JPH07310289A - 多孔質シート及びその製造方法 - Google Patents

多孔質シート及びその製造方法

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JPH07310289A
JPH07310289A JP7036422A JP3642295A JPH07310289A JP H07310289 A JPH07310289 A JP H07310289A JP 7036422 A JP7036422 A JP 7036422A JP 3642295 A JP3642295 A JP 3642295A JP H07310289 A JPH07310289 A JP H07310289A
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昭信 溝口
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Toshiyuki Akazawa
敏幸 赤沢
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 湿式凝固性などの工程通過性が良好であり、
かつ耐久性に優れ、柔軟性、低温条件下での柔軟性にす
ぐれた多孔質シートを提供する。このような多孔質シー
トは皮革様シートに好適である。 【構成】 ソフトセグメント成分がポリカーボネート連
鎖とジエチレングリコール系ポリエステル連鎖とテトラ
メチレングリコール系ポリエステル連鎖を有し、ハード
セグメント成分が芳香族ジイソシアネートとエチレング
リコールから合成されたポリウレタンを湿式凝固するこ
とにより得られる多孔質シート。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、良好な風合いを有し耐
久性に優れた多孔質シートに関する。更に詳しくは、特
定の連鎖構造を有するポリウレタンを用いることにより
得られる、力学特性や耐久性などの諸物性に優れた多孔
質シートであって、かつそれを製造する際の湿式凝固性
に優れ、さらに得られた多孔質シートをエンボス処理す
る際のエンボス性などの加工性にも優れた、皮革様シー
トに適した多孔質シ−トに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリウレタン樹脂を主体とした重
合体の溶液をフィルムなどの支持体に塗布したり、不織
布などの繊維構造体に含浸および/または塗布し、そし
て該樹脂に対しては非溶剤でかつ該樹脂溶液を構成する
溶媒に対しては溶剤である溶液中に浸漬して該樹脂を凝
固、いわゆる湿式凝固させると多孔質シ−トが得られる
ことは公知である。このような方法で製造された多孔質
シートを布帛表面に貼り合わせることにより、また繊維
構造体と一体化されている場合にはそのままの状態で、
皮革様シートとして使用されている。
【0003】皮革様シートに用いられる多孔質シートに
要求される性能として、長期間の保存や使用によりシー
トの強度が劣化しないこと(すなわち耐久性に優れてい
ること)、柔軟であること、特に低温条件下でも十分に
柔軟であること、さらに天然皮革に類似した表面状態を
有していること(すなわち風合いに優れていること)、
さらにこのような柔軟で風合いに優れた多孔質シートを
得るためには、湿式凝固により十分にポーラスな多孔状
態が得られることが必要であり(すなわち湿式凝固性に
優れていること)、また多孔質シートの表面に天然皮革
に類似した表面凹凸形状をエンボスにより付与する際に
所望の表面形状に付与できかつ付与時にポーラス状態が
大きく破壊されないこと(すなわちエンボス加工性に優
れていること)などが挙げられる。
【0004】一般にポリウレタンは、ポリエステルジオ
−ルやポリエーテルジオールやポリカーボネートジオー
ル等の高分子ジオール、ジイソシアネート化合物および
鎖伸長剤から合成され、得られたポリウレタン中におい
て、高分子ジオールに由来する成分はソフトセグメント
成分、またジイソシアネート化合物および鎖伸長剤に由
来する成分はハードセグメント成分と称され、ハードセ
グメントとソフトセグメントは交互に存在してポリウレ
タンを構成している。そしてソフトセグメントはポリマ
ーに伸びを与え、ハードセグメントはポリマーに強度を
与えかつ塑性流動を防止する役割をもっている。
【0005】特公昭59−10380号公報及び特公昭
59−10378号公報には、ポリウレタンを構成する
ソフトセグメント成分がポリカ−ボネ−トジオールであ
る場合には、ポリウレタンの耐久性は良好であるが、湿
式凝固性が不良であり、これを改善する方法として、イ
ソシアネ−ト基に含まれる窒素原子のポリウレタンにお
ける重量が0.2%以上異なる二種のポリウレタンを混
合するとか、ポリカ−ボネ−トジオールの分子量が10
0以上異なる二種以上のポリウレタンを混合する方法が
記載されている。しかしながら、この方法によりポリウ
レタンの湿式凝固性が改良されたとしても、その程度は
わずかであり、到底良好なポーラス状態の多孔質シート
は得られない。
【0006】特開平2−160820号公報には、脂肪
族および/または脂環族の炭化水素ジオ−ルから得られ
るポリカ−ボネ−トジオ−ルをジオール成分の少なくと
も一成分として得られるポリエステルポリカ−ボネ−ト
ジオ−ルを用いるポリウレタン樹脂組成物が機械的強度
及び耐加水分解性などに優れることが記載されている。
しかしながらこのポリウレタンを湿式凝固させることに
ついては記載されていない。天然皮革様のシートを製造
する上で、皮革様シートに柔軟性を付与するために、基
体層として複数のポリマーからなる繊維の不織布を用
い、この基体層にポリウレタンを付与したのち、繊維構
成ポリマーの少なくとも一つのポリマーをトルエンで抽
出除去する方法が用いられるが、この公報記載のポリウ
レタン樹脂を湿式凝固させ、ついでトルエン抽出した場
合には、良好なポーラス状態でかつ表面の平滑な多孔質
シートは得られないという欠点を有している。
【0007】特公昭48−29397号公報には、ジプ
ロピレングリコ−ルを含む混合ジオールから得られるポ
リエステルジオ−ルから合成されたポリウレタンは湿式
凝固性と耐加水分解性がともに良好であることが記載さ
れている。しかしながらジプロピレングリコール系ポリ
エステルジオールからなるポリウレタンは、高度な耐久
性を有していない。また同公報には、ポリネオペンチル
アジペ−ト、ポリヘキセンアジペ−ト、ポリブチレンセ
バケ−ト、ポリヘキセンネオペンチルアジペ−ト、ポリ
ヘキセンセバケ−ト等のポリエステルジオールを用いた
ポリウレタンは耐加水分解性に優れるが、湿式凝固性が
不良であるが、ポリエチレンアジペートやポリブチレン
アジペート、ポリジエチレンアジペート等のポリエステ
ルジオールを用いたポリウレタンは湿式凝固性が良好で
あるが耐加水分解性に劣ること、すなわち耐久性に劣る
ことが記載されている。
【0008】また特公平3−14949号公報には、ポ
リカ−ボネ−ト系ポリウレタンが含浸され、湿式凝固処
理による微多孔質体を形成している繊維基材が示されて
いる。しかしながらこの方法で得られる微多孔質体は、
到底良好なポーラス状態であるとは言えない。現にこの
公報に記載されている方法では、良好な微多孔状態が要
求される表面層には、上記ポリカーボネート系ポリウレ
タンを湿式凝固して得られる多孔質シートは用いられて
いない。
【0009】さらに特開平3−244619号公報に
は、ポリカーボネートポリオールと脂環式ポリイソシア
ネートと芳香族ポリイソシアネートとを反応せしめるこ
とを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法が記載され
ており、特にポリカーボネートポリオールがポリヘキサ
メチレンカーボネートジオールで、脂環式ポリイソシア
ネートがジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、芳
香族ポリイソシアネートがジフェニルメタンジイソシア
ネートである場合には、機械的性質、耐加水分解性、耐
光性、耐汗性の点で優れたものが得られることが記載さ
れている。しかしながら、この方法で得られるポリウレ
タンは上記したように、湿式凝固性が悪く、湿式凝固に
