JPH0729554B2 - 四輪駆動車の駆動力配分制御装置 - Google Patents

四輪駆動車の駆動力配分制御装置

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JPH0729554B2
JPH0729554B2 JP3603687A JP3603687A JPH0729554B2 JP H0729554 B2 JPH0729554 B2 JP H0729554B2 JP 3603687 A JP3603687 A JP 3603687A JP 3603687 A JP3603687 A JP 3603687A JP H0729554 B2 JPH0729554 B2 JP H0729554B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、四輪駆動車のトランスファ装置の駆動力配分
クラッチに用いられる四輪駆動車の駆動力配分制御装置
に関する。
(従来の技術) 従来の四輪駆動車の駆動力配分制御装置としては、例え
ば特開昭61−157437号公報に記載されているような装置
が知られている。
この従来装置は、前後輪回転速度センサからのセンサ信
号に基づいて前後輪の回転速度差を演算し、この前後輪
回転速度差が大きい程、すなわち駆動輪スリップの発生
が大きい程トランスファクラッチの締結力を増大させて
4輪駆動側に駆動力配分を変更し、速やかに駆動輪スリ
ップを抑制させようとするものであった。
(発明が解決しようとする問題点) しかしながら、このような従来装置にあっては、前後輪
回転速度差に対するクラッチ締結力制御特性は一義的に
定まったものであった為、走行路面の摩擦係数変化や走
行状態に即座に対応出来ないという問題点を残してい
た。
例えば、乾燥良路でしかもパワードリフト走行を行なう
様な条件下で軽快に走り易い制御特性(前輪側に駆動力
を多く配分しない特性)に設定すると、氷雪路等の低摩
擦係数路でスピン傾向が強く、走行安定性やスタック脱
出性が十分でなくなってしまうし、逆に、低摩擦係数路
で走行安定性が得られる制御特性(前輪側に駆動力を多
く配分する特性)に設定すると、高摩擦係数路の場合に
前輪側への伝達トルクが多くて、早期にドリフトアウト
する傾向になってしまう。
これに対し、本出願人は、特願昭61−288498号の出願明
細書において前述の問題点を解決する案、即ち、横加速
度の大きさにより路面摩擦係数を間接的に検出すると共
に車両の旋回状態を判定し、横加速度が大きい時はクラ
ッチ締結力の増大割合値を小さく、横加速度が小さい時
はクラッチ締結力の増大割合値を大きくする制御内容の
装置を提案した。
しかしながら、制御装置においてノイズ対策やハンチン
グを防ぐ為、一般に行なわれる手法である可変要素にロ
ーパスフィルタをかける手法を適応し、ローパスフィル
タによるクラッチ締結力の増大割合の変化速度の規制値
を、減少方向と増加方向とも同じ値とした場合には、以
下に述べるような問題が生じてしまう。
ローパスフィルタによる規制値を小さく設定した場
合、通常の旋回時には、クラッチ締結力増大割合値が大
きいままでコーナに進入するにもかかわらず、クラッチ
締結力増大割合値の減少方向変化が規制されてしまう
為、旋回初期のアンダーステア傾向が強くなってしま
う。
また、コースト状態での旋回時には、上記の規制でコー
ナ進入時にクラッチ締結力増大割合値が大きいままであ
る為、タイヤグリップが高い場合にはパワートレイン系
のハンチング原因となる。
ローパスフィルタによる規制値を大きく設定した場
合、旋回後期の立ち上り時に早期にクラッチ締結力増大
割合値が増加する方向に変化する為、旋回後期のアンダ
ーステア傾向が強くなってしまう。
(問題点を解決するための手段) 本発明は、上述のような問題点を解決することを目的と
してなされたもので、この目的達成のために本発明では
