JPH07298888A - サテライトrnaを用いたキュウリモザイクウイルスの弱毒ウイルス、その作出方法、キュウリモザイクウイルスの防除法及びキュウリモザイクウイルス抵抗性植物 - Google Patents

サテライトrnaを用いたキュウリモザイクウイルスの弱毒ウイルス、その作出方法、キュウリモザイクウイルスの防除法及びキュウリモザイクウイルス抵抗性植物

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JPH07298888A
JPH07298888A JP7074663A JP7466395A JPH07298888A JP H07298888 A JPH07298888 A JP H07298888A JP 7074663 A JP7074663 A JP 7074663A JP 7466395 A JP7466395 A JP 7466395A JP H07298888 A JPH07298888 A JP H07298888A
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JP
Japan
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cmv
virus
cucumber mosaic
plant
satellite rna
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JP7074663A
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Inventor
Kazumi Suzuki
一実 鈴木
Yasushi Hikiji
康史 曵地
Chiyaunpurutsuku Piyasatsuku
チャウンプルック ピヤサック
Yukiko Sasaki
由紀子 佐々木
Hikari Saito
光 斉藤
Tsugiko Okumura
亜子 奥村
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Original Assignee
Iwate Prefectural Government
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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 リンドウから単離された軽微なえそ症状しか
示さないキュウリモザイクウイルスから得られた特定の
配列を有するサテライトRNAを組み込んでなるキュウ
リモザイクウイルスの弱毒ウイルス、及びそのサテライ
トRNA遺伝子を含むキュウリモザイクウイルス抵抗性
植物。 【効果】 CMVに対する弱毒ウイルスを作出すること
ができ、またその弱毒ウイルスを用いてCMVを防除す
ることができ、さらにはCMVに対して抵抗性を有する
植物が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、キュウリモザイクウイ
ルス(以下、CMVと省略する)に対する弱毒ウイル
ス、その弱毒ウイルスの作出方法、CMVの防除方法、
及びCMV抵抗性植物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、キュウリモザイクウイルスは
広範囲な植物に感染して大きな被害を与え、作物の減収
要因となっている。このCMVの防除に関しては、多く
の植物の栽培種あるいはその関連野生種に抵抗性品種が
見出されないために、農薬散布による媒介昆虫(アブラ
ムシ)の駆除、飛来防止、または栽培法などに頼ってい
るのが現状である。
【0003】しかしながら、上記の方法はいずれもCM
Vによる病害に対する防除効果が不十分であって、特に
経済性、環境汚染などの問題がある。このような環境汚
染の心配がなく、なおかつ防除効果が高く、経済的な方
法として、弱毒ウイルスを利用する防除方法が考えられ
る。弱毒ウイルスの人為的な作出方法としては、熱や亜
硝酸ソーダで処理する方法等が知られているが、いずれ
も大量のウイルス株の中から弱毒ウイルスが得られる確
