JP3131951B2 - 非対称性高分子膜及びその製造方法 - Google Patents

非対称性高分子膜及びその製造方法

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JP3131951B2 JP03271049A JP27104991A JP3131951B2 JP 3131951 B2 JP3131951 B2 JP 3131951B2 JP 03271049 A JP03271049 A JP 03271049A JP 27104991 A JP27104991 A JP 27104991A JP 3131951 B2 JP3131951 B2 JP 3131951B2
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    • B01D69/00Semi-permeable membranes for separation processes or apparatus characterised by their form, structure or properties; Manufacturing processes specially adapted therefor
    • B01D69/12Composite membranes; Ultra-thin membranes
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、食品工業、医薬品工
業、電子工業、排水処理、人工臓器、海水の淡水化等の
種々の分離プロセスにおいてタンパク、コロイド、バク
テリヤ、ウイルス、塩等の濾過分離の目的で使用される
限外濾過膜、逆浸透膜、精密濾過膜等の多孔質膜および
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】多孔質膜の製造方法としては、高分子化
合物を溶剤に溶かしゾルのゲルへの転化プロセスを利用
した、いわゆる湿式法によるもの、高分子化合物と、該
高分子化合物の非溶剤で抽出可能なものとを両者の溶剤
に溶かした後、該溶剤を揮発させ製膜した後に上記非溶
剤で抽出を行う方法などがあった。しかし、これらの方
法では、生産速度が遅いという欠点の他に、高分子の溶
液を作る必要が有るため、強度、耐熱性、耐薬品性に優
れた多孔質膜を得ることができなかった。これらの問題
を解決するためには、架橋構造を有する膜の製造が望ま
れる。それを可能にする方法として、特公昭56−34
329,特公昭63−65220に重合可能な単量体お
よび/またはオリゴマーを、これら単量体および/また
はオリゴマーの溶剤として作用し、かつこれら単量体か
ら生成する重合体を膨潤させない非溶剤の存在下で重合
させ架橋構造を有する多孔質膜の作成方法が記載されて
いる。 さらに、特開昭49ー107062に共有的に
架橋結合したビニル重合体よりなることを特徴とする非
対称性膜が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特公昭56−
34329、特公昭63−65220の方法によれば、
生産速度が速く、強度、耐熱性、耐薬品性に優れた多孔
質が得られるものの、膜の厚み方向に均一な孔径分布を
有する多孔質膜が得られるため、任意の濾過分離能を有
する多孔質膜を得るためには、非常に狭い範囲の製膜条
件の選択が必要であり、また、該多孔質膜を用いて濾過
分離を行う際には、濾液の透過速度が非常に小さく、膜
の目詰まりをはなはだしく起こし易いという問題点を有
する。
【0004】また、特公昭63−65220の方法は、
0.02〜15μmの細孔寸法の分子量分画能を有さな
い微孔膜の製造方法に限定されている。さらに、Pro
ceedings of the Fourth An
nual MembraneTechnology/P
lanning Conference 231、(1
986)にエネルギー線の照射により重合可能な単量体
および/またはオリゴマーと、該単量体および/または
該オリゴマーの溶剤として作用し、かつこれら単量体お
よび/またはオリゴマーから生成する重合体を膨潤また
は溶解させない非溶剤とを混合した均一な重合性溶液に
エネルギ−線を照射することにより得られた非対称性高
分子膜の記述があるが、酸素と窒素との透過係数の比が
2.9〜4.2であり、即ち液体を透過することができ
る連通孔を有さないガス分離膜について記述されている
にすぎないうえに具体的な製造方法については述べられ
ていない。
【0005】さらに、特開昭49ー107062の非対
称性膜は、溶媒の凍結を応用して非対称性膜を製造する
(以下凍結法と呼ぶ)ため、膜の厚み方向における他の
部分に比べて孔径の小さな層(以下緻密層と呼ぶ)の厚
みが50μm以上となり濾過速度が甚だしく小さく、一
方、膜の厚み方向における他の部分に比べて孔径の大き
な層(以下多孔質支持層と呼ぶ)の孔径が甚だしく大き
くなるため膜の強度が不充分な膜しか得られず実用性が
無い。
【0006】本発明の目的は、生産速度が速い上に、膜
の厚み方向に孔径分布を有し、液体を透過することがで
きる連通孔を有するため、任意の濾過分離能が容易に得
られ、また、濾過速度が極めて速いか、または良好な濾
過速度と同時に高い分子量分画能を有し、目詰まりを起
こしにくい、さらに、架橋構造を有するため、強度、耐
熱性、耐薬品性に優れた非対称性高分子膜およびその製
造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成す
るに至った。
【0008】即ち、本発明は、特に、エネルギー線の照
射により重合可能な単量体および/またはオリゴマーに
エネルギー線を照射することによって形成された、酸素
と窒素の透過係数の比(以下分離係数という)が0.9
〜1.1であることを特徴とする非対称性高分子膜およ
びその製造方法を提供するものである。本発明は、ま
た、エネルギー線の照射により重合可能な単量体および
/またはオリゴマーにエネルギー線を照射することによ
って形成された、緻密層の厚みが5μm以下であり、多
孔質支持層の孔径が0.1〜20μmであり、さらに、
緻密層の孔径が0.0005〜0.015μmで分子量
分画能を有する、または、緻密層の孔径が0.02〜2
0μmで分子量分画能を有さないものであることを特徴
とする非対称性高分子膜およびその製造方法も提供する
ものである。
【0009】本発明の単量体および/またはオリゴマー
は、該単量体および/または該オリゴマーの溶剤として
作用し、かつこれら単量体および/またはオリゴマーか
ら生成する重合体を膨潤または溶解させない非溶剤を混
合して均一な重合性溶液として用いることができる。ま
た、該均一な重合性溶液に、これら単量体および/また
はオリゴマーから生成する重合体を膨潤または溶解させ