以下に述べるような解決手段とした。
本発明の解決手段を、第1図に示すクレーム概念図によ
り説明すると、エンジン駆動力を前後輪に分配伝達する
エンジン駆動系の途中に設けられ、外部からのクラッチ
締結力により伝達トルクの変更ができる駆動系クラッチ
手段1と、所定の検出手段2からの検出信号に基づいて
前記駆動系クラッチ手段1の締結力を増減制御する制御
信号を出力するクラッチ制御手段3と、を備えた四輪駆
動車の駆動力配分制御装置において、前記検出手段2と
して、前後輪回転速度差検出手段201と横加速度検出手
段202を含み、前記クラッチ制御手段3は、前後輪回転
速度差が大きくなるほどクラッチ締結力を4輪駆動方向
に増大させると共に、前後輪回転速度差に対するクラッ
チ締結力の増大割合値が横加速度の小さい時には大きな
値であり横加速度が大きくなるにしたがって小さな値と
なる特性が得られる手段であり、且つ、横加速度が増加
方向あるいは減少方向に変化する時、横加速度の変化に
伴って変化する前記増大割合値の変化速度を規制する規
制手段301が設けられ、該規制手段301は、前輪側の駆動
力が減少する方向の変化速度を速くし、前輪側の駆動力
が増加する方向の変化速度を遅くする規制を行なう手段
である事を特徴とする。
(作 用) まず、横加速度検出手段202により旋回時に発生する横
加速度を監視することで、路面摩擦係数情報(同じ車速
と旋回半径の場合には横加速度大であるほど高路面摩擦
係数)及び旋回度合い情報(路面摩擦係数が一定の場合
には横加速度大であるほど高車速で小旋回半径)、特
に、大きな横加速度の検出により高摩擦係数路での急旋
回時であることが入力情報としてもたらされることにな
る。
従って、高摩擦係数路での急旋回時等で横加速度が大き
い時は、前後輪回転速度差に対するクラッチ締結力の増
大割合値が小さな制御特性により駆動力配分が制御され
るため、主に2輪駆動側の駆動力配分傾向となり、後輪
駆動ベースの四輪駆動車では早期に強アンダーステアに
至ることがなく、また、前輪駆動ベースの四輪駆動車で
は早期に強オーバステアに至ることがなく、高摩擦係数
路での良好な旋回性が実現される。
また、直進や発進時及び低摩擦係数路での旋回時等で横
加速度が小さい時は、前後輪回転速度差に対するクラッ
チ締結力の増大割合値が大きな制御特性により駆動力配
分が制御されるため、主に4輪駆動側の駆動力配分傾向
となり、発進性能の向上や直進安定性の向上や低摩擦係
数路旋回時に車両挙動を不安定にする駆動輪スリップの
発生が抑えられる。
さらに、高摩擦係数路での直進からの旋回初期で横加速
度が増加方向に変化する時と旋回後期で横加速度が減少
方向に変化する時とでは、横加速度の変化に伴って変化
する増大割合値の変化速度を異ならせる規制が規制手段
301においてなされる。
つまり、後輪駆動ベースの四輪駆動車では、横加速度が
増加する旋回初期に前輪側の駆動力が減少する方向の変
化速度が速くされ、早期に駆動力配分が後輪駆動側に変
化することで、旋回初期のアンダーステア傾向が抑制さ
れる。そして、横加速度が減少する旋回後期に前輪側の
駆動力が増加する方向の変化速度が遅くされ、駆動力配
分が4輪駆動側に変化するのが遅れることで、旋回後期
のアンダーステア傾向が抑制される。
また、前輪駆動ベースの四輪駆動車では、横加速度が増
加する旋回初期に前輪側の駆動力が増加する方向の変化
速度が遅くされ、駆動力配分として後輪側への配分を残
したままにしておくことで、旋回初期のアンダーステア
傾向が抑制される。そして、横加速度が減少する旋回後
期に前輪側の駆動力が減少する方向の変化速度が速くさ
れ、早期に後輪側へ駆動力を配分することで、旋回後期
のアンダーステア傾向が抑制される。
すなわち、規制手段301を、前輪側の駆動力が減少する
方向の変化速度を速くし、前輪側の駆動力が増加する方