より得られるシートは微多孔状態を有しておらず、柔軟
なシートとはなり得ない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】この様にソフトセグメ
ントとしてポリエチレンアジペ−トなどの特定のポリエ
ステルジオ−ルを用いた時は湿式凝固性は良好で平滑な
面を得ることができるが、耐久性が不良であり、またソ
フトセグメントにポリカ−ボネ−トジオ−ルとかポリエ
−テルジオ−ルなどを用いた時は湿式凝固性などの工程
通過性が悪く、湿式凝固により多孔質シートを製造する
技術分野には利用し得ないものであった。さらに従来の
技術では、良好な柔軟な多孔質シートが得られたとして
も、低温条件下柔軟性が損なわれるものであった。さら
に、得られた多孔質シートをエンボス処理する際のエン
ボス性などの加工性においても必ずしも満足できるもの
ではない。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、湿式凝
固性などが良好で、かつエンボス性に優れ、さらに耐久
性、柔軟性、特に低温条件下での柔軟性に優れた多孔質
シ−ト状物を提供することにある。本発明は、下記化学
式(I)で表される構造単位よりなる連鎖、下記化学式(I
I)で表される構造単位よりなる連鎖および下記化学式(I
II)で表される構造単位よりなる連鎖を同一又は異なる
ソフトセグメント内に有し、 −O−R1−O−CO−O− (I) −O−R2−O−CO−R3−CO− (II) −(O−CH2CHR52−O−CO−R4−CO− (III) かつ、上記化学式(I)と(II)と(III)の構造単位の合計
個数に対する上記化学式(I)、(II)及び(III)の構造単
位のそれぞれの個数の割合が0.1〜0.8、0.05〜
0.7及び0.05〜0.8であるソフトセグメント成
分、並びに芳香族ジイソシアネート成分とエチレングリ
コールまたは1,4−ブタンジオール成分よりなる連鎖
を有するハードセグメント成分よりなるポリウレタンか
らなる多孔質シートである。(但し、上記式中、R1
分岐を有していてもよい炭素数5又は6の炭化水素基、
2はテトラメチレン基、R3およびR4は同一又は異な
る炭素数4〜8のアルキレン基、R5は水素原子または
メチル基を意味する。)
【0012】また本発明は、このようなポリウレタンの
溶液を支持面上に塗布した後、湿式凝固して得られる多
孔質シートを支持面から剥離する多孔質シートの製造方
法、およびこのようなポリウレタンの溶液を繊維構造体
に含浸および/または塗布した後、湿式凝固する多孔質
シートの製造方法である。
【0013】本発明は、このような構成を有しているこ
とにより、上記したような目的が達成されることとなる
が、単に上記化学式(I),(II)および(III)をそ
れぞれ有する別々のポリウレタンをそれぞれ湿式凝固し
て得られる多孔質シートを相加平均して予想される効果
よりもはるかに優れた効果が得られており、しかも公知
の事項から予想されない低温条件下での柔軟性やエンボ
ス性も満足している。すなわち、一般に、耐久性に優れ
るが湿式凝固性に劣るポリウレタンと湿式凝固性に優れ
るが耐久性に劣るポリウレタンを混合使用すると、両ポ
リウレタンの平均的な耐久性と湿式凝固性を有するポリ
ウレタンが得られることとなるが、本発明の場合には、
予想される平均的な性能からははるかに優れた性能が得
られる。このことより、上記化学式(I)、(II)及び
(III)の構造単位よりなる連鎖が相互に作用しあっ
て、本来ならば混合されていることにより性能が低下す
るのを防いでいるものと思われる。
【0014】上記化学式(I)で表される構造単位よりな
る連鎖としては、具体的には、1,6−ヘキサンジオー
ル、3−メチル−1,5−ペンタンジオール又は1,5
−ペンタンジオール等をカーボネート結合で連結したも
のであり、すなわちポリヘキサメチレンカーボネートジ
オール、ポリメチルペンタンカーボネートジオール、ポ
リペンタメチレンカーボネートジオール等が挙げられ
る。なかでも、1,6−ヘキサンジオールをカーボネー
ト結合で連結したものが好ましい。上記化学式(I)で表
される構造単位よりなる連鎖を有する高分子ジオール
は、例えば1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−
1,5−ペンタンジオール若しくは1,5−ペンタンジ
オールと炭酸ジアリ−ル若しくは炭酸ジアルキルとを減
圧反応することにより、又は1,6−ヘキサンジオー
ル、3−メチル−1,5−ペンタンジオール若しくは
1,5−ペンタンジオールと環状のアルキレンカーボネ
ートを減圧反応することにより得られる。上記炭酸ジア
リ−ルとしてはジフェニルカーボネートが、また炭酸ジ
アルキルとしてはジメチルカーボネートやジエチルカー
ボネートが、また環状のアルキレンカーボネートとして
はエチレンカーボネート等が挙げられる。R1で表され
る基が炭素数5〜6の炭化水素基でない場合には本発明
の目的を達成できず、たとえばノナメチレン基などの場
合には凝固性が充分でなく、湿式凝固後に平滑な多孔質
シートが得られない。
【0015】上記化学式(II)で表される構造単位の具
体例としては、テトラメチレンアジペートやテトラメチ
レンセバケートがあげられる。これらの連鎖は、テトラ
メチレングリコールとアジピン酸、又はテトラメチレン
グリコールとセバチン酸を縮合重合することにより得ら
れる。上記化学式(II)で表される構造単位よりなる連鎖
において、R2がテトラメチレン基でない場合には、前
記した低温条件下での柔軟性が得られないとか、平滑な
多孔質シートが得られないという欠点が生じる。またR
3で表される基が炭素数4〜8のアルキレン基でない場
合にも、柔軟性が充分でないとか、平滑な多孔質シート
が得られないという欠点が生じる。なかでもテトラメチ
レンアジペートが好ましい。
【0016】上記化学式(III)で表される構造単位の具
体例としては、ジエチレンアジペート、ジプロピレンア
ジペート、ジエチレンセバケート、ジプロピレンセバケ
ートが挙げられる。これらの構造単位よりなる連鎖は、
ジエチレングリコールとアジピン酸又はセバチン酸、ジ
プロピレングリコールとアジピン酸又はセバチン酸を縮
合重合することにより得られる。もちろんジエチレング
リコールとジプロピレングリコールは混合して用いても
よい。上記化学式(III)で表される構造単位よりなる
連鎖において、−(O−CH2CHR52−O−で表さ
れる基が存在しない場合には、平滑な多孔質シートが得
られず、またR4で表される基が炭素数4〜8のアルキ
レン基でない場合にも、平滑な多孔質シートが得られな
いという欠点が生じる。なかでもジエチレンアジペート
とジプロピレンアジペートが好ましい。本発明におい
て、上記したような構造単位(I)、(II)および(II
I)の連結数としては1以上である。
【0017】本発明に用いられるポリウレタンを得る代
表的な方法としては、以下の3通りの方法が挙げられ
る。 同一分子内に、前記化学式(I)の構造単位よりな
る連鎖と(II)の構造単位よりなる連鎖と(III)の構
造単位よりなる連鎖を有する高分子ジオールを合成し、
この高分子ジオールとジイソシアネート化合物と鎖伸長
剤を反応させてポリウレタンを得る方法。 分子内に、前記化学式(I)の構造単位よりなる連
鎖を有する高分子ジオール、前記化学式(II)の構造単
位よりなる連鎖を有する高分子ジオール及び前記化学式
(III)の構造単位を有する連鎖を有する高分子ジオー
ルを混合し、この混合ジオールとジイソシアネート化合
物と鎖伸長剤を反応させてポリウレタンを得る方法。 前記化学式(I)の構造単位よりなる連鎖を有する
高分子ジオールとジイソシアネート化合物と鎖伸長剤を
反応させて得られるポリウレタンと、前記化学式(II)
の構造単位よりなる連鎖を有する高分子ジオールとジイ
ソシアネート化合物と鎖伸長剤を反応させて得られるポ
リウレタンと、前記化学式(III)の構造単位よりなる
連鎖を有する高分子ジオールとジイソシアネート化合物
と鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタンを混合し
て得る方法。
【0018】なかでも上記の方法が、さらには同一分
子内に前記化学式(I)、(II)及び(III)の連鎖を
有し、かつ下記化学式(IV)と(V)の構造単位よりな
