JPH07286892A - 回転機器の監視診断装置 - Google Patents

回転機器の監視診断装置

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JPH07286892A
JPH07286892A JP6078707A JP7870794A JPH07286892A JP H07286892 A JPH07286892 A JP H07286892A JP 6078707 A JP6078707 A JP 6078707A JP 7870794 A JP7870794 A JP 7870794A JP H07286892 A JPH07286892 A JP H07286892A
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原 義 彦 鵜
Katsumi Sasanuma
沼 克 己 笹
Daijiro Ikeda
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 プラントの運転開始直後から監視を行うこと
ができ、また、外乱等によって機器の状態が変化した場
合でも信頼性の高い監視を行うことのできる回転機器の
監視診断装置を得る。 【構成】 プラントの立上げ前に行われる試験運転時以
降の監視対象の振動値を振動検出器1で検出し、運転パ
ラメータを運転パラメータ検出器2で検出すると、検出
値格納手段6がこれらの検出値を格納する。しきい値設
定手段7は格納された検出値に基づいてプラント立上げ
時の異常を判断するための仮しきい値を運転パラメータ
に対応させて設定すると、しきい値格納手段4がこの仮
しきい値を格納する。そこで、しきい値比較手段3がプ
ラントの立上げ時に、運転パラメータ毎に仮しきい値と
検出された振動値とを比較して監視対象の異常を判断す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プラントを構成する回
転機器の状態を監視して異常を判断する回転機器の監視
診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の監視診断装置は、例えば、原子
力発電設備において回転機器(以下、単に機器とも言
う)の振動を監視し、監視対象の振動値が正常運転状態
における許容範囲から逸脱しかけた場合に運転員に注意
を喚起する目的で使用される。
【0003】図11はこの種の従来の監視診断装置の構
成を示すブロック図である。同図において、振動検出器
1は監視対象に取付けられ、この監視対象の振動値を電
気信号に変換して出力するもので、出力された電気信号
はしきい値比較装置3に送り込まれる。しきい値格納装
置4には異常を判断するためのしきい値が格納されてお
り、このしきい値に対応する電気信号もしきい値比較装
置3に送り込まれる。なお、しきい値格納装置4には、
プラントの実運転が開始された時に検出された監視対象
の振動値に基づいて運転員が決定したしきい値が格納さ
れている。そして、監視中に、しきい値比較装置3はそ
れに送り込まれた二つの電気信号を比較し、振動検出器
1からの電気信号がしきい値格納装置4からの電気信号
よりも大きいとき、異常に対応する信号を表示装置5に
送り込む。そこで、表示装置5は振動値が許容範囲から
逸脱したことを表示して運転員に注意を喚起する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般に、プラントを構
成する機器を定期検査等で分解点検を実施した場合、こ
の機器が正常状態であっても分解点検前と分解点検後と
で振動値の異なる場合がある。また、原子力発電所等の
大型プラントにおいては、運転を開始してから定格運転
状態に達するまで数日を要するが、このプラント立上げ
中の各機器の運転条件は時々刻々と変化しており、これ
に伴ない、各機器が正常状態であってもその振動値は変
化している。さらに、ある種の機器にあっては、地震等
の外乱によってその後の振動の性状が微妙に異なる場合
があり、そのため、機器自体が正常状態であっても振動
値が変化する場合がある。
【0005】このような特性を持つ機器の監視に対し
て、上記従来の監視診断装置では、プラントの起動当初
は、その時点での各機器の振動値が未知であるために監
視を行わず、定格運転状態に到達した後、一定の時間だ
け監視対象の振動値の測定を行うことによって定格運転
条件における正常状態での監視対象の振動値の変動範囲
