5,6を
以下のように組み合わせるのである。まず，クラッチギ
ア5,6に中心から同距離の円弧状の長孔11,12を通常複数
個（本例では三個）等配置に形成しておく。そして，ギ
ヤ４にこの長孔11,12の半径と等しい半径でピン13を軸
方向に植設し，このピン13を長孔11,12に挿通する。こ
れにより，クラッチギヤ5,6はギヤ４に対して一定角度
のみは相対回転可能に装着される。次に，ギヤ４のピン
13とは別の個所に通常同半径で複数個（本例では三個）
の貫通孔14を穿ち，これにスプリング15を挿設するとと
もに，スプリング15両端をボール16,17を介してクラッ
チギヤ5,6の側面に押圧しておく。なお，ボール16,17が
当たるクラッチギヤ5,6の側面には皿もみ穴18,19を形成
しておき，ボール16,17はこの皿もみ穴18,19に嵌入する
ようにしておく，さらに，この皿もみ穴18,19の位置は
前記したギヤ４のピン13がクラッチギヤ5,6の長穴11,12
の中心に位置するよう設定しておく。これにより，ピン
13が長孔11,12の中で動いたとしても，スプリング15の
作用で常に元の位置（長孔11,12の中心）に戻ろうとす
る復帰力を与えられる。

第４図はクラッチギヤ5,6とドグ7,8の係合状態を示す正
面図，第５図は平面図であるが，クラッチギヤ5,6はイ
ンボリュートギヤの歯先部を一部欠落させたような形状
をしており，ドグ7,8はカップ形凹陥部の隣りに内方突
起体を形成したものである。そして，初期噛合の確率を
高めるため，いずれも挿入方向側端に大きな面取りが施
してある。

以上により，ギヤ４をスライドさせて，クラッチギヤ5,
6をいずれかのドグ7,8に係合しようとするとき，このと
き，その山部分同士が重合していて係合に抵抗があると
きであっても，ピン13と長孔11,12間に隙間があるた
め，クラッチギヤ5,6は必要分だけ逃げ，軽い抵抗で挿
入されることになる。一方，係合を外したときにはスプ
リング15等の存在でピン13は常に長孔11,12の中心に位
置していることになる。このことより，クラッチギヤ5,
6の前記した逃げ量は山部分の投影面積であればよいこ
とになるから，例えば，第４図に示すようなクラッチギ
ヤ5,6のモジュール3,歯数25,ドグ7,8のピッチ9.6,クラ
ッチギヤ5,6の歯先部の厚み3.1,この部分に該当するド
グ7,8の厚み3.5とすれば，その逃げ量は（3.5＋3.1）÷
２×50÷78＝2.1となり,2.5mmあれば十分ということに
なる。

〔考案の効果〕

以上，この考案は前記したものであるから，まず，第一
は，停止中に変速する場合で，かつ，クラッチギヤ5,6
とドグ7,8の山部分が重合している場合でも，クラッチ
ギヤ5,6が必要量だけ逃げるから，軽い操作力でスムー
ズに変速できる。次に，作動中での変速の場合のように
下流側伝動ギヤ9,10から逆トルクがドグ7,8に生じてい
ても，クラッチギヤ5,6は逃げることができるので，そ
の分，変速操作力が軽くてすむ。

【図面の簡単な説明】

第１図，第３図はドグクラッチ装置の要部断面図，第２
図は第１図のII−II断面図，第４図，第５図はクラッチ
ギヤとドグの関係を示す正面図，平面図である。 （符号） ２…軸 ４…ギヤ ５…クラッチギヤ ６… 〃 ７…ドグ ８… 〃 11…長孔 12… 〃 13…ピン 15…スプリング 16…ボール 17… 〃 18…皿もみ穴 19… 〃

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ギヤ（４）に対してクラッチギア（５），
   （６）を側面同士が接触する状態で嵌合し，このギア
   （４）を軸（２）上スライドさせて側方に設けられるド
   グ（７），（８）に前記クラッチギア（５），（６）を
   係脱することで動力断続を図るドグクラッチ装置におい
   て，前記ギア（４）およびクラッチギア（５），（６）
   に円弧状の長孔（11），（12）と，この長孔（11），
   （12）に挿入され，一定角度回転を許容されるピン（1
   3）をそれぞれ設けるとともに，相互の接触側面に皿も
   み穴（18），（19），ボール（16），（17）およびスプ
   リング（15）を設けて前記ピン（13）が前記長孔（1
   1），（12）の中央に位置するよう弾性付勢してなるド
   グクラッチ装置。