JPH07316336A - 耐ファウリング性多孔質膜およびその製造方法 - Google Patents

耐ファウリング性多孔質膜およびその製造方法

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JPH07316336A
JPH07316336A JP6397895A JP6397895A JPH07316336A JP H07316336 A JPH07316336 A JP H07316336A JP 6397895 A JP6397895 A JP 6397895A JP 6397895 A JP6397895 A JP 6397895A JP H07316336 A JPH07316336 A JP H07316336A
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滬生 張
Takanori Anazawa
孝典 穴澤
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 ポリエチレングリコール構造単位を2〜60
重量%含有する架橋構造の(メタ)アクリル系重合体か
らなる耐ファウリング性多孔質膜、及び、エネルギー線
によるin−situ重合による該多孔質膜の製造方
法。 【効果】 タンパク質などに対する吸着性が低く、耐フ
ァウリング性に優れ、更に強度、耐熱性、耐薬品性など
に優れた多孔質膜が単純な製造行程で得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、食品工業、バイオ、超
純水製造、排水処理、有価物回収、人工臓器等種々の分
離工程においてタンパク質、コロイド、バクテリア等の
濾過分離の目的で使用される濾過膜及びその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】上述の分野で利用されている濾過分離工
程において最も大きな問題は、濾過物質などの原液中に
含まれる物質、例えばタンパク質などの膜表面への吸
着、堆積などにより、膜表面に新たな付着層を形成す
る、いわゆるファウリング(汚染)を起こし、膜透過流
束(フラックス)や分画特性の低下を引き起こすことで
ある。ファウリングを起こした膜の透過流束は安定にな
るまで何日も低下し続けることがしばしばある。初期の
透過流束を維持するためには、より大きな圧力や膜面積
を必要とし、システム製作や運転のコストが高くなり、
更に膜の洗浄コストや作業能率低下などの問題も生じて
くる。また食品、バイオなどの分野においては、ファウ
リングを起こすと、栄養に富んだ膜表面で微生物が繁殖
し、安全衛生上問題が生じる。
【0003】一方、濾過物質(膜を透過する物質)の吸
着によるファウリングは、膜表面のみならず、膜の内部
(例えば、非対称膜においては多孔質支持層、スポンジ
層とも言う)でも起こり得る。この様な場合は、濾過速
度の低下だけでなく、目的とする濾過物質(特に少量の
場合)の量的ロスが非常に大きくなる恐れがある。例え
ば、細胞培養液からタンパク質を分離精製する場合、細
胞は膜で阻止し(膜を透過できない)、タンパク質は膜
を透過させた後、タンパク質中の微量の目的物質を更に
クロマトグラフィーなどにより単離精製する仕組みを利
用している。この場合、膜内部スポンジ層の壁面の面積
が膜表面積に比べて遥かに大きい(数百倍〜数千倍)た
め、タンパク質の膜による吸着量は内部スポンジ層の方
が遥かに大きい。
【0004】同様に、有価物の回収や血液検査などに膜
を利用する場合、通常有用物質は膜を通過させて精製
し、不要物は膜を通過させずに除去する方法が用いられ
ている。この場合にも、有用物(特に少量の場合)が膜
を通過する途中でスポンジ構造部の壁面に吸着され、濾
過物質の量的ロスが大きくなる。特に血液検査などの場
合検査の精度、結果の信頼性などに影響を及ぼす。
【0005】この様な膜の濾過物質の吸着による不都合
を低減するために、膜を親水化することが通常の手段と
して行われている。化学工学第58巻第1号59頁(1
994)には、疎水性膜の界面活性剤への浸漬による膜
の親水化方法が提案されている。しかし、この方法では
界面活性剤が膜素材とは何の化学結合もなく、単に素材
表面に付着しているだけである。この様な膜を濾過に用
いると、界面活性剤が再び濾過液に溶出し、逆に濾過液
を汚すことになる。
【0006】特開昭62−258707号公報には、ポ
リエーテルスルホンのジメチルホルムアミド溶液に低分
子量のポリエチレングリコール(PEG400、液体
状)を添加する(湿式)製膜法が開示されている。この
方法もポリエチレングリコールがポリエーテルスルホン
との間に化学結合が存在しないため、濾過時液状のポリ
エチレングリコールが溶出する可能性が大きい。特に温
度の高い条件下で濾過する場合、膜が膨潤しやすく、ポ
リエチレングリコールがより容易に溶出してくる。ポリ
エチレングリコールの溶出につれ、濾過液が汚染される
だけでなく膜の親水性も次第に低下してしまう。また、
固体状(分子量1000以上)のポリエチレングリコー
ルはジメチルホルムアミドやN−メチルピロリドンなど
の極性溶剤に溶解しないため、高分子量のポリエチレン
グリコールはこの方法では使えない。また、この方法で
用いられているN−メチルピロリドンは、ケミカル レ
ギュレーション レポート(Chemical Regulation Repo
rt),p.1119,Sept.24,1993によれば、皮膚接触と皮膚か
らの吸収による生殖障害並びに発生障害が起こる大きな
危険性があると報告されている。
【0007】特開平3−4924号公報には、予め作っ
た再生セルロース中空糸膜をアルコキシポリエチレング
リコールモノカルボン酸と接触させ、カルボン酸を膜表
面の水酸基とエステル化反応させることにより、アルコ
キシポリエチレングリコールを膜にグラフト重合する方
法が提案されている。しかしこの方法は、再生セルロー
スの様な水酸基を有するポリマーで構成された膜にしか
適用することができず、膜の耐久性の面で劣ったものに
なる。また、この製膜法は、膜の製造に引き続いて、後
処理のグラフト重合や後洗浄など多くの工程が必要であ
り、生産性が低くなり、コストが高くなってしまう。
【0008】一方、本発明者らの出願になる特開平5−
233号公報には、モノマー及び/又はオリゴマーと溶
剤との混合溶液を製膜後、エネルギー線を照射すること
により非対称多孔質膜を製造する方法が開示されている
が、膜の濾過物質(例えばタンパク質など)に対する吸
着性や耐ファウリング性、及び使用するモノマー又はオ
リゴマー間の耐ファウリング性についての差別について
は全く記述されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】濾過時、膜に阻止され
る物質の膜表面への吸着、及び膜を通過する物質の膜の
スポンジ構造部の壁面への吸着を低減する(耐ファウリ
ング性を増す)ためには、その吸着性を低減できる官能
基を膜全体に導入する必要がある。官能基の導入量は膜
の強度が低下しない限り、多いことが耐ファウリング性
向上の面からは好ましい。また、官能基の素材からの離
脱を防ぐために、官能基を膜素材の分子と化学結合させ
る必要があり、共有結合させることが最も理想的であ
る。
【0010】そこで本発明は、耐ファウリング性を向上
させること、官能基の脱離を防ぐこと、耐久性に優れる
ことの少なくとも1つを解決する多孔質膜、及び官能基
の種類並びにその導入量をより幅広く容易に調節でき
る、耐ファウリング性に優れた多孔質膜の製造方法を提
供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明の完成に
至った。
【0012】すなわち本発明は、ポリエチレングリコー
ル構造単位を有する(メタ)アクリル系オリゴマーを必
須成分とした架橋構造の(メタ)アクリル系重合体から
なり、かつポリエチレングリコール構造単位の含有率が
2〜60重量%であることを特徴とする耐ファウリング
性多孔質膜及びその製造方法を提供するものである。尚
ここで言う(メタ)アクリル系とは、メタクリル系又は
アクリル系を表わすものである。以下、これらをまとめ
て(メタ)アクリル系と記載する。
【0013】本発明の多孔質膜は、架橋構造を有する
(メタ)アクリル系重合体からなる。この重合体は、ポ
リエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリ
ル系オリゴマー、その他の(メタ)アクリル系モノマー