る連鎖を有する高分子ジオールを合成し、この高分子ジ
オールとジイソシアネート化合物と鎖伸長剤を反応させ
てポリウレタンを得る方法がより好ましい。 −O−R2−O−CO−O− (IV) −(O−CH2CHR52−O−CO−O− (V) (但し、R2及びR5に関しては、前記と同一の意味を有
する) この時、[(IV)+(V)]/[(II)+(III)+(I
V)+(V)]が0.05〜0.8、特に0.1〜0.6の
範囲が好適である。
【0019】本発明においては上記 〜 の方法以外
の方法、例えば上記と上記とを併用したような方
法、例えば前記化学式(II)の構造単位よりなる連鎖と
(III)の構造単位よりなる連鎖を同一分子内に有する
高分子ジオールと、前記化学式(I)の構造単位よりな
る連鎖を有する高分子ジオールを混合し、この混合ジオ
ールとジイソシアネート化合物と鎖伸長剤を反応させて
ポリウレタンを得る方法などでもよい。
【0020】なかでも、前記化学式(I)、(II)およ
び(III)の構造単位よりなる連鎖が相互作用し合うこ
とによる効果が大きく期待できる前記 の方法が特に
好ましく、次に好ましい方法が前記との方法を併用
する方法であり、その次に好ましい方法が前記の方法
である。前記 の方法の場合には、同一ソフトセグメ
ント内に、前記化学式(I)で表される構造単位、(I
I)で表される構造単位および(III)で表される構造単
位が存在することとなる。また前記 の方法の場合に
は、同一ソフトセグメント内には前記化学式(I)、
(II)及び(III)で表される構造単位のうちのいずれ
かひとつしか存在することとなるが、同一ポリウレタン
分子内には通常は共に存在することととなる。前記
の方法の場合には、同一ポリウレタン分子内には前記化
学式(I)、(II)および(III)で表される構造単位
の内のひとつしか存在しないこととなる。本発明でいう
ポリウレタンとは、前記 の方法により得られるよう
な、2種以上のポリウレタンを単に混合しただけの混合
物も包含している。
【0021】本発明において、前記化学式(I)と(I
I)と(III)の構造単位の合計個数に対する上記化学式
(I)、(II)及び(III)の構造単位のそれぞれの個数
の割合[以下この割合をそれぞれ(I)/{(I)+
(II)+(III)}、(II)/{(I)+(II)+(II
I)}、(III)/{(I)+(II)+(III)}と記載
する]が0.1〜0.8、0.05〜0.7及び0.05〜
0.8である必要がある。ここで言う構造単位の個数と
は、ポリウレタンに存在している上記化学式(I)、
(II)、(III)の構造単位をそれぞれ1分子とした場
合の、(I)と(II)と(III)の合計分子数に対する
(I)、(II)および(III)のそれぞれの分子数の割
合を意味している。
【0022】化学式(I)で表される構造単位の割合、
すなわち、(I)/{(I)+(II)+(III)}が
0.1未満の場合には、耐久性に優れた多孔質シートは
得られず、逆に0.8を越える場合には、良好なポーラ
ス状態の平滑で柔軟な多孔質シートは得られず、さらに
エンボス性が悪化することとなる。好ましくは(I)/
{(I)+(II)+(III)}が0.2〜0.7の範囲内
であり、さらに好ましくは、0.25〜0.6の範囲内で
ある。
【0023】また化学式(II)で表される構造単位の割
合、すなわち、(II)/{(I)+(II)+(III)}
が0.05未満の場合には、良好なポーラス状態の多孔
質シートは得られずに表面が凹凸を有している欠点が生
じる。逆に0.7を越える場合には、耐久性に欠けると
か低温下での柔軟性に劣る等の問題が生じる。好ましく
は0.07〜0.65の範囲内であり、より好ましくは
0.1〜0.6の範囲内である。
【0024】さらに化学式(III)の構造単位の割合、
すなわち、(III)/{(I)+(II)+(III)}は、
前記したように0.05〜0.8の範囲内であり、0.0
5未満の場合には、低温下での柔軟性に劣ることとな
る。本発明の多孔質シートは、前記したように、皮革様
シートの基体層や表面層に用いられるものであり、皮革
様シートは靴やカバンに加工されることとなるが、低温
下での柔軟性に劣る場合には、低温下での靴としての履
きごこちが悪化したり、場合によっては、多孔質シート
に亀裂や割れが生じることとなる。逆に0.8を越える
場合には、耐久性などで劣ることとなる。好ましくは
0.07〜0.7の範囲内であり、より好ましくは0.1
〜0.6の範囲内である。
【0025】なお、上記した の方法の場合、すなわ
ち高分子ジオールの段階で(I)と(II)と(III)の
構造単位よりなる連鎖が共重合されたものである場合に
は、(I)の構造単位と(II)の構造単位と(III)の
構造単位の間で高分子ジオールの合成時に交換反応を生
じて、得られる高分子ジオール中の(I)と(II)と
(III)との比率は、原料として使用した(I)と(I
I)と(III)の構造単位の割合とは異なることがある。
したがって得られた高分子ジオールをNMR分析して、
(I)と(II)と(III)の構造単位のそれぞれの割合
を求めることが重要である。そして、交換反応が起こる
ことにより、前記した構造単位(IV)と(V)が生成す
ることとなる。交換反応の程度は合成時の温度や時間を
調整することにより、変えることができる。一方、上記
やの方法のように、ポリウレタンを合成する段階で
或いは合成した後に高分子ジオールを混合する方法の場
合には交換反応は実質的に起こらず、使用した原料高分
子ジオール中の(I)と(II)と(III)の構造単位の
比率が得られるポリウレタンでもほぼ保たれることとな
る。
【0026】本発明のポリウレタンに用いられる前記化
学式(I)、(II)及び(III)の構造単位を同一又は
異なる分子内に含有する高分子ジオールの数平均分子量
は700〜4000であることが好ましく、より好適に
は1000〜2500の範囲内である。700未満であ
ると、皮革様シ−トに用いた場合に、得られる皮革様シ
ートの柔軟性が失なわれるとか、風合いが低下したもの
となりやすい。また、4000を超えたものは、必然的
にウレタン基濃度が減少するためか、風合い、柔軟性、
耐寒性、耐熱性、耐久性のバランスのとれた多孔質シ−
トが得にくいのみならず、該高分子ジオ−ルの工業的製
造も困難となる。
【0027】本発明に用いられるポリウレタンは、ソフ
トセグメントとしては上記の(I),(II)および(II
I)の構造単位よりなる連鎖を含有するものであるが、
本発明を損なわない範囲で、(I)、(II)及び(II
I)の構造単位を含有しない、通常のポリウレタンに用
いられる高分子ジオ−ルを配合、使用することは何らさ
しつかえない。その様なものとしてポリエステルジオ−
ル、ポリエ−テルジオ−ル、ポリラクトンジオ−ル、ポ
リカーボネートジオールなどが挙げられる。また、前記
した(I)、(II)及び(III)の構造単位の少なくと
もひとつを有する高分子ジオールは、本発明を損なわな
い範囲で(I)、(II)及び(III)以外の構造単位を
有していてもよく、そのような構造単位としては、
(I)、(II)及び(III)の構造単位以外の、ポリエ
ステル連鎖、ポリエーテル連鎖、ポリカーボネート連
鎖、ポリラクトン連鎖などが挙げられる。
【0028】本発明に用いられるジイソシアネート化合
物としては、前記したように芳香族ジイソシアネ−トで
あり、たとえば、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソ
シアネ−ト、2,4−または2,6−トリレンジイソシア
ネ−ト、メタまたはパラフェニレンジイソシアネ−ト、
1,5−ナフチレンジイソシアネ−トなどが挙げられ
る。なかでもジフェニルメタン−4,4’−ジイソシア
ネ−トの場合が工程通過性、得られた多孔質シ−トの表
面性、風合い、耐久性がより一層良好となるので好まし
い。ジイソシアネート化合物が脂肪族又は脂環族の化合
物の場合には、湿式凝固性、トルエン抽出時のポーラス
安定性が充分でなく、平滑な多孔質シートが得られな
い。もちろん本発明の目的を損なわない範囲内で芳香族
ジイソシアネート以外のジイソシアネート化合物を併用
することも可能である。
【0029】ジイソシアネ−ト化合物の使用量に関して
はとくに制限はないが、ポリウレタンの溶液の粘度、高