率は極めて低く、また、弱毒ウイルスが得られたとして
も不安定なものが多く、強毒ウイルスに変異してしまう
ものもある。
【0004】ところで、CMVの分離株の中には、サテ
ライトRNAと呼ばれるRNAを含んでいるものがあ
る。このサテライトRNAは、罹病植物の病徴を変化さ
せるという重要な性質を有する。最近、CMVのサテラ
イトRNAをCMVに組み込んで、弱毒ウイルスを作出
し、CMV防除に利用する方法が報告された(特公昭62
-37956号公報参照)。しかし、この報告にはサテライト
RNAの塩基配列が示されていなかった。
【0005】これに対し、特開平5-3789号公報には、サ
テライトRNAの具体的な塩基配列の一例が記載されて
いる。この報告では、トマトに軽微なモザイク症を示す
多数のCMVから多数のRNAを分離し、その中から病
徴軽減効果を示すサテライトRNAを5種単離した後、
CMV弱毒ウイルスを作出し、これを幼苗に接種すれ
ば、CMV防除効果が得られることを認めており、サテ
ライトRNAの中には植物の病徴を軽減するものと、逆
に病徴を悪化させるものとがある旨を開示している。
【0006】この報告から、サテライトRNA全てが病
徴軽減効果を示すわけではなく、特異的なサテライトR
NAのみが病徴軽減効果を示すと考えられる。このよう
に、CMVの病徴はサテライトRNAの種類によって大
きく左右されるため、CMV防除には、病徴を軽減する
サテライトRNAを見出して用いる必要がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、病徴
を軽減する新規なサテライトRNA、並びにそれを用い
た弱毒ウイルス及びCMV抵抗性植物を提供することで
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、新規なサ
テライトRNAを見出すために、これまでCMVの採取
対象として取り上げられていなかった植物に着眼したと
ころ、多くのリンドウにCMVが感染していることを発
見し、このリンドウを採取対象とすることとし、各種検
討を重ねた結果、リンドウに軽微な病徴しか示さないC
MVから新規なサテライトRNAを単離することに成功
し、これを用いた弱毒ウイルスを使用することにより、
CMVの感染防除が可能となることを発見するととも
に、そのサテライトRNA遺伝子を導入した植物は、C
MVに対して抵抗性を有することを発見し、本発明を完
成するに至った。
【0009】すなわち、本発明は、配列番号1の塩基配
列を含んでなることを特徴とするサテライトRNAであ
る。また、本発明は、リンドウから単離された軽微なえ
そ症状しか示さないキュウリモザイクウイルスから得ら
れた配列番号1の塩基配列を含むサテライトRNAを組
み込んでなることを特徴とするキュウリモザイクウイル
スの弱毒ウイルスである。
【0010】さらに、本発明は、サテライトRNAを含
まないキュウリモザイクウイルス又はキュウリモザイク
ウイルスのRNAと、配列番号1の塩基配列を含むサテ
ライトRNAとを植物に接種せしめ、しかる後、前記植
物の汁液から弱毒ウイルスを得ることを特徴とするキュ
ウリモザイクウイルスの弱毒ウイルスの作出方法であ
る。
【0011】さらに、本発明は、前記弱毒ウイルスを、
予め対象植物の幼苗に接種することを特徴とするキュウ
リモザイクウイルスの防除法である。さらに、本発明
は、前記サテライトRNA遺伝子を含むキュウリモザイ
クウイルス抵抗性植物である。以下、本発明を詳細に説
明する。
【0012】CMVの核酸はRNAからなるが、このウ
イルス核酸をポリアクリルアミドゲルによる電気泳動で
分離すると、CMVは4成分のRNA(RNA1〜4)
を有する系統と、小さい塩基数からなるサテライトRN
A(RNA5)を含む5成分のRNA(RNA1〜5)
を有する系統に大別することができる。本発明において
は、リンドウに軽微な病徴しか示さないCMVからサテ
ライトRNAを単離し、それを用いて弱毒ウイルスを作
出する。サテライトRNAの分離方法としては、ウイル
スから核酸成分を分離する従来公知のいかなる方法を適
用してもよい。例えば、ウイルスの蛋白質を適宜試剤に