及び/又はオリゴマーを主成分とする。
【0014】本発明に用いられるポリエチレングリコー
ル構造単位を有する(メタ)アクリル系オリゴマーとし
ては、例えば、ジエチレングリコール(メタ)アクリレ
ート、ペンタエチレングリコール(メタ)アクリレー
ト、ノナエチレングリコール(メタ)アクリレートなど
のエチレングリコールオリゴマーの(メタ)アクリレー
ト、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレー
ト、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレ
ート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アク
リレート、メトキシノナエチレングリコール(メタ)ア
クリレート、メトキシトリエイコサエチレングリコール
(メタ)アクリレート、メトキシ30エチレングリコー
ル(メタ)アクリレート、2(2−エトキシエトキシ)
エチル(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレング
リコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレ
ングリコール(メタ)アクリレート、エトキシノナエチ
レングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエ
イコサエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの
アルコキシエチレングリコールオリゴマーの(メタ)ア
クリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メ
タ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコー
ル(メタ)アクリレート、フェノキシ30エチレングリ
コール(メタ)アクリレートなどのフェノキシエチレン
グリコールオリゴマーの(メタ)アクリレート、メチル
フェノキシデカエチレングリコール(メタ)アクリレー
ト、ノニルフェノキシヘプタデカエチレングリコール
(メタ)アクリレートなどの置換フェノキシエチレング
リコールオリゴマーの(メタ)アクリレート、などの単
官能オリゴマー、ジエチレングリコールジ(メタ)アク
リレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、トリエイコサエチレングリコールジ(メタ)アク
リレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロキシポ
リエトキシ)フェニル]プロパン(すなわち、ポリエチ
レングリコール変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリ
レート)などの二官能オリゴマー、ポリエチレングリコ
ール変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレ
ートなどの三官能オリゴマー等が挙げられる。ここで言
う単官能、二官能及び三官能とはアクリロイル基の数を
言う。
【0015】また、単官能のオリゴマーを用いる場合、
一般式(1)
【0016】
【化3】 CH2=CR1CO(OCH2CH2)nOR2 (1) (R1は水素原子又はメチル基で、R2は水素原子又は炭
素原子数1〜15の炭化水素基である。但しnは2〜1
00の整数である。但し、nはR2の炭素原子数以上で
ある。)
【0017】で示されるものを好ましく用いることがで
きる。ここで言う炭素原子数1〜15の炭化水素基と
は、脂肪族でも芳香族でも良く、不飽和結合を有しても
良い。好ましくはアルキル基、芳香族アルキル基であ
る。ポリエチレングリコール基「(−OCH2CH2−)
n」即ち「ポリエチレングリコール構造単位」の導入効
果を十分発揮させるためには、ポリエチレングリコール
基の数nが「n ≧R2の炭素数」であることが好まし
い。「n<R2の炭素数」の場合でも耐ファウリング性
は向上するが、その向上率は「n ≧R2の炭素数」の場
合に比べて低い。
【0018】また、二官能のオリゴマーを用いる場合、
一般式(2)
【0019】
【化4】 CH2=CR1CO(OCH2CH2)nOCOCR1=CH2 (2) (R1、n の定義は一般式(1)の定義と同様)
【0020】で示されるものが好ましい。一般式(1)
(2)とも、nの数は2〜50がより好ましい。
【0021】ポリエチレングリコール構造単位を有する
(メタ)アクリル系オリゴマーの選択は、要求される多
孔質膜の耐ファウリング性、濾過物質の種類などにより
決定される。例えば、水溶性高分子や、タンパク質など
に対する耐ファウリング性に優れた膜を得るためには、
三官能以上のオリゴマーを用いることもできるが、二官
能のオリゴマーを用いるのが好ましく、単官能のオリゴ
マーを用いるのが更に好ましい。ポリエチレングリコー
ル構造単位を有する(メタ)アクリル系オリゴマーとし
ては、一般式(1)、(2)を各々単独で用いる事も併
用することもでき、一般式(1)を単独で用いる事がよ
り好ましい。
【0022】ポリエチレングリコール構造単位の含有率
は、要求される多孔質膜の耐ファウリング性、膜強度な
どにより決定される。通常ポリエチレングリコール構造
単位の含有率が多い程、膜の耐ファウリング性が向上す
るが、一方、膜も膨潤しやすくなり、湿潤状態で膜強度
が低下する傾向がある。膜の耐ファウリング性効果と膜
強度とのバランスを良好に保つためには、ポリエチレン
グリコール構造単位の含有率は、全重合性樹脂成分の重
量に対して2〜60重量%である必要があり、5〜50
重量%が好ましく、7〜25重量%がより好ましい。ポ
リエチレングリコール構造単位の含有率は、ポリエチレ
ングリコール構造単位を有する(メタ)アクリル系オリ
ゴマーの添加量や該オリゴマー中のポリエチレングリコ
ール構造単位の重合度(n)により容易に調節すること
ができる。ここで言うポリエチレングリコール構造単位
の含有率とは、ポリエチレングリコール構造単位を有す
る(メタ)アクリル系オリゴマー中のポリエチレングリ
コール基の重量を全重合性樹脂成分の重量で除した値で
ある。
【0023】ポリエチレングリコール構造単位の含有率
は濾過処理溶液の性質などにより、上記の範囲内で適宜
調節する事が出来、例えば、タンパク質のような吸着性
の強い物質の水溶液を濾過する為の膜を製造する場合、
ポリエチレングリコール構造単位の含有率をなるべく高
くする。一方、超純水製造の様に、原液中の吸着性物質
の濃度が低い用途の場合はこの含有率を前者ほど高くし
なくても良い。
【0024】本発明に用いられるその他の(メタ)アク
リル系モノマー及び/又はオリゴマーとしては、多官能
の成分を有していれば、単独の成分でも、混合成分でも
良く、また単官能成分を含んでいても、エネルギー線を
照射したときに架橋構造をとるものであれば特に限定す
る必要はない。
【0025】多官能(メタ)アクリル系モノマーとして
は例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレ
ート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレー
ト、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシ
ポリプロピレンオキシフェニル]プロパン、ビスフェノ
ールAジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリ
ロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、
1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ネオペン
チルグリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シ
クロヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの二官能モノ
マー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレー
ト、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ
ス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、