る溶剤を含有させることも可能である。
【0010】該均一な重合性溶液から非溶剤および/ま
たは溶剤の一部を揮発させた後にエネルギ−線照射によ
る重合を行うことにより膜厚み方向に孔径分布を有する
非対称性高分子膜が得られる。
【0011】また、該均一な重合性溶液に膜の厚み方向
に温度勾配を与えた状態でエネルギ−線照射による重合
を行うことにより膜の厚み方向に孔径分布を有する非対
称性高分子膜が得られる。
【0012】また本発明の製造方法は、従来の湿式法そ
の他の非対称膜製造方法に比べて、膜の化学修飾が容
易、膜に架橋構造を導入できる、実質的に瞬間的に相分
離が完了するため生産速度が高い、廃液処理しにくいジ
メチルホルムアミドなどの高沸点極性溶媒の使用を避け
ることができる、という特徴を有する。また放射線架橋
法その他の架橋構造導入方法に比べて、生産速度が高
い、大がかりな装置が不要、重合体の選択の幅が広い、
架橋密度や架橋構造の設計が容易である、という特徴を
有する。
【0013】本発明に用いられる単量体としては、例え
ば、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレー
ト、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシ
ル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレー
ト、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、n−ビ
ニルピロリドン、イソボルニル(メタ)アクリレート、
ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペ
ンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能単
量体、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,
6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエ
チレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’−
ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオ
キシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メ
タ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニ
ル)プロパン等の2官能単量体、トリメチロールプロパ
ントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタント
リ(メタ)アクリレート等の3官能単量体、ペンタエリ
スリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能単量
体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の6
官能単量体等が挙げられる。
【0014】本発明に用いられるオリゴマーとしては、
例えば、エネルギー線照射で重合可能で、重量平均分子
量が500〜50000のものであり、具体的にはエポ
キシ樹脂のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エス
テル、ポリエステル樹脂のアクリル酸エステルまたはメ
タクリル酸エステル、ポリエーテル樹脂のアクリル酸エ
ステルまたはメタクリル酸エステル、ポリブタジエン樹
脂のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、
分子末端にアクリル基またはメタクリル基を有するポリ
ウレタン樹脂等を挙げることができる。
【0015】単量体および/またはオリゴマーの選択
は、必要とする高分子膜の耐熱性、強度、分子量分画能
等により決定される。例えば、耐熱性に優れた高分子膜
を得るためには、多官能の単量体および/またはオリゴ
マーを選択する。逆に、耐熱性を必要としない場合に
は、単官能の単量体および/またはオリゴマーのみを選
択しても良い。また、比較的分子量の小さなものを濾過
できる高分子膜を得るためには、多官能の単量体および
/またはオリゴマーを選択し、架橋間の分子量を小さく
することが望ましい。逆に、比較的分子量の大きなもの
を濾過できる高分子膜を得るためには、官能度の低く分
子量の大きな単量体および/またはオリゴマーを選択
し、架橋間の分子量を大きくすることが望ましい。
【0016】本発明に用いられる非溶剤とは、本発明に
用いる単量体および/またはオリゴマーを均一に溶解す
る事が出来、かつこれらの単量体および/またはオリゴ
マーから生成する重合体を膨潤または溶解させないもの
であればいかなるものでもよい。例えば、オリゴマーと
して分子末端にアクリル基を有するポリウレタン樹脂を
用いる場合、非溶剤としてはカプリン酸メチル等のアル
キルエステル類、ジイソブチルケトン等のジアルキルケ
トン類などを好適に用いることができる。単量体および
/またはオリゴマーの種類、必要とする分子量分画能、
必要とする非対称構造の程度によりその溶解性および沸
点を適切に選択することができる。
【0017】非溶剤の一部を揮発させる製造方法の場
合、非溶剤の揮発と非対称構造の程度には相関関係があ
り、また、非対称構造の程度は、分子量分画能および濾
過液の透過量に相関関係を有する。従って、非溶剤の沸
点の選択は、得られる高分子膜の濾過性能を決定する重
要な因子と成り得る。非溶剤の沸点の選択に関し一例を
挙げるならば、室温以下の温度で非溶剤の一部を揮発さ
せる場合や、非溶剤の一部を揮発させるために重合性溶
液に吹き付ける気流の速度が小さい場合や、ごく短時間
のうちに非溶剤を揮発させなければならない場合には、
非溶剤として沸点が80℃以下のものを用い得る。ま
た、加温された気流を重合性溶液に吹き付ける場合、あ
る程度の時間を掛けて非溶剤を揮発させなければならな
い場合には、非溶剤として沸点が60℃以上のものを用
い得る。また非溶剤は2種以上の混合物であってもよ
い。
【0018】本発明に用いられる溶剤とは、単量体およ
び/またはオリゴマーを均一に溶解する事が出来、かつ
これらの単量体および/またはオリゴマーから生成する
重合体を膨潤または溶解できるものであればいかなるも
のでもよい。例えば、オリゴマーとして分子末端にアク
リル基を有するポリウレタン樹脂を用いる場合、アセト
ン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジメチルホルム
アミド、n−メチルピロリドン等を好適に用いることが