向の変化速度を遅くする規制を行なう手段とすること
で、後輪駆動ベースの四輪駆動車でも前輪駆動ベースの
四輪駆動車でも、旋回初期及び旋回後期のアンダーステ
ア傾向が抑制される。
(実施例) 以下、本発明の実施例を図面により詳述する。尚、この
実施例を述べるにあたって、後輪駆動をベースにした四
輪駆動車の駆動力配分制御装置を例にとる。
まず、第1実施例の構成を説明する。
実施例の駆動力配分制御装置Dが適用される四輪駆動車
は、第2図に示すように、トランスファ装置10,エンジ
ン11,トランスミッション12,トランスファ入力軸13,後
輪側駆動軸14,多板摩擦クラッチ(駆動系クラッチ手
段)15,リヤディファレンシャル16,後輪17,フロントデ
ィファレンシャル18,前輪19,ギヤトレーン20,前輪側駆
動軸21を備えている。
上記トランスミッション12は、前記エンジン11からの回
転駆動力をシフト操作により選択した変速段位置に応じ
て変速させるもので、実施例では平行な二本のシャフト
に異なるギヤ比の歯車組を設けたタイプのものを用いて
いる。
上記トランスファ入力軸13は、トランスファ装置10内の
多板摩擦クラッチ15へ前記トランスミッション12からの
回転駆動力を入力させる軸である。
上記後輪側駆動軸14は、前記トランスファ入力軸13と同
芯上に直結させたもので、トランスファ入力軸13からの
回転駆動力がそのまま伝達される。
上記多板摩擦クラッチ15は、クラッチ油圧により前輪側
への伝達トルクの変更が可能なクラッチで、前記トラン
スファ入力軸13及び後輪側駆動軸14に固定させたクラッ
チドラム15aと、該クラッチドラム15aに回転方向係合さ
せたフリクションプレート15bと、前記入力軸13の外周
部に回転可能に支持させたクラッチハブ15cと、該クラ
ッチハブ15cに回転方向係合させたフリクションディス
ク15dと、交互に配置されるフリクションプレート15bと
フリクションディスク15dとの一端側に設けられるクラ
ッチピストン15eと、該クラッチピストン15eと前記クラ
ッチドラム15aとの間に形成されるシリンダ室15fと、を
備えている。
上記リヤディファレンシャル16及びフロントディファレ
ンシャル18は、左右の後輪17,17及び左右の前輪19,19に
差動を許しながら駆動力を分配伝達する差動装置であ
る。
上記ギヤトレーン20は、前記クラッチハブ15cに設けら
れた第1ギヤ20aと、中間シャフト20bに設けられた第2
ギヤ20cと、前輪側駆動軸21に設けられた第3ギヤ20d
と、によって構成され、多板摩擦クラッチ15の締結によ
る前輪側への駆動力を伝達させる手段である。
上記前輪側駆動軸21は、車両の前輪19,19に回転駆動力
を伝達させる軸である。
尚、第4図はトランスファ装置10の具体例を示したもの
で、トランスファケース22の中に前記多板摩擦クラッチ
15やギヤ類やシャフト類が納められている。
第4図中15gはディシュプレート、15hはリターンスプリ
ング,24はクラッチ圧油入力ポート,25はクラッチ圧油
路,26は後輪側出力軸,27は潤滑用油路,28はスピードメ
ータ用ピニオン,29はオイルシール,30はベアリング,31
はニードルベアリング,32はスラストベアリング,33は継
手フランジである。
次に、実施例の駆動力配分クラッチ制御装置Dは、第3
図に示すように、前記多板摩擦クラッチ15を締結させる
ための油圧力を発生させる外部装置としての油圧発生装
置50と、この油圧発生装置50からの油圧を所定のクラッ
チ圧Pに制御する油圧制御装置40とを備えている。
上記油圧発生装置50は、オイルポンプ51、ポンプ圧油路
52、クラッチ圧油路53、分岐ドレーン油路54、リザーブ
タンク55、吸込油路56を備えている。
上記油圧制御装置40は、検知手段として、前輪回転速度
センサ41,後輪回転速度センサ42,横加速度センサ43を備