などの三官能モノマー、ペンタエリスリトールテトラ
(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテト
ラ(メタ)アクリレート、などの四官能モノマー、ジペ
ンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アク
リレートなどの五官能モノマー、ジペンタエリスリトー
ルヘキサ(メタ)アクリレートなどの六官能モノマーが
挙げられる。
【0026】多官能(メタ)アクリル系オリゴマーとし
ては例えば、エネルギー線照射により重合可能で、重量
平均分子量が500〜20000の分子内に2個以上の
(メタ)アクリル基を有するオリゴマーが好ましく用い
られ、具体的にはエポキシ樹脂のアクリル酸エステル又
はメタクリル酸エステル、ポリエステル樹脂のアクリル
酸エステル又はメタクリル酸エステル、ポリエーテル樹
脂のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、ポ
リブタジエン樹脂のアクリル酸エステル又はメタクリル
酸エステル、分子末端にアクリル基又はメタクリル基を
有するポリウレタン樹脂などを挙げることができる。
【0027】また膜に強度と剛性を付与するためには、
架橋構造の(メタ)アクリル系重合体が環状構造単位を
含有することが好ましく、架橋構造の(メタ)アクリル
系重合体中の環状構造単位の含有率が5〜50重量%で
あることが好ましく、7〜30重量%であることがさら
に好ましい。ここで言う環状構造単位の含有率とは、環
状構造部分の重量を、全重合性樹脂成分の重量で除した
値である。またここで言う環状構造とは4〜6員環の環
状構造、即ち芳香族構造、脂環構造、複素環構造、多環
式構造、ラダー構造を言う。架橋構造の(メタ)アクリ
ル系重合体に環状構造を含有させるためには、多官能モ
ノマー及び/又はオリゴマーとして分子内に環状構造を
含むものを使用することにより実施できる。環状構造単
位を有する多官能モノマー及び/又はオリゴマーの例と
して、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メ
タ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノ
ールSジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシ
ルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシル
ジ(メタ)アクリレート、ビス(アクリロキシエチル)
ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(アクリロ
キシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性ト
リス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス
(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロ
ペンタニルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】本発明の多孔質膜には、ポリエチレングリ
コール構造単位以外の官能基を導入することも可能であ
る(例えば水酸基、スルホン酸基、P、Si、F等)。
本発明の多孔質膜は、膜の片側から反対側に連通する孔
を有する膜であれば膜の種類に特に制限はなく、例えば
孔径が膜の厚み方向に対して一定である等方性の多孔質
膜でも、膜の厚み方向に孔径が変わる非対称多孔質膜で
も良い。非対称多孔質膜とは、緻密層と緻密層を支える
多孔質支持層とから成る膜を言う。ここで言う緻密層と
は微細な孔が開いている層をいい、多孔質支持層とは緻
密層に比べて大きな孔が開いている層を言う。緻密層
は、膜の片方の表面に存在していても良いし、また両方
の表面に存在していても良いし、膜の内部に存在しても
良い。例えば両表面の中間部(膜の断面から見た場合)
に緻密層が存在し、両表面に向かって多孔質支持層が広
がっていく膜も本発明の範疇に属する。
【0029】本発明の膜は、分離目的の物により異なる
が、等方性の多孔質膜の孔径は0.0005〜20μm
が好ましい。非対称膜の場合は、緻密層に存在する孔の
孔径が0.0005〜20μmの液体を透過することの
できる孔を有し、かつこれらの孔が多孔質支持層部の孔
と連通している。緻密層の孔の孔径が0.0005μm
〜0.015μmの場合は、分子量分画能を有し、即ち
液体に溶解されているイオン、低分子物質又は高分子物
質を液体から分離できる、又は高分子物質と低分子物質
の混合溶液から低分子物質を分離できる。緻密層の孔の
孔径が0.015μm以下であることは、タンパク質な
どの物質の濾過試験で判定できる。
【0030】緻密層の孔の孔径が0.02μm〜20μ
mの場合は、液体に溶解されている高分子物質、低分子
物質又はイオンを通過させることができる。緻密層の孔
の孔径が0.02μm以上であることは菌体などの物質
の濾過試験で判定できるし、20μm以下であることは
電子顕微鏡観察で判定できる。多孔質支持層はその孔径
が0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。
0.1μmより小さい場合濾過速度が極端に低下し、2
0μより大きい場合は膜の強度が極端に低下する。
【0031】本発明の多孔質膜の孔の形状には特別の制
限はないが、一例を挙げると、球状の重合体ドメインが
お互いに連結した構造における球状ドメインの隙間が連
通孔と成る場合、重合体が網目状構造を形成する場合な
どがある。
【0032】本発明の多孔質膜の形状は特に制限はな
く、例えば平膜、中空糸膜、管状膜、ビーズ、カプセル
等が挙げられる。更に本発明は、(製法1)ポリエチレ
ングリコール構造単位を有する(メタ)アクリル系オリ
ゴマーとその他の多官能(メタ)アクリル系モノマー及
び/又はオリゴマーとを必須成分として含有し、かつエ
ネルギー線の照射により重合して架橋する樹脂成分
(A)と、該樹脂成分(A)と相溶し、これら樹脂成分
(A)にエネルギー線を照射することにより生成した架
橋重合体をゲル化させない相分離剤(B)とを主成分と
して含有する均一な重合性溶液(I)を、賦形した後、
エネルギー線を照射して架橋した重合体とし、次いで相
分離剤(B)を除去する製造方法であって、かつ樹脂成
分(A)中のポリエチレングリコール構造単位の含有率
が2〜60重量%であることを特徴とする耐ファウリン
グ性多孔質膜の製造方法及び、(製法2)ポリエチレン
グリコール構造単位を有する(メタ)アクリル系オリゴ
マーとその他の多官能(メタ)アクリル系モノマー及び
/又はオリゴマーとを必須成分として含有し、かつエネ
ルギー線の照射により重合して架橋する樹脂成分(A)
と、該樹脂成分(A)と相溶し、これら樹脂成分(A)
にエネルギー線を照射することにより生成した架橋重合
体をゲル化させない相分離剤(B)と、架橋重合体をゲ
ル化させる溶剤(C)とを主成分として含有する均一な
重合性溶液(II)を、賦形した後、エネルギー線を照
射して架橋した重合体とし、次いで相分離剤(B)及び
/又は溶剤(C)を除去する製造方法であって、かつ樹
脂成分(A)中のポリエチレングリコール構造単位の含
有率が2〜60重量%であることを特徴とする耐ファウ
リング性多孔質膜の製造方法に関する。
【0033】製法1及び2で用いる樹脂成分(A)と
は、上述のポリエチレングリコール構造単位を有する
(メタ)アクリル系オリゴマーと上述のその他の多官能
性(メタ)アクリル系モノマー及び/又はオリゴマーを
必須成分とするもので、エネルギー線の照射により重合
して架橋するものである。樹脂成分(A)がエネルギー
線照射により架橋しさえすれば、樹脂成分(A)は単官
能性(メタ)アクリル系モノマーや、オリゴマーを含ん
でも良い。
【0034】ポリエチレングリコール構造単位を有する
(メタ)アクリル系オリゴマーは、好ましくは下記一般
式(1)及び/又は(2)で示されるオリゴマーであ
る。
【0035】
【化5】 CH2=CR1CO(OCH2CH2)nOR2 (1) CH2=CR1CO(OCH2CH2)nOCOCR1=CH2 (2) (R1は水素原子又はメチル基で、R2は水素原子又は炭
素原子数1〜15の炭化水素基である。但しnは2〜1
00の整数である。但し、nはR2の炭素原子数以上で