分子ジオ−ルの分子量、反応溶媒、高分子ジオ−ルや鎖
伸長剤中に含まれる水分などによっても異なるが、通常
は、ジイソシアネート化合物のNCO基当量の、高分子
ジオ−ルの末端水酸基と鎖伸長剤として用いられるエチ
レングリコールもしくはブチレングリコールの水酸基の
合計当量に対する比(NCO/OH)が0.95〜1.2
となる量が好ましく、とりわけ0.97〜1.1の範囲が
好ましい。
【0030】鎖伸長剤としては、エチレングリコール又
は1,4−ブタンジオールが、トルエン抽出時の安定性
の点で用いられる。これ以外の鎖伸長剤の場合、たとえ
ばプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール等
の低分子ジオールやエチレンジアミン、ヘキサメチレン
ジアミン等の低分子ジアミンの場合には、本発明の目的
は達成されない。もちろん本発明の目的を損なわない範
囲内であるならば、エチレングリコール及び1,4−ブ
タンジオール以外の低分子ジオールを併用してもよい。
鎖伸長剤の使用量としては特に制限がないが、上記した
ように、高分子ジオールとの合計量でジイソシアネート
化合物に対して(NCO/OH)比が0.95〜1.2
となる範囲内が好ましく、さらに高分子ジオールの末端
水酸基数に対して鎖伸長剤の水酸基数が1〜7となる範
囲内が柔軟性及び湿式凝固性の点で好ましい。
【0031】ポリウレタンの重合方法については、溶融
重合法、溶液重合法、塊状重合法などの公知の重合法の
いずれで行うこともできるが、多孔質シート状物の製造
に当たって溶液状で使用するためには溶剤への溶解性の
点から溶液重合法であることが好ましい。また、重合時
に触媒は必ずしも必要ではないが、通常ポリウレタンの
製造に用いられる触媒類、例えばチタンテトライソプロ
ポキサイド、ジブチルスズジラウレ−ト、スズオクテ−
トなどの金属化合物、テトラメチルブタンジアミン、
1、4−ジアザ(2,2,2)ビシクロオクタンなどの
三級アミンなどを用いることができる。
【0032】ポリウレタンの溶剤あるいは上記溶液重合
用の溶剤としては、たとえばジメチルホルムアミド、ジ
メチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、トルエ
ン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフ
ランなどの通常のポリウレタンの溶剤として用いられて
いる溶剤が使用される。なかでもジメチルホルムアミド
が柔軟で良好なポーラス状の多孔質シートを得る上で特
に好ましい。ポリウレタン溶液中のポリウレタンの濃度
としては5〜50重量%が好ましい。
【0033】このような方法で得られたポリウレタン
に、使用にあたって従来のポリウレタンに使用される各
種添加剤、例えばリン系化合物、ハロゲン含有化合物な
どの難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑
剤、界面活性剤などを添加することができる。
【0034】この様にして得られたポリウレタン溶液
は、離型性シートに塗布したり、繊維基材に含浸および
/または塗布して凝固して多孔質シートに加工するが、
本発明のポリウレタンは湿式凝固性が良好なことから、
湿式凝固法が好ましい。湿式凝固法に特に制限はなく人
工皮革業界で通常行われる方法を適用でき、たとえば、
ポリウレタン濃度が10〜30重量%の組成液を使用し
て実質的にポリウレタンの溶媒と水の混合重量比が55
/45〜0/100、温度20〜55℃の水溶液中に投
入して凝固させることができる。
【0035】ポリウレタン溶液が含浸および/または塗
布される繊維構造体を構成する繊維としては特に制限は
ないが、通常の繊維、例えば木綿、麻、羊毛等の天然繊
維、レーヨンやアセテート等の再生繊維または半合成繊
維、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリ
ル、ビニロン等の合成繊維が挙げられる。合成繊維の場
合には単独紡糸繊維はもちろんのこと、混合紡糸繊維や
複合紡糸繊維であってもよい。
【0036】混合紡糸繊維や複合紡糸繊維が用いられる
場合には、該繊維を構成している複数のポリマーのうち
から少なくとも一つのポリマーを皮革様シートを製造す
る任意の段階で抽出または分解除去するのが好ましい。
抽出除去することにより繊維構造体がしなやかとなり、
そのようなしなやかな繊維構造体からなる皮革様シート
もしなやかな高級感を有するものとなる。特に抽出除去
または分解除去することにより、繊維の平均繊度が0.
00005〜0.3デニールの極細繊維の束となるよう
な場合には、表面に立毛繊維を有するいわゆるスエード
調の皮革様シートとすると、表面に極細繊維の立毛を有
することとなり、高級感のある皮革様シートが得られ
る。また同様に上記極細繊維の束となるような場合に
は、表面に被覆層を有するいわゆる銀面層付きの皮革様
シートとすると、表面平滑性に優れた、高級感を有する
ものとなるため好ましい。
【0037】このような極細繊維束発生型繊維は、極細
繊維成分と抽出除去または分解除去(以下抽出除去と分
解除去を併せて抽出除去と称す)成分とを混合紡糸また
は複合紡糸することにより得られる。極細繊維成分とし
ては、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレ
フタレ−トなどのポリエステル類、6−ナイロン、6,
6−ナイロンなどのポリアミド類、ポリプロピレンで代
表されるポリオレフィン類などが挙げられ、一方、抽出
除去成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エ
チレン−プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重
合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレ
ン−α−オレフィン共重合体、ポリスチレン、スチレン
−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体
の水添物、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−
ブタジエン共重合体の水添物、ポリウレタンなどが挙げ
られる。
【0038】この場合、極細繊維成分となるポリマーと
抽出除去成分となるポリマーは、後者の方が溶剤あるい
は分解剤に対する溶解性あるいは分解性が高く、かつ両
者は親和性が低く、さらに紡糸条件下で後者の方が前者
よりも紡糸条件下で小さい溶融粘度を有することとなる
組み合わせが好ましい。極細繊維の太さとしては平均で
0.00005〜1デニ−ルが好ましく、より好ましく
は0.0005〜0.3デニールである。
【0039】極細繊維発生型繊維を製造する方法に関し
ては特に制限はなく、例えば、極細繊維成分となるポリ
マーと抽出除去成分となるポリマーを所定の混合比で混
合し、同一溶融系で溶融して混合流を形成してこれを紡
糸する方法、また別々の溶融系で溶融し、紡糸機ヘッド
部で接合−分割を複数回繰り返して混合流を形成してこ
れを紡糸する方法、さらには別々の溶融系で溶融し、紡
糸機口金部で合流してこれを紡糸する方法等により製造
される。極細繊維成分となるポリマー成分と抽出除去成
分となるポリマーは親和性を有していないことより、両
ポリマーは繊維断面において、海島状(極細繊維成分が
島成分となる)や多層積層状に分離した状態で存在する
こととなる。特に繊維中に占める極細繊維成分となるポ
リマーが40〜80重量%であって、繊維断面に存在す
る極細繊維成分の本数が5本以上、好ましくは50〜8
00本の範囲にある極細繊維発生型繊維が好ましい。極
細繊維発生型繊維は必要により、延伸、熱固定など通常
の繊維の処理工程を経て極細繊維とする。
【0040】また上記したような極細繊維発生型繊維と
海島が逆転したような繊維、すなわち抽出除去成分ポリ
マーが島成分となっている海島繊維を製造し、この繊維
から島成分を抽出し、レンコン状の多孔中空繊維とする
こともできる。このような繊維からも島成分を抽出除去
することによりしなやかな天然皮革に類似した柔軟性を
有する皮革様シートが得られる。
【0041】繊維構造体としては、織物や編物あるいは