を把握した上で、しきい値を設定するという方法が採ら
れていた。
【0006】ところで、プラントを構成する機器に異常
が発生する割合は、プラントが安定に運転されている場
合よりも、むしろ定期点検等で分解組立てを行った後の
プラント立上げ過程の方が高いとされている。しかる
に、従来の装置ではプラントの立上げ過程で機器に何等
かの異常が発生してもこの異常が検知されないまま運転
が継続され、この結果、各機器の異常が他の機器に波及
し、最悪の場合にはプラント全体に大きな損傷を与える
虞れがあった。
【0007】さらに、地震等の外乱によってその後に微
妙に振動性状が異なった場合、上記のようにして設定さ
れたしきい値を用いると、機器が正常な運転中であって
も、注意情報を誤って表示したり、あるいは、振動値が
変化したにも拘らず、しきい値を越えるまでに時間がか
かり、異常徴候の検知が送れてしまう虞れもあった。
【0008】本発明は上記の問題点を解決するためにな
されたもので、その目的はプラントの運転開始直後から
監視を行うことのできる回転機器の監視診断装置を得る
ことにある。また、本発明の他の目的は外乱等によって
機器の状態が変化した場合でも信頼性の高い監視を行う
ことのできる回転機器の監視診断装置を得ることにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係る回転機器の
監視診断装置は、プラントを構成する回転機器を監視対
象とし、プラントの立上げ前に行われる試験運転時以降
の監視対象の振動値を検出する振動検出器と、プラント
の試験運転時以降の監視対象の運転パラメータを検出す
る運転パラメータ検出器と、検出された振動値及び運転
パラメータを格納する検出値格納手段と、格納された試
験運転時の振動値及び運転パラメータに基づいてプラン
ト立上げ時の監視対象の異常を判断するための仮しきい
値を運転パラメータに対応させて設定するしきい値設定
手段と、設定された仮しきい値を格納するしきい値格納
手段と、プラントの立上げ時に、運転パラメータ検出器
によって検出された運転パラメータに対応するしきい値
格納手段の仮しきい値と振動検出器によって検出された
振動値とを比較して監視対象の異常を判断するしきい値
比較手段とを備える。
【0010】好ましくは、しきい値設定手段は、プラン
トの試験運転に際して検出された監視対象の振動値と運
転パラメータとの関係から、実際の運転環境での振動値
と運転パラメータとの関係を推定し、その推定結果及び
検出値格納手段に格納された過去のプラント立上げ時の
振動値のばらつきに基づいてプラント立上げ時の仮しき
い値を設定するように構成する。
【0011】このとき、しきい値設定手段は、プラント
の試験運転で得られた振動値と運転パラメータとの関係
から、動解析モデルを用いて、実際の運転環境での振動
値と運転パラメータとの関係を推定することができる。
【0012】また、しきい値設定手段は、運転パラメー
タ毎に過去のプラント立上げ時の振動値の標準偏差を算
出し、この標準偏差に定数を乗じた値を、推定された実
際の運転環境での運転パラメータが同一の振動値に加算
して仮しきい値を算出するとよい。
【0013】さらにまた、しきい値設定手段は、試験運
転での運転条件が実際の運転条件を包含していない場
合、試験運転で得られた運転パラメータと振動値との関
係を表す近似式を用いて振動値を内挿及び/又は外挿し
て実際の運転条件の全域における運転パラメータと振動
値との関係を推定するようにする。
【0014】また、しきい値設定手段は、打撃試験時、
又は、機器起動瞬時の過渡状態の振動値の変化波形から
振動の共振周波数及び減衰定数を算出し、推定された運
転パラメータと振動値との関係を補正することができ
る。
【0015】さらに、プラントの立上げ運転から通常運
転への移行時に、しきい値の変更指令を入力することの
できる入力手段と、しきい値の変更指令が入力された
時、検出値格納手段に格納されているプラントの通常運
転中に得られた運転パラメータと振動値との関係を統計
処理して運転パラメータに関係付けられたしきい値を算
出し、しきい値格納手段に格納されている仮しきい値
を、統計処理によって算出したしきい値に変更するしき
い値変更手段とを備え、しきい値比較手段はプラントの
通常運転中、変更されたしきい値と検出された振動値と
を比較して監視対象の異常を判断するとよい。
【0016】このしきい値変更手段は、統計処理に際し
て、運転パラメータと関係付けられた過去の通常運転中