よって変性させ、電気泳動を数回繰り返すことによっ
て、サテライトRNAを精製することができる。
【0013】このようにして得られる本発明のサテライ
トRNAは、配列番号1の塩基配列を含む新規なRNA
であり、これをサテライトRNAC7と名付けた。このサ
テライトRNAC7について、トマトを用いてマスタらの
方法(Ann. Phytopath. Soc.Japan 56: 207-212, (199
0))によって病徴軽減の効果を評価したところ、優れた
効果が認められた。
【0014】上記サテライトRNAC7を安定的に製造す
るには、クローニングしたサテライトRNAのcDNA
を組み込んだ大腸菌を用いるのが好ましい。即ち、サテ
ライトRNAを従来公知植物で継代接種すると、その塩
基配列の構造が置換挿入、欠失し易く不安定であり、変
異しやすい。それゆえ、より安定なDNAの形に変換
し、大腸菌に保存するのが有利である。更に、クローニ
ング操作によって、サテライトRNAを純化することが
可能である。そして、この大腸菌から取り出したプラス
ミドにRNAポリメラーゼを作用させれば目的とするサ
テライトRNAを容易に取り出すことができる。
【0015】大腸菌の中にサテライトRNAを導入する
には、サテライトRNAを一旦cDNAに変換する必要
がある。それには、サテライトRNAを鋳型としてAM
V(ライフサイエンス社製)等の逆転写酵素を使用し、
常法に従いcDNAを合成する。得られたcDNAにT
7、SP6(文献J. D. Watsonら、In MolecularBiolog
y of the Gene (1987) ) などの適切なプロモーターを
連結した後、pUC118 (pUC119) (宝酒造社製)などのプ
ラスミドに導入し、得られる組換えプラスミドで大腸菌
JM101、JM109等の宿生微生物を形質転換してクロー
ニングする。このサテライトRNAのcDNAを含む組
換えプラスミドにRNAポリメラーゼを作用させること
により、サテライトRNAC7を生産することができる。
【0016】また場合によっては、得られたサテライト
RNAC7をPCR法等によってさらに増幅してもよい。
本発明では、このように生産したサテライトRNAC7
と、RNA5成分系のCMV又はサテライトRNAを含
まないRNA4成分系のCMVとを混合して、常法によ
り植物に接種し、RNA4成分系のCMVにサテライト
RNAC7が組み込まれた弱毒ウイルスを植物体内で作出
・増殖させる。
【0017】CMVは、RNA4成分系のものであれば
いかなる系統のものを使用してもよいが、好ましくはC
MVE5株を使用する。弱毒ウイルスを接種する植物とし
ては、例えばトマト、ピーマン、ナス、ホオズキ、オウ
レンソウ、キュウリ、メロン、ツルナ、ダイズ、インゲ
ン、ササゲ、百日草、千日草、アカザ、あるいはタバコ
等が挙げられるが、弱毒ウイルスの増殖率を考慮する
と、トマトを用いるのが好ましい。
【0018】弱毒ウイルスを接種する方法としては種々
あるが、一例として、精製したCMV0.02mg/ml に、サ
テライトRNA0.005 〜0.01mg/ml 程度を混合し、0.02
M程度のリン酸緩衝液(pH7.0 程度)で約10倍に希釈し
た後、植物の表面にカーボランダム、セライト、ベント
ナイト等(400 〜600 メッシュ)を少量加えて塗り付け
る方法が挙げられる。
【0019】植物体内では、通常2〜4週間程度、弱毒
ウイルスの増殖が行われるため、この後当該植物の感染
葉から汁液を採取する。採取された汁液中には、そのま
ま植物に接種するだけでも十分なCMV防除効果が得ら
れる程の弱毒ウイルスが含有されているため、当該汁液
を特に濃縮する必要はないが、例えばクロロホルム抽出
後、0.1 M塩化ナトリウムを含むポリエチレングリコー
ル(6%)を用いて65,000Gで2時間遠心分離をし、そ
の沈殿画分を0.02Mリン酸緩衝液で懸濁して濃縮しても
よい。
【0020】このようにして得られた弱毒ウイルスを、
所望の植物に接種することにより、CMVによるウイル
ス病を有効に防除することができる。この場合における
接種は、弱毒ウイルスをそのまま用いてもよいし、ある
いは0.02M程度のリン酸緩衝液(pH7.0 程度)で約10〜