え、制御回路として、コントロールユニット45を備え、
制御アクチュエータとして、バルブソレノイド46a及び
チェック油路46bを有する前記電磁比例リリーフバルブ4
6(分岐ドレーン油路54に設けられている)を備えてい
る。
前輪回転速度センサ41及び後輪回転速度センサ42は、そ
れぞれ前輪側駆動軸21及び後輪側駆動軸14の途中や左右
の前輪19,19位置等に設けられたもので、軸に固定され
たセンサロータと、センサロータに近接配置され、磁力
変化を検知するピックアップセンサと、による回転速度
センサ等が用いられ、この両回転速度センサ41,42から
は軸回転に応じた正弦波信号等による回転信号(nf),
(nr)が出力される。
前記横加速度センサ43は、Gセンサと呼ばれるセンサが
用いられ、旋回時等において車両に加わる横加速度Ygを
検出し、横加速度Ygに応じた横加速度信号(yg)が出力
される。
前記コントロールユニット45は、車載のマイクロコンピ
ュータを中心とする制御回路が用いられ、前記回転速度
センサ41,42からの回転信号(nf),(nr)を入力し、
基本的には前後輪の駆動軸21,14の回転速度差ΔN(Nr
−Nf)を演算し、回転速度差ΔNが大きくなるに従って
クラッチ締結力T(前輪側への伝達トルク)を高めて駆
動力配分を4輪駆動状態に近づける指令電流信号(i)
を前記電磁比例リリーフバルブ46に出力するもので、第
5図に示すように、内部回路として、入力インターフェ
ース451、RAM452、ROM453、CPU454、出力インターフェ
ース455を備えている。
上記ROM454(リード・オンリー・メモリ)は読出し専用
のメモリで、このROM454には、第8図に示すように、前
後輪回転速度差ΔNとクラッチ締結力Tとの制御特性と
の関係がT=Kx・ΔN(Kx;実比例係数)として予め演
算式の形で記憶されている。
上記電磁比例リリーフバルブ46は、指令電流信号(i)
の出力が指令電流値I=0の場合はクラッチ圧P=0
となるが、指令電流信号(i)の出力が指令電流値I
>0の場合はバルブが閉じ方向に移動し、オイルポンプ
51からのポンプ圧をドレーン油量制御により指令電流値
の大きさに応じたクラッチ圧Pとなす(第6図)。
尚、クラッチ圧Pとクラッチ締結力Tとの関係は次式で
あらわされる(第7図)。
P=T/(μ・S・2n・Rm) 但し μ;クラッチ板の摩擦係数 S;ピストンへの圧力
作用面積 n;フリクションディスク枚数 Rm;フリクシ
ョンディスクのトルク伝達有効半径 従って、クラッチ圧Pを増大させると、クラッチ締結力
Tも比例して増大する。
次に、実施例の作用を説明する。
まず、第1実施例での駆動力配分制御作動の流れを、第
9図に示すフローチャート図により説明する。
第1実施例は、横加速度Ygを横加速度センサ43により直
接検出すると共に、前後輪回転速度差ΔNの増大に対し
てクラッチ締結力Tが直線的に増大する制御特性を得る
ようにした例であると共に、クラッチ締結力Tの実比例
係数Kx(増大割合値)の変化速度を直接規制する例であ
る。
ステップaでは、各センサ41,42,43から前輪回転速度N
f,後輪回転速度Nr,横加速度Ygが読み込まれる。
ステップbでは、前記ステップaで読み込まれた前輪回
転速度Nfと後輪回転速度Nrから前後輪回転速度差ΔNが
演算により求められる。
尚、演算式は、ΔN=Nr−Nfである。
ステップcでは、前記ステップaで読み込まれた横加速
度Ygから目標比例係数Ktが演算により求められる。
尚、演算式は、Kt=A1/Ygであり、A1は定数である。
次のステップd〜ステップlで実比例係数Kxの増大割合
の減少及び増加方向の変化速度を規制するローパスフィ
ルタが実現される。
ステップdでは、前記ステップcで得られた今回の目標
比例係数Ktと1周期前の実比例係数K0との差ΔKが演算
により求められる。
ステップeでは、ΔKの正負を判断し、比例係数Kが増