の振動値の平均値を算出すると共に、標準偏差を算出
し、この標準偏差に定数を乗じた値を平均値に加算して
しきい値とすることができる。
【0017】本発明に係るもう一つの回転機器の監視診
断装置は、プラントを構成する回転機器を監視対象と
し、この監視対象の分解、組立後に行われる調整試験、
及びプラントの立上げ前に行われる試験運転時以降の監
視対象の振動値を検出する振動検出器と、プラントの試
験運転時以降の監視対象の運転パラメータを検出する運
転パラメータ検出器と、検出された 振動値及び運転パ
ラメータを格納する検出値格納手段と、格納された調整
試験時の振動値に基づいてプラント立上げ時の監視対象
の異常を判断するための仮しきい値を運転パラメータに
対応させて設定するしきい値設定手段と、設定された仮
しきい値を格納するしきい値格納手段と、プラントの立
上げ時に、運転パラメータ検出器によって検出された運
転パラメータに対応するしきい値格納手段の仮しきい値
と振動検出器によって検出された振動値とを比較して監
視対象の異常を判断するしきい値比較手段とを備える。
【0018】
【作用】この発明においては、プラントの立上げ前に行
われる試験運転時以降の監視対象の振動値及び運転パラ
メータを検出して格納し、続いて、格納された振動値及
び運転パラメータに基づいてプラント立上げ時の監視対
象の異常を判断するための仮しきい値を運転パラメータ
に対応させて設定して格納し、さらに、プラントの立上
げ時に、検出された運転パラメータに対応する仮しきい
値と検出された振動値とを比較して監視対象の異常を判
断するようにしたので、プラントの運転開始直後から回
転機器の異常を監視することができる。
【0019】この場合、プラントの試験運転と実際の運
転環境とが異なるので、例えば、動解析モデルを用い
て、試験運転時における振動値と運転パラメータとの関
係から、実際の運転環境での振動値と運転パラメータと
の関係を推定し、さらに、推定結果と予め格納された過
去のプラント立上げ時の振動値のばらつきとに基づいて
プラント立上げ時の仮しきい値を設定することにより、
外乱等によって機器の状態が変化した場合でも信頼性の
高い監視を行うことができる。
【0020】また、試験運転での運転条件が実際の運転
条件を包含していない場合、試験運転で得られた運転パ
ラメータと振動値との関係を表す近似式を用いて振動値
を内挿及び/又は外挿して実際の運転条件の全域におけ
る仮しきい値を容易に設定することができる。
【0021】試験運転領域外に共振点がある場合には、
打撃試験時、又は、機器起動瞬時の過渡状態の振動値の
変化波形から振動の共振周波数及び減衰定数を算出し、
推定された運転パラメータと振動値との関係を補正する
ことにより、仮しきい値の精度を高めることができる。
【0022】一方、プラントの立上げ運転から通常運転
への移行時に、しきい値の変更指令を入力し、これに応
じてプラントの通常運転中に得られた運転パラメータと
振動値との関係を統計処理して運転パラメータに関係付
けられたしきい値を算出し、このしきい値を仮しきい値
に変えることにより、通常運転中の監視対象の異常を正
確に判断することができる。
【0023】また、試験運転時の振動値データに変え
て、監視対象の分解、組立後に行われる調整試験時の振
動値データを用いれば、仮しきい値を簡易に算出するこ
とができる。
【0024】
【実施例】以下、本発明を図面に示す実施例によって詳
細に説明する。図1は本発明の一実施例の構成を示すブ
ロック図である。図中、図11と同一の符号を付したも
のはそれぞれ同一又は同様の機能を有する要素を示して
いる。図1において、運転パラメータ検出器2は機器の
回転速度、機器の運転条件等の運転パラメータを検出す
るものである。しきい値比較装置3には振動検出器1か
ら出力される電気信号と併せて運転パラメータ検出器2
から出力される電気信号も送り込まれる。
【0025】振動検出器1及び運転パラメータ検出器2
からそれぞれ出力される電気信号は検出値格納装置6に
も送り込まれる。検出値格納装置6は電気信号に変換さ
れた振動値及び運転パラメータをそれぞれ格納するもの
で、実運転時に限らず、分解組立後に行われる調整試験
時や、プラント立上げ前に行われる試運転時の検出値を
も同様に格納するものである。
【0026】検出値格納装置6にはしきい値設定装置7
及びしきい値変更装置8が接続されている。このうち、
しきい値設定装置7は入力装置9を用いて入力されるオ
ペレータの指示に従い、検出値格納装置6に格納された