100 倍に希釈し、少量のカーボランダム、セライト、ベ
ントナイト等(400 〜600 メッシュ)を加えて用いても
よい。
【0021】当該弱毒ウイルスの濃度は特に制限されな
いが、CMVによるウイルス病を確実に防除するには、
0.01〜0.02mg/ml とするのが好ましい。また、接種部位
は、特に限定されないが、子葉期など若いものほど感染
率が高く好ましい。弱毒ウイルスを接種する植物は、い
かなる生育期に達しているものでもよいが、好ましくは
幼苗に接種する。
【0022】本発明の弱毒ウイルスを接種して約10〜15
日程度経過すれば、CMV強毒ウイルスを接種しても激
しい病徴は発現しない。また、強毒ウイルスを接種した
植物を畑に植え、病徴が発現する前に本発明の弱毒ウイ
ルスを接種すれば、軽微な病徴が発現するに過ぎない。
さらに、本発明の弱毒ウイルスを接種した植物を栽培し
た場合、その収量は、健全な株と比較してもほとんど差
異がない。
【0023】本発明では、また上記サテライトRNA遺
伝子を導入することにより、CMVに抵抗性を有する植
物を得ることができる。以下、一例としてCMV抵抗性
タバコを作出する方法を説明するが、本発明ではこれに
限定されず、CMVに抵抗性を有する種々の植物を作出
することができる。まず、本発明のサテライトRNAか
ら、前述した方法と同様の方法によりcDNAを合成
し、PCR法で増幅後、クローニングする。このcDN
Aクローンを、植物導入用ベクターに導入できるように
処理する。この処理は、使用するベクターによって適宜
選択すればよいが、cDNAクローンを適当な制限酵素
で消化したのち、例えば1%アガロースゲル電気泳動を
行い、β−アガラーゼ処理を施してサテライトRNAの
cDNA(これをサテライトRNA遺伝子という。)を
精製すればよい。
【0024】一方、植物導入用のベクターとしては、抗
生物質耐性遺伝子を選択マーカーとして含むpBI121系の
ベクターから作製することができる。ここで、選択マー
カーとしての抗生物質耐性遺伝子は、カナマイシン耐性
遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ビアラホス耐性
遺伝子等が挙げられる。ベクターの対応するサイトに常
法によってサテライトRNAのcDNA(サテライトR
NA遺伝子)を導入することにより、モノマーのサテラ
イトRNA遺伝子を含む植物導入用ベクターが得られ
る。本発明では、上記pBI121由来のベクターにサテライ
トRNA遺伝子を導入したものをpBISATと名付けた。
【0025】CMVに抵抗性を有する種々の植物を作出
するための植物導入用ベクターとしては、モノマーのサ
テライトRNA遺伝子を含むものに限らず、ダイマーの
サテライトRNA遺伝子を含むものをも使用することが
できる。ダイマーのサテライトRNA遺伝子を含むベク
ターを作製するには、例えばモノマーのサテライトRN
A遺伝子を含む植物導入用ベクターに、さらにサテライ
トRNA遺伝子を導入すればよい。上記の例で説明する
と、適当な制限酵素で処理したpBISATに、前述の精製し
たサテライトRNA遺伝子断片を挿入することにより、
ダイマーのサテライトRNA遺伝子を含む植物導入用ベ
クターpBISAT2 を得る。
【0026】得られたモノマーのサテライトRNA遺伝
子を含む植物導入用ベクター及び/又はダイマーのサテ
ライトRNA遺伝子を含む植物導入用ベクターを、所望
の植物に導入して形質転換することにより、CMVに抵
抗性を有する植物を作出することができる。上記の例で
は、pBISAT及び/又はpBISAT2 を、それぞれ凍結融解法
により導入したAgrobacterium tumefaciens を接種する
ことにより、タバコ(Nicotiana benthamiana) を形質転
換することができる。このようにして作出した形質転換
植物は、CMVに対して優れた抵抗性を示す。
【0027】
【実施例】以下に実施例を挙げて更に具体的に本発明を
説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定され