加方向か減少方向かの判断がなされ、以後の処理ルート
を異ならせる。
ステップeでΔKが正、即ち、比例係数Kが増加方向で
ある場合には、ステップgでその変化幅が設定値A2より
も大きいか否かが判断され、この設定値A2が比例係数K
が増加する場合のローパスフィルタの値となる。
そして、ステップgでΔKがA2より大きい場合は、ステ
ップjに進み、目標比例係数Ktがフィルタリングされ、
実比例係数Kxが、K0+A2の演算式により求められる。
また、ステップgでΔKがA2より小さい場合は、ステッ
プkへ進み、目標比例係数Ktがそのまま実比例係数Kxと
してセットされる。
一方、ステップeでΔKが負、即ち、比例係数Kが減少
方向である場合には、ステップfでその変化幅が設定値
A3より大きいか否かが判断され、この設定値A3が比例係
数Kが減少する場合のローパスフィルタの値となる。
尚、前記設定値A3は設定値A2よりも大の値である。
そして、ステップfで|ΔK|がA3より大きい場合は、ス
テップiへ進み、目標比例係数Ktがフィルタリングさ
れ、実比例係数Kxが、K0−A3の演算式により求められ
る。
また、ステップfで|ΔK|がA3より小さい場合は、ステ
ップhへ進み、目標比例係数Ktがそのまま実比例係数Kx
としてセットされる。
ステップlでは、今回の制御周期で求められた実比例係
数Kxの値がΔKの演算用のK0として記憶される。
ステップmでは、目標クラッチ締結力Tが、前記KxとΔ
Nにより演算で求められる。
尚、演算式は、以下の通りである。
ΔN<0の場合;T=0 ΔN≧0の場合;T=Kx・ΔN ステップnでは、前記ステップmで求められたクラッチ
締結力Tに対応したクラッチ圧Pが得られる指令電流値
による指令電流信号(i)が出力される。
以上説明してきたように、第1実施例の駆動力配分クラ
ッチ制御装置Dにあっては、以下に述べるような効果が
得られる。
横加速度センサ43により旋回走行時に発生する横加
速度Ygを監視するようにした為、路面摩擦係数センサを
用いることなく、路面摩擦係数の情報、特に、大きな横
加速度Ygの検出により高摩擦係数路での急旋回時である
ことが入力情報としてもたらされることになる。
横加速度Ygが大きい時はクラッチ締結力の増大割合
値が小さな制御特性が得られる為、クラッチ締結力Tが
小さく、主に2輪駆動側の駆動力配分傾向となり、早期
にドリフトアウトすることなく、高摩擦係数路での良好
な旋回性が実現出来る。
横加速度Ygが小さい時(高摩擦係数路旋回時以外で
直進,発進,低摩擦係数路旋回等)には増大割合値が大
きな制御特性が得られる為、クラッチ締結力Tが大き
く、主に4輪駆動側の駆動力配分傾向となり、発進性能
の向上や直進安定性の向上や旋回時に早期にスピンやド
リフトアウトすることが防止される。
比例係数Kを変更することで異なる制御特性が得ら
れるようにしている為、コントロールユニット45に予め
設定しておく演算式が一つでよく、メモリの記憶容量が
小さくて済む。
高摩擦係数路で直進からコーナに進入する場合等で
大きな比例係数Kが選択されている場合、ローパスフィ
ルタ処理によって、比例係数Kの減少方向には速く変化
する為、横加速度Ygの発生に迅速に応答しながら比例係
数Kが減少、即ち、2輪駆動側の駆動力配分方向へ早期
に移行することになり、旋回初期のアンダーステア傾向
が抑制されるし、コースト状態でのコーナ進入時にも前
記のように、前後輪回転速度差ΔNに対するゲインの小
さい制御特性に早期に移行する為、タイヤグリップの高
い場合でもパワートレイン系でのハンチングの発生が抑
制される。
旋回途中での大きな横加速度Ygの発生により小さい
比例係数Kの状態から旋回後期の立ち上りにかけて横加
速度Ygの減少で大きな比例係数Kに変化していく場合、
ローパスフィルタ処理によって、比例係数Kの増加方向