振動値及び運転パラメータを基にして仮しきい値を算出
し、しきい値格納装置4に送り込むものである。また、
しきい値変更装置8は入力装置9を用いて入力されるオ
ペレータの指示に従い、検出値格納装置6に格納された
振動値及び運転パラメータを基にしてしきい値を算出
し、得られた値によってしきい値格納装置4に格納され
たしきい値を変更するものである。なお、しきい値設定
装置7及びしきい値変更装置8に対してそれぞれ計算結
果を表示する表示装置10が接続されている。
【0027】上記のように構成された本実施例の概略動
作について、図2のフローチャートと対応させて説明
し、それに続いて、しきい値設定装置7及びしきい値変
更装置8の詳細な動作を説明する。一般に、回転機器が
その分解点検後に再組立てが行われた場合、例えば回転
機の軸を手回しで回転させて、その振れ回りの測定、軸
のカップリング部分のフランジ部の水平度の測定、軸受
部分のクリアランスの測定等の調整試験が行われる。ま
た、実際のプラントの立上げ前に、監視対象機器を実際
の運転環境とは異なった環境にて試験的に運転して振動
値を測定する試験運転が行われる。
【0028】これら調整試験時、あるいは、試験運転時
においても振動検出器1及び運転パラメータ検出器2を
動作せしめることによって、その時の振動値及び運転パ
ラメータをも測定結果として検出値格納装置6に格納さ
れる。特に、試験運転時には機器を起動した瞬間の振動
波形も格納されるようになっている。なお、調整試験時
には、振動検出器1が取外されている場合があり、その
場合には別途に採取された振動値等を、入力装置を用い
て入力してもよい。これらが図2のステップ101の処
理に対応している。
【0029】次に、プラントの運転開始前に、すなわ
ち、運転員が入力装置9を用いて仮しきい値の設定を要
求する。この要求に基づいて、しきい値設定装置7はプ
ラント立上げ運転時の仮しきい値を算出し、しきい値格
納装置4に格納する。この際、算出された仮しきい値を
表示装置10によって表示し、運転員による確認を条件に
格納してもよい。また、しきい値設定装置7によって算
出された仮しきい値に対して、運転員が入力装置9を用
いて修正してもよい。これらが図2のステップ102の
処理に対応している。
【0030】次に、プラントが起動されたとき、振動検
出器1によって検出された振動値及び運転パラメータ検
出器2によって検出された運転パラメータの両方がしき
い値比較装置3に加えられると共に、検出値格納装置6
にも加えられる。そこで、しきい値比較装置3は検出さ
れた運転パラメータに対応するしきい値格納装置4中の
仮しきい値と、検出された振動値とを比較し、検出され
た振動値が格納されている仮しきい値を超えるとき、異
常に対応する信号を表示装置5に送り込み、振動値が許
容範囲から逸脱したことを表示して運転員に注意を喚起
する。一方、ブラント起動過程、すなわち、立上げ過程
で検出された振動値及び運転パラメータは、ほぼ全期間
に亘って順次検出値格納装置6に格納される。すなわ
ち、検出値が履歴データとして格納される。これらが図
2のステップ103の処理に対応している。
【0031】次に、プラントの立上げ運転から通常運転
への移行時に、入力装置9を介して運転員によるしきい
値変更要求がしきい値変更装置8に加えられると、しき
い値変更装置8では検出値格納装置6に格納された通常
運転時の履歴データを取込み、その運転サイクルに適し
た新しいしきい値を算出し、これまで格納されていた仮
しきい値の代わりにしきい値格納装置4に格納する。こ
の際、算出されたしきい値を表示装置10によって表示
し、運転員によるしきい値変更の確認を条件に格納して
もよい。また、しきい値変更装置8によって算出された
しきい値に対して、運転員が入力装置9を用いて修正し
てもよい。これらが図2のステップ104の処理に対応
している。
【0032】そこで、しきい値比較装置3は検出された
運転パラメータに対応するしきい値格納装置4中のしき
い値と、検出された振動値とを比較し、検出された振動
値が格納されているしきい値を超えるとき、異常に対応
する信号を表示装置5に送り込み、振動値が許容範囲か
ら逸脱したことを表示して運転員に注意を喚起する。こ
れらが図2のステップ105の処理に対応している。ま
た、地震等の外乱で機器の振動性状が変化し、上述した
設定値が適切でなくなった場合に、運転員が入力装置9
を介してしきい値変更要求を入力すると、しきい値変更
装置8が再起動せしめられ、その時点まで検出値格納装