るものではない。 (1) CMVの採取と純化 リンドウ圃場から採取したウイルス病罹病リンドウ葉を
用いて、CMVの分離を行った。まず、リンドウ供試葉
を乳鉢内で磨砕し、0.1 Mリン酸緩衝液(PB,pH7.2)で
懸濁後、アカザ(Chenopodium amaranticolor) と、ツル
ナ(Tetragoniaexpansa)と、タバコ(Nicotiana benthami
ana) 品種White Burley及びSamsun N.N. に接種し、約
1週間後、接種葉の局部病斑をカミソリを用いて切り取
り、ツルナに繰り返し接種して、CMVを分離した。
【0028】分離後、CMVの純化を行った。この純化
は、汁液接種後1〜2週間目の明瞭なモザイク病状が認
められたタバコを用いて、Takanamiら(Virology 109:1
20-126 (1981) )の方法に従って行った。具体的には、
まず罹病葉の磨砕液をクロロホルム抽出し、ガーゼで濾
過した。この液を9000rpm 、10分間、4℃で遠心分離
し、上清を28,000rpm で150 分間、4℃で遠心分離し
た。得られた沈殿画分を、0.01MEDTA含有の0.01Mリン
酸緩衝液に一晩懸濁した後、同様の遠心分離を2回行
い、沈殿(ウイルス画分)を得た。
【0029】次いで、ELISA 検定、外被蛋白の電気泳動
及びRNAの電気泳動によりCMVの同定を行った。EL
ISA 検定は、間接ELISA 法によって行った。外被蛋白の
電気泳動は、SDS-PAGE法(12.5%ポリアクリルアミドゲ
ル)によって行った。また、RNAの電気泳動は、変成
ゲル(7M尿素を含む3.5 %ポリアクリルアミドゲル)
を用いて行った。この結果、CMVE5株とCMVC7株と
が採取された。採取された各CMV株を、0.1 Mリン酸
緩衝液で0.01mg/ml に調整してツルナに接種したとこ
ろ、CMVE5株接種葉には全体に病徴が認められ、CM
VC7株接種葉にはごく軽い病徴が認められた。
【0030】(2) サテライトRNAの単離 CMVE5株とCMVC7株のそれぞれに含まれるRNA
を、フェノール抽出とフェノール/クロロホルム抽出と
を行った後、エタノール沈殿を行い、7M尿素を含む3.
5 %ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した
ところ、両株とも、RNA1、2、3及び4を有し、そ
の分子量は標準株と同様であった。この分析によって、
CMVC7株にはサテライトRNAの存在が確認された
が、CMVE5株の構成RNAにはサテライトRNAは含
まれていなかった(図1)。一方、CMVC7株のサテラ
イトRNAC7は、対応するバンドをゲルから切り出し、
DNA−cellTM(ニッポンジーン社製)を用いて回収し
た。
【0031】(3) サテライトRNAC7のクローニングと
シークエンシング 回収されたサテライトRNAC7から、cDNAを合成し
た。具体的には、−鎖cDNAを合成するために、単離
したサテライトRNA(約3μg)と3'末端塩基配列に
相補的なDNAプライマー(18塩基、約200pMol)を90
℃に加熱した後、除冷してサテライトRNAとDNAプ
ライマーをアニーリング(会合)させた。−鎖のcDN
A合成反応は以下の緩衝液中で1時間、42℃に放置する
ことによって行なった。[−鎖cDNA合成緩衝液;50
mMトリス塩酸、10mM MgCl2、140mM KCl 、30mMβ−メル
カプトエタノール、500μM dNTP、50μCi[α-32P]dCT
P、150ユニットRNasin (Promega)、105 units RAV-II
逆転写酵素(宝酒造社製)]
【0032】次に、得られたcDNAをPCR法によっ
て増幅した。具体的には、+鎖サテライトRNAの5'末
端に相同的なDNAプライマー、3'末端に相補的なDN
Aプライマー、TaqDNAポリメラーゼ(宝酒造社製)
および得られたサテライトRNAのcDNA合成液の1/
10量を混ぜ、93℃−1分間、55℃−2分間及び73℃−3
分間を1サイクルとして、これを25サイクル行い、cD
NAを増幅した。このcDNAをフェノール/クロロホ
ルム抽出した後、エタノール沈殿を行い、得られた沈殿