できる。単量体および/またはオリゴマーの種類、必要
とする分子量分画能、必要とする非対称構造の程度によ
りその溶解性および沸点を適切に選択することができ
る。
【0019】重合性溶液に溶剤を含有させると、溶解度
の調節範囲が広がることにより、非溶剤および、重合性
単量体やオリゴマー、さらに添加物の選択範囲が広がる
結果、膜性能の向上や、用途目的に応じた特製の膜を製
造することが容易になる。また、非溶剤と溶剤の沸点の
組み合わせを調節することにより、緻密層を気相側、支
持体側、あるいは膜内部など任意の位置に形成すること
が容易となる。
【0020】溶剤の沸点の選択も非溶剤の沸点と同様
に、得られる高分子膜の濾過性能を決定する重要な因子
と成り得るものであり、非溶剤の場合と同様の基準で選
択する必要がある。また、溶剤の溶解性と、得られる高
分子膜の分子量分画能には、相関関係が存在する場合が
多い。一例を挙げるならば、比較的分子量の小さなもの
を濾過できる高分子膜を得るためには、溶解性の高い溶
剤を用い得る。また、比較的分子量の大きなものを濾過
できる高分子膜を得るためには、溶解性の低い溶剤を用
い得る。
【0021】非溶剤および溶剤の単量体および/または
オリゴマーに対する重量比率は、単量体および/または
オリゴマー1に対して0.1〜4.0の範囲が望まし
い。0.1以下では、充分な透過量が得られず、4.0
以上では膜の強度が不充分となる。
【0022】本発明に用いられるエネルギー線として
は、電子線、γ線、X線、紫外線、可視光線等を用いる
ことが出来る。なかでも装置および取扱いの簡便さから
紫外線を用いることが望ましい。照射する紫外線の強度
は、10〜500mW/cm2が望ましく、照射時間
は、一般に0.1〜100秒程度である。エネルギ−線
として紫外線や可視光線を用いる場合には、重合速度を
速める目的で、重合性溶液に光重合開始剤を含有させる
ことも可能である。また、紫外線の照射を不活性ガス雰
囲気下で行うことによって、さらに重合速度を速めるこ
とが可能である。電子線もまた本発明に用いることので
きる好ましいエネルギー線である。電子線を用いると、
溶剤、非溶剤、その他の添加剤などの柴外線吸収の影響
を受けないため、これらの選択の幅が広がると共に、製
膜速度も向上する。
【0023】本発明の重合性溶液に混合可能な紫外線重
合開始剤としては、p−tert−ブチルトリクロロア
セトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン
−1−オン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、
4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−ク
ロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−
エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサント
ン等のケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテ
ル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソ
ブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジ
メチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケ
トン等のベンジルケタール類等を挙げることができる。
【0024】本発明において重合性溶液を薄膜状に形成
する方法としては、支持体上に、ロ−ルコ−ティング
法、ドクタ−ブレ−ド法、スピンコ−ティング法、スプ
レ−法等により塗布する方法を用いることができる。支
持体としては、金属、セラミックス、ガラス、プラステ
ィック、布、不織布、紙等を用いることができる。支持
体としてベルト状のものを用いる場合には、連続して薄
膜を形成することができる。膜は最終的には支持体から
剥離しても良いし、支持体が多孔質である場合には一体
化されたままで用に供する事もできる。また、支持体を
用いずに薄膜を形成する方法を採用することも可能であ
る。
【0025】本発明の非対称性高分子膜は膜の厚み方向
に孔径分布を有し、気体分離能がなく、連通孔を有する
ことに特徴を有する。膜の厚み方向に孔径分布を有する
とは、膜の厚み方向に連続的もしくは非連続的に孔の孔
径が変化することをいう。例えば膜の片方の表面から他
方の面に向かって連続的に孔の孔径が増加もしくは減少
する場合(図1に示す)、膜の片方の表面から他方の表
面に向かって非連続的に孔径が増加もしくは減少する場
合(図2に示す)膜の両方の表面に孔径の最も小さな孔
の層があり、膜の両方の表面から膜の内部に向かって孔
径が連続的もしくは非連続的に増加する場合(図3に示
す)、膜の内部に孔径の最も小さな孔の層があり、この
層の両面から膜の両方の表面に向かって孔径が連続的も
しくは非連続的に増加する場合(図4に示す)等があ
る。
【0026】また連通孔とは、膜の片方の表面から他方
の表面へ液体を通過させることができる孔をいう。液体
が水の場合、連通孔を有しても膜が疎水性の場合には、
大きな圧力差を設けないと水が透過しない場合もある
が、このような場合でも、あらかじめアルコールや界面
活性剤水溶液で濡らした後であれば水を透過することが
できる。本発明の連通孔の形状には特別の制限はない
が、一例を挙げると、球状の高分子ドメインがお互いに
連結した構造における球状ドメインの隙間が連通孔とな
る場合(図5に示す)、高分子が網目状構造を形成する
場合(図6に示す)等がある。
【0027】本発明にいうところの非対称高分子膜は、
緻密層と緻密層を支持する多孔質支持層とからなる膜を
言う。緻密層は、その厚みが5μm以下であることが望
ましい。厚みが5μm以上であると、濾過速度が極端に
低下し実用性が無い。また、厚みの薄い方には、おのず
と達しうる限界があるが、薄いこと自体による不都合は
ないので、その下限はない。
【0028】また、多孔質支持層は、その孔径が0.1
μm以上20μm以下であることが望ましい。孔径が
0.1μm以下であると、濾過速度が極端に低下し実用
性が無い。孔径が20μm以上であると膜の強度が極端
に低下し実用性が無い。
【0029】既に述べたとおり、緻密層および多孔質支
持層は、膜の片方の表面に存在していてもよいし、ま
た、両方の表面に存在していてもよい。従って例えば内
部に緻密層が存在し、両表面に多孔質支持層が存在して
いる膜も本発明の膜に含まれる。
【0030】本発明の膜は、緻密層に存在する孔の孔径
が0.0005〜20μmの液体を透過することのでき
る連通孔を有するものである。緻密層の孔の孔径が0.