置6に蓄積された一定時間内の履歴データに基づき、そ
の運転サイクルに適した新しいしきい値を算出する図2
のステップ104の処理を実行させる。これが図2のス
テップ106の処理に対応している。
【0033】この場合、運転パラメータに対応させて仮
しきい値又はしきい値を格納するしきい値格納装置4の
構成としては、図3に示すように、運転パラメータの変
動範囲を複数の区間に分け、各区間に対応する仮しきい
値又はしきい値を格納してもよく、また、図4に示すよ
うに、運転パラメータの変動範囲を大きく分け、各区間
毎に仮しきい値又はしきい値を演算する関数式の形及び
式中の係数を格納してもよい。なお、関数式の形及び式
中の係数を格納する場合には、しきい値設定装置7及び
しきい値変更装置8がそれぞれ関数式の形及び式中の係
数を決定し、しきい値比較装置3が関数式の形及び係数
を用いて仮しきい値又はしきい値を演算し、得られた値
と検出された振動値とを比較する構成にする。
【0034】次に、しきい値設定装置7の詳細な動作を
説明する。しきい値設定装置7は機器組立後の試験運
転、及び過去に得られた振動値と運転パラメータとの関
係に基づき、図5のステップ111〜114に示したア
ルゴリズムに従って、実際の運転環境でのしきい値を設
定する。すなわち、 (a)試験運転環境での振動値を実際の運転環境での振
動値に補正する。 (b)試験運転で得られていない運転パラメータの振動
値を外挿及び/又は内挿する。 (c)打撃試験又は起動瞬間の振動波形から共振周波
数、減衰定数を算出し、振動値を補正する。 (d)過去の振動のばらつきと補正して得られた振動値
とからしきい値を設定する。
【0035】これらの処理内容のうち、先ず(a)の処
理内容を説明する。一般に試験運転は、常温、常圧の環
境条件で行われるが、例えば沸騰水型の原子力プラント
では、実際には、圧力70kg/cm2 、温度240℃
の環境で運転される。この環境の差は、例えば回転機を
支える軸受の剛性等に影響し、そのため、振動値にも差
異が現れる。従って、常温、常圧の試験環境で得られた
振動値と運転プロセスの関係(以下、振動特性曲線と呼
ぶ)を高温、高圧の条件に補正する必要がある。これ
は、動解析モデル等の物理シミュレーションを用いて、
軸の不平衡位置、及びその大きさを推定し、その結果に
対して軸受の剛性を環境条件で修正して再度動解析モデ
ルでシミュレーション解析を行うことによって推定が可
能である。また、数サイクルにわたってデータが蓄積さ
れれば、常温、常圧での振動値に乗算する係数を統計的
に算出して高温、高圧での振動値を得ることも可能であ
る。
【0036】図6はこれらの処理を示したもので、試験
運転で得られたデータと、実際の環境データとに基づ
き、動解析モデルを用いてシミュレーションし、試験運
転で得られた振動値を実運転環境での振動値に補正して
いる。
【0037】次に、(b)の処理内容を説明する。一般
に、試験運転では、実際の運転条件を全て包含している
とは限らない。すなわち、運転パラメータの全てに対し
ての振動値が得られない場合もある。その場合、運転パ
ラメータが得られていない領域については、上記の補正
された振動特性曲線に対して内挿及び/又は外挿を施し
て、運転パラメータの全領域について、運転パラメータ
と振動値との関係を推定する。内挿及び/又は外挿は、
例えば振動値を最小2乗法を用いて運転パラメータの多
項式や、可変速の回転機器では以下に示す振動応答曲線
式で近似し、その近似式を内挿及び/又は外挿する方法
を用いる。
【0038】
【数1】 ただし F :振動値 ω :運転パラメータ a,b,c,d,e,f:定数 である。図7はこれらの処理を示したもので、補正され
たデータに対して、最小2乗法を用いて運転パラメータ
の多項式や、(1) 式の振動応答曲線式で近似し、これら
の式を用いて内挿及び/又は外挿すべき値を算出し、こ
れによって、運転パラメータの全領域について、運転パ
ラメータと振動値との関係を推定している。
【0039】次に、(c)の処理内容を説明する。例え
ば、回転機器の支持機構や、配管等に改造を施した場
合、回転機器の共振周波数や、共振時の応答倍率が改造
の前後で異なる場合がある。この共振周波数が上記の試
験運転範囲内にある場合には、試験運転で得られたデー
タからこれらを把握することができるが、試験運転範囲
外にある場合には、その把握が不可能である。
【0040】この場合、例えば、監視対象機器を打撃
し、その際に得られる振動波形から、それを把握する。
機器を打撃した場合には図8に示すような衝撃波形が観