には遅く変化する為、横加速度Ygの低下に少しの遅れを
もつ応答で比例係数Kが増加、即ち、徐々に2輪駆動側
から4輪駆動側へ駆動力配分が移行することになり、旋
回後期のアンダーステア傾向が抑制される。
次に、第10図及び第11図に示す第2実施例装置について
説明する。
この第2実施例装置の構成については、第10図に示すよ
うに、検知手段として第1実施例では横加速度センサ43
が用いられていたのに対し、第2実施例では、左前輪速
Wf1と右前輪速Wf2を検出し各車輪速信号(wf1),(wf
2)を出力する左車輪速度センサ47,右車輪速度センサ48
が用いられている点で異なり、制御処理としては、第11
図に示すように、横加速度Ygを左右前輪速Wf1,Wf2に基
づく旋回半径Rの演算値を用いて求めている点と、前記
旋回半径Rの演算値の変化速度を規制することにより間
接的にクラッチ締結力Tの増大割合である比例係数Kの
変化速度を規制している点で異なる。
この、第2実施例での駆動力配分制御作動の流れを、第
11図に示すフローチャート図により説明する。
ステップaでは、各センサ42,47,48から左前輪速Wf1,右
前輪速Wf2,後輪回転速度Nrが読み込まれる。
ステップbでは、前記ステップaで読み込まれた左前輪
速Wf1と右前輪速Wf2とタイヤ径rとから車速Vf{=r/2
・(Wf1+Wf2)}が演算で求められ、後輪回転速度Nrと
前輪回転速度Nf{=(Wf1+Wf2)/2}とから前後輪回転
速度差ΔN(=Nr−Nf)が演算により求められ、左前輪
速Wf1と右前輪速Wf2とから左右輪回転速度差Δn(=|W
f1−Wf2|)が演算により求められる。
ステップcでは、前記ステップbで求められたデータに
基づいて旋回半径Rが演算により求められる。
尚、旋回半径Rの演算式は、以下の通りである。
R=f(Δn,Vf)≒K・Vf/Δn 次のステップd〜ステップlで旋回半径Rの増大割合の
減少及び増加方向の変化速度を規制するローパスフィル
タが実現される。
ステップdでは、前記ステップcで得られた旋回半径R
と1周期前の旋回半径R0との差により単位時間当りの変
化量ΔRが演算により求められる。
ステップeでは、ΔRの正負を判断し、旋回半径Rが増
加方向か減少方向かの判断がなされ、以後の処理ルート
を異ならせる。
ステップeでΔRが正、即ち、旋回半径Rが増加方向で
ある場合には、ステップgでその変化幅が設定値A4より
も大きいか否かが判断され、この設定値A4が旋回半径R
が増加する場合のローパスフィルタの値となる。
そして、ステップgでΔRがA4より大きい場合は、ステ
ップjに進んでフィルタリングされ、旋回半径Rxが、Ro
+A4の演算式により求められる。
また、ステップgでΔRがA4より小さい場合は、ステッ
プkへ進み、演算による旋回半径Rがそのまま旋回半径
Rxとしてセットされる。
一方、ステップeでΔRが負、即ち、旋回半径Rが減少
方向である場合には、ステップfでその変化幅が設定値
A5より大きいか否かが判断され、この設定値A5が旋回半
径Rが減少する場合のローパスフィルタの値となる。
尚、前記設定値A5は設定値A4よりも大の値である。
そして、ステップfで|ΔR|がA5より大きい場合は、ス
テップiへ進んでフィルタリングされ、旋回半径RxがRo
−A5の演算式により求められる。
また、ステップfで|ΔR|がA5より小さい場合は、ステ
ップhへ進み、演算による旋回半径Rがそのまま旋回半
径Rxとしてセットされる。
ステップlでは、今回の制御周期で求められた旋回半径
Rxの値がΔRの演算用のRoとして記憶される。
ステップmでは、ローパスフィルタにかけられた旋回半
径Rxと、車速Vfとによって横加速度Ygが演算により求め
られる。
尚、演算式は、以下の通りである。
Yg=(Vf)2/Rx ステップnでは,比例係数(ゲイン)Kが前記横加速度
Ygを用いて演算により求められる。