不織布が用いられるが、均一な立毛の形成しやすさ、被
覆層を形成するときの表面平滑性などの点から不織布、
特に3次元絡合不織布が好ましい。不織布には必要に応
じて補強用などの編織物を内部に積層したものであって
もよい。
【0042】繊維構造体として不織布をもちいる場合に
は、不織布は、上記したような繊維をカ−ドで解繊し、
ウエバ−を通してランダムウエブまたはクロスラップウ
エブを形成し、得られた繊維ウエブを所望の重さ、厚さ
に積層し、ついで繊維ウエブに、ニ−ドルパンチ、ウオ
−タ−ジェット、エア−ジェット等により繊維の絡合処
理を施すことにより得られる。
【0043】このような繊維構造体に、上記のようにし
て得られたポリウレタンの溶液に、必要に応じて凝固調
節剤、離型剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、耐光防止
剤、着色剤等を加えたのち、このポリウレタン溶液を含
浸および/または塗布し、湿式凝固する。
【0044】極細繊維発生型繊維あるいは蓮根型繊維発
生繊維の場合は、繊維絡合不織布へポリウレタン溶液を
含浸・塗布するに先だって、あるいは含浸・塗布した
後、繊維を構成する抽出除去成分を抽出除去して極細繊
維の束あるいは蓮根状多孔中空繊維にする。
【0045】繊維構造体とポリウレタンよりなるシ−ト
状物に占めるポリウレタンの量は特に制限はないが、重
量分率で10〜60%、なかでも15〜45%が皮革様
シート状物を得る上で好ましい。ポリウレタンの使用量
が少ないと腰のない風合いとなり、特に10%未満であ
るとそれが顕著となる。ポリウレタンの量が多いと硬く
なったり、膨らみのない風合いとなり易く、特に60%
を超えて用いられるとその傾向が顕著となる。
【0046】このようにポリウレタンを含浸して凝固さ
せた繊維構造体に、必要に応じて表面に上記ポリウレタ
ンより得た多孔質を付与したのち、無孔質の被覆層を付
与し、またポリウレタンを含浸・塗布したのち凝固させ
た繊維構造体の場合には、必要により無孔質の被覆層を
付与する。そしてさらにエンボス処理して天然皮革に類
似した表面シボを付与することにより銀面付皮革様シ−
トとすることができる。
【0047】また本発明の多孔質シ−トは、上記したよ
うに、繊維構造体に直接にポリウレタン溶液を含浸・塗
布する方法の外に、ポリウレタン溶液をポリエチレンシ
ートのような支持面上に塗布した後、湿式凝固して得ら
れる多孔質シートを支持面から剥離し、その後にこの多
孔質シートを繊維構造体上に貼り合わせる方法を用いて
もよい。貼り合わせた多孔質シートの表面をエンボス処
理して天然皮革に類似した表面シボを付与することによ
り銀面付皮革様シ−トとすることができる。
【0048】また前記した、ポリウレタンを含浸凝固さ
せた繊維構造体の少なくとも一面を起毛処理することに
より繊維立毛スエ−ド調皮革様シ−トとすることができ
る。また、要すれば任意の段階で厚さ方向に任意の厚さ
にスライス分割することもできる。本発明の多孔質シー
トが、繊維構造体にポリウレタンを含浸して凝固させた
ものである場合には、多孔質シートの厚さとしては、ス
ライスしたのちで0.2〜3mmが好ましい。また繊維
構造体上に塗布して凝固させる場合や支持体上で凝固さ
せる場合には、多孔質シートの厚さは0.05〜0.5m
mで、密度としては0.3〜0.5g/cm3が好まし
い。
【0049】なお、ポリウレタンの湿式凝固性の評価法
としては、たとえば、ポリウレタン濃度10〜30重量
%の溶液をポリエチレンシ−トなどの離型性基材上に塗
布し、これを湿式凝固させ、得られるポリウレタン被膜
層を該基材より剥離することにより得られる多孔質シ−
トの表面の平滑性、塗布したポリウレタン溶液の厚みに
対する凝固後のシートの厚みの割合(以下この割合を厚
みの保持率と称す)、多孔質シートの断面に観察される
気孔の均整度などにより評価することができる。表面の
平滑性、厚みの割合、気孔の大きさはポリウレタン溶液
の濃度、凝固浴の温度や濃度などによっても異なるが、
厚みの保持率が40〜70%の範囲にあり、同一条件下
で凝固時の表面の平滑性と気孔の均整度が高いほど凝固
性の良好なポリウレタンであると判断される。すなわ
ち、凝固性の悪いポリウレタンでは凝固時に著しく収縮
したり、凝固が不均一に進むため表面の平滑性が損なわ
れ、気孔の大きさや分布が不均一となりやすい。
【0050】この様にして得られた本発明の多孔質シ−
トは、湿式凝固性およびエンボス性に優れているため皮
革様シートの基体層に含浸させる樹脂として、あるいは
表面被覆層として好適に用いることができ、このような
皮革様シートは、さらに耐久性、柔軟性、特に低温条件
下での柔軟性、表面平滑性及び風合いに優れているた
め、衣料、靴、鞄、家具、車両用内装材、雑貨など各種
用途に有用である。このようなすばらしい性能は、特定
構造のポリウレタンを用いたことにより得られたもので
ある。
【0051】
【実施例】以下に実施例をもって本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。 実施例1 前記化学式(I)で表される構造単位よりなる連鎖とし
て、分子量2000のポリヘキサメチレンカ−ボネ−ト
ジオ−ルを400重量部、前記化学式(III)で表され
る構造単位よりなる連鎖として分子量2000のポリジ
エチレンアジペ−トジオ−ルを200重量部、前記化学
式(II)で表される構造単位よりなる連鎖として分子量
2000のポリテトラメチレンアジペ−トジオ−ルを4
00重量部、鎖伸長剤としてエチレングリコ−ルを12
4.1重量部、ジイソシアネート化合物としてジフェニ
ルメタン−4,4’−ジイソシアネ−トを638.2重
量部および反応溶媒としてジメチルホルムアミド(DM
Fと略す)を5290重量部を用い、これらを反応器に
投入し、窒素気流下に反応させ、固形分濃度25%、粘
度413ポイズ(30℃)で、かつ(I)/{(I)+
(II)+(III)}、(II)/{(I)+(II)+(II
I)}及び(III)/{(I)+(II)+(III)}がそ
れぞれ0.49、0.35及び0.16であるポリウレタ
ン溶液(A)を得た。
【0052】このポリウレタン溶液(A)を用い、下記
のポリウレタン組成液(A−1)および(A−2)を得
た。 ポリウレタン組成液(A−1) ポリウレタン溶液(A) 720 重量部 ソルビタンモノステアレ−ト 10.8重量部 ステアリルアルコ−ル 5.4重量部 黒顔料 2.0重量部 DMF 261.8重量部 計 1000.0重量部 ポリウレタン組成液(A−2) ポリウレタン溶液(A) 480 重量部 クリスボンアシスタ−SD−14 5 重量部 (大日本インキ社製、商標) 黒顔料 2 重量部 DMF 513 重量部 計 1000 重量部
【0053】3デニ−ルのナイロン6/ポリスチレン
(重量比:45/55,島成分がポリスチレン)混合紡
糸繊維からなる重量400g/m2、厚さ2.5mmの三次
元化絡合不織布にポリビニルアルコ−ル水溶液を含浸し
て乾燥処理し厚さ2.1mmに圧縮固定し、さらに表面を
バフ掛けにより平滑にした厚さ1.7〜1.8mmの加工
不織布に、上記ポリウレタン組成液(A−1)を不織布
重量の4.4倍量含浸させ、表面を平滑にならした。次
に、ポリウレタン組成液(A−2)を80g/m2塗布
し、45℃の40重量%DMF含有水溶液に30分間浸
漬処理して含浸層および塗布層の両者を凝固させた。
【0054】次いで、50℃〜60℃の温水に約2時間
浸責し、充分に脱溶媒洗浄(DMF除去)を行ったの
ち、さらに80℃の温水中で1時間に搾液、浸責を6回
繰返し、不織布の固定に用いたポリビニルアルコ−ルを
溶出除去した。80℃で熱風乾燥を行い、乾燥後のシ−
ト状物の裏面を切落とし、厚さを1.5〜1.6mmとし
たのち、80℃に加温したトルエン中に浸責して、不織
布に用いたナイロン6−ポリスチレン混合紡糸繊維中の
ポリスチレンを抽出除去して繊維を蓮根型の多孔中空繊
維としたのち、水蒸気蒸留をかけて基質中に含まれたト
ルエンを追出し、100℃で熱して乾燥を行った。
【0055】得られたシ−トは含浸層および塗布層共に
柔軟でかつ腰のある風合いを有し、ポリウレタンは大き
さの揃った気孔を有する極めてポーラスな状態となって
いた。特に表面コ−ティング層の厚みの保持率は49%