0005μm〜0.015μmの場合は、分子量分画能
を有し、即ち液体に溶解されている高分子物質、低分子
物質またはイオンを液体から分離できる。このため、こ
の場合には、限外濾過膜、逆浸透膜等に適する。緻密層
の孔の孔径が0.0005μm〜0.015μmの膜に
おいては、緻密層の孔の孔径が0.0005μm以上で
あることは、下記の酸素/窒素の分離係数が0.9〜
1.1であることから判定できる。また、緻密層の孔の
孔径が0.015μm以下であることは、タンパク質な
どの粒径の明かな物質の濾過試験で判定できる。
【0031】緻密層の孔の孔径が0.02〜20μmの
場合は、分子量分画能を有さず、即ち液体に溶解されて
いる高分子物質、低分子物質またはイオンを通過させる
ことができる。このため、この場合には、精密濾過膜に
適する。緻密層の孔の孔径が0.02μm以上であるこ
とは、菌体などの粒径の明かな物質の濾過試験で判定で
きるし、20μm以下であることは電子顕微鏡観察で判
定できる。
【0032】また、本発明の膜は、酸素と窒素の分離係
数が0.9〜1.1であり、即ち酸素と窒素の透過速度
が等しいので、気体分離能を有さないことに特徴を有す
る。緻密層の孔の孔径が0.0005μm〜0.015
μmの膜において、孔の孔径が0.0005μm未満で
あると、気体は溶解拡散で膜を通過することになり、膜
素材によって異なるものの、分離係数は通常2以上とな
る。また孔の孔径が0.0005μm以上の孔径の連通
孔を有する場合は、膜中の気体の流れはKnudsen
flowもしくはPoiseuille flowに
従い、分離係数は、0.9〜1.1となる(例えば、膜
処理技術体系・上巻、中垣正幸監修、24頁、富士・テ
クノシステム、1991)。
【0033】さらに、本発明の膜は、緻密層における孔
径と膜全体の平均孔径との比率が1000000分の1
〜10分の1の範囲にある。また、本発明の膜に存在す
る孔の密度、即ち空孔率は、10〜70%が好ましい。
空孔率が10%以下であると、濾過速度が極端に低下し
実用性が無い。また、70%を越えると膜の強度が極端
に低下し実用性が無い。
【0034】本発明者らは、重合性溶液を、エネルギ−
線照射によって、膜の厚み方向に孔径分布を有する多孔
質薄膜状に重合するには、種々の方法があることを見い
だした。
【0035】重合性溶液を薄膜状に形成した後、非溶剤
の一部を揮発させた後、エネルギ−線を照射する方法、
重合性溶液に溶剤を含有させ、この溶剤および/または
非溶剤の一部を揮発させた後、エネルギ−線を照射する
方法、さらに、重合性溶液を薄膜状に形成した後膜の厚
み方向に温度勾配を与えた状態でエネルギー線を照射す
る方法等を挙げることができる。
【0036】溶剤または非溶剤の一部を揮発させるには
空気、窒素不活性ガスなどの気流を薄膜状の重合性溶液
に当てる方法や、特に気流を当てずに一定時間乾燥させ
る方法、赤外線を照射する方法など任意の方法を採用し
うる。溶剤または非溶剤の一部を選択的に揮発させるに
は、各々適当な沸点のものを選択することにより実施で
きる。
【0037】温度勾配がなく、非溶剤および非溶剤の両
方が不揮発性である場合には、即ち、非溶剤および溶剤
の揮発が生じない条件では非対称構造は形成されない。
また、非溶剤および/または溶剤が痕跡もなく完全に揮
発してしまった状態でエネルギー線硬化させても非多孔
質の均質膜あるいは等方性の多孔質膜が得られるのみで
ある。溶剤または非溶剤の一部を揮発させることにより
初めて緻密層と多孔質支持層とからなる非対称膜が得ら
れる。 本発明の製法は、湿式法その他の非対称膜の製
法に比べて、膜に容易に架橋構造を導入することが可能
であり、また、ごく短時間の揮発と実質的に瞬間的に生
じる相分離により、極めて高い生産速度が実現できる。
また、凍結法に比べて、薄い緻密層に基づく高い透過速
度(以下FLUXと呼ぶ)と、多孔質支持層の大き過ぎ
ない孔径による高い耐圧強度、および高い生産速度が実
現できる。
【0038】温度勾配を与える方法については、支持体
温度と雰囲気あるいは気流の温度を違える方法、赤外線
加熱による方法などを採用することができる。重合性溶
液に温度勾配を与えた状態でエネルギー線を照射するこ
とにより非対称構造を導入する製造方法は、溶剤または
非溶剤の一部を揮発させた後エネルギー線を照射する方