測される。この波形を種々のバンドパスフィルタを通し
たり、ウェーブレット変換をかけることにより、単位時
間当たりのピークの数や、減衰の状態が分かり、これか
ら機器の共振周波数や応答倍率が算出できる。対象機器
が非常に大きな場合には、打撃試験では上記の振動波形
が得られない場合もある。その際には、機器を起動した
瞬間の振動波形を用いれば上記と同様の情報を得ること
が可能である。このようにして得られた共振周波数から
共振に伴なう振動値の補正を必要とする運転パラメータ
位置が推定され、減衰定数から振動値の補正分を算出す
ることができる。そこで、内挿及び/又は外挿の施され
た振動値と運転パラメータの関係を示す曲線と、推定さ
れた運転パラメータにおける振動値の補正分とを重ね合
わせることにより高温、高圧時の振動特性予測の予測曲
線を作成することができる。
【0041】図8はこれらの処理を示したもので、打撃
試験データ又は起動瞬時の振動データから共振周波数や
減衰定数を算出し、これらの情報に基づいて内挿及び/
又は外挿が施された運転パラメータに対応する振動値を
補正する。
【0042】次に、(d)の処理内容を説明する。監視
対象機器の振動値の平均値と運転パラメータとの関係を
推定して得られた運転パラメータの全領域についての振
動値の特性曲線に対して、例えば従来のプラント立上げ
時に検出された振動値の標準偏差を3〜6倍した値を予
測された上記特性曲線上の振動値に加えて新たなしきい
値曲線を求める。
【0043】図9はこの関係を示したもので、過去に検
出された運転パラメータ毎のばらつきから標準偏差σを
演算し、この標準偏差をN(=3〜6)倍した値N・σ
を振動値の特性曲線上に上乗せして仮しきい値としてい
る。
【0044】次に、しきい値変更装置8の詳しい動作を
説明する。しきい値変更装置8は運転員の要求によって
動作を開始するもので、その処理内容を、図10を用い
て説明する。このしきい値変更装置8は検出値格納装置
6に格納された過去の通常運転中のデータを、運転パラ
メータと振動値Aとの関係に整理し、続いて、最小2乗
法を用いて近似し、振動値の平均値と運転パラメータと
の関係を示す近似式Dを求める。一方、各振動値と上記
近似式Dとの差から振動値の標準偏差aを求め、さら
に、標準偏差aの3〜6倍の値を加えてしきい値の特性
曲線cを算出し、しきい値格納装置4に格納する。上記
近似式は、しきい値設定装置7の詳細な動作として
(b)で述べたと同様に運転パラメータの多項式、又
は、可変速の機器については上記(1) 式を用いればよ
い。
【0045】このしきい値変更装置8によるしきい値設
定方法は、本願と同一出願人の出願にかかる特願平5−
275462号に記載してあるので参照せられたい。
【0046】かくして、本実施例によれば、回転機器の
試験運転で得られた運転パラメータ及び振動値の各デー
タに基づいてプラント起動前に、プラント立上げ時の仮
しきい値を設定して監視しているので、プラント運転開
始直後から監視をすることができる。
【0047】また、それまでに蓄積されたデータに基い
て、プラント立上げ時の仮しきい値及び通常運転時のし
きい値を修正することができるので、外乱等により機器
の状態が変化した場合でも最適なしきい値を設定するこ
とができる。
【0048】なお、上記実施例では、しきい値設定装置
7が試験運転環境での振動値に基づいて仮しきい値を設
定したが、試験運転環境での振動値の代わりに機器の調
整試験で得られたデータから、プラント立上げ時の振動
値を予測し、この予測値に基づいて仮しきい値を設定す
ることもできる。
【0049】すなわち、回転機器を構成する各軸の不平
衡の大きさとその方向が既知の場合には、それらを結合
して一体の軸とした場合に、手回し等によってその振れ
回りを測定すれば、結合した際の軸のずれの状態が把握
でき、それらから結合された軸の不平衡の大きさと方向
が把握できる。
【0050】この結果を用いて動解析によるシミュレー
ションを行うことにより、プラント立上げ時の振動値を
推定し、かつ、上記(c)及び(d)に記載の処理を行
うことにより実際の環境における仮しきい値を設定する
ことが可能である。
【0051】また、機器の調整試験で得られたデータか
ら上述したように仮しきい値を求め、続いて、この仮し
きい値を試験運転環境での振動値に基づいて演算した仮
しきい値によって修正するようにしてもよい。
【0052】このように、調整試験で得られたデータに
基いて仮しきい値を設定し、さらに、この仮しきい値を