と良好であり、かつ平滑であった。得られたシ−トを7
0℃相対湿度95%の雰囲気下に、8週間暴露したが、
外観上の変化はみられず、平滑な表面かつ良好な風合い
であった。また−5℃の条件下で該シ−トを引っ張った
り、曲げたりしたところ、常温状態での柔軟性と殆ど変
化なく、低温条件下でも、極めて柔軟でありことが分か
った。またこのシートのコーティング層側を天然皮革様
の凹凸模様を有するエンボスロールに熱圧着したとこ
ろ、該コーティング層表面には、凹凸模様が鮮明に付与
されており、極めて天然皮革に類似した柔軟性、風合い
及び外観を有しており、工業的利用価値の大きいもので
あった。
【0056】比較例1 分子量2000のポリヘキサメチレンカ−ボネ−トジオ
−ル500重量部、分子量2000のポリテトラメチレ
ンアジペ−トジオ−ル500重量部、エチレングリコ−
ル124.1重量部、ジフェニルメタン−4,4'−ジ
イソシアネ−ト640.1重量部およびDMF5290
重量部を反応器に投入し、窒素気流下に反応させ、固形
分濃度25%、粘度420ポイズ(30℃)のポリウレ
タン溶液(B)を得た。このポリウレタンでは本発明で
規定する化学式(III)の構造単位よりなる連鎖を有し
ていない。ポリウレタン溶液(A)に代えてポリウレタ
ン溶液(B)を用いる以外は実施例1と同様にしてポリ
ウレタン組成液(B−1)および(B−2)を得、つづ
いて加工不織布に含浸、塗布、凝固、トルエン抽出して
シ−トを得た。得られたシ−トのコ−ト層厚みの保持率
は36%と低く表面に無数の凸凹があり、気孔の大きさ
も極めて不揃いであり、含浸層を含めて風合いも硬め
で、工業的には価値の低いものであった。このシートに
上記実施例1と同様にエンボス模様を付与したところ、
エンボス模様がきつく入った部分と殆ど入っていない部
分が不均一なまだら状態で存在しており、天然皮革調の
外観を有しているとは言えなかった。
【0057】比較例2 分子量2000のポリジエチレンアジペ−トジオ−ル3
33重量部、分子量2000のポリテトラメチレンアジ
ペ−トジオ−ル667重量部、エチレングリコ−ル12
4.1重量部、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシ
アネ−ト629重量部およびDMF5290重量部を反
応器に投入し、窒素気流下に反応させ、固形分濃度25
%、粘度400ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液
(C)を得た。このポリウレタンでは、本発明で規定す
る化学式(I)で表される構造単位よりなる連鎖を有し
ていない。前記ポリウレタン溶液(A)に代えてポリウ
レタン溶液(C)を用いる以外は実施例1と同様にして
ポリウレタン組成液(C−1)および(C−2)を得、
つづいて加工不織布に含浸、塗布、凝固、トルエン抽出
を行いシ−トを得た。得られたシ−トのコ−ト層厚みの
保持率は51%であり平滑な表面を有し、風合いも含浸
層及びコート層共に良好であったが、70℃相対湿度9
5%の雰囲気下に5週間暴露した所、コート層表面に無
数の亀裂が発生しており、耐久性が極めて不充分であ
り、耐久性が要求されるカバンや靴等の人工皮革として
は、大きな問題を有しており、工業的には利用価値の低
いものであった。
【0058】比較例3 分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオ
−ル 500重量部、分子量2000のポリジエチレン
アジペ−トジオ−ル500重量部、エチレングリコ−ル
124.1重量部、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソ
シアネ−ト642重量部およびDMF5290重量部を
反応器に投入し、窒素気流下に反応させ、固形分濃度2
5%、粘度400ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液
(D)を得た。このポリウレタンでは、本発明で規定す
る化学式(II)で表される構造単位よりなる連鎖を有し
ていない。前記ポリウレタン溶液(A)に代えてポリウ
レタン溶液(D)を用いる以外は実施例1と同様にして
ポリウレタン組成液(D−1)および(D−2)を得、
つづいて加工不織布に含浸、塗布、凝固、トルエン抽出
を行いシ−トを得た。得られたシ−トのコ−ト層厚みの
保持率は51%であり平滑な表面を有し、含浸層及びコ
ート層ともに柔軟性、風合いも良好であったが、−5℃
の条件下で柔軟性が大きく損なわれ、低温条件下でも用
いられ、かつそのような条件下でも柔軟性が要求される
カバンや靴等の人工皮革としては、大きな問題を有して
おり、工業的には利用価値の低いものであった。
【0059】実施例2 高分子ジオールとして分子量2000のポリヘキサメチ
レンカ−ボネ−トジオ−ルを400重量部、分子量20
00のポリジエチレンアジペ−トジオ−ルを300重量
部、分子量2000のポリテトラメチレンアジペ−トジ
オ−ルを200重量部および分子量2000のポリテト
ラメチレングリコ−ルを100重量部を用い、鎖伸長剤
としてエチレングリコ−ルを138.7重量部、ジイソ
シアネート化合物としてジフェニルメタン−4,4'−
ジイソシアネ−トを705重量部および反応溶媒として
DMF5530重量部を用い、これらを反応器に投入
し、窒素気流下に反応させ、固形分濃度25%、粘度4
25ポイズ(30℃)で、かつ(I)/{(I)+(I
I)+(III)}、(II)/{(I)+(II)+(II
I)}及び(III)/{(I)+(II)+(III)}がそ
れぞれ0.54、0.19及び0.27であるポリウレタ
ン溶液(E)を得た。
【0060】上記ポリウレタン溶液(E)を用い下記の
ポリウレタン組成液(E−1)および(E−2)を得
た。 ポリウレタン組成液(E−1) ポリウレタン溶液(E) 560 重量部 ソルビタンモノステアレ−ト 10.8重量部 ステアリルアルコ−ル 5.4重量部 DMF 423.8重量部 計 1000.0重量部 ポリウレタン組成液(E−2) ポリウレタン溶液(E) 480 重量部 クリスボンアシスタ−SD−14 5 重量部 (大日本インキ社製凝固調節剤、商標) 酸化チタン 2.9重量部 DMF 512.1重量部 計 1000.0重量部
【0061】ポリウレタン組成液(A−1)および(A
−2)に代えて上記ポリウレタン組成液(E−1)およ
び(E−2)用いる以外は実施例1と同様にしてシ−ト
を得た。得られたシ−トは含浸層及びコート層は共に柔
軟でかつ腰のある風合いを有し、ポリウレタンは大きさ
の揃った気孔を有する極めてポーラスな状態となってい
た。表面コ−ティング層の厚みの保持率は48%と良好
であり、かつ平滑であった。得られたシ−トを70℃相
対湿度95%の雰囲気下に、8週間暴露したが、外観上
の変化はみられず、平滑な表面かつ良好な風合いであっ
た。また−5℃の条件下でも常温状態での柔軟性と殆ど
変化なく、低温条件下でも、極めて柔軟でありことが分
かった。またこのシートのコーティング層側を天然皮革
様の凹凸模様を有するエンボスロールに熱圧着したとこ
ろ、該コーティング層表面には、凹凸模様が鮮明に付与
されており、極めて天然皮革に類似した柔軟性、風合い
及び外観を有しており、工業的利用価値の大きいもので
あった。すなわち、ソフトセグメント中に本発明で規定
する化学式(I)、(II)および(III)で表される構
造単位よりなる連鎖以外の連鎖が少量存在していても、
本発明の優れた性能は殆ど損なわれないことが分かる。
【0062】比較例4 分子量2000のポリヘキサメチレンカ−ボネ−トジオ
−ル570重量部、分子量2000のポリテトラメチレ
ンアジペートジオ−ル290重量部、分子量2000の
ポリテトラメチレングリコ−ル140重量部、エチレン
グリコ−ル138.7重量部、ジフェニルメタン−4,
4'−ジイソシアネ−ト707重量部およびDMF55
35重量部を反応器に投入し、窒素気流下に反応させ、
固形分濃度25%、粘度425ポイズ(30℃)のポリ
ウレタン溶液(F)を得た。このポリウレタンでは本発
明で規定する化学式(III)で表される構造単位よりな
る連鎖を有していない。ポリウレタン溶液(E)に代え
てポリウレタン溶液(F)を用い、得られたポリウレタ
ン組成液(F−1)および(F−2)をポリウレタン組