ある。) n及びR2として好ましいものは、既出の通りである。
【0036】樹脂成分(A)中のポリエチレングリコー
ル構造単位の含有率は2〜60%であり、好ましくは5
〜50%である。耐ファウリング性を向上させるにはポ
リエチレングリコール構造単位の含有率は高い方が好ま
しいが、高すぎると膨閏し耐久性に劣る膜となる。
【0037】その他の多官能モノマー及び/又はオリゴ
マーの選択は、必要とする多孔質膜の特性、例えば耐熱
性、耐溶剤性、耐膨潤性、細孔径、膜強度、柔軟性等に
より決定される。一般に、ポリエチレングリコール単位
を含有する膜は、含有しない膜に比べて柔軟で弱くなり
がちである。従って、例えば、耐熱性、強度、剛性に優
れた膜を得るためには、3官能以上のモノマー及び/又
はオリゴマーを選択したり、芳香族、脂環族、復素環構
造、多環式構造、ラダー構造等の4〜6員環からなる環
状構造を含有するモノマー及び/又はオリゴマーを選択
する事が好ましい。環状構造を有する多官能(メタ)ア
クリル系モノマー及び/又はオリゴマーとしては、好ま
しくは該モノマー又はオリゴマー中に20〜70重量
%、さらに好ましくは30〜60重量%の環状構造単位
を含有するものを用いることができる。
【0038】また、上述のような耐熱性等に優れた特性
を得るためには、その他の多官能(メタ)アクリル系モ
ノマー及び/又はオリゴマー中に含まれる、環状構造を
有する多官能(メタ)アクリル系モノマー及び/又はオ
リゴマーのの含有率が、10〜100重量%であること
が好ましく、20〜50重量%であることがさらに好ま
しい。
【0039】樹脂成分(A)としては、上記の他に任意
の重合性モノマー及び/又はオリゴマーを添加すること
が出来る。重合性モノマー及び/又はオリゴマーとして
は、(メタ)アクリル系のモノマー及び/又はオリゴマ
ーが好適である。官能基を有するモノマー及び/又はオ
リゴマーを添加することにより、多孔質膜にポリエチレ
ングリコール以外の官能基を容易に導入することが出来
る。
【0040】樹脂成分(A)は、該樹脂成分(A)と相
溶し、これら樹脂成分(A)にエネルギー線を照射する
ことにより生成した架橋重合体をゲル化させない相分離
剤(B)とを混合して均一な重合性溶液(I)として用
いることができる。また、該重合性溶液(I)に、これ
ら樹脂成分(A)から生成する重合体をゲル化させる溶
剤(C)を含有させ重合性溶液(II)として用いるこ
とも可能である。
【0041】これらの重合性溶液を賦形した後、エネル
ギー線を照射して重合させ相分離剤(B)及び/又は溶
剤(C)を全て除去することにより等方性の多孔質膜も
しくは非対称多孔質膜が得られる。また相分離剤(B)
及び/又は溶剤(C)の一部を揮発させた後にエネルギ
ー線照射による重合を行い、残りの相分離剤(B)及び
/又は溶剤(C)を除く事により、膜の厚み方向に孔径
分布を有する非対称性多孔質膜が得られる。
【0042】まず、重合性溶液(I)を用いる製法1に
ついて説明する。相分離剤(B)とは、本発明に用いる
ポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アク
リル系オリゴマーとその他の多官能(メタ)アクリル系
モノマー及び/又はオリゴマーを必須成分とする樹脂成
分(A)を均一に溶解することができ、かつこれらのオ
リゴマー及び/又はモノマーから生成する重合体をゲル
化させず、しかもエネルギー線に対して実質的に不活性
なものであればいかなるものでもよい。
【0043】ここで言うゲル化とは、架橋ポリマーにつ
いて定義された概念であり、同一化学構造の非架橋ポリ
マーを溶解させる溶剤に架橋ポリマーを浸漬した場合に
生じる膨潤の現象を言う。この様なゲル化においては、
架橋ポリマーの架橋度にもよるが、一般にポリマー中に
ポリマー重量の20%以上の溶剤を含有することができ
る。
【0044】相分離剤(B)の種類は樹脂成分(A)の
種類により変わり得るものである。また相分離剤(B)
は単一組成であっても良いし、混合物であっても良い。
例えば、式(1)及び/又は(2)に示したポリエチレ
ングリコールアクリレート系オリゴマーと、その他の多
官能アクリル系オリゴマーとしてアクリル基を有するポ
リウレタン樹脂を用いる場合、相分離剤(B)として
は、デカン酸メチルなどの脂肪酸エステル類、ジイソブ
チルケトンなどのジアルキルケトン類、液状ポリエチレ
ングリコール、ポリエチレングリコールのモノエステ
ル、ポリエチレングリコールのモノエーテル、水とアル
コール(例えばプロパノール 、ブタノール等)等の水
溶性溶剤との混合液、ポリビニルピロリドンや酢酸セル
ロースなどのポリマー、などを好適に用いることができ
る。
【0045】これらの中で、溶剤(B)として水と水溶
性溶剤との混合液を用いることが、同じ樹脂成分(A)
を用いながら耐ファウリング性の高い膜が得を得ること
が出来るため好ましい。この時、水と水溶性溶剤との混
合液中の水の割合は、一般には10〜80%が好まし
く、20〜40%がさらに好ましい。水溶性溶剤の種類
は、水の混合割合によって適宜選択することが好まし
い。即ち、水が多い程、水溶性溶剤を、樹脂成分(A)
と相溶性の高いものを選択すれば良い。
【0046】相分離剤(B)は、膜の形状(例えば平
膜、中空糸、ビーズ、カプセル等)による違い、重合性
溶液(I)中に含まれるオリゴマー及び/又はモノマー
の種類、必要とされる重合性溶液の粘度、ポリマーその
他の添加剤の溶解性、膜に必要とされる孔径や細孔の形
状などにより適宜選択することができる。層分離剤
(B)が樹脂成分(A)と相溶しにくいものほど孔径が
大きくなる。
【0047】また、相分離剤(B)は、エネルギー線と
して紫外線を用いる場合には、紫外線吸収の少ないもの
が好ましい。相分離剤(B)の添加量は、膜の空隙率
(透過流束)又は分子量分画特性と膜強度などとのバラ
ンスを考慮し、全重合性樹脂成分(ポリエチレングリコ
ール構造単位を有する(メタ)アクリル系オリゴマーと
その他の多官能(メタ)アクリル系モノマー及び/又は
オリゴマー)1重量部に対して1〜5重量部の範囲が好
ましく、1〜3重量部が更に好適である。相分離剤
(B)の添加量が多ければ孔径が大きくなる。
【0048】本発明の製法1において、相分離剤(B)
の除去の時期としては大別して二つある。一つは重合性
溶液(I)を賦形した後、エネルギー線を照射して架橋
した重合体から(B)を全て除去するものである。もう
一つは重合性溶液(I)を賦形した後、(B)の一部を
揮発させ、次いでエネルギー線を照射して架橋した重合
体とし、残りの(B)を除去するものである。前者の場
合は非対称膜のみでなく、等方性の多孔質膜も製造でき
るが、後者の場合は非対称膜のみが製造できる。
【0049】除去方法としては、重合させる前に除く場
合は、窒素等の不活性ガスの気流を賦形した重合性溶液
(I)に当てる方法や、特に気流を当てずに窒素等の雰
囲気中で数秒〜数十秒放置し乾燥させる方法、赤外線を
照射する等任意の方法で一部を揮発させれば良い。
(B)の沸点が低い場合は、気流や雰囲気の温度を上げ
るが、気流を速くすれば良く、除去する量は適宜調節す
る事が出来る。除去する量により膜の孔径を調節するこ
とが出来る。
【0050】相分離剤の一部を揮発させる製造方法の場
合、相分離剤の揮発と非対称構造の程度には相関関係が
あり、また、非対称構造の程度は、分子量分画能及び濾
過液の透過量(膜透過流束又はフラックスとも言う)に
相関関係を有する。従って相分離剤の沸点の選択は、得
られる多孔質膜の濾過性能を決定する重要な因子と成り
得る。相分離剤の沸点の選択に関し一例を挙げるなら
ば、室温以下の温度で相分離剤の一部を揮発させる場合
や、相分離剤の一部を揮発させるために重合性溶液に吹
き付ける気流の速度が小さい場合や、極短時間の内に相
分離剤の一部を揮発させなければならない場合には、相
分離剤として沸点が80℃以下のものが好ましく用いら
れる。また、加温された気流を重合性溶液に吹き付ける
場合、ある程度の時間をかけて相分離剤の一部を揮発さ
せる場合には、相分離剤として沸点が60℃以上のもの
が好ましく用いられる。また相分離剤は2種以上の混合
物であってもよい。
【0051】エネルギー線照射による重合が終了した
後、重合前に一部相分離剤を除去した場合でも、しない
場合でも、蒸発及び/又は洗浄により相分離剤及び溶剤
などを除去する必要がある。洗浄には相分離剤、溶剤、
未反応のモノマー及び/又はオリゴマー、光重合開始剤
を十分に溶解することができるもの(例えばヘキサン、
エタノール、水など)を用いることができる。また、洗