試験運転環境でのデータに基いて得られた仮しきい値で
修正することにより、さらに、きめの細かい監視が可能
となる。
【0053】なおまた、しきい値設定装置7で予測され
た振動値が、機器の運転限界を超えるか否かをしきい値
設定装置7で判別し、振動値が機器の運転限界を超える
ような場合には、再度組立てをやり直すような情報を表
示装置10を用いて報知するようにしてもよい。これによ
り、プラント起動前の処理が可能となる。
【0054】
【発明の効果】以上の説明により明らかな如く、本発明
によれば、試験運転時又は調整試験時の振動値及び運転
パラメータに基づいてプラント立上げ時の監視対象の異
常を判断するための仮しきい値を設定し、この仮しきい
値と検出された振動値とを比較して監視対象の異常を判
断するようにしたので、プラントの運転開始直後から回
転機器の異常を監視することができる。
【0055】この場合、例えば、動解析モデルを用い
て、実際の運転環境での振動値と運転パラメータとの関
係を推定し、さらに、推定結果と予め格納された過去の
プラント立上げ時の振動値のばらつきとに基づいてプラ
ント立上げ時の仮しきい値を設定することにより、外乱
等によって機器の状態が変化した場合でも信頼性の高い
監視を行うことができる。
【0056】また、試験運転での運転条件が実際の運転
条件を包含していない場合には、運転パラメータと振動
値との関係を表す近似式を用いて振動値を内挿及び/又
は外挿することにより運転条件の全域における仮しきい
値を容易に設定することができる。
【0057】さらに、打撃試験時、又は、機器起動瞬時
の過渡状態の振動値の変化波形から振動の共振周波数及
び減衰定数を算出し、推定された運転パラメータと振動
値との関係を補正することにより、仮しきい値の精度を
高めることができる。
【0058】一方、プラントの立上げ運転から通常運転
への移行時に、プラントの通常運転中に得られた運転パ
ラメータと振動値との関係を統計処理して得られたしき
い値に変更することにより、通常運転中の監視対象の異
常を正確に判断することができる。
【0059】また、試験運転時の振動値データの代わり
に、監視対象の分解、組立後に行われる調整試験時の振
動値データを用いれば、仮しきい値を簡易に算出するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施例の概略動作を説明するための
フローチャート。
【図3】本発明の一実施例を構成するしきい値格納装置
の詳細な構成を説明するための図表。
【図4】本発明の一実施例を構成するしきい値格納装置
の詳細な構成を説明するための図表。
【図5】本発明の一実施例を構成するしきい値設定装置
の全体の動作を説明するためのフローチャート。
【図6】本発明の一実施例を構成するしきい値設定装置
の詳細な動作を説明するための説明図。
【図7】本発明の一実施例を構成するしきい値設定装置
の詳細な動作を説明するための説明図。
【図8】本発明の一実施例を構成するしきい値設定装置
の詳細な動作を説明するための説明図。
【図9】本発明の一実施例を構成するしきい値設定装置
の詳細な動作を説明するための説明図。
【図10】本発明の一実施例を構成するしきい値変更装
置の動作を説明するために、振動値と運転パラメータと
の関係を示した線図。
【図11】従来の回転機器の監視診断装置の構成を示す
ブロック図。
【符号の説明】
1 振動検出器 2 運転パラメータ検出器 3 しきい値比較装置 4 しきい値格納装置 5,10 表示装置 6 検出値格納装置 7 しきい値設定装置 8 しきい値変更装置 9 入力装置

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プラントを構成する回転機器を監視対象と
    し、プラントの立上げ前に行われる試験運転時以降の監
    視対象の振動値を検出する振動検出器と、プラントの試
    験運転時以降の監視対象の運転パラメータを検出する運
    転パラメータ検出器と、検出された前記振動値及び運転
    パラメータを格納する検出値格納手段と、格納された試
    験運転時の振動値及び運転パラメータに基づいてプラン
    ト立上げ時の監視対象の異常を判断するための仮しきい
    値を運転パラメータに対応させて設定するしきい値設定
    手段と、設定された仮しきい値を格納するしきい値格納
    手段と、プラントの立上げ時に、前記運転パラメータ検
    出器によって検出された運転パラメータに対応する前記