画分を滅菌水に溶解して、PstI/EcoRI制限酵素で切断し
た。CHROMA SPIN TMカラムNo.100(CLONTECH社製)を用
いて回収後、ライゲーションを行って当該cDNAをpU
C118ベクター(宝酒造社製)に導入した。
【0033】得られたクローンをPstI/EcoRI制限酵素で
切断したところ、サテライトRNAC7の存在が確認され
た。DNA SEQUENCER (Applied Bio System 社製) と、Ta
qDye Primer Cycle Sequencing kit (Applied Bio Syst
em 社製) とを用いて、このサテライトRNAC7の塩基
配列を決定したところ、配列番号1に示す334 塩基で構
成されていた。本塩基配列は、これまで知られているい
かなるサテライトRNAとも塩基数及び塩基配列が異な
っていた。この配列番号1に示す塩基配列からなるサテ
ライトRNAに相同的なDNAの塩基配列を有するプラ
スミドを大腸菌に導入し、大腸菌.Escherichia coliIB
RC-PP-94-1 として、工業技術院生命工学工業技術研究
所に寄託した。この寄託番号は、FERM P-14223である。
【0034】(4) 弱毒ウイルスの調製 CMVE5株の核酸成分(RNA1−4)を含む接種緩衝
液(0.02Mリン酸二ナトリウム、カーボランダム)にサ
テライトRNAC7を溶解した。綿棒を用いてサテライト
RNAC7含有溶液を子葉期のトマト(桃太郎)に接種
し、4週間後に感染葉を採取し、前述した方法と同様に
純化して弱毒ウイルスを得た。この弱毒ウイルスを弱毒
ウイルスSC7 と名付けた。また、前述した方法と同様の
ELISA 検定、外被蛋白の電気泳動及びRNAの電気泳動
によって調べたところ、得られた弱毒ウイルスSC7 は、
サテライトRNAC7を有していた。
【0035】(5) トマトにおける弱毒ウイルスSC7 のC
MV防除効果 子葉期のトマト(品種:レッドペア)10個に上記弱毒ウ
イルスSC7 又はCMVC7株を接種し、18日後に同じトマ
トに強毒CMV(CMVE5)又は弱毒CMV(CMVC
7)を接種し、防除効果を調べた。また、同様にして弱
毒ウイルスSC7 及びCMVC7株を接種しなかった場合に
ついても調べた。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】表1から明らかなように、弱毒ウイルスSC
7 には強毒CMVに対する防除効果が認められた。 (6) リンドウにおける弱毒ウイルスSC7 のCMV防除効
果 幼苗期のリンドウ(品種:イーハトーヴォ)10個に弱毒
ウイルスSC7 又はCMVC7株を接種し、20日後に、同じ
リンドウに強毒CMV(CMVE5)又は弱毒CMV(C
MVC7)を接種し、防除効果を調べた。また、同様にし
て弱毒ウイルスSC7 及びCMVC7株を接種しなかった場
合についても調べた。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】表2から明らかなように、リンドウにおい
ても弱毒ウイルスSC7 には強毒CMVに対する防除効果
が認められた。 (7) サテライトRNA遺伝子を含む植物導入用ベクター
の構築 上記(3) と同様にして、サテライトRNAC7からcDN
Aを合成し、PCR法で増幅した後、クローニングし
た。このcDNAクローンをPstIで処理し、T4DNAポ
リメラーゼ(宝酒造製)で平滑末端とした後、EcoRIで
消化した。
【0040】上記のように処理したサテライトRNAの
cDNA(サテライトRNA遺伝子)を、1%アガロー
スゲル電気泳動及びβ−アガラーゼ処理で精製した。次
いで、抗生物質耐性遺伝子(カナマイシン)を選択マー
カーとして含むpBI121由来の植物導入用ベクターの対応
するサイトにサテライトRNA遺伝子を導入し、モノマ
ーのサテライトRNA遺伝子を含む植物導入用ベクター
pBISATを得た。さらに、pBISATをSmaI及びEcoRIで処理
したpBISATに、前述の精製したサテライトRNA遺伝子
断片を挿入し、ダイマーのサテライトRNA遺伝子を含
む植物導入用ベクターpBISAT2 を得た。