浄は複数の洗浄剤を用いた複数の工程であっても良い。
【0052】次に重合性溶液(II)を用いる製法2に
ついて説明する。製法2は、樹脂成分(A)と相分離剤
(B)の相溶性や、相分離剤(B)の沸点等により重合
性溶液(I)に適宜溶剤(C)を加え、重合性溶液(I
I)として、重合性溶液(I)を用いる場合と同様な方
法で製膜方法である。この時、用いることのできる相分
離剤(B)は、製法1で述べた相分離剤と同様である
が、製法1の場合と異なり、重合成分(A)と相分離剤
(B)は相溶しなくても良く、重合性溶液(II)が均
一な溶液になれば良い。
【0053】本発明に用いられる溶剤(C)とは、ポリ
エチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリル
系オリゴマーとその他の多官能(メタ)アクリル系モノ
マー及び/又はオリゴマーを均一に溶解することがで
き、かつこれらのオリゴマー類及び/又はモノマーから
生成する重合体をゲル化させるものであればいかなるも
のでもよい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、
酢酸エチル、メタノール、エタノール、2−メトキシエ
タノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミ
ド等を好適に用いることができる。オリゴマー及び/又
はモノマーの種類、必要とする分子量分画能、膜透過流
束、必要とする非対称構造の程度、相分離剤の種類など
によりその溶解性及び沸点を適切に選択することができ
る。
【0054】重合性溶液に溶剤(C)を含有させると、
溶解度の調節範囲が広がることにより、相分離剤(B)
及び重合性モノマーやオリゴマー、更に添加物の選択範
囲が広がる結果、膜性能の向上や用途目的に応じた特性
の膜を製造することが容易になる。また、相分離剤
(B)と溶剤(C)の沸点の組み合わせを調節すること
により、緻密層を気相側、支持体側或は膜内部など任意
の位置に形成することが容易となる。溶剤(C)の沸点
の選択も相分離剤(B)と同様に、得られる多孔質膜の
濾過性能を決定する重要な因子となり得るものであり、
相分離剤(B)と同様な基準で選択する必要がある。ま
た、溶剤(C)の溶解性と、得られる多孔質膜の分子量
分画性能には、相関関係が存在する場合が多い。一例を
挙げるならば、比較的分子量の小さなものを濾過できる
膜を得るためには、溶解性の高い溶剤を用い得る。
【0055】本発明者らは、重合性溶液(II)におい
て、樹脂成分(A)に同じものを用いても、相分離剤
(B)として水を使用した場合に、得られた多孔質膜の
耐ファウリング性が向上することを見いだした。このと
き、相分離剤(B)(即ち水)と溶剤(C)との合計に
対する水の割合を高くするほうが、耐ファウリング性の
高い膜が得られる一方、水の割合が高すぎると、得られ
た膜が湿潤状態で強度の劣った膜となる。相分離剤
(B)(即ち水)と溶剤(C)との合計に対する水の割
合は、一般には10〜80%が好ましく、20〜40%
がさらに好ましい。
【0056】相分離剤(B)である水の含有量が変化す
ると、樹脂成分(A)との相溶性が変化し、得られる多
孔質膜の孔径もまた変化する。一般に水の含有量が増す
程、孔径が大きくなる。得られる多孔質膜の孔径を一定
に保ちつつ対ファウリング性を向上させるためには、溶
剤(C)の種類を選択することで目的を達することが出
来る。即ち、水の含有量が多ければ、溶剤(C)として
樹脂成分(A)と相溶性の高いものを選択すれば良い。
【0057】溶剤(C)の全重合性樹脂成分(A)に対
しての添加量は、重合性溶液の性質、膜の構造、濾過性
能などを総合的に考慮し種々研究した結果、0.1〜
4.0重量部の範囲が好ましい。
【0058】重合性溶液(II)から相分離剤(B)及
び/又は溶剤(C)を重合前や重合後に除去する方法と
しては、相分離剤(B)単独の場合と同様であるが、
(B)又は(C)の一部を選択的に取り除く場合は、各
々適当な沸点のものを選択する事により実施出来る。
【0059】また重合性溶液(I)及び(II)には添
加剤等を加える事もできるが、重合後の洗浄の際に除去
することが必要である。製法1及び2において重合性溶
液を薄膜状に形成する賦形方法としては、支持体上に、
ロールコーティング法、ドクターブレード法、スピンコ
ーティング法、スプレー法などにより平膜を塗布する方
法を用いることができる。一方、重合性溶液を二重円筒
状ノズルから芯剤(例えば気体、水、液状ポリエチレン
グリコール、液状ポリプロピレングリコールなど)と共
に中空糸状に押し出し、紫外線照射区域を通過させるこ
とにより、中空糸状薄膜をも作ることができる。
【0060】製法1及び2に用いられるエネルギー線と
しては、電子線、γ線、X線、紫外線、可視光線等を用
いることができる。なかでも装置及び取扱いの簡便さか
ら紫外線を用いることが望ましい。照射する紫外線の強
度は10〜500mW/cm 2、好ましくは50〜20
0mW/cm2が望ましい。エネルギー線として紫外線
や可視光線を用いる場合には、重合速度を速める目的
で、重合性溶液に光重合開始剤を含有させることも可能
である。また、紫外線の照射を不活性ガス雰囲気下で行
うことによって、更に重合速度を速めることが可能であ
る。光重合開始剤は、光照射によりモノマーやオリゴマ
ーと化学結合するものであっても良いし、結合しないも
のであっても良い。
【0061】本発明の重合性溶液(I)及び(II)に
混合可能な光重合開始剤としては、p−tert−ブチ
ルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシア
セトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェ
ニルプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;ベン
ゾフェノン、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェ
ノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサ
ントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのケトン
類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイ
ンイソプロプルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテ
ルなどのベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタ
ール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの
ベンジルケタール類などを挙げることができる。
【0062】電子線もまた本発明に用いることのできる
好ましいエネルギー線である。電子線を用いると、相分
離剤(B)、その他の添加剤などの紫外線の吸収の有無
の影響を受けないため、これらの選択幅が広がると共
に、膜の製造速度も更に向上する。また重合開始剤が不
要であるため、この残留が問題となる用途への適用が容
易となる。
【0063】エネルギー線の照射は、例えば賦形した重
合性溶液に直接、平膜の場合は膜上面に、中空糸膜の場
合は膜の周囲にエネルギー線を照射することで行える。
周囲の雰囲気は窒素等の不活性ガスを用いることが好ま
しい。
【0064】本発明の耐ファウリング性多孔質膜は、耐
ファウリング性、強度、耐熱性、耐薬品性に優れるた
め、逆浸透膜、限外濾過膜、精密濾過膜などへ有効に応
用することが可能である。
【0065】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明の範囲がこれにより限定されるもの
ではない。
【0066】[測定項目の定義]以下の実施例中の測定
項目についての定義及び測定条件は次の通りである。 (1)膜透過流束(フラックス又はflux) 1kg/cm2の圧力差で、1平方メートルの膜を1時間に透
過する水(又は濾過物質の水溶液)の量(リットル)で
ある。膜透過流束の単位はL/m2-h-kg-cm-2である。
【0067】(2)ファウリングインデックス(FI) まず水フラックス(fluxH2O1)、そしてタンパク質水溶
液のフラックス(flux H2Oprotein)、更に水フラックス
(fluxH2O2)を測って、(3)式に示す様に、flux