    しきい値格納手段の仮しきい値と前記振動検出器によっ
    て検出された振動値とを比較して監視対象の異常を判断
    するしきい値比較手段とを備えた回転機器の監視診断装
    置。
  2. 【請求項2】前記しきい値設定手段は、プラントの試験
    運転に際して検出された監視対象の振動値と運転パラメ
    ータとの関係から、実際の運転環境での振動値と運転パ
    ラメータとの関係を推定し、その推定結果及び前記検出
    値格納手段に格納された過去のプラント立上げ時の振動
    値のばらつきに基づいてプラント立上げ時の仮しきい値
    を設定する請求項1に記載の回転機器の監視診断装置。
  3. 【請求項3】前記しきい値設定手段は、プラントの試験
    運転で得られた振動値と運転パラメータとの関係から、
    動解析モデルを用いて、実際の運転環境での振動値と運
    転パラメータとの関係を推定する請求項2に記載の回転
    機器の監視診断装置。
  4. 【請求項4】前記しきい値設定手段は、運転パラメータ
    毎に過去のプラント立上げ時の振動値の標準偏差を算出
    し、この標準偏差に定数を乗じた値を、前記推定された
    実際の運転環境での運転パラメータが同一の振動値に加
    算して仮しきい値を算出する請求項3に記載の回転機器
    の監視診断装置。
  5. 【請求項5】前記しきい値設定手段は、試験運転での運
    転条件が実際の運転条件を包含していない場合、試験運
    転で得られた運転パラメータと振動値との関係を表す近
    似式を用いて振動値を内挿及び/又は外挿して実際の運
    転条件の全域における運転パラメータと振動値との関係
    を推定する請求項2に記載の回転機器の監視診断装置。
  6. 【請求項6】前記しきい値設定手段は、打撃試験時、又
    は、機器起動瞬時の過渡状態の振動値の変化波形から振
    動の共振周波数及び減衰定数を算出し、推定された運転
    パラメータと振動値との関係を補正する請求項5に記載
    の回転機器の監視診断装置。
  7. 【請求項7】プラントの立上げ運転から通常運転への移
    行時に、しきい値の変更指令を入力することのできる入
    力手段と、しきい値の変更指令が入力された時、前記検
    出値格納手段に格納されているプラントの通常運転中に
    得られた運転パラメータと振動値との関係を統計処理し
    て運転パラメータに関係付けられたしきい値を算出し、
    前記しきい値格納手段に格納されている仮しきい値を、
    前記統計処理によって算出したしきい値に変更するしき
    い値変更手段とを備え、前記しきい値比較手段はプラン
    トの通常運転中、変更されたしきい値と検出された振動
    値とを比較して監視対象の異常を判断する請求項1〜6
    のいずれか一つに記載の回転機器の監視診断装置。
  8. 【請求項8】前記しきい値変更手段は、統計処理に際し
    て、運転パラメータと関係付けられた過去の通常運転中
    の振動値の平均値を算出すると共に、標準偏差を算出
    し、この標準偏差に定数を乗じた値を前記平均値に加算
    してしきい値とする請求項7に記載の回転機器の監視診
    断装置。
  9. 【請求項9】プラントを構成する回転機器を監視対象と
    し、この監視対象の分解、組立後に行われる調整試験、
    及びプラントの立上げ前に行われる試験運転時以降の監
    視対象の振動値を検出する振動検出器と、プラントの試
    験運転時以降の監視対象の運転パラメータを検出する運
    転パラメータ検出器と、検出された前記振動値及び運転
    パラメータを格納する検出値格納手段と、格納された調
    整試験時の振動値に基づいてプラント立上げ時の監視対
    象の異常を判断するための仮しきい値を運転パラメータ
    に対応させて設定するしきい値設定手段と、設定された
    仮しきい値を格納するしきい値格納手段と、プラントの
    立上げ時に、前記運転パラメータ検出器によって検出さ
    れた運転パラメータに対応する前記しきい値格納手段の
    仮しきい値と前記振動検出器によって検出された振動値
    とを比較して監視対象の異常を判断するしきい値比較手
    段とを備えた回転機器の監視診断装置。
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