尚、K=A/Ygである(A;定数)。
ステップoでは、前記ステップbで求められた前後輪回
転速度差ΔNの補正値ΔNxが求められる。
尚、前記補正値ΔNxはΔN<0の場合は、タイトコーナ
とみなしてΔNx=0とし、ΔN≧0の場合は、旋回軌跡
分の補正を行なってΔNx=ΔN−f(Rx,Vf)とするも
のである。
ステップpでは、比例係数Kと補正値ΔNxとから目標の
クラッチ締結力T(=K・ΔNx)が演算により求められ
る。
ステップqでは、前記ステップpで求められたクラッチ
締結力Tに対応したクラッチ圧Pが得られる指令電流値
による指令電流信号(i)が出力される。
以上、この第2実施例では、横加速度Ygの演算値を求め
る為の旋回半径Rの値にフィルタをかけることにより、
間接的に前記横加速度Ygによって決定する比例係数Kの
値にフィルタをかけるようにした例を示したが、これ
は、横加速度Ygを旋回半径Rと車速Vfに基づいて検出
し、比例係数Kを求める場合に有効であり、以下にその
理由を述べる。
検出精度の点から、車速検出精度は現在の主流である回
転パルス式の場合、多くのパルスカウント値に基づいて
演算する為、多少のパルス検出誤差があっても大きな影
響はないが、旋回半径Rの検出の場合、例えば、本実施
例では、左右前輪の回転速度差Δnと車速Vfとから演算
するが、左右前輪回転速度差Δnに対するパルスの検出
誤差は大きい為、演算による旋回半径Rの検出精度に大
きく影響する。
尚、操舵角をパルスエンコーダでカウントし、旋回半径
Rを検出する場合も同様にパルスの検出誤差は大きく影
響する。
この為、旋回半径Rの検出時にフィルタをかける必要が
あり、このフィルタをかけた旋回半径Rと、比較的高精
度で検出される車速Vfとにより横加速度Ygを演算し、こ
の値で比例係数Kを演算することにより間接的に比例係
数Kにフィルタをかけることになる。
この場合、旋回半径Rにフィルタをかけて比較的精度よ
く演算することが出来れば、前後輪回転速度差ΔNの旋
回軌跡差分の補正も同じように精度よく行なうことが出
来る。
従って、この第2実施例では、第1実施例の効果に加え
て、以下に述べる効果が得られる。
横加速度センサを用いることなく、他の制御装置等
でセンサとしてよく用いられる左右の前輪回転速度セン
サ47,48を利用しながらも、旋回半径Rの演算値をフィ
ルタをかけることで比較的精度よく横加速度Ygを入力情
報として得ることが出来るし、同時に比例係数Kに対し
間接的にローパスフィルタをかけることが出来る。
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、具
体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発
明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があって
も本発明に含まれる。
例えば、実施例では、油圧制御アクチュエータとして電
磁比例式リリーフバルブを用いた例を示したが、他の手
段、例えばデューティ制御信号を用いる場合にはソレノ
イド開閉弁構造のもの等としてもよい。
また、実施例では、クラッチ手段として油圧締結による
多板摩擦クラッチを示したが、電磁クラッチや粘性クラ
ッチ等他のクラッチを用いてもよい。
(発明の効果) 以上説明してきたように、本発明の四輪駆動車の駆動力
配分制御装置にあっては、クラッチ制御手段を、前後輪
回転速度差が大きくなるほどクラッチ締結力を4輪駆動
方向に増大させると共に、前後輪回転速度差に対するク
ラッチ締結力の増大割合値が横加速度の小さい時には大
きな値であり横加速度が大きくなるにしたがって小さな
値となる特性が得られる手段とし、且つ、横加速度が増
加方向あるいは減少方向に変化する時、横加速度の変化
に伴って変化する前記増大割合値の変化速度を規制する