H2O2とflux H2O1との比率(即ちタンパク質濾過
前、後の水フラックスの変化率)をファウリングインデ
ックス(FI)と定義する。
【0068】
【数1】 FI(%)=(fluxH2O2/fluxH2O1)×100 (3) FI=100%とは、膜が全くファウリングを起こして
いないことを意味する。フラックスが経時的変化を示す
場合は、一番最初の測定値(初期値と言う)を用いる。
【0069】(3)阻止率(%) 所定濃度(Cb)のタンパク質水溶液を(膜をセットし
た)攪拌付きバッチ式濾過器(SM-165-26、ザルトリュ
ウス社)で、100mlを濾過し、この濾出液のタンパク質
濃度(Cp)を紫外ー可視分光光度計で測定して、(4)
式より阻止率(%)を算出する。
【0070】
【数2】 阻止率(%)=(1−Cp/Cb)×100 (4) (4)耐熱性 多孔質膜の水フラックスを測定した後、120℃のオー
トクレーブ中で、自由長状態で1時間スチーム熱処理し
た後に再び同条件で水フラックスを測定し、フラックス
の低下率を計算する。
【0071】(5)圧密化 圧力差を3kg/cm2で水フラックスの経時変化を測定し、
加圧直後のフラックスに対する60分後のフラックスの
低下率を計算する。
【0072】[実施例1] (重合性溶液の調製)メトキシノナエチレングリコール
アクリレート(商品名NKエステルAM−90G、新中
村化学工業社)7部、数平均分子量2000で1分子内
に平均して3個のアクリロイル基を有するウレタンアク
リレートオリゴマー(商品名ユニディックV−426
3、大日本インキ化学工業社)70部、ジシクロペンタ
ニルジアクリレート(商品名カヤラッドR−684、日
本化薬社)23部、イルガキュア−184(紫外線重合
開始剤、チバガイギー社)2部、溶剤(C)としてイソ
プロピルアルコール100部、相分離剤(B)として蒸
留水40部を均一に混合し、重合性溶液1を得た。
【0073】(非対称多孔質膜の作製)フィルムアプリ
ケーターによりガラス板上に重合性溶液1を、厚みが2
00μmになるように塗布した。このガラス板を窒素気
流下に30秒間静置することによって溶剤(C)の一部
を揮発させた後、100mw/cm2の紫外線ランプに
より10秒間照射した。得られた乳白色の膜をガラス板
ごとに水に浸したところ、約5秒後膜が自然にガラス板
から剥がれた。この膜をエタノールで洗浄し、未反応モ
ノマー及びオリゴマー、重合開始剤を洗い出して、再び
水で洗浄した。洗浄後の膜を減圧下十分に乾燥させて、
ガラス板側に光沢(緻密層)を有し、窒素気流に接触し
た側には光沢を有さない多孔質膜1を得た。多孔質膜を
走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、光沢面側
は0.02μm程度の孔径であり、光沢のない面は約2
μmの孔径であることがわかった。また、断面の観察よ
り孔径の小さい部分は、ガラス板側(光沢側)の極薄い
層のみであり、その厚みは1μm以下であった。
【0074】(耐ファウリング性の評価)濾過器はザル
トリュウス社のSM−165−26型限外濾過装置(容
積200ml、膜直径47mm)を用いた。タンパク質
水溶液としては、分子量67000の牛血清アルブミン
(以下アルブミンと略す)の0.1%水(又は生理食塩
水)溶液を用いた。濾過は圧力差2kg/cm2、室温
で行った。結果としてポリエチレングリコール構造単位
の含有率(CPEG,wt%)、アルブミンの阻止率、アルブ
ミン濾過前後の水フラックス(fluxH2O1、fluxH2O2)、
ファウリングインデックス値(FI,%)を表1に示
す。相分離剤(B)として水の代わりにデカン酸メチル
を使用し、溶剤(C)を使用しない条件で製造した実施
例10の多孔質膜に比べて、ポリエチレングリコール単
位の量が少ないにも関わらず高い耐ファウリング性を示
すことが分かる。
【0075】(耐熱性、耐圧密化の評価)製造された膜
を切り分けて、耐熱性試験と耐圧密化試験を行った。オ
ートクレーブ中での120℃、1時間の滅菌処理による
水フラックスの低下率を表2に示す。圧力差3kg/c
2、室温で60分間水フラックスを測定したときの、
測定開始直後に対する60分後のフラックスの低下率を
表3に示す。
【0076】[実施例2] (重合性溶液の調製)メトキシノナエチレングリコール
アクリレート(商品名NKエステルAM−90G、新中
村化学工業社)30部、ウレタンアクリレートオリゴマ
ー(商品名ユニディックV−4263、大日本インキ化
学工業社)52.5部、ジシクロペンタニルジアクリレ
ート(商品名カヤラッドR−684、日本化薬社)1
7.5部、イルガキュア−184(紫外線重合開始剤、
チバガイギー社)2部、溶剤(C)としてイソプロピル
アルコール100部、相分離剤(B)として蒸留水41
部を均一に混合し、重合性溶液2を得た。
【0077】(非対称多孔質膜の作製)重合性溶液とし
て重合性溶液2を用いた事以外は実施例1と同様な操作
により、ガラス板側に光沢を有し、窒素気流側に接触し
た側には光沢を有さない非対称多孔質膜2を得た。SE
Mによる観察の結果は、実施例1と同等であった。
【0078】(耐ファウリング性の評価)結果を表1に
示した。 (耐熱性、耐圧密化の評価)製造された膜を切り分け
て、耐熱性試験と耐圧密化試験を行った。オートクレー
ブ中での120℃、1時間の滅菌処理による水フラック
スの低下率を表2に示す。圧力差3kg/cm2、室温
で60分間水フラックスを測定したときの、測定開始直
後に対する60分後のフラックスの低下率を表3に示
す。
【0079】[実施例3] (重合性溶液の調製)メトキシポリエチレングリコール
(n=30)メタクリレート(商品名ライトエステル041
MA、共栄社化学社)10部、1分子内に2個のアクリ
ロイル基を有するエポキシアクリレートオリゴマー(商
品名エポキシエステル3002A、共栄社化学社)6
7.5部、2,2−ビス[4−(アクリロキシジエトキ
シ)フェニル]プロパン(商品名ニューフロンティアB
PE−4、第一工業製薬社)22.5部、イルガキュア
−184(紫外線重合開始剤)2部、相分離剤(B)と
してジイソブチルケトン160部を均一に混合し、重合
性溶液3を得た。
【0080】(非対称多孔質膜の作製)重合性溶液とし
て重合性溶液3を用いた事、及び溶剤(C)の代わりに
相分離剤(B)の一部を除去した事以外は実施例1と同
様な操作により、ガラス板側に光沢を有し、窒素気流側
に接触した側には光沢を有さない非対称多孔質膜3を得
た。SEMによる観察の結果は、光沢面側の孔径が約
0.01μmである以外、実施例1とほぼ同等であっ
た。
【0081】(耐ファウリング性の評価)結果を表1に
示した。
【0082】[実施例4] (重合性溶液の調製)ノナエチレングリコールメタクリ
レート(商品名ブレンマーPE−350、日本油脂社)
10部、1分子内に平均して4個のアクリロイル基を有
するポリエステルアクリレートオリゴマー(商品名アロ
ニックスM−8060、東亜合成化学工業社)67.5
部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(商品名
カヤラッドHDDA、日本化薬社)22.5部、イルガ
キュアー184(チバガイギー社)2部、相分離剤
(B)としてデカン酸メチル30部及びラウリン酸メチ
ル120部、溶剤(C)としてアセトン5部、を均一に
混合し、重合性溶液4を得た。
【0083】(非対称多孔質膜の作製)重合性溶液とし
て重合性溶液4を用いた事及び、相分離剤(B)と溶剤
(C)の一部を除去した事以外は実施例1と同様な操作
により、ガラス板側に光沢を有し、窒素気流側に接触し
た側には光沢を有さない非対称多孔質膜4を得た。SE
Mによる観察の結果は、実施例3とほぼ同等であった。
【0084】(耐ファウリング性の評価)結果を表1に
示した。
【0085】[実施例5] (重合性溶液の調製)ノニルフェノキシヘプタデカエチ
レングリコールアクリレート(商品名ニューフロンティ
アN177E、第一工業製薬社)10部、プロピレンオ
キサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(商品名アロニックスM−310、東亜合成化学工業
社)90部、イルガキュアー184(チバガイギー社)
2部、(C)としてイソプロピルアルコール100部、
(B)として蒸留水38.5部、を均一に混合し、重合
性溶液5を得た。
【0086】(非対称多孔質膜の作製)重合性溶液とし
て重合性溶液5を用いた事以外は実施例1と同様な操作