法に比べて、さらに生産速度が速く、再現性に勝るとい
う特長を有する。
【0039】本発明において、膜の厚み方向に孔径分布
を有する多孔質薄膜が得られる理由や機構については、
未解明であるが、非溶剤および/または溶剤の一部を揮
発させることにより単量体および/またはオリゴマーの
濃度分布が形成された状態、あるいは、非溶剤と溶剤の
濃度比の分布が形成された状態、また、膜の厚み方向に
温度勾配が形成せれた状態でエネルギ−線が照射される
ことにより、膜の厚み方向に不均一に相分離が起こるこ
とが理由であると推定される。
【0040】また、支持体上に重合性溶液の薄膜を形成
する場合には、重合性溶液の一方の面のみから非溶剤お
よび/または溶剤が揮発すること、および重合性溶液の
各成分と支持体との親和性に差があること等も孔径分布
の発生に寄与するものと推定される。
【0041】エネルギ−線照射による重合が終了した
後、蒸発および/または洗浄により非溶剤および溶剤を
除去する必要がある。洗浄には、非溶剤、溶剤、未反応
の単量体および/またはオリゴマー、紫外線重合開始剤
を充分に溶解することができ、しかも、重合体を膨潤お
よび溶解させない洗浄剤を用いることができる。洗浄剤
としては、低沸点のものが好ましい。また、洗浄は、複
数の洗浄剤を用いた複数の工程であってもかまわない。
【0042】本発明の非対称性高分子膜は濾過速度が早
く、強度、耐熱性、耐薬品性に優れるため、限外濾過
膜、逆浸透膜、精密濾過膜等へ有効に応用することが可
能である。
【0043】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する
が、本発明の範囲がこれらの実施例にのみ限定されるも
のではない。尚、例中の部は重量基準である。
【0044】[実施例1] (重合性溶液の調整)数平均分子量1000、1分子内
に平均して3個のアクリル基を有するウレタンアクリレ
−トオリゴマー100部、紫外線重合開始剤イルガキュ
ア−651(チバガイギ−社製)4部、ジイソブチルケ
トン(非溶媒)70部を混合し、重合性溶液1を得た。
【0045】(非対称性高分子膜の作製)フィルムアプ
リケ−タ−によりガラス板上に重合性溶液1を、厚みが
200μmと成るように塗布した。そのガラス板を、窒
素気流下に2分間放置することによって非溶剤の一部を
揮発させた後、メタルハライドランプにより360nm
の強度が100mW/cm2 の紫外線を10秒間照射し
た。照射前には透明であった塗膜が照射後には、乳白色
に変化していることが観察された。得られた乳白色の膜
をガラス板より剥離し、石油エ−テル中に30分間浸す
ことにより非溶剤、未反応の単量体およびオリゴマー、
紫外線重合開始剤を洗い出した。洗浄後の膜を減圧下充
分に乾燥させることによりガラス板側に光沢を有し、窒
素気流に接触した側には光沢を有さない非対称性高分子
膜1を得た。
【0046】高分子膜1を電子顕微鏡で観察した結果、
ガラス板側は、0.01μm程度の孔径であり、窒素気
流に接触した側は、2μm程度の孔径であることが分か
った。また、断面の観察より孔径の小さい部分は、ガラ
ス板側のごく薄い層のみであり、その厚みが1μm以下
であることが分かった。また、酸素/窒素の分離係数
は、0.98であった。
【0047】(濾過性能の評価)ザルトリウス社製限外
濾過装置SM−165−26を用いて、分子量5万のポ
リエチレングリコ−ルの0.3%水溶液の濾過実験を行
った。濾過温度が25℃、濾過圧力が3Kg/cm2
おけるポリエチレングリコ−ル水溶液のFLUXおよび
ポリエチレングリコ−ルの阻止率を表1に示す。以下の
実施例、比較例においても同様の評価を行った。
【0048】[実施例2] (重合性溶液の調整)数平均分子量3000、1分子内
に平均して3個のアクリル基を有するウレタンアクリレ
−トオリゴマー60部、1,6−ヘキサンジオールジア
クリレート20部、イルガキュア−651(紫外線重合
開始剤、チバガイギ−社製)4部、ジイソブチルケトン
(非溶剤)20部、カプリン酸メチル(非溶剤)70部
を混合し、重合性溶液2を得た。
【0049】(非対称性高分子膜の作製)実施例1と同
様の操作を行うことによりガラス板側に光沢を有し、窒
素気流に接触した側には光沢を有さない非対称性高分子
膜2を得た。電子顕微鏡による観察結果は、実施例1と
同等であった。また、酸素/窒素の分離係数は、0.9