規制手段を設け、該規制手段を、前輪側の駆動力が減少
する方向の変化速度を速くし、前輪側の駆動力が増加す
る方向の変化速度を遅くする規制を行なう手段としたた
め、クラッチ締結力の増大割合値を横加速度の大きさに
より変えることで発進性能や直進安定性や旋回性能の向
上を図ることができると共に、増大割合値の変化速度を
前輪側の駆動力が減少する方向と増加する方向とで異な
らせることで旋回初期及び旋回後期のアンダーステア傾
向を抑制できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の四輪駆動車の駆動力配分制御装置を示
すクレーム概念図、第2図は実施例の駆動系クラッチ制
御装置が適用される四輪駆動車を示す図、第3図は実施
例の四輪駆動車の駆動力配分制御装置を示す全体図、第
4図は実施例装置のトランスファ装置を示す断面図、第
5図は実施例装置のコントロールユニットを示すブロッ
ク線図、第6図はクラッチ油圧とクラッチ締結力の関係
特性図、第7図は指令電流値とクラッチ圧の関係特性
図、第8図は第1実施例装置のコントロールユニットに
予め設定されている前後輪回転速度差に対するクラッチ
締結力の制御特性線図、第9図は第1実施例装置のコン
トロールユニットにおける駆動系クラッチ制御作動の流
れを示すフローチャート図、第10図は第2実施例装置の
コントロールユニットを示すブロック線図、第11図は第
2実施例装置のコントロールユニットにおける駆動系ク
ラッチ制御作動の流れを示すフローチャート図である。 1……駆動系クラッチ手段 2……検出手段 201……前後輪回転速度差検出手段 202……横加速度検出手段 3……クラッチ制御手段 301……規制手段

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エンジン駆動力を前後輪に分配伝達するエ
    ンジン駆動系の途中に設けられ、外部からのクラッチ締
    結力により伝達トルクの変更ができる駆動系クラッチ手
    段と、 所定の検出手段からの検出信号に基づいて前記駆動系ク
    ラッチ手段の締結力を増減制御する制御信号を出力する
    クラッチ制御手段と、 を備えた四輪駆動車の駆動力配分制御装置において、 前記検出手段として、前後輪回転速度差検出手段と横加
    速度検出手段を含み、 前記クラッチ制御手段は、前後輪回転速度差が大きくな
    るほどクラッチ締結力を4輪駆動方向に増大させると共
    に、前後輪回転速度差に対するクラッチ締結力の増大割
    合値が横加速度の小さい時には大きな値であり横加速度
    が大きくなるにしたがって小さな値となる特性が得られ
    る手段であり、 且つ、横加速度が増加方向あるいは減少方向に変化する
    時、横加速度の変化に伴って変化する前記増大割合値の
    変化速度を規制する規制手段が設けられ、 該規制手段は、前輪側の駆動力が減少する方向の変化速
    度を速くし、前輪側の駆動力が増加する方向の変化速度
    を遅くする規制を行なう手段である事を特徴とする四輪
    駆動車の駆動力配分制御装置。
  2. 【請求項2】前記規制手段は、前輪側の駆動力が減少す
    る方向の変化速度規制値を前輪側の駆動力が増加する方
    向の変化速度規制値よりも大きく設定することにより、
    増大割合値の変化速度を規制する手段である特許請求の
    範囲第1項記載の四輪駆動車の駆動力配分制御装置。
  3. 【請求項3】前記規制手段は、旋回半径演算手段により
    演算した旋回半径演算値の変化速度を規制することによ
    り間接的に増大割合値の変化速度を規制する手段である
    特許請求の範囲第1項記載の四輪駆動車の駆動力配分制
    御装置。
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