により、ガラス板側に光沢を有し、窒素気流側に接触し
た側には光沢を有さない非対称多孔質膜5を得た。SE
Mによる観察の結果は、実施例3とほぼ同等であった。
【0087】(耐ファウリング性の評価)結果を表1に
示した。
【0088】[実施例6] (重合性溶液の調製)テトラデカエチレングリコールジ
アクリレート(商品名NKエステルA−600、新中村
化学工業社)20部、2,2−ビス[4−(アクリロキ
シジエトキシ)フェニル]プロパン(商品名ニューフロ
ンティアBPE−4、第一工業製薬社)80部、イルガ
キュアー184(チバガイギー社)2部、相分離剤
(B)としてポリエチレングリコールモノラウレート2
00部、溶剤(C)としてアセトン10部を均一に混合
し、重合性溶液6を得た。
【0089】(非対称多孔質膜の作製)重合性溶液とし
て重合性溶液6を用いた事、及び相分離剤(B)と溶剤
(C)の一部を除去した事以外は実施例1と同様な操作
により、ガラス板側に光沢を有し、窒素気流側に接触し
た側には光沢を有さない非対称多孔質膜6を得た。SE
Mによる観察の結果は、実施例1とほぼ同等であった。
【0090】(耐ファウリング性の評価)結果を表1に
示した。
【0091】[実施例7] (重合性溶液の調製)メトキシノナエチレングリコール
アクリレート(商品名NKエステルAM−90G、新中
村化学工業社)10部、ウレタンアクリレートオリゴマ
ー(商品名ユニディックV−4263、大日本インキ化
学工業社)67.5部、ジシクロペンタニルジアクリレ
ート(商品名カヤラッドR−684、日本化薬社)2
2.5部、イルガキュア−184(紫外線重合開始剤、
チバガイギー社)2部、相分離剤(B)としてポリエチ
レングリコール(n=2)モノ−p−ノニルフェニルエ
ーテル200部を均一に混合し、重合性溶液7を得た。
【0092】(非対称多孔質膜の作製)フィルムアプリ
ケーターによりガラス板上に重合性溶液7を、厚みが2
00μmになるように塗布した。このガラス板を窒素気
流下で、100mw/cm2の紫外線ランプにより10
秒間照射した。得られた乳白色の膜をガラス板ごとに石
油エーテルに浸したところ、約5秒後膜が自然にガラス
板から剥がれた。この膜をエタノールで洗浄し、未反応
モノマー及びオリゴマー、重合開始剤、相分離剤(B)
を洗い出して、最後に水で洗浄した。洗浄後の膜を減圧
下十分に乾燥させて、ガラス板側に光沢(緻密層)を有
し、窒素気流に接触した側には光沢を有さない多孔質膜
7を得た。
【0093】SEMによる観察の結果は、実施例3とほ
ぼ同等であった。 (耐ファウリング性の評価)結果を表1に示した。
【0094】[実施例8] (重合性溶液の調製)2(2−エトキシエトキシ)エチ
ルアクリレート(商品名ビスコート190、大阪有機化
学工業社)15部、プロピレノキサイド変性トリメチロ
ールプロパントリアクリレート(商品名アロニックスM
−310、東亜合成化学工業社)85部、イルガキュア
−184(紫外線重合開始剤、チバガイギー社)6部、
相分離剤(B)としてポリビニルピロリドン(MW:約
10000、東京化成工業社)100部、溶剤(C)と
してN,N−ジメチルアセトアミド350部を均一に混
合し、重合性溶液8を得た。
【0095】(非対称多孔質膜の作製)フィルムアプリ
ケーターによりガラス板上に重合性溶液8を、厚みが2
00μmになるように塗布した。このガラス板を窒素気
流下で100mw/cm2の紫外線ランプにより10秒
間照射した。得られた乳白色の膜をガラス板ごとに水に
浸したところ、約5秒後膜が自然にガラス板から剥がれ
た。この膜を水で十分洗浄し、相分離剤(B)及び溶剤
(C)を除去して、エタノールで洗浄し、未反応モノマ
ー及びオリゴマー、重合開始剤を洗い出して、最後に再
び水で洗浄した。洗浄後の膜を減圧下十分に乾燥させ
て、ガラス板側に光沢(緻密層)を有し、窒素気流に接
触した側には光沢を有さない多孔質膜8を得た。SEM
による観察の結果は、実施例3とほぼ同等であった。
【0096】(耐ファウリング性の評価)結果を表1に
示した。
【0097】[実施例9] (重合性溶液の調製)ノニルフェノキシデカエチレング
リコールアクリレート(商品名アロニックスM−11
1、東亜合成化学工業社)10部、ウレタンアクリレー
ト(商品名ユニディックV−4263、大日本インキ化
学工業社)67.5部、ジシクロペンタニルジアクリレ
ート22.5部、イルガキュアー184(チバガイギー
社)2部、(C)としてイソプロピルアルコール100
部、(B)として蒸留水40部、を均一に混合し、重合
性溶液9を得た。
【0098】(非対称多孔質膜の作製)重合性溶液とし
て重合性溶液9を用いたこと実施例1と同様な操作によ
り、ガラス板側に光沢を有し、窒素気流側に接触した側
には光沢を有さない非対称多孔質膜9を得た。SEMに
よる観察の結果は、実施例1とほぼ同等であった。
【0099】(耐ファウリング性の評価)結果を表1に
示した。一般式(1)においてn<R2の場合には耐フ
ァウリング性向上の効果が低いことがわかった。
【0100】[実施例10] (重合性溶液の調製)相分離剤(B)としてデカン酸メ
チル190部使用したこと以外は実施例1と同様にし
て、均一な重合性溶液10を得た。
【0101】(非対称多孔質膜の作製)重合性溶液とし
て重合性溶液10を用いたこと実施例1と同様な操作に
より、ガラス板側に光沢を有し、窒素気流側に接触した
側には光沢を有さない非対称多孔質膜10を得た。SE
Mによる観察の結果は、実施例1とほぼ同等であった。
【0102】(耐ファウリング性の評価)結果を表1に
示した。本比較例と実施例1とを比較すると、相分離剤
(b)以外は同じ組成の重合性溶液を用いても、相分離
剤(B)として水を使用することにより膜の耐ファウリ
ング性を大幅に向上のさせ得ることが分かる。
【0103】[実施例11]本実施例では、(メタ)ア
クリル酸オリゴマー(A)として環状構造を有しないも
のを使用すると、耐圧密化に劣る膜となることを示す。
【0104】(重合性溶液の調製)(メタ)アクリル酸
オリゴマー(A)としてメトキシポリエチレングリコー
ル400メタクリレート(NKエステル M−90G、
新中村化学工業(株))72部、1,6−ヘキサンジオ
ールジアクリレート18部、光重合開始剤としてイリガ
キュアー184(チバガイギー社)2部、相分ル剤
(B)として水41部、溶剤(C)として2−プロパノ
ール100部を混紡し、均一な重合性溶液11を得た。
【0105】(非対称多孔質膜の作製)重合性溶液とし
て重合性溶液11を用いたこと実施例1と同様な操作に
より、ガラス板側に光沢を 有し、窒素気流側に接触し
た側には光沢を有さない非対称多孔質膜11を得た。S
EMによる観察の結果は、実施例12とほぼ同等であっ
た。
【0106】(耐ファウリング性の評価)結果を表1に
示した。 (耐熱性、耐圧密化試験)製造された膜を切り分けて、
耐熱性試験と耐圧密化試験を行った。オートクレーブ中
での120℃、1時間の滅菌処理による水フラックスの
低下率を表2に示す。圧力差3kg/cm2、室温で6
0分間水フラックスを測定したときの、測定開始直後に
対する60分後のフラックスの低下率を表3に示す。
【0107】[比較例1]本比較例では、特別な親水性
モノマー(又はオリゴマー)を含有しないアクリル系重
合体から成る多孔質膜の例を示す。
【0108】(重合性溶液の調製)ポリエステルアクリ
レートオリゴマー(商品名アロニックスM−8060、
東亜合成化学工業社)75部、1,6ーヘキサンジオー
ルジアクリレート25部、イルガキュアー184(チバ
ガイギー社)2部、相分離剤(B)としてデカン酸メチ
ル30部及びラウリン酸メチル105部、溶剤(C)と
してアセトン5部を均一に混合し、重合性溶液10を得
た。
【0109】(非対称多孔質膜の作製)重合性溶液とし
て重合性溶液10を用いた事、相分離剤(B)及び溶剤
(C)の一部を除去した事以外は実施例1と同様な操作
により、ガラス板側に光沢を有し、窒素気流側に接触し
た側には光沢を有さない非対称多孔質膜10を得た。S
EMによる観察の結果は、実施例3とほぼ同等であっ
た。
【0110】(耐ファウリング性の評価)結果を表1に
示す。ファウリングインデックスは61%と小さなもの
であった。
【0111】[比較例2]市販の、親水化処理(処理方
法不明)されたポリエーテルスルホン限外濾過膜(商品
名OMEGA FILTER OM010047、FILTRON CORPORATION社)を
用いて、同様な耐ファウリング性試験を行った。結果を
表1に示した。
【0112】[比較例3]市販の、ポリスルホン限外濾