35であった。
【0050】[実施例3] (重合性溶液の調整)数平均分子量1000、1分子内
に平均して2個のアクリル基を有するウレタンアクリレ
−トオリゴマー50部、エポキシ当量190のエポキシ
樹脂のアクリル酸エステル30部、フェニルセロソルブ
アクリレ−ト20部、イルガキュア−184(紫外線重
合開始剤、チバガイギ−社製)4部、カプリン酸メチル
(非溶剤)70部、アセトン(溶剤)30部を混合し、
重合性溶液3を得た。
【0051】(非対称性高分子膜の作製)フィルムアプ
リケ−タ−によりガラス板上に重合性溶液3を、厚みが
200μmと成るように塗布した。そのガラス板を、窒
素気流下に30秒間放置することによって溶剤の一部を
揮発させた後、メタルハライドランプにより360nm
の強度が100mW/cm2 の紫外線を10秒間照射し
た。照射前には透明であった塗膜が照射後には、乳白色
に変化していることが観察された。得られた乳白色の膜
をガラス板より剥離し、石油エ−テル中に30分間浸す
ことにより非溶剤、溶剤、未反応の単量体およびオリゴ
マー、紫外線重合開始剤を洗い出した。洗浄後の膜を減
圧下充分に乾燥させることによりガラス板側に光沢を有
し、窒素気流に接触した側には光沢を有さない非対称性
高分子膜3を得た。電子顕微鏡による観察結果は、実施
例1と同等であった。また、酸素/窒素の分離係数は、
0.936であった。
【0052】[実施例4] (重合性溶液の調整)数平均分子量3000、1分子内
に平均して2個のアクリル基を有するのウレタンアクリ
レ−トオリゴマー60部、トリメチロ−ルプロパントリ
アクリレ−ト20部、ネオペンチルグリコ−ルジアクリ
レ−ト20部、イルガキュア−651(紫外線重合開始
剤、チバガイギ−社製)4部、ラウリン酸メチル(非溶
剤)70部、メチルイソブチルケトン(溶剤)30部を
混合し、重合性溶液4を得た。
【0053】(非対称性高分子膜の作製)実施例3と同
様の方法により、窒素気流に接触した側に光沢を有し、
ガラス板側には光沢を有さない高分子膜4を得た。高分
子膜4を電子顕微鏡で観察した結果、ガラス板側は、2
μm程度の孔径であり、窒素気流に接触した側は、0.
01μm程度の孔径であることが分かった。また、断面
の観察より孔径の小さい部分は、窒素気流に接触した側
のごく薄い層のみであり、その厚みは、1μm以下であ
ることが分かった。また、酸素/窒素の分離係数は、
1.02であった。
【0054】[実施例5] (重合性溶液の調整)実施例3の重合性溶液3のカプリ
ン酸メチル(非溶剤)を80部とすることにより、重合
性溶液5を得た。
【0055】(非対称性高分子膜の作製)実施例3と同
様の方法により、ガラス板側に光沢を有し、窒素気流に
接触した側には光沢を有さない非対称性高分子膜5を得
た。電子顕微鏡による観察結果は、実施例1と同等であ
った。また、酸素/窒素の分離係数は、0.936であ
った。
【0056】[実施例6] (重合性溶液の調整)数平均分子量3000、1分子内
に平均して3個のアクリル基を有するのウレタンアクリ
レ−トオリゴマー60部、1,6−ヘキサンジオールジ
アクリレート20部、イルガキュア−651(紫外線重
合開始剤、チバガイギ−社製)4部、カプリン酸メチル
(非溶剤)70部を混合し、重合性溶液6を得た。
【0057】(非対称性高分子膜の作製)フィルムアプ
リケ−タ−によりガラス板上に重合性溶液6を、厚みが
200μと成るように塗布した。そのガラス板を、80
℃の窒素気流下に3秒間放置させた後、メタルハライド
ランプにより360nmの強度が100mW/cm2 の
紫外線を10秒間照射した。照射前には透明であった塗
膜が照射後には、乳白色に変化していることが観察され
た。得られた乳白色の膜をガラス板より剥離し、石油エ
−テル中に30分間浸すことにより非溶剤、溶剤、未反
応の単量体およびオリゴマー、紫外線重合開始剤を洗い
出した。洗浄後の膜を減圧下充分に乾燥させることによ
り窒素気流に接触した側に光沢を有し、ガラス板側には
光沢を有さない非対称性高分子膜6を得た。電子顕微鏡
による観察結果は、実施例4と同等であった。また、酸
素/窒素の分離係数は、0.936であった。
【0058】[実施例7] (重合性溶液の調整)数平均分子量1000、1分子内
に平均して3個のアクリル基を有するウレタンアクリレ