成液(E−1)および(E−2)に代えて用いる以外は
実施例2と同様にしてシ−トを得たが、得られたシ−ト
のコ−ト層厚みの保持率は33%と低く表面に無数の凸
凹があり、含浸層とコート層は共に風合いはやや硬めで
あり、工業的には価値の低いものであった。このシート
に前記実施例1と同様にエンボス模様を付与したとこ
ろ、エンボス模様がきつく入った部分と殆ど入っていな
い部分が不均一なまだら状態で存在しており、天然皮革
調の外観を有しているとは言えなかった。
【0063】比較例5 分子量2000のポリヘキサメチレンカ−ボネ−トジオ
−ル800重量部、分子量2000のポリテトラメチレ
ングリコ−ル200重量部、エチレングリコ−ル13
8.7重量部、ジフェニルメタン−4、4'−ジイソシ
アネ−ト706重量部、DMF5530重量部を反応器
に投入し、窒素気流下に反応させ、固形分濃度25%、
粘度450ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液(G)
を得た。このポリウレタンでは本発明で規定する化学式
(II)及び化学式(III)で表される構造単位よりなる
連鎖を有していない。ポリウレタン溶液(E)に代えて
ポリウレタン溶液(G)を用い、得られたポリウレタン
組成液(G−1)および(G−2)をポリウレタン組成
液(E−1)および(E−2)に代えて用いる以外は実
施例2と同様にしてシ−トを得たが、得られたシ−トの
コ−ト層厚みの保持率は31%と低く、硬くかつ表面に
無数の凸凹があり、含浸層も硬く、工業的利用価値の低
いものであった。
【0064】実施例3 高分子ジオールとして分子量2000のポリヘキサメチ
レンカ−ボネ−トジオ−ルを400重量部、分子量20
00のポリジプロピレンアジペ−トジオ−ルを250重
量部、分子量2000のポリブチレンアジペ−トジオ−
ルを350重量部用い、鎖伸長剤としてエチレングリコ
−ルを124.1重量部、ジイソシアネート化合物とし
てジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネ−トを6
40重量部および反応溶媒としてDMFを5290重量
部用い、これらを反応器に投入し、窒素気流下に反応さ
せ、固形分濃度25%、粘度400ポイズ(30℃)
で、かつ(I)/{(I)+(II)+(III)}、(I
I)/{(I)+(II)+(III)}及び(III)/
{(I)+(II)+(III)}がそれぞれ0.5、0.3
2及び0.18であるポリウレタン溶液(H)を得た。
上記ポリウレタン溶液(H)を用い下記のポリウレタン
組成液(H−1)および(H−2)を得た。
【0065】ポリウレタン組成液(H−1) ポリウレタン溶液(H) 720 重量部 ソルビタンモノステアレ−ト 10.8重量部 ステアリルアルコ−ル 5.4重量部 黒顔料 2.0重量部 DMF 261.8重量部 計 1000.0重量部 ポリウレタン組成液(H−2) ポリウレタン溶液(H) 480 重量部 クリスボンアシスタ−SD−14 5 重量部 (大日本インキ社製凝固調節剤 商標) 黒顔料 2 重量部 DMF 513 重量部 計 1000 重量部
【0066】海成分がポリエチレン、島成分がナイロン
−6でその重量比50/50の海島型混合紡糸繊維を溶
融紡糸し、湿熱延伸、捲縮、カットして長さ51mm、
3.5デニ−ルの繊維(島成分の平均繊度は0.003
デニールで繊維断面中の島成分の本数は600本)を得
た。この繊維よりウエッブをつくり積層してニ−ドルパ
ンチにより目付640g/m2、厚さ2.0mmの絡合不織
布とし、上記ポリウレタン組成液(H−1)を不織布重
量の2.2倍量含浸させ、表面を平滑にならした。次
に、ポリウレタン組成液(H−2)を80g/m2塗布
し、45℃の40重量%DMFを含有する水溶液で30
分間処理して含浸層および塗布層の両者を凝固させた。
次いで、80℃に加温したトルエン中に浸責し、不織布
に用いたナイロン−ポリエチレン混合紡糸中のポリエチ
レンを抽出除去し、水蒸気蒸留をかけて基質中に含まれ
たトルエンを追出し、100℃で熱して乾燥を行った。
【0067】得られたシ−トのコ−ト層の厚み保持率は
48%と良好であり、含浸層およびコート層は共に柔軟
でかつ腰のある風合いをもち、さらにコート層は表面が
平滑であった。得られたシ−トを70℃相対湿度95%
の雰囲気下に、8週間暴露したが、外観上の変化はみら
れず、平滑な表面かつ良好な風合いであり、さらに低温
条件下でも柔軟性は、常温時の時と殆ど変わらず、低温
時の柔軟性においても優れていた。またエンボス性にも
優れており、人工皮革として工業的利用価値の大きいも
のであった。
【0068】比較例6 分子量2000のポリヘキサメチレンカ−ボネ−トジオ
−ル500重量部、分子量2000のポリエチレングリ
コ−ル500重量部、エチレングリコ−ル124.1重
量部、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネ−ト
641.2重量部およびDMF5290重量部を反応器
に投入し、窒素気流下に反応させ、固形分濃度25%、
粘度420ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液(K)
を得た。このポリウレタンには本発明で規定する化学式
(II)及び(III)の連鎖を有していない。ポリウレタ
ン溶液(A)に代えてこのポリウレタン溶液(K)を用
いる以外は実施例1と同様にしてポリウレタン組成液
(K−1)および(K−2)を得、つづいて加工不織布
に含浸、塗布、凝固、トルエン抽出してシ−トを得た。
得られたシ−トのコ−ト層厚みの保持率は36%と低く
表面に無数の凸凹があり、含浸層も含めて風合いは硬め
であり、さらにエンボス性も極めて悪く、工業的には価
値の低いものであった。
【0069】実施例4 ヘキサンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコ
ール、アジピン酸、ジメチルカーボネートを用い、ジオ
ール残基のうちヘキサンジオール残基が49.0モル
%、ブタンジオール残基が20.3モル%、ジエチレン
グリコール残基が30.7%、ヘキサンジオール残基の
うち33.8%がアジピン酸残基に結合し、66.2%が
ジメチルカーボネート残基に結合し、ブタンジオール残
基のうち49.7%がアジピン酸残基に結合し、50.3
%がジメチルカーボネート残基に結合し、ジエチレング
リコール残基のうち63.0%がアジピン酸残基に結合
し、37.0%がジメチルカーボネート残基に結合し、
かつ数平均分子量が2000の共重合ポリエステルジオ
−ルを製造した。この共重合ポリエステルジオール10
00重量部、エチレングリコ−ル124.1重量部、ジ
フェニルメタン−4,4'−ジイソシアネ−ト638.7
重量部およびジメチルホルムアミド(DMF)5290
重量部を反応器に投入し、窒素気流下に反応させ、固形
分濃度25%、粘度403ポイズ(30℃)で、かつ
(I)/{(I)+(II)+(III)}、(II)/
{(I)+(II)+(III)}、(III)/{(I)+
(II)+(III)}および{(IV)+(V)}/{(I
I)+(III)+(IV)+(V)}がそれぞれ0.49、
0.14、0.37及び0.44であるポリウレタン溶液
(L)を得た。
【0070】ポリウレタン溶液(A)に代えてポリウレ
タン溶液(L)を用いる以外は実施例1と同様にしてポ
リウレタン組成液(L−1)および(L−2)を得、つ
づいて加工不織布に含浸、塗布、凝固、トルエン抽出し
てシ−トを得た。得られたシ−トのコ−ト層の厚み保持
率は55%と極めて良好であり、含浸層を含めて極めて
優れた柔軟性を有しかつ腰のある風合いをもち、コート
層表面は平滑であった。得られたシ−トを70℃相対湿
度95%の雰囲気下に、8週間暴露したが、外観上の変
化は全くみられず、極めて平滑な表面かつ良好な風合い
であり、さらに低温条件下でも柔軟性は、常温時の時と
殆ど変わらず、低温時の柔軟性においても優れていた。
またエンボス性にも極めて優れており、上記実施例で得
られている人工皮革と比べてももっとも高級感を有する
工業的利用価値の極めて大きいものであった。
【0071】実施例5 分子量2000のポリヘキサメチレンカ−ボネ−トジオ
−ルを1000重量部、エチレングリコ−ルを124.