【0041】(8) タバコの形質転換及び導入遺伝子の発
現 得られたpBISAT及びpBISAT2 を、それぞれ凍結融解法に
よりAgrobacterium tumefaciens LB4404株に導入し、タ
バコ(Nicotiana benthamiana) へ接種して形質転換し
た。得られた形質転換体を、カナマイシン(100ppm)で
選抜し、いくつかの再分化個体を得た。
【0042】形質転換タバコの葉からのサテライトRN
A遺伝子の検出は、以下のようにして行った。形質転換
タバコ葉及び非形質転換タバコ葉から常法によりDNA
を抽出し、前述したPCR法で増幅した後、3.5 %ポリ
アクリルアミドゲル電気泳動を行った。得られたDNA
をHybondN+ メンブレン(アマシャム社製)へ転写し、
ニックトランスレーションキット(BRL社製)を用い
たニックトランスレーションによって調製したプローブ
を用いてサザンハイブリダイゼーションを行い、オート
ラジオグラフィーによりサテライトRNA遺伝子を検出
した。結果を図2に示す。
【0043】上記の方法によりサテライトRNA遺伝子
の導入が確認された数個体の形質転換タバコ葉から常法
によりRNAを抽出し、HybondN+ メンブレン上にブロ
ッティングした。上記と同様のプローブを使用してノー
ザンハイブリダイゼーションを行い、オートラジオグラ
フィーによりサテライトRNAを検出した。結果を図3
に示す。なお、発現レベルは個体によって差異が認めら
れた。
【0044】(9) 形質転換タバコのCMV抵抗性 上記(8) で形質転換したタバコ及び非形質転換のタバコ
(いずれも5葉期)の葉に強毒CMVE5(50μg/ml)
を接種し、防除効果を調べた。非形質転換タバコでは、
接種1週間後に接種葉に、接種2週間後に上位葉に著し
いモザイク症状が現れ、生育が阻害された。一方、モノ
マー及びダイマーのサテライトRNA遺伝子を発現して
いる形質転換タバコでは、ともに接種葉での病徴発現が
遅れ、さらに上位葉では病徴がほとんど認められなかっ
た(図4)。
【0045】また、上位葉のウイルス粒子の蓄積量をEL
ISA 法により調べたところ、モノマー及びダイマーのサ
テライトRNA遺伝子を導入した形質転換タバコでは、
非形質転換タバコに比較して、ともにCMV粒子の蓄積
量が10〜20%に減少していた(図5)。以上のように、
混合接種及び遺伝子の導入・発現により、本発明で分離
されたサテライトRNAがCMVによる病徴を抑制する
作用があることが明らかとなった。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、CMVに対する弱毒ウ
イルスを作出することができ、またその弱毒ウイルスを
用いてCMVを防除することができ、さらにはCMVに
対して抵抗性を有する植物が得られる。
【0047】
【配列表】
1.配列番号:1 (1)配列の長さ:334 (2)配列の型:核酸 (3)鎖の数:一本鎖 (4)トポロジー: (5)配列の種類:サテライトRNA (6)起源 (a)生物名:キュウリ・モザイク・ウイルス (Cucumber mosaic virus) (b)株名:CMVC7株 (7)配列: GUUUUGUUUG AUAGAGAAUU GCGUAGAGGG GUUAUAUCUA 40 CGUGAGGAUC UGUCACUCGG CGGUGUGGGU UACCUCCCUG 80 CUACGGCGGG UUGAGUCGAC GCACCUCGGA CUGGGGACCG 120 CUGGCUUGCG AGCUAUGUCC GCUACUCUCA GCACUACGCG 160 CUCAUUUGAG CCCCCGCUCA GUUUGCUAGC AGAACCCGGC 200 ACAUGGUUUG CCGUUACCAU GGAAAAUCGA AAGAAACACU 240 GCUAGGUGGU AUCGUGGAUG ACGCACGCAG GGAGAGGCUA 280 AGACUUAUGU UAUGCUGAUC UCCAUGAAUG UCUACACAUU 320 CCUUUACAGG ACCC 334
【図面の簡単な説明】
【図1】精製したCMVのRNAをポリアクリルアミド