ートオリゴマー80部、ジシクロペンテニルアクリレー
ト20部、イルガキュア−651(紫外線重合開始剤、
チバガイギ−社製)4部、カプリン酸メチル(非溶剤)
200部、アセトン(溶剤)20部を混合し、重合性溶
液7を得た。
【0059】(非対称性高分子膜の作製)実施例1と同
様の操作を行うことによりガラス板側に光沢を有し、窒
素気流に接触した側には光沢を有さない非対称性高分子
膜7を得た。高分子膜7を電子顕微鏡で観察した結果、
ガラス板側は、0.2μm程度の孔径であり、窒素気流
に接触した側は、5μm程度の孔径であることが分かっ
た。また、断面の観察より孔径の小さい部分は、ガラス
板側のごく薄い層のみであり、その厚みは、1μm以下
であることが分かった。また、酸素/窒素の分離係数
は、0.934であった。
【0060】[比較例1]実施例1の重合性溶液1を、
厚みが200μのスペイサ−を有する2枚のガラス板間
に挟み込んだ状態で、メタルハライドランプにより36
0nmの強度が100mW/cm2 の紫外線を10秒間
照射した。照射前には透明であった重合性溶液が照射後
には、乳白色に変化していることが観察された。得られ
た乳白色の膜をガラス板より剥離し、石油エ−テル中に
30分間浸すことにより非溶剤、未反応の単量体および
オリゴマー、紫外線重合開始剤を洗い出した。洗浄後の
膜を減圧下充分に乾燥させることにより両面に光沢を有
さない高分子膜7を得た。高分子膜7を電子顕微鏡で観
察した結果。両面とも2μ程度の孔径を有し、また、断
面の観察結果より孔径は、膜の厚み方向に均一であるこ
とが分かった。
【0061】[比較例2]実施例3の重合性溶液を用
い、比較例1と同様の方法により両面に光沢を有さない
高分子膜8を得た。電子顕微鏡による観察結果は、比較
例1と同等であった。
【0062】[比較例3]実施例6の重合性溶液6をフ
ィルムアプリケ−タ−によりガラス板上に厚みが200
μmと成るように塗布した。そのガラス板にメタルハラ
イドランプにより360nmの強度が100mW/cm
2 の紫外線を10秒間照射した。照射前には透明であっ
た塗膜が照射後には、乳白色に変化していることが観察
された。得られた乳白色の膜をガラス板より剥離し、石
油エ−テル中に30分間浸すことにより非溶剤、未反応
の単量体およびオリゴマー、紫外線重合開始剤を洗い出
し、両面に光沢を有さない高分子膜9を得た。電子顕微
鏡による観察結果は、比較例1と同等であった。
【0063】[比較例4] (重合性溶液の調整)実施例6の重合性溶液6の非溶剤
カプリン酸メチルを60部とすることで、重合性溶液7
を得た。
【0064】(高分子膜の作製)比較例3と同様の方法
により、両面に光沢を有する高分子膜10を得た。高分
子膜10を電子顕微鏡で観察した結果。上下両面とも
0.01μ程度の孔径を有し、また、断面の観察結果よ
り孔径は、膜の厚み方向に均一であることが分かった。
【0065】[比較例5] (重合性溶液の調整)実施例6の重合性溶液6の非溶剤
カプリン酸メチルを80部とすることで、重合性溶液8
を得た。
【0066】(高分子膜の作製)比較例3と同様の方法
により、両面に光沢を有さない高分子膜11を得た。電
子顕微鏡による観察結果は、比較例1と同等であった。
【0067】[比較例6] (重合性溶液の調整)メタクリル酸ヒドロキシエチル9
0部、エチレングリコールジメタクリレート10部、ダ
ロキュアー2959(紫外線重合開始剤、メルク社製)
4部、水65部、エチレングリコール15部を混合し、
重合性溶液9を得た。
【0068】(非対称高分子膜の作成)厚みが400μ
mのスペイサーを有する2枚のガラス板間に重合性溶液
9を挟み込んだ状態で、下方のガラス板ををー40℃に
冷却した。重合性溶液9が冷却により凍結を起こした後
に、内部を20℃の水が循環するガラス製セルを上部ガ
ラス板上に配置し、凍結した重合性溶液9の上部表面が
溶融するようにした。この状態で上部ガラス板上に配置
したメタルハライドランプにより360nmの強度が1
00mW/cm2の紫外線を10秒間照射した。つい
で、得られた膜を溶融しガラス板より剥離することによ
り乳白色の高分子膜12を得た。高分子膜12を電子顕
微鏡で観察した結果、 膜の上面は、0.01μm以下
の孔径であり、膜の下面は、100μm程度の孔径であ
った。また、断面の観察結果より膜の上面の孔径が0.