過膜(商品名NTU−3150、日東電工社)を用い
て、同様な耐ファウリング性試験を行った。結果を表1
に示した。同じ膜を使用して耐熱性試験と耐圧密化試験
を行った。オートクレーブ中での120℃、1時間の滅
菌処理による水フラックスの低下率を表2に示す。圧力
差3kg/cm2、室温で60分間水フラックスを測定
したときの、測定開始直後に対する60分後のフラック
スの低下率を表3に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】 CPEG:ポリエチレングリコール構造単位の含有率 n:ポリエチレングリコールの繰り返し単位数(1式、
2式参照) R2の炭素数:炭素原子数又は水素原子(1式参照)
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
【発明の効果】本発明のポリエチレングリコール構造成
分を有する多孔質膜は、濾過物質の膜表面への吸着、又
は濾過物質の膜多孔質支持体部への吸着を顕著に低減で
き、水溶性高分子特にタンパク質に対する耐ファウリン
グ性が優れている。ポリエチレングリコールが重合体に
化学結合しているため、使用時にポリエチレングリコー
ルが溶出しない。膜素材が架橋構造を有するため、強
度、耐熱性、耐薬品性、耐久性などに優れる。
【0118】本発明の製造方法は、従来の直鎖状高分子
の極性溶剤(例えばN−メチルピロリドン)による湿式
製膜法その他の多孔質膜製造方法に比べて、モノマー、
オリゴマーの選択幅が広く、架橋密度や架橋構造の設計
が容易である、膜への官能基の導入が容易、かつ単純な
製造工程で製造でき、従来の後処理加工による親水化方
法に比べて、生産性が高い、製膜において実質的に瞬間
的に重合、相分離が完了するため生産速度が高いと言う
特徴を有する。また危険性が高く廃液処理しにくいN−
メチルピロリドンの様な高沸点極性溶媒の使用を避ける
ことも出来る。

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエチレングリコール構造単位を有す
    る(メタ)アクリル系オリゴマーを必須成分とした架橋
    構造の(メタ)アクリル系重合体からなり、かつポリエ
    チレングリコール構造単位の含有率が2〜60重量%で
    あることを特徴とする耐ファウリング性多孔質膜。
  2. 【請求項2】 ポリエチレングリコール構造単位を有す
    る(メタ)アクリル系オリゴマーが、下記一般式(1)
    及び/又は(2) 【化1】 CH2=CR1CO(OCH2CH2)nOR2 (1) CH2=CR1CO(OCH2CH2)nOCOCR1=CH2 (2) (式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は水素原子又
    は炭素原子数1〜15の炭化水素基であり、nは2〜1
    00の整数である。但し、nはR2の炭素原子数以上で
    ある。)で示される(メタ)アクリル系オリゴマーであ
    る請求項1記載の多孔質膜。
  3. 【請求項3】 架橋構造の(メタ)アクリル系重合体中
    に含まれるポリエチレングリコール構造単位の含有率
    が、5〜50重量%である請求項1又は2記載の多孔質
    膜。
  4. 【請求項4】 架橋構造の(メタ)アクリル系重合体
    が、ポリエチレングリコール構造単位と共に、環状構造
    単位を含有する請求項1〜3のいずれか一に記載の多孔
    質膜。
  5. 【請求項5】 架橋構造の(メタ)アクリル系重合体中
    に含まれる環状構造単位の含有率が、5〜50重量%で
    ある請求項4記載の多孔質膜。
  6. 【請求項6】 多孔質膜が非対称膜である請求項1〜5
    のいずれか一に記載の多孔質膜。
  7. 【請求項7】 ポリエチレングリコール構造単位を有す
    る(メタ)アクリル系オリゴマーとその他の多官能(メ
    タ)アクリル系モノマー及び/又はオリゴマーとを必須
    成分として含有し、かつエネルギー線の照射により重合
    して架橋する樹脂成分(A)と、該樹脂成分(A)と相
    溶し、これら樹脂成分(A)にエネルギー線を照射する
    ことにより生成した架橋重合体をゲル化させない相分離
    剤(B)とを主成分として含有する均一な重合性溶液
    (I)を、賦形した後、エネルギー線を照射して架橋し
    た重合体とし、次いで相分離剤(B)を除去する製造方
    法であって、かつ樹脂成分(A)中のポリエチレングリ
    コール構造単位の含有率が2〜60重量%であることを
    特徴とする耐ファウリング性多孔質膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 重合性溶液(I)を賦形した後、相分離
    剤(B)の一部を揮発させ、次いでエネルギー線を照射
    する請求項7記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 相分離剤(B)が水と水溶性溶剤の混合
    溶液である請求項7又は8記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 ポリエチレングリコール構造単位を有
    する(メタ)アクリル系オリゴマーとその他の多官能
    (メタ)アクリル系モノマー及び/又はオリゴマーとを
    必須成分として含有し、かつエネルギー線の照射により
    重合して架橋する樹脂成分(A)と、該樹脂成分(A)
    と相溶し、これら樹脂成分(A)にエネルギー線を照射
    することにより生成した架橋重合体をゲル化させない相
    分離剤(B)と、架橋重合体をゲル化させる溶剤(C)
    とを主成分として含有する均一な重合性溶液(II)
    を、賦形した後、エネルギー線を照射して架橋した重合
    体とし、次いで相分離剤(B)及び/又は溶剤(C)を
    除去する製造方法であって、かつ樹脂成分(A)中のポ
    リエチレングリコール構造単位の含有率が2〜60重量
    %であることを特徴とする耐ファウリング性多孔質膜の
    製造方法。
  11. 【請求項11】 重合性溶液(II)を賦形した後、相
    分離剤(B)及び/又は溶剤(C)の一部を揮発させ、
    次いでエネルギー線を照射する請求項10記載の製造方
    法。
  12. 【請求項12】 相分離剤(B)が水である請求項10
    又は11記載の多孔質膜の製造方法。
  13. 【請求項13】 ポリエチレングリコール構造単位を有
    する(メタ)アクリル系オリゴマーが、下記一般式
    (1)及び/又は(2) 【化2】 CH2=CR1CO(OCH2CH2)nOR2 (1) CH2=CR1CO(OCH2CH2)nOCOCR1=CH2 (2) (式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は水素原子又
    は炭素原子数1〜15の炭化水素基であり、nは2〜1
    00の整数である。但し、nはR2の炭素原子数以上で
    ある。)で示される(メタ)アクリル系オリゴマーであ
    る請求項7〜12のいずれか一つに記載の多孔質膜の製
    造方法。
  14. 【請求項14】 樹脂成分(A)中のポリエチレングリ
    コール構造単位の含有率が、5〜50重量%である請求
    項7〜12のいずれか一つに記載の多孔質膜の製造方
    法。
  15. 【請求項15】 その他の多官能(メタ)アクリル系モ
    ノマー及び/又はオリゴマーが、環状構造を有する多官
    能(メタ)アクリル系モノマー及び/又はオリゴマーを
    含有するものである請求項7〜14のいずれか一に記載
    の多孔質膜の製造方法。
  16. 【請求項16】 その他の多官能(メタ)アクリル系モ
    ノマー及び/又はオリゴマー中に含まれる環状構造単位
    を有する多官能(メタ)アクリル系モノマー及び/又は
    オリゴマーの含有率が、10〜100重量%である請求
    項15記載の多孔質膜の製造方法。
  17. 【請求項17】 環状構造単位を有する多官能(メタ)
    アクリル系モノマー及び/又はオリゴマー中に含まれる
    環状構造単位の含有率が、20〜70重量%である請求
    項15又は16記載の多孔質膜の製造方法。
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