ゲル電気泳動により分離した結果を示す図である。 A:CMVC7株・・・RNA1〜4のほかサテライトR
NA(RNA5)を含み、5成分の核酸で構成されてい
る。 B:CMVE5株・・・サテライトRNAは含まれていな
い。 C:CMV Y株(標準株)・・・サテライトRNAを含
んでいる。
【図2】形質転換タバコの葉からPCR及びサザンハイ
ブリダイゼーションによりサテライトRNA遺伝子を検
出した電気泳動写真である。 レーン1〜4:モノマーのサテライトRNA遺伝子を導
入したタバコ レーン5〜8:ダイマーのサテライトRNA遺伝子を導
入したタバコ レーン9 :非形質転換タバコ レーン10 :サテライトRNAのcDNAを含むクロ
ーン
【図3】形質転換タバコの葉からノーザンドットブロッ
ティングによりサテライトRNAを検出した電気泳動写
真である。 +:陽性対照区(サテライトRNA) −:対照区(DW) M:モノマーのサテライトRNA遺伝子を導入したタバ
コ D:ダイマーのサテライトRNA遺伝子を導入したタバ
【図4】強毒CMVを接種したタバコの状態を示す写真
である。(生物の形態を示す写真) A:接種2週間後のタバコの状態 B:接種2週間後の上位葉の状態 1:非形質転換タバコ 2:モノマーのサテライトRNA遺伝子を導入したタバ
コ 3:ダイマーのサテライトRNA遺伝子を導入したタバ
【図5】タバコ中におけるCMV蓄積量を示すグラフで
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 7/04 8931−4B (72)発明者 佐々木 由紀子 岩手県花巻市鍛冶町9−7 コーポかじま ち203 (72)発明者 斉藤 光 岩手県花巻市西大通1丁目32−14 パーク ハイツはこざきI−106 (72)発明者 奥村 亜子 岩手県北上市村崎野15−11 サンコーポ沼 田B−106号

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配列番号1の塩基配列を含んでなること
    を特徴とするサテライトRNA。
  2. 【請求項2】 リンドウから単離された軽微なえそ症状
    しか示さないキュウリモザイクウイルスから得られた配
    列番号1の塩基配列を含むサテライトRNAを組み込ん
    でなることを特徴とするキュウリモザイクウイルスの弱
    毒ウイルス。
  3. 【請求項3】 サテライトRNAを含まないキュウリモ
    ザイクウイルス又はキュウリモザイクウイルスのRNA
    と、配列番号1の塩基配列を含むサテライトRNAとを
    植物に接種せしめ、しかる後、前記植物の汁液から弱毒
    ウイルスを得ることを特徴とするキュウリモザイクウイ
    ルスの弱毒ウイルスの作出方法。
  4. 【請求項4】 前記植物が、トマト、アカザ、ツルナ及
    びタバコからなる群から選ばれたキュウリモザイクウイ
    ルス宿主植物であることを特徴とする請求項3記載のキ
    ュウリモザイクウイルスの弱毒ウイルスの作出方法。
  5. 【請求項5】 請求項2記載の弱毒ウイルスを、予め対
    象植物の幼苗に接種することを特徴とするキュウリモザ
    イクウイルスの防除法。
  6. 【請求項6】 請求項1記載のサテライトRNA遺伝子
    を含むキュウリモザイクウイルス抵抗性植物。
  7. 【請求項7】 植物がタバコであることを特徴とする請
    求項6記載のキュウリモザイクウイルス抵抗性植物。
JP7074663A 1994-03-09 1995-03-08 サテライトrnaを用いたキュウリモザイクウイルスの弱毒ウイルス、その作出方法、キュウリモザイクウイルスの防除法及びキュウリモザイクウイルス抵抗性植物 Pending JPH07298888A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008266195A (ja) * 2007-04-19 2008-11-06 Nippon Del Monte Corp 植物疫病の防除剤、防除法及び植物疫病抵抗性植物

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