01μm程度の部分の厚みは、50μm程度であること
が分かった。
【0069】(濾過性能の評価)高分子膜12は、濾過
圧力3kg/cm2ではポリエチレングリコール水溶液
が透過しないため、評価不能であった。
【0070】以上の実施例及び比較例において、実施例
1および2においては、非溶剤であるジイソブチルケト
ンが揮発したことにより非対称性高分子膜が得られた。
実施例3、4、5、7では、溶剤であるアセトン、メチ
ルイソブチルケトンが揮発したことにより非対称性高分
子膜が得られた。また、実施例6では、80℃の窒素気
流により膜表面が暖められたことにより膜表面での相分
離が進行せず非対称性高分子膜が得られた。
【0071】比較例1および2では、重合性溶液をガラ
ス板に挟み込んだことによりジイソブチルケトンの揮発
が起こらなかったために、比較例3、4、5では、非溶
剤が高沸点のカプリン酸メチル単独であるので非溶剤の
揮発が起こらないため、膜の厚み方向に孔径分布を有す
る高分子膜が得られなかった。
【0072】
【表1】 表1から明らかなように、実施例1〜6の非対称性高分
子膜は、良好な濾過速度および分子量分画能が得られて
いる。また、実施例7の非対称性高分子膜は、0.2μ
m以上の大きさのものを除去することができ、しかも大
きな濾過速度が得られた。比較例1〜5の膜の厚み方向
に孔径分布を有さない高分子膜では、濾過速度、分子量
分画能の両者が同時に優れたものが得られない。また、
比較例3、4、5より明らかなように、単量体およびオ
リゴマーと非溶剤の比率を変化させることにより膜の孔
径を調節しても、濾過速度、分子量分画能の両者が同時
に優れたものを得ることが出来ないことが分かる。比較
例7では、膜の厚み方向に孔径分布を有する高分子膜が
得られたものの、緻密層の厚みが厚すぎるため充分なF
LUXが得られなかった。
【0073】
【発明の効果】本発明の非対称性高分子膜は、膜の厚み
方向に孔径分布を有し、かつ、液体を透過することがで
きる連通孔を有するため、任意の濾過分離能が容易に得
られ、また、濾過速度が速く目詰まりを起こしにくい。
さらに、架橋構造を有するため、強度、耐熱性、耐薬品
性に優れる。また、生産速度が速いという利点も有す
る。また本発明の製造方法は、従来の湿式法その他の非
対称膜製造方法に比べて、膜の化学修飾が容易、膜に架
橋構造を導入できる、実質的に瞬間的に相分離が完了す
るため生産速度が速い、廃液処理しにくいジメチルホル
ムアミドなどの高沸点極性溶媒の使用を避けることがで
きる、という特徴を有し、また、放射線架橋法その他の
架橋構造導入方法に比べて、生産速度が速い、大がかり
な装置が不要、重合体の選択の幅が広い、架橋密度や架
橋構造の設計が容易といった特徴を有する。
【0074】
【図面の簡単な説明】
【図1】膜の厚み方向に孔径分布を有する構造を示す模
式図
【図2】膜の厚み方向に孔径分布を有する構造を示す模
式図
【図3】膜の厚み方向に孔径分布を有する構造を示す模
式図
【図4】膜の厚み方向に孔径分布を有する構造を示す模
式図
【図5】連通孔の形状を示す模式図
【図6】連通孔の形状を示す模式図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 67/00 500

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エネルギー線の照射により重合可能な単量
    体および/またはオリゴマーにエネルギ−線を照射する
    ことによって形成された、酸素と窒素との透過係数の比
    が0.9〜1.1であることを特徴とする非対称性高分
    子膜。
  2. 【請求項2】エネルギー線の照射により重合可能な単量
    体および/またはオリゴマーと、該単量体および/また
    は該オリゴマーの溶剤として作用し、かつこれら単量体
    および/またはオリゴマーから生成する重合体を膨潤ま
    たは溶解させない非溶剤とを混合した均一な重合性溶液
    にエネルギ−線を照射することによって形成された、酸
    素と窒素との透過係数の比が0.9〜1.1であること
    を特徴とする非対称性高分子膜。
  3. 【請求項3】膜の厚み方向における他の部分に比べて孔
    径の小さな層の厚みが5μm以下であることを特徴とす
    る請求項1または2記載の非対称性高分子膜。
  4. 【請求項4】膜の厚み方向における他の部分に比べて孔
    径の大きな層の孔の孔径が0.1〜20μmであること
    を特徴とする請求項1または2記載の非対称性高分子
    膜。
  5. 【請求項5】膜の厚み方向における他の部分に比べて孔
    径の小さな層の孔の孔径が0.0005〜0.015μ
    mで分子量分画能を有する請求項1〜4のいずれか1項
    記載の非対称性高分子膜。
  6. 【請求項6】膜の厚み方向における他の部分に比べて孔
    径の小さな層の孔の孔径が0.02〜20μmで分子量
    分画能を有さない請求項1〜4のいずれか1項記載の非
    対称性高分子膜。
  7. 【請求項7】重合性溶液が、生成する重合体を膨潤また
    は溶解させる溶剤を含有するものであることを特徴とす
    る請求項2〜6のいずれか1項記載の非対称性高分子
    膜。
  8. 【請求項8】エネルギー線の照射により重合可能な単量
    体および/またはオリゴマーと、該単量体および/また
    は該オリゴマーの溶剤として作用し、かつこれら単量体
    および/またはオリゴマーから生成する重合体を膨潤ま
    たは溶解させない非溶剤とを混合した均一な重合性溶液
    から非溶剤の一部を揮発させた後にエネルギ−線を照射
    して重合を行うことを特徴とする非対称性高分子膜の製
    造方法。
  9. 【請求項9】エネルギー線の照射により重合可能な単量
    体および/またはオリゴマーと、該単量体および/また
    は該オリゴマーの溶剤として作用し、かつこれら単量体
    および/またはオリゴマーから生成する重合体を膨潤ま
    たは溶解させない非溶剤と膨潤または溶解させる溶剤と
    を混合した均一な重合性溶液から非溶剤および/または
    溶剤の一部を揮発させた後にエネルギ−線を照射して重
    合を行うことを特徴とする非対称性高分子膜の製造方
    法。
  10. 【請求項10】エネルギー線の照射により重合可能な単
    量体および/またはオリゴマーと、該単量体および/ま
    たは該オリゴマーの溶剤として作用し、かつこれら単量
    体および/またはオリゴマーから生成する重合体を膨潤
    または溶解させない非溶剤とを混合した均一な重合性溶
    液に、膜の厚み方向に温度勾配を与えた状態でエネルギ
    −線を照射して重合を行うことを特徴とする非対称性高
    分子膜の製造方法。
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