1重量部およびジフェニルメタン−4,4'−ジイソシ
アネ−トを634重量部および反応溶媒としてDMFを
5270重量部用い、これらを反応器に投入し、窒素気
流下に反応させ、固形分濃度25重量%、粘度410ポ
イズ(30℃)のポリウレタン溶液(M−1)を得た。
同様に分子量2000のポリテトラメチレンアジペート
ジオール1000重量部、エチレングリコ−ル124.
1重量部、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネ
−ト634重量部およびDMF5270重量部から固形
分濃度25重量%で粘度400ポイズ(30℃)のポリ
ウレタン溶液(M−2)を得た。また同様に同様に分子
量2000のポリジエチレンアジペートジオール100
0重量部、エチレングリコ−ル124.1重量部、ジフ
ェニルメタン−4,4'−ジイソシアネ−ト634重量
部およびDMF5270重量部から固形分濃度25重量
%で粘度390ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液
(M−3)を得た。これらポリウレタン溶液(M−
1)、(M−2)及び(M−3)を重量比4:3:3で
混合して、混合ポリウレタン溶液(M)を得た。この混
合ポリウレタン溶液(M)を構成するポリウレタンの
(I)/{(I)+(II)+(III)}、(II)/
{(I)+(II)+(III)}及び(III)/{(I)+
(II)+(III)}はそれぞれ0.49、0.26及び0.
25である。
【0072】このポリウレタン溶液(M)480重量
部、クリスボンアシスターSD−145重量部及びDM
F91重量部を混合し、ポリエチレンフィルム上に厚さ
1.0mmに流延し、この状態でDMF/水=30/7
0(重量比)の組成液からなる40℃の凝固浴中に浸漬
して凝固させ、さらに40℃の水浴中で6時間水洗して
DMFを完全に除去して多孔質シートを得た。得られた
シ−トの厚さは0.44mm、密度0.45g/cm
3で、厚み保持率は44%と良好であり、優れた柔軟性
を有し、表面は平滑であった。得られたシ−トを70℃
相対湿度95%の雰囲気下に、8週間暴露したが、外観
上の変化はみられず、平滑な表面かつ良好な風合いであ
り、さらに低温条件下でも柔軟性は、常温時の時と殆ど
変わらず、低温時の柔軟性においても優れていた。この
シートを、ポリウレタンを含浸凝固させた、0.01デ
ニールの極細ナイロン繊維からなる厚さ1.2mmの絡
合不織布の表面に貼り合わせて、その表面をエンボス処
理したところ、エンボス性にも優れ、人工皮革として十
分に工業的価値を有するものであった。しかしながら、
上記実施例1〜4で得られている人工皮革と比べてすべ
ての点でやや劣るものであった。
【0073】実施例6 実施例1において、鎖伸長剤として用いているエチレン
グリコール124.1重量部を1,4−ブタンジオール1
80重量部に置き換える以外は実施例1と同様に行い、
人工皮革を作製した。この人工皮革は、実施例1の人工
皮革と比べて風合いの点で僅かに異なるもののそれ以外
の性能においては、殆ど差がなく、工業的価値の高いも
のであった。
【0074】実施例7 実施例4で得られたポリウレタン溶液(L)を用いる以
外は実施例5と同様にして多孔質シートを得た。得られ
たシート厚さは0.51mm、密度0.40、厚み保持率
51%と良好であり、優れた柔軟性と平滑性を有してい
た。得られたシートを70℃、相対湿度95%下に8週
間暴露したが、外観上の変化は見られず、さらに低温で
の柔軟性においても優れていた。
【0075】実施例8 実施例1で得られたポリウレタン溶液(A)を用いる以
外は実施例5と同様にして多孔質シートを得た。得られ
たシート厚さは0.48mm、密度0.42、厚み保持率
48%であった。この多孔質シートは優れた柔軟性と平
滑性を有していた。得られたシートを70℃、相対湿度
95%下に8週間暴露したが、外観上の変化は見られ
ず、さらに低温での柔軟性においても優れていた。
【0076】
【発明の効果】本発明のポリウレタン系多孔質シート
は、製造する際の湿式凝固性に優れ、得られた多孔質シ
ートをエンボスする際のエンボス性などの加工性にも優
れ、さらに耐久性、柔軟性、特に低温条件下での柔軟性
に優れており、皮革様シートに加工して、衣料、靴、
鞄、家具、車両用内装材、雑貨等に極めて有効である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記化学式(I)で表される構造単位より
    なる連鎖、下記化学式(II)で表される構造単位よりなる
    連鎖および下記化学式(III)で表される構造単位よりな
    る連鎖を同一又は異なるソフトセグメント内に有し、 −O−R1−O−CO−O− (I) −O−R2−O−CO−R3−CO− (II) −(O−CH2CHR52−O−CO−R4−CO− (III) かつ、上記化学式(I)と(II)と(III)の構造単位の合計
    個数に対する上記化学式(I)、(II)及び(III)の構造単
    位それぞれの個数の割合が0.1〜0.8、0.05〜0.
    7及び0.05〜0.8であるソフトセグメント成分、並
    びに芳香族ジイソシアネート成分とエチレングリコール
    または1,4−ブタンジオール成分よりなる連鎖を有す
    るハードセグメント成分よりなるポリウレタンからなる
    多孔質シート。(但し、上記式中、R1は炭素数5〜6
    の炭化水素基、R2はテトラメチレン基、R3およびR4
    は同一又は異なる炭素数4〜8のアルキレン基、R5
    水素原子またはメチル基を意味する。)
  2. 【請求項2】 多孔質シートを構成するポリウレタンが
    下記化学式(IV)の構造単位よりなる連鎖と(V)の構
    造単位よりなる連鎖を有している請求項1に記載の多孔
    質シート。 −O−R2−O−CO−O− (IV) −(O−CH2CHR52−O−CO−O− (V) (但し、R2及びR5に関しては、前記と同一の意味を有
    する)
  3. 【請求項3】 下記式化学(I)で表される構造単位より
    なる連鎖、下記化学式(II)で表される構造単位よりなる
    連鎖および下記化学式(III)で表される構造単位よりな
    る連鎖を同一又は異なるソフトセグメント内に有し、 −O−R1−O−CO−O− (I) −O−R2−O−CO−R3−CO− (II) −(O−CH2CHR52−O−CO−R4−CO− (III) (但し、上記式中、R1は炭素数5〜6の炭化水素基、
    2はテトラメチレン基、R3およびR4は同一又は異な
    る炭素数4〜8のアルキレン基、R5は水素原子または
    メチル基を意味する。) かつ、上記化学式(I)と(II)と(III)の構造単位の合計
    個数に対する上記化学式(I)、(II)及び(III)の構造単
    位それぞれの個数の割合が0.1〜0.8、0.05〜0.
    7及び0.05〜0.8であるソフトセグメント成分、並
    びに芳香族ジイソシアネート成分とエチレングリコール
    または1,4−ブタンジオール成分よりなる連鎖を有す
    るハードセグメント成分よりなるポリウレタンの溶液を
    支持面上に塗布した後、湿式凝固して得られる多孔質シ
    ートを支持面から剥離する多孔質シートの製造方法。
  4. 【請求項4】 下記化学式(I)で表される構造単位より
    なる連鎖、下記化学式(II)で表される構造単位よりなる
    連鎖および下記化学式(III)で表される構造単位よりな
    る連鎖を同一又は異なるソフトセグメント内に有し、 −O−R1−O−CO−O− (I) −O−R2−O−CO−R3−CO− (II) −(O−CH2CHR52−O−CO−R4−CO− (III) (但し、上記式中、R1は炭素数5〜6の炭化水素基、
    2はテトラメチレン基、R3およびR4は同一又は異な
    る炭素数4〜8のアルキレン基、R5は水素原子または
    メチル基を意味する。) かつ、上記化学式(I)と(II)と(III)の構造単位の合計
    個数に対する上記化学式(I)、(II)及び(III)の構造単
    位それぞれの個数の割合が0.1〜0.8、0.05〜0.
    7及び0.05〜0.8であるソフトセグメント成分、並
    びに芳香族ジイソシアネート成分とエチレングリコール
    または1,4−ブタンジオール成分よりなる連鎖を有す
    るハードセグメント成分よりなるポリウレタンの溶液を
    繊維構造体に含浸および/または塗布した後、湿式凝固
    する多孔質シートの製造方法。
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